5月18日朝刊にて各メデイアが共同親権を含む民法改正案が昨日の参議院本会議で成立したことを大きく報道いたしました。

昨日の本会議をメンバーと傍聴に行きましたが、私たち以外にも多くの当事者が詰めかけ、成立を見届けてまいりました。
親子ネットが発足して16年、共同養育支援議連が発足して10年の期間を要しました。これも弊会以外の当事者のみなさんも含めて多くの当事者が汗を流し、声を上げ続けたこと、まさに私たち子どもを想う父母の声が社会を動かしたものと実感してます。
みなさんのご努力に敬意を表するとともに改めて感謝の意を述べたいと思います。
課題はまだまだ残されています。父母の離婚で子どもたちが苦しむことのない社会にできるよう、私たちに何ができるか、改めて考えていきたいと思います。
改正に関する メディア報道一覧
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■Yahoo!ニュース
共同親権の改正案、17日成立へ 民法の離婚後規定、参院委で可決
https://news.yahoo.co.jp/articles/5d0…
「思い実った」「苦しみ続く」 共同親権、当事者に賛否
https://news.yahoo.co.jp/articles/c71…
■毎日新聞
離婚後共同親権の導入 子の利益を損なわぬよう
https://mainichi.jp/articles/20240519/ddm/005/070/077000c
離婚後の共同親権が可能に 改正民法が成立 77年ぶりに見直し
https://mainichi.jp/articles/20240517/k00/00m/040/001000c
離婚後の共同親権導入、参院法務委で可決 民法改正案成立へ
https://mainichi.jp/articles/20240516/k00/00m/010/045000c
「共同行使」と「単独行使」 共同親権巡り、曖昧さ残る境界は?(※)
https://mainichi.jp/articles/20240517/k00/00m/040/137000c
明治から戦後まで、変遷する家族法 共同親権導入の背景
https://mainichi.jp/articles/20240517/k00/00m/040/161000c
■朝日新聞
離婚後の「共同親権」法案 成立へ 参院委で賛成多数で可決
https://www.asahi.com/articles/ASS5J13RFS5JUTIL00LM.html
【そもそも解説】離婚後の共同親権 なぜいま導入?(※)
https://www.asahi.com/articles/ASS5J4JY0S5JUTIL022M.html
離婚後の「共同親権」導入へ 改正民法が成立 2年以内に施行(※)
https://www.asahi.com/articles/ASS5J4T4KS5JUTIL02CM.html
共同親権導入、2年以内 父母の不信感やDVリスク解消へ課題山積
https://www.asahi.com/articles/ASS5K36DFS5KUTIL028M.html
共同親権、大事なのは子の利益 DV見逃す懸念、専門職配置を 家族と関わる支援者は(※)
https://www.asahi.com/articles/DA3S15936786.html
共同親権協議、浸透なるか 離婚、乏しい親支援(※)
https://mainichi.jp/articles/20240518/ddm/041/010/108000c
■NHK
離婚後の「共同親権」導入 改正民法などが成立
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240517/k10014452351000.html
共同親権とは 離婚後の子どもの親権どうなる 賛成と反対 意見の内容は?
https://www.nhk.or.jp/shutoken/newsup/20240417d.html
「共同親権」同意が必要なこと 養育費や面会のルール 既に離婚の場合の対応など詳しく
https://www.nhk.or.jp/shutoken/newsup/20240517b.html
「共同親権」導入を柱 民法などの改正案 きょう成立の見通し
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240517/k10014451801000.html
離婚後の「共同親権」民法など改正案 参議院法務委で可決
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240516/k10014451041000.html
■読売新聞
「共同親権」導入の民法改正案、きょう成立へ…子どもの利益確保狙い
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20240516-OYT1T50223/
「共同親権」民法改正案、参院法務委で可決…父母が協議し選択可能に
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20240516-OYT1T50114/
■産経新聞
「共同親権」認める改正民法が成立 77年ぶり規定変更 2年以内に施行
https://www.sankei.com/article/20240517-D6RKDQ4SZJO2DDQDIRGSOPLPUY/
共同親権導入、虐待やDV防ぐ〝最後の砦〟 負担増の家裁の機能強化急務(※)
https://www.sankei.com/article/20240517-5LOKXDSAIVP2FANHKWD3WRCCSM/
共同親権、対立激しく「共同養育スムーズに」「DV見抜けない」
https://www.sankei.com/article/20240517-VLILXFHHAFOBHBTO4FAJMIML6M/
共同親権法案、17日に成立へ 民法改正、参院委で可決 離婚後規定77年ぶり見直し
https://www.sankei.com/article/20240516-5M647UVARJPEZN5SOZQMACGD5I/
■日本経済新聞
「共同親権」でこう変わる 離婚後育児、父母双方に責任(※)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA176DG0X10C24A5000000/
■gooニュース
「共同親権」生活のリアルとは?アメリカで離婚した私 考えるのは「子の最善の利益」
https://news.goo.ne.jp/article/globe_asahi/world/globe_asahi-15267139.html
離婚後の共同親権可能に=26年にも導入、改正民法成立―DV・虐待の懸念根強く
https://news.goo.ne.jp/article/jiji/politics/jiji-240517X318.html
離婚後の共同親権が可能に 改正民法が成立 77年ぶりに見直し
https://news.goo.ne.jp/article/mainichi/politics/mainichi-20240517k0000m040001000c.html
離婚後の「共同親権」導入 子どもの権利、家裁の態勢充実…専門家の見解は? 長崎
https://news.goo.ne.jp/article/nagasaki/region/nagasaki-20240518102752.html
離婚後の「共同親権」導入へ 歓迎と不安の声 運用面の今後の課題は?
先行するオーストラリアで起きている問題点とは?【報道特集】
https://news.goo.ne.jp/article/tbs/nation/tbs-1178032.html
「共同親権」可決に怒りの声噴出。「クソすぎる」「そらみんな子供もてねえよ独裁政権だもんこの国」
https://news.goo.ne.jp/article/allaboutnews/trend/allaboutnews-106101.html
青木理氏 共同親権法の成立に「家庭裁判所がパンクしちゃうんじゃないか」
https://news.goo.ne.jp/article/tokyosports/entertainment/tokyosports-302681.html
審議入りから約2カ月でスピード決着 離婚済みでも対象です “離婚後の家族”法改正
https://news.goo.ne.jp/article/tvasahinews/politics/tvasahinews-900002933.html
「死ぬ思いで離婚したのに、無にしてしまう」DV被害者から不安の声 『共同親権』法案が可決・成立
https://news.goo.ne.jp/article/ytv/nation/ytv-2024052005564347.html
■Wedge ONLINE
「元配偶者に子供を取られた」……日本で離婚後の共同親権導入へ
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/33866
■時事通信
共同親権法案、17日成立 参院委で可決
https://www.jiji.com/jc/article?k=2024051600813&g=pol
共同親権法が成立 選択可、26年にも開始
https://www.jiji.com/jc/article?k=2024051700154&g=pol
離婚後の共同親権可能に 26年にも導入、改正民法成立―DV・虐待の懸念根強く
https://www.jiji.com/jc/article?k=2024051701144&g=pol
■北日本新聞社
離婚後の共同親権導入 改正民法成立、26年施行(※)
https://webun.jp/articles/-/602060
■調布経済新聞
離婚後の共同親権可能に
https://chofu.keizai.biz/gpnews/1416509/
■松戸経済新聞
離婚後の共同親権可能に
https://matsudo.keizai.biz/gpnews/1416509/
■ヨコハマ経済新聞
離婚後の共同親権可能に
https://www.hamakei.com/gpnews/1416509/
■佐賀新聞
共同親権<有明抄>
https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1245996
離婚後の共同親権、改正民法成立
https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1244459
共同親権「裁判官研修が必要」
https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1244185
共同親権法案 DV排除へ議論深めよ
https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1232000
■沖縄タイムス
「DVを信じてもらえない」 共同親権の導入 沖縄の離婚女性や専門家、家裁の介入に不安 二次被害の懸念も
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1361605
[社説]「共同親権法」成立 残った課題に向き合え(※)
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1361489
離婚後の共同親権を導入 改正民法、2026年施行へ 参院で成立 DV対策に課題(※)
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1361505
[表層深層]男女格差解消されず 虐待やDV 懸念残る 共同親権 「現実的議論を」(※)
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1361511
■四国新聞
離婚後の共同親権導入 改正民法成立、26年施行へ 77年ぶり見直し(※)
https://www.shikoku-np.co.jp/dg/article.aspx?id=K2024051800000010900
■埼玉新聞
共同親権「裁判官研修が必要」
https://www.saitama-np.co.jp/articles/80650
■山陰中央新報デジタル
離婚後の「共同親権」導入 改正民法成立、26年施行へ(※)
https://www.sanin-chuo.co.jp/articles/-/576788
■信濃毎日新聞
変更申し立て「再び争いに」「子どもが困ったとき役立つ」…「共同親権」導入、長野県内当事者ら受け止め(※)
https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2024051701206
■京都新聞
「共同親権で縁結び文化になる」「共同養育計画を義務化すれば懸念は解消」 教育・嘉田由紀子氏(※)
https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/1255111
■FNNプライムオンライン
離婚後の「共同親権」認める改正民法が成立 DVや虐待のおそれがあれば家裁が判断 公布から2年以内に施行
https://nordot.app/1164108079056306429?c=768367547562557440
■カナコロ
「共同親権はない方がいい」専門家が懸念 子どもの意向無視は「許されず」(※)
https://www.kanaloco.jp/news/social/article-1078570.html#google_vignette
「反対なのに何で」…賛成討論の立民にやじ飛ぶ 共同親権導入、社民は退席
https://www.kanaloco.jp/news/government/article-1078633.html#google_vignette
「賛成して実を取る」 共同親権導入巡り牧山弘恵氏、立民「次の内閣」法相(※)
https://www.kanaloco.jp/news/government/article-1078635.html
共同親権 子の利益こそ最優先に(※)
https://www.kanaloco.jp/special/discourse/editorial/article-1078737.html
■au Webポータル
離婚後の「共同親権」認める改正民法が成立 DVや虐待のおそれがあれば家裁が判断 公布から2年以内に施行
https://article.auone.jp/detail/1/2/3/234_3_r_20240517_1715932232573521
■All About
共同親権導入に不安の声…28歳、DV家庭出身者の後悔「あの朝、母はぎゅうっと僕を抱きしめて」
https://allabout.co.jp/gm/gc/503897/
「共同親権」可決に怒りの声噴出。「クソすぎる」「そらみんな子供もてねえよ独裁政権だもんこの国」
https://news.allabout.co.jp/articles/o/79837/
■DIAMOND online
モメにモメてる離婚後の「共同親権」、今さら聞けない「何がそんなにリスキーなの?」
https://diamond.jp/articles/-/343907
■上毛新聞
「DV被害に苦しむ」「親である道探れる」 離婚後の「共同親権」に賛否割れる群馬県内の当事者
https://www.jomo-news.co.jp/articles/-/464816
■中日新聞
「現場任せな法律ではないか」 共同親権導入へ、離婚経験者は歓迎と批判
https://www.chunichi.co.jp/article/900128
■高知新聞
離婚後の共同親権導入 高知県内にも懸念の声 見えないDVを判断できるか
https://www.kochinews.co.jp/article/detail/745069
■福井新聞
離婚後の共同親権、改正民法成立
https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/2039640
■徳島新聞
共同親権「混乱招く」 県内の女性団体、一斉に批判(※)
https://www.topics.or.jp/articles/-/1073322
■共同通信
共同親権の改正案、17日成立へ 民法の離婚後規定、参院委で可決
https://nordot.app/1163661926216500218
共同親権「裁判官研修が必要」 米加州、男児殺害で義務化
https://nordot.app/1163759322996933460
■Web東奥
DV継続の懸念拭えない/離婚後の共同親権導入
https://www.toonippo.co.jp/articles/-/1779878
■南日本新聞
共同親権「恐ろしい」 DV被害者から不安相次ぐ「家裁が適切に判断できるのか」 県弁護士会も声明「事実見逃し命じる恐れ」
https://373news.com/_news/storyid/194966/
■琉球新報
<社説>「共同親権」成立 残る懸念、導入は拙速だ
https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-3100695.html
■熊本日日新聞
<社説>共同親権導入 懸念は払拭されていない(※)
https://kumanichi.com/articles/1423863
■東京新聞
野田聖子氏「このままでは子どもの人格を壊しかねない」 共同親権法案に「反対」した真意をじっくり語った
https://www.tokyo-np.co.jp/article/327061
<政治まんが>「共同親権ならず」 佐藤正明傑作選「一笑両断」発売中
https://www.tokyo-np.co.jp/article/327946
■下野新聞
面会交流充実に期待 DV被害消えぬ恐怖 共同親権、県内関係者の声 家裁の負担増懸念も
https://www.shimotsuke.co.jp/articles/-/897616
■ytv
「死ぬ思いで離婚したのに、無にしてしまう」DV被害者から不安の声 『共同親権』法案が可決・成立
https://news.ntv.co.jp/n/ytv/category/society/yt58668c43c4e0417daf6b9d4f0fcb9061
■Woman type
離婚後の共同親権は「弱肉強食」を加速させる? すべての女性にとって「ひとごと」ではない男女不平等政治の闇
https://woman-type.jp/wt/feature/34221/
■アゴラ
上野千鶴子先生が大炎上:「日本の男に共同親権は百年早い」の?
https://agora-web.jp/archives/240517225058.html
■ガジェット通信
共同親権に関する上野千鶴子さんのコメントに田端信太郎さん
「この意見がありなら、『子どもを産んだことないBBAが親権を語るのは100年早い』も同じだろう」
https://getnews.jp/archives/3529486/gate
■赤旗新聞
共同親権 個人尊重に背
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik24/2024-05-18/2024051801_02_0.html
「共同親権」 DV・虐待被害者 置き去り
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik24/2024-05-17/2024051701_01_0.html
「共同親権」“子どものためにならない”傍聴者が批判
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik24/2024-05-17/2024051701_02_0.html
<国際>
■BBC NEWS JAPAN
「元配偶者に子供を取られた」……日本で離婚後の共同親権導入へ
https://www.bbc.com/japanese/articles/cv26g97dz4wo
’My ex took my children’: Hope for divorced parents as Japan to allow joint child custody
(「元夫が子供を連れて行った」:日本が子供の共同親権を認めることで離婚した両親に期待)
https://www.bbc.com/news/world-asia-69025215
■ARAB NEWS
離婚後の共同親権を認める法改正
https://www.arabnews.jp/article/japan/article_119430/
■ABC NEWS
Japan passes a revised law allowing joint child custody for divorced parents for the first time
(日本、離婚した両親の共同親権を初めて認める改正法を可決)
https://abcnews.go.com/International/wireStory/japan-passes-revised-law-allowing-joint-child-custody-110330983
■Fox News
Japan revises nearly 80-year-old law, allowing joint custody for divorced parents by 2026
(日本、約80年の歴史ある法律を改正、2026年までに離婚した親の共同親権を認める)
https://www.foxnews.com/world/japan-revises-80-year-old-law-allowing-joint-custody-divorced-parents-2026
<動画>
■NHK
離婚後の「共同親権」導入へ DVや虐待の懸念など払拭できるか
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240518/k10014452881000.html
■日テレ NEWS
【解説】離婚後の親権 77年ぶりの見直し “共同親権”導入で何が変わる?
https://news.ntv.co.jp/category/society/e4f08b52a12d41ccb4ade37118d7eefa
【速報】離婚後の「共同親権」を可能とする改正民法が可決・成立
https://news.ntv.co.jp/category/society/61d4fd0bf56a440cb2cdb978dd796fba
■TBS NEWS DIG
離婚後の「共同親権」導入へ 歓迎と不安の声 運用面の今後の課題は?
先行するオーストラリアで起きている問題点とは?【報道特集】
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1178032?display=1
【速報】「共同親権」導入を柱とした改正民法が成立
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1175572?display=1
離婚後の「共同親権」導入の民法改正案、きょう成立へ
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1175369?display=1
■カンテレNEWS
共同親権に賛否 離婚後も子どもの養育は共同で 親権を奪い合うから連れ去りも起きる?
DVや虐待のリスクを家庭裁判所が見抜けるかどうかが課題に
https://www.youtube.com/watch?v=tYSl8w6fow8
■テレ朝
「共同親権」法案 参院の法務委で可決 17日成立 2026年までに施行へ
https://news.tv-asahi.co.jp/news_politics/articles/000349715.html
【速報】離婚後の「共同親権」導入を盛り込んだ改正民法 参議院本会議で可決成立
https://www.home-tv.co.jp/news/content/?news_id=000349888
■共同通信
【速報】離婚後の共同親権が成立 父母の協議で選択可能に
https://www.47news.jp/10934106.html
◆毎日新聞『離婚後の共同親権、超党派議連が法相に要望 「親として当然の責務」』
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父母の離婚後の子の養育を巡り、超党派の「共同養育支援議員連盟」(会長・柴山昌彦元文部科学相)は22日、離婚後の共同親権を認める制度の導入を求める提言書を古川禎久法相に提出した。
現行民法は、父母が離婚した場合、いずれかが親権者となる「単独親権」を採用する。法制審議会(法相の諮問機関)は現在、父母の離婚に伴う子の養育や親権のあり方について見直しの議論をしている。
議連は提言で、離婚後も父母双方が子の養育に関わって責任を果たすことは「親としての当然の責務で、国際的潮流だ」と指摘。離婚の原因にDV(家庭内暴力)があるような例外的な場合を除いて、離婚後も共同親権・共同養育を認める検討を進めるよう訴えている。
また、父母が離婚した子の健全な成長のためには、確実な養育費の支払いと安全・安心な親子交流の実施が「車の両輪のように不可欠」とし、両者のいずれかを優先するのではなく、足並みをそろえて検討を進めることも求めた。
古川法相は「何よりも子の利益の観点が一番大事。政府全体で取り組んでいく大きな課題だ」と述べた
◆SAKISHIRU『「子どもの連れ去りは未成年者略取罪」 警察庁が明言、共同養育支援議連で』
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親の離婚後の子どもの養育に関する問題の解消に取り組む超党派の共同養育支援議員連盟(柴山昌彦会長、三谷英弘事務局長)の総会が3日、東京・永田町の衆議院第2議員会館で開かれ、20名以上の議員が参加した。法務省、警察庁、最高裁、内閣府、厚労省、総務省、文科省、外務省の担当者が出席し、各省庁での取り組みを報告した。(これまでの議連については、アゴラ拙稿「共同養育・共同親権に向けて、超党派で動きが活発に」参照)
総会は非公開で行われたが、柴山会長は終了後、報道陣への説明で、「一方の親の子どもの連れ去りについて、これまで『法に基づき処理』の一辺倒だった警察庁が『正当な理由のない限り未成年者略取罪に当たる』と明言し、それを現場に徹底すると答えた」と会の成果を語った。
「連れ去り」現場の警察官が対応しやすく
日本は両親の離婚の際に、子どもの親権がどちらか一方の親のみに決められる単独親権制で、親権の獲得を有利に進めようと、一方の親の同意なく子どもを連れ去り別居する行為が横行している。これまでは、こうした「連れ去り」の行為については、刑法で有罪とした例は公刊物の中では見当たらないと最高裁は回答していた。ところが、連れ去られた側の親が連れ去られた子どもを「連れ戻す」場合には未成年者略取罪として逮捕される例も多く、アンバランスな状態が続いてきた。「連れ去り」行為には、子どもも知らない第三者が介入して、まさに誘拐のように突然連れ去られる例などもあり問題となっているが、現場の警察署員もこれまでに判例もなく、「助けたくても手が出せない状況もあった」という声も届いていた。
しかし今回、警察庁が「未成年者略取罪に当たる」と踏み込んだことで、「連れ去り」に対する現場での警察の対応がしやすくなり、抑止力が働くようになるのではと期待が寄せられる。
日仏当局の協議も開催へ
議連ではほかにも、DV防止法の改正に伴い、「精神的DVの要件を明確にする必要がある」ことと「加害者とされた者の手続きの保障の必要性」の確認が度々なされたという。これについては、親子の面会交流を実現する全国ネットワーク(親子ネット)が、子どもを連れ去り、長期に及び子どもと引き離す行為も「精神的DV」と定義することを要望している。
また、子どもの連れ去り問題の日本政府の対応はEUからの非難決議など、国際社会からも批判を受けてきた。
先般、フランスの大使館員の子どもが「連れ去り」にあったことや、マクロン大統領からの要望があったことを踏まえ、外務省は近日中に日仏当局間で協議することになったと明かした。
法務省の法制審議会の家族法制部会(関連拙稿:共同親権」導入も議論:離婚後の養育をめぐる課題解消に向け、上川法相が法制審に諮問)の会議が11回目まで終了しているが、同省の担当者は、次回から2巡目の検討に入り、今年中に中間とりまとめを行い、その後最終答申に入るといったスケジュールを表明したという。柴山会長は「意欲を示してもらったのは前進だと思う」と述べた。
柴山会長は、議連の働きかけに手ごたえを感じている様子で、「議連として今後、申し入れなど積極的に行っていく」と意欲を示していた。
◆Hanada『実子誘拐を黙殺する日本のメディア』
記事はこちら
「私の子供たちは日本で誘拐されています」。メダルラッシュに沸いた東京オリンピックの陰で、命がけのハンストを行っていたフランス人男性、ヴィンセント・フィショ氏。BBCをはじめ、海外メディアが続々とこの問題を報道するなか、日本のメディアは「報道しない自由」を行使。日本の司法は腐っているが、日本のメディアも腐っている――。
日本は子どもの拉致国家
親子が片方の親によって一方的に引き離されている状態は、子どもの権利を侵害している。1989年に国連総会で採択され、1990年に国際条約として発効した「児童の権利条約(子どもの権利条約)」に、日本は1994年に批准しているが、その9条1項には「児童がその父母の意思に反してその父母から分離されないことを確保する」と定められている。
また、9条3項は「児童の最善の利益に反する場合を除くほか、父母の一方又は双方から分離されている児童が定期的に父母のいずれとも人的な関係及び直接の接触を維持する権利を尊重する」と定めている。子どもの連れ去り、そしてその後の親子の断絶は、明らかに国際条約違反だ。
「子どもの権利を守ってほしい」
これまでヴィンセント氏は、さまざまな法的行為を試してきた。日本の警察や司法には頼れないと知ると、EUや欧州議会に訴えるほか、2019年にはフランスのマクロン大統領にも面会し、支援を求めた。マクロン大統領は、ヴィンセント氏の訴えを受理し、日本に抗議した。しかし、事態はいっこうに改善しない。
その間にも、妻側が提起した離婚裁判は粛々と進み、年内には判決が出る見通しとなった。ヴィンセント氏は、今は子どもの親権者だが、裁判で離婚が成立すると、監護権をもつ妻が子どもの単独親権者となってしまう。
婚姻中で共同親権の状態にある今でさえ夫に子どもを会わせない妻が、単独親権者となってから、子どもを会わせるようになるとは思えない。ヴィンセント氏は危機感を募らせた。
そこで始めたハンガーストライキ。
ヴィンセント氏を支えるハンガーストライキ支援事務局によれば、このプロジェクトの立ち上がりは今年4月。オリンピックのタイミングに合わせてハンガーストライキを行うことで注目を集め、日本における子どもの権利侵害を広く訴えようと考えた。
◆日本経済新聞
【パリ=白石透冴】フランスのマクロン大統領は23日の来日時に、国際結婚が破綻した後に起きる子供の親権問題について日本側と討議する。フランスでは日本の制度は子供の連れ去りを容認しているとの指摘があり、問題意識を共有する。
仏大統領府関係者が明かした。東京五輪開会式出席のため来日し菅義偉首相とも会談する予定だが「日本が決めるべき事柄だが、日本当局と解決策を探る」(大統領府)という。配偶者に子供を連れ去られたとしてフランス人男性が10日から都内でハンガーストライキをしており、仏政府も関心を高めている。
日本の民法は原則、離婚後の親権は片方の親が持つという「単独親権」の考え方を取る。ただ片方の親が無断で子供を連れ去って親権を主張し、他方の親が泣き寝入りするという問題につながっている。フランスでは離婚後も両方の親が親権を持つ共同親権が基本となっている。
各社記事
◆東京新聞
マクロン大統領が来日、東京五輪開会式に出席 日仏首脳会談で共同親権問題も協議へ
◆時事ドットコムニュース
「子連れ去り」協議へ 東京五輪で訪日時―仏大統領
NHK News web「パパとママ どっちがいい?」に弊会代表武田の共同親権に関するコメントが掲載されました
子どもと別れて暮らす親たちでつくる団体「親子の面会交流を実現する全国ネットワーク」の武田典久代表は、共同親権の導入を訴えている。
武田代表
「親権を失った親は、親権を持つ方の言うことに従う形となり、子どもとの面会も制限される。私たちは月1回、2時間、近所の公園で遊ぶだけの親戚のおじさんみたいになりたいわけじゃないんです。うれしいことも悲しいことも含めて育ちに関わりたい。それが親の役割ですから」
武田代表は「単独親権制度の下、親権をめぐる争いが激しくなった結果、一方の親による“子どもの連れ去り”が多発している」と主張する。
最近は、父親だけでなく、母親からの相談も急増していて、母親の会員数も3年前の3倍に上っているという。「実際に子どもと一緒にいる親の方が親権を取りやすい傾向があるため、“子を連れ去ったらお父さんでも親権を取れる”とネット上で流布されているのも大きい」。武田代表はこう分析している。
裁判所の親権の決め方にも武田代表は注文をつける。
武田代表
「それまで誰が主に子育てを担っていたかは考慮されず、“連れ去り”の追認のような判断が機械的に行われている。単独親権が生み出す『離婚は親子の別れ』という日本の文化を変えるために共同親権が必要だ」
◆日本経済
配偶者と別れても子育てに関与し続けたい。そう考える親にとって、離婚後は父母のいずれかしか親権が持てない「単独親権」制度が壁となる場合がある。親権者によって面会などが制限され、最近は新型コロナウイルスも影を落とす。一方で「共同親権」には慎重論も根強い。子ども第一の視点でどうあるべきか。国も議論を始めた。
◆Yahoo!ニュース
親権をもてなかった母親への冷たい視線――子どもと別居する苦しさと葛藤
毎年、20万から25万件で推移する離婚件数。子どもの親権はたいてい母親がもつが、父親のケースもある。この場合、親権をもたなかった母親に対してさまざまな憶測が飛び交う。「子どもがなつかなかったのでは」「何か悪いことをしたのでは」……。親権をもたない父親に比べて手厳しい。なぜ「別居母親」は批判的な目で見られがちなのか。2人の当事者から話を聞き、実態を探った。(取材・文:上條まゆみ/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
「別居母親」は少数派
中部地方に住む西川千佳さん(仮名、47)は、16歳と13歳の娘の母親だ。11年前に離婚し、子どもたちとは別居している。
「本当は子どもの親権をもち、一緒に暮らしたかったのですが、無知と不運が重なって、親権を元夫にとられてしまいました」
厚生労働省の調査によると、令和元年の離婚件数は20万8496組。そのうち未成年の子どもがいるのは11万8664組で、20万5972人の子どもが親の離婚に巻き込まれている。
日本の法律では、離婚後の子どもの親権は父親か母親のどちらかがもつことになるが、調停で母親が親権をとる割合は90%以上。離婚後、ほとんどの子どもが母親に引き取られている。
千佳さんは30歳のとき、社会人サークルで出会った一つ年上の男性と結婚した。おだやかで友だちを大事にしていて、信頼できる人だと感じた。
元夫は、父や妹とともに家族で工場を経営していた。母親は離婚して、家を出ていた。
自営業の家に嫁ぐことに千佳さんはある程度の覚悟をしていたが、実際は想像以上に息苦しかった。
「財布は義父が握っており、私は食費を渡されるだけ。それも月何万とかじゃなく、はい1万、はい3万みたいにその都度もらっていました。『なくなったら言えよ』と言われていましたけど、やっぱり言いにくいんですよね。買い物に行く店も決められていたし、主婦として家庭を切り盛りする自由はまったくありませんでした」
子どもが生まれてからも、義父の支配は続いた。
「今日は散歩に行けとか、いまから公園に行けとかタイムスケジュールまで決めてくる。その一方で、工場の事務の仕事も変わらずこなせ、と。私が子どもを保育園に預けたいと言ったら、『母親失格だ』と責められました」
たまの休みに、どこに遊びに行くかも義父の指示。家族4人、水入らずで出かけたことはほとんどない。「実家と縁を切れ」とも言われた。次女の出産のあと、正月に実家に帰ることも許してくれなかった。
娘を連れて家を出る
義父と離れて家族4人で暮らしたい。元夫に訴えたが、「考えてみるね」と言うだけだった。千佳さんはたまりかねて、実家に子どもを連れて帰った。
「長女の(幼稚園が)春休み中のことでした。家出という強硬手段に出れば、元夫も真剣に向き合ってくれると思ったんです」
しかし、元夫からは何の連絡もない。千佳さんは、新学期の始まりに合わせ、とりあえず子どもだけ家に帰した。次女の入園式には夫婦そろって参列したが、翌日から元夫と連絡がとれなくなった。
メールをしても電話をかけても無反応。焦った千佳さんは、慌てて家に戻った。家の中に入ろうとすると、義父と義妹に「もう帰ってくるな!」と追い返された。元夫は見て見ぬふりをしていた。
千佳さんはしばらく実家で呆然と過ごした。子どもに会えない状況を変えるため、弁護士に相談した。そして、家庭裁判所に夫婦円満調停(夫婦関係調整調停)と、子どもの引き渡しおよび監護者の指定を申し立てた。監護者とは、子どもを引き取り、生活をともにし、身のまわりの世話をする人のことだ。
それらの手続きと並行して仕事を探し、総合病院の事務職として働き始めた。子どもを引き取るつもりだったので、時間に融通のきく職場を選んだ。しかし、千佳さんの思いとは裏腹に、娘2人を引き取ることはできなかった。
知らなかった調停のルール
家庭裁判所が親権者や監護権者を決めるときの基準の一つに「母性優先の原則」がある。その一方で、「監護の継続性の原則」も重視される。これは、これまでに子どもが育ってきた環境を継続したほうがいいという考え方だ。
そのほか、経済状況を含めた監護態勢や、兄弟・姉妹は一緒に育てたほうが子どもにとっては利益があるという事情(兄弟姉妹不分離の原則)も勘案される。
千佳さんが子どもを引き取れなかったのは、「監護の継続性の原則」などが適用されたからだ。2人の娘は祖父、叔母、父親と安定して暮らしている。どちらか1人を千佳さんが引き取るのも望ましくない。
千佳さんは自分が調停を起こすまで、そのような原則があることを知らなかった。
「子どもを誰がどこで育てるのかを、いちから決めるのが調停だと思っていました。子どもをいったん家に帰してしまった時点で、すでに負けレースだったなんて……」
子どもと暮らすつもりで選んだ職場はシングルマザーが多く、話題は子どものことばかりだった。
「シングル家庭が大変だということはよくわかるのですが、私には、愚痴が全部、自慢話に聞こえてしまうんです。私だって子育ての苦労を味わいたかった……」
同僚は親切で、千佳さんの事情についてはふれてこなかった。しかし、同僚の心の中に「なぜ子どもを引き取れなかったの?」という思いがあるのが透けて見えた。
「もちろん、私に直接、そういうことを言ってくる人はいません。でも、たとえば、有名人の離婚問題が話題になったときなどに、(親権をもたない母親に対して)『母親なのに』といった世間の本音がわかるんです」
自信が生まれ前向きに
千佳さんは調停の結果、子どもと月1回の面会交流が認められた。その後、離婚が成立。元夫が親権者となり、千佳さんは月4万円の養育費を払うことになった。子どものために、それに5000円上乗せして払っている。
「調停もあって子どもとは8カ月も会えませんでした。その後も、相手方の都合で面会交流は年1回程度、しかも相手家族の監視付き。母子だけで月1回コンスタントに会えるようになったのは、別居から4年経ってからです。面会交流で久しぶりに会えるというとき、私としては話が盛り上がらないんじゃないか、拒否されるんじゃないかって不安でいっぱいだったんです。でも、子どもたちは昨日まで一緒にいたかのような勢いで、『やあ!』ってふつうに接してくれたんです」
その後の面会交流もごく自然に、ごはんを食べて、買い物をして、学校の話を聞いたりした。そうした交流を繰り返していくうちに、千佳さんの中に「ああ、もうこの子たちから私の存在が消えることはないんだ」という自信のようなものが湧いてきた。お乳を飲ませ、添い寝をし、抱きしめてきた母親の肌の記憶は、子どもたちから消えることはないと考えるようになった。
離れて暮らしてはいるけれど、子どもたちの中にしっかりと母親が息づいている。そう気づいてから千佳さんは、人生を前向きに考えられるようになった。
「子どもが誇らしいと思える母親になりたい。困ったとき頼れる母親でいたい」
日々、その気持ちを胸において生きる千佳さんは、まぎれもなく「子育て」をしている。
「母親なのに」世間の視線に傷つく
「親権を欲した母親が、親権をもてないのはつらいでしょう。でも乳幼児は母親が衣食住の世話をするべきという『3歳児神話』は、真実ではありません。愛情をもって接してくれる大人がいれば、父親でも母親でも保育者でも、きちんと子どもは育ちます」
そう話すのは、母性研究の第一人者として知られる大日向雅美さん(恵泉女学園大学学長)。長年、女性のライフスタイルや子育てについて研究し、母親の役割の重要性を過度に強調する傾向に警鐘を鳴らしてきた。
さまざまな事情で子どもを手元で育てられない母親も、ある意味、「母性愛神話」の被害者だ。「母親なのに」「母親のくせに」という世間の視線に深く傷つく母親も多い。
矢代早希さん(仮名、41)もまた、娘(12)と別居していることに苦しんできた母親だ。
元夫は、早希さんに暴力を振るったが、娘には優しかった。娘は当時3歳。離婚しても一緒に子育てをしていこうと話し合い、最終的に元夫が親権をもち、早希さんが監護権をもつことにした。親権者と監護権者は一致することが多いが、別々になることもある。
早希さんはアパートを借り、娘と2人で暮らし始めた。定期的に面会交流を行い、週末には娘が元夫の家に泊まることもあった。
4カ月後、元夫が復縁を求めてきた。早希さんが断ると、元夫は娘を帰してくれなくなった。
「(自分のところに)戻ってこないなら、もう娘を会わせないよ、って。実際、それから3カ月間、私は娘と会えませんでした」
耐えられなくなった早希さんは、家庭裁判所に面会交流と親権者変更の調停を申し立てた。しかし、その時点ですでに元夫と娘が数カ月間、問題なく暮らしていることから「監護の継続性の原則」が重視され、親権者変更は認められなかった。
「面会交流は認められましたが、わずか月2回でした。まわりの人たちに『これでも相場より多いんだよ』と慰められましたが、私には全然、足りなかった。それまで毎日一緒にいたのに。まさに片腕をもぎ取られるような痛みを味わいました」
家族連れを見るのがつらくて、ショッピングモールに行けなくなった。スーパーで幼い子どもの「ママ!」という声を聞くと思わず振り返った。
「まさか元夫がこういう形で親権を振りかざしてくるとは思いませんでした。でも、それを見抜けなかったこと、復縁を断ったことは、私のせい。すべて私が悪いんだと思ってしまい、自分のすべてに自信がなくなりました」
狭い田舎町はうわさがすぐに広まる。なぜ子どもと離れて住んでいるのか、弁解の機会もないまま、早希さんは「訳ありな母親」と見られた。仕事相手の男性と喫茶店で打ち合わせをしている姿を目撃され、不貞を疑われたりもした。
保育所のママ友のほとんどは、早希さんから離れていった。詳しい事情がわからず、どう接していいのかわからなかったのかもしれない。
「いちばん傷ついたのは、『私だったら耐えられない』『私だったら死んでしまう』という言葉でした。耐えられなくても耐えるしかないし、そう簡単に人間って死ねないですよ」
「幸せなお母さん」になるしかない
早希さんは町から引っ越すことも考えた。しかし、娘のそばを離れるわけにはいかず、堂々と生きていくことを選択した。
「『相手が悪い』『社会が悪い』と泣いて、かわいそうなお母さんでいればいるほど、世間から『本当に?』『実はあなたも悪いんじゃないの?』とツッコミが入る。何をしていても、どうせ言われてしまうなら、誰から見ても幸せなお母さんになるしかないと思ったんです」
離れて暮らしていても子どもといい関係が築けるよう、子育てやコミュニケーション術を学んだ。やりがいのある仕事につけるよう、自己研鑽にも励んだ。
別居母親同士が集まる自助会にも参加し、面会交流支援にもかかわった。いまは母親の自立と親子のコミュニケーションを手助けする活動をしている。
「別居母親という超絶マイノリティーだけど、子どもも仕事も自分の時間も全部ある。こんな幸せな生き方はないって実感しています」
早希さんは3年ほど前、元夫と週交代での共同養育が実現した。パパともママとも仲良くしたいという娘の希望が叶えられた形だ。早希さんもこのスタイルに納得している。
多様化する子育て
家族のかたちは一つではない。母親のありようはさまざまだ。かつて、子どもを保育所に預けて仕事をする母親を「育児放棄」と蔑む時代もあった。前出の大日向学長はこう語る。
「彼女たちが語ってくれた物語には胸が痛みましたが、こうして声を上げてくださったことで社会に一石を投じることができたのではないかと思うんです。『育児がつらい』という母親の声から子育て支援が生まれたように、当事者が声をあげ、その苦しみが明るみに出ることから、社会は確実に変わっていくでしょう」
多様な子育てのあり方を認め合うことが、別居母親を差別から救う。偏見の目で見られがちな子どもも救う。不意にどんなことが起こっても、誰もが生きやすい社会が求められている。
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◆産経新聞
離婚や別居に伴う子供の引き渡しをめぐり、裁判所の執行官が司法判断に従わない親から子供を直接連れ戻すために昨年末までの過去5年間で対応した計477件の強制執行のうち、連れ戻しに「成功」したのは約3割にとどまることが22日、最高裁の調べで分かった。昨年4月の法改正で同居中の親が不在でも執行可能となったが、現場では困難も多く、法の実効性が問われている
◇
子供の監護の問題に詳しい谷英樹弁護士(大阪弁護士会)は「同居する親との生活に慣れ、長く離れたもう片方の親との新たな生活について不安を抱く子供は多い。面会交流を十分に保障して子供の不安を解消するなど、子の利益を最優先にする工夫をし、改正法の実効性を高めるべきだ」としている。
◇
女性は、娘の引き渡しを求める審判を家裁に申し立て、令和元年5月に「監護権者は妻」とする判決が大阪高裁で確定。だが夫は従わず、同年9月に確定した1日1万円の支払いを課す間接強制決定にも、「娘は自分の意思で(夫の下に)とどまっている」と支払いを拒み続けている。
執行官による直接強制は2度行われたが、「娘が泣いている」などの夫の訴えでいずれも失敗した。
女性は京都地裁に人身保護請求も行い、娘の引き渡しを命じる判決が出た。今年1月には、ツイッターへの投稿が名誉毀(き)損(そん)罪などに当たるとして告訴したが、状況は好転していない。
女性は「これは誘拐と同じ。監護権者は私なのに。法や仕組みに何か不備があるのでは」とし、「娘の心が離れないうちに連れ戻したい。法的に正しい側が、泣き寝入りしない世の中であってほしい」と願っている。
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別居した夫、妻双方からの取材に基づいた画期的な記事です。
◆AERAdot.
【実録】「子の連れ去り」をめぐる夫婦それぞれの言い分 <夫編>
【実録】「子の連れ去り」をめぐる夫婦それぞれの言い分 <妻編>
是非、コメント・レビューもお願い致します。
<夫編>https://dot.asahi.com/dot/2021021200080.html#ulCommentWidget
<妻編>https://dot.asahi.com/dot/2021021200081.html#ulCommentWidget
記事を書いて頂いた編集部の方に、励ましと感謝の言葉を送りましょう。
世間の風向きが重要です。
https://publications.asahi.com/company/contact/
→ 「AERA dot.へのお問い合わせ」より
2月10日、離婚後の子の養育に関わる家族法の見直しを上川法務大臣が法制審議会に諮問しました。
法制審諮問当日、弊会、結の会などの当事者約150名が法務省前に集まり、『よろしくお願いします活動』を実施しました。
法制審総会が終わった後、議員会館に移動、全国会議員の先生方に家族法見直しが法制審議会に諮問されたことをお知らせし、引き続き、ご支援いただけるようお願いをしました。
多くの議員の先生方の激励にお越しいただき、また、多くのメデイアのみなさまに取材にお越しいただきましたこと、御礼を申し上げます。
また、何よりも、平日の日中にご参集いただいた当事者のみなさま、当事者の声掛け、当日の諸準備含め、ご支援いただいたみなさまに改めて御礼を申し上げます。
「子どもの最善の利益」実現のため、引き続きのご理解、ご協力をお願いします。
■当事者アクションの紹介記事
◆朝日新聞
◆アゴラ
「共同親権」導入も議論:離婚後の養育をめぐる課題解消に向け、上川法相が法制審に諮問(2/13)
http://agora-web.jp/archives/2050221.html
■その他、多くのメデイアで取り上げられています。
◆共同通信
養育費不払い解消へ法制審に諮問 面会交流や共同親権も議論(2/10)
https://news.yahoo.co.jp/articles/93187e63ab38c30f21934c2e1f71fda0376fcaed
◆ロイター
養育費不払い解消へ法制審に諮問(2/10)
https://jp.reuters.com/article/idJP2021021001001435
◆毎日新聞
養育費不払い解消策を法制審に諮問 「共同親権」も議論へ(2/10)
https://mainichi.jp/articles/20210210/k00/00m/010/155000c
◆FNNプライムオンライン
【速報】離婚後の養育費 強制徴収も “不払い”改善 家族法改正諮問(2/10)
https://news.yahoo.co.jp/articles/d029db0c39d1d830f89a35924c6b8bacedf11b9f
◆TBS
母子世帯の受け取りは2割 養育費不払い問題 家族法見直しへ(2/10)
https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4195579.html
◆テレビ朝日
子どもの養育費問題を解消へ(2/10)
https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000206751.html
◆NHK
離婚後の養育めぐる課題解消に向け制度見直しを諮問 上川法相(2/10)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210210/k10012859401000.html
「離婚後の養育費・親権 制度をどうすべき?」(ここに注目!)(2/10) https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/300/443398.html
◆時事通信
養育費請求権の明記検討へ 財産分与見直しも―法制審(2/10)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021021000895&g=soc
◆東京新聞
養育費不払い解消へ法制審に諮問 面会交流や共同親権も議論(2/10)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/85175/
◆日本経済新聞
離婚後の養育費、民法に請求権明記検討(2/11)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO69034030Q1A210C2PP8000/
◆読売新聞
離婚関連規定見直し 諮問 法制審に 養育費不払い問題など(2/11)
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20210211-OYT1T50074/
◆産経新聞
養育費不払い解消 法整備 法制審に諮問 共同親権も議論へ(2/11)
◆中日新聞
養育費不払い解消策、諮問 法制審議会(2/11)
弊会代表 武田がゲスト出演し、面会交流について解説・コメントしました
◆ABEMA Prime『子に会えない親たちの後悔と葛藤とは?約束した面会交流が実現しないワケ』
https://abema.tv/video/episode/89-66_s99_p2509
子どもと離れて暮らす親たちを取材。それぞれの事情である日突然、会えなくなった当事者の思いは?離婚するカップルが増える中、潜む課題を議論します
◆ABEMA TIMES『取り決めが守られず、離婚・別居中の子どもに会えない親たち…日本の「面会交流」の課題とは』
(上記動画の記事版)
◆47NEWS
「お父さん、次はいつ会える?」自由な面会求め、子どもが国を提訴
夫婦の離婚などで一緒に住めなくなった親子をつなぐ「面会交流」。2020年11月、別居中の親子ら17人が「法の不備で自由に面会交流できないのは憲法違反だ」と、東京地裁に国家賠償請求訴訟を起こした。これまでも同種の訴訟はあったが、子どもが原告に加わるのは初めて。「お父さん、次はいつ会える?」。原告たちは取材に、幼い頃に家族がばらばらになり、心に負った深い傷を明かしてくれた。背景には親の立場を重視し、片方にしか親権を認めない「単独親権」という法的枠組みがあり、国は見直しに慎重だ。他方、子どもの権利を尊重し、先んじて面会交流支援に乗り出した自治体もある。(共同通信=寺田佳代)
▽離れ離れの生活がフラッシュバック
「もっと面会交流が多く実施されていれば、ここまで苦しまなかったかも」。原告の一人の千葉県の男性(20)は提訴後に記者会見し、家族と会いたくても会えなかった過去を振り返り、せきを切ったように話した。
2011年、両親が不仲となり、男性は弟と一緒に千葉県の自宅から母の実家がある北海道へ連れて行かれた。当初は新生活にわくわくしていたが、やがて千葉にいる父や友人を思い出し「今はどうしているのか」と不安が募った。中学進学後、気づけば学校に通えなくなっていた。独りで千葉の父親の元へ戻ったが、母側代理人から面会を拒絶され、今度は弟とも会えなくなった。
中学3年の時に再び北海道に戻ると、母は知らない男性と一緒に住んでいた。母は外泊も多く、弟が家で1人の日も多かったという。 現在は父側に親権が認められ、父と弟と3人で暮らす。だが家族が離れ離れだった昔の生活のフラッシュバックに苦しみ、動悸(どうき)も激しくなるという。弟も育児放棄などによる精神的ダメージを受けたとみられ、今年9月に兄弟ともに心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断された。
男性は「当時は、『父に会いたい』と言うことが、母の負担になるのではないか、と思っていた」と話す。「自由に面会できれば素直に本音がさらけ出せたかもしれない。離れていても、家族に気持ちを伝えたい瞬間はあるはず」と訴えた。
▽離婚、次第に会えなくなり…
12歳の中学1年の男子生徒も、提訴前に取材に応じてくれた。原告最年少だ。10年前に両親が離婚し母親に引き取られたが、父親とは月1回会っていた。朝、生徒の家の最寄り駅に待ち合わせ、街をぶらぶらしながら夕方に別れるのがいつものコースだった。
ところが小学5年のころから「次はいつ会える?」と聞いてもはっきりと返事がなく、その後面会を断られることが増えた。「お父さんは信頼できる存在。面会交流の日は毎回、次も会えると思っていた」と話す。
母親によると、元夫は別の女性と再婚し、養育費の減額も求めてきたという。母親は「親の感情や状況の変化で、面会が不安定になるのは良くない。安定して会える基準がほしい」と話す。「本当はもっと会える回数を増やしたい」。生徒は心の内を漏らした。
▽世界の主流は、離婚後も双方に親権
「面会交流の頻度で1番影響を受けるのは子どもなのに、日本の法制度は、子を個人として見ておらず、意見が尊重されない」と原告側代理人の作花知志弁護士は訴える。日本の民法は、離婚すると父母の一方しか子の親権を持てない「単独親権」を採用。親権がない親は子育てに関われず、面会も十分にできないケースがよくある。
一方、海外は離婚後も父母の双方が親権を持つ「共同親権」が主流だ。法務省の調査では、欧米やアジアなどの24カ国中、日本と同様に単独親権のみの国はインドとトルコだけだった。
「離婚で親権を失い子育てに関われなくなった」、「国は共同親権制度の立法を怠った責任がある」。近年、離婚した親らが、単独親権は法の下の平等などを定めた憲法に反するとし、国に損害賠償を求める訴訟が相次いで起こされている。
共同親権導入に向け活動する「子育て改革のための共同親権プロジェクト」発起人の松村直人さん(48)は、離婚後は母側に親権が渡り女性が子育てをするケースが多いとし、「単独親権が男女不平等を招き、男性の育休取得推進や女性の活躍をうたう、時代の流れと矛盾している」と主張する。
▽「子どもに悪影響」と慎重論も
国も重い腰をあげた。2019年11月から法務省は、共同親権導入の是非について、各省庁担当者や有識者らによる「家族法研究会」を発足させ、議論を重ねている。ただ、共同親権は父母の対立や虐待、ドメスティックバイオレンス(DV)などがあった場合、問題が離婚後も持ち越されて子どもに悪影響が生じる恐れがあるとして慎重意見も根強い。
一般社団法人「ひとり親支援協会」(大阪市)の今井智洋代表理事もその一人。「元配偶者のDVやモラルハラスメントに悩み、子どもに波及することを心配するシングルマザーは多い。共同親権の導入を議論するにしても、そうしたケースへの配慮は絶対に必要だ」と話す。一方で「離婚後も父母がともに子育てにかかわる『共同養育』がうまく行くケースもある。子どもの権利である養育費の確保は大前提の上、離婚前後の状況によって面会交流を個々に検討できる仕組み作りが大切」と指摘する。
▽自治体が面会支援に汗
直接の話し合いが難しい両親の間に入る形で面会交流を支援しようと、新たな取り組みを始めた自治体がある。兵庫県明石市は市内の中学生以下の子どもを対象に、別居の親との面会交流を深める場として、市立天文科学館を無料で観覧できる事業を実施。また親子交流支援アドバイザーらが面会の日程調整などを助け、2017年以降、17組の親子が170回以上面会したという。
厚生労働省も自治体による面会場所のあっせんや付き添いなどの支援事業費を補助。18年は9自治体が利用した。明石市の担当者は「なかなか他の自治体が後に続いていないのが実情。子どもが精神的にも経済的にも影響を受けないよう、国や県はもっと体制づくりをしてほしい」と話す。
早稲田大の棚村政行教授(家族法)は、親同士の対立から子を守る視点で、支援者の養成や行政の助成が必要だと指摘。親の立場を基に、親権制度を発想している日本の実情を踏まえ「単独親権と共同親権の選択制が適しているのではないか」と話している。
◆千葉日報
新型コロナ、別居親子の「面会交流」にも影響 感染防止で拒否され… わが子に会えぬ親、悲痛な訴え
収束のめどが立たない新型コロナウイルスは、離婚などにより別居する親子らが定期的に会う「面会交流」にも影響を及ぼしている。感染防止を理由に子どもと同居する配偶者から面会を拒否されるケースが多く、オンラインでの交流ができなくなっている人もいる。「わが子がどのような環境に置かれているのか分からない」と親からは悲痛な声が上がっている。
13日、千葉市中央区のJR千葉駅前。オレンジ色のジャンパーやズボン、マスクを身に着けた県内外の約20人が集まり、離婚後も両親がともに子どもの親権者となる「共同親権制度」の導入を街頭で呼び掛けた。
会場には夫や妻との離婚は成立していないものの別居中で、子どもとの面会交流が途絶えている人の姿も。市原市内の実家に身を寄せている30代女性は、会員制交流サイト(SNS)で街頭活動を知り母親と参加した。
女性は東京都内で夫と子ども2人の4人で暮らしていたが、今年1月に子どもたちと引き離された。弁護士を依頼し夫側と協議した結果、2、3月に子どもたちと面会できた。だが、4、5月は新型コロナを理由に会わせてもらえなかった。
6月以降は直接会ったりテレビ電話で子どもたちの様子を知ることができたが、11月中旬の面会を最後にテレビ電話での交流も一方的に打ち切られてしまった。女性は「長男とは生後3カ月で別れた。2人の誕生日を祝うこともできず、今はどのような状況にいるのか全く分からない」と苦しい胸の内を明かした。
茨城県から駆け付けた40代男性も長女と交流できない状態が続いている。長女とは今年3月まで定期的に面会してきた。4月に入ると新型コロナの感染拡大に伴う緊急事態宣言が出され、妻側は宣言発令などを理由に面会を拒否してきた。
男性は長女とのオンラインでの面会交流や携帯電話での会話を求めたものの、実現していないという。11月、別居中の親子らが法の不備で自由に面会交流できないのは違憲として、国家賠償請求訴訟を起こした。男性は訴訟の原告の一人で「コロナの感染拡大を機に子どもとの交流を断絶させられている人は多い」と指摘する。
千葉県内の40代男性は4年前から3人の子どもと別居している。子どもたちとは1カ月に2回の面会交流が決まっていたが、今は自由に会えていないという。
子どもたちは近くに住んでおり、公共交通機関は使わず自分の車で送迎するなど感染対策には注意を払ってきた。それでも、妻は感染防止を理由に子どもに会わせるのを拒否。男性はオンラインでの面会交流も検討したというが「1回でもオンラインで面会すれば、そのまま会う機会がなくなり、ビデオ通話だけで済まされてしまうかもしれない」と不安を口にした。
「第203回国会 欧州連合欧州議会本会議より、我が国での子の連れ去りに関する決議が採択され、「子どもへの重大な虐待」と強調されたことに関する質問主意書」
【質問主意書抜粋】
我が国は、米国務省より所謂ハーグ条約に基づく義務の不履行国に認定されております。国連の児童の権利委員会より、両親が離婚後も「共同養育権」を行使できるよう、勧告されております。そして、本年七月八日、欧州議会本会議は、我が国での親による子供の連れ去りから生じる子供の健康や幸福への影響について懸念を表明し、我が国に対して、ハーグ条約を履行し、「共同親権」を認めるよう国内法の改正を促す決議を賛成多数で採択しました。これらを受けて、以下質問します
一
平成二十九年の人口動態統計の確定数(厚生労働省)によると、およそ三組に一組が離婚し、毎年二十万人以上の未成年の子供が親の離婚を経験します。離婚後の単独親権制度を採用する我が国では、離婚に伴う子供の親権・監護権争いを優位に進めるために、婚姻中における一方の親の同意なしでの子の連れ去り別居とそのあとの親子引き離しが絶えません。往々にして、弁護士が子の連れ去りを指南していることも多く、欧州議会本会議はこれらを問題視しております。第百八十五回国会(臨時会)参質第一八号でも、同じことが議論されており、チルドレンファーストの考えで、離婚後の単独親権制度を見直す考えはありますか。
二
子供と会えなくなった別居親の中には自殺を選ぶ者も後を断ちません。兵庫県明石市は地方自治体として、積極的に離婚後の親子関係の維持に取り組んでいます。各地にて、現状を改善したい多くの別居親が、陳情・請願を試みています。少子化対策と同様に政府は、離婚後の親子関係の維持に前向きな見解を地方自治体に向けて示すべきだと考えます。政府の見解を求めます
三
内閣府は両親揃った育児を重要視しております。例えば、里帰り出産などで母親が産まれたばかりの子供と共に実家に留まり、母親が母方の祖父母と共に子供を独占する、挙句に離婚を主張して離婚となった場合、育児の意思を持つ父親は何もできない実態があります。
厚生労働省の児童虐待の定義よりネグレクトについて、所謂児童の権利条約も考慮して、「一方の親の同意なしでの両親揃った育児放棄」を含めることを提案します。政府の見解を求めます
四
「同居親の別居親に対する嫌悪感や恐怖感と病的に同一化して別居親を疎外ないし拒絶する現象」は、「片親疎外症候群」と呼ばれています。世界保健機関(WHO)の国際疾病分類(ICD11)には、「Parental Alienation(片親疎外)」が精神及び行動の障害の分類インデックス(QE52)に記載されているため、子供の疾病にもあたります。
厚生労働省の児童虐待の定義より心理的虐待について、児童の権利条約も考慮して、「片親疎外」を含めることを提案します。政府の見解を求めます。
◆東洋経済ONLINE
◆NHK
◆各社記事
・朝日新聞
・共同通信
別居親子の面会困難「人権侵害」子どもらが国提訴、法整備求める
・毎日新聞
別居親との「面会交流権」制定を 子が初の原告、国を提訴 東京地裁
・読売新聞
希望してもできない親子面会、違憲だ…中学生ら17人が国を提訴
・日本経済新聞
・沖縄タイムス
作花知志先生の記事が取り上げられています。
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◆東京新聞 特報WEB
面会交流の法整備求め離婚、別居した親、子、祖父母らが国家賠償提訴へ
◆作花先生ブログ
https://ameblo.jp/spacelaw/entry-12630942079.html
私は弁護士として多くの面会交流調停や審判に関わってきました。その中でいつも思うのは,「なぜ親が子に会うことに,同居親の同意が必要なのだろう」ということです。そのような権限は,法律上,どこにも与えられていないと思うからです。それはいわば,法律上の根拠のない実務なのです。
近時の心理学的調査の結果,離婚後の子は,非監護親と多く面会を行った子ほど,自己肯定感が高く,またコミュニケーション能力も高いことが分かっています。そうであれば,面会交流は原則自由でなければならないと思うのです。なぜならば,子は非監護親と会えば会うほど,良い子に育つ,ということだからです。その子ども達が,将来の日本を担うからです。
記事を書いて頂いた、東京新聞様と佐藤直子記者に感謝と励ましのメッセージをお願いします。
世間の風向きが重要です。https://www.tokyo-np.co.jp/toiawase_f
◆共同通信
離婚後の単独親権は「違憲」男女6人が国提訴、東京地裁
離婚すると父母の一方だけが親権を持つとする単独親権制度は、憲法が定める法の下の平等や、幸福追求権に反するなどとして東京都と群馬、神奈川、山梨3県の30~50代の男女6人が21日、国に1人当たり150万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。
弁護団によると、6人は離婚後、元配偶者による強制的な連れ去りやドメスティックバイオレンス(DV)などが原因で子どもと離れ離れになり、親権を失った。
原告側は「虐待などの特殊なケースを除き、離婚後も両親が共同で子どもの成長を見守るべきだ」と指摘。多くの諸外国は離婚後も共同親権とする制度を導入しているとした。
◆Yahoo!ニュース
子どもの前で別居親の悪口は控えて――別居親を拒絶する「片親疎外」から子どもを守るには
「片親疎外」とは <一部抜粋>
父母が離婚したあと、子どもが同居親の思いと病的に同一化し、虐待を受けていたなどの大きな理由がないのに別居親を拒絶する状態は、「片親疎外」と言われている。臨床心理士で大正大学教授の青木聡さんによると、「片親疎外」となる子どもの年齢は9歳(小学3年生)から15歳(中学3年生)がほとんどだという。
「これまでの研究でわかっているのは、主に同居親が別居親の悪口を聞かせたり、別居親の話題を禁止したり、別居親と交流するときに悪意のある伝言を届けさせたり……といったように、子どもが相手を嫌いになるように仕向けるのが原因だと言われています」
「ただし、同居親に悪意がないケースもあります。いけないとわかっていてもついついやってしまう方、子ども相手に無意識に愚痴を言ってしまう方もいます。また、子どもの発達段階や性格特性、周囲の大人たち(別居親、祖父母、親族、離婚問題に関与する専門家など)の態度や何気ない一言も、片親疎外の悪化の要因となることがわかっています」
子どもが凶暴化することも
子どもが同調するのに気をよくして別居親の悪口を言っていたら、想像を超えるような攻撃性を見せるようになる例もあるという。
「偶然、まちなかで別居親を見かけただけで、わざわざ走っていって蹴飛ばし、『なんでここにいるんだ、ストーカーか、警察を呼ぶぞ』と騒いだ子どももいました。同居親も、『まさか子どもがここまでに(攻撃的に)なるとは思っていなかった』と」
「殺す」「死ね」などと書き連ねた手紙やメールを、別居親に送った子どももいる。
両親が離婚して不安になっている子どもは、生存を脅かされないために、同居親の歓心を得ようとする傾向にある。そこに別居親への悪口や愚痴が加わる。父母のあいだで板挟みになって苦しむ「忠誠葛藤」とは異なり、洗脳に近い状態だと青木教授は言う。
「『片親疎外』のさなかの子どもの思い込みを解くのはかなり難しいですね。年齢とともに、ものごとを多面的に見られるようになるなど、心理的な成長によって解かれることもあります。ただ、そうなると今度は、なぜ父親を、あるいは母親を、あんなに拒絶したんだろうと後悔して、苦しむ方もいます」
片親疎外が子どもに与える影響
片親疎外によって、不登校になる子が少なくない。あるいは、表面的には優等生でも、別居親のことになると目の色が変わったり、SNSの裏アカで暴言を吐いたりするなど、二面性がある場合も多い。
「片方の親を否定することは、自分の半分を自分で黒塗りにしているようなものです。そうすると、アイデンティティーの確立が難しい。寄る辺なさを抱えたり、進路で悩んだりする子が多いと思います」
自己肯定感や基本的信頼感の低さから、対人関係がうまくいきにくかったり、抑うつ傾向や依存傾向が見られたりするなど、その後の人生で生きづらさを抱えてしまうこともある。
「そうなってからでは、専門的な知識がないと対処できません。だからこそ、一次予防を目的とした離婚時の親教育が非常に重要な意味を持つのですが、日本ではそこが全然足りていない。『子どもの前だから相手の悪口は控えよう』というブレーキすらかけていない方が多いですね」
青木教授は、離婚時の親教育の重要性を強調する。
「片親疎外に当たる事例は本当に難しくて、子どもは傷ついているのに、『傷ついていない』と思ってしまっていることが問題なんです。傷ついていることにあとでしか気づけない。片親疎外を避けられるかどうかは、親の態度にかかっています。絶対に、相手の悪口を子どもに言わないでください。そういう、子どもを守るための基本的な親の態度を学ぶために、離婚時の親教育が必要なのですが、協議離婚(家裁の手続きを経ない離婚)が9割の日本では、ほとんど野放しです。ここを制度として整備していくと同時に、裁判所をはじめ、国や地方自治体の担当者など、離婚後の子育てにかかわる各種専門家は、親子関係に何が起きているのかをより注意深く見ていく必要があると思います」
記事を掲載頂いたYahoo!ニュース様へ、感謝と今後取り上げて欲しいテーマを送りましょう。
世間の風向きが重要です。
◆共同通信
別居で面会が不自由は「違憲」 離婚の十数人ら国賠提訴へ
離婚などで別居する親子や祖父母と孫の面会交流について、具体的な権利義務規定がないため不自由さを強いられるのは基本的人権の侵害で違憲だとして、10~70代の男女十数人が国に1人当たり10万円の損害賠償を求めて来月にも東京地裁に提訴することが10日、分かった。
民法では、父母が協議離婚をする場合、一方を子の親権者に定めなければならず、面会交流の条件も父母が話し合って決めるとしている。面会交流を巡る同種訴訟は他にも係争中だが、原告側によると、子ども側も原告に加わるのは初。 代理人の作花知志弁護士は「子の健全な成長のため国は法整備を進めるべき」と話している。
◆作花先生ブログ
https://ameblo.jp/spacelaw/entry-12630942079.html
私は弁護士として多くの面会交流調停や審判に関わってきました。その中でいつも思うのは,「なぜ親が子に会うことに,同居親の同意が必要なのだろう」ということです。そのような権限は,法律上,どこにも与えられていないと思うからです。それはいわば,法律上の根拠のない実務なのです。
近時の心理学的調査の結果,離婚後の子は,非監護親と多く面会を行った子ほど,自己肯定感が高く,またコミュニケーション能力も高いことが分かっています。そうであれば,面会交流は原則自由でなければならないと思うのです。なぜならば,子は非監護親と会えば会うほど,良い子に育つ,ということだからです。その子ども達が,将来の日本を担うからです。
◆各社記事
・東京新聞
https://www.tokyo-np.co.jp/article/61041
・沖縄タイムズ
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/645950
・福島民友新聞
https://www.minyu-net.com/newspack/KD2020101001001385.php
・高知新聞
https://www.kochinews.co.jp/article/404454/
・新潟日報
https://www.niigata-nippo.co.jp/world/national/20201010573504.html
・中日新聞
https://www.chunichi.co.jp/article/135073
・北海道新聞
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/469349
・茨城新聞
https://ibarakinews.jp/news/newsdetail.php?f_jun=CO2020101001001385.1.N.20201010T111504.xml&elem=z
東京新聞様に続き、朝日新聞様も母親当事者の記事を取り上げていただきました。
◆朝日新聞 web版
離婚後の養育、子どもの目線で面会交流を求めて、母親ら訴え
記事を書いて頂いた朝日新聞様へ、励ましと感謝の手紙を送りましょう。
世間の風向きが重要です。郵送
〒104-8011
東京都中央区築地5-3-2
朝日新聞 社会部 社会部長様参考
メール窓口
https://faq.digital.asahi.com/faq/show/167?site_domain=default
◆東洋経済オンライン
収束まで子どもに会えない離婚親の悲痛な叫び
新型コロナウイルスは、家族関係にも大きな影響を及ぼしているようだ。外出自粛で家族が顔をつき合わせることが増え、それまで外で息を抜くことで保っていた関係が一気に煮詰まり、家族トラブルが深刻化。当初は、それこそ「コロナ離婚」が増えるのではないかと懸念された。
ただ実際には、離婚件数はむしろ減っている。厚生労働省の調査によれば、今年1〜6月に離婚した夫婦は10万122組で、昨年同期比で1万923組少なかった。これについては、コロナ禍により夫婦の絆が強まったわけではなく、家裁調停が停止するなど社会全体が活動を自粛しているため、決断を先延ばしにしている夫婦が多いからだという見方もある。
親子関係にも影響するコロナ禍
いま目に見えて進行しているのは、親子関係の「コロナ断絶」だ。別居・離婚後の親子がなかなか会えない。家裁での面会交流調停が滞っているほか、コロナを理由に面会交流が実施されないケースは多い。
首都圏在住の小西貴之さん(仮名、50歳)は、1年半前に離婚。元妻は、当時10歳と8歳の子どもを引き取り、四国の実家に連れて帰った。そこには高齢の両親がいる。
「人生観の違いから、互いに納得して別れました。養育費は1人月3万円ずつ、面会交流は好きなときにいつでもと、2人で話し合って決めました」
どちらが悪いというわけではない、性格の不一致による離婚。小西さんは心機一転、それまで住んでいた東海地方から首都圏に引っ越し、仕事も変えた。子どもが暮らす四国とは遠く離れているので、しょっちゅう会うことはできないが、その分、会ったときには思いきり交流を深めようと思った。
それなのに。コロナ以降、小西さんは子どもにまったく会えていない。
「4月、まだ緊急事態宣言が発令される前のこと。休みが取れたので、久しぶりに子どもたちに会いに行こうと思い、元妻に連絡したんです。そうしたら『父親が来るなと言っているので、やめてくれ』と。元妻の父親には糖尿の持病があるので、万が一にでも私から子どもを通じて感染したら困る、というわけです。もう航空券も取ってしまっていたので、相当頭にきましたが、そのときは泣く泣く諦めました」
子どもたちとは、週1回ほどスカイプを通じて交流していた。しかし、生身の交流とは違う。膝に乗せたり、プロレスごっこをしたりは、オンラインではできない。子どもたちに会いたい! 緊急事態宣言も解除された7月、小西さんは再び元妻に連絡をとった。
「そろそろ会いに行こうと思うんだけど」
元妻の返事は、「NO!」だった。
「いつになったらいいのかと聞いたら、ワクチンができたら、と言われて絶句しました。そんなに待てませんよ! 語弊があるかもしれないが、田舎でテレビばっかり見ているせいで、必要以上にコロナを恐れている年寄りの意見を聞いていたら、永遠に子どもに会えなくなってしまう」
どんなに小西さんが頼んでも、元妻は面会を許してくれない。コロナ前には当たり前のように行われていた別居・離婚後の親子の面会交流だが、同居親の感情次第で簡単に絶たれてしまう。小西さんは、やり場のない怒りに苦しんでいる。
子どもに会えない苦痛で精神科通い
離婚後、離れて暮らす親(別居親)と子どもが面会することに消極的な同居親は少なくない。関西地方在住の古川正樹さん(仮名、40歳)は、6歳の子どもの父親で、2年前に離婚した。夫婦どちらにも借金や暴力、浮気などの非はなく、離婚の理由は、性格の不一致。
「当時、息子は4歳でかわいい盛り。離れて暮らすことは耐えがたかったのですが、すでに夫婦仲は修復不可能なほどギクシャクしており、息子にも悪影響が出始めていたので、いったん私が家を出ることにしました」
別居前の話し合いでは、子どもにはいつでも会える、ということで合意していた。ところが、古川さんが家を出た途端、妻は家の鍵を閉め、電話にも出なくなった。まだ幼く、完全に同居親の監護下に置かれている子どもと別居親がつながる手段はない。古川さんは、子どもに会えなくなった。
夫婦間の葛藤が強い場合、同居親が子どもと自分を同一視し、「自分が相手に会いたくないのだから、子どもも会いたくないはず」と思ったり、自分がいやな思いをさせられている相手に子どもが懐くことを嫌がったりすることはよくある。子どもに会えるも会えないも、同居親の一存で決まってしまう。古川さんは別居親になって初めて、この現実に直面した。
「気が狂いそうになり、精神科にもカウンセリングにも通いました。その後、調停を経て正式に面会交流が決まり、いまは定期的に子どもに会えています。でも、子どもと会えないと気づいたときの恐怖感からは、2年経ついまも抜け出せていません」
離婚の際、子どもの親権が争われることがある。日本では婚姻時は父母による「共同親権」だが、離婚後は、片方の親による「単独親権」だからだ。親権を得た親は、子どもを「自分のもの」だと勘違いしてしまうことがある。「ひとり親」という言葉が、それを助長している。
しかし、死別ではない限り、離婚をしても子どもにとって親は2人。もちろん、虐待やDVなどがある場合はまた別の議論が必要だが、原則、離婚後も子どもは両方の親から経済的・精神的支援を受けて育つ権利がある。同居親の「感情」でそれを奪った場合、親子の断絶は子どもの人生に長く尾をひくこともある。
都内在住の杉山真帆さん(仮名、48歳)は、小学生のころに両親が離婚。母親のもとで育った。昭和の時代、面会交流などは一般的でなく、父親とは会わずに過ごした。しかし高校生になり、父親に会ってみたくなって母親に相談。母親は渋りながらも連絡をとってくれ、父親との再会を果たした。
「父はすでに別の家庭をもっていましたが、私はそんなに気になりませんでした。本をたくさん読んでいて大人びた子どもだったせいか、私って小説のヒロインみたい、と思ったくらい(笑)」
会ってみたいと思ったのは、どんな人だか自分の目で確かめたかったから。母親から聞く父親像は、「わがままで自分勝手で見えっ張り」。でも、本当はどうなのか。思春期に入り、母親に対し、女同士だからこその反発心も芽生えていた。
「母親の言葉だけを鵜呑みにするわけにはいかないと思ったんですよね」
実際の父親は、極悪人ではなく、悪いところもあればいいところもある普通の人だった。「確かに母親とは合わないな」ということだけは、よくわかった。それで真帆さんは、なんとなく納得した。
細々と交流が続き、父親は10年ほど前に亡くなった。
「亡くなって思うのは、もっと頻繁に会っていればよかった、ということ。どうしても母親に遠慮する気持ちがあって、会うのを控えてしまっていました。大人なんだから、会っても報告する義務なんてないのに、なぜか正直に言わなきゃと思い込んでいた。子どもって、同居親の気持ちを過剰におもんぱかるところがあります」
子どもへの甘え、その先に虐待も
幼い子どもは全身で親を求めてくれるから、つい親は子どもの愛に甘えてしまう。他人にはとても言えないような言葉や態度で子どもを叱ってしまうのも、こんなにしても子どもは親を好きでいてくれる、と思っているから。愛していれば何をしてもいい、子どもは私の気持ちをわかってくれるはずだ。その甘えの先に、虐待があることもある。
子どもが会いたいと言わないからそれでいい、としている同居親は多い。しかし、「子どもの本当の気持ちに気づいてほしい」と真帆さんは言う。会いたいけれど、言えないのかも。会いたいと思ってしまう自分を責めて、口をつぐんでいるのかも。嫌いになれば、自分も同居親も楽だから、無意識にそうしているのかも……。
「もちろん、子どもは会いたくても、別居親のほうに子どもへの愛情が欠けているケースもあります。でも、その事実も踏まえたうえで、子どもは自分で親への思いに決着をつけたほうがいいと思うんです。不自然に妨げられると渇望だけが募り、子どもはなかなか親から卒業できません」
親子の「コロナ断絶」で不幸になる子どもが1人でも少なくなるように。真帆さんは心から願っている。
母親当事者アンケート記者会見につきまして、AERA dot.様も取り上げていただきました
◆AERAdot.
自分の子どもになぜ会えない? 単独親権で「地獄に放り込まれた」母親たち
弁護士ドットコム様に続き、アゴラ様でも母親当事者アンケート記者会見を取り上げていただきました
◆AERAdot.
親による「連れ去り」の当事者が語る 片親から引き離れた現実と共同親権議論の“問題点”
◆Yahoo! ニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/4d020d230aeab18b723fafd141e7336fc704200c
記事を書いて頂いた編集部の方に、励ましと感謝の言葉を送りましょう。
世間の風向きが重要です。
https://publications.asahi.com/company/contact/
→ 「AERA dot.へのお問い合わせ」より
◆AERAdot.
親による「子の連れ去り」が集団訴訟に発展 海外からは“虐待”と非難される実態とは
◆Yahoo! ニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/ef11baf5bfbe1a0ad424caf801c1d8bcea90f475
記事を書いて頂いた編集部の方に、励ましと感謝の言葉を送りましょう。
世間の風向きが重要です。
https://publications.asahi.com/company/contact/
→ 「AERA dot.へのお問い合わせ」より
◆Newsweek
日本人の親による「子供連れ去り」にEU激怒──厳しい対日決議はなぜ起きたか
<国際結婚と離婚の増加に伴って、日本の単独親権制度が問題に。子供に会えない悩みで自殺したフランス人男性もいる>
「まだ離婚していないのに、まだ親権を持っているのに、なぜ1年以上前から自分の子供に会えないのか」と、日本に住むあるフランス人男性が言う。2018年、長男の3歳の誕生日に彼が帰宅したら妻と2人の子供がいなくなっており、家はほぼ空っぽだった。「孫は突然連れ去られたが、日本の警察などが助けてくれないのはなぜか」と、男性の親も批判する。
2005年頃から欧米で問題になっているのが、「日本人の親による子供の連れ去り」。国際結婚が破綻した日本人(主に女性)が子供と家を出た後、配偶者を子供に会わせないケースだ。背景には、国際結婚とそれに伴う別居や離婚の増加と、親権制度の違いがある。
日本は先進国で唯一、離婚後に父母の一方にのみ親権を認める単独親権制度を取っている。「連れ去った」親は子供と同居しているため、裁判で親権が認められる可能性が高いと言われる。暴言や家庭内暴力(DV)から守る日本の法律が不十分なこともあり、被害を受けた女性が「逃げるしかない」ことも一つの原因と考えられる。
圧倒的多数で日本を批判
7月上旬、ツイッターやマスコミのウェブサイトにこんな見出しが躍った。「『親の子供連れ去り』禁止を要請 欧州議会が対日決議」
EUの欧州議会本会議は7月8日、日本に対する批判的な決議を採決した。賛成686票、反対1票、棄権8票。この決議で強調されたのは、主に以下の4点だ。
1 EU市民の親の許可なしに、日本人配偶者が子供を連れ去る事件が増加している。
2 日本は子供の保護に関する国際ルールを尊重しない。EU加盟国の国籍を持つ子供の権利が保護されていない。
3 日本の法律では、監護の共有は不可能。
4 親権を持たない親に対する制限付き訪問権、または面会交流がほぼ認められない。
日本への要求は主に2つ。裁判の判決を必ず執行すること、日本が署名したハーグ条約をきちんと守ることだ。民主主義の国であり重要な経済パートナーの日本に対し、これほど強い批判的な表現を使うEUの決議は極めて珍しい。
決議に対し、茂木敏充外務相は「どのような根拠に基づきそのような主張をしているのか理解しかねる点は多い。国際規約を遵守していないとの指摘は全く当たらない」などと述べた。ただし、連れ去りは「子供にとって生活基盤が急変し、一方の親や親族・友人との交流が断絶される」など、有害な影響がある可能性は外務省も認めている。
こうした状況を解決するため、日本は2014年にハーグ条約の締約国になった。同条約は子供を守る目的で、元の居住国に子供を返すための手続きや、親子の面会交流を実現するための国際協力などについて定めている。双方の間で話し合いがつかない場合には裁判所が、原則として子供を元の居住国に返還することを命ずる。つまり、片親が「自分1人で子供の世話する」と決める権利はなく、子供を連れ去るのは違法だ。
だが現実には、ハーグ条約に基づいて解決されたケースは一部にとどまる。外務省によると、子供の返還などを実現するための援助の申請数は2014年度で113件。その後は、年間およそ50件。詳細を見ると、数年前から全く出口が見えないケースも残っている。
当事者であるフランス人男性がこう説明する。「日本の裁判で返還命令が出ても、なかなか執行されない。日本に連れ去られた子供は、日本人の親が返還を拒否したら返還されない。裁判で勝っても、いくら頑張っても外国人の親はもう子供に会えなくなってしまう。万が一、日本に来て子供に会おうとしたら逮捕される可能性がある。何人もそうなった。日本では強制的に子供を返還させることはしないから。国内法律を変えないとこの問題は解決できない」
「僕も自殺を考えた」
数年前には、子供に会えない悩みでフランス人男性2人が自殺した。「僕も自殺を考えたがやめた。息子に頑張っているパパの姿を見せたほうが意味がある。いつか息子が気付いてくれると期待している」と、別のフランス人男性は強調する。
外務省のハーグ条約担当者も裁判所の返還命令が執行されない例があると認め、「夫婦の関係が特に悪い事例で、解決方法がない」と言う。
ハーグ条約は、返還原則の例外も定めている。いくつかあるが、なかでも注目すべきは「返還により子が心身に害悪を受け、または他の耐え難い状態に置かれることとなる重大な危険がある場合」。これには子供への虐待やDV等が含まれる。
子供を連れ去った疑いがある日本人女性はほとんどの件で、「DVを防ぐために逃げた」と説明する。もちろんDVがあった可能性は否定できないが、逃げるより先に居住国の警察などに相談すべきだろう。また、連れ去りの理由として、DVや虐待が不正に利用されるケースがないとも言い切れない。
フランスなどでは原則として共同親権だが、裁判はケース・バイ・ケースで判断し、DVなどを理由に単独親権を決定することも珍しくない。
EUは国境を超えた事例だけでなく、EU市民に関わる日本国内で起きる連れ去りにも懸念を示す。日本で暮らす国際結婚の夫婦が破綻し、日本人の親が子供を連れ去ることも多いからだ。「妻と子供がどこに住んでいるか分からない、子供に会いたい」という外国人男性は多い。
日本人の夫が連れ去るケースもある。「日本では実子誘拐をした片親に実質的に監護権が与えられることを、自分が同じ立場に置かれるまで知らなかった」と、オーストラリア人の女性が言う。彼女は1年前から、2人の子供に会えずにいる。
共同親権についての共著がある東京都立大学の木村草太教授によると、「日本には戸籍の附票制度があり、親権者であれば子供の居住地を追跡できるので通常、『子供がどこにいるのか分からない』事態は生じない。あるとすればDV等による保護措置が出ている場合だけだ」
だが子供に会えない外国人の親全員がDV加害者とは考えにくく、日本語が読めない、話せない彼らが自分の権利や可能な手続きを分かっていない可能性がある。日本人弁護士とのコミュニケーションも一つの課題だ。多くの場合、外国人当事者と日本人弁護士の共通言語は英語で、誤解が生まれることは防げない。子供に会えない外国人の裁判を筆者が取材したところ、通訳の問題もあるし、あまりやる気のない弁護士がいることも分かった。
フランスの国会議員リシャルド・ヤングは「父親と母親の関係が悪化したとしても、国は子供の権利を守り、両親との関係継続を確保すべき」と強調し、「日本の法律を改正することが必要ではないか」と言う。
裁判の判決が守られない
多くの欧米人からすると、単独親権制度は時代錯誤なだけでなく、日本が署名した「児童の権利に関する条約」に反する。特に、第9条に定められている親と引き離されている子供が、親と定期的に会ったり連絡したりする権利が守られていない。日本人の配偶者と別れた後、子供との面会交流ができない外国人親は多い。離婚するとさらに壁が高くなる。共同親権が認められたらこの問題を解決できるというのがEUの考え方だ。
一方、共同親権は必要ないと考える木村はこう説明する。「面会交流については、親権者が自由に決められる事柄ではない。父母どちらが親権を持つかにかかわらず、『子の利益』を最優先して監護・面会交流の方法を協議で決めなくてはならない。親権を持たなくなったほうは法律上、親として扱われなくなり、子供に会うこともできなくなるという説明は誤りだ」
ただ残念なことに、裁判で「面談交流、月2回」の命令が出ても、親権を持つ親がさまざまな理由で命令に応じないことも少なくない。「新型コロナウイルス感染のリスクがあるから会わせない」と言われたフランス人男性は「妻はなんでもかんでも理由にする」と言う。「裁判の判決が必ずしも守られていない」というEU決議の指摘は、こうした問題も含めている。
崩壊した日本人夫婦の間にも同じような事態は起きるが、外国人だとさらに複雑だ。国によって国際条約の理解が若干異なるのも大きい問題だろう。子供の利益を最優先すべきと言っても、「子供の利益」とは何か、国によって答えが違うかもしれない。
今回の決議が日本でも報道されたこともあり、EUやアメリカの意見に耳を傾ける日本の議員、弁護士や当事者も出てきた。今後は建設的な議論が可能かもしれない。今のままでは連れ去りの被害者となる子供が増え、日本のイメージも悪化する一方だ。
記事を書いて頂いた編集部の方に、励ましと感謝の言葉を送りましょう。
世間の風向きが重要です。
https://www.newsweekjapan.jp/contact.php
◆共同通信
「面会交流」請求、二審も棄却 別居の親子、東京高裁
離婚などで別居した子どもと定期的に会う「面会交流」を義務付ける制度が未整備で精神的苦痛を受けたとして、男女14人が国に計900万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁(白石史子裁判長)は13日、請求を退けた一審東京地裁判決を支持し、原告側の控訴を棄却した。
民法は、離婚時に父母が協議して面会交流について決めると規定。原告側は、子と同居する親が約束を破っても罰則がないのは問題だとして、面会交流保障の法整備が不可欠だと主張した。
昨年11月の一審判決は「面会交流をする権利が憲法上保障されているとは言えず、現行法の規定は憲法に違反しない」とした。
・ 一審 主文
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=89137
◆各社記事
・東京新聞
https://www.tokyo-np.co.jp/article/48733
・中日新聞
https://www.chunichi.co.jp/article/104146
・日経
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62599440T10C20A8CR8000/
・北海道新聞
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/450047
・京都新聞
https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/328881
・47news
https://www.47news.jp/news/5132510.html
・Yahoo news
https://news.yahoo.co.jp/articles/e290264a98e165580409a606b7732d7891c10ca5
・産経新聞
https://www.sankei.com/affairs/news/200813/afr2008130011-n1.html
◆西日本新聞
「娘の安否すら知らされず」離婚後の面会交流、コロナ禍が影 オンラインは課題も
新型コロナウイルスの感染拡大が、離婚などで別居している親子の交流にも影を落としている。収束時期が見通せない中、会えない状態が続く親子も少なくない。「オンライン面会交流」という試みも始まっているが、トラブルも懸念される。専門家は「ルール整備が必要だ」と指摘する。
「とにかく元気な顔が見られてホッとした」。千葉県に住む男性(43)は6月中旬、同じ県内に住む娘(2)と10カ月ぶりにパソコンの画面越しで対面した。
昨年7月、毎月の面会交流と養育費の支払いを条件に離婚した。だが約束通り面会できたのは翌8月だけで、以後は元妻が拒否。面会を求めて家裁に調停を申し立て、ようやく3月に面会が決まったところでコロナ禍に見舞われ、元妻に「感染が怖い」と言われて中止に。娘の安否すら知らされず、このまま顔を忘れられるのではと不安だった。
弁護士を通じてオンラインの交流を提案し、実現にこぎ着けた。ようやく面会できた娘に男性は好きだった絵本を読み、一緒に遊んでいる時の動画を見せた。だが幼いため会話が続かず、30分程度で娘が画面の外に退出して終了に。「抱っこすることも、なでてあげることもできず、つらい」
全国の別居親がつくる「共同親権草の根活動」が5月中旬に実施したアンケートによると、回答した198人のうち84%がコロナ流行後に面会交流の状況が悪化したと回答した。
法務省は5月、「面会交流は子供の健やかな成長のために重要だ」として直接の対面が難しい場合はビデオ通話や電話、メールなどを活用するよう求める見解を示した。
面会交流を支援する「びじっと・離婚と子ども問題支援センター」(横浜市)では3~5月の従来型の面会支援件数が例年の1割に減り、6月以降も8割にとどまった。そこでオンラインの交流支援を5月に始め、これまで21組が利用した。
割れないシャボン玉を作ったり、動画を見て一緒にダンスしたり、自作のクイズを出したり…。利用者からは「毎回父親が工夫してくれて、新しい一面を発見できた」「今後も検討したい」といった声が上がっているという。
古市理奈代表理事は「親子の縁を切らないことが何より重要。コロナ収束後も、遠距離で頻繁に会えない場合の補完手段などに活用できる」と話す。
課題もある。幼い子どもの場合は集中力が続かず、機器の操作のため同居する親が介入せざるを得ない。面会交流の条件は調停や公正証書などで決めるが、オンラインは想定外だ。「直接会わない口実にされるかも」「毎日ビデオ通話したがるのでは」と親が互いに警戒し、調整がうまくいかないケースも多いという。
面会交流の支援に詳しい立命館大の二宮周平教授(家族法)は「離婚後に父母の協力関係が築けないという問題がコロナ禍で顕在化した」と指摘。「子どもは父母に養育される権利があり、交流を中断させてはならない」と強調する。
米国などではオンライン交流の指針が定められているという。二宮さんは「コロナの流行がいつまで続くか分からない中、日本でもルール作りが急務だ」と話している。
記事を書いて頂いた西日本新聞の記者に、励ましと感謝の手紙を送りましょう。
世間の風向きが重要です。
100-8916
東京都千代田区霞が関1-2-2
中央合同庁舎第5号館
厚生労働記者会
西日本新聞記者
新西ましほ様
◆アゴラ
EUが日本非難!「子ども連れ去り」を止める法改正を
「もう、嘘をつかないでもらいたい」「認識があまりにも低すぎる」ーー。
国会議員らが、外務省と法務省の役人を厳しく追及する一幕があったのは、7月30日に衆議院議員会館で開かれた「共同養育支援議員連盟」の総会でのこと。
背景には、日本国内の離婚時の子どもの連れ去りに関して、7月8日に欧州連合(EU)議会で可決された日本への非難決議に対し、「EUの指摘には誤解されている部分が多い」「日本はきちんと対応している」とあくまで責任を回避しようとする法務省と外務省の煮え切らない態度がある。
非難決議によって、日本は「人権意識の低い国」との烙印を押され、EUと日本のパートナーシップは危機的状況にあると言っていい。このEUとの友好の危機を回避するためにはどうすれば良いか。これまでの経緯を振り返りながら考えたい。
<きっかけはフランス、イタリア出身の父親の訴え>
今回のEU非難決議は、EU出身者と日本人の夫婦が離婚するとき、日本人の親が日本国内で子どもを一方的に連れ去り、別れた相手と面会させないことなどを禁止する措置を迅速に講じるよう、日本政府に求めたものだ。こうした子どもの連れ去りについて「子どもへの重大な虐待」とし、子どもの権利条約に反していると指摘する。
自民党の三谷英弘・衆議院議員は、議連の総会の中で「EUがほかの国に対する非難決議行うということは、基本的にはない。北朝鮮などに対して、人道的に緊急を要する場合はあるかもしれないが、それが日本に対して出されたということは、非常に重いこと」と指摘した。
この決議の出発点は、国内で実子誘拐にあったフランスとイタリア出身の父親の訴えだ。
フランス出身のヴィンセント・フィショ氏と、イタリア出身のトッマーソ・ペリーナ氏(いずれも東京都内在住)は、ともに日本人パートナーとの子どもを連れ去られ、自分の子どもと会えないどころか、電話1本できず、写真すら見ることができない状況が続いている。
彼らは、日本国内で子どもと引き離されたほかのEU出身者と一緒に、昨年から欧州の各国政府、国連などに出向き、日本国内の連れ去りをやめるよう、日本政府に訴えかけるように働きかけを行っている。その一環で、彼らのケースを「EU請願委員会」に訴えかけた。これがEU議会での調査につながり、今回のEU決議に至ったものだ。
ペリーナ氏は、「私たちのケースを日本が調査して、子どもたちを家に帰すことで、日本が人権問題に真剣に向き合っていることを国際社会に示すことになるでしょう」と話し、フィショ氏は「私たちの子どもたちを家に戻すことは、日本国の利益。その前例をつくることで、日本のすべての子どもたちにとっても、直接的な利益になると信じています」と彼らの働きかけの意味を語った。
<EU決議に対する外務省のトンチンカンな回答>
EU決議について、記者会見の場で見解を求められた茂木敏充・外務大臣は「国内法制度に基づいて、国籍による区別なく、公平かつ公正に対応しており、決議にあるような国際規約を遵守していないという指摘は全く当たらない」と答え、さらに「法務省で取り組んでいることであり、法務省に聞いてもらいたい」と法務省へ責任を丸ごと押し付けた。
また、議連総会に出席していた外務省の担当者は、前出の国内で連れ去られた場合には適用されない「ハーグ条約」について、その取り組みを説明し、日本は「遵守している」と回答。
これに対して、日本維新の会の串田誠一・衆議院議員は、「EU決議が問題にしている主な問題は、(ハーグ条約の事例でなく)国内の連れ去り問題であり、国内の連れ去りは何件あって、何件返されたのか、その数字を示さないと、対策を検討すらできない」と断じた。
それに対する外務省担当者の「外国人にどうやって説明したらいいのか、法務省を連携して取り組んでいきたい」との言葉に、会場の議員席からは失笑が漏れた。
EU決議について、外務省が繰り返し「指摘は当たらない」「日本は条約を遵守している」と回答することで、日本が真剣にこの問題に向き合っていないことを示す格好になっていることを、国益を損ねる形になっていることを、外務省の役人たちは理解しているのだろうか。
<「養育費」問題の解消には熱心な法務省>
法務省ではこれまでに、海外の24か国を対象に、離婚後の親権制度や子どもの養育のあり方について調査をしたり、親権制度の見直しの当否を検討する「家族法研究会」を7回にわたり開くなど、対応に当たってきた。
また法務省は、厚労省と連携して積極的に、養育費の不払いの解消に向けた取り組みを進めている。自民党女性活躍推進本部の猪口邦子本部長らが6月に、首相官邸で安倍晋三首相と会い、養育費の不払い問題で対策を提言し、それに取り組む同省の検討会議は年内をめどに取りまとめを行う予定で、積極的に進めている。
この問題を国会での質疑でもたびたび取り上げてきた嘉田由紀子・参議院議員は、自身のFacebookで「日本の民法819条で単独親権が決められ、片親の親権や子どもとの交流が公的に奪われながら、養育費支払いだけを義務化することは国家の法制度としてバランスを欠いているのではないか」「養育費の義務化は共同養育や共同親権とセットだろう」と指摘。
前出の三谷議員も総会の場で、「養育費だけ進めて、面会交流がおざなりにされることがないように、確認したい」とくぎを刺した。
共同養育への法改正が、問題を打開する唯一の方法
日本国内で、一方の親から子どもを奪う人権侵害が横行しているとのEUからの指摘に、「子どもの権利条約」を管轄しているはずの外務省は「指摘は誤解だ。法務省に聞いてくれ」と逃げ、法務省は養育費の問題には熱心だが、共同養育への具体的な法改正については、いつ、どのように取り組むのか曖昧な姿勢のままだ。
このままの態度が続くのであれば、日本とEU間の政治・外交・社会関係の緊密化を目的として結ばれた「日EU戦略的パートナーシップ協定(SPA)」についても、「見直しも検討せざるを得ないだろう」と、ペリーナ、フィショ両氏は案じている。
議連の総会では、EUとの関係悪化の「問題を打開する唯一の方法は法改正だ」とし、議連の会長で自民党の馳浩・衆議院議員が、今後の方針として「連れ去り問題について、国内の無法状態についてどう対応するか検討し、離婚後の共同養育のルール化を制度としてしっかり作ること」を確認した。
日本は、EUからの指摘を真摯に受け止め、子どもの連れ去りを防ぎ、子どもたちが自分の親に自由に会える権利を制度として保証し、EUとの友好の危機を、回避できるのだろうか。EUは怒っている。時間はない。
この事態は、適切に対応することで日本が人権侵害に真摯に向き合う国だと示す好機なのだと、とらえたい。
令和2年7月30日に共同養育支援議員連盟 総会が開催されました。
親子ネットからも弊会代表武田、及び運営委員が参加しております。
以下、その記事となります。
尚、当日の議論は8月8日の親子ネット定例会で皆様へ報告させて頂きます。
◆NHK
超党派議連 離婚後も「共同養育」へ 法整備働きかけの方針確認
結婚が破綻した場合の子どもの扱いをめぐって、超党派の議員連盟は、父母が共に子育てに関わる「共同養育」を推進するため、離婚後の面会交流の促進などに向けた法整備を急ぐよう政府に働きかけていく方針を確認しました。
離婚したあとの親権は、日本では、父母のいずれかが持つ「単独親権」が民法に規定されている一方、海外の先進国では、父母の双方が持つ「共同親権」が主流となっていて、EUの議会は、日本に「共同親権」を認める法整備などを求める決議を採択しました。
これを受けて、超党派の議員連盟は30日、国会内で会合を開き、会長を務める、馳 元文部科学大臣は、離婚したあとも父母が共に子育てに関わる「共同養育」の推進を目指す必要があるという考えを示しました。
そして、議員連盟では、離婚したあとの養育費の確保や、子どもとの安定した面会交流の促進に向けて法整備を急ぐよう、政府に働きかけていく方針を確認しました。
◆47NEWS
日本人親の子ども連れ去りに、世界がNO!
EU議会が政府に禁止要請 変わるか社会通念
7月8日、欧州議会は、日本国籍とEU籍の両方を持つ子どもを日本人の親が連れ去ることを禁止するよう求める決議を、圧倒的賛成多数(賛成686、反対・棄権9)で採択した。といわれても、多くの日本の読者には何のことやらわからないかもしれない。EU市民を代表する欧州議会が抗議しているのは、EU籍を持つ子どもが、日本人のひとり親 に独断で連れ去られることにより「子どもの権利」が阻害されているという点だ。国際結婚が珍しくない現在でも、家族のあり方や子どもの権利についての日本の社会通念は、旧態依然のままだと欧州から見られているのだ。(ジャーナリスト=佐々木田鶴)
<5年で累計1万件の連れ去り発生?>
欧州議会には、EU市民が、直面する問題を訴え、助けを求めることのできる請願委員会というのがある。欧州市民の声を直接拾い上げる仕組みだ。今回は、フランス人、ドイツ人、イタリア人2人の合計4人の当事者による請願から始まった。彼らの日本人妻が、EU籍も持つ自身の子どもを日本に連れ去ってしまい、会うことさえままならない。日本は国境を越えた子どもの連れ去りを禁止するハーグ条約(「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」日本は2014年に批准)に違反し、国連の子どもの権利条約(日本は1994年に批准)が保証する子どもの権利を守るための法整備も怠っていると訴えた。
請願委員会事務局によると、正確な件数はわからないものの、「欧州ばかりでなく、北米、オセアニアからなどの情報を基に推計すると、日本人による子どもの連れ去りは、ここ5年ほどの累計で1万件を超える」という。欧州で子どもの奪取問題に取り組む国際民間非営利団体(NPO)ミッシング・チルドレン・ヨーロッパのデマレ氏は、日本のような先進国相手では信じがたい数だという。
近年、欧州各国では、核心を突く調査報道で知られるテレビ番組や特集記事などが、日本人の親による子どもの連れ去り問題をよく報じるようになった。フランス国営放送の人気番組「特派員」では、フランス人パパが連れ去られたわが子に会おうと日本に潜入する密着番組が放映され、「おもてなし」が売りの日本で、「ガイジンは嫌いだ!」と怒鳴られたり、国際法とは無縁そうな地元のおまわりさんに不審者扱いされたりする様子が物議を醸した。この番組によれば、同じような境遇で連携するフランス人の親は100人以上もいるという。アメリカの団体BacHomeでは400件以上と推計しているので、累計1万件というのも的外れではないのかもしれない。
<国際政治の場でも日本批判の大合唱>
マクロン仏大統領も、メルケル独首相も、コンテ伊首相も、これまで安倍首相に直接、何度も改善を要請してきた。在日本のEU加盟国の大使たちは、連名で日本の法務大臣に法整備を促す書簡を送っている。欧州議会の「子供の権利」専任コーディネータは、2018年以来、日本の法務大臣や駐EU日本大使に当事者たちの声を届けて改善を訴えている。19年8月には、国連人権委員会にも正式な訴えが起こされた。
そして、今回の決議では、EUはあらゆる外交機会を駆使して、日本に改善要求を続けるとしている。同じような外圧は、欧州以外からも繰り返されているはずだ。だが、今回の欧州議会決議を受けても、茂木敏充外務大臣は「決議にある『国際規約に遵守していない』という指摘はまったく当たらない」と答えている。政治家や行政がどこ吹く風と無作為に徹し、国内メディアがほとんど伝えなければ、日本社会や日本人に届くわけもない。
<無断で子を連れ日本の実家へ帰ると誘拐に>
筆者のように日本国外で30年も生きていれば、国際結婚の破たんを見ることは多い。そもそも同国籍、同人種間のカップルであっても、半数以上が破綻する今日では無理もない。欧州では離婚届に捺印して役所に届け出るだけでは離婚は成立しない。裁判所が介入して、子どもがいれば、必然的に親権能力が問われ、共同親権の詳細が裁定され、養育費や日常生活の分担が取り決められる。
にもかかわらず、日本人の女性の場合、関係が決裂すると一目散に子どもを連れて日本の実家に駆け込むことが多い。日系航空会社のカウンターでは、未成年の子どもを連れていても、パスポートと供に、欧米では常識的な「もう一人の親による同意書」の提示を求められることはまずないし、その行為が「誘拐」にあたるという意識もない。法律用語では「連れ去り」「奪取」と訳されている英語の「アブダクション」という言葉は、普通は「誘拐」と訳すのが一般的だ。
知識人といえるような友人ですら、「日本人の母親なら、どうしようもないヨーロッパ人の父親の元に子供を残しておけないと思うのが当然」などという。日本人女性は良妻賢母で、ガイジン夫は悪者と決めつけて疑いもしないようだ。
ハーグ条約関連の案件を多く手掛けて来た日本人の女性弁護士によれば、これらは日本の社会通念では当たり前だという。
「日本社会では長年にわたり単独親権があまりにも当然でした。父親は外で働いて家庭に生活費を入れ、母親は家で子育てという社会通念が根強い。別居や離婚の際には、母親が子どもを連れて家を出るのが当たり前。男性側が親権を求めることもなかったし、子どもに会いたがるとは考えもしない。(別れた男性は)養育費も支払わず、次の女性と結婚して新しい生活を始め、前の家庭のことは忘れようとするのが仕方ないと見なされがち。(女性側は)子どもが小さければお父さんは死んだと伝えるか、極悪人に仕立て上げるしかない。日本人の多くが、この社会通念をオカシイとして行動してこなかったために、法律も裁判所も変わってこなかったというのが実情です」
最近では日本の裁判所でも、連れ去られた子どもの返還を命ずるケースが増えてきているという。だが、関連する国際条約の精神が求めているのは、単に子どもだけを「返還」すればよいということではない。前述のデマレさんは、「子どもの権利に重きを置いて解決するならば、大人の都合で家庭が破壊されても、子どもが両親それぞれと親密な関係を保ち続けられる環境を、大人たちが用意しなければいけないのです」という。
<日本に届け欧州決議>
筆者は、当地で、刑務所に服役中の親が子どもとの関係を修復するリハビリテーションを観察させてもらったことがある。精神科医師や心理カウンセラーなどの専門家が、専門の裁判官や社会福祉士とスクラムを組んで長期にわたって慎重に進めるものだった。親にとっては更生の原動力となるかもしれず、子どもにとっては生涯に渡っての数少ない身内かもしれないからだ。
日本人と欧州人の両親が離婚し、ほとんど母親の元で父親の悪口ばかりを聞かされながら育った少女が、成人してから、父親とのよい関係を保って生きているケースも知っている。母親ががんで亡くなり、日本にはすでに遠縁の家族しかいない。父親の女癖も、稼ぎの悪さも、母親にとっては憎しみでしかなかったろうが、今の彼女には親身になってくれる唯一の家族だ。
大人本意で作られた古い社会通念を捨てて、「子ども本位」に変容させていかなければ、「子どもの権利」は保障できない。そのためには、メディアや政治や司法が、大衆の好みにおもねるのではなく「違うよ、この方がいいよ」と変容の方向を指し示すことが大切ではないだろうか。欧州議会の決議が、少しでも良識ある日本の人々の心に届くことを願いたい。
◆Yahoo!ニュース
「離婚後、子どもに会えない」親たちの切実な悩み、新たな共同養育というスタイルも
日本の法律では、離婚後、どちらか一方にしか親権が認められていない。親権を得た側は必要以上に一人で子育てしよう、しなければと思いがちで、相手との面会を避けてしまうこともある。しかし、子どもによっては「双方とつながっていたい」と思うときも。そうした中、離婚後も「共同で養育する」という動きが広まりつつある。離婚後の子育て問題に直面する人や、共同養育を支援する団体などを取材した。(ライター・上條まゆみ/Yahoo!ニュース 特集編集部)
<子どもに会えない>
千葉県在住の会社員、宇津木みどりさん(仮名、38)は、小学6年生、5年生、3年生の子どもの母親だ。3年前、夫の長年の女性問題が原因で、3人の子どもを連れて家を出ようとした。
しかし、直前に夫に見つかってしまった。夫は下の子2人を実家に連れていった。残った長女はみどりさんと暮らしていたが、あるとき「弟や妹に会いたい」と出かけて、そのまま帰ってこなかった。
「子どもたちを迎えに行きましたが、鍵をかけられ、中には入れてもらえませんでした」
みどりさんは家庭裁判所に、子どもの引き渡しと、どちらが子どもの面倒を見るかを決める「監護者指定」を申し立てた。しかし、決着する前に子どもの転校手続きが取られ、知らない小学校に通わされていた。転校先を突き止めるも、学校側は同居親ではないことを理由に、みどりさんの来校を拒絶。みどりさんは面会交流を求めて、調停を申し立てた。
次第に子どもたちはみどりさんに会いたがらなくなった。同居する親の影響を受けて、別居親を拒絶する「片親疎外」が進んでいたようだ。現在は月に1回、みどりさんから子どもたちに手紙を送り、相手からは子どもの写真が送られてくるという交流を続けている。しかし、先日受け取った写真には、みどりさんが送った手紙にハサミを入れている子どもの姿が写っていた。
「父親にそうしろと言われたのかどうかはわかりませんが、少なくとも写真を撮ったのは父親です。ひどすぎますよね」
月に一度、手紙を送る。少しでも子どもが喜んでくれるように、かわいらしいカードを手作りする
<養育費の受け取りを拒絶>
東京都在住の田部洋一郎さん(仮名、50、会社経営)は、7年前に元妻と別居して以来、長男(16)と長女(14)にほとんど会えていない。
当時、元妻は職場の同僚と不倫をしていた。それが発覚し、口論が絶えなくなると、元妻は子ども2人を連れて長野県の実家に帰ってしまった。子どもたちの転校手続きもされていた。
洋一郎さんは、子どもと離れて暮らすことに耐えられず、弁護士を立て、家庭裁判所に同居調停(夫婦関係調整調停)を申し立てた。しかし、計6回の調停を経ても同居はかなわず、元妻は洋一郎さんを遠ざけ、子どもたちにも会わせなかった。
「通っている小学校まで運動会を見に行ったら、警察を呼ばれたりもしました」
夫婦関係の再構築は諦めるにしても、子どもには会いたい──。洋一郎さんも家庭裁判所に面会交流調停を申し立てた。
「面会交流を申し立てて5カ月後に試行面会60分、2回目の試行面会が2カ月後に60分。その他に、当時は私も親権者だったので、運動会や学芸発表会を6回見に行きましたが、きちんとした面会交流は7年間で1回だけです」
正式に離婚が成立したのは、昨年夏。子どもの親権は「監護継続性の原則」から元妻が持った。元妻は今も面会交流に消極的である。
「僕が養育費を払わせてくれと頼んでも、受け取ると子どもに会わせなくてはならないと思うのか、受け取らないです。子ども名義で振り込み用の銀行口座を作り、キャッシュカードを郵送したのですが、何度も受け取り拒否をされてしまいました」
子どもに会えないつらい日々。洋一郎さんは、いつか会いに来てくれる日を思い浮かべ、毎月子ども名義の通帳に貯金をし、ブログに思いを書きためている。
<「単独親権」の弊害>
日本の民法には、未成年の子の父母が離婚する場合、どちらかを親権者に決めなければならないと定められている。いわゆる「離婚後単独親権」制だ。離婚後も父母の両方が親権を持ち続ける選択肢はない。
この問題点について、現代の家族のあり方を研究する明治学院大学の野沢慎司教授は次のように話す。
「離婚後に親の一方が親権を必ず喪失する制度は、『親権をもつ親が一人で子どもを養育するもの』という誤解を生みやすい。親権をもつ親が『自分が親権者なのだから』と別居親のかかわりを拒んだり、親権のない別居親が養育費を払わないとか、子に会おうとしないなど、親としての責任から逃れたりすることが許されるような印象を与え続けている」
別居親が子どもとのつながりを継続する手段の一つに、面会交流がある。しかし、厚生労働省の「2016年度全国ひとり親世帯等調査」によれば、母子家庭の46.3%、父子家庭の32.8%で面会交流が一度も実施されていない。
離婚後、自ら面会を避けるケースもあるが、先に登場したみどりさんや洋一郎さんのように、相手との関係がこじれてしまい、会えなくなったケースもある。
2017年の離婚件数は約21万件で、そのうちの約6割に未成年の子がいる。人数にして約21万人。父母の離婚によって、一方の親とのつながりを断たれる子どもは少なくない。
<離婚後の面会交流を支援>
父母の感情的な対立が激しく、当事者同士の話し合いでは面会交流がうまくいかない場合に、間に入って面会交流を支援する民間団体が増えている。2008年には8団体だったが、2012年に民法が改正されて、子どものいる夫婦が離婚する際に取り決める事項として、面会交流と養育費の分担が明文化されると、各地で多くの団体が設立された。現在は全国に50ほどの団体がある。
その一つが、東京と神奈川を中心に活動する「りむすび」だ。代表のしばはし聡子さん(46)は、2016年の設立以来、これまでにのべ2000件以上の相談や面会交流の支援をしている。また、弁護士と連携して、円満な離婚をサポートするプログラムも提供している。
しばはしさんのベースになっているのが、「共同養育」という考え方だ。父母が別居・離婚した後も、ともに子育てにかかわる。「親権」を喪失したからといって親であることに変わりはないし、両親がともに養育責任を果たすことが子の利益になる。共同養育をするためには、争わずに「夫婦」から「親同士」へと、関係をシフトしていくことが大切だとしばはしさんは考えている。
<共同養育で気持ちが楽に>
東京都の会社員、藤原えみさん(40)は「『共同養育』という言葉と出合って気持ちが軽くなった」と話す。「りむすび」のサイトでその言葉に出合った。
藤原さんは2年前、4歳の娘を連れて夫と別居。双方弁護士を入れての話し合いを経て、離婚した。別居を開始したときから、休日には娘を会わせていた。娘は、父親に会うと帰り際に寂しがって泣いた。「どうして一緒のおうちに帰らないの、いつからまた一緒に暮らせるの」。実家の母には「こんなに悲しい思いをさせるなら、いっそ会わせないほうがよいのでは」と言われた。藤原さんはこう振り返る。
「離婚したら女手一つで子どもを育てるのが当たり前、それでも立派に育っている子どもはたくさんいる、別れた父親と子どもの交流がイメージできない、というのが親世代のスタンダードだったのだと思います」
しかし、父親を慕う娘の姿を見ると、会わせなくてよいとは思えない。子どもにとって、別れた夫との面会はどれくらいの頻度が最善なのか。本を読んだりインターネットで調べたりしたが、「月1回2時間が平均」と書いてあるかと思えば、「海外では週末のみならず平日にも行う」とも書いてある。迷いが深まった。
そんなときに「りむすび」のサイトで「共同養育」という言葉を見た。相談に行くと、しばはしさんは「子どもが会いたいと思うだけ、何回でも会わせてください」と即答した。「子どもが両親から愛されていると実感できることが子どもの心の安定につながりますから」。藤原さんにとって、その説明は納得できるものだった。
今、娘は土曜か日曜のどちらかは父親と過ごす。保育園の行事などもこまめに父親に知らせ、積極的に参加してもらっている。娘には「パパとママは離婚したけれど、パパはパパだしママはママだよ」と伝えている。
「お休みの日には一日中たっぷり父親と過ごせるので、娘の表情が明るくなった気がします。私自身、娘から父親を奪ってしまったという罪悪感から解放されて楽になりました」
ただし、藤原さんが当初悩んだように、別居親に会わせることでかえって子どもの気持ちが不安定になることもある。しばはしさんはこう言う。
「会わせる際には、相手の悪口を言わない、子どもを通して相手の詮索をしない、子どもを伝言係にしないことが大切です。また、子どもが親に聞きたいことがあったときは質問できるような雰囲気づくりも、子どもの気持ちを安定させます」
<自治体が支援に乗り出す>
「共同養育」という言葉こそ使っていないが、別居・離婚後の子どもの養育支援に積極的に取り組んでいるのが、兵庫県明石市だ。2014年に「こども養育支援ネットワーク」をスタートさせた。
同市役所の市民相談室課長の村山由希子さんは、こう話す。
「親の離婚によって子どもが受ける不利益をできるだけ少なくしたいという思いから始まった取り組みです。調停となれば夫婦の双方に弁護士がつくのに、子どもにはつかない。『どちらが持っていくか』などと、親権をめぐって子どもがまるで荷物か何かのように扱われることもあります。夫婦の争いにおいて、子どもの気持ちは置き去りになることが多いのです」
「こども養育支援ネットワーク」では、離婚をしても親の双方が養育に責任をもつよう啓発に力を入れている。離婚前に夫婦で話し合い、子どもの養育計画を決めるよう促す。
明石市では、「こどもの養育に関する合意書」と「こども養育プラン」という2種類の用紙を作成。市役所に離婚届を取りに来た夫婦に配布している。
「合意書」には、いくらの養育費をいつまでどの口座に振り込むか、面会交流はどれくらいの頻度で場所はどこで行うかなど、具体的に書き込めるようになっている。「養育プラン」はお互いの意見を書き留めたり、合意をまとめたりするためのメモとして使う。市への提出義務はないが、調停や裁判の資料として使うことができる。
「この用紙を配布し始めたことで、離婚届の『養育費と面会交流の取り決め』のチェック欄の記入率が上がりました。全国で約60%のところ、明石市では約70%になっています」(村山さん)
2016年からは面会交流の支援にも乗り出した。
子どもが明石市在住で中学3年生以下ならば、子どもと親の同意のもと、交流日程の連絡調整や子どもの引き渡しの仲介をする。親は月1回、無料で利用できる。2016年9月にサービスを開始し、これまでに17組の親子が利用した。
乳幼児から小学校低学年の子どもがほとんどで、市の子育て支援センターの遊戯室などで、別居親と数時間から半日ほどを過ごす。親同士が顔を合わせないように、待ち合わせ場所や時間をずらすなどの工夫をしている。利用者からは「支援のおかげで定期的に面会交流ができるようになった」「無料なので経済的に助かる」などの声が寄せられている。
「しばらく親子が顔を合わせていなかった場合、幼いお子さんだと『この人誰?』という反応をすることもあります。それが、回数を重ねるごとに、会った瞬間にうれしそうな顔を見せるようになります。面会交流支援をしてよかったと思う瞬間です」(村山さん)
<子どもの利益をどう守るか>
「りむすび」や明石市のような取り組みは少しずつ広がっているが、みどりさんや洋一郎さんのように、子どもに会えない親は依然として存在する。父母が離婚した後も親子が交流することは、親の権利というよりもむしろ子どもの権利だ。
前出の野沢教授は「離婚で親の法的責任が変化する現在の制度が、共同養育を遠ざけている」と話す。
「子どもの貧困や虐待などの問題をきっかけに、離婚後の子どもの最善の利益をどう守るかが問われています。社会の枠組みを、子ども中心の視点で変えていくことが重要です。父母が離婚した後も両方の親から経済的、精神的ケアを受け続けられるように、社会が保障する仕組みにすることが大切です」
◆NHKニュース
共同親権 導入是非含め検討「子どもの利益最優先に」森法相
国際結婚が破綻した場合などの子どもの扱いをめぐって、EUの議会が、共同親権を認める法整備を日本に求める決議を採択したことに関連し、森法務大臣は共同親権の導入の是非を含めて検討を進めているとして「子どもの利益を最優先にさまざまな意見を聞いていきたい」と述べました。
EUの議会は先週、加盟国の国籍をもつ人と日本人の結婚が破綻した場合などに、日本人の親が、国内で子どもを一方的に連れ去るケースが相次いでいるとして、連れ去りを禁止する措置や共同親権を認める法整備などを求める決議を採択しました。
森法務大臣は記者会見で「外務省などと連携して対応しているが海外からの意見には、誤解も散見されるので、日本の法的手続きを正確に理解してもらうことが重要だ。引き続き丁寧に説明したい」と述べました。
そして、森大臣は共同親権については導入の是非を含めて検討を進めているとしたうえで「子どもの利益が最優先だという観点から、さまざまな意見にしっかり耳を傾けていきたい」と述べました。
◆弁護士ドットコム 棚瀬孝雄氏ロングインタビュー
共同監護にコミットした高裁決定「家庭が壊れた子供はもろい」
棚瀬氏の実務の中で、ユニークなものとして、離婚・別居により子供が片親と会えなくなる事件の弁護がある。「きっかけは、ハーバードのロースクールで教えた際の経験。同じ法が日米でどう違うか、日本的契約慣行、政治の渦中に置かれた憲法9条などを学生に文献を読ませて議論しました。その中で家族法の問題も取り上げようと、監護紛争を調べて驚きました」 当時の唯一の最高裁判例は、年2回、娘に会わせてほしいというささやかな願いを拒否された父親が、憲法13条の幸福追求権の侵害を理由に上告したのに対し、「原審が何が子の福祉を考えて判断したもので、憲法の違反を言う余地はない」としたものだった。 「大きな衝撃を受けました。アメリカでは決まって、『相当の面会を認める』と、隔週2泊3日で、別居親の家に泊まりに行っており、この差がどうして生まれたのか、家庭という枠を超えて、子供が、別居親とも親子のかかわりを持っていく社会を深く考えさせられました」 帰国後、日米の比較考察を行った論文を執筆。子供に会えずに苦しんでいる人たちの目に留まり、弁護士になってから、依頼者が集まるようになった。また、妻一代氏(故人・神戸親和女子大学教授)も、心理学者としてカウンセリングをする中で、離婚で子供が受ける心の傷を問題視していた。夫婦で、離婚・別居で親子が切り離されることに心を痛め、親権の問題に関わることになった。 現在、棚瀬氏は、共同親権の導入(離婚後の共同監護の実現)に力を入れる。国会議員が参加する院内集会などに積極的に出席し、外国の法制に詳しい専門家、また、数多くの事件を手掛けてきた実務家として、導入に向けた運動の理論的支柱になっている。 「家庭が壊れた経験を持つ子供たちはもろいという意味で、離婚という体験は子供に傷を残す。アメリカの心理学研究をみると精神疾患になったり、ひきこもったり、暴力したり、薬物などの犯罪に走る確率が、離婚を体験していない子供と比べて何倍もある。だから、離婚の問題は、子供の将来のために考えてあげないといけない。 共同親権が実現して、子供が自分には父も母もいるという安心感を持ち、両方との結び付きが維持できれば、離婚の痛手を最小にできる。そういう社会を作りたいというのが、私の共同監護の理念です」 2019年10月に、東京高裁のある決定があった。月1回7時間の面会交流が命じられたのに、一切実施されないことに対して、同居親の母への間接強制を認めた家裁支部の決定に対する執行抗告で、母は「子供が会いたくないと言っている」と主張。棚瀬氏は、同居中の父親との仲の良さを立証し、父子が母抜きで会った際に、口を聞かない理由について、子供が「パパに味方したらママがカンカンに怒るでしょう」と発言した録音などを証拠として提出した。 「母が、同居する子供に『父か母か』の二者択一を迫るから、子供は『お父さんに会いたい』と言えない。つまり、面会交流が実現しないのは、子供の意思ではなく、母こそが会えなくしている。間接強制は、この母に『会えなくすることはやめなさい』と迫るものであると主張しました」 東京高裁の深見敏正裁判官は、棚瀬氏の主張を認め、「面会交流は、抗告人が自分の側に付くのか、相手方の味方をするのか、という態度を直接的にも間接的にも示さず、未成年者らを抗告人と相手方との紛争に巻き込まないようにすることで実現できる以上、間接強制は抗告人に不可能を強いるものでない」と判示した。 棚瀬氏は決定の意義について振り返る。 「まず、面会交流が実現しない原因を母親と認めた点で画期的だった。さらに、母親が暗黙のうちに二者択一を迫ったこと自体を問題と主張し、東京高裁が受け入れたということは、子供にとって、父母両方に愛着があって、両方いるのが幸せなんだというという前提があったと言える。今回の決定は、共同監護にコミットし、認めた画期的なものと考えています」
◆共同通信
欧州議会が対日決議「親の子供連れ去り」禁止を要請』
【ブリュッセル共同】欧州連合(EU)欧州議会本会議は8日、EU加盟国の国籍者と日本人の結婚が破綻した場合などに、日本人の親が日本国内で子どもを一方的に連れ去り、別れた相手と面会させないことなどを禁止する措置を迅速に講じるよう日本政府に要請する決議案を採択した。
日本は国境を越えて連れ去られた子どもの扱いを定めた「ハーグ条約」締約国だが、国内の連れ去りには適用されない。
決議は子どもの連れ去り行為が相当数あるとした上で「子どもへの重大な虐待」と強調。EU欧州委員会や加盟国などに対しても日本側に改善を求めていくよう求めた。決議には法的強制力はない。
各社、掲載記事
◆毎日新聞
「結婚破綻後の子どもの連れ去り」禁止措置 EUが日本政府に要請へ
◆産経新聞
親の子供連れ去り禁止要請 欧州議会が対日決議
欧州連合(EU)欧州議会本会議は8日、EU加盟国の国籍者と日本人の結婚が破綻した場合などに、日本人の親が日本国内で子どもを一方的に連れ去り、別れた相手と面会させないことなどを禁止する措置を迅速に講じるよう日本政府に要請する決議案を採択した。
日本は国境を越えて連れ去られた子どもの扱いを定めた「ハーグ条約」締約国だが、国内の連れ去りには適用されない。
決議は子どもの連れ去り行為が相当数あるとした上で「子どもへの重大な虐待」と強調。EU欧州委員会や加盟国などに対しても日本側に改善を求めていくよう求めた。決議には法的強制力はない。
ドイツ、フランス、イタリアの首脳は安倍晋三首相との会談でこの問題を取り上げるなど、子どもの連れ去りは外交問題化している。(共同)
◆共同通信英語版
European Parliament urges Japan to revamp child custody rules
◆Reuters
https://www.reuters.com/article/us-japan-children-eu-parliament-idUSKBN24A1LU
◆New York Times
EU Lawmakers Urge Japan to End Parental Child ‘Abductions’
◆US News and World Report
EU Lawmakers Urge Japan to End Parental Child ‘Abductions’
◆The Times of India
EU lawmakers urge Japan to end parental child “abductions”
◆The Japan Times
European Parliament urges Japan to revamp child custody rules
◆東京新聞
「親の子供連れ去り」禁止を要請 欧州議会が対日決議
◆中日新聞
「親の子供連れ去り」禁止を要請 欧州議会が対日決議
◆北海道新聞
「親の子供連れ去り」禁止を要請 欧州議会が対日決議
◆秋田魁新報
「親の子供連れ去り」禁止を要請 欧州議会が対日決議
◆福島民報
「親の子供連れ去り」禁止を要請
◆新潟日報
「親の子供連れ去り」禁止を要請
◆千葉日報
「親の子供連れ去り」禁止を要請 欧州議会が対日決議
◆静岡新聞
「親の子供連れ去り」禁止を要請 欧州議会が対日決議
◆中国新聞
「親の子供連れ去り」禁止を要請 欧州議会が対日決議
◆高知新聞
「親の子供連れ去り」禁止を要請 欧州議会が対日決議
◆西日本新聞
「親の子供連れ去り」禁止を要請
◆沖縄タイムズ
「親の子供連れ去り」禁止を要請 欧州議会が対日決議
◆欧州議会
日本におけるEU市民の親からの子の連れ去りに警鐘を鳴らす
<日本語仮抄訳>
欧州議会議員は、日本の当局が国際法の遵守に消極的であることで、日本において親による子の連れ去り事例が多数発生していることを懸念している。
7月8日(水)、賛成686票、反対1票、棄権8票で採択された決議において、欧州議会は、日本での親による子の連れ去りから生じる子どもの健康や幸福への影響について懸念を表明した。また日本の当局に対して、子どもの保護に関する国際法を履行し、共同親権を認めるよう法制度の変更を行うことを求めている。
国際法の履行
欧州議会は、EUの戦略的パートナーの一つである日本が、子の連れ去りに関する国際的なルールを遵守していないように見受けられることを遺憾としている。また日本の当局に対しては、国内法を国際的な公約や義務にと調和させるため、両親の婚姻関係が解消した後の子の返還や面会・訪問権に関する国内および国外の裁判所の決定を実行するよう求めている。
欧州議会議員は、子どもの最善の利益を守ることを第一に考えるべきであり、また子どもや親権のない親との将来の関係に及ぼす長期的な悪影響を避けるため、子の連れ去りの問題は、迅速に対処する必要があることを強調している。また、国連の「児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)」において、全ての子どもは、子の利益に反するものでない限り、両方の親との関係や直接的な交流を維持する権利があるとされていることを指摘している。
⇒司法制度調査会2020提言
12頁 民事分野でも、子の連れ去りについて、欧州諸国等から批判がなされている。
19頁 4 離婚をめぐる子の養育に関する問題
そのほか、当調査会犯罪被害者等支援PTにおいては、離婚をめぐる子の養育に関する問題についてもヒアリングを行った。父母が様々な理由で離婚する場合であっても、子が両親の十分な情愛の下で養育されることが、子の成長ひいては日本の未来にとって重要であることはいうまでもない。しかしながら、日本では、離婚を巡って夫婦間で子の連れ去りが起きたり、子と別居親との関係が遮断されるケースも少なくない。また、養育費の不払いが子の貧困を招いている。日本の宝である子の権利や将来を守るため、離婚後の親権制度の在り方、養育費の確保、面会交流の改善など、それぞれの課題について、諸外国の取組に学びつつ、党内の関係組織とも連携して、引き続き検討を進めていく。
令和2年6月25日、共同養育支援議員連盟による森雅子法務大臣、橋本聖子内閣府特命担当大臣(男女共同参画) に養育費不払い解消に関する提言・要望の申入れが行われました。
申し入れを頂いたのは下記の議連役員の各党議員の皆さまです。
馳浩会長(自民党)、柴山昌彦幹事長(自民党)、泉健太会長代理(国民民主党)、串田誠一幹事長代理(維新の会)、伊佐進一幹事長代理(公明党)、城内実事務局長代行(自民党)、三谷英弘事務局長次長(自民党)、鈴木貴子幹事(自民党)、かだ由紀子幹事(無所属)
【提言内容・申し入れの様子】
※提言書、申し入れの際の写真が下記のサイトに掲載されています。
◆馳浩議員 オフィシャルサイト
共同養育支援議員連盟 提言申入れ
◆城内みのる議員 ホームページ
各種議員連盟 要望活動
◆かだ由紀子議員ブログ
6月25日、離婚後の共同養育・共同親権にむけて、国会の超党派の議員連盟による大事な次の一歩が動きはじめました。
※参考:報道記事
令和2年6月25日、京都新聞、養育費の支払い「原則義務化を」 共同養育で提言「離婚しても親には責任」
養育費の支払い「原則義務化を」 共同養育で提言「離婚しても親には責任」
◆共同通信『子の連れ去り禁止を日本に要請』
【ブリュッセル共同】欧州連合(EU)欧州議会の請願委員会は16日、日本人とEU加盟国の国籍者との国際結婚が破綻した場合などに、日本人の親が日本国内で子を一方的に連れ去ることを禁じるよう、日本政府に求める決議案を全会一致で採択した。決議案はこうしたケースが「かなりの数に上り、驚くべき状況だ」と指摘。欧州委員会やEU加盟国政府にも、対日協議でこの問題を取り上げるよう求めた。
決議案は7月、欧州議会本会議で採決予定。日本は国境を越えて連れ去られた子どもの取り扱いを定めた「ハーグ条約」締約国だが、国内の連れ去りには適用されない。
◆EU議会 News
欧州議会請願委員会は2020年6月16日、日本政府に対し子の連れ去りの国際ルール施行を求める決議を全会一致で採択しました。
Petitions MEPs sound alarm over Japanese parental child abduction
◆上記翻訳頂いた方のページです
EUプレスリリース:欧州議会メンバー国の請願は日本の親による子の連れ去りに警鐘を鳴らす
【翻訳転載】
・子どもの保護および子どもの最善の利益に関する国際ルールを日本が遵守しないことに対する懸念
・日本の親権法は共同親権を認めておらず非親権者の親との有意義な接触を妨げている
請願委員会は、日本における親による子の連れ去りと、日本の当局が国際法を遵守することに消極的であることに懸念しています。
火曜日に採択され、賛成33票、反対0票の決議案の草案で、請願委員会は、日本での親による子の連れ去りの結果として、子どもの福祉に対する懸念を表明し、日本の当局に子どもの保護に関する国際ルールを履行するよう要請します。
この決議は、1980年の国際的な子の奪取の民事上の側面に関するハーグ条約に基づき、日本の裁判所が下した子どもを元の居住国に戻すとの判決が執行されないことに対する懸念を表明しているEU市民からの多数の請願の結果である。嘆願書は、日本の共同親権の規定の欠如、外国人の親が子どもと有意義な接触を維持することが妨害されない規定の欠如及び、これが子どもの福祉に及ぼす有害な影響を及ぼす可能性があることを強調しています。
[国際法の履行]
請願委員会は、日本の当局が、国際的勧告に従い、国連の子どもの権利条約(UNCRD)と整合するように、共同親権を規定する法改正を実施するよう日本の当局に要請します。戦略的パートナーとして、日本はまた、EUとの協力を強化し、子どもの返還および別居親に付与されたアクセス・訪問権に関する国内および外国の裁判所の判決が履行されるよう改善する必要があります。
欧州議会メンバー国は、子どもの最善の利益の保護が当局の最重要事項だということを強調し、連れ去り事件の迅速な処理、並びに、子ども及び非親権者の親との将来の関係に長期的な悪影響を及ぼすことを回避するよう要請します。
[家族への支援]
これらの法的紛争は国境を越えているため、請願委員会は全ての子ども保護制度が国境を越えたメカニズムを備えていると主張しています。彼らは国境を越えた紛争における親のための市民に優しいヨーロッパの情報サポートの開発を提案し、加盟国が家族法と日本のような第三国における子どもの権利に関する信頼できる情報を入手できるようにすることを勧めます。
理事会は、国境を越えた影響を持つ様々な国の子の連れ去り警告システム間の協力を強化し、委員会と協力して行方不明の子どもに対する警告メカニズムを設定すべきである、また、子どもの保護に関する国際法を施行するよう加盟国間の協力及び第三国と国際的な協力を求め、加盟国に対し、日本における子どもの連れ去りリスクと日本の当局の行動について市民に知らせるよう要請する。
[国際関係]
欧州議会メンバー国は、EUと日本の戦略的パートナーシップ協定の合同委員会を含む、考えられるあらゆるフォーラムで、この問題を提起するという委員会のコミットメントを歓迎します。日本の当局への圧力をさらに高めるために、彼らはまた、欧州連合外務・安全保障政策上級代表のジョセップ・ボレル氏に、1980年のハーグ条約および子どもの権利条約に基づく日本の国際的義務を、EUと日本の戦略的パートナーシップ協定の下で、今後開催される会議の議題に含めるよう要請する。
[背景情報]
フランスのエマニュエルマクロン大統領とイタリアのジュゼッペコンテ首相が2019年のG7サミットで、日本の安倍晋三首相に懸念を表明したとき、日本の子の連れ去り問題は国際的な注目を集めました。一方、EU大使は日本の法務大臣に対して共同書簡で本問題に対する懸念を表明した。去年、日本が子どもの権利条約とハーグ条約に違反していると主張して、別居親から国連人権理事会に正式な苦情が出されました。
議会の請願委員会は、親であるEU市民から日本の親による子の連れ去りと面会交流権について、過去数年間に多くの請願を受領しました。委員会は、2月19日の会合での日本における親による子の連れ去りに関する一連の請願の検討に続き、EUへの日本代表団宛てに、ハーグ条約及び子どもの権利に関する国際法と国内法を遵守するよう当局に要請する書簡を送付しました。
◆テレビ朝日『新型コロナで“離れ離れ”・別々に暮らす親子に深刻影響』
親子ネットに取材申込があり、今回のコロナ渦での面会交流の実情、問題点を説明、弊会会員の紹介をし、今回の報道に至りました。
記事はこちら
2020/05/22
テレビ朝日 【スーパーJチャンネル】
新型コロナで“離れ離れ”・別々に暮らす親子に深刻影響
新型コロナは離婚して離れて暮らす親子をさらに離れ離れにする状況に追い込んでいる。
子どもと離れて暮らす親107人にアンケートを行った結果によると、感染拡大後は約3割が面会の頻度が減少。
約4割がまったく面会できなくなり、約8割に影響が出ている(出典:共同親権草の根活動)。
子ども2人と離れて暮らすAは1年半ほど前に離婚し、月に1回程度子どもと面会する合意をしていた。
法務省は父母間での話し合いを呼び掛け、難しい場合は専門家への相談を解決策に挙げている。
支援する団体・親子の面会交流を実現する全国ネットワークは、離れて暮らす親子が確実に面会できるシステムを整えるよう法務省に求めている。
10歳長男と5歳長女と別居する父、9歳長男と別居の母の電話コメント。
家庭裁判所の審判書、法務省のHPの映像
◆Hanada『「実子誘拐ビジネス」の闇 人権派弁護士らのあくどい手口』
記事はこちら
◆東洋経済 『DV加害者にされた男性は名誉をどう回復したか』
(反論できない「支援措置制度」悪用の恐ろしさ)
記事はこちら
◆産経新聞 『感染拡大、親子の面会交流減少 別居側の4割超「一度も会えず」』
記事はこちら
◆法務省民事局発表資料
・令和2年4月 法務省 『父母の離婚後の子の養育に関する海外法制調査結果の公表について』
父母の離婚後の子の養育に関する海外法制調査結果の公表について
◆マスコミ各社の記事
・時事通信 『共同親権、多数が採用 24カ国対象の法務省調査』
共同親権、多数が採用 24カ国対象の法務省調査
・毎日新聞 『離婚後も「共同親権」、24カ国中22カ国 法務省、海外の法制度調査』
離婚後も「共同親権」、24カ国中22カ国 法務省、海外の法制度調査
・日経新聞 『大半の国が共同親権採用、法務省調査 運用方法に違いも』
大半の国が共同親権採用、法務省調査 運用方法に違いも
・TBS 『各国の共同親権に関する調査報告公表 法務省』
各国の共同親権に関する調査報告公表 法務省
・千葉日報 『共同親権、22カ国が採用 法務省調査、研究会の資料に』
共同親権、22カ国が採用 法務省調査、研究会の資料に
◆関連資料(過去の調査など)
・平成26年12月 法務省 『各国の離婚後の親権制度に関する調査研究業務報告書の公表について』
各国の離婚後の親権制度に関する調査研究業務報告書の公表について
記事はこちら
https://youtu.be/Z7pnbYkrdW8
08:20
離婚というのはこれは親同士の話し合い、或いは親同士で裁判をして行うことですけれども、離婚というのは親の事情であって子供事情ではないということが重要だと思っています。親が離婚したとしても子どもから見れば親は親なので、その夫婦の関係が切れることと子供の関係が消えることっていうのは僕は別個に考えるべきだというふうに思っています。今の現行の制度は単独親権制度になっていますのでどちらが親権を持つことは履行の時に決める、僕はこれも害悪だと思ってまして、なぜそこで一方に決めるんですか。
09:41
親としたら絶対子供に会わせたくないっていうのが現場の声で必ずでてくるんですれど、でもそれは子供の立場からした違うじゃないか子どもの福祉の観点から面会交流というのは考えていかなきゃいけないんじゃないかと思っています。
子どもが健やかに成長していく上でもこの面会交流は重要だと思っています。ただ、今は制度が単独親権制度でありますから、その制度の中で何ができるかというのを考えたときには、やはり子どもの福祉を考えて個別の事情にも配慮しつつ面会交流を広めていく、進めていくというのが重要だろう思います。
2019年10月8日にフランス議会へ提出された「子の連れ去りに関する決議案(proposition de resolution)」が2020年2月5日に全会一致で採択されました
以下は、フランス議会がフランス政府に対し、子の連れ去り問題を日本国政府へ働きかけるよう提出したものです
採択文
https://twitter.com/senateursLaREM/status/1225168264080297985?s=20
https://twitter.com/senateursLaREM/status/1225168264080297985?s=20
Yung議員 SNS
https://twitter.com/SenateurRYung/status/1225138646757580803?s=20
Cet après-midi, @Senat a adopté à l'unanimité (340 voix) ma proposition de résolution relative aux enfants franco-japonais privés de tout lien avec leur parent français à la suite d'un enlèvement parental. @KushidaOf @HidehiroMitani @katayama_s https://t.co/OKpMm9wmOR
— Richard Yung (@SenateurRYung) February 5, 2020
<2020/2/7 update>
フランス議会において「実子誘拐によりフランス人片親と引き離された日仏の子どもたち」に関する法案が決議されました
◇Enfants franco-japonais
https://www.senat.fr/dossier-legislatif/ppr19-029.html
◇決議原文
https://www.senat.fr/leg/ppr19-029.html
フランス上院議会ユング議員が参議院議員 片山さつき先生・衆議院議員 串田誠一先生・衆議院議員 みたに英弘先生を来訪されました。日本では報道されていませんが、海外では日本の子の連れ去り問題への批判が高まっています。
Yung議員 SNS
https://twitter.com/SenateurRYung/status/1201519584102244352?s=20
Ce matin, je me suis entretenu avec Satsuki KATAYAMA, sénatrice et ancienne ministre, du douloureux dossier des enfants franco-japonais privés de tout lien avec leur parent français. pic.twitter.com/f4sOiN41t7
— Richard Yung (@SenateurRYung) December 2, 2019
串田誠一先生 SNS
https://twitter.com/KushidaOf/status/1201372765887975424?s=20
本日フランス上院議会からユング上院議員が私の議員会館に来てくださいました。全てフランス大使館の手配です。
フランスは近々「実子誘拐によってフランス人片親と引き離された日仏の子どもたち」に関する決議案を全党一致で決議するとのことです。呑気なのは日本だけです。 pic.twitter.com/VhRdA4FFPo— KUSHIDA a member of the House of Representatives (@KushidaOf) December 2, 2019
みたに英弘先生 SNS
https://twitter.com/mitani_h/status/1201436369228165120
本日はフランス上院議会からユング議員に来訪頂き、離婚後の共同親権について率直な意見交換を行わせて頂きました。私からは日本の課題及び最近の動向を紹介し、ユング議員からは「実子誘拐によりフランス人片親と引き離された日仏の子どもたち」に関する決議案についての仏議会の動きを説明頂きました pic.twitter.com/1Rgpgpo953
— みたに英弘 自民党 神奈川8区/横浜市青葉・緑・都筑区 (@mitani_h) December 2, 2019
皆様、ぜひユング議員への”いいね”と”フォロー”をお願い致します
◇Twitter
https://twitter.com/SenateurRYung/status/1201519584102244352?s=20
◇Facebook
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=10221004368442665&set=a.1884712201281&type=1&theater
日本の異常な子の連れ去り、引き離しは人権問題として各国から非難されています
※2/21発行の会報「引き離し」第50号に掲載
◇英国(イギリス)
英国外務省渡航情報
https://www.gov.uk/foreign-travel-advice/japan/local-laws-and-customs
<抜粋>
Japanese family law is very different from UK law. We have produced some general information about issues around custody, child abduction and parental rights. Japan is a signatory of the Convention on the Civil Aspects of International Child Abduction (the Hague Convention), which entered into force in Japan on 1 April 2014.
(和訳)
日本の家族法は英国の法律とは大きく異なります。 監護権、子どもの奪取(誘拐)、親権に関する問題に関する一般的な情報を作成しました。
日本は、2014年4月1日に日本で発効した国際的な子の奪取の民事面に関する条約(ハーグ条約)の署名国です。
https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/401152/140331_CHILD_ABDUCTION_JAPAN_martin_redmond.pdf
(和訳)
親の子の誘拐
親による子どもの誘拐自体は、日本の犯罪ではありません。ただし、特定の状況では、犯罪として分類される「誘拐」として分類される可能性があります。 拉致事件における法的地位を確立するために、残された親は日本の弁護士に助言を求めるか、日本の警察に話しかけるべきです。
英国政府は、いかなる状況においても、連れて行った親または日本の裁判所に、子どもが通常住んでいる国に子どもを返還させることはできません。
1980年の国際的な子の奪取の民事面に関するハーグ条約(ハーグ条約)は、子どもたちがどこに住むべきかを決定するための裁判を居住地で行うことにより、子どもたちの通常の状態への迅速な復帰をもたらす手順を提供することにより、国際的な境界を越えた拉致および保留の有害な影響から子どもを保護しようとする多国間条約です。 ハーグ条約は、2014年4月1日に日本で発効しました。
親権問題
日本の家庭裁判所は一般に、現在の環境にとどまることが子どもの最善の利益であると考えているため、通常、最近子どもの世話をしている親に完全な親権を与えます。多くの場合、特に幼い子供の場合、通常、子どもと一緒に過ごす時間が長くなるため、母親は完全な監護権を授与されます。
親権を持たない親が子どもとの面会交流を保持したい場合、家庭裁判所は調査を行い、決定を下します。面会交流権が与えられているが、親権者の親が遵守していない場合、裁判所は、裁判所の決定を完全に遵守するまで、金銭的補償を他の親に支払うよう命令することができます。
◇オーストラリア
https://www.smartraveller.gov.au/destinations/asia/japan
<抜粋>
Japanese family law, including divorce and child custody, is very different to Australian law. If you’re involved in custody or other family disputes, consult a lawyer before you leaveAustralia.
(和訳)
日本の民法(いわゆる親族法)の離婚および親権は、オーストラリアの法律と大きく違います。もし、親権や家族問題がある場合、オーストラリアを離れる前に弁護士等に相談することをお勧めします。
◇アメリカ合衆国(米国)
<抜粋>
International Parental Child Abduction
Review information about International Parental Child Abduction in Japan. For additional IPCA-related information, please see the International Child Abduction Prevention and Return Act (ICAPRA) report.
(解説)
米国国務省では、子の連れ去り報告書が毎年作成されています。日本も報告書に記載されています(138頁中2頁記載)。2018年版へのリンクが記載されています。なお、同報告書は、2019年も作成されており、148頁中3頁記載されています。
米国国務省による子の連れ去り報告書
https://travel.state.gov/content/travel/en/International-Parental-Child-Abduction/for-providers/legal-reports-and-data/reported-cases.html
ユング議員のブログによりますと、次の会議は2月19日のようです。
Enfants euro-japonais enlevés par leur parent japonais: échanges fructueux avec des députés européens
以下には、何を決議に求めているかが記載されており、欧州政府によるハーグ条約履行状況の評価などを求めてます。
<2020/1/26 update>
記事はこちら
https://youtu.be/mXkzwNsRU_c
【字幕】
皆様、私は、この機会に、日本におけるヨーロッパの子どもや親たちに関する特有の、かつ、悲惨な状況についてお伝えしたいと思います。
偉大なアジアの国家であり、様々な面で重要なパートナーとなっているこの国において、 毎年、15万人もの子どもが一方の親に連れ去られ、もう一方との親との接触を妨害されています。
多くのヨーロッパの国民もこの驚くべき状況に巻き込まれています。
特に、我々は以下の点を考慮しなければなりません。
日本では共同親権制度はなく一方の親による子どもの誘拐は犯罪とはみなされません。
子どもを誘拐した後、裁判所の判決を尊重しない親に対し制裁が科せられることもありません。
これは、日本も1994年に批准している児童の権利条約を侮辱するものであり、子どもとの関係を継続的に維持する親の権利も侵害しています。
このような犯罪行為に直面し、特にヨーロッパ国籍を有している者がその犯罪被害者である場合、我々は沈黙していることはできません。
多くのヨーロッパの国籍を有する者たち、特にイタリア人、ドイツ人、フランス人は、欧州連合が、この問題を認識し、議論し、 具体的な行動をとることを望んでいます。
端的に言えば、欧州連合に助けてほしいと望んでいます。
例えば、ヴィンセント「フィショ」氏とトッマーソ「ペリーナ」氏の事件があります。
彼らは、判決で面会交流について有利な判決がでているにも関わらず、 彼らの子どもたちと再会できず日々戦っています。
私は彼らと会い、その必死の叫びを聞き、解決を求められました。
これが、本日、私が欧州委員会に明確に約束してもらいたいとお願いしている理由です。
私は、ストラスブルグにおいて投票がなされ決議がなされることで、この問題がより重要な問題となることを望みます。
また、近年の貿易協定や日本と欧州連合との戦略的パートナーシップ協定を利用し、 日本政府に対し「法の支配」を可及的速やかに回復するよう求めることを望みます。
【経緯】
欧州議会で、イタリア選出の党派M5S(NI)のIgnazio Corrao議員が、
日本の子の連れ去りに関する非難演説を行い、非難決議案を2件提出するといっています。
同じく欧州会議の政党であるRenew Europe(を構成するFranceのLaREM)からも、子供の連れ去り非難決議案が提出されています。
https://twitter.com/senateursLaREM/status/1197200032644128768
欧州議会でも、日本の子の連れ去りに関する非難の声が大きくなりつつあります。
なお、欧州会議の構成は以下の通りです。
https://www.europarl.europa.eu/portal/en
https://en.wikipedia.org/wiki/European_Parliament
M5S(イタリア) 欧州議会でNI
http://movimento5stelle.it/
Renew Europe 欧州議会でRE
https://reneweuropegroup.eu/en/
LaREM(フランス)
https://en-marche.fr/
◇2019年12月22日
上記フランスのLaREMの非難決議案「日本人の片親による実子誘拐によって欧州の片親と断絶させられた子供達に関する欧州決議案」は採択され欧州議会へ提出されました
◇Sénateurs LaREM
https://twitter.com/senateursLaREM/status/1207297217574375427?s=20
◇日本語版
https://twitter.com/RaptEnfantJapon/status/1207647464708280320?s=20
ドイツ・イタリアの外務省より日本の子の連れ去りに関する渡航勧告が出されました。
◇ドイツ外務省の海外情報
https://auswaertiges-amt.de/de/aussenpolitik/laender/japan-node/japansicherheit/213032
→ 「4 Rechtliche Besonderheiten」
→ 「Bei Kindesentziehungen …」
「Bei Kindesentziehungen nach Japan kann mit einer Rückführung der entzogenen Kinder nur gerechnet werden, wenn der entziehende Elternteil zustimmt. In Japan ist zwar das Haager Kindesentziehungsübereinkommen (HKÜ) anwendbar, es wird jedoch von Japan nur unzureichend umgesetzt. Selbst rechtskräftige Rückführungsentscheidungen japanischer Gerichte werden nicht gegen den Willen des entziehenden Elternteils vollstreckt.」
日本語訳
「日本への子どもの奪取の場合、奪取された子どもは、奪取した親が同意した場合にのみ返還できます。国際的な子の奪取に関するハーグ条約は日本で適用されますが、日本では不十分にしか実施されていません。日本の裁判所による法的拘束力のある返還の決定でさえ、子どもを奪取された親の意思に反して強制されません。」
◇イタリア外務省の海外情報
http://viaggiaresicuri.it/#/country/JPN
→ 「Normativa locale in tema di diritto di famiglia …」
「in Giappone il diritto di famiglia presenta sostanziali differenze rispetto a quello italiano. Il Giappone ha aderito alla Convenzione dell’Aja del 1980 sulla sottrazione internazionale dei minori nel 2014 e ha recepito a livello normativo quanto previsto dal trattato. Purtuttavia, ad oggi in Giappone un genitore che sottrae i figli dal nucleo familiare e non consente di farli vedere all’altro coniuge non è perseguibile penalmente. Risulta nei fatti, pertanto, molto difficile per genitori italiani esercitare in questi casi i propri diritti parentali di custodia o di visita attraverso sentenze di tribunali, poichè il sistema del diritto di famiglia giapponese privilegia sempre forme di conciliazione e mediazione tra le parti. La normativa giapponese non prevede inoltre l’istituto dell’affidamento congiunto, né di un’alternanza della custodia parentale tra i due genitori. In caso di sentenze – anche passate in giudicato – favorevoli ai diritti dei genitori cui i figli sono stati sottratti, non è previsto un meccanismo di esecuzione forzata di tali decisioni dei tribunali. Nel 2019 è stata approvata dal Parlamento una legge che mira a migliorare l’esecuzione delle sentenze relative alla sottrazione internazionale di minori, che entrerà in vigore nell’aprile 2020. E’ inoltre attualmente allo studio della Dieta una revisione delle leggi e delle procedure amministrative interne volta a rendere esecutive le sentenze nell’ambito del diritto di famiglia per i casi interni al Giappone, che non ricadono entro la giurisdizione della Convenzione dell’Aja del 1980.」
日本語訳
「日本の家族法:家族法に関して、日本はイタリアとは大きく異なります。 2014年、日本は法律を改正して、1980年の国際的な子の奪取に関するハーグ条約の締約国になりました。ただし、現在のところ、子どもを家族単位から連れ去り、配偶者の子どもへのアクセスを阻止することは犯罪化されていません。実際、日本の家族法制度は常に当事者間の調停と調停の形態を好むため、イタリアの親が裁判所の判決を通じて親権または親権を行使することはこれらのケースでは非常に困難です。日本の法律は、2人の親の間の共同監護のシステムまたは親の監護の置き換えを規定していません。裁判所の判決が下された場合でも、司法当局により、子供を奪われた人々の親権を支持して、そのようなことを実施するメカニズムはありません。 2019年4月、2020年4月に施行される法案が可決され、国際的な子の奪取に対する刑罰の執行を改善することを意図しました。法律と行政手続きの見直しは、現在国会で検討中です。目標は、1980年のハーグ条約の管轄下にない事件に関して、日本で家族法の判決を執行することです。」
記事はこちら
https://youtu.be/bgUK43t0FT8
【議事録抜粋】
○串田委員 後でまたもう一つ、最後に質問させていただきますけれども。
実は、外国も非常に苦労しているんです。アメリカも、カリフォルニアから始まりました。そして、そのときにやはり単独だったんですよ。それが、一九七九年、ジェームズ・クックという人、共同監護の父と呼ばれているんですが、共同監護法というのを成立しまして、今、五十州でそれが適用されています。
ドイツも、実は単独親権だったんです。ところが、一九八二年に連邦憲法裁判所が違憲の判決をしたものだから、国の中で共同親権へと法整備をしていった。どこの国も苦労しているんです。
それは、だって、別れるという状況で円満に話をするということはなかなか難しい。だけれども、子供の権利として、子供はどちらが幸せなのかということで、世界が知恵を出し合ってつくったのが子どもの権利条約じゃないですか。だから、日本もこれを批准したんじゃないですか。
私は、私の考えを押しつけようと思っているわけじゃないんです。世界がやっているからまねしようと言っているわけじゃないんです。日本自身が、一九九四年にこの条約を締結し、それを守っていないということで、国連から再三勧告を受けているじゃないですか。これを守るというのは、国の責務として必要だと私は思います。
そして、昨年、ハーグ条約の不履行国と認定されました。これは、子の連れ去りについて、ほかの国から日本に連れ去るということなんですけれども、どうしてそういったようなことが横行するかといえば、日本は連れ去りが一番有効な手段だというふうなことで、外国からも連れ去られていく。そして、それを、アメリカは日本を非難しました。不履行国という非難ですよ。このときの単語はアブダクションですよ。これは拉致じゃないですか。拉致の常習国という認定をアメリカからされたのと同じなんですよ。
こういうような意味で、先ほど外務大臣は条約に反していないと言いましたけれども、それは、国が反しているかどうかということではないんです。アメリカとしては反していると思っている。ヨーロッパとしては反していると思っている。これは、謙虚にこういったようなことを見習っていく必要が私はあると思うんです。
これは、安倍政権を批判しているわけじゃないんです。この条約を締結したのは一九九四年、連立内閣のときだったんですよ。自公政権もできなかったんです。民主党政権もできなかったんです。なぜかといったら、すごく大変な作業なんです。
これは、連れ去りをすれば処分を、刑事罰をしなきゃいけない。だけれども、一方で、DV被害者も守っていかなきゃいけないんです。それを、一生懸命、国が知恵を出し合って、ほかの国はやっているんだけれども、日本は現場に丸投げ。だから、現状維持になってしまうので、連れ去りが横行してしまうんです。連れ去りが一番有効な手段になってしまうんです。
安倍総理、どうでしょう。今、この日本を支える若者が、どういう若者がいいのか、考えていただきたいんです。一方では、いろんな事情で別れ離れになっても双方の親から養育を受ける、そういう子供がこの日本を支える方がいいのか、それとも、あなたの父親は悪い男なんだよ、そういうふうにして、実の親を憎むような子供が大きくなってこの日本を支えた方がいいのか。
安倍総理、この条約を締結した以上は、決断、国民が見ている前ではっきりと、この条約を遵守するような法改正へと進むということを明言していただけないでしょうか。
○安倍内閣総理大臣 この日本が条約上の義務を果たしているか、遵守しているかどうかということについては河野大臣からお答えをさせていただきましたし、また、政府の立場については山下法務大臣から答弁をさせていただき、親権とは別に、親の面会、そういう権利についてはそうした対応をしているということは答弁させていただきました。
一方、今、串田議員のお話を聞いていて、聞いていると、なるほど、もっともだなという気もしてくるわけでございまして、子供としては、やはりお父さんにも会いたいしお母さんにも会いたい、お母さんにも会いたいしお父さんにも会いたいという、それはそういう気持ちなんだろうなということは、よく私も理解できます。
この問題については、国会の議論の状況等も踏まえまして、きょうもそうした議論がございましたが、民法を所管する法務省において引き続き検討をさせたいと思います。
議事録リンク
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/198/0018/19802250018013a.html
親子の面会交流支援10年 福岡の社団法人
福岡市中央区大名の公益社団法人「家庭問題情報センター・福岡ファミリー相談室」が、離婚で離れて暮らす親子の面会交流を支援する取り組みを始めて今年で10年目を迎えた。これまでに支援した親子は100組を超え、子どもの心のケアに役立っている。
面会交流は、離婚や別居で一緒に暮らしていない親子が定期的に会ったり、電話などで連絡を取りあったりすること。親同士が話し合いでどのような方法で交流するかを決めるが、まとまらない場合は家裁が仲介する「調停」や「審判」で決定する。
同相談室は元家裁調査官らが集まり、1993年に設立。離婚を考える夫婦の相談などを受け付け、2007年からは、面会がうまくいかない当事者間の調整にも取り組んできた。原則1年間、親子の面会日時を設定し、1~2か月に一度の面会に付き添う。
付き添い回数は昨年末までに、107組で計1000回を超えた。
九州北部に母親と暮らす小学校低学年の女児は数年前、別居する父親(40歳代)との面会を2年間続けた。最初の1年は相談室内で職員が同席した。女児は両親に気を使う場面もあったが、次第に面会を楽しみにするようになったという。
相談員の江口朋子さん(69)は「子どもは定期的に親と会うことで愛情を感じ、健全な成長につながる」と面会の大切さを説く。
問い合わせは平日の午前10時~午後4時、同相談室(092・734・6573)へ。
「子ども最優先に 離婚後の面会交流」(時論公論)
今日のテーマは、離婚した親が離れて暮らしている子どもと会う「面会交流」です。「夫や妻と別れても、わが子には会いたい」。面会交流を求めて裁判所に
調停を起こす親が増えています。その陰でトラブルが相次いでいて、先週、兵庫県では4歳の女の子が面会交流中に父親に殺害されるという痛ましい事件が起きました。親どうしの争いをなくし、子どもが安心して親に会えるようにするにはどうすればよいか考えます。
解説のポイントです。まず、面会交流をめぐり、どんな問題が起きているのか
見ていきます。そして、法律や制度の整備の遅れが問題を深刻化させている現状を押さえたうえで、子どもの思いを最優先した面会交流のあり方を考えたいと思います。
先週、兵庫県伊丹市のマションの部屋で父親と4歳の長女が死亡しているのが見つかりました。警察は父親が長女の首を絞めて殺害したあと自殺したとみて調べています。長女は去年、両親が離婚した後、母親と暮らしていましたが、
月に1回父親と面会交流することになっていて、その初めての面会の日に事件は起きました。
また、今年1月には長崎市で父親が別れた母親を刃物で刺して殺害し、自殺する事件が起きました。警察は母親が当時2歳の長男を父親に会わせに行って被害にあったとみています。
幼い子どもが実の親から命を絶たれた無念さ、そして、母親を奪われた苦しみを考えますと胸が痛むばかりか、どうにもやりきれない思いがします。
こうした重大な事件には至らなくとも、面会交流をめぐる夫婦間の争いは日常的に起きています。
1万2264件。これは子どもと別れて暮らしている親が1年間に全国の家庭裁判所に面会交流の調停を申し立てた件数です。10年前の2.4倍に増えていて、父親からの申し立てが急増しています。
その背景には男性の育児参加の広がりがあります。子育てに積極的に関わる父親が多くなり、妻と別れても子どもとの面会交流は続けたいと思う男性が増えているのです。
その一方で、配偶者から暴力を受けるDV、ドメスティックバイオレンスの被害を訴えて、離婚や別居をする女性も増えています。
このため、男性の側が「自分は暴力をふるった覚えはない。だから子どもに会わせてほしい」と申し出ても、女性の側はDVの被害を受けたことを理由に「夫と関わりたくない。子どもも合わせたくない」と言って応じない。
対立が広がる中で、母親が子どもを連れて家を出て所在がわからなくなったり、父親が母親の元にいる子どもを無断で連れ戻したりするトラブルが相次ぎ、その結果、板ばさみとなって苦しむ子どもが増えています。
ここで考えなければならないのは、日本では法律や制度の整備の遅れが問題を深刻化させているということです。
欧米では離婚しても双方の親に親権を認める「共同親権」が主流です。そして、離婚は面会交流の方法や養育費の分担などを取り決めたうえで裁判所が決定する仕組みになっています。
これに対し、日本は、かつては欧米でも主流だった「単独親権」をとり続けていて、離婚すると片方の親の親権が無くなることが民法で定められています。また、夫婦の話し合いだけで離婚できる「協議離婚」の制度があり、離婚の9割を占めています。このため日本では面会交流の取り決めをしないまま離婚するケースが多く、また、親権を持つ親が子どもを会わせない場合もあることから、離婚が成立した後で子どもを奪い合う争いが起きているのです。
こうした状況を改善しようと、超党派の国会議員が「親子断絶防止議員連盟」をつくり、面会交流を促進するための法案を国会に提出する準備を進めていますが、これが波紋を広げています。
検討されている法案は、離婚後も子どもが双方の親との関係を継続できるようにすることは父母の責任であるという基本理念を掲げたうえで、離婚の際に、面会交流や養育費の分担を書面で取り決めるように求めています。
また、面会交流などの取り決めをせずに別居して、子どもが片方の親と会えなくなる事態が起きないように、国や自治体は親に対する啓発活動を行うとしています。
こうした面会交流の実施を強化する動きに、夫から暴力を受けた女性たちが強く反発しています。法案には、子どもへの虐待や配偶者に対する暴力がある場合は、面会交流を行わないなど特別な配慮をすることが盛り込まれましたが、その具体的な方法は示されていません。
このため女性たちは、DVや虐待を防ぐ対策が不十分な中で安易に面会交流を進めれば、被害が一層深刻化すると訴えているのです。
親子関係を継続することが子どもの利益にならない場合があることを考慮して
慎重に議論を進める必要があります。
では、親同士の争いをなくすにはどうすればいいか。難しい問題ですが、第三者が間に入って面会交流をサポートする必要があります。
裁判所に離婚を申し立てる人が少ない日本では、複数の民間団体がそれぞれのやり方で面会交流の橋渡しをしています。その草分けとして20年以上にわたって東京や大阪などで活動している「FPIC(エフピック)・家庭問題情報センター」は家庭裁判所で調査官を務めた人たちなどによって設立されました。
当事者から面会交流の相談を受けて、相手に子どもを1人で会わせるのが不安な場合は面会場所にスタッフが付き添い、不安はないけれども相手と顔を合わせたくない場合はスタッフが子どもを相手に受け渡す手助けをしています。
そうした実績のある団体が去年から新たに始めたのが、相談に来た親たちに子どもの気持ちを理解してもらうセミナーです。
セミナーで使われるテキストには、親が離婚する前と後で、子どもが何を思い、
何に悩んでいるのか、イラストとともにわかりやすく紹介されています。
「離婚する前、親がけんかをするのは自分のせいではないかと思って苦しんでいる子どもの気持ちに気づいていますか?」「親に連れられて家を出たとき、別居している親に会いたいと思っても、一緒に暮らしている親を気遣い、本音を口に出せない辛さがわかりますか?」
セミナーに参加した親の多くが子どもを傷つけていることに気付き、子どもの視点で離婚や離婚後の親子の関係を考えるようになるといいます。
この取り組みから言えることは、親が離婚を考え始めた段階で子どもの気持ちに目を向ける機会があれば、大人の都合しか考えない、子どもから見れば身勝手な争いを防げる可能性があるということです。
そうした親への教育を離婚の手続きの中に取り入れ、制度化しているのが韓国です。韓国にも協議離婚の制度がありますが、仕組みは日本とは異なります。
まず、裁判所に申請しなければなりません。そして、3か月間の熟慮期間が設けられ、その間に裁判所で離婚が子どもに与える影響や離婚後の親の役割を学びます。そのうえで面会交流や養育費の支払いについて合意した協議書をつくり、これを裁判所に提出することで離婚が成立するのです。
こうして見てきますと、欧米や韓国では、双方の親から愛情を受け続けることが子どもの利益になると考え、面会交流の取り決めを離婚の前提条件としているのに対し、日本は子どもが蚊帳の外に置かれている状態です。
必要なのは親の思いを優先するのではなく、子どもの思いや与える影響を最優先に考えて、国が早急に離婚する親と子どもを支援する体制を整えることです。
とりわけ、DVや虐待の問題を抱える親子の面会交流は、欧米のように安全を守る監督者を付けてまで行う必要があるかどうか、慎重かつ十分な議論が必要です。
日付が変わり、きょう5月5日は「こどもの日」です。子どもの人格を重んじて、子どもの幸福を考える日です。この問題に対する社会の関心が深まることを願ってやみません。
(村田 英明 解説委員)
子供“連れ去り” 国内外から日本の姿勢批判「英語では『誘拐・拉致』だ」 ハーグ条約発効3年
一方の親による子供の連れ去りをめぐり、日本の予防・解決態勢の不備を指摘する声が国内外で強まっている。今国会では「現状のままでは連れ去りが続く」との危惧が提起されたほか、子供を連れ去られた親でつくる団体も国に対策を求めた。海外では対日制裁を求める声も上がる。ハーグ条約の日本での発効から3年を迎えた中、日本の対応に注目が集まっている。(小野田雄一)
■
「日本はハーグ条約に加盟しながら、国内では連れ去りが実質的に容認され、むしろ“連れ去った者勝ち”の状態だ」「連れ去りというが、英語では『誘拐・拉致』だ。米国から子供を連れ去って国際手配された日本人女性もいる。子供の返還に応じない国への制裁を定めた『ゴールドマン法』に基づき、米国が日本を制裁する恐れもある」
日本維新の会の松浪健太議員(45)は今国会の衆院予算委員会委や法務委員会でこう指摘した。その上で子供の親権をめぐる夫婦間の訴訟などで、子供を連れ去った側が親権を取りやすい現状を改める考えがあるか政府に問いかけた。
安倍晋三首相(62)は「親権は個別事情を総合考慮して決定されている」と答弁。岸田文雄外相(59)も「ゴールドマン法による制裁は過去に例がない。対日制裁の可能性は低い」との認識を示した。
松浪氏は「親権紛争の際、日本が『継続性の原則』(連れ去りの結果であっても、子供の現在の成育環境に問題がない限りは現状維持を尊重する考え方)を過剰に重視してきた結果、連れ去りがなくならないということを政府は認識すべきだ」と注文した。
3月22日には、一方の親に子供を連れ去られた親らでつくる団体が、国に連れ去りをなくす政策の推進などを求める請願を行った。
団体メンバーの男性は「多くの先進国では子供を連れ去ると誘拐や児童虐待で刑事罰が科される。日本の刑法でも誘拐罪などで摘発できるが、家庭内の問題とされ、実際はほぼ適用されない。日本でも刑事罰を適用し、不当な連れ去りをなくすべきだ」と話した。
■
海外では4月6日、米下院外交委員会の人権小委員会でゴールドマン法についての公聴会が開かれ、日本などに子供を連れ去られた米国人らが証言した。委員会の冒頭、議長が岸田外相の発言を『無礼だ』と述べ、「日本を制裁すべきだ」と話す場面もあった。
日本人女性に4人の子供を連れ去られた男性も「大阪高裁は子供を返さない決定をした。ハーグ条約違反だ。トランプ大統領は先進7カ国首脳会議(G7サミット)で日本に問題提起すべきだ。対日制裁を発動すべきだ」と訴えた。
男性の話などによると、大阪高裁は昨年1月、子供を米国へ返還することを決定。しかし妻が新たに訴訟を起こし、同高裁は今年2月、「男性には資力がなく、返還は不適切だ」との逆転判断を示した。男性は最高裁まで争うという。
イタリアでも今年、最大手紙「ラ・スタンパ」を含む複数の新聞が、日本人妻に子供を連れ去られたイタリア人男性の記事を掲載。大きな反響を呼び、政府に日本への働きかけを求める声が高まっているという。
こうした動きについて、外務省ハーグ条約室は「ハーグ条約は、返還で子供への不利益が生じる場合などに返還しないケースを認めている。米国人男性の条約違反という主張は遺憾だ」と指摘。また「全ての条約加盟国が実績を公表しているわけではないが、日本の姿勢や実績が加盟各国に比較して劣っているとは考えていない」としている。
子供の国際返還、実現は3割 ハーグ条約発効3年、外務省が実績取りまとめ
国際結婚した夫婦間などで国境をまたいだ子供の連れ去りが起きた場合、原則的に子供を元の居住国に戻すことなどを定めた「ハーグ条約」をめぐり、日本に関連する子供の返還実現率は約3割であることが15日、分かった。日本での同条約発効から4月1日で3年を迎え、外務省が3月31日までの実績をまとめた。
同条約によると、子供を連れ去られた親は、自国や連れ去られ先の国の中央機関(日本は外務省)に子供の返還に向けた援助を申請できる。中央機関は夫婦間の交渉などを支援。交渉がまとまらなかった場合、裁判所が返還すべきかどうか判断する。返還が原則だが、(1)連れ去られ先の環境に子供が適応している(2)返還で子供の心身に悪影響や危険が生じうる(3)子供が返還を望まない-などの場合、返還しなくてよいとする例外規定がある。
まとめによると、「日本から外国への返還に向けた援助」の申請件数は68件、「外国から日本への返還に向けた援助」の申請件数は56件。このうち「日本から外国への返還」が実現されたのは20件、「外国から日本への返還」が実現されたのは19件で、実現率はともに3割前後となった。
一方、「日本から外国へ返還しない」と決まった事例は16件、「外国から日本へ返還しない」と決まった事例は8件だった。
同条約は1980年に制定。国際結婚の増加に伴う子供の連れ去り問題に対応するため日本も加盟し、2014年4月に発効した。
【用語解説】ハーグ条約
一方の親がもう一方の親の同意を得ることなく、子供を自分の母国へ連れ出す「子供の連れ去り」から子供を守るための国際ルール。連れ去られた子供は一方の親や親族、友人との交流が断絶されるほか、異なる言語や環境への適応も必要となる。生活の急変は子供に有害な影響が生じる可能性があり、原則として元の居住国へ返還することが義務付けられている
娘との再会願い…高橋ジョージが悲痛な叫びを続ける背景
自分の娘に3年も会えていない歌手の高橋ジョージ(58)が、テレビやツイッターで悲痛な叫びを続けている。現在は大阪でミュージカルに出演中なのだが、14日のツイッターで「大阪にいる間に、会えなくても、こっそりでもいいから、娘に舞台を観に来て欲しいなぁ」と、大阪に住む娘に呼びかけた。
さらに、高橋は「舞台から客席を探して見ている。前回の舞台の時に8歳だった娘が『いつかパパとミュージカルに出たい』と言ってくれた。希望だけがこの俺を支えて来た」と切なすぎる胸の内を吐露。舞台初日の前日(1日)のツイッターでは「娘が来てくれる事、希望をもって、3年ぶりの再会を夢見て頑張ろうと思います、、、なんか、娘と同じ街にいるだけで嬉しいのです」との思いを明かしている。
■離婚後に子供と会えない親が続出
先月31日放送のフジテレビ系「訂正させてください~人生を狂わせたスキャンダル~」に出演した際は、元妻の三船美佳(34)について「悪く書かれているが、そういう人ではない」「娘も育ててくれた」とフォローもした。では、一体なぜ、日本では離婚後に子供と会えない親が続出しているのか。
「片方の親にしか親権を認めず、育てている親の言い分ばかりを重視したり、子供の“連れ去り”を容認する現在の司法制度に問題があるんです。最近では、裁判で面会交流が認められたにもかかわらず、娘と同居する夫が応じなかったとして、妻側に1回の拒否につき100万円を支払う決定も東京家裁で出された。この決定の後、夫側は面会に応じ、妻は5年ぶりに娘と再会できた。裁判所もようやく異様な状況にあることを気付き始めています」(離婚に詳しい弁護士)
別居や離婚の際、片方の親が子供を連れ去ったまま、もう片方の親に会わせないことは、国際的にも大問題になりつつある。今月6日に行われた米下院小委員会では、共和党のスミス委員長が連れ去りを容認する日本に対し「言語道断だ」「制裁する必要がある」「人権侵害は許されない」とトランプ政権に呼びかけた。このままいけば、国際紛争の“火種”になることは間違いないだろう。
岸田外相発言を批判=子の連れ去り問題で-米下院小委員長
【ワシントン時事】米下院外交委人権小委員会で6日、米国人との結婚が破綻した外国人が子供を実家などに連れ去ってしまう問題に関する公聴会が開かれた。この中でスミス委員長(共和党)は、日本がこの問題で制裁を受ける可能性は低いとした岸田文雄外相の発言を批判し、トランプ政権に対日制裁を呼び掛けた。
米国では2014年、米国に子供を戻すため適切な措置を取らない国に対し、連邦政府が安全保障上の支援打ち切りなどの制裁を科せるようにする法律が成立した。岸田外相は2月14日の衆院予算委員会で「これまで米国が外国に(制裁)措置を実施した例はない。わが国に適用される可能性は考えにくい」などと述べていた。
スミス氏は外相の発言を小委員会で紹介し、「言語道断だ」と非難。「日本を守るために命を危険にさらしている米軍人も(日本人による子供連れ去りの)犠牲者に含まれる」と指摘した上で、「日本を制裁する必要がある。日本は同盟国だから、なおのこと人権侵害は許されない」と強調した。(2017/04/07-14:14)
岡山)離婚で離ればなれ…親子の面会交流、増える橋渡し
離婚後に離れて暮らす親子が会う「面会交流」。面会方法などを話し合う裁判所の調停の申し立て件数は増えているが、親同士の感情のもつれ合いから面会が実現できない場合も多い。「面会交流」の支援に取り組む団体が県内にある。支援員や親子を取材した。
面会交流を支援しているのはNPO法人「岡山家族支援センターみらい」(岡山市中区)。2013年、弁護士や家庭裁判所の元調査官ら23人で発足した。
2月中旬の日曜日、センターの支援員で元家裁調査官の大渕卓子さん(72)は、北区の大型商業施設のフードコートにいた。
市内に住む40代の母親の小学生の長女と長男が、離れて暮らす父親と3カ月ぶりに会う日だった。子どもたちは父親を見つけ、「ひさしぶりじゃね」と駆け寄った。長女が手作りのバレンタインチョコを渡すと、父親はにっこりと笑った。
同席した大渕さんにも子どもたちは親しげに話しかける。この親子の面会交流に7年以上関わってきた大渕さん。子どもたちにとって「本当のおばあちゃんのよう」(母親)だという。
■支援員立ち合い
母親が現在センターの理事を務める大渕さんに面会交流の支援を依頼したのは離婚が成立した09年ごろ。裁判所の調停で「2カ月に1回、元夫に子どもを会わせる」という内容に合意したが、元夫と連絡を取ることも嫌だった。担当の弁護士を通じ、大渕さんに支援を依頼した。「(元夫との)会話の間に入ってくれることで気持ちがすごく楽になる。子どもたちが父親に会うのを楽しみにして心から喜んでいる姿を見て、自分の気持ちは横に置き、面会交流をする大切さを感じました」と母親は話す。
支援員は親同士の間に入って面会の日程を調整。当日は子どもの引き渡しや、立ち会いをする。大渕さんの携帯電話には複数の親から絶えずメールが届く。「会いたくないという親同士が多いけど、子どもの視点に立って考え直してもらいたい」と大渕さん。
■信頼を取り戻し
支援を約1年間受けた後、自分たちだけで交流ができるようになった親もいる。
「だんだん彼への信頼が戻ってきたんです」。小学2年の長男と2歳の長女を育てる倉敷市の看護師の母親(33)は話す。離婚後、兵庫県に住む会社員の父親(34)と月1回程度、倉敷駅周辺で会っている。
支援を依頼した15年6月当初、子どもを支援員に預ける際、父親の後ろ姿が見えただけで嫌だった。だが、支援員が要望を聞き入れ、面会時間も守ってくれ、次第に安心して任せるようになった。子どもが父親になついていることを支援員を通じて知り、「自分たちでやってみよう」と思うようになったという。
「怒りが冷めたときに自分たちでやれるようになったんです」。そう振り返る父親は仕事で勝負どころだと思うと、ポケットに入れるものがある。長男が大好きだったバイキンマンのマグネットだ。家族が出て行った時、家に残されたままだった。
「子どもの環境の変化は自分たちに責任がある。せめて父親としてできることをやってあげたい」
■調停増 高まるニーズ 民法一部改正など背景に
これまで45組の親子を支援してきたセンターの近藤みち子理事長(74)は「子どもだけでなく親の成長が見られるのが私たちのやりがい」と話す。1年を目安に夫婦だけで交流できるよう自立を促すという。「夫婦の別れが親子の別れになってはいけない。子どもは自分が何者かを知るために、別れて暮らす親のことを知る必要があるんです」
面会交流の支援のニーズは高まっている。
面会交流の調停は、夫婦間の話し合いで面会方法がまとまらない場合などに申し立てることができる。岡山家裁によると、07年に107件だった申し立ては昨年261件と2倍以上に増えた。
調停が増える背景のひとつが、12年施行の民法の一部改正だ。法律で面会交流について「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」と明記され、家裁が離婚調停中の夫婦に積極的に勧めるようになった。離婚届にも、面会交流の取り決めの有無について新たに記載欄がつくられた。
早稲田大学の棚村政行教授(家族法)は「共働きの夫婦が増え、子どもが小さい頃から父親が子育てに関わるなど、父親の子どもへの関心が変化してきたことが調停増加の背景にあるのではないか」と指摘。「調停での合意が守られるような支援や法整備が必要。民間ボランティアへの助成など、行政と民間が連携する必要がある」と話す。(村上友里)
■全国に40団体 4年で倍増
棚村教授によると、面会交流の支援は、1994年に公益社団法人家庭問題情報センター(東京都)が取り組んだのが始まりだという。全国に広がり、2012年に約20団体、昨年約40団体となった。団体は、▽弁護士や元家裁調査官ら司法関係者▽離婚経験がある父母ら当事者▽臨床心理士ら心理福祉関係者、と中心となるメンバーによって3種類に大別されるという。
離婚後の親子面会交流
婚姻件数と離婚件数の比較から3組に1組が離婚するとも言われる時代、離婚した親と子どもとの面会交流のあり方が論議を呼ぶ。離婚後の別居親と子の面会交流を促す「親子断絶防止法案」が国会で議論されようとしている。「親子の交流は重要」と主張する推進派に対し、児童虐待やDV被害者への配慮が足りないと法制化を懸念する声は根強い。その議論は「家族とはなにか」を問うている。
父母対立激しい時 子に有害 小川富之・福岡大法科大学院教授
親が離婚しても、両親と継続的に交流することが子の利益になる。だから親はその責任を果たすべきだ--。親子断絶防止法案のこうした理念は一般的に好ましく聞こえるが、法制化には賛成できない。父母が合意して面会交流できている親子には必要がないうえ、父母間の対立が激しく、家族関係に問題を抱える親子の場合には子の心身に深刻な影響を与える。
法案は、夫婦が離婚後も子を共同で監護し、子と緊密に交流しているとされる欧米の取り組みや研究を参考に作られた。だが今、その弊害が注目されている。
オーストラリアでは2006年、離婚後も両親が均等に子の養育にかかわることが望ましいとの理念を基に家族法が改正されたが、別居親が権利を主張しやすくなったために父母間の対立が激化し、深刻な問題が起きた。元配偶者の暴力や児童虐待を理由に面会を制限したくても、証明できなければ「相手方に協力的ではない」とされ、最悪の場合は子を育てられなくなる。そのため暴力の主張を控える親が続出した。父親が面会中の子を殺害する事件も起き、11年には父母に暴力に関する告知義務を課すなど子の安全を重視する方向で再改正された。また米国の研究では、父母間の対立が激しい場合、裁判で決められた厳密なルールによる交流がかえって子に有害であることが報告されている。
日本では既に13年ごろから家庭裁判所の実務で、別居親と子の面会交流を原則として認める考え方が主流になってきた。昨年の千葉家裁松戸支部判決のように相手方と子の交流に協力的かどうかを親権者を決める要因として考慮したり、面会に応じない同居親に高額な制裁金の支払いを命じたりする判断も出ている。
家裁が関与する離婚ではDVや虐待が主張されるケースは多いが、立証は必ずしも容易ではない。日本は欧米と比べ、DV被害者の保護施策が乏しく、離婚前後の家族への相談支援体制も不十分だ。今年1月には長崎市で、長男の面会交流のために元夫宅に行った女性が殺害される事件も起きた。こうした中で法案が成立し、面会を促進する流れがさらに強まれば、子の安全が脅かされる。法案はDVや虐待への配慮規定を置くが、「継続的な交流が子の最善の利益になる」との基本理念を明記する限り、不安はぬぐえない。
また法案は、離婚前に相手方に無断で子連れ別居をさせないよう努める責任を国に課す。だが、話し合いもできないほど激しい夫婦間の紛争から家を出る必要があり、子を置いていけば養育環境が不安定になるなど、やむを得ない場合はある。別居が認められるかは、子の利益の観点からケース・バイ・ケースで判断されるべきだ。ハーグ条約は、子がそれまで住んでいた国の裁判所で事件を扱うためのルールで、国内の子連れ別居とは別問題だ。
ただ離婚時の面会交流の取り決め率が約6割という現状は改善すべきだ。行政による啓発や必要とされる面会交流支援、相談体制の充実は急務で、それらを実現するための法案こそが求められている。【聞き手・反橋希美】
子どもが決められるように 光本歩・NPO法人ウィーズ副理事長
離婚した両親との関わり方は、子ども自身が決められるようにすべきだ。私も中学生のころに両親が離婚し、父子家庭で育ったが、父に対しては母との関係をコントロールされたくないという思いが強かった。どんな親であっても、子が親の実像を自分の目で見ることが、離婚や自らの状況を理解して人生を歩んでいくために必要なステップになる。
議論されている親子断絶防止法案は、離婚に際して親が子に果たすべき責任を社会に示す意義はある。修正案で「子どもの意見表明機会の確保」などが盛り込まれた点も評価する。ただ、本当に子の利益になる面会交流を実現していくための課題は山積している。
両親の関係が険悪であるほど、面会交流の円滑な実施には、第三者の介入が欠かせない。不信感や敵意を抱き合う父母の間を行き交うことは子の大きな負担になる。味方になる存在が必要だ。NPOで面会交流を支援する活動に取り組んでいるが、会話ができる3歳以上の子どもの支援では、まずスタッフが一対一で面談し、信頼関係を築くことを重視する。別居親や交流への思い、面会を重ねる中で子どもにどんな変化があるかを注意深く見ていく必要がある。
支援で重要性を痛感させられるのが、親の合意形成だ。交流がうまくいった事例を紹介したい。
両親は40代で子は3歳。両親は離婚裁判の中で、双方の弁護士の支援を受けて長期的できめ細かな面会計画を作った。「第三者が付き添う交流を3回行って問題がなければ、付き添いはなくし、第三者は連絡調整や子どもの受け渡しを担当する」との内容だ。別居親は充実した面会に努力するし、同居親も先を見据えて心の準備ができる。両親が子に無理をかけないで段階的に交流を進めていく重要性を認識していたことも大きい。
支援が難航するケースは合意形成が不十分で「月1回、2時間」などと面会の取り決めが大ざっぱなことも多い。家庭裁判所や弁護士会には、児童心理に配慮したきめ細かな合意形成の支援と、そのための人材育成をお願いしたい。
面会交流のあり方は一様ではない。別居親が子と心中を図ったケース(未遂)では、裁判で直接の面会は危険だと判断され、手紙のやり取りにとどめる間接面会が決まった。NPOが間に立ち、手紙の内容の点検や受け渡しを担ったが、子どもの手紙からも親とつながっている安心感が読み取れた。子が自分の意思で親とどう関係するかを判断できる段階になるまで、親子を仲介する存在が必要だ。
現状は、面会交流が当事者に任されているケースが大多数で、トラブルや面会不調につながっている。支援団体は少なく面会交流の考え方や支援方法もさまざまだ。行政が事業委託して無料で支援を受けられる自治体もあるが、団体への補助金はなく、交流支援だけでは財政的に運営が成り立たない。面会交流はどうあるべきか、どんな政策や公的援助が望ましいかといった点で社会的なコンセンサスが必要だ。法案がきっかけになり、離婚後の子の養育について議論がより深まることを期待したい。【聞き手・中川聡子】
立法化で国に施策促す 馳浩・衆院議員、親子断絶防止議員連盟事務局長
厚生労働省の調査では、2015年の離婚件数22万6215件のうち、未成年の子どもがいるのは13万2166件。毎年20万人以上の子どもが親の離婚を経験し、そのうちの多くが別居親との関係を絶たれている。離婚の9割を占める協議離婚では、面会交流について取り決めを交わすことは求められていない。だが子どもの権利条約にある「子どもの最善の利益」を考慮した場合、このままでいいのだろうか。子どもの立場に立てば、双方の親と面会交流して愛情を受け続けることが必要だ。離婚後もきちんと子どものことを考えることは親の責任でもある。そうした問題意識をもとに当事者の声を聞き、昨年12月に親子断絶防止法案の修正案を議員連盟でまとめた。
離婚後に親が子どもに対して持つ責任は二つある。まずは養育費の支払いだ。経済的な不安や負担を解消する責任がある。次に面会交流だ。子どもに関心を持ち続けることは親の責任であり、「学校での様子を先生に聞きたい」などの望みを持つ親も多い。養育費の支払いや回収については「母子及び父子並びに寡婦福祉法」で規定されているが、面会交流にはルールがなかった。当事者間の話し合いが難しいなら第三者や専門家が関与できるよう土俵づくりを進める一環として今回の法案がある。
法案は面会交流について「書面による取り決めを行うよう努めるものとする」との文面にして、あくまで努力目標にとどめた。この点について、賛否双方の立場から「実効性がないのでは」との批判をいただいている。だが、離婚の事情は100人いれば100通りあり、義務化は難しい。一方で、片方の親が一方的に「DVがあった」と言って無断で子どもを連れ去り、もう一方の親と関係が途絶える事態が起きている中で、何もルールがなくていいのか。私はそうは思わない。当事者に任せれば議論は平行線をたどるだけだ。
14年には国境を越えた子の連れ去り防止を定めた「ハーグ条約」に加盟したが、国内での体制が整備されていなかった。やはり第三者が早期に介入する必要がある。法案は罰則を持たない理念法だが、理念を掲げることで国、地方自治体に相談体制や人材育成などの施策を促す効果は大きい。
法案に対しては「別居親たちの考えしか聞いていない」という批判もあるが、間違っている。私は10年以上前から児童虐待やDVの問題に関わり、離婚後の面会交流に対する支援が不十分だと実感してきた。原案を作った上で、懸念を表明する方々にも十分に話を聞き、文面に多くの修正を加えた。例えば「本当にDVに遭っている被害者はどうするのか」という指摘があるが、そうした声を反映し、一方的な子連れ別居について国に求められる啓発活動の目標を「早期解消」から「早期解消もしくは改善」と改めた。DV被害者の緊急避難は否定していない。
法案は各党が意見を出す回答を待って最終案をまとめたい。会期中である以上は今国会への提出を目指すが、合意形成が大事だ。決して今国会での「成立ありき」で考えているわけではない。【聞き手・伊藤直孝】
親子断絶防止法案
「父母の離婚等の後における子と父母との継続的な関係の維持等の促進に関する法律案」。超党派の親子断絶防止議員連盟(会長・保岡興治元法相)が昨年5月に原案をまとめ、当事者団体などのヒアリングを経て12月に修正案を公表した。離婚時に面会交流や養育費負担について取り決めることを努力目標とする。親子の継続的な関係を維持するための施策を国や自治体の責務とし、相談対応や情報提供などの援助策を講じるように求める。
離婚後も親子関係は続くから – 知ってほしい「面会交流」の話
親の別居や離婚を理由に離れて暮らす親(別居親)と子供が会い、交流することを「面会交流」といいます。「現状、別居や離婚後、面会交流がスムーズに行われていないケースも多い」と話すのは、面会交流普及活動に取り組む離婚・面会交流コンサルタント・しばはし聡子さん。
子供に会えずに苦悩する男性たちの声を集めた書籍『わが子に会えない 離婚後に漂流する父親たち』(著:西牟田靖)が話題を集めたり、離別した親と未成年の子供との関係が絶たれるのを防ぐ「親子断絶防止法案」が今国会で検討されたりと、面会交流そのものが注目される今、面会交流の重要性について、しばはしさんに話を伺いました。
■調停離婚直後、面会交流に消極的だった
しばはしさん自身、10代の子供を持つシングルマザー。離婚の危機が訪れたのは結婚14年目となる2014年のことでした。弁護士をつけ、半年で調停離婚が成立。元夫と離婚後に直接連絡をとるのをストレスに感じ、面会交流に積極的になれなかった、と当時を振り返ります。
離婚から一年ほどは、子供を元夫に会わせるのを億劫に感じ、面会日程を急に延期して、元夫から憤りのメールが来ることもありました。そんなしばはしさんにターニングポイントがやってきます。
「ある面会交流支援団体でボランティアをしていたとき、1組の家族が面会交流するシーンを目にしたんです。ただ純粋な気持ちで子供と会いたいと願うお父さん、会わせるのが嫌々ながらも仕方なく子供を連れてきたお母さん、屈託ない笑顔でお父さんとの再会を喜んでいる子供――3人を見て気づいたんです。私が元夫と関わりたくないからといって、子供と父親との関係を断ってしまうのは良くないんじゃないか、と」
無意識のうちに、同居親に気に入られるふるまいをし、自分が生き延びる道を模索するのが子供。彼らは大人よりもはるかに空気を読み、状況や人の気持ちを敏感に察知する能力を持っています。
「同居親が面会交流に否定的だと、子供に悪影響が及びます。子供は常に同居親の顔色や機嫌を伺っていますから、別居親と会いたくても『会いたい』と口に出せなくなるんです。本音も言えなくなるどころか、いつのまにか自分でも本心がわからなくなってしまうことも。もし同居親の気持ちが変わって、いざ面会交流をさせようとしても、子供の気持ちがついてこないこともあります」
本当は別居親と会いたいと思っていても、同居親に気を使って「別に会いたくないし……」と、本心とは逆の発言をする可能性もあるということです。
■別居親に子供を会わせるのは同居親のミッション
面会交流をさせよう! と思い立ってからの行動は迅速でした。元夫へ「いつでも子供とごはんに行ってね」とすぐに連絡すると、彼の第一声は「ありがとう!」。それを聞いて、しばはしさんは涙がこぼれたと言います。
もし元夫が「なんで急に?」と訝しがったり、今までのことを怒ったりしていたら、その後の面会交流は途絶えていたかもしれませんが、そこから徐々に三者が心温まる面会交流がスタートしたのでした。
「以前は元夫がうちまで子供を迎えにきても、気配を感じることすら怖くて、玄関口で送り出すこともしませんでした。帰宅した子供に対しても『どうだった?』と聞きもせず。でも、前向きに面会交流できるようになってからは、子供に『楽しかった?』『今日は何食べてきたの?』と明るく聞けるようになりました。子供も嬉しそうに答えてくれます。これまでのことを振り返ると、元夫も、そしてとくに子供も苦しかっただろうな……と思いますね」
離婚を経て相手と関わりたくなかったり、憎しみの気持ちが生まれたりしても、夫婦関係と親子関係とは切り分けて考える必要がある、としばはしさん。離婚後も子供と別居親との親子関係、そして元夫婦も親同士としての関係は続きます。子供にとって親はふたり。
別居親が子供の心身に悪影響を与えない限り、同居親はすすんで面会交流の場を設けること、そして別居親はやりとりが円滑にできるように心がけることが子供の幸せにつながるといえます。
「子供と暮らす同居親は、問題意識を持つ機会が少ないのが現状です。以前の私もそうでした。でも、親権を得ることは特権ではなく責務。どうすれば子供が幸せでいられるのかを考え、行動する必要があります。子供と別居親の架け橋というミッションを背負っているという認識を持たなくてはならないと思います」
(つづく)
しばはし聡子さん プロフィール
1974年生まれ。慶應義塾大学法学部卒。自身の離婚経験を生かし当事者支援として「せたがや離婚・面会交流相談室りむすび」を設立。離婚相談や面会交流普及に向け講演など発信活動に従事。
http://www.rimusubi.com/
子どもに会えない父親たち 身に覚えのないDV訴えられ面会困難に
調停で離婚した夫婦の子どもの約9割は、母親が親権者になる。子どもと断絶させられた父親からの面会交流調停への申請数が増えている。
4年前、シンジさん(48)が仕事から家に帰ると、真っ暗な部屋に一枚の置き手紙があった。
「あなたは私のことを対等に見てくれませんでしたね。子どもは連れていきます」
生後7カ月の娘の姿はなく、その日から娘と会えない“断絶”の日々が始まった。
14歳年下の妻とは、小笠原諸島の民宿で出会った。2人とも海が好きで、2009年に結婚。シンジさんは大手メーカーのエンジニア、妻はパティシエとして働き、夜は2人で外食するような仲のいい夫婦だった。12年6月に長女が生まれた。
「妻は人付き合いが苦手で、子ども好きというタイプではありませんでした。妊娠してからは情緒が不安定気味で里帰り出産をしましたが、それはよくあることです。東京に戻ってからは私も4カ月の育児休暇を取り、一緒に育児をしていました」
●完全なでっち上げ
だが、しばらくたつと“事件”が勃発する。孫の様子を見に自宅に来た義母が「孫は連れて帰る!」と言ってシンジさんにつかみかかってきたという。妻も娘を強引に連れ出そうとしたので、義母を振り払って、娘を取り返した。結局、児童相談所が仲介に入ったが、児相に義母は「(シンジさんに)暴力を振るわれた」と主張していたという。
「断じて暴力など振るっていません。目の前で娘を連れ去られそうになったので、それを振りほどいただけです」
その後、一度は妻と娘も自宅に戻り、家族再生の道を探った。だが、妻が生命保険の外交員に勧誘され、その場で契約したことを発端に、また夫婦に摩擦が生じる。シンジさんが「なぜすぐ決めるのか」と問うと、妻は「あなたは私のやりたいことを一切認めない」と口論になった。
「その時も、怒鳴ったりはしていません。実は、妻は過去にも帰省中に同級生からマルチ商法に誘われ、物品を購入したことがある。周囲に影響されやすいところは諭しました」
こうしたことに不満を募らせたのか。約2カ月後、妻は娘を連れて家を出ていった。
翌日、妻の弁護士から内容証明郵便が届いた。離婚事由は「精神的DV」と「経済的DV」。妻は事前に自治体の窓口でDV相談をし、弁護士も手配していた。出ていく日を決めて、一時的にシェルターに避難することで、DVを主張する「計画」が出来上がっていた、とシンジさんは主張する。
「完全なでっち上げです。住居費、生活費もほぼ私の負担で経済的DVもありえません」
意に反して離婚調停が進むなか、シンジさんは面会交流を申し立てていたが、面会できたのは2年間で2回だけ。それも妻の地元で第三者機関の担当者を交えて60分だけという条件だった。最初は娘が1歳半のとき。殺風景な広い部屋でおもちゃで遊ぶ娘を遠くから見守るだけ。その「非日常」の雰囲気に娘は泣きだしてしまい、結局、30分で切り上げられた。9カ月後の面会も同様に泣いてしまい、30分で終了。父親だとわかってもらうこともできなかった。
「もしかしたら、妻は私が親のように諭すのが気に入らなかったのかもしれない。でも、それだけで7カ月の娘と引き離されて、2年間で会えたのはたった1時間というのはひどい」
●面会交流申請が急増
厚生労働省の「全国母子世帯等調査」(11年度)によると、別居親と子どもの面会割合は母子世帯で27.7%、父子世帯で37.4%。別居親の6~7割は子どもと会えていない。一方で、面会交流調停への申請数は増え続けており、15年は1万2264件(司法統計)。00年と比べて5倍以上にもなっている。
民法には面会交流の明確な規定はなかったが、12年施行の改正法で「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」と明記された。こうした流れを受け、16年末、超党派の国会議員が所属する「親子断絶防止議員連盟」は、別居親との面会を促す法案をまとめた。
ノンフィクション作家の西牟田靖さんは、今年1月、離婚前後に子どもと引き離された父親の葛藤をつづった『わが子に会えない』を出版した。
「子どもに会えない父親=妻や子に暴力を振るう男性というレッテルを貼られがちです。しかし、私が話を聞いた父親たちは、子ども思いで暴力を振るうようにも見えず、経済的に安定している方が大半でした。離婚事由として、妻から身に覚えのないDVを訴えられるケースが多く、いきなり子どもと断絶させられたうえに、どうやって“無実”を証明すればいいかもわからない。混乱の中で司法の判断だけが進み、面会交流も認められにくくなる。そうなれば円満解決はもはや困難です」
ナオトさん(37)は、1年半前に妻に子を連れて出ていかれた。当時、長男が2歳、長女は3カ月だった。子育ては自分でやりたいという妻の意思を尊重し、代わりに掃除、洗濯、皿洗い、ごみ捨てなど家事全般を請け負う、協力し合う夫婦だった。それなのに、手紙一枚を残し、妻と子どもは突然姿を消した。
●離婚の事由がない
「『もう夫婦関係は続けていけない』とだけ書かれていました。すぐに妻に理由を聞きましたが、とにかく『離婚したい』の一点張り。今でも明確な離婚の事由は示されていません」
思い当たる節があるとすれば、義母との関係。過干渉なくらいに家に来る義母とは折り合いが悪く、ある日、ナオトさんの実親をあしざまに言ったことに怒り、怒鳴ったことがあった。
だが、妻にそれが理由かと問うと「違う」という返答。理由もわからないまま、調停が申し立てられた。家庭裁判所からは円満調停が言い渡され、「面会は月に1回2時間」「監護権は妻とすること」などが決まった。
「離婚の事由もないのに、子を連れて出ていかれて月に1回しか会えなくなるなんて、司法の判断は明らかにおかしい」
ナオトさんは、親子断絶防止法案の成立を願っているという。
ただ、同法案には不備が多いとの指摘もある。弁護士の打越さく良さんが言う。
「第8条のように『別居前に子どもの監護権や面会交流の取り決めをせよ』というのは危険な場合もあり一律には言えません。子どもの心身の安全確保のために別居しなければならないときに、事前の話し合いなど無理です。行政の窓口に行って
『事前の取り決めがないなら援助できません』となったら結局避難ができず、子どもにも酷です」
子連れ別居や離婚の背景には、深刻なDVや虐待がある場合も多く、「子の利益」に照らし当面は別居親との面会交流を認めるべきでないケースもある。
「どのような場合が違法な連れ去りで、監護の継続性や虐待の存否など個別の事情を含めて子の利益を判断できるのは、やはり家庭裁判所。実績のある家庭裁判所の環境改善を図ることが先決です。そもそも、『児童の権利条約』では、子どもの権利の実現のため、国に適切な措置をとる義務を課している。この法案は当事者間に力の非対称性がありうることを無視して、父母に責任を負わせていることが問題です」(打越さん)
夫婦の別離は、夫、妻の立場それぞれに“真理”がある。ただ、同意なしに子どもを連れていかれた親の苦悩も深い。「救済策」が検討される時期に来ている。(文中カタカナ名は仮名)
(編集部・作田裕史)
※AERA 2017年3月20日号
DV防止法のせいで、わが子に会えず苦しむ父親もいる
<父親たちの本音をすくい上げるノンフィクション『わが子に会えない』。気になるのは、実際には暴力をふるっていないのに「DV夫」のレッテルを貼られ、子どもに会えなくなる人もいるということだ>
『わが子に会えない――離婚後に漂流する父親たち』(西牟田靖著、PHP研究所)は、ある日突然、子どもと会えなくなってしまった父親たちの本音をすくい上げたノンフィクション――とだけ聞いてもピンとこないかもしれないが、冒頭に登場する「ある事件」についての記述を読めば、どういうことなのか推測できるはずだ。
2013年のXマス2日前、都内の小学校の校庭で男性とその息子が発火するという事件があった。消し止められたが助からず、ふたりとも命を落としてしまった。男性はマスコミに勤務する40代。野球の練習をしていた息子を校庭の隅へと連れ出した後、自らに火をつけた。妻子と別居中だった男性は、子どもに会うことを制限されており、しばしば妻子の家や学校に現れることがあったという。(2ページ「プロローグ」より)
たしかに、そんな報道があった。痛ましい事件だったが、その背後には、子どもに会いたくても会わせてもらえない父親の苦悩があったのだ。そして忘れるべきでないのは、上記の父親のように子どもとの面会を制限され、精神的に追い詰められていく人は現実に多いのだろうということだ。なにしろ、年間20万組以上が離婚しているのだから。
なお、本書に説得力を与えている要因がある。著者自身が、上記の事件のすぐあとに当事者になってしまったということだ。
翌年の春、妻が3歳の子どもを連れて出ていき、夫婦関係が破綻した。離婚届を受理したという通知が役所から届いたとき、一時的に記憶がなくなり、自転車をなくすほどであった。愛してやまない当時3歳の娘に会えなくなったことが、なんといってもショックだった。自分の両手をもがれてしまったような喪失感がしばらく続き、いつふらっと線路に飛び込んでもおかしくはなかった。生きている実感がまるで湧かず、体重は10キロほど落ちた。(2ページ「プロローグ」より)
そこで著者は、わらにもすがる思いで、同じように子どもと会えなくなった親たちが体験を共有する交流会に参加する。つまりそのような経緯を経て、本書は必然的に生まれたのである。
気になったことがある。身に覚えのないDV(ドメスティック・バイオレンス)を主張され、子どもに会わせてもらえず、苦しんでいる人が多いという話だ。
「数えていたわけではないが、全体の半分ぐらいはあっただろうか」と著者は記しているが、たしかに本書で紹介されている人の多くが「DV夫」としてのレッテルを貼られている(もちろん女性がその立場に立たされているケースもあるのだろうが、男性当事者の数が圧倒的であることから、本書もそちらに焦点を当てている)。
【参考記事】児童相談所=悪なのか? 知られざる一時保護所の実態
背後にあるのは、2001年にDV防止法(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律)が制定されたことだ。「配偶者からの暴力に係る通報、相談、保護、自立支援等の体制を整備し、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護を図ることを目的とする法律」[内閣府男女共同参画局HP]というもの。具体的には、次のように行使されるのだそうだ。
――被害者は配偶者暴力相談支援センターや警察などへ出向き、DV被害について相談する。行政は被害者の申し立てを受けて被害者の居所を秘匿する。希望者は配偶者(加害者)の暴力から逃れるためにシェルター(ほぼ女性のみが対象の一次避難施設)などに避難。地方裁判所が認めれば、加害者に対し保護命令に含まれる接近禁止令や(世帯が居住する家からの)退去命令が発令される――。(5ページ「プロローグ」より)
子どもに会えなくなる状況を生み出す原因がここにある。離婚して親権を得たいパートナーが、実際にはないDV被害を訴えることで保護を望む。行政はそれに応える。結果として、加害者扱いされた側は子どもに会う機会を失う。もちろん世の中には実際にDVに苦しんでいる人も大勢いるだろう。しかし一方には、こうした経緯により「DV夫」にされてしまう人も少なくないということ。(被害者たる)パートナーを守るための制度が、本来の目的とは違う形で使われているわけだ。
「『暴力を受けた』と言った者勝ちなんです。証拠だとはとても言えないあやふやな主張がひとつひとつ積み重ねられ、DV被害者としての肩書きというか実績がどんどん加わっていくんです。裁判でDVの認定が却下されたというのに、行政や警察は、妻の言うことすべてを鵜呑みにして、妻子の住所を私に秘匿したまま。私が調べて欲しいと言っているのに、警察が捜査をしたり話を聞きに来たりしたことは一度もありません。本当に私が暴力を振るったんなら刑事事件として立件すればいいんですよ!」
40代の会社経営者、長谷川圭佑さん。穏やかで優しそうな顔をそのときばかりは引きつらせた。(59ページより)
このように、「暴力を受けた」という一方的な主張によって追い詰められる人もいることを、本書は証明している。どうしようもできずに泣き寝入りする人がいれば、納得できないからと徹底的に争う人もいる。対抗策は人それぞれだが、一般的な感覚からすると首をかしげざるを得ないようなことが現実に起きていることだけは間違いないようだ。
ちなみに本書に登場する父親たちの大多数は、裁判所や弁護士の世話になった結果、耳を疑うようなつらい体験をしてきたのだという。裁判所に悪意があるわけではなく、それどころか彼らには善意があり、専門知識を持ったスペシャリストであるはずだ。しかし官僚組織である裁判所においては、組織として回していくことが、公平な紛争解決よりも、組織防衛上、なにより重視されるということだ。
【参考記事】家事をやらない日本の高齢男性を襲う熟年離婚の悲劇
裁判官1人あたり100件以上の訴訟案件を抱えており、さらに毎日数件のペースで案件が増えていくと聞けば、致し方ない話ではあるのかもしれない。でも、だから父親たちは我慢を強いられなければならないのだろうか? 幸いなことに、そういうわけでもなさそうだ。日本でも面会交流の拡大や共同親権制度への変更に向け、国や行政が重い腰をあげるようになってきたというのである。これはアメリカの30~40年前の動きに近いそうだが、ともあれ期待したいところである。
これまで”離婚=親子の別れ”という考えが強く、そのために別れて暮らす子どもと別居親が会うことが困難を極めた。しかし、世の中は変わりつつある。(中略)争ってでも会おうとしている親が確実に増えてきたのだ。そうした声を受けてのことなのか。子どもと離婚に関して記した日本の民法766条が2012年に変更となった。”面会交流と養育費の分担”について追記されたのだ。
2016年10月に法務省は、養育費に関する法律解説や夫婦間で作成する合意書のひな型を掲載したパンフレットを作成し、全国の市区町村の窓口で、離婚届の用紙を交付した際に配ったり、法務省ウエブサイトで公開し始めている。また、裁判所にしても面会の”相場”をゆるめつつある。(317ページより)
戦後、日本の家族の形が変わるなかで、女性の社会進出が進み、DV防止法ができるなど、女性の権利が守られるようになった。それ自体はとてもよい傾向だ。しかし今後は、父親たちや男性たちの権利も、もっと認知されるべきだと著者は主張する。つまり、そうした権利を求める動きのひとつが、父親が子どもに会ったり共同親権を求めたりする運動だということ。
――男だって子どもと存分にふれ合いたいし、育てたい。親として子どもと一緒に生活することで、生きて行くことの喜びを感じたり、親として成長していきたい――。(317ページより)
著者のこの言葉にこそ、子どもに会えない父親たちの本音が集約されているのだろう。
[筆者]
印南敦史
1962年生まれ。東京都出身。作家、書評家。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。現在は他に、「ライフハッカー[日本版]」「WANI BOOKOUT」などで連載を持つほか、「ダヴィンチ」「THE 21」などにも寄稿。新刊『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)をはじめ、『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)など著作多数。
離婚は女性が超有利!養育費・親権で苦汁を飲む男たちの実例集
「あ~あ!男に産まれて損したなぁ!!」
誰しも性別を選んで生まれてくることはできませんが、2017年の日本は残念ながら、男が生きづらい「男損時代」ではないでしょうか。最近、目に飛び込んでくるのは女性をヨイショするニュースばかり。例えば、政府が「一億総活躍社会」を打ち出し、2020年までに女性管理職を11%から30%へ。女性議員を9%(衆議院)15%(参議院)から30%へ、男性の育児休暇取得率を2%から13%へと数値目標を定めました。一方、男性はどうでしょうか?世の中の金や人、時間等は無限ではなく有限。だから、女を上げれば、その分だけ男性が下がるというゼロサムゲームなので女性優遇は「男性不遇」とセットです。
ただでさえ「弱男強女」という昨今のバイアスのせいで男性が割を食っているのに、さらに「だから最近の男は情けないし、頼りないし、本当に使えないわ!」と追い打ちをかけるのは、まさに「死体蹴り」そのものです。
今回は離婚経験者の男性から「男女不平等」のエピソードを集めました。逆差別によってどんな酷い目に遭ったのか、悲痛な叫びを紹介しましょう。なお、生の声を忠実に再現するため、こちらで内容を改変せず、できる限り、そのまま掲載します。そのため、少し読みにくいと感じるかもしれませんが、何卒ご容赦ください。
残業手当や単身赴任手当を入れず
基本給で養育費の策定を
1.養育費の決め方が納得いきません(30代男性)
今年7月、裁判所で裁判離婚が成立しました。しかし、私の担当弁護士、相手弁護士、裁判官と私の考え方は、まったく違うものでした。法律家の考え方では現在の収入で養育費を算定するのです。私の収入には今の段階では流動的な残業時間も含まれていました。また、私の場合は単身赴任手当も含まれた金額になり、それらを削除して計算するべきだとくり返し裁判で訴え続けましたが、まったく認めてもらえずじまいでした。
現実社会からかけ離れた裁判の内容で進められた。もし良識ある裁判官なら、扶養手当、単身赴任手当て、残業手当を削除し、基本給だけで養育費を算出して当然です。現に私の現在の給料は、基本給とわずかな残業手当で生活しています。手取りは15万円、うち養育費は月に9万円、ボーナス時は30万円です。
将来、基本給だけになってしまうと到底払えない金額です。裁判所が考えないで判決を下した結果です。このような世間知らずの裁判官、弁護士がいること自体が私は到底納得できません。
再婚して元妻に養育費支払いも
母子家庭は保育料は無料
2.養育費を支払う側にも優遇措置を(40代男性)
養育費を支払っている分、保育料の減額を希望します。現在月4万円を支払っています。私の手取りは20~22万円です。私は再婚し、相手との間に2人目が生まれました。本当は学資保険に加入したいのですが、ギリギリの生活で貯蓄もありません。
生活費の補助にと保育園に預けて妻が働きに出ようにも、保育料のために働くようなものでプラスにはなりません。保育料は私の月収により決定されるため、養育費の分も含まれています。実際に手にするお金がないにもかかわらず、その分も含めて換算されるのは納得いきません。
前妻の子のために養育費を支払うことは当然と思っていますが、このままでは養育費すら払えなくなりかねません。養育費をもらっているにもかかわらず『母子家庭』ということで保育料が免除されているのに、養育費を支払っている家庭には何もないということに疑問を感じます。養育費を支払っている家庭にも何らかの免除を希望します。
また養育費を支払っていても、前妻の子どもとは同居していないため、家族手当などは会社から支給されません。税制面でも考慮されていないように思いますが、私の思い違いでしょうか?
常に養育費支払う側より
もらう側が保護されている?
3.養育費算定表の年収が総額になっているのはおかしい(20代男性)
養育費算定表に関して大変遺憾に思います。理由は、年収計算が総額だからです。誰も総額で生活しているわけではありません。あくまでも、手取り額で生活をしているのにもかかわらず年収総額で計算する意味があるのでしょうか?
なぜ、常に支払う側より養育費をもらうほうが保護されないといけないのでしょうか?おそらく、こういう理由からも支払いの問題が増えていくのではないでしょうか?
4.養育費の内訳を知らせないのは我慢できない(30代男性)
養育費を毎月30万円払っていますが、決して前妻が社会的弱者だと思いません。不当に子どもに会わせない割に高額な養育費を年収からのみ算定され払っています。養育費の内訳を知らせないのは不当に養育費を使っているんじゃないかって思ってしまいます。母子家庭という弱いイメージとはかけ離れているんじゃないかって。
5.話し合っている最中に給料を差し押さえられるのは許せない(40代男性)
お互い再婚していて養子縁組もしている状態で、突然、給与の差し押さえをされました。何度も元妻に話を持ちかけましたが、話し合いを拒絶されてしまいました。そんな最中です。調停証書があると、どんな経緯であっても差し押さえられてしまうという現状に愕然としました。
もう法律の濫用としか言いようがありませんが、何も文句は言えないのです。私は真面目に誠意をもって対応しようとしていました。簡単に差し押さえができるのは女性からの離婚を助長させるだけかもしれません。どんな理由であれ離婚するときは人の力など借りず、死ぬ気で子どもたちと生き抜いていく覚悟がなければしてはダメだと思っています。
差し押さえに関しても、経緯書を添付するとか、お互いの戸籍謄本を提出するとか、差し押さえの対象になるのかどうかぐらいの判断は裁判所にしてもらいたいです。それなのに不意打ちを食らった形で許すことはできません。
6.親権は母親が圧倒的有利なのはおかしい(30代男性)
法律上では「子どもの福祉にとって適切なほうが親権をとるのが望ましい」となっているようで、父親とも母親とも書いていないのですが、圧倒的に母親有利となっています。このことは逆に、女性の地位向上の妨げになっているものと思われます。
「子どもの福祉」とは何なのか?これをもっと具体的に明記することを希望します。このままでは、父親がいくら家庭生活をがんばっても、離婚に直面した場合、子の親権はあきらめざるを得ないです。
この事実を知ると、男性はまじめな家庭生活を営まなくなるかもしれません。女性側も多少いい加減に生活をしたとしても、子の親権を失う恐れがないのなら、まじめに生活しなくなるように思われます。
「子どもの福祉」とは
一体何なのか?
7.子育てしてきたのに評価されないのは不平等(20代男性)
離婚において女性ばかりが保護されるのはおかしい。子どもが小さいとほぼ女性が親権を獲得するようになっており、まっとうに子育てしてきた男性が親権をとれないのはおかしい。父子手当のようにもっと平等に考える必要がある。女性が弱いからといって女性過保護になっている気がします。面接交渉に関してももっと法律できちんと定めるべきです。離婚=男性が悪いという風潮を改めるべきだと思います。
8.子どもの連れ去りが認められるのは許せない(30代男性)
配偶者が子どもを勝手に奪っていく連れ去りが、認められるのはおかしい。無条件に、女性に偽装DVが適用されるのはおかしい。もう充分、女性は男性より強いのですから女性=弱者はおかしい。
9.父親なのに子どもに会えないのは理不尽(30代男性)
子どもと1ヵ月に1回会わせてもらえる約束で協議離婚したのですが、たった2回で会わせてもらえなくなりました。一方的に「もう二度と会わせない」とメールが来ました。子どもは会いたがっている様子です。
子どもの権利と母親の面会交渉に対する態度は別にするべきです。母親が私的な理由で面会を断れないような。そして子どもの本当の幸せのために有効な法律が確定するように心から願います。
10.お金を管理できない母親に親権や養育費を任せるのはおかしい(30代男性)
そもそも母親が働かないこと(結婚における相互扶養義務違反)が原因で離婚しているのに、母親が有利な運用が成り立つのが不思議である。そのような母親が親権者として適切であるかどうかは、常識で考えれば大いに疑問であるが、日本では「働かない母親」は最強である。「そんなのに関わったお前が悪い」と司法は考えているのであろうか?
「子どもの福祉」という言葉のダブルスタンダードに腹が立つ。お金に関して、子どもの福祉のため、養育費は「とれるところから取る」という方針である。
しかし、より本質的な子どもの福祉のための面会交流や共同養育について司法は全く積極的でない。金を与えれば子どもは育つのか?また、金すら稼げない母親が、子どもの養育ができるのか?
「できる」と強弁するのであれば、親権を与える母親の想定している生活レベルの範囲で養育させればよいだろう。父親の生活レベルに合わせる必然性がない。「できない」のであれば、そもそも収入計画のない母親には親権者としての社会的責任を取る資質がないことが示唆される。
言いたいことは、親権者にきちんとした養育資金の面での計画書を出させるべきでる。そしてそれがきちんと実現されていなければ、親権移動も可能なものとすべきである。自分一人で生きていくのも厳しい人が、親の資格があるのか?もっとこの点を重視すべきだと思われる。
そのような親による養育の方が、将来的な不幸の連鎖を招くことは、いろいろな例で示されるであろう(離婚の“遺伝”、虐待の連鎖、などなど)。そもそも論として、共同親権になれば(親権で争う必要がなくなれば)、いろいろな問題は解決されると思われる。そして、より実質的な「子どもの福祉」のための、具体的な離婚後の養育計画を話し合う場として、司法が機能すればよいと思う。
離婚後の理不尽、不条理
男性たちの声に耳を
「離婚」という修羅場で理不尽な目に遭い、不条理に悩まされ、そして辛酸を舐めた男性たち…そんな彼らが苦渋の表情を浮かべながら「こんな社会になってほしい」と願うのだから、決して軽くあしらうことはできませんし、真剣に耳を向けなければなりません。「男はつらいよ」と苦笑いするのは簡単ですが、それでは何も変わらないでしょう。こうやって誰かの耳に届くよう声に出すことが最初の第一歩になるのです。男が意見を言いにくい今日の世相だからこそ。
少なくとも同じ悩みを抱えている人にとって「こんなにつらい思いをしているのは自分だけじゃないんだ」「結構みんな大変なんだなぁ。じゃあ、もう少し頑張ってみようか」と少しばかりの勇気を与えることはできるでしょう。
(露木行政書士事務所代表 露木幸彦)
離婚後の親子面会 進まず 親の対立、司法判断も分かれて… 子どもの利益、第三者の関わりが課題
離婚などで別居している親と子どもが、面会できないケースが後を絶たない。2012年の改正民法の施行により、離婚時に面会交流の内容を協議することが定められたが、決められないまま離婚したり、決めても親同士の対立関係が影響して面会が進まなかったりしている。面会交流を巡っては司法判断も揺れており、何が子どもの福祉や利益にかなうのか、議論が広がっている。
「息子に会いたいだけなのに、なぜ認められないのか」。福岡県に住む外国籍の40代男性は憤る。5年前、日本人の妻が幼い子を連れて突然出て行った。妻は離婚届に男性の名前を勝手に署名、押印し、役所に提出。知らないうちに離婚が成立してしまっていた。妻の実家を訪ねても、会わせてもらえなかったという。
男性は協議離婚無効の裁判を起こし、勝訴。ただ、妻はその後に離婚請求訴訟を提起し、「息子を連れ去られるおそれがある」として面会交流を拒絶しており、平行線が続いている。
法律上、面会交流の回数や頻度など具体的な内容は、親同士で協議して決める。決められない場合、家庭裁判所に調停を申し立てることができる。
15年に全国の家庭裁判所が受理した面会交流を巡る調停件数は1万2264件で、10年前の2・4倍。日本弁護士連合会の調査では調停で合意に至っても、同居する親が会わせてくれないなどの理由で「全く面会できていない」ケースが4割超にも上っている。
◇
子どもと別居親との面会交流はどうあるべきか-。昨春、ある家裁の判決が話題になった。
娘を連れ出し別居した妻と、5年以上娘と会えていない夫が親権を争った裁判。千葉家裁松戸支部は「月1回の面会交流を認める」とした妻よりも、「年に100日」とした夫の提案を評価。子との交流を相手に幅広く認めた親を親権者とする「寛容性の原則」を適用し、親権者を夫とする異例の判決を出した。
迎えた今年1月の東京高裁判決。高裁は「子の健全な成長は別居親との面会だけで確保されるわけでない。娘は妻と一緒に生活して順調に成長し、今後も同居を望んでいる」として、妻に親権を認めた。
福岡大法科大学院の小川富之教授(家族法)は「(親同士の関係がもつれた)『高葛藤』のケースでは、面会交流が必ずしも子の利益につながるとはいえない。子の健全な成長につながるよう、高裁は事情を総合的に考慮した」と評価する。
◇
子どもの視点に立ち、面会交流の支援に乗り出した自治体もある。
兵庫県明石市は、専門家が子どもに心理的なケアを行ったり、離婚前の親向けに子どもの気持ちを考える講座を開いたりしている。昨秋からは、面会交流のコーディネート事業も始めた。市の施設を提供し、面会交流ができない親の間に入って子どもの受け渡しや付き添いを行う。同様の支援をする民間団体もあるが、同市の場合、無料で利用できるのがメリットだ。
担当者は「子どもが別居親と会いたがっても、親同士が衝突して面会交流に至らないケースは少なくない。日程なども含めて調整し、親同士が顔を合わせることなく実施できる」と説明する。現在までに3家族が計6回利用したという。
面会交流を促進する法制定の動きもある。超党派の議員連盟は昨年、「親子断絶防止法案」を策定。国会への提出を目指している。ただ、ドメスティックバイオレンス(DV)や虐待が絡むケースもあるため、慎重な意見も根強い。
早稲田大の棚村政行教授(家族法)は「現在の法案は、面会交流の取り決めや、実行の責任を親に課すものになっており、父母の対立をいたずらにあおってしまう。困難な家族を、国や自治体が支援できるような法律が必要ではないか」と指摘する。
=2017/03/14付 西日本新聞朝刊=
日本における子供の貧困を人的資本投資、共同親権の側面から考察する
畠山勝太 / 国際教育開発
2.なぜ日本の子供は貧しいのか?
2.1 若者の貧困
前述のとおり、日本における子供の貧困の原因は、子供が暮らす家庭の貧困、すなわち親世代である若者の貧困にある。もちろん、少子高齢化が進む日本では高所得の高齢者の存在が貧困ラインを引き上げ、若者が貧困ライン以下でカウントされやすいという事実はある。
しかし、国税庁の民間給与実態統計調査の結果によると、事実としてこの20年間を見ても、20代の年収は減少している(20代後半だと、平成9年の373.4万円を頂点として、平成26年には343.5万万円へと下落している)。ではなぜ日本の若者は他の先進諸国と比べて貧しいのかというと、その一因として彼/彼女らに対する人的資本投資が十分に行われていない点を挙げることができる。
上の図6は、OECD諸国の高等教育総就学率を示している。日本の高等教育総就学率は先進国の中では低い方に位置しており、若者は十分な高等教育を受けられていないことが読み取れる。アメリカやイギリスでは、労働者に求める教育水準が中等教育修了で十分で、かつ肉体的な強靭さが求められるため労働者の多くが男性であった第二次産業から、労働者に求める教育水準が高等教育修了程度で、かつ肉体的な強靭さが求められない第三次産業へと主要産業が移行した際に、男性の教育水準がそれほど上昇しないという男子の落ちこぼれ問題が発生した。しかし日本の場合、国全体でこの落ちこぼれ問題を起こしている状態にあり、子供の親世代の貧困の一因になっていると考えられる。
そして上の図7は、OECD諸国の期待教育年数を示している。図6で示したように日本は高等教育の就学率が低く、結果として期待教育年数も先進国の中では低い方になっている。特に日本の16.4年という値は、先進国の上位グループから2年近く差をつけられている状態であり、若者の平均教育水準を見た時に、大学院を誰も修了していないのと、全員修了しているぐらいの差が存在していることを意味している。
幼い子供たちの親は、この若者たちである。つまり、日本は先進国としては若者の教育水準が低く、人的資本蓄積が低水準にとどまっていることが、日本の子供の貧困の一因となっていると考えられる。
2.2 ひとり親家庭の子供の貧困と養育費問題
日本の子供の貧困を考えるときに、親世代の低い人的資本水準に加えてもう一つ考慮しておくべきものがある。それはひとり親世帯の子供の貧困である。OECDの家族データベースによると、OECD諸国のひとり親世帯の相対的貧困率は、その親が仕事をしていない世帯では平均62.6%、仕事をしている世帯では平均20.0%となっている。これに対して日本のひとり親世帯の貧困率は、厚生労働省の最新の国民生活基礎調査の結果によると54.6%、総務省統計局の最新の全国消費実態調査の結果によると60.0%である。日本のシングルマザーの労働参加率は80%超(厚生労働省平成23年度全国母子世帯等調査)と先進国の中でもトップクラスであるにもかかわらず、貧困状況は先進諸国の働いていないひとり親世帯のそれとほぼ同程度となってしまっているのだ。
もちろんこれには、ひとり親世帯の親の教育水準が低い傾向があることや、日本の労働慣行がひとり親には厳しいことなど様々な要因を挙げることができるが(これらも字数の関係で本稿では割愛し、また別の機会に論じることとする)、その一つとして日本のひとり親世帯の養育費の受け取り率が低いことと共同親権が導入されていないことも挙げることができる。
前述の全国母子世帯等調査によると、日本のひとり親世帯の養育費受け取り率は、平成18年で19.0%、平成23年で19.6%となっている。これに対して上の図8はOECDの家族データベースに掲載されている2000年段階での他国の養育費受け取り率を示している。日本の現状と図8を比べると、日本の養育費の不払い率が先進国の中では高いことが読み取れる。
この養育費不払い問題には三つのアプローチが存在する。一つ目は政府が養育費を強制徴収する方法であるが、これを運営するためには高い行政コストが必要なのに対して回収率が見合わないという問題がある。もう一つは政府が養育費を立て替え払いする方法であるが、これが実施されているのは高負担高福祉型の国であり、高負担型の国ではない日本ではこのスキームの持続可能性に疑問が生じる。これらの他に、離婚の際の養育費の取り決めの義務化と共同親権の導入という方法も存在する。
日本の離婚の大半は裁判所が関与しない協議離婚であるが、この際に養育費の取り決めが曖昧なままとなり、そして親権がどちらかの親に与えられるため、与えられなかった親にとっては養育費が子供との面会を得るための手段に過ぎなくなり、結果として面会も出来ず養育費も不払いとなるケースが見られる。このような状況に対処するために共同親権の導入が検討される必要がある。以下では、アメリカでなされてきた研究の数々を紹介することで、日本での共同親権導入のインパクトについて示唆を得ることとする。
アメリカでも1960年代までは、現在の日本と同様に、離婚後の親権は主に母親側に与えられていた。しかし、70年代になると情勢が一変し、各州で共同親権が取り入れられた。しかし、州によってこの共同親権を導入するタイミングにバラつきが生じたため、このバラつきを利用した自然実験によって、共同親権の導入が与えるインパクトが分析された。
共同親権の導入は離婚後の養育費の支払いに影響を与えるが、これは一見すると共同親権導入そのものの恩恵によるものか、それともそれによる養育費徴収の強化によるものなのか判別がつかないため、日本の状況に対する政策的示唆を得ることは難しい。
しかし、パネルデータを用いてどちらが正しいのか検証したNepomnyaschy (2007)によると、このどちらの影響も存在している。すなわち、共同親権の導入によって離婚後の父親の子供との面会頻度が上昇し、このことが子供に対する親近感を失うことを抑止し、子供が金銭的に困らないように養育費を確実に支払うようになる。また、養育費を徴収されるようになると、支払った養育費が離婚した母親によって子供のために適切に使われているのかモニタリングする誘因が発生するため、子供との面会頻度が上昇するというわけだ。
一方、共同親権の導入がどの程度養育費の支払いに影響を及ぼすかについては、Allen et al. (2011) の推計によると、離婚後のシングルマザーが養育費を受け取る確率を8%程上昇させることが分かっている。
そして、養育費の支払いは単純にシングルマザー家計の貧困を緩和するだけでなく、この家計に属する子供の貧困を人的資本投資の増加という形で緩和することにつながる。なぜなら、養育費は他の所得源と比較したときに、より子供のために使われるという性格を持ち合わせており、養育費によって福祉の対象から抜け出せることでそこに伴うスティグマから抜け出せるからである。
これは具体的にどういったことかというと、日本の生活保護世帯の子供の大学進学が分かりやすい例となる。現在の日本では、子供の大学の授業料は生活保護の減額対象となるなど、いかにも教育を重視していない国らしい、人的資本投資という側面を無視した福祉行政が取られている。この行政制度もさることながら、生活保護世帯の子供が大学へ行くなんて贅沢だという残念な世論も見られる。この結果、「世帯分離」を取ることによって生活保護が減額されることなく奨学金で大学へ進学するという方法があるにもかかわらず、生活保護世帯の保護者と子供は、自分たちが大学へ行くのは贅沢・世間に申し訳ないという意識から、大学進学という選択肢を取らず就職を選ぶケースもありうる。
これが、福祉の対象となるスティグマであり、そしてそのスティグマが人的資本投資を阻害するケースである。そしてこれは大学進学以外にも発生しうる事象で、例えば生活保護世帯の中学生が塾に行くのは贅沢だ、小学生が博物館に行くのは贅沢だ、幼稚園児が絵本を買ってもらうのは贅沢だ、という福祉の対象に入ることによるスティグマが存在すれば、教育の投資収益率が高い早期の段階においても人的資本投資が阻害されてしまう。ところが、養育費の受け取りによって福祉の対象から抜け出せば、言及したようなスティグマから自由になることができ、生活保護による収入増加と養育費による収入増加の額が等しかったとしても、後者の方がより人的資本投資にリソースが割かれるようになるということである。
実際に、離婚したシングルマザーが父親による自発的な養育費の支払いを受け取っている場合、所得が上昇する効果以上に、養育費の受け取りは子供の言語能力などの学習成果を向上させることが分かっている(Argys et al. 1998)。さらにBaughman (2014)は、養育費の受け取りは健康保険への加入を促し、健康状態そのものも改善することを見出した。これらは先にも言及したように、支払われた養育費が子供のために使われているか離婚した父親による監視の目が入るため、その他の収入源によるリソースと比べてより子供のために使われる、すなわち子供の人的資本投資に回されるからである。
以上のことから、共同親権を日本に導入した場合に子供の貧困に対していくつかの政策的な示唆を導き出すことができる。まとめると、日本のシングルマザーの子供の貧困の度合いは深刻だが、この一因として、養育費の受け取り割合が低いことが挙げられる。共同親権の導入によって養育費の受け取り割合が上昇すれば、現在のシングルマザーの子供の貧困問題が緩和されるだけでなく、教育や保健といった人的資本投資が増加することで、未来の子供の貧困問題も緩和されることが考えられる。
しかし、注意しておきたいのは、共同親権の導入は現在婚姻関係にある男女間の力関係に影響を及ぼすということだ。たとえばアメリカでは共同親権の導入によって、婚姻状態にある母親の労働参加率が上昇し(Nunley and Seals 2011)、労働時間も増加したことが分かっているが(Altindag et al 2015)、これは共同親権導入以前は離婚後に父親が子供に会えなくなるという脅威の存在が婚姻状態にある母親に交渉力を与えていたが、共同親権導入後はこれが消滅するため、婚姻状態にある母親の交渉力が低減した結果だと考えられている。
前述の影響は女性の労働参加を促進するので好ましいものではあるが、好ましくない影響も存在する。一般的に母親の方が父親よりも子供の教育を重視するため、共同親権導入による父親側の家庭内の資源配分に対する権限強化は、私立学校への進学といった子供への教育投資額を減少させることも分かっている(Nunley and Seals 2011)。
また、日本の離婚理由では、身体的な暴力、精神的な虐待が少なくない割合を占めている。共同親権導入による男女間の力関係の変化は離婚前においてはDVの発生件数の上昇などの影響が考えられる。また、面会機会を契機としたストーカー殺人事件なども報告されているため、暴力や虐待により離婚した元夫婦が共同親権を持つことの危険性も考慮される必要がある。養育費の不払い問題に対処するための共同親権の導入には上記のような問題が存在するため、導入を考えるのであれば、事前に様々な対処策を講じておく必要がある点は見過ごされてはならないであろう。
3.なぜ政府は子供の貧困問題の解決を優先すべきなのか?
ここまで議論してきたように、日本の子供の貧困率は高く、これを阻止するためには人的資本投資の増加、制度の改善などを行う必要があり、政策的優先順位は高いと考えられる。なぜなら、子供の貧困は過小な人的資本投資を招いてしまい、将来の貧困の原因になるだけでなく、国の経済発展の足かせになる可能性があるからである。
日本財団子供の貧困対策チームによる『徹底調査 子供の貧困が日本を滅ぼす 社会的損失40兆円の衝撃』(文藝春秋)は、子供の貧困が招く過小な人的資本投資によって、具体的にどのような経路を辿って、どの程度の経済損失が発生するのかを推計している。この本はそれ以外にも子供の貧困について具体的な事例や解決策の提示などを行っているので、ぜひ一度目を通して頂きたいが、ここでは経済損失の部分について紹介したい。
日本財団子供の貧困対策チーム(2016)によると、例えば非貧困世帯出身の男性の最終学歴が中卒であるのは4.6%であるが、貧困世帯出身の男性のそれは23.8%と5倍近い差が存在したり、非貧困世帯出身の男性の最終学歴が大卒であるのは45.0%であるが、貧困世帯の男性のそれは15.0%と非貧困世帯の1/3に留まっているなど、貧困世帯の子供が受け取る人的資本投資の少なさが、人的資本投資のアウトプットの格差を引き起こしている。この人的資本投資のアウトプットの格差によって、両者の間にはアウトカムレベルで「就業率」「雇用形態」「同じ雇用形態間での所得格差」の3つの格差が生まれる。
この3つの格差は貧困家庭出身者の生涯所得を平均して1600万円程度押し下げ、政府に対しても、貧困家庭出身者一人当たりに追加的に600万円の支出増/収入減という影響を与える。これを子供全体の6人に1人の割合で当てはめると、個人所得が40兆円減少し、政府も16兆円の損失を受けることとなる。そして、この推計値は治安への影響を除外しているなど過小な人的資本投資が招く悪影響の全てを網羅しているわけではないことを考えると、いかに子供の貧困が招く人的資本の過少投資の影響が大きく、政府にとって優先順位の高い政策課題であるかが分かるかと思われる。
4.まとめにかえて――日本は子供の貧困を克服することで日本を取り戻せるか?
20年前の日本は、GDP世界一のアメリカに迫る世界の超大国であり、途上国支援のODAの額も世界一であった。しかし、現在の日本はGDPで2位の座を中国に譲っただけでなく、既に倍近い差を付けられている。国民一人当たり所得で見ても、既にOECD諸国の中でも下位に位置し、イタリアなどと同程度の水準となっている。そして、ODAの額も4位へと転落し、5位フランスに肉薄され逆転されるのも時間の問題となっている。
日本が超大国の座から転落しつつあるのにはもちろん様々な理由があるが、その一つに子ども・若者政策の失敗が挙げられる。日本は高等教育への公支出が少なく、若者の所得が伸びなかった。30代男性の1/3の所得が300万未満で、そのうちの2/3が未婚という現状が象徴するように、若年低所得層で未婚率が高く、出生率も改善しなかった。そして、生まれてきた数少ない子供たちが貧困に陥らないような制度整備も不十分で、人的資本蓄積のために最も重要な時期に十分な投資が行われてこなかった。この結果、稼ぎ手の数が少ないにもかかわらず、その稼ぎ手達が十分稼げず、日本は超大国の座から転落しつつある。
高負担・高福祉型の社会であれば、全ての人達に手厚い対策を施すことができたであろう。しかし、残念ながら日本は高負担型の社会ではないため、手厚い対策を施せる対象が限定された。ここで、未来の稼ぎ手となる子供・若者が対象として選ばれていれば、日本がここまで転落することはなかったのかもしれない。世代間対立を煽りたいわけではないが、現実は高齢者に対する支出はGDPの約11.2%にも上るのに対し、子供を含めた家族へのそれはわずか約1.3%であった。
「日本を取り戻す」という陳腐なスローガンをよく耳にするが、超大国の座を取り戻すためには、まず稼ぎ手の数を確保し、そしてその稼ぎ手達が十分に稼げるよう、子供・若者の貧困問題に取り組み、人的資本を質量ともに充実させる必要がある。
そのためには、高負担・高福祉型社会へ転換し、手厚い対策を施せる対象を拡大させるか、あるいは現行の高負担型ではない社会を続けるのであれば、手厚い対策が施される対象を子供・若者へとシフトする必要があるだろう(日本の人口ピラミッドと票田を考えると後者の方が実現可能性は低いのかもしれない)。いずれにせよ、「日本を取り戻す」ためには政治的に大きな決断が必要とされている。
<社説>ハーグ条約初適用 主旨周知し子の利益守れ
不幸な境遇に置かれた子の利益を第一に考えたい。そのためにも条約の周知を徹底したい。
県内の女性が「ハーグ条約」に基づき、米国人父親の両親と暮らす1歳の娘の返還を求めた申し立てについて、米フロリダ州連邦地裁は母親の請求を認めて娘の返還を命じる決定を出した。「子どもの通常の居住国は日本」と同地裁は判断した。
今回の裁判は米国人と結婚し、米本土で暮らしていた女性が妊娠中に夫の暴力に遭い、帰国したことが発端となった。娘は帰国後に生まれている。その後、娘の親権を主張する父親の訴えを裁判所が認め、女性は子どもを失った。
夫の暴力で夫婦関係が破綻した経緯を考えても、条約に基づく地裁決定は妥当だ。一日も早く、女性が娘と再会できるよう当事者や関係者の理解を求めたい。
両親の離婚などで国境を越えて引き離された子どもの取り扱いを定めた「ハーグ条約」に日本は2014年4月に正式加盟した。条約は子どもを元の居住国に戻すことが原則で、県内からの返還申し立てが認められたのは初めてだ。
国際結婚の増加に伴い、その後の離婚で一方の親が子どもを連れ去り、もう一方の親に面会させないという「子の連れ去り」が問題視されるようになった。
国境を越えた連れ去りは、言葉や生活基盤など子どもを取り巻く環境を大きく変えてしまう。成長に有害な影響を与えかねない。特に家庭内暴力が要因となって国際結婚が破綻した場合、子どもの処遇は深刻な問題となる。子どもの利益を守るためにも「ハーグ条約」の円滑な運用が必要だ。
憂慮されるのは正式加盟から約3年を経過した現在でも「ハーグ条約」の存在自体が十分に周知されていないことだ。
沖縄のように米軍基地が集中する地域では、条約の適用対象となり得るような事案がほかにも起きている可能性がある。条約に基づく子どもの返還請求の手続きを知らないまま、当事者が泣き寝入りするようなケースを防がねばならない。
沖縄は復帰前から国際結婚を巡る課題と向き合い、解決を模索してきた。その経験を踏まえ、「ハーグ条約」の運用にも積極的に関わる必要がある。市町村に担当窓口を置くなどの主体的な取り組みが求められる。不幸な親子を救うための手だてを急ぎたい。
家族と法(上) 離婚しても子に会いたい 交流求め、調停・審判急増
離婚や遺産相続など全国の家庭裁判所が担当する「家事事件」が、年間100万件を超えた。離婚後の子供との面会をどうするか。介護負担を相続に反映させるべきか。紛争のかたちは複雑になっている。解決を願う当事者の思いから、司法が抱える課題を探る。
「お父さんと会うのはイヤ。毎月100万円くれるなら会ってもいい」。北陸地方に住む50代の男性は昨年10月、送られてきた書面に印刷された「娘の言葉」に絶句した。差出人は別居中の妻の弁護士。妻は2年前、長女(8)を連れて家を出た。以来、娘の姿は一度も見ていない。
「娘の本心は?」
2015年春、離婚を前提に長女との面会を求める調停を起こした。しかし家庭裁判所は「長女が拒んでいる。面会は認められない」と諦めるよう促した。「娘と引き離される前日まで同じ布団で並んで寝ていた。『会いたくない』が本心のはずがない」。調停は合意に至らず、今月からはより訴訟に近い形の「審判」が始まった。
離婚前後に父母が別居したとき、どちらが子供といっしょに暮らし、離れて暮らす親との面会をどうするか。法的な争いが急増している。15年に面会をめぐる調停や審判は全国の家裁で1万4241件。10年間で約2.5倍に増えた。
離婚で家族がばらばらになって「縁が切れる」という感覚が薄まり、離婚しても父母ともに子供と会うべきだという意識の変化が背景にある、と司法関係者はみる。
昨秋、東京家裁が1つの決定を出した。別居中の母親に月1回娘を会わせる約束を守らない50代の父親に対し、「1回の面会拒否で100万円」の支払いを命じる決定をした。高裁で30万円に減額されたが、子供との交流を重んじた新たな判断として注目された。
離婚紛争の専門家によると、欧米では離れた親に宿泊を伴う長期間の面会を認めるケースが多い。しかし日本の裁判所では、特に父母間の対立が激しい場合、親権を持ち同居する親との関係維持が優先されやすい。同居する側が「会わせたくない」と考えれば、一方の希望は通りにくい。
棚村政行・早稲田大教授(家族法)は「別居前の子育てへの関わり方や親子関係を丁寧に考慮したうえで、問題がなければ少しずつ面会の実績を積み上げられるような判断が裁判所に求められている」と話す。
子の利益優先を
人口動態調査によると、両親が離婚した子供は年間22万人。今の出生数で考えると、5人に1人が経験している計算だ。面会場所を提供するなどして離れて暮らす親子を支援する家庭問題情報センター(FPIC)の山口美智子理事は「父母にはそれぞれ葛藤があるが、子供の思いをくみ取る姿勢を親も司法も忘れないでほしい」と訴える。
もともと面会交流の規定は民法には明確にはなかったが、12年施行の改正法に「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」と明記された。超党派の議員連盟は昨年末、離婚後も親子関係が続くよう促す法案をまとめた。
ただ離婚の背景にドメスティックバイオレンス(DV)がある場合も考えられ、反対意見も強い。法整備で面会が広まるかどうかは不透明だ。
会いたい親、会わせたくない親。どちらも裁判所に解決を求める。親の離婚に直面した子供のため、どんな解決策を示すのか。「全員が納得するような大岡裁きを期待されても困る」(ベテラン家事裁判官)とため息が漏れるなか、きょうも「子をめぐる争い」が裁判所に持ち込まれる。
【クリッシー悦子米国通信員】国際結婚が破綻した後の子どもの扱いを定めたハーグ条約に基づき、沖縄県内に住む40代女性が米国人夫との間に生まれ、米国で夫の親族と暮らす1歳9カ月の娘の返還を求めた申し立てで、米フロリダ州連邦地裁は17日(現地時間)、女性側の要求は妥当として夫側に子どもの返還を命じた。娘が普段から住む場所(常居所)が日本国内だと認定された。女性側の代理人によると、日本がハーグ条約に加盟した2014年以降、子の返還申し立てを認めたのは県内で初めて。
女性側代理人の武田昌則弁護士(琉球大学法科大学院教授)によると、女性は同年5月に在沖米陸軍所属の米国籍の男性と結婚。15年3月に米本土に夫と転勤転居したが、妊娠中にDV被害を受けたことなどで帰国。同年7月に長女を出産した。
その後、夫側から「娘と親族の結婚式に参加してほしい」と懇願され、同年10月、夫の実家があるフロリダ州に渡航したが、夫から虚偽のDV告発を受けて逮捕された。娘は夫の両親に引き取られ、パスポートも夫が保管。夫側は子どもの親権を主張する訴訟を同州の裁判所に起こし、娘は夫の母親が引き取るべき、との決定が出た。
女性は同州のシェルターに約2カ月滞在し、支援を受けながら娘の返還を求め続けたが認められず帰国。16年10月、ハーグ条約に基づき、同州連邦地裁に娘の引き渡しを申し立てた。17年1月には同裁判所での審理にも出頭。女性側は「娘は県内で出生し、国民健康保険や光熱費、住居費も母親が負担している」と訴え「結婚式のために渡米した際は、夫も、娘を連れての帰国を認めていた」などと主張した。
夫側は「女性は米国に永住するつもりで渡米し、片道の旅券しか購入していない」などと反論したが認められなかった。
決定を受け、女性は「大変なこともあったが、娘が帰ってくることを家族ともども喜んでいる」と語った。
ハーグ条約は、連れ去りなどが始まった時、常居する国が条約締約国の場合、締約国に子どもを返還するよう求めている。武田弁護士は「妥当な判断。国際結婚が破綻した際のリスクを知ってほしい」と語り、今後、夫側と娘の引き渡しを調整する。一方で「同様のケースで母親の主張が認められなかった場合もあり、子どもが帰るまで安心できない」と語った。
【ことば】ハーグ条約 正式名称は「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」。一方の親が16歳未満の子どもを配偶者に無断で国外に連れ去った場合、原則として、いったん子どもを元の居住国に戻すことなどを定めている。1980年にオランダのハーグ国際私法会議で採択され、83年に発効。日本は2014年に条約に加盟し、16年11月の時点で95カ国が締結している。
※下記は記事の日本語訳です。
日本語訳の出典
CORRIERE DELLA SERA |レポート| 2017年2月20日(月)
子供たちが母親に連れ去られた
日本でイタリア人の父親から奪われた子どもたち:「7月以降子どもたちに会えていない」
日本の国会でこの事件について議論がされた。日本人の母親は別の市に引っ越ししており、父親と子どもたちの面会を禁止している。そして日本の法律は共同親権を認めていない。
Elena Tebano(テバノ・エレナ)
日本の国会でこの事件について議論された段階においても、アントニオ(仮名)は7月以降子どもたちに会う事ができず、この状況をすぐに変えることも難しい。東京に住むイタリア人の男性は、日本人女性と結婚し2人の子供がいたが、妻が子どもたちを連れて別の街に引越しして以来、子どもたちとのすべての連絡は絶たれ、面会も禁止し始めた。彼は、日本の親権制度、特に共同親権がない法律のためになす術がない。「これまでに、イタリア共和国大統領の外交顧問からの手紙を受け取ったこともあり、何かが変わることを願っています。」アントニオは東京からの電話でそう言った。「何よりも松浪健太議員が国会の予算委員会で私のケースを取り上げたのは、日本が二重国籍を持つ子どもたちを扱う基準に違いがあることをはっきりと示しているからです。しかし、政府からは、まだ満足のいく回答はありませんでした。」ラ・スタンパ紙で1月に報告されたアントニオの話は、日本の多くの男性(西洋人だけでなく)が似たような状況に置かれている。ジャパン・タイムズによると、離婚した親からの子どもの返還要求が2015年だけでも97件あったが、これらのうちわずか27件だけが認められた。もう片方の親に子どもを返還させる判決が出たとしても、それを強制する法律が存在しないために多くの場合無視される。(よって人身保護法の適用が必要だ)
日本への転居
30代のIT企業の従業員であるアントニオが妻と一緒に日出づる国に転居することを決めたとき、すべてが始まった。 2009年から結婚し、彼らには現在4歳と2歳になるの子どもたち二人がいて以前住んでいたドイツから引越してきた。「私は本当に日本が大好きで、日本語も話せます。いい仕事のオファーもありました。子供たちはとても良い学校に通えるだろうと思ってました。ところが、転居した何か月か後、妻は元々住んでいた東京から2時間飛行機で離れた別の市に引越すことを決めたのです。都内では幼稚園の待機リストがあまりにも多かったのですが、彼女が引越した市では、すんなり入れてもらえそうだったからです。私たちの関係はあまりうまくいっていませんでしたが、まさかこれがもう子どもたちに会えなくなる理由になるなど思ってもいませんでした。」最初のうちは、アントニオはできるだけ頻繁に子供たちに会いに行っていた。「月に4、5回は会いに行きました。」そして9月には妻から電子メールが届いた。「彼女がただ知らせて来たのはこうです。私たちがまだ婚姻中であっても、子どもたちに二度と会えなくなるだろうと。私はすぐに何人かの弁護士を雇いました。」と彼は付け足した。
日本の法律
しかし、アントニオは法的な足がかりをあまり持っていない。日本は「継続性と安定性の原則」を適用している。それは、子どもが別居時に住んでいる親の元に残るという事を確立させてしまう。「これは基本的に児童の拉致を合法化するものです。離婚したい親は子どもを連れて出て行ってしまえば、もう片方の親は何もできません。」とアントニオは述べた。 「外国人はハーグ条約に基づいてこの返還の求める訴えを起こしますが、日本ではよくそれが無視されます。」アントニオにとってはさらに事を複雑にするのは、彼は明確に否定しているが、妻へのDVまでもが主張されていることだ。日本では子どもを得るために母親達がよく使う策略だ。「裁判官が証拠を探すわけではないので、そのおかげで、子どもたちへ接近を阻止することが可能である。私の場合、接近禁止命令に署名した裁判官に、『私の子どもたちへの愛着を考慮すると、子どもたちを取り戻しに行く危険がある。』と書かれました。自分の子どもたちへ愛着を持つことがまるで罪であるかのような書かれようですよ!」
新しい法律
政府は、別居や離婚の際の子の引渡しの強制執行に関する法律を来年までに国会の審議にもって行くかもしれない。金田勝年法務大臣は、2016年に法制審議会(諮問機関)でこのことについて要請している。これは子供たちとの再会を待っているアントニオにとって長い時間だ。
※下記は記事の日本語訳です。
日本語訳の出典
日本の裁判所がミネソタ州から連れ去られた子供たちを返還させないとの判決を下す。
問題 マンダ・リリー ・ 2017年2月17日
今週金曜日、日本の裁判所は、国際的親権争いの渦中にあるミネソタ州生まれの子どもたちが日本に留まることを認める判決を出した。
ジェームズ・クックと有光ひとみ(有光工業株式会社の代表取締役の娘)は、日本か米国どちらが4人の子どもの母国であるかどうかを議論している。
この夫婦の事件は、日本の裁判所を通じて2年以上の時間を費やしてきた。金曜日の判決は、米国を子どもたちの本来の居住国として認めた前回の法的措置を覆した。
2014年7月、日本人の有光ひとみは、夫婦の4人の子どもたち(8歳と13歳の双子2組)を連れて日本に休暇で訪れていた。この夫婦の関係はこの時拗れており、子供たちと母親にとって良い休暇になることになるだろうと日本の祖父母を訪れる6週間の旅行に同意した。
それから2年以上経つが、有光と子どもたちは、まだ米国に帰っておらず、彼女とクックは子どもたちの親権のために裁判所で争い続けている。
日米両国が締結している国際条約であるハーグ条約により、クックは日本の裁判制度を利用することが認められ、裁判所は2015年1月(訳注:2016年1月の誤り)、子供たちがミネソタ州に帰るべきであると判断した。一方、同年クックは、ヘネピン郡裁判所を通じて有光との離婚を申請した。その過程で裁判官は、クックに子供たちの暫定的親権を認めた。
それ以来、有光は子どもを米国に戻すことを拒否しており、彼女は日本とミネソタの裁判所命令を侮辱していることになる。
関連:国際法がミネソタ州の親権争いを縺れさせる http://www.mprnews.org/story/2017/02/10/international-law-tangles-minnesota-custody-battle-
金曜日の判決は、日本の裁判所の2015年(訳注:2016年)の判決を覆す。大阪地方裁判所は、有光が先月提出した申立てに同意した。同氏は、クック氏は住宅や学校の費用を支払う手段がなかったため、ミネソタ州に子供たちを戻すことができなかったと書いている。それには、「米国に戻った場合、子どもたちが損なわれる重大な危険にさらされる」と書かれた。
裁判所は、クック氏には4人の子どもたちを扶養するための資金が不足していると判断したが、弁護士のビクトリア・テイラー氏は、この判決の取り消しはハーグ条約に沿わないと主張している。
「これは国際的な事件になるだろう
とテイラー氏は述べた。
テイラー氏は、依頼人のクック氏と米国国務省に連絡をとり、子どもたちの帰国を確実にするために日本に対してどのような制裁を課すことが妥当か見極めると述べた。
拒否1回100万円「あまりに過大」30万円に
東京家裁決定は「1回の拒否に100万円の制裁金」
別居している長女との月1回の面会交流が裁判で認められたのに長女と同居する夫が応じないとして、妻が1回の拒否につき100万円の制裁金の支払いを夫に命じるよう求めた裁判で、東京高裁は8日付で、請求を認めた東京家裁決定(昨年10月)を変更し、1回30万円に減額する決定を出した。川神裕裁判長は「100万円はあまりに過大で相当ではない」と指摘した。
妻は取り決めを守らない親に裁判所が制裁金の支払いを命じる「間接強制」を申し立てた。同様のケースでは拒否1回につき5万~10万円程度が多く、家裁決定は異例の高額だとして注目された。
高裁決定は「小額の支払いを命じるだけでは面会交流は困難」と家裁の判断を支持する一方、金額について「(面会拒否を続けた)夫の態度を考慮すると理由がないものではないが、相当ではない」と判断した。
高裁決定などによると、夫妻は離婚裁判中で2011年から別居。東京家裁が15年に妻と長女の月1回の面会を認めて確定したが、夫は面会に応じなかった。100万円の間接強制を認める家裁決定後、妻と長女は5年ぶりに面会した。【伊藤直孝】
「全国女性シェルターネット」が展開する東京高裁への要望
米大統領選当選直後にトランプ氏と面談した安倍晋三首相が、トランプ氏の孫娘であるアラべラ・ローズちゃんのPPAP動画を話題にしたが、幼い子どもは実に可愛いものだ。まして、それが血のつながっ た肉親であればなおのこと。母親、父親にかかわらず自分の子どもはいとおしい。
しかし、日本では親権者や養育者を決定する際には、母親が養育するのが望ま しいとする「母親優先の原則」や成育環境が変わるのは子どもに不利益との考え方から「継続性の原則」が重要な要件となっ ている。加えて、DV防止法によって、一方的に父親が悪者にされるケースもある。
例えば、夫婦喧嘩が激しくなり、妻が子どもを連れて実家に帰り別居となった場合、子どもの親権を父親とするのはかなりの困難が伴うのだ。実家に帰った妻が病院に行き「ストレス性腸炎」等という診断書をもらっていればなおさらだ。妻がDVシェルターに入ると、裁判所は「DVがあった」と見なしてしまうケースが多い。全国女性シェルターネットというNPO(特定非営利法人)の理事である近藤恵子氏は「被害者が逃げて来たという事実が、DVの明確な証拠」と話している。実際、DVがなかった場合、なかったという事実の証明は難しい。DVがなくてもあったと見なされてしまう冤罪もある。あるいは「DVで訴えた」という事実が残る。そして、たいていの場合、DV防止法による「接近禁止命令の訴え」を妻が出す。すると裁判所はDVがあってはならないので、「接近禁止命令」を下すのだ。すると、子どもに会えない父親は「継続性の原則」から親権争いでは立場は弱くなる。
そうなれば、離婚した夫婦間での子どもの親権争いは大きく夫に不利になる。余りにも辛いので、夫が自力で子どもを取り戻そうとすれば、妻は警察官を呼び、逮捕にでもなれば、親権争いでは負けと なる。いうまでもないことだが、これはDV等存在しない場合である。こうしたケースを未然に防ぐために「親子断絶防止法案」が検討されているが、いまや骨抜き状態になっている。前述したように子どもが可愛いと思うのは、父親も、母親も同様だろう。ところが、現状の日本ではきわめて父親に不利な状況がある。「父親は強く、母親は弱い」という固定観念から男女共同参画関係予算では「女性に対するあらゆる暴力の根絶」に一千億円を超える予算が与えられている。
そんな予算の恩恵にあずかっている全国女性シェルターネットが、ある裁判の判決を巡って、署名活動や東京高等裁判所への要望を行っているという話が聞こえてきた。この裁判は五年以上別居状態の夫婦が長女の親権を争った裁判で、千葉家庭裁判所松戸支部は、二〇一六年三月二十九日に「夫を親権者と定め、同居する長女を夫に引き渡すよう」命じた判決を出した。妻が控訴したため、一七年一月二十六日には東京高等裁判所で判決が出ているはずだが、昨年行われた相談員研修会〜DV被害者について学ぶ〜で、全国女性シェルターネットはこの裁判の判決を妻の勝訴としたいために、高裁に圧力をかけようと署名活動を実施した。これは内閣府主催の講演会で、講師は全国女性シェルターネット理事の近藤恵子氏。国費で行う講演会で、NPOがそうした訴えをしていいのだろうか。
この際に配布された文書には「夫からの暴言、暴力、精神的虐待、経済的虐待等から結婚四年後に別居」等と裁判では事実とは認められていない記載がある。事実がねじ曲げられている。この団体が前述裁判に血道をあげるのは、奈辺にあるのか。
<子の幸せは?> 親子断絶防止法案、「面会交流」めぐり賛否
離婚後の親子の面会を促す「親子断絶防止法案」(通称)をめぐっては、賛成と反対、双方から切実な声が聞かれる。日本では離婚の際に子どもの親権者を決める必要があるが、離婚が珍しくない時代になり、その後の面会交流をめぐる争いも多い。双方の意見を聞いた。
「子どもの連れ去りが少しでも減ることが期待できる」。「親子断絶防止法全国連絡会」事務局長の平田晃久さん=東京都=は、法の成立に期待する。メンバーの中には、婚姻中に配偶者が子どもを連れて出ていき、なかなか会えない人が多数いるという。
平田さんは「日本では婚姻中でも、子どもを連れて出て行かれた時点で、実質的に親権を失う」と話す。先月二十六日、別居中の夫婦が長女(9つ)の親権を争った訴訟で、東京高裁は妻と長女の面会交流を年間百日としていた夫を親権者とした一審千葉家裁松戸支部判決を変更。既に同居している妻を親権者と認めた。二審判決は、同居の親を優先する「継続性の原則」に基づいているが、親権訴訟では圧倒的にこの原則が適用されることが多い。
別居中の親が子どもとの面会を希望し相手に応じてもらえない場合、調停で同意するか、審判で面会交流が決まるまで、ほとんど会えないという。「毎日のように絵本を読んであげたり、一緒に遊んだりしたわが子と引き離され、調停や審判で争っている間に何年もたってしまう。そんな悲劇はなくなってほしい」と訴える。
また、調停や審判をしても、認められるのは月一回かそれ以下の面会交流だけというケースも多い。法制化によって、宿泊もできるようになるなど、面会交流の内容が充実することも望んでいる。
◆DVの場合は慎重に
子どもと同居する親を支援する団体からは、懸念の声が上がる。
ひとり親家庭を支援するNPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」(東京都)の赤石千衣子理事長は、二〇一一年の民法改正で面会交流の規定ができて以降、裁判所の審判や調停で、「夫婦間にどんな事情があっても面会交流をするよう促されるケースが多くなった」と感じている。
例えばドメスティックバイオレンス(DV)で被害者に近づかないよう裁判所が命じた事案でも、子どもへの暴力がないとして面会交流をさせる判断が下されているという。
長崎市では先月、面会交流の取り決めをしていた元妻が、子どもを送り届けて元夫に刺されたとみられる殺人事件が発生。「子どもや同居親の命が危険にさらされる恐れがある」と、法制化を危惧した。
児童精神科医にも、法案を懸念する声がある。あいち小児保健医療総合センター(愛知県大府市)の古橋功一医師は「夫婦間DVで、子どもへの直接的な暴力がなくても、子どもへの悪影響は大きい」と話す。
夫から妻へのDVを見ていた子どもは、父親と別居した後に暴力などの行動を起こすことがあるという。「父親は『自分が離れたことで、子どもが不安定になった』と思うが、そうではない。父親が近くにいなくなり、恐怖で閉ざしていた心が動くようになったため、そうした行動がでてくる」と指摘する。
また、中には父親の影におびえ、似た人を見たり、似た声を聞くだけで怖がる子どももいるという。その場合、面会交流が適切でないとの意見書を書くことがあるが、裁判所が面会交流をさせる決定をする例が増えているという。
「もちろん会わせてよいケースはあるが、とにかく会わせるというのは危険」と警鐘を鳴らす。
(寺本康弘)
離婚「裁判沙汰」抵抗なく 家裁の案件、16年100万件超
家庭裁判所が扱う「家事事件」が2016年に初めて100万件を超えることが確実になった。大きな要因の1つが、離婚をめぐる夫婦のトラブルが数多く家裁に持ち込まれるようになったことだ。養育費や子供との面会をめぐる争いが増えており、専門家は「対立が深まって裁判所頼みになる前に、問題を解決できる仕組みが必要」と指摘する。
「夫婦が激しく争い、歩み寄りが難しい案件が増えた」。離婚を巡る争訟に詳しいベテラン裁判官は実感を語る。人口動態調査によると、2015年の離婚件数は約22万6千件。前年より増えたが、30万件近くあった00年代前半と比べると低い水準だ。結婚件数そのものが減っていることなどの影響とみられる。
しかし、離婚に絡む法的な争いは増えている。例えば、子供と一緒に生活して世話をする「監護者」を定める調停と審判の申し立ては15年に4562件と、10年間で3倍以上になった。1組の夫婦が離婚や養育費の支払い、子供との面会など複数の事件で争うケースも目立つ。
専門家は夫婦の問題が裁判沙汰になるのを敬遠した風潮が弱まり、裁判所に解決を求めていると分析する。早稲田大の棚村政行教授(家族法)は「インターネットで(調停などの)手続きや専門の弁護士を簡単に調べることができるようになり、裁判所で決めてもらおうと考える人が増えた」とみる。
東北大の水野紀子教授(民法・家族法)は「これまでも養育費や面会を望みながら泣き寝入りしていた人は多かったはずだ」と指摘。「婚姻中から十分な生活費が渡されずに困るケースなどもあり、早い段階で行政が関わり、離婚の条件や子供の養育の問題を解決できる仕組みが必要だ」と話す。
対策を講じた自治体もある。兵庫県明石市は14年から離婚届を出す人らに対し、養育費支払いの期限や面会の内容・頻度を書き込む合意書などを配っている。法務省は明石市の例を参考に合意書作成の手引をまとめ、全国の市区町村にこうした取り組みを促している。
家裁は離婚のほか、後見や相続などに関わる審判や調停を中心に手がける。高齢化の進行を映して後見人の選任・監督や相続放棄なども増えており、家事事件全体の件数を押し上げた。
一方、一般の民事事件・行政訴訟、窃盗などの刑事事件、少年事件はいずれも減少傾向にある。刑事事件についてみると、16年1~11月に全国の裁判所が受理したのは被告の人数ベースで約91万件だった。16年は初めて家事事件が刑事事件を上回る可能性がある。
<子の幸せは?> 離婚後も親の責任意識を
離婚後に別々に暮らす親子に交流を促す「親子断絶防止法案」(通称)の国会提出を、超党派の国会議員連盟が目指している。別居した親が子どもに会おうとしても同居親の同意を得られず、調停や訴訟の件数が増えていることが背景にある。ただ、ドメスティックバイオレンス(DV)の被害者には、元配偶者と子どもの面会に強い不安を感じる人も少なくない。子どもにとって何が一番良いのか。それをめぐる意見の対立も深い。議連事務局長の馳浩衆議院議員に法案の狙いを聞いた。
◆親子断絶防止法へ活動 馳衆院議員に聞く
-法案の目的は。
子どものいる夫婦が離婚した場合、養育費の支払いと面会交流を通じて子どもの成長を見守ることは親の責任として果たす必要がある。しかし、実態はいずれも十分ではない。離婚にはそれぞれの事情があるが、養育費が支払われないことで、子どもが経済的に困難になってはいけないし、両方の親と交流を続けることも必要だ。
-法律で定める必要があるのかという意見がある。
家庭の問題に法律が入ることは難しい。しかし、社会で一定のルールはつくっておく必要がある。法案に罰則規定はなく強制力がないといえばそれまでだが、法制化によって、養育費を払う、面会交流をするという意識を浸透させられると考えている。
離婚やその後については、夫婦でしっかり話し合い、合意することが大切だ。だまって子どもを連れて出て行くケースがあるが、それは基本的にはいけない。話し合うのに危険があれば、児童相談所やDV被害者の支援機関に相談するなどしてほしい。第三者に入ってもらうのがよい。
-子どもを面会交流させることに、強い不安を持つ人も少なくない。
法案は「子どもの最善の利益を考えて」と強調している。全く会わせないことがいいという判断もあると思う。子どもへの虐待や夫婦間でのDVがあった場合についての配慮も法案には具体的に盛り込んである。
どちら側からも法案の内容では不十分という意見がある。双方の話を聞き、原案をずいぶん修正した。各党に持ち帰ってもらっているが、全会派の合意を得て成立させたい。
◆養育費・面会交流 取り決め書面に
超党派議連は二〇一四年三月に発足。自民、民進など衆参の国会議員七十人で構成している。法案は、離婚後も父母が子どもと面会交流などを通じて、継続的な関係を持ち続けることが原則として「子の最善の利益に資する」と掲げる。現状では、取り決めがないことが多い養育費の支払いや面会交流の実施について、離婚時に書面にするよう努めることを柱としている。同居親が実現するようにするとしている。
法案が議論される背景には、父親を中心に面会を求める別居親が増えていることがある。面会交流の調停や審判を父親が申し立てる件数は、十年前の二・六倍。厚生労働省の一一年度の調査によると、父親と子どもが別居していて、定期的に面会交流をしているのは27・7%にとどまっている。
夫婦の一方が、相手に黙って子どもを連れて出て行き、離れて暮らす親が子と会えない事態が各地で起きていることを受け、法案は国や自治体に対し、防止に向けた啓発も促す。
議連の中で協議を重ね、法案は修正されてきた。当初、子どもの意思を重視する趣旨の条文はなかったが、面会交流の実施については、子どもの意思を確認する機会の確保に努め、その意思を考慮することを盛り込んだ。また、児童虐待や元配偶者へのDVなどがある場合は「特別の配慮がなされなければならない」としていたが、より具体的に、面会交流を行わないことを含めた特別の配慮を求めている。
超党派議連は法案を各党に持ち帰り、議論している段階。今国会での成立を目指している。
(寺本康弘)
“DV冤罪も…”我が子に会えない父親たちの苦しみ
DV認定はされずも、親権は母親に
人口動態統計によると、日本では、年間20万件以上、つまり夫婦の3組に1組が離婚している。人口1000人あたりの離婚率は1.77(2016年)だ。そんな中、子どもと会えない親たちがいる。
先日も、別居中の夫婦が、9歳の長女の親権をめぐって争った裁判の判決があった。千葉家裁松戸支部(庄司芳男裁判官)は2016年3月、長女と別居しながらも、「年間100日、母親が子どもと面会できるようにする」と提案する父親に親権を認めていた。しかし、17年1月26日、東京高裁(菊池洋一裁判長)は、子どもと同居する母親を親権者とする判決を下した。傍聴席には、自らも子どもと会えない時期があったノンフィクション作家の西牟田靖さんが座っていた。『わが子に会えない 離婚後に漂流する父親たち』(PHP研究所)を上梓したばかりだ。
東京高裁での親権争いは、母親に親権を認めた結果になった。判決によると、母親は10年に長女を連れて実家に帰った。別居する父親は何度か長女と面会していたが、夫婦関係が悪化するにつれて、面会交流が難しくなっていた。この裁判では、「年間100日」という、欧米では標準的な面会交流の日数を提案している父親に親権を認める千葉家裁の判決を東京高裁がどう判断するのかが焦点だった。
いわゆる、フレンドリー・ペアレント・ルール(友好的親条項)というものがある。離婚後に子どもの親権を決める際、別居の親と子どもの面会交流に協力的か、別居の親を子どもに肯定的に伝えることができるか、など親権者として適正かどうかを判断する。千葉家裁はこのルールにそった内容だった。しかし、日本でこのルールを適用したのは異例だったと言える。
一方、東京高裁は継続性の原則を重視し、長女と同居する母親に親権を認めた。つまり、生活環境が安定していれば、現状維持となる。異例だった千葉家裁判決とは違い、これまでの判例通りの判断をした。別居時に、一方が子どもを連れて出ていくことを“連れ去り”と言われることがあるが、継続性の原則は、どんな形であれ、一緒に住んでいる親を親権者として認めるものだ。
私は判決言い渡しを傍聴していたが、西牟田さんも傍聴席にいた。その後、夫と妻それぞれの会見が司法記者クラブであったが、2人とも会見に参加した。母親に親権を認めた点に「結局、継続性の原則が勝つのか…」と思ったようだ。また、夫側の会見では、妻側が“夫はドメスティック・バイオレンス(DV)の加害者”と主張し、それを前提に署名活動が行われていた点に、弁護団は憤慨していた。裁判では証拠がなく、DVは認定されなかった。
『わが子に会えない』でも、妻側にDVを主張されて、警察に逮捕されるケースまで描かれている。西牟田さんはDV冤罪について「人はそれなりの正義を持っている。強固であるほど意見や立場の異なる人たちに関する許容度は減るのではないか」と感想を持ったようだ。
この裁判では、夫側が判決を不服として上告した。最高裁が受理すれば、裁判は続く。私としては、夫婦の関係崩壊は仕方がないとしても、実際に子どもへの危険がない限り、親子ができるだけ自由に面会できる権利や環境整備をしてほしい、と願うばかりだ。
普通の生活をしている常識人でも”被害”に遭う
西牟田さんが、離婚後に子どもに会えない父親をテーマに執筆しようと思ったのは当事者だったためだ。離婚後、子どもと会えない時期があった。当事者の団体を知人を通じて知り、交流会に出かけ、問題意識を持つようになった。
「交流会に参加する以前は必死だった。家族の崩壊を食い止めないといけないと思っていたし、こうなったのは自分が悪いからだ、と責めることもあった。精神的に参っていたので、門を叩いた」
子どもに会えない苦しみは自分だけなのか。そう思っていると、同じく苦しんでいる人がいるとわかった。知人の報道ディレクターがFacebookで書き込んでいたからだ。彼の話を取材し、雑誌に掲載しようと思ったが、その矢先、彼は自殺した。理由は単純なものではないだろうが、
「家族のことが一番の問題だった、と聞いた。それで余計に深刻な問題なんだ」
と思った。
『わが子に会えない』では、18人の当事者が出てくる。夫婦の関係が崩壊する理由もさまざま。浮気によるもの、妻の精神的な不安定さ、結婚に反対していた義父母による妻子の囲い込み、妻からのDV、宗教が原因となるもの……。インタビュー集のため、どのパターンをどう解決するといった手立ては書かれていない。また、父親が言っていることが事実かどうかわからない。一方的ではあっても、会えない辛さを訴える当事者が目に前にいることはたしかだ。
西牟田さんは現在、子どもとの面会ができている。しかし、会えるようになるまで離婚してから1年3ヶ月がかかった。今年も2回、元妻と子どもと3人で会うことができている。自身も同じ苦しみをしたという意味で、取材や執筆は辛くなったのだろうか。
「僕自身が当事者だが、裁判も調停もしてないので、どのケースにも似ていない。ただ、『僕の見た「大日本帝国」』(KADOKAWA)、『誰も国境を知らない』(朝日新聞出版)などの歴史ノンフィクションでは、右でも左でもなく、中立というのが売りで、途中でエクスキューズを入れていた。しかし、今回は、彼らの声を薄めずに、そのまま書くようにした。そうじゃないと、(突然子どもと会えなくなる)“災害”のようなものに遭っていることが伝わらない」
今回は、子どもに会えない父親側に立った本だが、どんな点に気をつけて書いたのか。
「バックグラウンドがバラバラな、あらゆる男の人が“被害”に遭っていることをわかってもらうために、人となりも紹介した。父親が暴力をしているのでは?と見られがち。しかし、いかに普通の生活をしている常識人であることを踏まえつつ、“連れ去り”被害を書くことにした。そのため、地下鉄サリン事件の被害者のインタビューをまとめた、村上春樹の『アンダーグラウンド』(講談社)や、原発事故被災者の声を丹念に聞き取った、スベトラーナ・アレクシエービッチの『チェルノブイリの祈り』(岩波書店)を意識した。もちろん、嘘をついているかどうかはわからない。しかし、それを含めて伝えようと。今回はイタコになろうと思った」
親子断絶防止法は共同親権の足がかりになるか?
この問題をどう解決すべきだろうか。
「別れた後の処理が、ベルトコンベアのように機械的になっている。司法が関わると、なおさら大変だ。欧米では、100日面会が相場だ。諸外国のように、共同親権が認められればいい。現状では、『共同親権を実現せよ』と、声高に言っている政治家はいないが、前段階として、親子断絶防止法の制定を願っている」
親子断切防止法案は、子どもには両親の愛情が必要という前提に立ち、夫婦が離婚をしても、頻繁かつ継続的な親子交流ができ、また子どもを同意なく連れ去ることを禁止するものだ。そして、共同親権も導入すべき、と付帯決議で提案もする予定になっている。
「親子断絶防止法は共同親権への足がかりになればいい。もちろん、夫が“連れ去る”というケースも知っている。そのため、別れるのは手順が必要です。現状では義務ではないため、制度化するべき」
ただ、慎重な意見も多く、具体的な政治日程には上がっていない。DVは証拠に基づく、とされているが、証拠を保全する余裕がない場合もある。妻への暴力がある場合は、子どもへの暴力の可能性も高い。これを禁止されると、子どもを守れない。一方で、加害行為がないのに、DV冤罪を主張される場合がある。『わが子に会えない』では逮捕されたケースも掲載されている。議論が成熟はしていない。
もちろん、“連れ去り”をするのは母親だけではない。
「父親が“連れ去る”というというケースも取材したことがある。ただ、今回、父親に絞ったのは、親権は母親が優先されている現状があり、それを顕在化したかった。それに、自分が男で共感がしやすかったから」
最後に一言。
「結婚したときと子どもが生まれたときでは状況が変化する。結婚は、相手の常識とこちらの常識とのすり合わせ。子どもが生まれればなおさらだ。取り上げた人に対して感情移入はしている。僕の場合は、トラブルにあっても、別れても、復縁の目がなくても、家族だと思っている。ただ、この本を読むと、結婚に希望を見出す人が減るのかもしれない。でも、こういう問題がなくならないといけない」
別居親子交流、子ども第一で
別居中の両親が長女(9)の親権を争った訴訟の控訴審で1月、母を親権者とする判決が出た。裁判では、離れて暮らす親と子の面会のあり方が焦点の一つだった。別居親を中心に面会促進をめざす法整備を求める声が上がる中、子を尊重した面会交流をどう実現させるかの議論が広がっている。
●訴訟、面会焦点に
1審・千葉家裁松戸支部と2審・東京高裁の判決によると、夫婦関係の悪化から母は2010年、当時2歳の長女を連れて実家に身を寄せた。1審で父は「自分が親権者になれば、母に年100日の面会交流を認める」という共同養育計画を提案。1審はこれを評価し、娘と離れて暮らしてきた父を親権者とする異例の判決を下した。
しかし東京高裁は、父の計画に難色を示した。「距離の離れた父母宅を年100日往復するのは体への負担、学校や友人との交流への支障が生じる恐れがあり、長女の利益になると限らない」と判断。親権者は母親とするのが相当とした。
父側は母親が長女を連れて別居したことを「一方的な連れ去り」と主張したが、高裁は「仕事で多忙な父に長女の監護を委ねるのは難しく、険悪な夫婦間では事前の協議も困難」と判断した。
小川富之・福岡大法科大学院教授(家族法)は「親権者は、子の健全な成長に関する事情を考慮し、子の利益の観点から決めるべきこと、面会交流は考慮事項の一つに過ぎないことが明確に示された」と評価。配偶者から子を引き離す「子連れ別居」については、「子の利益になるかどうかを基準に判断するという姿勢が示された点も重要」と解説する。
棚村政行・早稲田大教授(家族法)は「1審の見直しは妥当」としつつ、新しい面会交流のあり方への言及がないことを批判した。「新たな親子関係を築くための一歩踏みこんだ発想がない」
面会交流に関する調停申し立ては近年急増。15年の受理数は1万2264件で、10年で2倍以上に増えた。子どもとの面会ルールを定めずに離婚したり、父母間で取り決めることが難しかったりする現状が背景にある。日本では離婚後は単独親権制で、親権者の約9割が母親。申し立ての大半は父親によるものとみられる。
●DV原因、ためらい
当事者から法整備を求める声もあり、超党派の国会議員でつくる親子断絶防止議員連盟(会長・保岡興治衆院議員)が昨年、面会交流の促進を柱とした「親子断絶防止法案」をまとめた。
だがDV(配偶者間暴力)や虐待がからむ離婚では、加害者に子を会わせることをためらう親も少なくない。司法統計によると、妻からの離婚調停申し立ての動機は▽生活費を渡さない▽精神的虐待▽暴力--が上位四つのうち三つを占める。このため法曹や被害者支援団体を中心に、反対意見が噴出。一部が修正されたが、「面会交流を理由に関係を維持すれば、被害が続きかねない」といった慎重論は根強い。実際、ストーカー被害を訴えた長崎市の女性が元夫に殺された1月の事件は、子の面会のため女性が元夫の所に出向いた時に発生していた。
夫のDVが原因で離婚したある女性は、殴られた記憶がよみがえり、再び夫と関わり、子どもを面会させることが怖くて仕方ない。「裁判所もこうした気持ちには配慮してくれない」と涙ぐむ。離婚訴訟では夫のDVが認定されたものの、元夫と子どもとの月1回の面会交流が決まってしまった。面会のたびに母子ともに精神的に不安定になる。「親子の心理を丁寧にみてくれ、安心して子を預けられる環境整備が先決ではないか」
●少ない第三者機関
面会交流では、面会場所の提供や立ち会い、子の受け渡しで当事者を支援する第三者機関がある。だが公益社団法人「家庭問題情報センター」など全国で約40団体のみ。行政の補助金など資金援助はほとんどなく、財政的に厳しい。利用料も1回5000~1万円ほどかかり、利用が広がらないのが現状だ。多くの面会交流は父母か代理者で行われ、当事者の自助努力しだいであることが日本で面会交流が活発化しない背景にある。
支援団体の一つ、NPO法人ウィーズ(千葉県船橋市)の光本歩副理事長は、自身も両親の離婚を経験した立場から「親との関係性を子ども自身が決めることが大切」と考える。法案については「離婚後も、両親が子の養育に責任を果たさなければならないことに社会の関心が高まるなら歓迎だ」とした上で、「支援者や司法が両親に長期的な計画作りを促し、子の成長に応じて意思を確認することが不可欠だ」と話す。
棚村教授は法案を発展させ、国や社会が子の養育を支える「子ども養育支援基本法」を作る必要があると提言する。「現在の法案は離婚時の面会交流・養育費の取り決めやその実行について、親個人に責任を課す法律構成。これでは父母の対立をあおり、子の利益を損ないかねない」と懸念。「子の養育の合意形成、それが適当かどうかの判断、その後の実行や生活安定に至るまで、困難を抱えた家族を国や社会が支援する法制度が必要だ」と話した。【中川聡子】
親子断絶防止法案の要旨
▽離婚後も父母と子の継続的な関係維持を促進する(基本理念)
▽父母とどう関係をもつか、子どもに意思を聞くよう努める
▽児童虐待防止法とDV防止法の趣旨を尊重する
▽離婚時に面会交流と養育費分担を書面で決める
▽子どもと暮らす親は面会交流の実現に努める
▽面会交流が子の利益に反する恐れがあれば、特別の配慮をする
▽国は離婚後の父母の共同親権制度の導入や養育費確保のあり方を検討する
離婚後の親子、交流促進を=超党派議連が議員立法
自民、民進両党など超党派の「親子断絶防止議員連盟」(会長・保岡興治元法相)は、離婚や別居で婚姻関係が破綻した父母の一方と、離れ離れになった子が面会や交流を通じて、継続的な親子関係の維持を促進するための法案をまとめた。離婚の際、子の監護に要する費用の分担や子との面会頻度を、書面で取り決めるよう努力義務を課したのが柱。各党で今国会へ共同提出を目指す。
法案は基本理念で、離婚後の継続的な親子関係の維持について「実現が図られなければならない」と規定。その上で「子に意思を表明する機会を確保するよう努め、健全な成長、人格形成が阻害されることがないようにしなければならない」とした。
また、法案は、父母に対し、子との定期的な面会、交流を安定的に行い、親子としての良好な関係を維持するよう求めた。国は必要な啓発活動や援助を行うとし、地方自治体にも、国と同様の活動などを行う努力を促した。(2017/02/06-04:32)
親権訴訟 連れ去り後を絶たない争い 今後どうなる 1・2審逆転訴訟からひもとくと…
夫婦仲が悪くなるなどして別居や離婚をせざるを得なくなったとき、子供の幸せや利益はどうしたら守られるのか-。別居中の40代の夫妻が長女(9)=妻と同居中=の親権を争った訴訟で、1月26日、東京高裁で控訴審判決が言い渡された。この訴訟では、1審の千葉家裁松戸支部が従来とは異なる判断枠組みを示し、夫側を勝訴としたことで注目されていた。しかし、東京高裁は従来の判断基準を尊重し、妻を勝訴とする逆転判決を言い渡した。離婚が珍しいことではなくなり、親権争いの増加も見込まれる日本で、一つのモデルケースとなったこの訴訟を通じ、親権決定の在り方を検証する。(社会部 小野田雄一)
■揺らぐ従来枠組み
判決後、妻側は「1審判決は従来の枠組みを否定した誤った判決だった」と指摘。夫側は「従来枠組みは子供の連れ去りを助長するものだ。高裁判決は現実に起きている問題を見ていない」と批判した。この訴訟は夫側が上告し、最高裁で争われる見通しだ。
ただ、政治の世界では夫側の問題意識に沿った立法も計画されている上、国境をまたぐ子供の連れ去りを禁じた「ハーグ条約」への加盟などで、従来枠組みの妥当性が揺らいでいるのも事実だ。
判決によると、夫妻は平成18年に結婚し、翌年長女が生まれた。しかし長女の養育方針などをめぐって不仲となり、けんかをするようになった。22年、妻が夫の不在時に長女を連れて自宅を出た。当初、妻は夫に長女と面会させていたが、面会方法などをめぐって対立し、同年9月以降、面会は実現していない。その後、妻は夫が持つ長女の親権を渡すよう夫を提訴。夫は長女を引き渡すよう妻を反訴していた。
■寛容性の原則重視の1審
1審は、夫が「自分が親権者になったら、年間100日、妻と長女を面会させる」と訴えたことを重視。「長女が両親の愛情を受けて健全に育つためには、夫と長女の面会を月1回程度としたいと考えている妻よりも、夫に養育される方が望ましい」と判断し、夫に親権を認め、妻から夫へ長女の引き渡しを命じた。
この1審判決は、欧米的な「フレンドリーペアレントルール」(相手の親に、より有利な条件を提示した親を有利とする基準=寛容性の原則)を重視した初の事例として注目された。
従来、親権者を決めるにあたっては、(1)継続性の原則(現在の子供の成育環境に問題がないのであれば、その環境からあえて子供を引き離すべきではないという考え方)(2)母親優先の原則(子供は母親に育てられる方が望ましいとする考え方)(3)愛着の原則(子供がなついている親を優先すべきだとする考え方)(4)子供の意思(子供が一緒に暮らしたいと望む親を有利とする考え方)-など、複数の基準を総合的に考慮するのが判断の枠組みとなっていた。
一方、「寛容性の原則」はこれらの基準に比べ優先度の高い基準ではなかったとされる。1審判決は、寛容性の原則を高く評価し、従来の判断枠組み上は有利だったはずの妻を敗訴としたことで注目された。
しかし控訴審となった東京高裁の菊池洋一裁判長は、「親権者を決めるにあたっては、寛容性の原則のみを重要視するのは不適切で、さまざまな状況を総合的に判断すべきだ」と従来の枠組みに沿った判断を示した。
その上で、長女の現在の成育状況に問題はない▽100日面会は、夫と妻の間を移動する長女にとって負担が大きい▽長女は母親と一緒に住み続けたいとの考えを持っている-ことなどを考慮。妻を親権者とすることを決定した。
ただ、妻側は「夫からは金銭的・肉体的・精神的なドメスティックバイオレンス(家庭内暴力、DV)があった」と主張したが、菊池裁判長は「DVは認められない」と退けた。
■今国会提出目指す親子断絶防止法案
夫側はこの判決を厳しく批判した。
判決後に会見した夫側は「現実的に、子供を連れ去って学校などに入れ、DVをでっち上げ、子供に相手の親の悪口を吹き込んで子供の意思をゆがめて親権を取ろうとする行為が相次いでいる。従来基準は、連れ去りをした方が有利になるというおかしなものだ」と指摘。「寛容性の原則は、連れ去りやDV冤罪(えんざい)、子供の意思がゆがめられることなどを防ぎ、両親から子供が愛されて育つことで子供の利益を守るための概念だ。こんな判決では、連れ去りはなくならない」などと話した。
こうした夫側の問題意識に基づく法律の制定を目指す動きも出ている。
超党派の国会議員らでつくる「親子断絶防止議員連盟」は、親子断絶防止法案の今国会への提出を目指している。法案は(1)夫婦は別居や離婚する際は、子供と同居しない親と子供が定期的に面会できるよう、面会方法を書面で取り決める(2)国は夫婦の取り決めをサポートするというものだ。また、別居の背景にDVがあった場合や面会が子供の意思に反する場合は、配慮することも盛り込んだ。
同法案は罰則規定のない理念法。同連盟で中心的な役割を担う馳浩・前文部科学相(55)は「日本はハーグ条約に加盟し、国際的な子供の連れ去りは認めないということになった。しかし、国内での連れ去りが後を絶たないことは問題として把握している」と指摘。「子供をどちらが取るかをめぐって、夫婦が対立するのは子供にとって望ましくない。そうした事態を防ぎ、子供が両方の親から愛される社会を目指すべきだ」と話した。
ただ、同法案をめぐっては、一部の女性人権団体などから「離婚や別居は夫のDVが原因であることが多い。DVの本質は暴力ではなく、相手を支配しようとする欲求だ。法案はDVに配慮するとしているが信用できない。実際に成立すれば、DVをする夫にも際限なく子供との面会を認める根拠ともなりかねない。子供や女性の権利が侵害される恐れが強い」と批判の声も上がっている。
■単独親権と共同親権
1月26日の高裁判決は従来基準に沿ったものとなったが、親子断絶防止法案やハーグ条約加盟などの社会的動きは、「連れ去りは不当だ」とする夫側の主張が無視できないものになっているということを示している。さらに識者の間でも、離婚・別居する夫婦間に必要以上の対立が起きるのを避けるため、現行の単独親権を改め、欧米的な共同親権を日本にも導入すべきだという声も上がっている。
こうした社会的動向に照らせば、子供の親権を決定する判断基準は現在、過渡期にあるといえる。両親が離婚・別居した子供にとって、何が幸せなのかという基準も一定ではない。今後、同種訴訟などで判例が積み重ねられれば、従来の判断枠組みが徐々に変わっていく可能性も十分にあるといえそうだ。
「わが子に会えない」 父親18人の苦悩をルポ
ノンフィクションライターの西牟田靖さん(46)が、離婚後に子供に会えずに苦悩する父親の姿をつづった「わが子に会えない」(PHP研究所)を出版した。自らも離婚後、一人娘に会うために苦労を重ねた西牟田さんに、父親たちに起きている現状を語ってもらった。【米田堅持】
父親からの問題提起
西牟田さんは、神戸学院大学を卒業してIT企業に就職したが、8カ月で辞めた後、フリーのライターとなった。北方領土や竹島などを自らの足で歩いたうえで「誰も国境を知らない」(朝日文庫)▽「僕の見た『大日本帝国』」(角川ソフィア文庫)など、ニュートラルな目線のルポを書き続けてきた。最近では多数の本を収集した人たちを訪ね歩いた「本で床は抜けるのか」(本の雑誌社)のように身近な話題を掘り下げたテーマでも出版している。これらのルポも、先入観を排して一歩引いた中立的な視点で現場で奮闘する当事者たちを描いてきた。
今回の「わが子に会えない」では、父親ばかり18人から聞き取ったエピソードがつづられており、母親サイドの話はない。これまでの西牟田さんの作品にはない、父親サイドのみで出版したことについて「母親から見た問題提起は数多くされていたが、父親から見た問題提起や体験が語られることはなかった」と執筆の動機を話す。自らも離婚を経験し「娘と面会するためにいろいろな苦労を重ねる中で、今まで見えてこなかった父親たちの言葉を形にしようと考えた」という。
父親たちのイタコとして
父親たちは、自らが同様の境遇に置かれているので取材を受けてくれたが、それぞれの事情もあり3人が出版前に掲載を拒否したという。掲載された18人の言葉は、子供や離婚の経験の有無にかかわらず、一気に読むのは難しいほど重い。西牟田さんは「2人分はキーボードで入力したが、全員をキーボードで書き上げることは、自らの経験とも重なって手が止まってしまい不可能だった。音声入力ソフトを使って入力し、父親たちの言葉を伝える『イタコ』に徹することで書き上げることができた」と執筆時の心境を述べた。
男女同権のはずが
取材を進めるうちに、父親たちの苦悩の背景には「硬直した既成概念が多くの苦悩と犠牲者を生んでいることに気づいた。男女同権と言いつつ、親権を例に挙げれば、個別の事情を精査せずに、(結論ありきで)母親とされるケースが圧倒的に多い」と西牟田さんは話す。
そうした個別事情が反映されにくい背景のひとつに、西牟田さんは現場の人手不足を挙げる。「裁判所も含めて現場は圧倒的に人が足りない。親権だけでなく、子供との面会交流についても余裕がなく、実質的な審理が行われないことも珍しくない。それが『親権は母親、面会は1カ月に1度で2時間』という相場を形成し、画一的な判断が積み上げられてきた」という。そして「『勝訴の方程式』が生まれたことで、親子の幸せを無視したビジネス優先の弁護士が暗躍する土壌ともなっている」と指摘する。
共同親権をめざして
父親たちの苦悩が表面化してきた大きな要因のひとつに、2001年の配偶者暴力防止法(DV防止法)の施行があるという。「危険な暴力から被害者や子供たちを守るべき法律が、家族を引き裂く副作用も起こしている。痴漢と同様に、DV(ドメスティックバイオレンス)といえば加害者は男性と決めつけられ、被害者が加害者になってしまうケースさえある」
さらに西牟田さんは「男性が実質的な傷害罪の被害者だった場合でもシェルター利用のハードルは高く、加害者だった女性がDVを申し立てれば、男性側の言い分は一切無視されるのは、男性差別と言わざるを得ない」と語気を強める。また「急に子供に会えなくなるのは、父親から見れば災害にあったか拉致されたようなもの」とも語る。
「日本では過去に家制度があり、別れたら母親は外へ出され、子供に会えない風潮があった。現在は逆になり、別れた子供に会うことを望む父親も増えている。子供は離婚しても多くは両親に会いたがるし、会わせるのが本来の姿だろう」と語る西牟田さんは、子供の気持ちを考えることが「子の福祉」を考える上で重要だと述べる。
また、親権については「もちろん、子供や母親に危害を与えるようなケースの対策は必要だ。米国などでは親権はどちらか片方が持つのではなく、共同親権で男女の別なく子供に関わり、離婚時に行政が介入して子供の養育などについてきちんと取り組んでいる。日本でも、思考停止して親権は母親と決めつけるのではなく、共同親権を実現した上で、共同養育計画をたてていくべきだ」と提言する。
今後については「母親サイドからも書いてほしいという声もある。男女が差別されず、離婚後も子供の幸せを一緒に考えられるようにすることに異論を挟む人はいないだろう。母親や子供の目線での取材も考えていきたい」と語った。
「100日面会」で注目の親権訴訟 背景には団体間の“代理戦争”
別居中の夫妻(ともに40代)が、妻と同居する長女(9)の親権を争った訴訟の控訴審判決が1月26日、東京高裁で言い渡された。一審は、夫を親権者と認め、妻から夫へ長女を引き渡すよう命じたが、高裁は親権者を妻とする逆転判決を言い渡した。
裁判関係者が打ち明ける。
「この訴訟は、一夫婦の争いを超え、夫妻をそれぞれ支援している団体間の“代理戦争”的な側面があるのです」
官僚の夫と元国連職員の妻は不仲になり、2010年、妻が夫の留守中に長女を連れて家を出た。最初の数カ月、夫は長女に会えたが、それ以降の面会は途絶えた。
その後、親権訴訟に発展。昨年3月、一審千葉家裁松戸支部は夫が「妻には長女と年100日会わせる」と約束したことを重視。「夫と長女の面会を月1回と望む妻より、夫に養育されるのが相当」とした。
「従来の親権訴訟は、現在の環境から子供を引き離すべきではないとする『継続性の原則』が重視され、同居中の親が有利でした。しかし一審判決は、相手側に寛容な親を有利とする欧米流の『寛容性の原則』を初適用し、注目されました」(司法担当記者)
この一審判決に、妻を支援する女性団体が反発した。
「『妻は夫から家庭内暴力を受けていた。弱い立場の女性を守らず、世間一般のDV夫を有利にする不当判決だ』とする書面を高裁に提出していました」(前出・裁判関係者)
26日の高裁判決は「現在の成育環境や長女の意思を総合的に考慮すべきだ」と指摘し、従来通りの判断を示した。ただ、夫のDVは一審に続き、認定しなかった。
「夫側は、妻に子供を連れ去られた男性らでつくる団体が支援しています。団体の主張は『子供を連れ去ってDVを捏造し、継続性の原則を悪用して親権を奪う手法が横行している』というもの。判決後、夫側は『高裁は卑劣な手法にお墨付きを与えた』と批判しました」(前出・司法担当記者)
子供との面会交流を求めた調停の件数はこの10年で2倍以上に増えているという。
「今国会では超党派議連が面会支援の法案提出を目指しています。一方で、DVや虐待への懸念から安易な面会支援は問題だと反対する声も根強いのです」(同前)
本訴訟は最高裁まで争われる見通しだという。
「週刊文春」編集部
親離婚後の親子関係を考えるシンポジウム 東京
夫婦が離婚したあとの子どもの支援について考えるシンポジウムが東京都内で開かれ、離婚や別居で離れて暮らす親子の「面会交流」をめぐり、子どもと別居する親と同居する親、それぞれの立場から当事者が意見を交わしました。
このシンポジウムは、離婚後の子どもの支援に取り組む研究者などのグループが主催したもので、およそ120人が参加し、離婚などで別れて暮らす親子の「面会交流」について当事者などが意見を交わしました。
この中で、子どもと別居している親の立場からは「親子断絶防止法全国連絡会」の寺前忠さんが「別居する親が養育に関われば、一人で子育てしている親にもゆとりが生じ、子どもの幸せにつながる」と双方の親が子育てに関わることの重要性を訴えました。
そのうえで、子どもに会いたくても会えないケースが少なくない現状について「一方の親が何も言わずに家を出て子どもとの面会まで断絶しようとする『連れ去り』を防ぐための新たなルールが必要だ」と主張しました。
これに対し、子どもと同居する親の立場からNPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」の赤石千衣子さんが「別れて暮らす親子の関係が平和に保てることは望ましいし、親を知りたいという子どもの気持ちの面でも重要だ」と述べて、面会交流の意義を認めつつも、「離婚した当初は仕事探しなどで気持ちに余裕がないことも多く、面会を求められても難しいのが実情だ。子どもが安心して別れた親とも関係を築いていけるような支援体制を充実させてほしい」と訴えました。
専門家「子どもの利益を最優先に」
家族法が専門で今回のシンポジウムを主催した早稲田大学法学学術院の棚村政行教授は「離婚も増え、家族は多様化しているが、総合的に子どもの養育を応援するという体制は十分整っていない」としたうえで、子どもの利益を最優先に考えた法整備などを検討するべきだと指摘します。
棚村教授は「どうしても大人どうしの意見の対立になりがちだが、子どもの幸せを第一に知恵もお金もパワーも集中させる議論が必要だ。面会交流だけでなく、養育費や子育て全般などさまざまな面から支援が必要な人が多い。家庭のことだから自分たちでやりなさいということではなく、国や自治体など関係する機関が積極的に関わり、当事者や子どもの支援をする枠組みを社会全体で考えていきたい」と話しています。
超党派の国会議員が法案の準備
面会交流をめぐっては、超党派の国会議員が、別れて暮らす親と子が定期的に会い親子関係を維持することを促す法案の準備を進めています。
現在検討されている法案では、夫婦が離婚する際には、別れて暮らす親と子どもの面会交流や養育費の分担について、あらかじめ書面での取り決めをすることや、面会交流を定期的に安定して行い、面会が行われていない場合は、早期に実現されるように努めること、国や自治体は、定期的な面会についての相談や支援を充実させることなどが、盛り込まれています。
一方で、子どもに対する虐待や元の配偶者に対する暴力などの事情がある場合には、面会交流をさせないことを含めて、実施の場所や頻度など特別な配慮をするとしているほか、定期的な面会交流については、年齢や成長の発達に応じて子どもが自分の意思を表明する機会を確保するとされています。
超党派の国会議員はこの法案を今の通常国会に提出することを目指しています。
親権、二審は同居の妻に 面会回数重視の判断覆す
別居中の40代の夫婦が長女(9)の親権を争った離婚訴訟の控訴審判決で、東京高裁(菊池洋一裁判長)は26日、夫を親権者とした一審判決を変更し、長女と暮らす妻に親権を認めた。子供との面会回数をより多く認めた方を親権者とした異例の司法判断を見直し、子供の生活の継続性を重視。同居する親に親権を認めることが多い従来の裁判例と同様の判断を示した。
昨年3月の一審・千葉家裁松戸支部判決は「年間100日程度の長女との面会を妻に認める」とした夫の提案を重視し、長女を夫に引き渡すよう妻に命じていた。
26日の高裁判決で、菊池裁判長は「夫婦ともに娘に深い愛情があり、養育環境にも決定的な差はない」と指摘。そのうえで▽長女は妻のもとで順調に育っている▽長女には妻と一緒に暮らす意向がある▽年間100日の面会は長女の負担になる――などの理由を挙げ、「長女の利益を最も優先すれば妻を親権者とするのが相当」と結論づけた。
「面会は親権者を決める唯一の判断基準ではない。子供の意思や父母との関係など、他の事情よりも重要性が高いとはいえない」とも指摘した。
一審判決によると、夫婦は2009年ごろに関係が悪化し、10年に妻が長女を連れて実家に戻った。別居は6年以上。夫と長女の面会は10年9月を最後に途絶えている。
夫は訴訟で、離婚した場合の面会についてまとめた「共同養育計画案」を示し、隔週末や祝日など年間100日程度の面会を妻に認めることを提案。一審判決は「長女が両親から愛情を受けて健全に成長するには、夫を親権者とするのが相当」とし、妻から夫に引き渡す異例の判断をした。
妻は夫に月1日程度の面会を認めると提案したうえで「長女は母親との暮らしを望んでいる」「年100日の面会は非現実的で長女の負担が大きい」などと主張していた。
一審の判断から一転、26日の東京高裁判決で親権を認められた妻は「とにかく安堵した。どちらが親権者にふさわしいのか的確に判断してもらい、高裁に感謝する」とコメントした。
記者会見した妻側代理人の斉藤秀樹弁護士は、夫の提案した年間100日程度の面会が子供のためになるのかを一審判決が考慮しなかったと指摘。「高裁判決は子供の立場に立った常識的な判断だった」と評価した。
夫も別に会見し、「パパが必ず迎えに行くという約束を果たせると思ったのに、娘に申し訳ない。娘と自分の人生をつぶされた」と憤った。代理人の上野晃弁護士は「子供を連れて出て行けば親権者になれるという従来の家事司法の運用に、高裁がお墨つきを与えた」と批判した。夫側は上告する方針。
「子供と両親の関係守れ」 超党派議連、立法の動き
今回の訴訟は、超党派の親子断絶防止議員連盟(会長・保岡興治衆院議員)が今国会に提出を予定している「親子断絶防止法案」とも密接に関わっている。
同法案は理念として「子供の最善の利益を実現するため、双方の親と子供の継続的な関係の維持を図る」と規定。
具体的には(1)離婚・別居する両親は、同居しない親と子供の面会交流の実施や、養育費の分担を書面で取り決める(2)国や自治体は取り決めをサポートする-などとしている。さらに児童虐待やDVがあった場合や、取り決め内容が子供の意思に反する場合は法の適用除外とされうることも盛り込んだ。
法案作成を中心的に担ってきた馳浩・前文部科学相(55)=写真=は「夫婦間での子供の一方的な連れ去りや奪い合いが後を絶たない。そうした事態を無くし、子供が双方の親から利益を受けられる社会を実現したい」と話した。
ただ同法案について、女性支援団体などから「本当にDVや子供の意思が考慮されるのか。DVをする夫が多い中、問題がある夫にも子供を面会交流させる根拠になりかねない」と懸念する声も上がっている。
別居中夫婦の親権訴訟、控訴審「寛容な親優先」適用されず
別居中の夫婦が子どもの親権を争った訴訟の控訴審で、東京高裁は子どもとの面会でより寛容な条件を提示した夫を親権者とした一審判決を変更し、子どもと一緒に暮らしている妻に親権を認める判決を言い渡しました。
一審判決によりますと、この夫婦は関係が悪化したために2010年に妻が長女を連れて別居となり、夫は7年近く長女(9)と会っていない状態が続いています。裁判では相手方に長女を会わせる回数が争点となり、妻側が「月1回程度」としたのに対し、夫側は「年100日の面会」を提案していました。
一審の千葉家裁松戸支部の判決では、相手方に対してより寛容な親が優先される「フレンドリーペアレントルール」と呼ばれる基準を適用し、「夫に親権がある」としましたが、26日の控訴審で、東京高裁は、「長女は妻のもとで安定した生活をし順調に成育している」「面会交流の意向だけで親権者を定める重要性は高いとは言えない」さらに、「長女も母親と暮らしたい意向を示している」として、一審判決を変更し「親権は妻にある」という判決を言い渡しました。
夫側は、判決を不服として直ちに上告するということです。
「私も娘との約束を果たすために、この6年、7年、頑張ってきましたけれど、娘に対して何も言えない状態」(夫)
一方、妻は、「娘に良い報告ができることを嬉しく思っています。夫にも穏やかな気持ちで娘に再会して欲しい」とコメントしています。
親権裁判、逆転敗訴の父「私が先に連れ去れば良かったのか」苦悩語る、母側は安堵の声
両親が子どもの親権をめぐって争っていた裁判で、東京高裁(菊池洋一裁判長)は1月26日、母親を親権者と判断した。一審の千葉家裁松戸支部は昨年3月、長女(当時8歳)と6年近くも会っていない父親に親権を認め、母側が控訴していた。
高裁は、親子がどれだけ多く会えるかという「寛容性」を重視した一審判決を退け、従来通り、同居している親に親権を認める「継続性」重視の判断を下した。
判決後、司法記者クラブで両者がそれぞれ会見。母親は代理人を通じ、「子どもにとって、どちらが親権者にふさわしいか的確に判断していただいた」とコメントした。対する父親は、「私が先に連れ去ったら良かったのか」と険しい表情で語り、最高裁に上告することを明かした。
●父側「両親の愛情を感じて育ってほしい」
一審では、母親が父側に月1回の面会しか認めなかったのに対し、母子が年間100日面会することなどを認めた父親の提案を評価。長女が「両親の愛情を受けて健全に成長することを可能とするため」に、父親に親権を認めた。判決は「フレンドリーペアレントルールを採用した判決」として、注目された。
しかし、今回の高裁判決では、両家の距離の遠さや長女の心身の負担などが考慮され、面会が多いことが「必ずしも長女の健全な生育にとって利益になるとは限らない」と、改めて継続性が重視された。
判決に対し、父側代理人の上野晃弁護士は、「子どもを連れ去って、そのまま生活しているから、というだけの結論だ。夫婦喧嘩が起きたら、仲直りするより、先手を打つようになってしまう」と語り、「連れ去り別居」の増加を懸念した。
父側が母親に対し、面会などで寛容な条件を提示したのは、「娘に両親の愛情を感じて育ってほしい」という思いからだという。
敗訴した父親は、上告する意思を明かし、「最高裁は迅速に審議してほしい。子どもの成長は1年1年がものすごく大切。娘は父親を知らないまま、どんどん大人になってしまう」と思いを語った。
長女は今年4月から小学4年生。最高裁の判断が出るまでは、1〜2年程度かかる見通しで、仮に父親が親権者になっても、長女はより「難しい年頃」になってしまう。最後に会ったのが2歳のころなのだから、なおさらだ。
それでも、父親は、「最初は怖がるかもしれないが、数カ月すれば、分かってくれると信じている。『子の意思』というと、美しい言葉で正しいように思うけれど、『学校行きたくない』という子の意思を尊重するのか。子の健全な成長を考えるのが親の責務」と話した。
●母側は「親の利益ではなく、子どもの利益に立った判決」と評価
一方、勝訴した母親側弁護団は、安堵の表情で記者会見に臨んだ。判決について、斉藤秀樹弁護士は、「親の権利とか利益ではなく、子どもの利益に立って、親権者や面会を考えるべきだという裁判所の判断が示された」と評価した。
また、母側代理人の萩原得誉弁護士は、父親側が主張する、「連れ去り」について、育児はほぼ母親が行なっていたことから、置いていけば「置き去り」になる、と母親の思いを代弁した。
母親は弁護士を通じて、「夫にも穏やかな気持ちで娘に再会してほしいと願っています」とコメント。条件が折り合わず実現しなかったが、もともと母側は父親に対し、複数回、面会交流を提案していた。
今後は、東京家裁で続いている面会交流審判の中で、父側と面会条件の協議を進めたい考え。父子が何年も会っていないことから、第三者機関の力を借りながら、徐々に父子の信頼関係を築いてもらいたいとしている。
ただし、父側は「これまで『甘い罠』に釣られて、引き離されてきた親が何人もいる」として、最高裁の決定が出るまで、長女と面会しない考えを示している。
「6年別居」の父、逆転敗訴 親権「寛容な親」重視せず 東京高裁
40代の夫妻が長女(9)=妻と同居中=の親権を争った訴訟の控訴審判決が26日、東京高裁であった。1審は父娘の面会を月1回程度と望む妻に対し、夫が妻に年100日の面会を約束したことを評価。同居中の親を有利としてきた従来の基準を適用せず、夫を親権者とし、長女を夫に引き渡すよう妻に命令したことから注目を集めたが、東京高裁の菊池洋一裁判長は「面会の約束は他の事情より重要度が高いとはいえない」とし、親権者を妻とする逆転判決を言い渡した。
1審千葉家裁松戸支部は昨年3月、「長女が両親の愛情を多く受けるためには多数の面会を約束した夫に養育されるべきだ」と判断。従来重視されてきた、現在の成育環境を維持するため同居中の親を優先する「継続性の原則」よりも、欧米的な「フレンドリーペアレントルール」(より相手に寛容な親を優先する基準)を重視し、初適用した事例とされていた。
2審で妻側は「引き渡しは長女の意思に反する上、慣れた環境から子供を引き離すべきではない。100日面会は子供に負担だ」と主張。夫側は「子供の意思は周囲に影響される。環境変化に子供は適応できる。100日面会は両親からより多くの愛情を受ける利益がある」と反論していた。
判決で、菊池裁判長は「面会の約束は考慮すべき事情の一つだが、面会だけで子供の健全成育や利益が確保されるわけではない」「長女は妻の下で安定した生活を送っている上、母親との生活を望んでいる」と指摘。「100日面会は移動の負担や、友達との関係にも支障が生じうる。妻側が望む月1回程度の面会でも子供の不利益にはならない」と判断した。
夫妻をめぐっては、平成22年に妻が夫に無断で子供を連れて家を出た。妻側の「夫にドメスティックバイオレンス(DV)があった」との主張については、1審同様、認定されなかった。
親権訴訟で逆転判決 妻側「適切」、夫側「連れ去り助長」
親権訴訟の控訴審で逆転判決が出たことを受け、妻側、夫側はそれぞれ東京都内で記者会見を開いた。
妻側の弁護団は「判決を聞いてほっとした。今後は夫もおだやかな気持ちで娘と再会してほしい」とする妻のコメントを朗読。続いて「既に築かれた学校や友達との関係を考慮した適切な判決だ。1審は面会を過剰に評価した異様な判決で、実務上も多くの混乱が出た。なぜああした判決が出たのか、司法は検証すべきだ」と指摘した。
一方、夫の代理人、上野晃弁護士は「子供を突然連れ去られ、会えずに苦しんでいる人が多い現実を無視し、従来基準に沿っただけの判決だ。この判決では、連れ去りをした方が有利になる。連れ去りを助長する不当な判決だ」と批判した。
判決が子供の意思に触れたことについても、上野弁護士は「判決も『今後もお母さんと暮らしたい』という長女の意思は妻に影響されたと推認される、と指摘した。フレンドリーペアレントルールは、両方の親から愛されたいという子供の意思を尊重したもの。子供にどちらかを選ばせるのは適切ではない」とした。夫は「長女に対して申し訳ない。何も言えない」などと話した。夫側は上告する方針を明らかにした。
別居中の親権、同居の母に 二審は「面会交流」重視せず
別居中の夫婦が長女(9)の親権と離婚をめぐって争っている訴訟で、東京高裁(菊池洋一裁判長)は26日、「母親が長女と年間100日間、子どもと面会できるようにする」と提案した父親の訴えを退け、母親を親権者とする判決を言い渡した。長女は母親と同居しており、「環境を変えることが長女の利益になるとは限らない」と述べた。
親権、別居の夫に 妻と子の面会「年100日」約束 千葉家裁支部
この裁判では、離れて暮らす親に定期的に子どもに会わせる「面会交流」の条件が争点になった。父親は「年100日、母親が子どもに会えるようにする」と提案し、母親は「父親が月1回程度会えるようにする」と主張した。昨年3月の一審・千葉家裁松戸支部判決は、離れて暮らすものの、面会交流に積極的な父親に親権を認めた。対立する母親に協力的な面会交流の案を示したことを理由に、親権者としてふさわしいと判断したのは異例で注目された。しかし、この日の高裁判決はこれを変更した。
判決によると、母親は2010年に長女を連れて実家に帰り、父親と別居。父親は数回は長女と面会できたが、その後に夫婦間の対立が深まって面会できなくなった。
高裁判決は、親権者を決める際の基準について、「これまでの養育状況や子の現状や意思を総合的に考慮すべきだ」と指摘。面会交流は「離婚後も円満な親子関係を形成する有効な手段だ」と認めつつ、「父母の面会交流の意向だけで親権者を決めるべきではなく、他の事情より重要だとも言えない」と述べた。
その上で、「年100日」とする父親の提案では「長女の体への負担のほか、学校や友達との交流にも支障が生じる」と指摘。「月1回程度」という母親の提案は「不十分ではない」とした。長女の現在の養育環境に問題はなく、引っ越しや転校をして環境を変える必要性もないことから、「長女の利益を最も優先して考えれば、母親を親権者とすべきだ」と結論づけた。(塩入彩)
親権訴訟 面会交流重視の1審を覆す判決 東京高裁
離婚する夫婦が子どもの親権などを争った裁判で2審の東京高等裁判所は、「子どもが育ってきた状況や現状などを総合的に考慮して決めるべきだ」として、子どもと同居している母親に親権があるとする判決を言い渡しました。1審は親子の面会の機会を多く設けることを提案した父親に親権を認めましたが、判断が覆されました。
この裁判は、7年前から別居している夫婦が、9歳の長女の親権などをめぐって争ったもので、子どもと離れて暮らす父親側は、「自分が親権を得たら母親と長女の面会交流の機会を年間100日は設ける」と提案しました。
1審の千葉家庭裁判所松戸支部は、この提案を評価して父親を親権者と定め、母親に対して、同居する長女を引き渡すよう命じる判決を言い渡し、母親側が控訴していました。
26日の2審の判決で、東京高等裁判所の菊池洋一裁判長は「子どもが育ってきた状況や現状などを総合的に考慮して親権を決めるべきで、面会交流は考慮すべき事情の1つだが、それだけで健全な成育や子どもの利益が確保されるわけではない」という判断を示しました。
そのうえで、「長女は母親のもとで安定した生活をしている。面会交流は円満な親子関係の維持のための有力な手段だが、100日の面会は子どもに負担になるおそれなどがある」として、1審判決を取り消し、母親を親権者と定めました。
1審判決は、これまでの裁判で考慮すべき要素の1つとされてきた面会交流の機会を重要な判断基準とする異例の判決として注目されましたが、2審で覆されました。
母親側「裁判所の的確な判断に感謝」
判決について母親は、弁護士を通じて「的確に判断してもらった裁判所に感謝します。娘のためにも夫婦間の争いは過去のこととして、新しい人生を歩みたいと思っています。夫にも穏やかな気持ちで娘に再会してもらいたいと願っています」というコメントを出しました。
また母親の弁護士は「親の主義主張ではなく子どもの利益を考えるという裁判所の基本的な考え方を示した判決だ。第三者の力を借りながら徐々に父親との面会を進めていき、いい関係を築いてほしい」と話しています。
父親側「早く娘を返して」
判決について父親は、「娘に対して『申し訳ない』のひと言です。最高裁判所に上告しますが、審理が長引けば、当時2歳だった娘が中学生になるかもしれない。最高裁には、迅速に審理してほしい。一刻も早く娘を私のもとに返してほしい」と述べました。
また、父親の弁護士は「東京高等裁判所は、今までの裁判と何ら変わらない判断をした。子どもを連れ去って監護している親のもとで育つのがいいという判断をしたということだ。裁判所は、モラルを放棄したと言われてもしかたがない」と話しています。
専門家「社会全体での支援が必要」
元裁判官で山梨学院大学法科大学院の秋武憲一教授は判決について、「子どもが育ってきた状況や生活環境、子ども本人の意思などを重視して親権を判断していて、これまでの裁判所の判断方法を踏襲したオーソドックスな判断だ」と話しています。
今回の裁判では子どもとの面会交流が争点の1つになりましたが、秋武教授は、「子どもが親の愛を感じて健康に成長するために面会は欠かせないもので、親の権利ではなく、子どもの権利としてとらえるべきだ」として、子どもの立場から面会交流の在り方を考えるべきだとしています。
そのうえで、「離婚が多くなり争いが増えると、全ての問題を親だけで解決するのは難しい。専門家が入った支援団体の整備など社会全体での支援が必要だ」と指摘しています。
裁判に至る経緯と双方の主張
裁判の当事者の夫婦は、7年前に別居し、長女の親権をめぐって争っています。
母親は長女を連れて家を出て、子どもを養育する権利「監護権」を求める審判で勝訴し、今も長女と暮らしていて、離婚後の親権も自分にあるとして今回の裁判を起こしました。
一方、父親は長女との面会を求め、最初の数か月間は会うことができましたが、それ以降は面会できず、裁判の中で親権を求めて争ってきました。
裁判で母親側は「別居する前に長女の世話をしていたのはほぼ自分1人で、家に置き去りにするわけにはいかなかった。長女を住み慣れた環境から引き離すのは利益に反する」と主張していました。
これに対して父親側は「子どものためには、両方の親と面会できるようにすることが大切で、長女を違法に連れ去って面会交流に応じない母親ではなく、自分が親権を持つべきだ」と主張していました。
「面会交流」調整は難航
少子化や男性の育児参加の広がりを背景に、離婚や別居をしても別れて暮らす子どもと「面会交流」を続けることを求めて裁判所に調停を起こす親は年々増えています。
離婚や別居などで別れて暮らす子どもと定期的に会う面会交流について、全国の家庭裁判所に申し立てられた調停は、おととし1万2000件余りで、10年前のおよそ2.4倍に上っています。
しかし、調停が成立した割合は58%にとどまっていて、夫婦間の感情のもつれから調整が難しいケースも多いことがうかがえます。
こうした中、面会交流の支援を行っている公益社団法人「FPIC」には、具体的なアドバイスや面会の付き添いなどを求める相談が相次いでいて、東京の相談室だけでも年間500件ほどの家族を支援しているということです。
FPICの山口美智子さんは「面会交流に対する意識が高まる中で、とりあえず合意をしたが、片方は約束を強要し、片方はいかに逃げようかと考え、結局、子どもを巻き込んだトラブルになるケースもある。長く断絶したあとの交流はとても難しいので、サポートを受けながら環境の変化に対応していくことが必要だ」と話しています。
「面会交流」の新たな法律に賛否両論
「面会交流」をめぐっては、両親の離婚後も子どもが別れて暮らす親と関わりを続けるために必要な支援を充実させようと、超党派の国会議員が新たな法律を作る準備を進めていますが、DV=ドメスティックバイオレンスや虐待などの懸念から慎重な対応を求める声もあります。
6年前の民法改正で、離婚をする場合は子どもとの面会交流について夫婦で協議することが法律に明記されました。
これを受けて、離婚届にも面会交流の取り決めをしているかチェックする欄が設けられましたが、法務省のまとめによりますと、取り決めをしているという件数は未成年の子どもがいて離婚する夫婦の60%にとどまっているということです。
こうした中、超党派の国会議員およそ70人でつくる「親子断絶防止議員連盟」では、別れて暮らす親と子が面会を続けられるよう支援を充実させる必要があるとして、離婚をする夫婦が面会交流について書面で取り決めをすることや、国や自治体が面会交流の実施に当たり相談や支援を行うことなどを促す、新たな法律を作る準備を進めていて、今の通常国会での法案の提出を目指しています。
これに対し、DVや虐待のおそれなどから、安易に面会交流をすすめることは問題だとして法整備に反対する声もあり、離婚後の親子の関わり方をめぐり議論が高まっています。
面会交流の課題学ぶ 子どもの権利シンポ
離婚件数が増加する社会情勢の中、離婚後の子どもとの面会交流の権利や難しさについて考えるシンポジウム「実りある面会交流~子どもの健やかな成長のために~」が21日、和歌山市小松原通の県民文化会館で開かれ、面会交流のトラブルなどについて専門の法律家らが解説した。
和歌山弁護士会が主催し、調停委員や弁護士、一般市民ら約80人が参加した。
講演した大阪弁護士会子どもの権利委員会所属の莚井(むしろい)順子弁護士は、面会交流が困難になるケースとして、子どもがさまざまな事情で、親権などを持っていない非監護親との面会を拒否する事例を紹介。「アクションを起こさなければ子どもの気持ちは変わらないので、『子どもが落ち着くまでしばらく様子を見よう』というのは避けるべき」と述べた一方で、「面会を強行すれば子どもの利益を損なう結果にならないか、という視点は常に意識してほしい」と呼び掛けた。
また、子どもの成長には、父親、母親との交流があることが重要とした上で、「子どもを相手側に会わせないようにすると、後々子どもに大きな傷を付けることになる」と述べ、離婚後も双方ができる限り歩み寄る必要性を訴えた。
その後のパネルディスカッションでは、和歌山弁護士会子どもの権利委員会委員長の沖本易子弁護士をコーディネーターに、莚井弁護士、面会交流を支援している公益社団法人家庭問題情報センター大阪ファミリー相談室の武政司郎さん、県子ども・女性・障害者相談センター子ども診療室児童精神科医の松岡円さんがパネリストとなり、意見交換。面会交流がスムーズにいかなかった場合の仲介サポートの紹介や、子どもへの精神的支援などについてそれぞれの立場から議論を深めた。
面会交流拒否で地裁が賠償命令 距離少しずつ埋めたい 息子への思い、原告男性が心境明かす /熊本
「パパと呼んでくれなくなった」。離婚後に別居した長男(12)との面会交流を求め、元妻と再婚相手に損害賠償を求めていた原告の40代男性はやりきれない胸の内を明かす。2015年10月、約3年5カ月ぶりに長男と公園で再会し、キャッチボールをした。会えなかった間に小学2年生から5年生に進級した。背は伸び、表情もりりしくなったけれど、かつて「パパ、パパ」と駆け寄ってきた息子はぎこちなかった。【柿崎誠】
熊本地裁は再婚相手と元妻に30万円、元妻に70万円の支払いを命じた。男性は12年12月、06年の離婚調停で決めた面会交流が行われないとして、再び調停を申し立てた。調停中、早く会える環境を作ろうと月2回ほどだった面会交流の回数を年3回まで譲歩。2度目の合意は14年1月になったが、元妻の再婚相手から来るはずの候補日の連絡は滞った。
男性は14年7月22日から15年7月6日まで計7回、熊本家裁に合意事項の履行勧告を申し立てたが、返信などはなく、「調停事項に強制力も罰則もないなら裁判に問うしかない」と訴訟を決断した。
男性も5歳の時、両親が離婚し、母に育てられて父とは疎遠だった。10年ぶりに再会し、「優しかった父と会えてうれしい」と感じた。男性は「息子に同じ思いをさせて本当に申し訳ない」と話す。
会えるようになって1年が過ぎてもまだパパとは呼ばれない。会えない時間が遠ざけた父子の距離は「少しずつ埋めていこう」と思う。長男は会えなかった理由を今は理解できないかもしれないけれど、長男に会う度こう伝えている。「パパはずっと会いたかったから、いろんな努力をしたんだよ」
元妻の再婚相手にも賠償命令 熊本地裁
熊本県内の40代男性が離婚後に別居した長男(12)と会えないのは元妻とその再婚相手が拒んでいるためとして、2人を相手取って慰謝料300万円の損害賠償を求めた訴訟で、熊本地裁(永田雄一裁判官)は、事前の調停で義務づけられた面会の日程調整に関する連絡義務を怠ったとして再婚相手に元妻と連帯して30万円を支払うよう命じた。元妻には70万円の支払いを命じた。離婚後に別居した子供との面会交流拒否を巡り、元配偶者の再婚相手の賠償責任を認めるのは異例。
判決は昨年12月27日付。判決によると、男性と元妻は2006年2月の離婚調停で、親権がない男性と長男の月2回程度の面会交流に合意して離婚。当初は面会できたが、元妻の再婚後の12年7月ごろ、男性に長男と会わないよう求める連絡が元妻側からあった。
男性は長男と面会交流できるよう熊本家裁に調停を申し立て、14年1月、再婚相手を連絡調整役として面会交流することで合意。しかし、元妻や再婚相手から連絡が滞り、日程を調整できないまま12年5月~15年10月の約3年5カ月間、男性は長男と面会できなかった。元妻は、自身の体調不良や再婚相手と長男との父子関係の確立のために面会できなかったと主張していた。
永田裁判官は「被告の主張は面会日程を調整する協議を拒否することを正当化するものではない。長男が7歳から10歳に成長する大切な時期に交流できなかった原告の精神的苦痛は相当大きい」と指摘。元妻は日程を協議する義務を怠り、再婚相手も連絡義務に違反したとして、いずれの賠償責任も認めた。
原告代理人の板井俊介弁護士は「再婚相手の賠償責任を認めた点で画期的だ。面会交流が父親と子供の双方にとって利益があることを示した判決としても評価できる」と話した。【柿崎誠】
連絡調整機関を
棚村政行・早稲田大教授(家族法) 離婚で別居した親子の面会交流で一方の再婚相手が連絡役となるケースが増え、再婚家庭の安定と面会交流の継続を両立させるために特別の配慮が必要になっている。欧米のように面会交流の連絡調整をしたり、交流が不調だった場合にカウンセリングしたりして当事者を支援する専門機関を育成するべきだ。
娘との面会拒否、1回100万円の支払い命令 東京家裁
別居している母親に長女を会わせる約束を父親が守らないとして、応じない場合は父親が1回あたり100万円を母親に支払うよう命じる決定を東京家裁(棚橋哲夫裁判官)が出したことが分かった。別居中の親子が定期的に会う「面会交流」では、守らない親に裁判所が金銭の支払いを命じる「間接強制」の多くが数万円から10万円程度と言われており、異例の高額だ。
決定は昨年10月4日付。父親は決定を不服として東京高裁に抗告した。
決定などによると、父親は2011年に家を出た後、長女を小学校から連れ帰って転校させた。長女と会えない状態が続いた母親の申し立てで、東京家裁が15年12月、月1回5時間の面会交流を認めたが、父親は応じなかったという。
母親の間接強制の申し立てに対し、父親は「面会すれば母親が長女を連れ去る危険性がある」などと主張したが、同家裁は「もはや任意での実施を期待できない」と判断。父親の収入が高額であることなどを考慮し、約束を守らない場合の強制金の額を「1回100万円」とした。この決定の後、母親と長女の面会が実現したという。
家事事件の経験があるベテラン裁判官は「強制金を払ってでも会わせたくない、という人はいる。収入と比較してある程度負担にならないと強制にならない」と話す。母親の代理人の棚瀬孝雄弁護士は「裁判所が子どものためを考え、毅然(きぜん)とした態度を示した決定だ」と評価した。
夫が長女連れ去り、妻の申し立て、東京家裁が決定
別居している長女との月1回の面会交流が裁判で認められたのに、長女と同居する夫が応じないとして妻が1回の拒否につき100万円を支払うよう求める間接強制を申し立て、東京家裁がこれを請求通り認める決定を出していたことが分かった。面会交流拒否に対するものとしては異例の高額で、妻側の代理人弁護士は「画期的な決定」と評価した。これに対し、夫側は「常識外れだ」として東京高裁に抗告している。
昨年10月4日付の家裁決定などによると、争っているのは離婚訴訟中の日本人の夫と外国籍の妻。夫は長女が7歳だった2011年に家を出た後、小学校から長女を連れ帰って転校させた。引っ越し先を妻に知らせておらず、妻が長女との面会を求めて家裁に審判を申し立てた。
夫側は妻が長女の転校先を探して押しかけたなどと指摘して「娘が外国に連れ去られる恐れがある」と面会を拒んだものの、家裁は15年12月、月1回5時間面会させるよう決め、東京高裁も支持して確定した。しかし、夫は1回目の面会に応じず、妻が間接強制を申し立てた。
間接強制の家裁決定で、棚橋哲夫裁判官は「夫は面会を認めない理由として既に退けられた主張を繰り返している。もはや任意で応じることは期待できず、間接強制で実現を図る必要がある」と判断。夫の収入なども参考に1回100万円とした。夫側はその後面会に応じ、妻と長女は5年ぶりに面会した。
最高裁が13年に面会交流拒否に対する間接強制を認めた後、同様の司法判断が広がったが、額は拒否1回につき5万~10万円程度が多く、金を払ってでも面会を拒む親もいるという。妻側代理人の棚瀬孝雄弁護士は今回の決定について「『子供のために親と会わせるべきだ』と決めたのに、無視されたことに対して裁判所が毅然(きぜん)とした態度を示した。面会が実現し、子供の福祉にかなう判断だ」と述べた。
ただ、専門家の間には金銭の力で面会を促す手法に懐疑的な声もある。夫側の代理人弁護士は「連れ去りへの恐怖から面会に応じられなかった。金額も常識外れで到底承服できない」としている。【伊藤直孝】
間接強制
民事執行法に基づく強制執行の一種。判決や家裁審判などの取り決めを守らない当事者に対して、裁判所が「従わなければ金銭の支払いを命じる」との決定を出すことで心理的な圧力をかけ、自発的な履行を促す。
離婚で会えない親子…面会を支援 熊谷のNPO、手厚い体制で笑顔へ
離婚などによって離ればなれになった親と子が定期的に会うことを支援している熊谷市のNPO法人「面会交流支援こどものおうち」(笠間和彦代表)は、設立から3年目を迎える。このような目的で活動するNPOは県内初という。
両親の離婚で心が傷ついた子どもたちの笑顔を取りもどすために、地道な活動を続けている。
こどものおうちのスタッフは現在19人。全員が家事調停委員とその経験者で、数多くの離婚調停を担当している。両親の離婚後、子どもたちは一緒に暮らす親の心情を敏感に感じ取り、離れてしまった親と会いたくても会えない気持ちを押し殺して生活をしている現状が多いという。
「自分が悪い子だから両親が別々になってしまったのでは」「(同居している)親に捨てられたらどうしよう」。子どもたちが、さまざまな不安を抱えていることを感じた。「子供たちの成長には、自分が愛されているという実感が必要」と、離れてしまった親子の面会交流を支援する活動を始めたという。
同NPO法人は2015年4月に設立。代表の笠間さんの自宅を開放し、面会交流には2人の支援員が付き添うなど手厚い体制を取っている。場所は市内の万平公園の目の前にある閑静な住宅街。室内にはおもちゃや絵本もあり、子どもの緊張を和らげる工夫もなされている。
他の支援団体では相談料が50分間で7千~1万円もかかるところもあるといい、シングルマザーなどには経済的な負担が重い。「こどものおうち」では、事前相談を1回1時間3千円と抑えるなど諸費用を極力抑え、継続して面会ができるように配慮している。
また、スタッフ同士で事例研究会を月に1回開き、さまざまなケースに応じた意見交換や対策、共有事項を確認している。こうした取り組みもあって、これまで東京や神奈川の支援団体に相談していた家族らが頼るようになったという例も多い。昨年10月には第10回よみうり子育て応援大賞を受賞している。
この活動は、来年度の熊谷市との協働事業「熊谷の力」に採択され、市民課窓口で離婚届を出した人に面会交流を促すことになった。面会交流自体を知らない人がほとんどだからだ。笠間さんは「別れて暮らす親に1人でも多くの子どもが会えるようにしたい」と話している。
問い合わせは、笠間さん(電話048・577・3467)へ。
子供たちとの再会を果たす為、日本の法律と戦う男性
「日本の司法制度は、子供たちを連れ去った妻を守っている」
社会
スフォルツァ・フランチェスカ(FRANCESCA SFORZA)
ローマ
「お父さん?どこにいるかも何をしているかも分からない。」これは、日本のたくさんの子供たちが大人になった時に言う言葉である。子供にとって、両親が離婚したら、父親はどこに行ったか全く分からなくなる。でも、捨てられたわけではない、これが日本の法律だ。だが、これから何か変わるかもしれない。その場合、その正義を守るために戦っているイタリア人の父親の影響は大きいだろう。この戦いに勝つ場合、日本の家事法制を大きく変える可能性がある。日本で、離婚後の共同親権は存在していない。夫婦が離婚をする際に、親が親権を争う場合には、親権は裁判で決定される。とても稀なケース以外、子供たちの親権は母親が持つことになる。さらに、親権は最初に子供たちを連れ去った親が獲得する。その結果、もう一人の親が子供に対する権利をその瞬間に失うことになる。面会は親ではなく、子供の権利である。一日の仕事の時間が長すぎる父親達の文化、また、母親達は義理の親戚との繋がりを持つことに興味はない文化の中で、この20年の間に3百万以上の子供たちは、片親と会えない状況で育てられた。
「まだ離婚していないけど、子供たちはどうなっているか、去年の7月から何も分からない、2歳になった娘にお誕生日おめでとうということも言えなかった」とピエルルイージさん(仮名)は言った。イタリア人の彼と日本人の妻と子供二人は、子供たちが生まれたドイツから東京に引越した。「ここに引越した理由は、昔から日本のことを知っており、大好きな国だったから。また、日本の教育制度はとてもいいと思い子供たちの為に引っ越したのです」。しかし、引越して生活も落ち着かないうちに、彼は、妻の親戚に取り囲まれ、夫婦間の問題を解決する為に離れて生活するべきだと伝えられた。「同意しないと警察を呼ぶ」と言われたため、彼はその後、妻が子供たちと実家の長崎に引越すことを決めた。「日本について色々なことを知っていたが、婚姻中に子供の連れ去りのことは聞いたことはなかった」とピエルルイージさんは言った。「私達はまだ結婚している、また、子供たちに対しての親権はまだ持っている、ですが妻が先に子供たちを連れ去ったため、私は引き取ろうとすると捕まるのです」。日本では連れ去りは合法なのに、連れ去られた子供たちを連れ戻そうとすると違法になる。警察も現場の児童相談所も助けてくれない。全員がこれを不正義だと同意しているにもかかわらず、両親と会えないことが刑法に違法なことでもなく、また虐待としても認められていない。
ピエルルイージさんにとって、子供たちと一緒にいれない現状は、耐えられないものである。「子供たちと非常に良い関係にある。一緒に住んでいた時に隣の人は『あなたはまるで子供たちの母親のようだ』としばしば言われていた。別居中に子供たちと会った後一人で帰るとき、4歳半の息子は裸足で家を出て、行かないでと泣き叫んでいた光景は頭に非常に鮮明に残っている。」弁護士と一緒に練った戦略は、子供たちに会えない外国人だけではなく、法律制度により虐げられていると感じている日本人の親たちから注目されている。日本の法律制度は、親権の争いは「プライベートな問題」だとみなしており、それが「国際的な子の奪取の民事上の側面に関するハーグ条約を日本政府が締結することを遅らせた(3年前に締結されたが、締結される前のケースには効力は及ばない。)さらに言えば、この法律制度は、子供たちは母親の所有物であるとの考えや、また、父親の役割は子育てに大切ではないという考えを増長した。ピエルルイージさんの義理の母は、彼に対し「イタリア語は要らない、ここは日本だから」と言ったり、「1・2年間会わなくてもいいんじゃない?私は夫いなくても3人を育てましたよ。」と言ったという。
日本国内で行われている一方の親による子供の連れ去りを止めさせる為、外国政府の多くが既に圧力を日本政府にかけている。また、何人かの日本の政治家は、事態を改善する為に協力する用意はできている。日本で裁判の審理を受ける前には、注意深く計画し、多くの点に気をつけなければならない。「民法766条の解釈を明記し、子供の利益に沿って動く必要がある」。知、勇、情が求められる。我々は、彼に対し、少しでも怒りがあるのか聞いてみたところ、彼は言った。「怒りは無意味です。もし、日本の裁判所に怒りの感情を有して入ったとしたら、裁判が始まる前に既に負けています。」
3百万 – 最後の20年間に両親一人と会えなくなった子供たちの予想数。
両親 – 不当な連れ去りの犠牲者は日本人と結婚している外国人だけではなく、日本人の両親自体も含まれる。
時事の流れ
ピエルルイージさん(仮名)と妻は子供二人が生まれたドイツから東京に引越すことを決意
引越後すぐ、妻の親戚がピエルルイージさんに、夫婦の問題解決の為、一定期間、別居すべきと勧告。妻は子供たちを連れて実家である長崎に引越す。その7月が、ピエルルイージさんが子供たちと会える最後の機会となった
ピエルルイージさんと妻はまだ結婚している。しかし、日本の法律によれば、もし彼が子供たちを引き取るように動くならば捕まるであろう。彼のケースは、日本で増えている子供の連れ去りの多くのケースの一つである
1月の中旬に家庭裁判所はピエルルイージさんの事件を精査する予定。子供を連れ去られた日本と外国の多くの親が彼の審理を大きな希望をもって待っている。彼の事件は、日本の家事法制を大きく変化させることができるかもしれない。断をぜひ仰いでもらいたい。
離婚後の子供の引渡し、ようやくルール明文化へ
離婚後に親が子供を引き渡すルールに付いて、法務省の法制審議会(法相の諮問機関)で議論が本格化する。これまでは強制執行するといったルールが明確にあったわけではない。親権の無い親が引き渡しに応じない場合は「間接強制金」の導入も視野に入れているという。2018年には民事執行法の改正案提出を目指すと報じられている。
子供が「動産」?
引き渡しルールはいわゆる「ハーグ条約」にならったものだが、仮に親権のない側の親が応じない場合は、その分だけ支払い金額が毎日加算される仕組みとなる。ただこれには、強制金さえ払えば引き渡しを無視しても良いと考える親もいるという問題がある。
民事執行法には子の引き渡しの強制執行に関する規定がなく、これまでは「動産」の引き渡し規定を類推適用してきた。
問題は子どもを「動産」として扱う事に対する福祉や人道上の倫理観に対する指摘だ。最高裁によれば2015年の申し立て件数は97件程だがその内で子供が引き渡された件数は実際には27件となっている。また民事執行法に具体的な規定がないため、執行官の運用に委ねられた格好になっているのも問題だ。
今回の議論の中心は執行に関するルールづくり
離婚後に親権者や監護者となった親が、子供の引き渡しを求める裁判を起こす事はできる。だが裁判で引き渡しを命じても親が応じない場合、執行官が強制執行を最終的に行う。これまでは強制執行の実効性が低かったため、今回の議論の中心はこの執行に関するルール作りが焦点だ。
養育費を支払う約束をしても、まじめに支払い続ける人の割合はかなり低いといわれている。特に母子家庭の貧困化を防ぐためにも、支払義務がある人の財産差し押さえを容易にすることは必要かもしれない。
養育権の放棄という考えはないアメリカやドイツ
海外ではどうなのだろうか。日本の離婚では父母が共同して親権を行使することはできないので、協議しいずれかが親権者と定める(民法819条1項)。または裁判上の離婚の場合には裁判所が父母の片方を親権者と定める(民法819条第2項)事になる。
まずアメリカでは離婚後の子供の親権は基本的に共同親権となる。考え方として離婚をしても親をやめるわけではないという考え方がベースにあるという。養育権の放棄というものはなく、どちらかが子供を育てながら、片方の親も養育費を払いながら育てる。仮に支払わない場合は、裁判によって相手親の銀行口座の差し押さえや給与から強制的に振り込み手続きがなされる。
それでも支払わない場合は最終的に犯罪者ということで逮捕され実刑判決が言い渡されることもあるそうだ。
ドイツの場合も離婚後は両親が親権を持つ共同親権が主流だという。母親が引き取った場合は、週末には父親が会いに来たり、一週間ごとに交互に子供の面倒をみたりといった感じだという。
日本のように一方にだけ単独親権を与える制度は世界では珍しいといわれている。子供をどちらが引き取るか決まったら終わりではない。夫婦それぞれに事情はあるだろうが、子供のすこやかな成長に少しでも資する、新しい制度を目指してほしい。(ZUU online 編集部)門家の判断をぜひ仰いでもらいたい。
離婚後の引き渡しルール明確化=民事執行法改正へ議論-法制審
離婚した夫婦間で子どもを引き渡すルールをめぐり、法制審議会(法相の諮問機関)の議論が来年、本格化する。親権を失った方の親が引き渡しに応じない場合、日数に応じて制裁金が加算される「間接強制金」の導入も視野に入れている。法務省は法制審の答申を経て、2018年の通常国会に民事執行法の改正案提出を目指す。
同法には、子の引き渡しの強制執行について明文規定がなく、「動産」の引き渡し規定を類推適用してきた。ただ、子どもを動産として扱うことには、福祉や人道上の観点から問題も指摘されている。最高裁によると、15年の申立件数97件のうち、実際に引き渡されたのは27件にとどまっている。
そこで論点に浮上しているのが間接強制金だ。国際結婚が破綻した夫婦間の子どもの扱いを定めたハーグ条約と、その国内手続きを規定したハーグ条約実施法にならったもので、同居する親が引き渡しに応じるまで、金銭の支払額が日ごとに加算される仕組みだ。同実施法ではまた、子と同居している親が一緒にいるときに限り、強制執行を認めている。
ただ、間接強制金を支払えば、子どもの引き渡しを免れると誤解する親もいるという。同居する親の目の前での引き渡しは、執行官とのもみあいになるトラブルも想定される。このため法制審は慎重に議論を進める方針だ。(2016/12/29-15:17)断をぜひ仰いでもらいたい。
持論時論/臨床心理士/石垣秀之/(44歳、宮城県亘理町)
父母の離婚や別居後も親子の交流が継続されることを目指す、通称「親子断絶防止法案」の国会提出に向け、超党派の国会議員連盟が準備を進めている。同法案は、児童の最善の利益実現のために、離婚後も両親が親としての責務を果たすよう面会交流と養育費の支払いを原則として求めている。
「児童の権利に関する条約」第9条3項は「締約国は、児童の最善の利益に反する場合を除くほか、父母の一方または双方から分離されている児童が定期的に父母のいずれとも人的な関係および直接の接触を維持する権利を尊重する」と定めている。日本以外の主要先進国はこれを受けて、離婚後も基本的に共同親権としている。
日本でも1994年に条約が発効しているが、それから20年以上たっても単独親権を継続。2010年には、国連児童の権利委員会から、前述の児童の権利を確実に守るよう勧告を受けている。
◇ ◆ ◇
先進諸国では、女性に対するドメステイックバイオレンス(DV)や児童虐待が議論される中でも、離婚後の面会交流が子の福祉につながるのかどうかについて、心理学や社会学の研究者たちが調査研究を行ってきた。それらが一様に認めるのは「離婚後であっても親子が継続的に面会交流をすることが子の福祉を向上させる」ということである。先進諸国はこれを受けて年間100日の面会交流を基準とするよう、そして共同親権制を取るよう法改正を進めてきた。
私は、DV被害によってトラウマ(心的外傷)症状を呈している女性への心理治療を行っている。DV被害の女性のためにも、親子断絶防止法は必要である。DV夫に家を追い出され、乳児の顔を1年以上見せてもらえないケースがあった。連れ去りであれ、追い出しであれ、愛する子に会えないことがどれほどつらいかは、誰でも容易に理解できるだろう。
親子断絶防止法は、子どもの福祉と権利を守るための原則法であり理念法である。子どもへの虐待を行う親への面会交流を義務付けるものではない。また離婚後に親としての義務を放棄する無責任な大人への社会的圧力にもなる。
日本の家庭裁判所は、諸外国の研究実績を顧みず、いまだに面会交流は月に1~2回、2時間程度という審判を下し続けている。家裁の裁判官は、児童の最善の利益を検討してはいない。親子断絶防止法は児童の利益を実現するための審判・決定を得るための規範となる。司法の怠慢を許さないためにも必要である。
◇ ◆ ◇
11月1日の本紙朝刊の社説は、法律よりも支援体制拡充が先決と主張している。だが私は、女性や障害者の権利と同様、条約批准と法成立によって理念が認知され、支援体制が整備されると考える。
学校は、離婚家庭の児童に対して、これまで何も支援できずにいた。医療・福祉においても、臨床心理士の場合も、離婚家庭の子どもを支援する体制は極めて不十分だ。組織的で強力な支援を開始するためにも、一日も早い法成立が望まれる。
(投稿)
離婚後の子どもとの面会交流で 崩れ始めた母親優先の原則
『週刊ダイヤモンド』12月24日号の第1特集は「知らなきゃ損する 夫婦の法律相談」。今、夫婦をめぐる法律が変わろうとしている。変化する社会にマッチさせようと、法案が提出されたり、改正されたりしているのだ。その一つ、離婚の際に問題になる親権や面会交流に関して見ていくことにする。
画期的な判決だった。今年3月、父母が長女(当時8歳)の親権をめぐって争った離婚訴訟で、千葉家庭裁判所松戸支部は、6年近くにわたって長女と別居する父親に親権を与える決定を下したのだ。
ポイントになったのは、長女との面会交流の計画だ。母親側は月1回を提案したのに対し、父親側は年間100日にして、隔週で金曜日の夜から日曜日の夜までといった、長時間の面会交流を認めるという提案をしたのだ。
判決では「これらの事実を総合すると、長女が両親の愛情を受けて健全に成長することを可能とするためには、被告(父親側)を親権者として指定することが相当である」と指摘。さらに同居する母親と長女を引き離すのは「子の福祉に反する」という母親側の主張は、100日という面会交流の計画を踏まえると、「杞憂にすぎない」とまで言い切っている。
親権をめぐっては、同居してきた親が引き続き監護する「継続性の原則」と「母性優先の原則」が、これまで裁判所の判断の軸になってきた。だが、この判決は「面会交流の内容」という、新たな判断軸を加えたのだ。
現在、東京高裁に舞台を移して係争中のため、司法としての判断が最終的に固まったわけではないが、こうした判決を受けて、親権をめぐる調停や訴訟は、今後増える可能性が出てきた。
国会では、子どもとの面会交流を促進するための法律「親子断絶防止法」を、議員立法として制定する動きもある。
前文部科学相で、親子断絶防止議員連盟事務局長を務める馳浩衆議院議員は、「すでに法案の大枠は固まっており、来年の通常国会への提出を目指して、条文の細かい修正作業をしている段階。いわゆる理念法で、条文上は面会交流が努力義務になっており、罰則もないため、強制力というものは一切ない。実効性が伴わないではないかという指摘もあるが、虐待や暴力を受けていた子どもはどうなるのか、という懸念もある。法案でも、そうした事情がある場合は、「特段の配慮」を求める内容にしている」と話す。
こうした流れは加速しており、かわいいわが子と顔を合わせることができなくなるのを恐れて、離婚を踏みとどまってきた親の背中を押す可能性も高い。
ただ、現実はそこまで甘くないようだ。
■面会で合意しても 会えない厳しい現実
谷山聡さん(仮名、38歳)は、長男(6歳)ともう3年以上会っていない。毎年10月の誕生日には玩具のプレゼントを贈っているが、元妻の側からは何の連絡もないという。
離婚したのは4年前。子どもの教育方針が百八十度違うことが原因だった。離婚の条件で折り合わず、調停までもつれたものの、月1回2時間、長男と面会することで合意したという。
ただ、その半年後、次回の面会交流の日時を決めようと思い電話すると、元妻から「子どもが会いたくないと言っている」と告げられた。子どもに電話を代わってくれと言っても「それも嫌だと言っている」の一点張りだった。
前回会ったときは、満面の笑みで楽しそうに公園で遊んでいただけに、元妻の言葉がにわかには信じられなかった。
3カ月たっても状況は変わらず、しびれを切らした谷山さんは、調停内容に基づいて裁判所に面会交流の履行勧告を申請。家裁の調査官による子どもへのヒアリングも実施してもらったが、「お子さんが強く拒否しています」とのことだった。
「どうやら近く再婚するようだ」。つい先日、元妻の友人からそうした話を聞き、面会交流を避ける理由が分かった気がした──。
実際に、子どもが母親の顔色をうかがって、本心とは裏腹に面会交流を拒否する例は多いとされる。ただ、弁護士や調停委員によると、それが本心かどうかを、赤の他人が突然ヒアリングをしたところで、見分けるのは至難の業だ。
そうした悲惨な事態を避けるために、大きな効力を持つのが「間接強制」だ。面会交流を実施しなかった場合に、相手方に金銭を支払わせる仕組みで、2013年に最高裁が1回につき5万円の間接強制を認める判断を示したことで、近年争うケースが増えている。
ここで注意したいのは、間接強制が有効なのは、面会の日時や頻度だけでなく、時間の長さや引き渡しの方法などを、具体的かつ詳細に決めてある場合だ。
これまでの判例から、少しでも曖昧な項目があると、間接強制が認められない傾向があるため、手続きに向けては、弁護士など専門家の判断をぜひ仰いでもらいたい。
「DV防止法」成立15年で急増した「冤罪DV」実態報告――西牟田靖(ノンフィクション作家)
「DV防止法」が成立して15年。DVは犯罪となり、日々、「社会悪」として糾弾されているのは周知の通りだ。が、その陰で、法を悪用して夫を「DV男」に仕立てる“でっちあげ”が急増中。ノンフィクション作家の西牟田靖氏が「冤罪DV」の実態をレポートする。
***
省庁勤務の妻を持つAさん(40代、自営業)。ある日、仕事に出ている最中、妻が1歳の息子を連れていなくなってしまった。
以前から兆候はあった。
夫婦仲は悪かった。Aさんから見れば、子どもが生まれても妻は育児放棄。そのくせ、職場の飲み会には、子どもを連れていきたいと言う。Aさんが抗議すると、妻は「もう家、出させてもらうわ」と逆ギレする始末。だからいつかそうなることは想定内だったのだが、唖然としたのは、
「離婚調停の場になって、突然、妻がDVを主張してきたのです。“尾骨が折れた”“10時間ほど怒鳴られた”などと。まったく身に覚えがないことです」
ただ、思い当たる節はあった。
「以前、妻がキレたとき、咄嗟に子どもを抱きました。妻が突っかかってきたので押し返して子どもを守りました。その一件の後、妻は“家事は私がやってるよね”“あなたから暴力を受けた”とか、ありもしないことを話しかけてくるようになりました。別れた後の争いに備えて録音していたんでしょう。虚偽の暴力を元に医者に診断書を書かせていたことも後でわかりました」
こうした“証拠”をもとに、妻は関係各所に出向いていた。
「家を出て行く直前から、警察や婦人相談所などにDVの相談に行っていたんです。私に対しての確認もなく、先方は妻の言うことを鵜呑みにしました。そして、相談に行ったという記録自体がDV被害の実績となっていきました。子どもの居所を知ろうと、役所へ行っても、DVを理由に住所の開示を拒まれる。3年経ちましたが、私は、今も息子に自由に会うことができないでいます」
タクシー運転手のBさん(50代)も、似たような経験をした。
「タクシー会社に転職し、一家3人で会社の寮で生活を始めました。しかし、妻はここでの生活に馴染めませんでした。古くて狭い寮に嫌気が差したのか、あるとき“リフレッシュのため2週間ほど実家に帰りたい”と妻が言ったのです」
Bさんは奥さんの希望どおり、2人を送り出した。ところがその後、一向に帰ってくる気配はなかった。
「そこで、私が月に1~2度、妻の実家を訪ねることにしたのですが、その度に帰宅を巡って妻と口論になるようになり、夫婦関係には完全にヒビが入ってしまった。“息子には会わせない”とも言われてしまいました。その後、離婚調停、そして訴訟を起こされ、“子の顔面を平手で殴打した”“痣が残る程の強さで腕をつかんできた”と主張されました」
50歳近くでできた子どもだけに、Bさんは子どもが愛おしくて仕方なかった。家庭も大事にしていたつもりだ。そんな自分が妻子に暴力を振るうことはあり得ない、と主張する。そして、実際、裁判所では前者は通常の躾(しつけ)の範囲内、後者は判決書ではスルー、と妻側の主張は斥(しりぞ)けられた。しかし、
「妻は、警察や婦人相談所にもDVの相談に行っていました。『DV夫』と決めつけられたため、年金の扶養家族からも妻と息子は外れ、事実上の離婚状態に陥りました。妻はともかく、4歳の子どもとは会いたくて仕方がありません。別れて暮らすようになってそろそろ3年になるというのに、これまで合計でも10時間ほどしか会えていません」
■「相談証明」で先手
今、全国でこうした「冤罪DV」と言われる事態が多発している。
共通する現象は、ある日、妻が子どもを連れて家を出て帰ってこないことだ。夫は子どもと面会もさせてもらえない。それでも引き離されたわが子に会おうとすると、突然、ありもしない「DV」を主張された……。
このようなDVのでっちあげが目立つようになったのは、『DV防止法』が成立、施行されてからのことだ。
「昔、法は家に入らないし干渉しないものでしたが、今は違います」
そう話すのは家事問題に詳しい、ベテランの森公任弁護士である。
DV防止法、正確には「配偶者暴力防止法」が2001年に成立、施行されると、「被害者」は、さまざまな「権利」を与えられることになった。
DV被害者は、まず婦人相談所や警察などで、DVについての「相談」を受け付けてもらえる。また、配偶者の暴力からとりあえず逃れるために、婦人相談所やシェルターなどで「一時保護」してもらうことも出来るようになった。
そして、それでも近寄ってこようとする加害者に対しては、「保護命令」を申し立てることが出来る。これを裁判所が認めれば、加害者に6カ月の接近禁止命令や2カ月の退去命令が発令されるというものだ。
これらと並行して、配偶者と離れて新しい生活を行うための「自立支援」についての情報提供もしてもらえるようになった。
DV被害の深刻さについては、今さら説明の必要はないだろう。被害者を助けるために、こうした手厚い保護体制が整備されたのだが、これがなぜ「冤罪」まで生んでいるのか? 先の森弁護士は、
「自分はDV被害者だと妻が思い込んでいるケースのほか、子どもを会わせなくしたり、離婚を有利に行ったりするために虚偽のDVを申し立てるケースがあります」
と解説する。
夫婦の関係が悪化しようと親子は親子。夫にも養育や面会の権利はある。しかし、その際、「夫はDV男」だと主張すれば、妻は夫と子の引き離しが容易に出来るということだ。
妻が子どもを連れて家を出る。そして、夫にDVを受けたと婦人相談所や警察に相談したとしよう。するとDV防止法に基づいて、根拠がいい加減であっても、余程滅茶苦茶なものでない限り、妻側の主張は夫側の反論を聞くこともなく認められ、警察による公正な捜査もないままに、婦人相談所などを通して「相談証明」という書類が作成される。
この問題に詳しい、ジャーナリストの宗像充氏は、
「相談の履歴によって住所非開示の支援措置が開始されます。被害者支援のことしか考えられていないので事実認定もないまま加害者とされた側は異議申し立ての手続きもなく放置され、夫婦関係や子どものことを話し合おうとしても、席に着くことさえできません」
と話す。
相談証明は、具体的な内容が書かれていない白紙の場合でも有効。市町村役場などの行政機関へ提出すれば、妻は、夫への住民票の閲覧制限の他、夫から独立した国民健康保険への加入などの支援措置を受けることができる。
このように妻に行政手続きで先手を打たれれば、子どもを取り戻すのは容易ではない。後に離婚調停や訴訟の場で妻側のDV被害の主張を斥けることができたとしても、別居後、子どもと暮らしてきたという妻側の実績が“評価”されるからだ。
さらには、離婚そのものについても、妻が夫のDVを主張すれば、慰謝料の交渉を有利に進められる。
かように、DVをでっちあげることは一石二鳥どころか、四鳥、五鳥にもなる「手」というわけなのだ。
■カフェオレを無断で飲むと…
こうした「でっちあげ」の最たるものと言えるのが、以下に紹介する事例である。
〈妻がスーパーで買ってきた総菜を「うまい」と言って食べた〉
〈妻に無断で、冷蔵庫のカフェオレを飲んでしまった〉
〈運転に集中するために、妻に話しかけられてもハンドルを握っている間は返答をしなかった〉
胸に手を当てれば、誰にでも思い当たりそうな出来事。一言謝れば済む話であるし、最後の例などはむしろ問題なのは妻の方だが、これらが大真面目にDVと主張されているのである。
これらは「親子の面会交流を実現する全国ネットワーク(親子ネット)」という団体が作成した、約30ページに及ぶレポートから抜粋したものだ。同団体は、配偶者と別居や離婚後、子どもと自由な面会がかなわなくなった当事者たちが結成。その会員にアンケートを取ると、先のような事例が出てきたのである。
レポートをめくれば、
〈帰宅して「ただいま」を言わずに、風呂に入り、酒を飲み、寝た〉
〈妻が洗濯物を床に置いたので怒った〉
〈車での送迎を頼まれたが、仕事中だったので断った〉
などなど、これがDVかと、首をひねらざるをえない例が山積みだが、
「離婚して子どもをとるというゴールに向かい、使えそうな事実を機械的に当てはめ事実関係を組み立てていく。その中でこうしたDVとはいえないものも利用される、というわけです」
先の宗像氏はそう話す。
成立当初、法律が定めていた「DV」は、殴る、蹴るといったいわゆる身体的暴力だった。ところが、法律は改正を重ねられ、04年には「精神的暴力」もDVに加えられた。これによって「大声でどなる」「何を言っても無視して口をきかない」「誰のおかげで生活できているんだなどと言う」といった、夫婦喧嘩のひとコマと区別のつかないような事例や、「見たくないのにポルノビデオやポルノ雑誌を見せる」「いやがっているのに性行為を強要する」など、夫婦の“秘め事”である夜の営みまでもが、何でもありで「DV」と訴えられる可能性が出てきたのだ。
内閣府のデータによれば、02年度に婦人相談所などに寄せられたDVの相談件数は、約3万6000件。それが13年度は、約10万件と3倍近くに跳ね上がっている。警察への相談件数に至っては、01年の約3600件に対し、13年は約5万件と、14倍近い増加ぶりだ。まさか、10年余りで世の男性が10倍以上暴力的になったわけではないだろう。夫に不満を持てば、何はともあれ、まず「DV相談」という傾向が強まっていることは、数字にも明らかなのである。
むろん、こうした「でっちあげ」は、素人だけの知恵では難しい。法手続きを知った弁護士も、虚偽と知りつつ、それを手助けしている現状がある。
新聞記者であるCさん(40代)のケース。
「妻が“こんな家にはいられません。離婚します”と言って1人で飛び出していきました。翌日、無理矢理2歳半の娘を連れ去ってしまいました。6年前の10月のことです」
Cさんの妻は「コーヒーカップを投げつけられたり、太ももを蹴飛ばされたりした」と離婚調停の場で主張した。そしてその調停が不調に終わると、今度は離婚訴訟を起こしてきた。裁判で妻側は、写真と診断書を証拠に出しDVを主張。しかしCさんは首をかしげた。診断書や証拠写真に不自然な点が多々見られたからだ。妻が診察を受けた病院はなぜか妻の弁護士事務所の近く。撮影場所を自宅だと主張するも背景に配管やタンクが写りこんでいて自宅でないことが明らかだった。それらを裁判で指摘すると、妻側の説明は二転三転した。
「その結果、妻の主張するDVが虚偽だということが裁判で確定したんです」
しかし、妻側の虚偽主張は続いた。
「判決後、妻の弁護士との直接交渉がこじれ、懲戒請求をかけたんです。その過程で先方から出てきた文書には、DV被害が10項目ほど挙げてありまして、『ペットをいじめる』というものもあった。うちは何も飼ってなかったので不審に思い、ネットで検索してみると、被害者支援サイトに一字一句そのままの文章がありました。コピペで作成したんでしょう」
弁護士にとっても、DVは美味しい商売のタネ。離婚交渉において、夫の非道を訴えるには最もわかりやすい手段だし、反証されにくく、裁判所にも受け入れられやすい。訴訟を勝利に導くための「伝家の宝刀」とも言えるのである。
■“お父さんは怖い人”
Dさん(自営業者・50代)夫妻のケースなどは、保護施設が妻の意思を無視して、DVをでっちあげてしまった例だ。
「不仲だった妻が、子ども3人を連れて出て行きました。相談人に次のように言われたそうです。“あなたは悪くない。だんなさんが悪い”“結婚指輪を質屋に入れたら生活保護を受けやすい”」
その後、妻は相談人に紹介された保護施設へ入所した。入ってみると携帯電話を預けさせられたり、この場所を口外しないよう誓約書を書かされたりした。職員は子どもらに「お父さんは怖い人」と繰り返し言ったり、妻には「別れた方がいい」と言ったりしたという。
「そのころから妻は“なんだかおかしい”と思うようになったそうです。夫から暴力を受けたと言ってもいないのに『DV被害者女性』と見なされ、扱われていることに気がついたからです。あるとき、保護命令申立書の下書きを書くように言われました。その際、“ご主人が優しかったことは書かず、嫌だったことを誇張して書いたほうが有利になる”という助言もあったそうです。また、施設が紹介してきた弁護士は“裁判をしたら勝てる”と強く離婚を勧めてきたそうです」
しかし奥さん自身、離婚もDV被害者として扱われることも望まず、その後、子どもとともに夫の元に帰った。流れに任せていれば、家族は望まぬ形で崩壊したままということになる。
いかがだろうか?
事例を見ればわかるように、こうした虚偽DVは、夫婦仲が悪くなれば、誰にでも起こりうる問題だ。
前出の森弁護士は言う。
「本当のDVと虚偽のDVが混在しているのが実情です。子と親の関係が切断されてしまうわけですから、周囲はじっくり審議した方がいい。しかし司法関係者の数に比べ案件が多すぎます。本物のDV被害者を救うためには緊急性が求められます。それ故、ある程度の虚偽DVがどうしても発生してしまうのです」
「犬も食わない」夫婦喧嘩に法の手が入って15年。今後も法の規制強化は続いていく見通しだ。世の男性にとっては、誠に生き辛い世の中になったものである。
子の引き渡し 連れ去りを生まぬよう
離婚した夫婦の間で子どもの奪い合いが起きたとき、引き渡しはどうあるべきか、ルール化に向けて国の法制審議会が議論を始めた。何より、子どもの苦しみを増やさない議論を尽くしてほしい。
離婚した夫婦が子どもの親権をめぐって争い、家裁が親権者や監護権者を確定した後も、親権者でない親が同居している子どもを引き渡さない場合がある。解決が進まないと親権者側が裁判所に「強制執行」を申し立て、裁判所の職員が子どもを引き取りにいくことになるが、現場で親ともめることが少なくない。昨年、裁判に勝って強制執行を申し立てられた九十七件のうち、子どもが引き渡されたのは二十七件のみだった。
執行の際には、同居する親の家で、親が一緒にいるときに行うなど、無理な引き離しにならないための一定の配慮がされてきたが、子の引き渡しに関する明確な規定がないため対応はまちまちだ。
法制審で検討される子どもの引き渡しイメージは(1)裁判決定に反して子の引き渡しに応じない場合は制裁金を科す(2)それでも応じない場合は裁判所が子どもを引き取りに行く-という二段構えだ。
こうしたルール化の背景にあるのは二〇一四年に日本が加盟した「ハーグ条約」だ。国際結婚で離婚した夫婦間の子どもの引き渡しを決めた規定で、関連法に沿って国内ルールの整備が求められていた。裁判で子どもの引き渡しが決まっても応じない場合にまずは制裁金を科し、それでも応じない場合に強制執行へと移すのは、ハーグ条約に準じた方法である。
条約の基本にあるのは、子どもの心身への悪影響を避けるために連れ去りを防ぎ、離婚後も夫婦が共に子どもの成長にかかわることへの配慮である。
日本はどうか。離婚した夫婦は共同で親権を持つことができないため、離婚前から子どもを連れて家を出て、親権争いに備えた既成事実化を図る例が少なくない。
子どもと暮らせない親が子どもとの面会を求めても親権者側が応じないケースも多い。家裁に面会交流を求める調停の申し立ては十年間で三倍に増え、一万件を超えた。
離婚後も双方が親権者となり、同居できない親も子どもとの交流を保てるなら、子どもの奪い合いはしないだろう。子どもの引き渡しという最終局面だけでなく、離婚時に面会交流を取り決めて強制力を持たせるなど、全体に目を向けるべきだ。
<子どもに会いたい 別居後の面会交流>(下) 親の愛情を確認する機会
「面会交流をしていると、子どもの表情は明るくなっていきます」。横浜市を拠点に、面会交流を支援する「びじっと」の代表理事、古市理奈さん(45)は、こう強調する。
四年間、父親と離れていた五歳女児は、面会交流をすることになった当初、「嫌い。うそつき」と父親を拒絶した。しかし、二回目の面会交流に付き添っていたびじっとのスタッフは、うれしそうに父親の腕を何度もなでる女の子を見守り、ほっとしたという。
子どもは、同居している親の影響で別居親に対して「ばか」「死ね」と汚い言葉を投げ付けることがある。また、久しぶりに会った親に戸惑う子もいる。しかし、しばらく交流を続けると関係は改善してくる。古市さんは「親が子どもを受け入れている姿勢を見せ続けることで子どもは落ち着いてくる」と話す。
ただ、面会交流の支援などをしている公益社団法人「家庭問題情報センター」(東京都豊島区)によると、小学校高学年くらいになり自分の意思がはっきりしてくると、親子関係の修復が難しくなるケースもあるという。子どもが幼いうちに別居して、顔を合わせないまま子どもがそのくらいの年齢に達すると、面会を嫌がる子どももいるため、一日も早く定期的に会えるようにすることが重要だ。
同センターの担当者は「別居すると、子どもは離れた方の親に見捨てられたような強い不安を感じる。そんなときでも、面会交流をすることで親の愛情を確認できて安心する」と言う。子どもが自分の親がどんな人なのかを知ることは、自分自身の存在を確認することにもつながる。
面会交流を求めて調停を起こす親は、増え続けている=グラフ。しかし、厚生労働省の二〇一一年度の調査によると、父親と子どもが別居していて、定期的に面会交流をしているのは27.7%、一方、していないのは50.8%だった。母親が別居している世帯では、面会交流しているのが37.4%、していないのが41.0%だった。
このため、法務省は離婚時に取り決めをしてもらおうと、面会交流や養育費について説明するパンフレットを作製。十月から地方自治体の窓口に離婚届を取りに来た人に配布している。また、超党派の国会議員が離婚後も子どもと親が継続的に会うことを促す法律の制定を目指す動きもある。
「夫婦が別れるのは仕方ないけれど、子どもにとっては関係ない。子どもに会い続けるのは親の責務」。古市さんは力を込める。
◆別居親の非難は禁句
家庭問題情報センターは冊子を発行し、子どもの成長の上で親が気をつけたいことを呼び掛けている。
同居している親が子どもの前で別居中の親を非難すると、子どもは自分も一緒に非難されているように感じる場合があるという。また、別居の親について悪いイメージを抱くと、その子どもである自身にも悪い像を重ねて、自信を失っていくことにもなりかねない。
日常会話で、別居している親についてほとんど触れない世帯もあるが、それが子どもが別居中の親に無関心ということではない。子どもながらに同居している方の親を気遣って「忘れた」と言ったり、話題にしないようにしたりしていることがあるという。
(寺本康弘)
<子どもに会いたい 別居後の面会交流>(中) 不安抑えて「娘のため」
「面会交流をしていると、子どもの表情は明るくなっていきます」。横浜市を拠点に、面会交流を支援する「びじっと」の代表理事、古市理奈さん(45)は、こう強調する。
四年間、父親と離れていた五歳女児は、面会交流をすることになった当初、「嫌い。うそつき」と父親を拒絶した。しかし、二回目の面会交流に付き添っていたびじっとのスタッフは、うれしそうに父親の腕を何度もなでる女の子を見守り、ほっとしたという。
子どもは、同居している親の影響で別居親に対して「ばか」「死ね」と汚い言葉を投げ付けることがある。また、久しぶりに会った親に戸惑う子もいる。しかし、しばらく交流を続けると関係は改善してくる。古市さんは「親が子どもを受け入れている姿勢を見せ続けることで子どもは落ち着いてくる」と話す。
ただ、面会交流の支援などをしている公益社団法人「家庭問題情報センター」(東京都豊島区)によると、小学校高学年くらいになり自分の意思がはっきりしてくると、親子関係の修復が難しくなるケースもあるという。子どもが幼いうちに別居して、顔を合わせないまま子どもがそのくらいの年齢に達すると、面会を嫌がる子どももいるため、一日も早く定期的に会えるようにすることが重要だ。
同センターの担当者は「別居すると、子どもは離れた方の親に見捨てられたような強い不安を感じる。そんなときでも、面会交流をすることで親の愛情を確認できて安心する」と言う。子どもが自分の親がどんな人なのかを知ることは、自分自身の存在を確認することにもつながる。
面会交流を求めて調停を起こす親は、増え続けている=グラフ。しかし、厚生労働省の二〇一一年度の調査によると、父親と子どもが別居していて、定期的に面会交流をしているのは27.7%、一方、していないのは50.8%だった。母親が別居している世帯では、面会交流しているのが37.4%、していないのが41.0%だった。
このため、法務省は離婚時に取り決めをしてもらおうと、面会交流や養育費について説明するパンフレットを作製。十月から地方自治体の窓口に離婚届を取りに来た人に配布している。また、超党派の国会議員が離婚後も子どもと親が継続的に会うことを促す法律の制定を目指す動きもある。
「夫婦が別れるのは仕方ないけれど、子どもにとっては関係ない。子どもに会い続けるのは親の責務」。古市さんは力を込める。
◆別居親の非難は禁句
家庭問題情報センターは冊子を発行し、子どもの成長の上で親が気をつけたいことを呼び掛けている。
同居している親が子どもの前で別居中の親を非難すると、子どもは自分も一緒に非難されているように感じる場合があるという。また、別居の親について悪いイメージを抱くと、その子どもである自身にも悪い像を重ねて、自信を失っていくことにもなりかねない。
日常会話で、別居している親についてほとんど触れない世帯もあるが、それが子どもが別居中の親に無関心ということではない。子どもながらに同居している方の親を気遣って「忘れた」と言ったり、話題にしないようにしたりしていることがあるという。
(寺本康弘)
【親子断絶防止法案】馳浩・議連事務局長「虐待やDV被害への配慮も盛り込んだ」
超党派の国会議員(約70名)が所属する「親子断絶防止議員連盟」が、法案提出を目指している「親子断絶防止法案」。法案では、未成年の子どもがいる夫婦が別居、離婚する際に、面会交流や養育費の分担に関する書面での取り決めを行うことや、面会交流の定期的な実施を促す。しかし、弁護士や研究者らからは、DV被害者への配慮が不足しているなどと危惧する声もあがる。超党派議連の事務局長である馳浩衆議院議員(自民党)に、前編(馳浩・議連事務局長「養育のあり方のルールは規定すべき」
https://www.bengo4.com/c_3/n_5438/)に続き、見解を聞いた。
●「離婚のベテランはいない」
--面会交流の重要性を周知していくための立法ということか?
一般論として、離婚のベテランはいない。私も一度、離婚しているが、誰しも離婚のベテランではない。それぞれに離婚の背景があるものだ。しかし、離婚は子どもたちに影響を与える。
離婚がともすると、いじめの要因になることもある。また、経済的な負担によって、スポーツもできず、塾にも行けない、土日もどこにも行けないこともある。勉強ができる子、スポーツができる子が、その機会が与えられない。これは教育の機会均等に反するのではないかとも考えられる。
本来、子どもがもっている能力、教育機会均等という理念を考えたら、経済的な負担によって、自分の進路を変更をせざるをえないようにしていく必要がある。離婚にともなって子どもに影響を及ぼす問題に、社会制度として取り組む必要があるのではないか。
婚姻制度はあるが、離婚した後の未成年の子供についての制度は、残念ながらない。離婚するのには様々な事情があるが、まず離婚後の子どもを守る、子どもの安心を考えるための立法だ。
--養育費のほうが重要ではないのか?
両方必要だ。
子どもにとってみれば、同じようなものだと考える。経済的な基盤が安定していること、そして、両親の存在があって自分が存在するというアイデンティティーの問題だ。しかしながら、離婚した方々にとっては、養育費と面会交流は(バーターになるなどの)交渉材料になることがあるので、次元が違う話として、とらえてください、ということだ。
ーー面会交流によって、アイデンティティーの危険は補えるのか?
思春期に自分の存在とは、なぜ生まれてきたのかを考えていく中で、自己肯定感が芽生えていく。自己肯定感は、自立していく上で欠かせないものだ。成長していく段階で、母性と父性を享受する関係性は、自己肯定感につながり、自立する上でのきわめて重要なファクターだ。
●養育費の未払い問題
--離婚後の問題として、養育費の未払いについては、法案ではふれるのか?
面会交流と養育費はともに重要との認識でおり、法案でも養育費の必要性にはふれる。しかし、養育費の支払いと面会交流についてはなるべくリンクさせないようにする。
--なぜリンクさせないのか?
交渉材料にして欲しくないからだ。「金を出してくれたら、会わせる」「会わせないから、金は払わない」となって欲しくない。
--養育費については子どもの最善の利益を考える上で、重要な要素であるはずだが、別に法案を作る考えなのか?
社会情勢をみながら、ということになる。養育費の差し押さえについては、すでに法制審議会での議論が始まっている。私自身も問題意識はもっているが、まずはそちら(編集部注:民事執行法の改正案)でやるべきだと考えている。
--DV加害者との面会交流について懸念する声がある
大前提として、父親、母親の合意のもとに行う。事務局長であるので、具体的なケースについては、明確には言えない。しかし、面会交流をさせないほうがいい事案もあるのだろう。
特別な配慮が必要な事案の場合には、調停を使うこともできる。もう1つは、家裁の調停員、家事審判をする練度、熟度をあげてもらうしかない。
--法案への批判については、承知しているのか?
いろいろなご意見を聞いてきた。
--現在、法案は修正されていると聞くが、具体的に最終案はどのようなものになるのか?
言える範囲でいえば、面会交流に関して、子どもの意見表明は「確保する」と明確にした。このほかに、面会交流をスムースに進めていくための「民間団体の協力」という文言も入れた。
また、9条にもうけた「特別な配慮」を必要とケースについては、児童虐待やDVに配慮して、と明確に入れた。ここに限らず、(法案の原案を)非常に、揉んだんですよ。きゅうりを塩もみするように。
(弁護士ドットコムニュース)
<子どもに会いたい 別居後の面会交流>(上) 突然の別れ 妻拒絶でかなわぬ望み
マンションのドアを開けると、室内は真っ暗。子どもの靴やぬいぐるみも見当たらない。「冷却期間を置かせてもらいます」。妻からの手紙がテーブルに置かれていた。一年半ほど前のことだ。
神奈川県内の会社員男性(46)は、妻と別居中。離婚はしていない。終電で帰宅することもよくあったし、投資に失敗してからは、言い争いも頻繁だった。四歳と二歳の息子が妻の元におり、自由には会えない。
子どもに会おうとしたが妻に拒まれ、昨年八月、家庭裁判所に調停を申し立てた。話し合いは平行線で審判に移行し、現在も続く。
調停に入る直前ごろから、子どもたちには三回会った。ただ、三回で計二時間だけ。いずれも相手の弁護士が目を光らせる中だった。初めてのときは、それでも感動で涙がこぼれた。しかし、面会が終わると、弁護士は厳しい口調でこう言った。「子どもが動揺した。どうしてくれるのか」。父親なのになぜ、他人にこんなことを言われなくてはいけないのか。自由に子どもに会いたい。その思いは増した。
もし、審判で子どもに会うことを認められても、実現するかは分からない。実際、調停や審判で面会交流が認められるケースは多いが、同居の親が決まったことを守らないこともある。裁判所に決定事項を守るよう履行勧告を申し立て、出されても勧告に強制力はない。それでも会わせない親に違約金のように金銭の支払いを命じる場合もあるが、応じない親もおり、審判で争っても必ず会えるとはいえないのが現状だ。
男性も、そんな不安が頭をよぎる。「家庭内暴力も浮気もしていないのに、なぜ子どもと自由に会えないのか」と嘆く。
◇
「今、会っても分からないかもしれない」。東京都内の会社員男性(46)はつぶやく。現在、小学校三年生の娘とは五年、会っていない。
五年前の離婚直後は元妻との合意もあり、週に一度、娘と会えた。しかし途中から元妻が会わせようとしなくなり、三年前に調停を申し立てた。しかし、相手の弁護士は「子どもが会いたいと言っていない。無理です」の一点張り。今は、面会を求めて争っている。
面会交流は二〇一一年の民法改正で、子どもの利益を最も優先して、会い方や時間などを決めるように規定された。このため同居している親が「子どもが嫌がっている」などと訴えることもある。
街にイルミネーションが輝き始めた十一月末、男性は娘へのクリスマスプレゼントを買った。キャラクター付きの鉛筆とノート。でも、手渡せる見込みはない。「自分の気持ちを安定させる意味もあると思います」
娘のために何かしたい。娘が幸せになる力になりたい。そんな父の思いが娘に伝わるよう願うばかりだ。
◇
離婚や別居によって子どもと離れて暮らすことになった親が、子どもに会うために調停や審判を申し立てる事例が増えている。夫婦としては破綻しても、子の成長を見守りたいとの思いは切実だ。ただ、会うのは簡単ではなく、関係が断絶してしまう親子もいる。別離しても、子どもに愛情を伝え続ける方策はないのか、三回にわたって考える。
(この連載は寺本康弘が担当します)
1 親子断絶防止法の議論の中で、「子ども意見を優先して決めるべきだ」という意見が出されることがあり、条文に明記しようという意見もあるようです。
私は、中学生以下の子どもの意見は取り上げてはならないという理由から、このような条文を盛り込むことには反対です。
そのような意見は、子どもに責任を押し付けるものであり、強い憤りを覚えます。子どもに負担をかけるべきではないと考えます。
2 子どもの意見を尊重するというと、ハーグ条約にも定められていますし、一見、子どもの人権を尊重するかのように見えるかもしれません。
しかし、面会交流について子どもに意見を聞くという場合は、子どもの自由な意思が表明されているとは言い難いのです。
そもそも、離婚だったり、別居だったりについて、子どもの意見は反映されたのでしょうか。親が、子どもの意見を無視して勝手に決めたのではないでしょうか。子どもが自由に意見を言えるのであれば、また家族みんなで暮らしたいと言える機会があるのでしょうか。「家族はバラバラだ。もう一方の親とは一緒に暮らすことができない。さあ、もう一方の親と会うかあわないか。意見を述べろ」といわれていること自体が、子どもがかわいそうだと私は思います。
子どもに対する虐待がある事案でも、子どもに意見を言わせるべきではないと考えています。親が、子どもの健全な成長を害するとして、大人として責任をもって実施の有無を決めるべきだと思います。
面会交流事件の実務経験からすると、子どもが真意を語らない場合、語っていない場合は、よくあることです。
調停などでも、子どもが「別居親に会いたくない」という手紙が提出されることがあります。確かに子どもの字で記載されているのですが、文面を見ると明らかに大人の事情が書かれていたり、言葉遣いが不自然に大人びていたり、不自然に幼児っぽくなっていたりします。また、その言葉は、子どもにはわからないはずだということも平気で記載されていたりします。親が書かせていることが多いわけです。
子どもに対して虐待があったと主張された事案で、こちらも緊張して面会交流を実施したところ、子どもが父親を呼びつけにして呼びかけ、「どうして今までいなかったんだ。どこでどうしてた。」と、父親の顔を見たとたん笑顔で走ってきたケースもありました。
これに対して、子どもが自発的に面会の拒否をしたとしても、真意で拒否しているわけではないことも多くあります。子どもが同居親に逆らえないのです。一つは、父親など別居親が自分の周囲から見えなくなったため、もう一人の母親もいなくなってしまうのではないかという不安があるようです。そのため、母親のいうことを過剰に聞いてしまうというようになります。
また、同居親が、悲しんでいたり、怒りを持っていれば、近くにいる自分の親ですから、その感情に共感してしまいます。自分が味方になるという気持ちがわいてくることは当たり前のことなのです。近くにいる親の感情に振り回され、自分が別居親との面会を拒否することによって別居親の感情を害するということまでなかなか気が回らないことが実情です。
ましてや、自分が別居親を懐かしがったり、心配したりして同居親からヒステリーを起こされたり、同居親が泣き出したりすれば、もう別居親のことを気にかけることはするまいと思うようになってしまいます。別居親の悪口を言ったり、別居親なんていらないという発言で同居親が喜べば、同居親を励まそうとして、そういうことを率先していってしまったりするものなのです。
別居親と会いたくないという言葉を真に受けないことも、大人の責任です。むしろ、別居親と会いたくないという言葉を発する子どもこそ、別居親との面会が必要な子どもだというべきなのです。
3 子どもが会いたくないという意見表明をしたことによって、面会交流が実施されないことは、子どもの心理に深刻な悪影響を生じさせます。
子どもは、別居親を独りぼっちにしたことに罪悪感を感じていることが多いです。それも自分の責任だと思うこともあります。ましてやただ会うことすら、自分の意見で実施されないということになれば、罪悪感や自責の念が高じてきてしまいます。これを軽減するために、子どもは自分自身の行為に言い訳をするわけです。それが、別居親はいかに悪い人間であり拒否は正当なんだと、自分に会えないのは別居親の自業自得だという言い訳です。自分が面会を拒否することによって被害者である同居親を守る義務があるという言い訳です。
そうすると、自分は被害者であり、絶対的な善である同居親の子どもだという意識が強くなります。しかしそれからしばらくして思春期頃になると、自分は加害者である絶対的悪である別居親の子どもでもあることに気が付きます。絶対的善の子と絶対的悪の子という意識は極めて有害です。通常は、両親の影響を乗り越えて、自分とは何かということを思春期後期に差し掛かるときに確立していきます。しかし、矛盾する親の子という意識は、自分というイメージがつくりにくくなり、自我の形成を困難にします。自分の異性関係にも暗い影を落とします。自己肯定感も低くなることは簡単に想像できるところです。
4 子どもが虐待されていた場合も、面会交流をした方が子どもの成長に有利に働くといわれています。もっとも、無条件に合わせることはマイナスになる危険があります。会わせ方の問題です。先ず、虐待親に対して、自分のどのような行為が子どもの心にどのような影響を与えるかを学習させます。その上で、禁止事項の打ち合わせを周到に行います。その内容を子どもに告げて、子どもの安心できる対応、距離だったり、同行者だったり、いろいろな条件を整えて子どもが安心してあえる環境を作ります。そうして、虐待親に謝罪をしてもらいます。子どもが過去の虐待を忘れることはありませんが、将来に向けて歩き出すことができるようになります。もちろん、同居親が、子どもが別居親と会うことを非難するだけでなく、態度で不愉快な様子を見せないことも子どもが安心して面会をするための有効な要素となります。
そもそも子どもは、自分がここで別居親と会わないことで、自分の健全な成長においてどのようなメリットがあり、どのようなデメリットがあるのか等ということを考える能力なんてあるわけがないのです。大人が責任をもって段取りをして会わせるということになります。即ち、どのように会わせるかという議論こそするべきです。それにもかかわらず、面会交流にあたって子どもの意見を尊重するということは、子どもに「自己責任」を負わせることにほかなりません。
5 「子どもが会いたくないと言っている。」という言葉は、面会交流調停において、必ずと言ってよいほど言われます。別居親と会わせない口実です。そういう主張がなされていても実際に面会すれば、子どもたちは、普段と同じように交流をしています。子ども意見は別居親の口実になっているということは、悪く言えば、別居親が自己の合わせたくないという感情を満足させるために、子どもという人格を利用していることになります。子どもはそれを知らされませんので、訂正する機会もありません。
子どもの意見を尊重するということが、いかに子どもに取って有害であるかお話してきました。面会交流だけは親が責任をもって実施するべきです。もっとも、現代の孤立した家族は無防備です。なかなか会わせる方法がなく、途方に暮れる親の姿も目に浮かびます。会わせろ、会わせないというよりも、どのようにして同居親の不安をなくして、安心して面会交流が実施されるかということこそ議論するべきです。
少なくとも、面会交流を定める法律で、条文をもって子どもの意見を聞くということ定めることがいかに愚かで残酷なことかお分かりいただけたと思います。それは面会交流を妨害するだけの効果しかありませんありません。誰が子どもの意見の真実性を判断するのでしょう。会わせない言い訳に使われるだけのことです。
面会交流の法案について意見を述べることには反対はしません。しかし、法案の議論をするのであれば、これまでの科学や実務を正確に反映してなされなければなりません。それらを無視して、感覚だけで法律が作られてしまうのではないかというとてつもない不安を覚えてなりません。
親子断絶防止法が話題になっています。
これは、離婚後に、子どもが
一緒に住んでいない方の親との交流を続けることで
子どもの健全な成長を確保していこうとする法律です。
ただ、法律といっても、
親に対して義務を定めたものではなく、
どちらかというと国や自治体の責務を明らかにした
基本法という意味あいの強い法律となっています。
http://nacwc.net/14-2016-10-10-06-05-20/8-2016-10-05-06-13-46.html
この法案が提出される背景として、
先ず、離婚時には、どちらか一方が親権者と定められ、
通常は親権者と子どもが同居するのですが、
子どもと別居する方の親が子どもと会えなくなってしまう
ということが社会問題化してきていることがあります。
司法統計を見ても、
面会交流調停を申し立てた件数が
平成12度では全国で2406件
平成27年には12264件に伸びている
というように、子どもに会えない親が激増しています。
いろいろな事情があるのですが、
高度成長期前の離婚は、
妻が夫の婚家から追放される形で行われることが多く、
子どもは「家」のものだという思想から
追い出した母親には会わせない
というむごい傾向がありました。
(今もなくなってはいません)
そのため、離婚が子どもとも
永劫の別れになるという意識が潜在的に定着していったようです。
高度成長期以降は
母親が子供を引き取ることが多く
面会交流の要求がぼつぼつ出てきたようです。
もともと江戸幕府末期や明治初期の外国人の
日本滞在記などでは
日本男性の子煩悩ぶりが多く記載されています。
(例えばモース「日本、その日その日」講談社学術文庫)
子どもを愛する気持ちは、最近のものではないようです。
子どもに会えないことによる親の心理は深刻です。
親として、人間として
人格を全否定されたような感覚を受けるようで、
それは、自分が存在することを許されないという
強烈なメッセージを受けたような感覚だそうです。
自死をする事例もかなり高いです。
これまでフェイスブックで連絡を取っていた人たちが
ある日突然書き込みがなくなるんです。
とても怖いことです。
今回の親子断絶防止法案の提出の
一つの問題の所在として、
わが子に会えない父親、母親の
魂の祈りがある。
法案提出に向けたエネルギーがあると言わざるを得ません。
しかし、最近は、法案推進側の人たちも学習を重ね、
主張の内容が変わってきています。
これには棚瀬一代先生、
青木聡先生等の
先生方のご尽力があります。
一言で言えば
「自分を子どもにあわせよ」
という主張から
「子どもを親にあわせろ」
という主張への転換です。
子どもにとって、
別居親からの愛情を感じることが
離婚後の子どもに陥りやすい
自己肯定感の低さ、自我機能の良好な発達
特にゆがんだ男女関係に陥りにくい
というような弊害を防止することに
役に立つということが
世界中の研究で明らかとなってきました。
優しい子どもさんほど
離婚に伴うマイナスの影響が出てしまうようです。
このような研究が明らかになり、裏付けられてきたのは
20世紀の末ころからで、
それほど日がたってはいません。
それまでは、子どもの利益、健全な成長
等と言う概念は離婚においてはあまりありませんでした。
最初にゴールドシュミット、アンナフロイト
等と言う学者が
面会交流については反対しないけれど
高葛藤の母親に面会交流を強いることは
葛藤を高めて、
結局子どもの利益に反するという主張がなされました。
これに対して、
離婚後の子どものマイナスの影響はあり、
それを放置するとマイナスの影響は成人後も続く
という研究がなされ、
葛藤を抱えながらも面会交流をすることによって
先ほどの負の影響が起きにくいという研究がされ、
統計学的にも実証されるようになっていきました。
最近では、離婚そのものの負の影響ではなく、
離婚後も、親どうしが憎しみ合うことが
子どもにとって悪い影響を与える
というように言われるようになっています。
これが、21世紀の20年弱の歩みなのです。
ようやく、このような研究、子どもの成長の視点が
国家政策に反映されるというのが親子断絶防止法だと
位置づけてよろしいと思っています。
それでは、問題点はどこにあるのかということですが、
同居している子どものお母さん方の一番の不安は、
離婚した元夫に会わなければならないのか
というところにあります。
暴力があるケースもないケースも
病的なまでに高葛藤となり、
元夫と同じ空気を吸いたくないとか
街で元夫と同じコートを着た男性を見ただけで
息が止まり、脈拍が異常に上がる
というまで生理的に嫌悪するということがあります。
ただ会いたくないのではなく、
生理的に受け付けなくなっているという状態だと思います。
その相手と、日時場所を決めて
受け渡しをしなくてはならない
ということであると、
どうしたってやる気が起きないというか
むしろ新たな不安に苦しむことになる
ということはよく理解できるところです。
実際、お母さん方と接していると
本当は会わせたくないけれど、
子どもをお父さんと併せることは仕方がない
という方が殆どです。
でも、できないのです。
それなのに、会わせる義務があるようなことを言われると
もう何も受け付けなくなるということはあるでしょう。
法案自体にはこのような義務を定めてはいないので
実際の問題はないのですが、
要綱とか概要には誤解を招く表現もあるかもしれません。
実際の面会交流を実現させるにあたっては、
お母さん(同居親の多くは母)が安心して
父親に子ども会わせる方法を構築してから
面会交流を実現させます。
禁止事項を決めて、
禁止が実現するための方法も決めて、
安全確実に子どもが戻される方法も決めて
誰かの協力を得て面会交流が実現します。
DVの訴えがあった事例などは
私も面会交流に立ち会うこともあります。
それだけ苦労する価値のある感動を受けることができるのも
面会交流です。
このような安心できる制度のサンプルを提示する
ということがこの法律実現の一番の近道ではないかと
考えています。
これはしかるべき専門家たちが
集団でサポートする必要があります。
まともにやれば費用は高額になります。
どうしても自治体の援助が必要だということになります。
もう一つの問題の所在は、
じつは、家族が崩れていくことに
国の関与があるのではないかという主張です。
このブログによくコメントをいただく方も
そのような主張をしています。
どこまで影響があるかということで
司法統計と内閣府の統計を調べた結果が下のグラフです。
面会審判申立件数はそのままの数字です。
同じグラフでわかるようにと、
面会交流調停の申立件数は10分の1として
配偶者暴力センターの相談件数を100分の1として
グラフ化しました。
そうしたら、面会交流調停と配偶者暴力相談センターの相談件数が
ぴったりとあうではないですか。
このグラフを作ってから、
少し、心は揺らいでいます。
平成22年頃からは、配偶者暴力相談センターだけでなく
民間のNPOなんかも相談に乗るようになったのではないか
という気もしています。
そして、これらが、親子関係の崩壊の
一因となっているのではないかと
そんな考えが否定できなくなっています。
親子関係崩壊ということも、
親子関係断絶防止法のワードの一つです。
この法案に積極的に反対している方は、
この法案ができてしまうことは
「家族や子どもをめぐる法律は、2000年代から、家族の多様性や個人を尊重し、家族内で暴力や虐待があった場合、個人を保護する方向で整備されてきた。配偶者暴力防止法や児童虐待防止法がそうだ。「父母と継続的な関係を持つことが子の最善の利益に資する」として、一方の親にだけ努力義務を課し、子の意見も聞かない法律ができれば、20年以上前に時計の針を戻すことになる。」
と述べています。
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12582308.html
これについては、反論もさせていただいています。
http://doihouritu.blog.so-net.ne.jp/2016-09-29-1
ここが、彼女らの主張や考えの根幹なようです。
「家族の多様性や個人の尊重」とは、
家族は、父親、母親、子どもという固定観念を捨てて、
父親のいない家庭を当たり前にしようということのような
そこまで過剰な主張をしていると考えることが
どうやら実態からみて合理的なようです。
これまでの20年は、例えば上のグラフのような
面会交流が激増するような事態を作るということだったようです。
暴力の有無にかかわらず
警察や行政は、母親の子どもを連れた別居を支援しているからです。
子供にとってどちらが幸せかという科学的な
調査研究の積み重ねは無視されています。
私が、彼女らの議論こそ20年前の議論に、
そうですゴールドシュミットやアンナフロイトの議論に
全く立ち返っていると言ったことはわかりやすいことだと思います。
20年たって、科学的には根拠がないとして葬られた学説が
現在親子断絶防止法の反対意見として
なぞられるように再言されています。
「多様な家族」を作る目標こそが
親子関係断絶防止法反対キャンペーンのモチベーション
のような感覚も受けています。
しかし、それは国民のコンセンサスでもなければ
国家等公的機関がやるべきことではありません。
親子断絶防止法は、
根本的には、
離婚後の家庭に対する働きかけだけではなく、
現実の家族に対する向かい風をどのように克服していくか
どのように男女が協力して
温かい家庭を作っていくかという
そして、国や自治体が押しつけがましくではなく、
支持的支援を求められたら応えられるような体制を作る
ということまで視野に入れることが肝要なのだと思います。
離婚というのは、結果です。
結果が出る前に早期に解決して
早期に家族の不安や軋轢を取り除く工夫こそが
国や自治体の政策として必要だと私は思います。
元家庭裁判所調停委員 中島信子(新潟県 73)
離婚後の「親子断絶」を防ぐ法案について論じた「あすを探る」(9月29日朝刊)を読みました。離婚で別居した親子の面会交流の推進に懸念が示されていますが、違った意見を述べます。
私は家庭裁判所の調停委員として28年間、多くの離婚調停を担当しました。現在は、離婚後の面会交流の支援機関に携わっています。そこで、面会交流の大切さをひしひしと感じています。
別居した親と会えずに育った人は、生涯にわたって消えない傷が残ります。人生で大きな問題にぶつかったとき、自分は何者なのか悩む人がいました。顔も知らぬ親の遺産の相続通知が来たとき、その親から愛情を受け取れなかったことへの怒りが噴き出す人も。父親に会わせてくれなかった母親を恨み、嫌悪感を募らせる人も数多く見ました。
困難を伴うからといって、面会を避けたままでいいとは思えません。離婚後の親子の断絶を防ぐために国は予算を使い、専門家を養成してほしい。元配偶者による暴力や子の連れ去りを恐れる人には、安心して面会ができる施設を整備してほしいと願います。
北九州市は10月3日から、離婚などで父親や母親と別居して暮らす中学生までの子どもを対象に、親との面会を無料で橋渡しする事業を始める。父母が相互に不信感を持つなどして面会が困難な場合もあり、NPO法人と協力し、中立的な立場から連絡調整や付き添いを行い、愛情を子に伝える手助けをする。こうした事業は20政令市で初という。
市が2011年に行った調査では、市内の母子・父子家庭は計約1万8千世帯で5年前から約400世帯増え、母子家庭の6割超は「養育費を受けたことがない」と回答した。11年の法務省の調査では、養育費が支払われている家庭は8割以上が面会交流をしている一方、支払われていない家庭は6割にとどまった。
29日に会見した北橋健治市長は「面会交流は養育費の実現につながる有効な施策と思われる。精神、経済両面で健やかな育ちにつながる」と述べた。
市内では家庭裁判所調停委員らでつくるNPO法人「北九州おやこふれあい支援センター」が13年度から同様の事業を有料で開始。1回の面会に4千~8千円かかるため断念する人もいることから、今回は同法人などに事業委託し、市が費用負担する仕組みとした。
申し込みは父母どちらでも可能だが、双方の合意が前提。面会時は同法人のスタッフが子どもの受け渡しや付き添いを担う。子どもが市内に住み、児童扶養手当の受給者などが対象。支援は月1回、最長1年。本年度は約10組の橋渡しを想定している。
超党派の国会議員による議員連盟が、離婚後の「親子断絶」を防ぐ法案を準備し、開会中の臨時国会で提出を目指すという。「家族のあり方」を決める重要な法案であるのに、多くの問題を抱えている。
法案は、父母の離婚や別居後も「子が両親と継続的な関係を持つこと」が「子の最善の利益に資する」とする。離婚する父母ログイン前の続きは、離婚後も子と会う「面会交流」や、養育費の分担について書面で取り決めることを努力義務とする。国や地方自治体の面会交流支援や子の連れ去り防止などの啓発も盛り込んだ。児童虐待や配偶者への暴力がある場合の「特別の配慮」も求めている。
そもそも、なぜこうした法案が出てきたのだろうか。
家制度のあった戦前の流れで、戦後も離婚すると婚家に子を残して家を出ざるを得ない母親が多かった。次第に子を引き取る母親が増え、現在は約8割の母親が子を引き取る。
最近、離れた子とかかわりをもちたいという父親が増えている。家庭裁判所に面会交流をめぐって申し立てられた調停の件数は10年前の2倍以上になった。2011年の民法改正で、協議離婚の際に、面会交流と養育費について子の利益を最優先に協議で定めると明記された。家裁は調停などで原則面会交流を実施させるようになった。
離婚後も親子関係を維持することはよいように思える。ただ、現実には困難な場合が多い。母親が父親から暴力を振るわれたり、子が虐待を受けたりする家庭は少なくない。しかし、家裁の調停で、DVや虐待があっても面会が行われる例は多い。
法案は、児童虐待などに「特別の配慮」を求めているが、具体的な配慮の内容は保障されていない。
子と同居する親に、定期的な面会交流を維持するよう求めているが、親子関係は、一方の親の努力だけでは維持できない。別れた親にも「高額の贈り物をしない」など面会時の約束を守らせる規定も必要だろう。
子を連れて別居することを「連れ去り」と考え、防止を啓発するというのも現実的ではない。子の世話を主にする親が連れて家を出るのも「連れ去り」と称して防止すれば、世話が必要な子を置いて別居せざるを得なくなる。
法案は、別居する親との交流も子の権利とする「子どもの権利条約」を根拠としているという。しかし、条約が保障する、子どもが「自由に自己の意見を表明する権利」には触れていない。子が「会いたくない」と思ってもその意見は聞かず、別居する親が面会を望めば従わせられるようにも読める。
また、ひとり親家庭の貧困率は12年時点で54・6%(13年国民生活基礎調査)にもなる。生活の安定も「子の最善の利益」のために不可欠であるから、養育費不払い時の対応についても、法案で言及されるべきだろう。
親同士の対立が激しい場合、面会のための話し合いが成立しないこともある。「家庭問題情報センター」(東京都豊島区)など、相談を受けたり、面会時に付き添ってくれたりする支援機関があるが、全国に数カ所しかない。費用も1回の利用で数万円かかることもある。まずは、支援の拡充整備が必要だ。
そして、この法案は「家族のあり方」を問うものでもある。
家族や子どもをめぐる法律は、2000年代から、家族の多様性や個人を尊重し、家族内で暴力や虐待があった場合、個人を保護する方向で整備されてきた。配偶者暴力防止法や児童虐待防止法がそうだ。「父母と継続的な関係を持つことが子の最善の利益に資する」として、一方の親にだけ努力義務を課し、子の意見も聞かない法律ができれば、20年以上前に時計の針を戻すことになる。
子の最善の利益とは何か。家族とはどういうものか。幅広く、慎重な議論が行われるべきだろう。
(あかいし・ちえこ 1955年生まれ。NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事長)
当該記事への反論、反対意見が専門家である弁護士や元家裁調停委員からブログや朝日新聞に寄せられていまので、是非ご覧ください。
平成28年10月6日 朝日新聞 『(声)離婚後の親子の面会交流は大切』
2016年09月29日 土井法律事務所(宮城県)ブログ 『【緊急】9月29日付朝日新聞赤石千衣子氏の親子断絶防止法案に対しての懸念に意見する』
平成28年9月29日付朝日新聞に赤石千衣子氏の(あすを探る 家族・生活)「親子断絶」防ぐ法案に懸念 という主張が掲載された。
私にはそのような依頼はないので、負け犬の遠吠えみたいなものだが、朝日新聞ということで、影響力もあることもあり、雀の涙程度の力でも、出さなければならないと思い、また、ちょっと仕事の関係もあり、緊急意見を出してみようと思った。
まず、「離婚後も親子関係の維持が現実には困難な場合が多い」ということはその通りかもしれない。しかしその理由が、「母親が父親から暴力を振るわれたり、子が虐待を受けたりする家庭は少なくない。」ということは一面化しすぎだろうと思う。
面会交流が進まない理由は、離婚後も元夫と元妻の間で葛藤が強い状態が維持されていることである。
DVや虐待がある場合はもちろん、ない場合もあると思いこむのは、感情が強く残っているからだ。
実は離婚以上に、この葛藤の持続が離婚後の子どもにとって悪影響があるということが近年主流の学説である。
とても疑問なのは、「家裁の調停で、DVや虐待があっても面会が行われる例は多い」と述べているが、先ず、事実関係に誤りがあるだろう。これは面会阻害事由になっている。
おそらく、DVや虐待の存在を主張しているにもかかわらず、裁判所において認められないというケースだと思われる。
また、男女参画室等が虐待の子どもに対する影響の教科書にも虐待があっても、面会交流をする方が子どもにとって好転するケースが多いと記されている。問題は面会の仕方なのである。この点、裁判所は、虐待が疑われる場合は機械的に面会をさせないという態度であるという実感こそ持っている。
赤石氏は「法案は、児童虐待などに「特別の配慮」を求めているが、具体的な配慮の内容は保障されていない。というが、これは当たり前だろう。
特別の配慮の内容は具体化することが望ましいが、ケースや性格によって全く異なる。敢えて言えば、面会交流支援の専門家を配置する等、制度的な問題であろう。法案に個別ケースに対応するような内容を規定するということはない。
赤石氏が「子と同居する親に、定期的な面会交流を維持するよう求めているが、親子関係は、一方の親の努力だけでは維持できない。別れた親にも「高額の贈り物をしない」など面会時の約束を守らせる規定も必要だろう。」と述べている。
一方の親の努力だけでは維持できないということは正に大賛成である。良い悪いにかかわらず、双方が高葛藤になった原因は双方にある。どちらが良いか悪いか等と言う無意味な詮索をやめて双方が安心できる面会交流のために努力するべきである。
そのためには、客観的に、かつ支援的に父親と母親の関係性を見ることができる第三者がきちんと支援するという制度が必要である。
私は家事調整センターという制度を提案している。
家事調整センター企画書
http://www001.upp.so-net.ne.jp/taijinkankei/kajityousei.html
赤石氏の主張で、子を連れて別居することを「連れ去り」と考え、防止を啓発するというのも現実的ではない。子の世話を主にする親が連れて家を出るのも「連れ去り」と称して防止すれば、世話が必要な子を置いて別居せざるを得なくなる。とある。ネーミングの問題で、双方の葛藤を高めない工夫は必要だろう。
しかし、どうも気になるのは、初めに別居ありき、後にも別居しか選択肢がないということは通常の夫婦ではありえない。紙数の関係かもしれないが、どうもそのような論調のような気がして心配だ。
問題が大きくなる前に適切な支援をする制度こそが必要だと思われる。今は、家族を壊す方向にだけ国家が助力している。修復する方向にこそ、国家は助力するべきだ。
また、大いに反対したいのが、「法案は、別居する親との交流も子の権利とする『子どもの権利条約』を根拠としているという。しかし、条約が保障する、子どもが『自由に自己の意見を表明する権利』には触れていない。子が『会いたくない』と思ってもその意見は聞かず、別居する親が面会を望めば従わせられるようにも読める。」とある箇所である。
子どもの年齢にもよるが、基本的に、子どもに親を選ばせたり、子どもに親を否定評価させるようなそんな犯罪的な制度を作るべきではない。この点だけは根本的に考え直すべきだ。
子どもを利用して離婚を有利にすることによって、子どもが精神的に立ち行かなくなる事態をたくさん見ている。子どもが同居親の感情を自分の感情として混乱し、自我の確立が困難になるからだ。
例えば
「両親が別居してしまった後で、子どもが同居親をかばい壊れていく現象とその理由」
http://doihouritu.blog.so-net.ne.jp/2015-06-10
自分の親の一方を悪と決めつけ絶対否定すれば後に傷つくのは子どもである。
養育費について言及しろという主張もあるが、強制執行の方法については既に法定化されている。むしろ、支払うモチベーションを高めることが親子断絶防止法案の趣旨にかなうだろう。
親同士の対立が激しい場合、面会のための話し合いが成立しないこともある。「家庭問題情報センター」(東京都豊島区)など、相談を受けたり、面会時に付き添ってくれたりする支援機関があるが、全国に数カ所しかない。費用も1回の利用で数万円かかることもある。まずは、支援の拡充整備が必要だ。この点は、大賛成だ。先ほどの家事調整センターは、本来税金で安定的に運営されるべきだ。いろいろな善意が活動を始めている。あとは、東京オリンピックに比べれば、雀の涙の予算をけちるかどうかだけの話だ。
最後の二赤石氏は、
そして、この法案は「家族のあり方」を問うものでもある。
家族や子どもをめぐる法律は、2000年代から、家族の多様性や個人を尊重し、家族内で暴力や虐待があった場合、個人を保護する方向で整備されてきた。配偶者暴力防止法や児童虐待防止法がそうだ。「父母と継続的な関係を持つことが子の最善の利益に資する」として、一方の親にだけ努力義務を課し、子の意見も聞かない法律ができれば、20年以上前に時計の針を戻すことになる。と述べる。
赤石氏の主張は結局どういう家族の在り方を理想とするのか不明である。家族の解体、些細なことでも離婚を勧め、相手をののしり続けることを子どもに強いるという、今の主流の在り方が家族の在り方として肯定されてよいとは思えない。子どもの健全な成長を阻害するとしか思えない。
また、どうして20年以上前に戻るのか。不明である。総じて、離婚の子どもに与える影響とその回避のために、心ある研究者たちが実証的研究や統計的調査を行ってきているが、これらの科学の成果が、赤石氏の主張にはまるで踏まえられていない。赤石氏の主張こそが、20年前の議論そのものである。
「子の最善の利益とは何か。家族とはどういうものか。幅広く、慎重な議論が行われるべきだろう。」大賛成だ。ぜひ一方通行の意見表明ではなく、幅広い意見交流を実現させていただきたい。
養育費の書面化、新法案まとまる
離婚後の親子の面会交流や養育費支払いの約束が守られるように、超党派の議員連盟(会長・保岡興治元法相)は25日、書面で実効性を持たせる新法案をまとめた。市区町村への書面提出を努力義務とすることも検討したが、自治体の反発があって見送った。
法案では、未成年の子どもがいる夫婦が離婚する場合、面会や養育ログイン前の続き費に関して書面を交わすことに「努めなければならない」と記した。子どもの貧困対策などが念頭にあり、各党内で了承が得られれば、秋の臨時国会に提出する。
書面の提出には全国市長会や全国町村会が「合意内容を正確に反映したものかどうかの確認が難しい」などと反対。離婚届の注釈に書面化を促す記述を加えることや、書面のひな型や記入例を作成して離婚届を取りに来た人に配布することを政府が検討することになった。
超党派の親子断絶防止議員連盟(保岡興治会長)の総会が25日、国会内で開かれた。同議連が制定を目指す親子断絶防止法について、5月に明らかにした要綱案を、その後の議論を踏まえて修正した条文案を示した。条文案の扱いは保岡会長に一任することに決めた。
以降は紙面を参照ください。
離婚訴訟に「共同養育計画」 内容認める判決も 配偶者に譲歩■子が両親に会いやすく
離婚・親権を巡る調停や訴訟の場で、当事者が、相手方と子供との多数回の面会などを約束する「共同養育計画書」を自ら提案する試みが注目されている。相手に大幅に譲歩することで、子供が父母の双方と関わりやすくする狙いがあり、計画書の内容を認める判決も出ている。
<自分が親権を得られれば、妻に息子2人との面会交流を年50日程度認める。面会の実現に協力する>妻との間で、離婚と幼い息子2人の親権を争って裁判中の兵庫県内の男性(38)が7月、大阪高裁にこんな計画書を提出した。妻は2年前、息子たちを連れて実家に帰ったまま戻らなかった。1審の家裁は「親権は妻にある」と判断し、男性と息子たちとの面会は年8回とされた。計画書は、男性が控訴後、作成したものだ。
男性は2年間、息子たちに会わせてもらえず、妻へのわだかまりは消えていないが、「『両親といつでも会える』という安心感を持てれば、子供にきっといい影響がある。できる範囲で一緒に育てていければ」と考えるようになったという。別の家裁で長女(6)の親権を夫と争っている40歳代の会社員女性も近く、計画書を出す。裁判は3年に及んでおり、「娘が双方に気を使っているのがわかる。父親に会うのも娘の権利だから」と心中を明かす。
専門家によると、従来の訴訟や調停でも、当事者双方が主張や提案を行っている。しかし、共同養育書の場合、相手方に譲歩した上で、面会の日や方法、電話の回数などを詳細に記載するのが特徴。こうした動きは、今年3月の千葉家裁松戸支部判決後、広がり始めたという。
この裁判では、1人娘の親権が争われた。妻が『夫と娘の面会は月1回」としたのに対し、夫は、年末や妻の誕生日も含め年100日程度の面会を妻に認める計画書を示し、「約束を破ったら親権者を妻に変更してもよい」と主張。夫は6年間、娘と離れて暮らしていたが、判決は「夫は、整った環境で周到に養育する計画と意欲を持っている」とし、計画書の内容をほぼ認めた。年100日程度の面会を保障した判決は異例という。
妻は控訴したが、夫の代理人の上野晃弁護士(東京弁護士会)は「裁判所はこれまで、親権をどちらに認めるかの判断にとどまり、面会交流などは重視しない傾向にあった。妻に大きく歩み寄り、子供の幸せを考えた計画が評価されたのだろう」と話す。
一方、早稲田大の棚村政行教授(家族法)は「計画書の提出が裁判で親権を取るためだけの戦術になり、実行されなければ本末転倒」とくぎを刺す。「共同養育の考え方は重要で、これを確実に進められるよう、第三者機関を関与させるなどの仕組みを充実させるべきだ」と指摘している。
共同養育計画 親権や監護権を持たない親と子供との面会や、養育費分担についてのルール。2012年施行の改正民法では協議離婚の場合、夫婦間で取り決めるようさだめっれている。「ともに子育てをする」という意味を込めて近年、民法の専門家などからこう呼ばれるようになった。児童虐待や家庭内暴力のケースでは適さないとされる。
離婚で別居する親子の面会を直接支援 兵庫・明石市が9月から試験的に「コーディネート」
離婚して別居する親子の面会を支援しようと、兵庫県明石市は9月から、市が面会のための仲介などを行う「面会交流コーディネート」を試験導入する。同市によると、面会を支援する取り組みは東京都や千葉県、熊本県が外部の支援機関に委託して実施しているが、自治体が直接支援するのは同市が初めてだという。
同市によると、離婚した子供が別居中の親に会おうとした場合、親同士が直接連絡を取ることに躊躇(ちゅうちょ)したりするため、面会がスムーズにいかないことも少なくない。
同市ではこれまで、こうした親子が面会のために市立天文科学館を利用する場合、入館料を無料にして支援してきたが、さらに面会を促進しようと、試験導入を決めた。
対象は市内在住の中学3年までの子供がいる家庭。市では、児童扶養手当を受給している該当者が所得や生活実態を市に報告する8月中に、制度の仕組みを説明、紹介する。
コーディネートを担当するのは市民相談室で、親からの依頼を受けた担当者が、もう一方の親に面会を打診。両親と子供の3者間で合意が得られた場合に、引き合わせる。
引き合わせの当日はアスピア明石(同市東仲ノ町)北館の市生涯学習センターで別居中の親子が待ち合わせ。市内で行動する条件で、2~4時間程度の交流をしてもらう予定。
試験導入は来年3月まで。市は結果を受けて本格導入するかどうか判断する。
離婚しても子供の養育は共同責任 子供の争奪戦を招く単独親権の見直しを
離婚後 親子の面会促進「断絶防止」法案提出へ
超党派の「親子断絶防止議員連盟」(会長・保岡興治元法相)は、未成年の子供のいる夫婦が離婚後、親権を持たない側と子供の定期的な面会を促すことを柱とした「親子断絶防止法案」の原案をまとめた。
以降は紙面を参照ください。
離婚後は子どもの環境を最優先、画期的な「フレンドリーペアレントルール」
「連れ去り勝ち」が子の養育環境を壊す
離婚に至る事情は様々だが、ある日突然、母親が子どもを連れ去って家を出て、別居が始まるケースは少なくない。子どもを連れ去られた父親は、子のために懸命に親権や面会を求めるが、実は、この時点ですでに父親は圧倒的に不利な立場に立たされている。
離婚後に共同親権が認められている欧米と違い、日本は父親か母親、どちらか片方だけに親権が認められる単独親権。どちらが親権を得るかは、様々な要素から判断されるが、なかでも「監護継続性の原則」が問題を複雑にしている。
監護継続性の原則とは、子どもの現状を尊重し、離婚後もできるだけ環境が変わらないほうに親権を認める考え方。母親が子どもを連れて別居した状況で調停や裁判に入れば、子どもはそのまま母親に養育されたほうがいいという判断に傾きがちだ。一方母親は、家に戻ると、監護継続性を理由に親権を得る戦略が取りづらくなる。そのため子どもを連れて出ていった母親は元の家に戻らず、父親に子どもを会わせようとしなくなる。古賀礼子弁護士はこう語る。
「監護継続性の原則は明文化されていませんが、調停や判決で重視される空気があるのはたしかです。監護継続性という要素が母親による子どもの連れ去りを助長している面は否めません。皮肉なことに、『別居後の子供の現状を尊重する』という姿勢が、本来の『現状』(同居時の養育環境)の破壊を容認しているのです」
離婚相手に優しい親が親権を得やすくなる
たとえ親権を得られなくても、子どもと定期的に会えるならいいという父親もいるだろう。しかし、親権のない側が子どもと会えるのはせいぜい月1~2回が相場だ。子どもを連れ去られると、残された側は親権を失い子どもにもなかなか会えない――。
じつは今年3月、そうした現状に一石を投じる判決が千葉家裁松戸支部で出た。子どもを連れ去られた夫が妻と親権を争っていた離婚訴訟で、面会交流を積極的に認めた夫に親権が認められたのだ。妻が夫に提案した面会交流は「月1回」。一方、夫は「自分が親権を取れば子を妻に年間100日程度会わせる」と主張。裁判所は夫の提案を採用したほうが、子どもは両親の愛情を受けて健全に成長すると判断したわけだ。
この判決は相手に寛容性を示した側が有利になる“フレンドリーペアレントルール”に基づいている。このルールを適用すると、親権が欲しければ相手との面会交流を増やす必要があるので、子どもは離婚後も両方の親と会える理想的な状況に近づいていく。
「調停や和解に至ったケースでは、これまでも、離婚後の両親から自然で十分な養育を受けることに重点が置かれたこともありました。フレンドリーペアレントルールという枠組み以前に、子の利益のための当たり前の価値観だからでしょう。この価値観が、今回、判決となって明らかになったのは画期的です」
親権望んだ「子供連れ去り」を防げ 離婚夫婦が共に子に会える「面会交流」
厚生労働省の人口動態統計(年間推計)によると、2015年の離婚件数は22万5000組にのぼる。毎年それだけの夫婦が、別々の道へと歩み始めるのだが、夫婦の縁は切れても、その子供にとっては「父親」と「母親」のままだ。
しかし、離婚後に親権を持たない方の親が子供との面会交流を求めても、なかなか思い通りにはいかないケースがある。なかには一方の親が子供の「連れ去り」をしてしまい、もう一方との面会を拒絶することも――。別居や離婚した親子の「面会交流」を追った。
■日本は離婚すると片方の親だけに親権与える
日本では現在、米国など諸外国が採用する「共同親権」ではなく、「単独親権」の制度がとられている。つまり離婚すると、片方の親だけに親権が与えられ、もう一方には親権が認められない。
親権者を指定する上では、「主たる養育者か」や「継続性があるか」などいくつかの要件に照らして検討される。親権を望む親は、とくに継続性の面で有利になろうと「連れ去り」や「引き離し」をして、もう一方の親と面会させないケースが多々あるという。自分とだけ一緒に子供と過ごせば、継続性が生まれるからだ。
そんな背景のもと、2008年7月に「親子の面会交流を実現する全国ネットワーク(親子ネット)」が発足した。親権をめぐり、実子との交流が困難な当事者を中心に、別居後の親子交流をすすめる法整備や、支援制度の確立を目指す団体である。
親子ネットは定期的に、講演会を実施している。16年6月11日には東京・池袋で、上野晃弁護士(日本橋さくら法律事務所)や、東京国際大学の小田切紀子教授(心理学)らを招いて、「フレンドリー・ペアレントルール(寛容性の原則)」について参加者と情報を共有した。
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親権者指定に「寛容性」の基準導入
千葉家裁松戸支部で16年3月、このフレンドリー・ペアレントルールを採用した判決が出た。同居親を決める上で、親権を認められた側が別居親の存在を肯定的に子どもへ伝えられるか、面会交流に協力できるかといった「寛容性」を判断基準にした判決で、その父親側代理人が上野弁護士だ。
あらましは、こうだ。不仲だった夫婦のうち、母親が娘を連れ、父親に無断で実家へ帰省した。それから約5年にわたり、父親は娘に会えなくなった。父親は親権を求めて提訴。父子面会の条件として「月1回程度」を提示する母親側に対して、父親側は自分が親権者になった場合、母子面会を「年間100日程度」認めるとした。
「継続性の要件」を採った場合には、長く同居している母親側が有利に考えられるが、松戸判決では「年間100日」の面会計画がポイントとなり、父親を親権者とし、娘の引き渡しが命じられた。すでに控訴されているが、親子ネットによると、フレンドリー・ペアレントルールを明確に採用した「国内初」の判決だそうだ。
親権をめぐる訴訟では、もう一方が親権者として適格でないと示すため、相手を誹謗中傷することが多々あるようだ。しかし、離婚後も一緒に子供を育てる「共同養育」の考え方では、親権を奪いあう必要は少なくなる。
「どちらかが善であって、どちらが100%の悪であるなんていう事はない。少なくとも子供との関係では、絶対にそんなことありえない。だからこそ、両親いずれかが100取るのではなく、両親のいずれも子供ときちんと関われる形を作る必要がある」(上野弁護士)
草の根活動だけでなく、政治家も動きつつある。超党派の国会議員による「親子断絶防止議員連盟」(会長:保岡興治元法相)は2016年5月、親子関係の維持に向けた法案骨子をまとめた。松戸判決の控訴審は、7月にはじまる予定。東京高裁がどう判断するか、注目が集まっている。
親権、面会多く認めた方に 家裁支部が異例の判決
離婚する相手と子供との面会をより積極的に認めれば、親権を持てる――。そんな異例の判決が、離婚訴訟の当事者らに反響を広げている。日本では、子供が幼いと親権は同居している方の親に認められるケースが一般的で、子供と親権を持たない親との面会は合意が守られないことも多い。関係者は「離婚後、父母ともに子育てに関わることを重視した判断」としている。
「娘が両親の愛情を受けて健全に成長するには、夫を親権者とするのが相当」。5年以上別居している夫婦が娘の親権を争った離婚訴訟の判決で、千葉家裁松戸支部は3月29日、妻のもとで暮らす小学生の娘を夫へ引き渡すよう命じた。
判決によると、この夫婦は2009年ごろに関係が悪化し、10年に妻が無断で娘を連れて実家に戻った。夫と娘の面会は同年9月を最後に途絶えていた。
夫は訴訟で、離婚した場合の面会についてまとめた「共同養育計画案」を示し、隔週末や祝日など「年間100日程度」の面会を妻に認めることを提案。夫が仕事で不在の間は、同居する夫の両親が娘を世話するとした。これに対し、妻は夫に「月1日」の面会を認めたうえで、「慣れ親しんだ環境から娘を引き離すのは福祉に反する」と主張した。
庄司芳男裁判官は夫側の提案を「整った環境で周到に娘を監護する計画と意欲がある」と評価し、妻の主張を退けた。
夫の代理人を務めた上野晃弁護士によると、面会を重視する側に子供との同居を認める司法判断は米国などでは珍しくないが、日本では極めて異例。妻は4月、判決を不服として東京高裁に控訴した。
長女(3)を連れて家を出た妻との離婚訴訟を抱える東京都内の男性会社員(47)は松戸支部の判決を受け、妻に年間80日程度の面会を認めるとの書面を追加提出した。「大人の男女だから別れることもあり得る。それでも子供との関係が切れないよう歩み寄りたい」と語る。
2014年に全国の家庭裁判所に申し立てられた面会をめぐる調停は約1万1千件で、10年前と比べて倍増した。離婚や面会をめぐる争いの増加が背景にある。
12年施行の改正民法は離婚後の面会について「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」とし、面会重視の方向性を示した。ただ、日本弁護士連合会の調査では、調停で合意した人の約4割が「全く面会できていない」と回答しており、面会の実現が課題。松戸支部の訴訟では、夫が「面会を実現できなければ親権者を妻に変更してもよい」と約束した。
離婚訴訟に詳しい弁護士は「面会の充実に加え、養育費の分担などを子供の利益を優先して取り決めることが重要。双方の親が約束を守り続けるような裁判所の運用や行政の支援も求められる」と話している。
子供「引き離し」問題も
日本は欧米各国と違って離婚後の「共同親権」を認めておらず、親権をめぐる夫婦の争いが激しくなりやすい。
法廷で親権が争われた場合、裁判所の判断を左右するのは、子供の意思と養育する親の継続性。子供が幼い場合には、養育の環境を変えない「継続性」が特に重視される。
インターネットの法律相談などでは「親権者になりたければ、子供を手元に置いて相手と別居した方が有利」といった助言が目立つ。
暴力などやむをえない事情がないのに、子連れで無断で家を出たまま面会に応じない例については、一部の弁護士から「親権目的の子供の引き離し」との指摘もある。
親子断絶を防止 新法骨子案了承 超党派議連
超党派からなる親子断絶防止議員連盟は10日、総会を開き、離婚した父母双方と子供の関係維持を促す新法の骨子案を了承した。今国会の法案提出、成立を目指す。
骨子案は、原則として未成年の子供が離婚した父母と関係を持ち続けることは「子供の最善の利益に資する」とし、その実現を図るために①子供の養育権を持たない親との面会方法を書面化し離婚届に添付②面会の実施徹底-の努力義務を父母に課した。国は必要な啓発・支援活動を行う。ドメスティックバイオレンス(DV)には、特別な配慮をすることも盛り込んだ。
離婚時、親子の面会交流取り決め 超党派議連が法案骨子
超党派でつくる「親子断絶防止議員連盟」の総会が10日、国会内で開かれ、親子断絶防止法の骨子案が示された。離婚して子供と一方の親との関係が完全に断たれるのを防ぐため、面会交流の定期的な実施や子どもの連れ去り防止の啓発など3項目を柱とした。同議連の保岡興治会長は、今国会中の法案提出を目指す考えを示した。
骨子案では、離婚時に面会交流や養育費の分担に関する取り決めを行い、その内容を記した書面の提出を努力規定として盛り込んでいる。子どもの連れ去り防止については、国や自治体が支援を行うと規定。ただし、児童虐待やDVの事情がある場合は「特別な配慮がなされなければならない」としている。離婚後の共同親権制度の導入について、検討項目として記された。
総会には城内実氏(衆院静岡7区)ら自民、公明、民進など所属の国会議員が出席した。出席者からは「『離婚前の子どもの連れ去りはいけないこと』と共通認識を図る意味でも、早く法制化すべきだ」「現状を打開するために、より強制力のある規定を盛り込むことができないか」などの意見が出た。
面会交流について、改正民法では「子どもの利益を最優先に両親が協議する」と当事者任せとしているのが現状。離別親(別居する親)の団体が面会交流の拡充などを盛り込んだ法律の制定を求めて活動を展開している。これらの声を受けて、2014年に超党派の議連が発足した。
議連事務局長の馳浩文部科学相は「面会交流の実施が子どもの最善の利益につながるということを社会通念として浸透させたい」と法制化する意義を示した。
■親子断絶防止法 骨子案のポイント
・協議離婚する時には、面会交流および養育費の分担について、取り決めを行うよう努める
・面会交流が行われていない場合、できる限り早期に実現されるよう努める。国や自治体は支援を行う
・国や自治体は子どもの連れ去りを生じさせないよう、啓発活動および支援を行う。
離婚後の親子面会促進へ 書面にして実効性 議連が素案
離婚した親が離れた子どもと面会交流することを拒まれたり、養育費の支払いが滞ったりしないようにする新法づくりの検討が始まった。面会交流や養育費の分担を書面にして、実効性を持たせる内容。超党派による議員連盟(会長・保岡興治元法相)が今国会への法案提出を目指し、10日に素案をまとめた。
素案では、未成年の子どもがいる夫婦が協議離婚をする際に、子どもとの面会交流や養育費の分担に関する取り決めを書面にまとめ、離婚届に添付して市区町村に提出することを求める。努力規定にとどめて罰則も設けないが、離婚後も子どもと両親が継続的に交流することを「原則として子の最善の利益に資する」と明記。子どもの利益を守ることに対する両親の責任を明確にした。
国や自治体は取り決めの相談に応じるなどの支援をする。児童虐待や配偶者への暴力などの事情がある場合は、子どもの利益に反しないよう特別に配慮する。
離婚後の養育費不払いは子どもの貧困につながると指摘されている。法務省は2012年4月から面会方法や養育費の分担について取り決めができているかを記す欄を離婚届に設けたが、実効性をより高める狙いがある。保岡氏は「子どもが親からの継続的な愛情を受けられる環境を整えたい」と話している。(伊藤舞虹)
離婚後の親子断絶防止=超党派議員が法案要綱
超党派の国会議員でつくる「親子断絶防止議員連盟」(会長・保岡興治元法相)は10日の総会で、離婚や別居で夫婦関係が破綻した父母が、子どもとの親子関係を維持していくための法案要綱を了承した。離婚の際に、親子の面会交流や養育費の分担を取り決め、離婚届に関係書類を添付するとの努力規定を設けることが柱。議員立法で今国会への提出を目指す。
民法は、離婚後の親権者を一方の親に定める「単独親権制度」を採っている。このため、一方の親が子を連れ去り、もう一方の親との面会を拒絶しつつ養育を続けた場合、法的に救済する手段に乏しく、市民団体が法整備を求めていた。
議員立法は、養育していない親と子との面会交流の実効性を上げて、絶縁状態になるのを防止するのが狙い。「父母の離婚後等でも、未成年の子が父母と親子として継続的な関係を持つことは、子の最善の利益に資する」と基本理念に明記した。国や地方自治体には、ガイドライン作成など必要な支援を行うよう定めた。(2016/05/10-18:16)
連れ去りから6年、親権を勝ち取った男性から見た離婚裁判
子を持つ夫婦が離婚する際、日本では一方の親だけが親権を持つ「単独親権」が民法で規定されています。欧米で一般的な「共同親権」は認められていません。離婚裁判では、たとえ妻が子どもを連れ去る形で別居した場合でも、母親側に親権が認められるケースが多く、わが子との突然の別離に苦しむ男性は少なくありません。
画期的な判決「母親でなく父親に親権」
そんな旧態依然とした家族制度を見直し、父親である夫に親権を与える画期的な判決が3月29日、千葉家裁松戸支部(庄司芳男裁判官)で言い渡されました。
判決によると、夫婦の間で2007年に長女が生まれたものの、妻は2010年5月6日、夫に無断で長女を連れ去り実家に戻りました。妻はその年の秋を最後に面会を拒み、夫は5年半にわたって長女と一度も会うことができません。
夫は年間100日程度の面会交流計画を提示
訴訟で、妻は離婚を求めるとともに、別居後長女と同居してきたことを踏まえ「慣れ親しんだ環境から引き離すのは長女の福祉に反する」と主張。夫と長女の面会交流は「月1回」と提案しました。
これに対し、夫は隔週末に48時間の面会のほか、連休や誕生日についても隔年で面会を認めるなど、妻と長女の面会交流計画を「年間100日程度」提示していました。
「寛容性の原則を初めて採用した判決」
判決では、夫婦で長女の成長を支えるためにはより多くの面会日数を提案した夫の方が親権者にふさわしいと判断し、妻に長女を引き渡すよう命じました。判決後、記者会見した男性側代理人の上野晃弁護士は、「(子どもを見ている親が、他方の親との面会交流に協力的かどうかを親権者の適格性判断の基準とする)寛容性の原則(フレンドリー・ペアレント・ルール)を明確に採用した、おそらく初めての画期的な判決」と語りました。
男性は突然の別離から面会交流が一切叶わず、調停と裁判を繰り返してきました。やっと長女に再会できるという喜びも束の間、妻は判決を不服として控訴し、再会はさらに遠のくこととなりました。新たな判例を背景に控訴審に臨む男性から、法曹界に対する疑問や判決に対する思いを政治山に寄稿していただきましたので、全文を下記に掲載します。
■連れ去り親が親権者として相応しくないと判断した点でも画期的
私のこの判決は、寛容性の原則を採用しただけでなく、子どもの連れ去りと親子の引き離しをした親が親権者として相応しくないと判断した点でも画期的です。しかし、この判決内容は決して突飛なものではありません。むしろ、法に基づき適切に判断されたものです。
■法務大臣「無理して子を移動させて、後は継続…あってはいけない」
平成24年4月、民法766条が改正され、親権・監護権の決定時に「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」とされました。この改正に伴い、法務大臣が国会で以下のように答えています。
「面会交流に積極的な親が監護権決定に有利に働くように、あるいは面会交流を正当な理由なく破ったら監護権者の変更の重要な要素になり得る」
「別れる場合に、子の監護者を決める。そのときに、相手に対してどちらの方がより寛容であるか。片方が、いや、月1回会わせます、もう片方は、いやいや、月に2回は会わせます、それなら、その月2回会わせる方を監護者に決めよう、そういうルールといいますか、裁判所のやり方(は)重要な指摘」
「合意ができる前にあえて無理して子を移動させてそして自分の管理下に置けば、後は継続性の原則で守られるという、そういうことはやっぱりあってはいけない」
この法務大臣答弁を周知徹底するため最高裁から全裁判所に対し、少なくとも3回(平成23年8月3日、平成24年3月29日、平成26年3月17日)書簡が出されています。
■最高裁長官「ハーグ条約…国際社会の潮流も見据えて検討を」
さらに、平成26年4月1日の就任時に最高裁判所長官は「裁判所にとってハーグ条約関連法にあるように、家庭内の出来事が視野に入ってくることも普通に見られるようになっている。このような状況に対応し、司法の機能を充実、強化していくため、国内の実情はもとより国際社会の潮流も見据えて検討を深め、国民の期待と信頼に応え得るよう不断に努力を重ねていくことが求められている」旨の発言をされています。
■多くの裁判官は民法改正を徹底的に無視
以上から明らかですが、今回の判決は、民法766条の改正を踏まえれば当然の判断です。逆に言えば、多くの裁判官は、民法改正後、本判決が出るまでの4年間、最高裁からの再三の要請にもかかわらず、この民法改正を徹底的に無視してきたということです。そして、裁判官は、子どもを奪われた親の親権を、「親子が引き離されている」ことを理由に奪い続けてきました。これがいわゆる「継続性の原則」ですが、法律上どこにも書いていません。
このような絶望的な状況に直面し、数多くの子ども想いの親が自殺に追い込まれました。心中に及んだケースもあります。裁判官が民法改正を踏まえて判決を下していれば、少なくとも、この方たちは亡くならずに済みました。
また、一方の親から引き離された子どもがもう一方の親らにより虐待され殺される痛ましい事件もしばしば起きています。今回の判決が命じているように、年間100日の面会交流が行われていたら、このような虐待死は起こらなかったはずです。これらのことを思うと、悔しくて仕方がありません。
■最後に
今回の判決は、もっと早くに出ていなければならないものでした。既に亡くなられた親と、その子どもたちとの、本来あったはずの幸せな生活は残念ながら決して実現しません。
自殺や虐待死に至らないまでも、多くの親子が、今の裁判所の運用に苦しめられています。私も、娘が連れ去られてから約6年間、一日も心休まる日はありません。娘が戻って来る日までこの苦しみは続きます。2歳で連れ去られた娘は約6年にわたり父親と全く会えずにいます。娘は、父親に捨てられたと思っているかもしれません。何ら罪のない娘にこんな状態を強いる仕組みが「子の利益」に適うとは私には到底思えません。
このような辛い思いをする親子は2度と出てきてほしくありません。我々親子の犠牲を無駄にしないでほしいと思います。
今回の私の判決のように、民法766条の改正趣旨に従い適切な判決が下されるだけで、多くの親子が救われます。また、これから起こりうる子どもの連れ去りや引き離しも未然に防げます。将来にわたり多くの命を救うことにもなります。ぜひ、そのように裁判所の運用が一刻も早く変わることを願います。
同時に、社会の「常識」も変わっていってほしいと思います。夫婦の別れが親子の別れになってはいけません。離婚は仕方がない場合でも、できる限り、そのしわ寄せを子どもにいかせない努力が必要なのだと思います。ぜひ、私のこの判決を「子の利益」とは何なのかを考える契機にしていただければと思います。
日本の「クレイマー・クレイマー」 -面会交流事件-
日本の「クレイマー・クレイマー」-面会交流事件-
アンダーソン・毛利・友常法律事務所 大島 義孝
1 子をめぐる紛争の増加
司法統計によれば、裁判所における平成26年度の民事・行政訴訟事件の新受件数は前年に比して約4~5%減少し、この10年間で見ても民事・行政訴訟事件は半分近く減少している。
これに対して、家庭裁判所が所管する家事事件は、平成26年度に限っては前年に比してわずかに減ったものの、この10年間は漸増し続け、10年前と比較すると事件数は約30%の増加となっている。とりわけ、家事事件の中でも、子の引渡事件、監護者の指定事件及び面会交流事件の増加が著しく、こうした事件はこの10年間で2~3倍に増加している。すなわち、別居状態にある夫婦間や離婚後の元夫婦間において、子の引渡しや監護、面会交流をめぐる紛争が著しく増加していることが統計上明らかに見て取れる。
2 面会交流事件への関与
約15年間の弁護士生活において、主として事業再生・倒産案件やM&A案件といった企業をめぐる事件に関わってきたが、一般の民事紛争や家事紛争もそれなりに手がける機会があった。その中でも3年以上にわたって関与した面会交流の紛争事案が強く印象に残っている。
事案の概要は以下のとおりである。依頼者の妻(当時)が、ちょっとした夫婦間の諍いを契機として当時2歳の長男を連れて実家に帰省したまま戻らなくなり別居状態になった。別居中の生活費をめぐる一方的な要求が通らないと見るや、その後妻は依頼者に対し、離婚を求めて家庭裁判所に家事調停を申し立ててきた。依頼者側としては、離婚に向けた話し合いを行うにしてもまずは突然会えなくなった長男と会えるのが先と裁判所に伝えた結果、家裁で試行的な面会が行われ、約半年ぶりの父子交流がなされた。別居中の一定額の生活費の支払いも約束した。しかし、妻側はなぜかその後態度を硬化させ、一方的に離婚を求めるのみで一切面会の話し合いに応じなくなったのである。
当初は、家裁において根気よく協議することにより、子供との面会も可能になるのではと考えていたが、甘い見通しだったかもしれない。妻側は、途中から依頼者にDV(家庭内暴力)があると言い出したり、あるいは急用や病気を理由に調停の期日を何度も欠席したりと、家裁での調停は思うように進行せず、そうしているうちに、時間ばかりいたずらに空費され、結局子供と面会できなくなってから3年あまりが経過してしまったのである。
日本の司法を取り巻く実情として、子を一方の配偶者に連れ去られてしまった場合、相手が頑なに面会を拒むと、これを救済する効果的な手立てがないという問題がある。子を勝手に連れ去った配偶者から勝手に奪い返そうとすると誘拐罪に問われるおそれがあり、実際に誘拐犯として片方の親が逮捕された例もある。子を連れ去った側が子の引渡しを拒みつつ養育の継続という既成事実を積み重ねると、そのことが親権の判断にとっても有利に働く。このことから、子の養育権や親権を確保するのに最も効果的な手法は、別居の際に有無をいわせず子供を連れ去って相手からの面会要請を拒否し続け、養育監護を続けてこれを既成事実化することと言われており、そのように指南する弁護士やコンサルタントも極めて残念なことに巷には存在する。この手の紛争では自力救済が司法に勝るのである。
子を持つ親の方はよく分かると思うが、幼児期におけるわが子の日々の成長を見守るのは、親としての何よりの喜びである。にもかかわらず、子が連れ去られたまま面会もままならず、司法手続の中で時間ばかり空費していくことにより失われる価値は、何物にも代えがたく回復困難である。依頼者と同年齢の子を持つ自分にはそれが痛いほどよく理解できた。
一方、子にとっても、幼児期において両親とひとしく交流を持つことは心身の生育にとって極めて重要であるということが今では常識となっている。幼い本人は自覚がないかもしれないが、両親の紛争のために片親と離されてしまい、見えない形で健全な生育が阻害されてしまうのは、ただでさえ両親間の紛争や一方の親との離別により不安定な心理状態に置かれる子供に対し、さらなる不利益を与えかねない。それなのに子の不利益を顧みようとせず、頑なに面会を拒否し続ける相手方に対してやり切れない思いが募るばかりであった。
3 「クレイマー・クレイマー」と面会交流
往年の名作映画に「クレイマー・クレイマー」という作品がある。ダスティン・ホフマンが演じる父親のテッドは仕事に忙しく、家事や6歳の長男ビリーの育児はメリル・ストリープが演じる母親のジョアンナに任せきりだった。ところが、ある日ジョアンナが自分探しをしたいと言ってテッドとビリーを置いて家を飛び出す。その日からテッドをめぐる環境が激変し、テッドは家事育児と仕事との両立に悪戦苦闘しつつ、今でいうところのイクメンとして成長する。ようやくテッドとビリーの新生活も軌道に乗った頃、仕事を持ちテッドを上回るほどの収入を得るようになったジョアンナが戻ってきてビリーを引き取って暮らしたいと言い、ビリーの養育権をめぐる紛争に至るというストーリーである。姓を同じくする元夫婦間の「クレイマー対クレイマー」という事件名がそのまま映画のタイトルとなっている。
「クレイマー・クレイマー」は1979年公開の映画だが、ある日深夜放映していたこの映画を見ていくつかの点で驚いた。第一に、非監護親のジョアンナが弁護士を立てて子供との面会を求めた際、子を監護しているテッドは面会を拒否することはできないとされ、別居にかかわらず子との面会が簡単に認められたことである。第二に、テッドの養育権は最終的に一方が獲得したものの、裁判所により養育権のない側にもビリーとの面会交流プログラムが定められ、その内容として、「隔週末の宿泊、毎週平日1回の食事、そして長期休暇の半分」の面会交流が当然に認められるとされたことである。第三に、裁判が起こされて決着に至るまでの期間は2、3か月で、きわめて短期間に司法手続を通じた決着がなされている。このように、両親が離婚しても、養育していない親との面会は当たり前に認められ、またその頻度も高く、さらには一連の紛争が司法手続の中でごく短期間に決着がついており、それが当時の米国社会のコンセンサスとなっていたことに驚かされた。
翻ってわが国の面会交流をめぐる状況を見ると、監護している親(多くは母親)が面会交流に消極的である場合、前述のように面会交流を認めさせること自体が非常に困難を伴う。そして、家裁の調停や審判の結果として子との面会交流が認められる場合でも、せいぜい月1回の面会が通常で、よくても月2回程度、宿泊を伴った面会や長期休暇の半分などというのは夢物語である。監護親側が強く面会を拒否した場合には、間接交流として子供の写真を送付することで納得するようにとお茶を濁されることもある。さらに、子をめぐる裁判手続は長期化する傾向にあり、司法手続を通じて解決しようとしても貴重な幼年期の時間が空費されてしまう。
かようにわが国の面会交流をめぐる状況は、制度面においても社会のコンセンサスという面においても、約35年前の1980年ころの米国に比べても著しく貧弱なものであることに愕然としたのである。
4 家族をめぐる意識の変容と司法制度
倒産法や会社法をめぐる法制度は、整備が進み、わが国では諸外国に照らしても先進的な法制度・法体系が構築されている。一方で、国民一人一人の生活の根幹をなす家族をめぐる法律や制度について、戦後70年を経て変化してきた価値観や多様な家族のありかたに鑑みて、法制度の整備が遅れているといわざるを得ない。冒頭に引用したように、民事行政事件の減少と対照的に面会交流等の事件がこの10年で激増しているということは、こうした問題に関して司法制度が国民の権利救済手段として機能していないことの証左であるといえるのではないだろうか。
幸いなことに、2014年のハーグ条約(国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約)の締結を契機として、子供の連れ去りや面会拒否の問題について従前よりも社会の関心が高まっており、面会交流の重要性が徐々に理解されるとともに面会交流を充実させようと活動する非監護親のネットワークやそれを支援する国会議員による新しい動きも見られるところである。また、子供の持つ固有の権利を擁護するため、「子どもの代理人」という制度も設けられた。
なお、前述の依頼者の件においては、結局、子を面会させないという妻の強固な意思を押し切る形で面会交流を強制的に実施することは難しいものと考え、依頼者にとって苦渋の決断ではあったが、前記のような新しい動きの進展に期待しつつ、面会交流は将来の課題として依頼者は妻との離婚に応じることとなった。
この世に生まれ、またこれから生まれてくる全ての子供たちにおいて、両親や祖父母との自由な交流が妨げられず、また彼らの愛情が子供たちにあまねく注がれるよう、いち早く制度が整備され、紛争の迅速な解決に司法手続が貢献できるようになることを願ってやまない。普段関わっている企業法務とは少し離れるかもしれないが、法律実務家として何らかの寄与ができればと思っている。
【タイムリー連載・フィフィ姐さんの言いたい放題】先月29日に離婚が成立した、高橋ジョージと三船美佳。長い法廷闘争の末、11歳になる長女の親権は三船が持つことになった。一方の高橋は当分のあいだ長女と面会ができず、年に2回ほどカラー写真が送られるということで和解に至った。今回の件のみならず、離婚に際し争点となる親権問題。その背景には、日本が先進国には珍しく、離婚と同時に一方の親を子どもから排除する、単独親権制度を採用している点が挙げられる。今回フィフィはその異常性に注目、単独親権がもたらす子どもへの影響について迫っていく。
親権を巡って男性の声が通りにくい社会
高橋ジョージさんと三船美佳さんの離婚。子どもの親権は三船さんが持つことになりましたが、1年あまりもの間、親権争いが繰り広げられていました。
そして親権争いになった場合、今回の件もそうですが、女性に親権が渡り、男性が泣き寝入りをするというケースをよく耳にします。
私がtwitterでフォロワーに意見を呼びかけた範囲でも、子どもを一方的に連れ去られたと嘆く男性の存在は多く、親権を巡っては男性の声が通りにくい社会であることが伝わってきました。
そもそもなぜ日本では、こうした親権争いが起きてしまうのか。その背景には、他の先進諸国のように“共同親権制度”を採用するのではなく、“単独親権制度”を採用している点が挙げられます。
欧米では、子どもは父親と母親の両親がいなければ健全に育たないという認識がある一方、日本では片親でも十分に育つという認識があるんですね。しかし、今では日本の離婚率は上昇傾向にあり、それに伴って親権問題も増加。いつまでも単独親権制度を保守するのではなく、他の先進諸国のように、共同親権を認めるよう声を上げる動きも見受けられます。
単独親権から共同親権へ
たとえば、共同親権法制化の運動を行っているkネットという団体。離婚を契機に子どもに会えなくなった親が多数存在する実態を危惧し、2008年から活動をはじめている団体です。
今回このkネットさんに、高橋さんと三船さんの離婚劇について伺ってみたところ、親子関係が分断されてしまうケースは決して珍しいものではないそうです。そして共同親権が進まない理由として、子育ては女性が行うもので、男性は養育費さえ払えばオーケーだという認識が日本社会に根付いている点を指摘されていました。
しかし同時に、共働きで子育てをする父親が増えており、夫婦のあり方は確実に変わりつつあるともおっしゃっていました。
こうした団体の活動や、育児に積極的に参加する男性の存在によって、実際に変わりつつあるのだという好例として、3月29日にフレンドリーペアレントルールの適用判例が出たことが挙げられます。
このフレンドリーペアレントルールとは、離婚したときに親と子どもの面会や交流に関して、許容的な姿勢を持つ方に親権者、監護権者の権利を与えるルールのこと。
これまでの判決では、子どもと一緒に暮らしてきた実績、あるいは現状の養育環境を継続できる能力を重要視する方向でしたが、裁判所の考えがシフトしてきたことは良い前兆だと言えるのではないでしょうか。
単独親権が与える子どもへの悪影響
そして単独親権は、子どもにとっても良い影響を与えるとは思えません。
今回の離婚会見で三船さんは、離婚が成立したことを娘に報告すると、”本当におめでとう。よかったね”と喜んでくれたとおっしゃっていました。本当に娘さんが言ったのか真偽は定かではありませんが、仮にそう言ったのだとしたら、これは悲しいこと。
つまり大人の事情、夫婦の間の問題に完全に巻き込まれ、父親を否定する刷り込みがなされる環境、または父親を実際に否定するほどの環境にあったと考えられますから。子どもにここまで言わせてしまう、感じ取らせてしまうのは良くないです。
再婚といった次のステップに進んだり、新しいスタートを切りたいがために、離婚した相手との関係を無理矢理断ち切ろうとし、子どもの心を押さえ込んでしまってはいけません。
大人の事情で子どもがどれだけ傷ついているのか、子どもの権利はしっかりと守られているのか、こうした点にもっと目を向ける必要があるのではないでしょうか。
《構成・文/岸沙織》
5年以上娘と会っていない父に親権 前代未聞 大岡裁きの裏に外圧 連れ去ったモノ勝ちはもう通じない
先月末、千葉家裁で下された画期的な判決が波紋を広げている。別居中の両親が娘(8)の親権と離婚を争った裁判で、娘と5年以上離れて暮らす父親に親権を認め、母親に娘を引き渡すように命じたのだ。このような前例はないという。「単独親権」制度をとる日本では”監護の継続性”や”母性優先”を重視。虐待などの特別な理由がない限り、監護中の母親に親権を認めるケースが大半だ。そのため、別居や離婚を求める際、親権が欲しい母親は子供を連れて家を出る例が多い。もし、父親が連れ返しに行けば、「誘拐した」として逮捕されることだってある。
要は”連れ去ったモノ勝ち”で、最近は父親が子供を連れて家を出るケースも少なくない。
今回の判決が下った主な理由は、子供との面会交流を相手に認める日数。「月1回」との主張に対し、父親は「年間100日程度」と提案したことが評価された。まさに”大岡裁き”と言っていい。父親の代理人を務めた上野晃弁護士はこう言うう。
「ようやく当たり前のことが認められた形です。父親と母親が”共同”で子育てしていくことは国際社会の常識。日本の裁判所では『連れ去った側が全部正しい』というムチャクチャな論理がまかり通ってきました。2年前には国際結婚が破たんした『ハーグ条約』を日本も締結し、外国からの圧力も非常に強くなっています。裁判所としても『今のままではヤバいぞ』という思いがあったのではないでしょうか」
母親は控訴する方針で、すぐに娘が父親の元に返ってくるわけではない。父親は2歳の時から5年以上も娘に会えていないが、裁判中も娘はすくすく育っていく。一番かわいい時に、そばにいてあげられないのだ。超党派の「親子断絶防止を考える議員連盟」会長で弁護士でもある保岡興治衆院議員はこう言う。
「今回の判決は本当に子供のことを考えていて評価されるものです。議連としても、子の利益を最善に考えて親が行動するための『親子断絶防止法』という法案を準備している。近く議員立法として提出します」
いち早い法案成立を祈るばかりだ。
『「イクメン」増えて…親権不平等の国・日本』と題した、本質を鋭く突いた記事が出ていますので、紹介します。
下記がトピックスです。
・そもそも「死別」以外のケースでは「シングルマザー」など存在しないでしょう。子どもには父親が存在するからです。
・浮気したのでも、暴力をふるったわけでもない父親が、離婚したというだけで子どもとの交流権やアクセス権を奪われる、欧米ではありえないような ことがこれまでは黙認されてきました。
・米国では子どもが両方の親と交流する権利を守ることと、養育費を払うことはセットの義務であり、この両方についてそれぞれ司法が判断します。つまり、面会交流権や訪問権(ほぼ年間100日)を守らない場合、養育費などもらえないどころか、普通に親権を失い、相手に親権が移ります。
・離婚した母親が子どもを父親に会わせない、もしくは共同親権を渋る理由とは何なのでしょうか。実際には、単に元夫が嫌いなので自分が会わせたくない、もしくは面倒だからという理由が多いようです。欧米ではこのような親に親権がいかないように、フレンドリーペアレントルールなどを採用して います。離婚した後、子どもをもう一人の親に会わせる傾向がより高い親にメーンの親権を与えるというものです。
・時折報道される痛ましいニュースに、離婚した母親の子どもが、母親の恋人や新しい夫に虐待されるケースがあります。当然のことですが、離婚後も 子どもが両方の実の親と交流がある方が、児童虐待は防げます。もう一方の親が虐待の可能性を察知できるからです。
母が連れ去った娘を父が取り戻す判決の衝撃
母が家を出てしばらくしてから、父と暮らしていた娘を一方的に連れ去り、父の面会を拒絶していたケースで、娘の親権を父に認める画期的な判決が千葉地裁で出された。事件から六年の年月が経過していた。
日本の場合、家庭裁判所はほとんどの場合、母親に親権を認めるし、面会権を父親に認めても反故にされるケースが多い。郷ひろみの例など典型だ。子供が嫌がっているとか、母子関係に悪影響が出るとかいうことが理由にされるが、そんなことは、母親が誘導すればさほど難しくない。
また、面会が認められても、第三者の同席が義務づけられ、それが安易に父親の言動やプレゼントすることを制限したりしている国際的に非常識極まるやり方をすることが多いのが現状である。
かつて日本では、跡取りの子の場合には、その家、つまり、婿養子でなければ父のもとに残させるのが普通であったが、跡取りでない場合には様々だった。そして、片方の親は一生会えないことが多かった。
安倍首相の父である晋太郎元外相は、幼いころに母が家を出たがその後の消息を教えてもらえず、学生時代に母が住んでいるとうわさで聞いたあたりを捜し歩き、のちに異母弟の西村興銀頭取と涙の対面をしている。また、小泉首相が離婚したとき長男と次男は父のもとに残り、三男は離婚後に出産して母のもとで育ち、互いに長年、会わなかった。
こうした習慣は、国際的にもグロテスクの極致である。ヨーロッパ在勤時に北イタリアの湖水地方のホテルで、父親と幼い娘がバカンスを過ごしているのに出会ったことがある。離婚して娘が母親のところにいるが一年のうちある期間、父親と過ごしているということで印象的だった。
欧米では離婚しても片方の親と会えないなどということは少ない。オバマ大統領も離婚したケニア人の父が小学生のころハワイに訪ねてきてかなりの期間一緒に過ごしたりしている。両親それぞれが一人ずつ引き取ったとしても、互いに会えないないということなどない。
ところが、日本人がアメリカで離婚してたのち、勝手に日本人の母親が日本に連れ帰る事件が頻発し、それでは北朝鮮の拉致も非難できないなどと批判され、それが国際的なルールとして違法に外国に連れ出された子を取り戻せるハーグ条約批准のきっかけにもなった。
そういう問題意識の変化の結果出たのが今回の判決である。この事件の当事者である父親は、ハーグ条約批准運動にも参加していたが、そこまでしないと日本人の意識が変わらないと正しく考えたからだ。
今回の判決では、母の方は夫に第三者の監視付きという条件で月に一回の面会を認めると妥協案を提案し、父は百日間の無条件での面会を母に認める提案をした。妻は夫に会わせることで不都合が生じると言い張ったが、その理由を論理的に説明できなかった。
日本でも離婚率が30%を超えているが、そういうなかで、離婚したら片方の親は会えなくなるというのでは、正常な親子関係形成の支障になるし、それが少子化の一因のようにすら思う。
欧米人の家庭に招かれると、三人子供がいて似てないので不審に思っていると、「この子は私の子、そしらは夫の子、あっちが二人の子」だとか、「この子は妻の前の結婚のときの子で父親のところにいるのだが、夏休みなんでこっちに来ている」とか子供の前で平気で言っているし、それが国際標準だ。
離婚すると片方の親と会えなくなるというのは、文明国にあるまじき蛮行だ。この案件については、わたし自身も相談にのったこともあるのだが、これを機会に国際的な常識に合致した親子関係に変化することを切に望みたいし、この判決のケースをその模範としようと両親が努力してくれれば素晴らしいことだし、子供にとっても誇らしいこととなろう。
さらにもう少し広く考えると、祖父母の面会権などというのも大事なことと思う。男親の祖父母が、「もしも子供が離婚したら会えなくなるかと思うと孫を可愛がる気になれない」という話もよく聞くが、不幸なことだ。オバマ大統領もケニアの祖母に上院議員時代に会いに行ったではないか。
親権を勝ち取ったのは父親 判決を左右した「母親との100日の交流計画」
8歳の娘を育てる権利をめぐって、父と母が争った裁判で、父親が勝利した。離婚した父母は、子どもとどんな関係をつなぐべきなのか。判決の決め手となったのは、父親が提案した、年間100日におよぶ母娘の交流計画だった。【BuzzFeed Japan / 渡辺一樹】
最後の通話「パパに会いたい」
2010年5月6日夕、仕事を終えた父親が保育所に娘を迎えに行くと、そこに娘はいなかった。
夫婦は離婚に向けて話し合いをしていた。その真っ只中で、母親が無断で娘を連れて実家に帰った。
別居した後、母親は第三者の監視付きなら面会させていいと提案してきたが、父親は「監視付きはおかしい」と拒んだ。結局、父が娘に会えたのは6回だけ。最後に会ったのは2010年9月26日だった。
週一回、土曜の朝にかかってきていた電話も、2011年1月で最後になった。「母親が横で聞いていて、不適切な発言があると切られる。最後に話したときも、娘が『パパに会いたい』と言い出したとたん切れました。それっきりです」
「継続性の原則」というハードル
娘の親権をめぐる争いは、裁判にまで至った。だが、裁判で親権を得るハードルは高かった。
娘はもう6年近く、母親のもとで暮らしている。裁判に先立って行われた審判では「監護権」が母親にあるとされた。監護権は、子どもと一緒に暮らして身の回りの世話をする権利のことだ。
母と娘は二人暮らしだが、実家が近く、祖父母のサポートがある。小学校2年の娘は元気に学校に通っている。母子関係に問題はない。
裁判では、子どもの環境はできるだけ変えないほうがいいという理由から、「現状維持」の判断がされることが多い。このような考え方を「継続性の原則」という。
裁判所がこの原則を重視すれば、母親のもとで5年以上も問題なく暮らしている以上、母親が親権を持つ、という結論になる。実際、この裁判でも母親側は、慣れ親しんだ環境から引き離すのは娘によくない、と主張した。
決定的だった面会交流の差
父親は、それでも親権をあきらめなかった。
もともと娘との関係は良く、それは母親も認めていた。父親は元気な祖父母と同居していて、子育てのサポートも十分得られる。
父母の決定的な違いは、親子の面会交流に対する姿勢だった。
母親は「月1回、2時間程度、監視付きで父と子の面会を認める」と提案していた。
父親が提案した面会交流の計画は、それを圧倒的に上回るものだった。
隔週末の48時間を基本に、ゴールデンウィークや年末、夏休みには1、2週間連続での交流を認めるなど、年間100日に及ぶプランを立てた。さらに、もしそれが守られなかった場合、親権を変更することも約束した。
「年間100日」は、親権を獲得するための大盤振る舞いではなかった。
父親の代理人をつとめる上野晃弁護士によると、「年間100日」は、離婚後の共同親権が認められているアメリカなどでは、基準の一つになっているという。
面会交流は、親の離婚を経験した子供にとって、大きな意味を持つ。「子どもが、両親から愛されていると確信するために、離婚後はよりいっそう両親とかかわることが重要」という研究もある。
アメリカでは、単独親権が得られない父親たちが運動を繰り広げた結果、1979年にカリフォルニア州法が成立したことをきっかけに、離婚後の共同親権という考え方が広まった。
しかし、日本ではそうした考え方はまだ浸透していない。日本のルールでは、父か母のどちらが親権を持つのかを決めないと、離婚届が受理されない。
父親はこう話す。
「いくら私が妻を嫌いでも、娘からしてみれば大切な母親です。夫婦間の感情で、親子関係を断ち切ってしまうのはおかしい」
「娘のために、両親から愛情を受けて育ったと感じられる環境を作りたい」
「大岡裁きのような判決」
千葉家裁の庄司裁判官は、母親の提案について「監視付面会交流が子の利益に適わないことは自明」と指摘。さらに「慣れ親しんだ環境から娘を引き離すのはよくない」という懸念を、「杞憂にすぎない」と切り捨てた。
そして、父親の受け入れ態勢や計画などを踏まえると、娘が「両親の愛情を受けて健全に成長」するためには、父親を親権者にするべきだとして、判決確定後、直ちに母親に娘を引き渡すよう命じた。
判決を受け、記者会見した父親は「6年前に別れる時、娘には『必ず迎えに行く』と約束した。6年もかかって申し訳ないと娘に言いたい」と話した。
父親の代理人を務める上野晃弁護士は「父母がともに相手と面会させるという中、より交流計画が充実している方に親権を与えたのは画期的」だと判決を評価。「親権をめぐって激しく争う親よりも、寛容な親の方が、子育てをするのにふさわしい。大岡裁きのような判決」と述べた。
母親側の代理人は、BuzzFeed Newsの取材に「到底承服できる内容ではない。控訴して争う予定だ」と話している。
母子面会「年100回」 寛大な父に親権 千葉家裁松戸支部
5年以上別居状態の夫婦が長女(8)の親権を争った訴訟の判決で、千葉家裁松戸支部(庄司芳男裁判官)は30日までに、自分が親権を持った場合、離婚後も相手に認める長女との面会交流の日数について「年間100日間程度」を提案した夫を親権者と定め、妻に同居の長女を引き渡すよう命じた。
妻は「月1回」を希望していた。夫の代理人弁護士によると、面会交流に寛容な点を重視し、子どもと別居中の夫を親権者とした判断は異例という。
判決によると、夫婦は関係がうまくいかなくなり、2010年5月に妻が夫に無断で長女と実家に戻った。夫と長女が会ったのは同年9月が最後だった。
妻が離婚や親権を求めて提訴。「長女を慣れ親しんだ環境から引き離すべきではない」と主張したが、判決は「両親の愛情を受けて健全に成長するのを可能にするために、父親を親権者とするのが相当」とした。
母子面会に寛大な父に親権 異例の判決、母優先覆す 家裁松戸支部判決「長女の健全育成目的」
長女(8)と同居し養育してきた40代の母親が別居中の父親(43)に親権を渡すよう求める一方、父親も母親に長女を引き渡すよう求めていた訴訟の判決が千葉家裁松戸支部であった。庄司芳男裁判官は「母親は父娘の面会を月1回程度にしたいと望んでいるが、父親は年100日程度の母娘の面会を約束している。長女が両親の愛情を受けて健全に成長するためには父親に養育されるのが適切だ」として、母親に対し、長女を父親へ引き渡すよう命じた。
親権者や養育者を法的に決定する際には従来、成育環境が変わるのは子供に不利益との考えから同居中の親を優先する「継続性の原則」や、母親が養育するのが望ましいとする「母親優先の原則」などが重要な要件とされてきた。しかし29日の判決で、庄司裁判官は「母親側の『長女を慣れ親しんだ環境から引き離すのは不当』とする主張は杞憂にすぎない」と述べた。
判決などによると、父親と母親は平成21年ごろから不仲になり、22年5月、母親が父親に無断で長女を連れて自宅を出た。母親は父娘の面会や電話での会話を拒否するようになり、父親は同年9月以降、長女と会えていないという。
父親側代理人の上野晃弁護士は「相手に面会などをより多く認める方が有利になる『寛容性の原則』が重視される欧米とは異なり、『継続性の原則』が重視されてきた日本では画期的な判決だ。親権に関する今後の新たな基準になることを期待したい」と評価した。
父親は「まずは長女に『長い間ごめんね』と言いたい」と振り返った。
別居の夫に親権認める判決 地裁支部、娘の健全成育考慮
別居している夫婦が娘(8)の親権と離婚をめぐって争った訴訟で、千葉家裁松戸支部(庄司芳男裁判官)は29日、離れて暮らす夫(43)を親権者とし、娘を夫に引き渡すよう妻に命じる判決を言い渡した。
判決によると、妻は2010年、夫に無断で娘を連れて実家に帰り、娘を夫に会わせることを拒否。夫は娘に会えなくなった。
夫は、「自分が娘を引き取った場合、妻が娘と面会できる機会を隔週の週末や年末など年間約100日確保する」という計画を家裁に提示。妻は、夫のために確保する面会を「月1回程度」とした。判決は双方の主張を比較し、「子が両親の愛情を受けて健全に育つには、夫を親権者にするのが相当」と判断した。
30日に記者会見した夫は「娘には、双方の親から愛情を受けて育つ権利がある。100日の面会交流は負担だが、親の責任として守りたい」と話した。代理人の上野晃弁護士は「これまでは子と長く同居している親の意向が重視されてきた。双方の親の姿勢を比較し、もう一方の親も子育てに関われるよう配慮した方を、親権者としたのは画期的だ」と評価した。
最高裁によると、14年に離婚について調停などが開かれた約1万9700件のうち、母親が親権者となる割合は約93%と、圧倒的に多い。離れて暮らす子どもとの「面会交流」や親権の問題に詳しい棚村政行・早稲田大教授(家族法)は「子どもの利益の観点から、面会交流に積極的な親を親権者に選んだのは、評価できる。『母親優先』の原則を修正したのも注目すべきだ。ただ、親権が移っても面会がどこまで実現されるかは不透明で、子の利益を第一に考え、両方の親が養育に責任を持つ制度の実現に取り組むべきだろう」と話した。(千葉雄高、市川美亜子)
夫婦の別居に伴い、幼い娘を妻に連れて行かれ、約5年間面会させてもらえなかった埼玉県の男性(40代)が、娘の「親権」などをめぐって妻と争っていた離婚裁判で、千葉家裁松戸支部は男性を親権者と認める判決を出した。男性側の代理人によると、子どもと一緒に暮らしていない親が親権を得るのは珍しいという。判決は3月29日付。
男性側の代理人の上野晃弁護士は3月30日、東京・霞が関の司法記者クラブで会見し、「フレンドリーペアレントルール(寛容性の原則)を明確に採用した、おそらく初めての画期的な判決だと思う」と語った。
●親権をめぐる「寛容性の原則」と「継続性の原則」
寛容性の原則とは、もう一方の親と子どもとの関係をより友好に保てる親を「親権者」とする考え方だ。これに対し、裁判所は従来、子どもと一緒に暮らしてきた「継続性の原則」を重視してきた。
上野弁護士は「これまで子どもを連れて別居した場合、その実態を重視して、理由はどうであっても、子どもはそのままそこで生活するようにしましょう、としてきた。(子どもと同居している方の)親の機嫌を損ねたら子どもの福祉を損なうという理由があった」という。
しかし、今回は、元妻が男性に対し、どれだけ子どもとの面会時間を認めたのかが、判決を大きく左右したという。
判決文などによると、男性は妻に対し、年約100日の面会を認め、約束を破った場合は親権者変更の理由になることなどを提案。これに対して、妻は月に1回、2時間程度の監視付きの面会しか認めないと主張していた。
千葉家裁松戸支部は、妻が突然、娘を連れて別居したことや、約5年間にわたり男性と面会させなかったことなども考慮し、男性を親権者とした方が、両親に会える機会が増え、娘の利益になると判断した。
この裁判は、妻が離婚を求めて提訴し、同時に娘の親権も求めていた。今回の判決で、妻の請求通り、離婚は認められたが、親権は妻ではなく、夫に認められた。
上野弁護士は「(裁判所が)これからは『もっといい親をやります』とアピールした方を親としますよ、という大岡裁きの方向性に舵を切った判決なんじゃないか」と印象を語った。
●「子どもにとって最良の環境を」
記者会見に出席した男性は次のように語った。
「いくら私が妻を嫌いであっても、娘からしてみれば大切な母親。夫婦の関係は仮に切れるとしても、親子の関係は切ってはいけない。(娘が)両方の親から愛情を受けて育っていると感じられる環境を作っていきたかった」
男性が娘と最後に会ったのは、2歳のとき。娘はこの4月から小学3年生になる。男性は会見後、弁護士ドットコムニュースの取材に対して、「別居してからは6年になる。娘には時間がかかって申し訳ないと思う。これからの生活に不安がないといえば嘘になる。だからこそ、娘とずっと暮らしてきた元妻とは、情報の共有などで協力していかないといけない」と語った。
その上で、子どもの親権をめぐり、争っている親たちに向けて、次のようなコメントを口にした。
「離婚するのは親の勝手かもしれないが、そのしわ寄せが子どもに来てはいけない。連れ去った側は、相手が嫌いだから、なるべく子どもを会わせたくないだろう。でも、自分が嫌いだからといって、子どもにもそれを強いないでほしい。子どもにとって、最良の環境を考えてほしい」
弁護士ドットコムニュース編集部
別居時に妻が連れ去った娘の「親権」 5年間会えなかった「夫」が裁判で勝ち取る
夫婦の別居に伴い、幼い娘を妻に連れて行かれ、約5年間面会させてもらえなかった埼玉県の男性(40代)が、娘の「親権」などをめぐって妻と争っていた離婚裁判で、千葉家裁松戸支部は男性を親権者と認める判決を出した。男性側の代理人によると、子どもと一緒に暮らしていない親が親権を得るのは珍しいという。判決は3月29日付。
男性側の代理人の上野晃弁護士は3月30日、東京・霞が関の司法記者クラブで会見し、「フレンドリーペアレントルール(寛容性の原則)を明確に採用した、おそらく初めての画期的な判決だと思う」と語った。
●親権をめぐる「寛容性の原則」と「継続性の原則」
寛容性の原則とは、もう一方の親と子どもとの関係をより友好に保てる親を「親権者」とする考え方だ。これに対し、裁判所は従来、子どもと一緒に暮らしてきた「継続性の原則」を重視してきた。
上野弁護士は「これまで子どもを連れて別居した場合、その実態を重視して、理由はどうであっても、子どもはそのままそこで生活するようにしましょう、としてきた。(子どもと同居している方の)親の機嫌を損ねたら子どもの福祉を損なうという理由があった」という。
しかし、今回は、元妻が男性に対し、どれだけ子どもとの面会時間を認めたのかが、判決を大きく左右したという。
判決文などによると、男性は妻に対し、年約100日の面会を認め、約束を破った場合は親権者変更の理由になることなどを提案。これに対して、妻は月に1回、2時間程度の監視付きの面会しか認めないと主張していた。
千葉家裁松戸支部は、妻が突然、娘を連れて別居したことや、約5年間にわたり男性と面会させなかったことなども考慮し、男性を親権者とした方が、両親に会える機会が増え、娘の利益になると判断した。
この裁判は、妻が離婚を求めて提訴し、同時に娘の親権も求めていた。今回の判決で、妻の請求通り、離婚は認められたが、親権は妻ではなく、夫に認められた。
上野弁護士は「(裁判所が)これからは『もっといい親をやります』とアピールした方を親としますよ、という大岡裁きの方向性に舵を切った判決なんじゃないか」と印象を語った。
●「子どもにとって最良の環境を」
記者会見に出席した男性は次のように語った。
「いくら私が妻を嫌いであっても、娘からしてみれば大切な母親。夫婦の関係は仮に切れるとしても、親子の関係は切ってはいけない。(娘が)両方の親から愛情を受けて育っていると感じられる環境を作っていきたかった」
男性が娘と最後に会ったのは、2歳のとき。娘はこの4月から小学3年生になる。男性は会見後、弁護士ドットコムニュースの取材に対して、「別居してからは6年になる。娘には時間がかかって申し訳ないと思う。これからの生活に不安がないといえば嘘になる。だからこそ、娘とずっと暮らしてきた元妻とは、情報の共有などで協力していかないといけない」と語った。
その上で、子どもの親権をめぐり、争っている親たちに向けて、次のようなコメントを口にした。
「離婚するのは親の勝手かもしれないが、そのしわ寄せが子どもに来てはいけない。連れ去った側は、相手が嫌いだから、なるべく子どもを会わせたくないだろう。でも、自分が嫌いだからといって、子どもにもそれを強いないでほしい。子どもにとって、最良の環境を考えてほしい」
(弁護士ドットコムニュース)
母子交流条件 父に親権 別居夫婦離婚 共同の子育て重視
5年以上別居している夫婦が離婚の是非と長女(8)の親権を争った訴訟で、千葉家裁松戸支部(庄司芳男裁判官)は29日、離婚を認めた上で、夫を長女の親権者とし、妻に同居の長女を引き渡すよう命じる判決を言い渡した。相手に子供との面会交流を認める日数を、「月1回」とした妻よりも、「年間100日程度」を提案した夫の方が親権者にふさわしいとする異例の判断を示した。
日本では離婚後に父母のどちらかが親権を持つ「単独親権制度」がとられ、面会交流は夫婦が調停で合意しなければ実現しにくいが、今回の判決は面会日数や場所なども詳細に定めた。離婚後も長女が両親の愛情を受けて育つことを重視した判断だが、長く同居した親から子供を引き離すべきではないという考え方も根強く、議論を呼びそうだ。
判決によると、妻は夫婦関係がうまくいかなくなった2010年、夫に無断で長女を連れて実家に戻った。同年9月を最後に面会を拒み続けていた。
訴訟で、妻は離婚を求めるとともに、別居から6年近く長女と暮らしており、「長く親しんだ環境から引き離すのは長女の福祉に反する」と主張した。
しかし、判決は、夫が妻と長女の面会交流について、隔週末に48時間のほか連休や誕生日も隔年で認めるなど、年間100日程度の計画を提示したことを評価。「長女は、父親が用意する整った環境に身を置くことになり、妻側の懸念は杞憂に過ぎない」と指摘した。
埼玉県内に住む父は「これまでは、子供と一緒に生活している方が有利になる面があった。今回のように離婚後も両親が子供に関わる点を重くみる判断が定着してほしい」と話している
民法766条改正、ハーグ条約批准後も前例変更を拒否し、親権者決定にあたり、監護の継続性に固執していた家裁が、フレンドリーペアレントルール による親権者決定をした画期的な判決です。
「わが子」に会いたい~離婚と面会交流(5・完)「子の利益」当事者任せ
面会交流について改正民法は「子どもの利益を最優先に両親が協議する」とし、実現を保障しているわけではない。当事者任せの現状で、離婚を経た両親が同じ「子の利益」を描くことは容易でなく、「会えない親子」は絶えない。こうした中、両親による子育て(共同養育)の意義を伝える取り組みが県外の自治体や民間団体によって始まっている。一方、離別親(別居する親)の団体はより踏み込んだ法制化を求めて声を上げる。
兵庫県明石市は民法改正を受けて2014年、全国に先駆けて「こども養育支援ネットワーク」の運用を始めた。
同市が窓口で渡す離婚届はぶ厚い。両親が面会交流の頻度や養育費の額などを書き込み、契約書とする「養育に関する合意書」や、「離れて暮らす親と気軽に会えるようにして」などと子どもの気持ちを記した冊子などが挟んであるからだ。
市は関係機関と連携を強化。意識啓発にとどまらず、元家裁調査官らが面会交流や養育費の相談に応じる専門相談などの体制も充実させた。市民相談室の村山由希子課長は「窓口を持つ基礎自治体として、渦中の両親に関わりを持てる特徴を生かしたい」と話す。
民間団体も先進的な取り組みを始めた。東京都の「離婚と親子の相談室らぽーる」は昨年10月、厚生労働省の調査研究事業を受託して「親教育プログラム」を開講した。参加者は離別親が多く、共同養育の意義を伝えたい同居親はわずかだが、ある父親は「少し前まで当事者間のもめ事としか見られなかった。コツコツと訴えてきて良かった」と、今後の周知に期待する。
らぽーるはこのほか、弁護士同席の下で両親が養育計画書を作る「ADR(裁判外紛争解決手続き)」も手掛け、計画書を最終的に公正証書にするよう勧めている。
離別親団体は活発に声を上げる。全国組織「親子ネット」と関係団体は連絡会を作り、面会交流の拡充や、離婚前の子どもの連れ去り禁止などを盛り込んだ「親子断絶防止法」の制定を求めて陳情や署名運動を展開している。これを受け14年、国会に超党派議員連盟が発足し、今年中の法案提出を目指して始動している。
一方、県内の動きは鈍い。自治体支援は乏しく、相談、啓発、支援と網羅した「明石モデル」は見られない。面会交流支援は県外の団体が担い、知名度の向上や、支援者確保が目下の課題だ。
団体活動も浸透の途上にある。浜松市の会社員半田伊吹さん(41)は12年、情報交換や交流を目的に「浜松親子の会」を設立したが、問い合わせは少なく、県外との温度差を感じている。半田さんは「諦めて『なかったこと』(子どもはもともといないこと)にする人が多いのかもしれない」と県内事情を推測。「こういう問題は離別親に理由があるとレッテルを貼られがち。語り合いに来る以前の問題で、誰にも言えないまま苦しんでいないか」と指摘する。
わが子に会う―それだけのことが当たり前にできる社会になるには、まだ壁が高い。
<メモ>県がひとり親家庭を対象に実施した2014年度の調査で、6割以上が面会交流の取り決めをせずに離婚し、面会交流を続けている家庭は4分の1程度にとどまることが分かった。離婚の9割は裁判所を介さない「協議離婚」が占める中、親権だけを決めて離婚届を出し、そのまま親子交流を絶つ事例の多さがうかがえる。こうした傾向は全国で共通し、窓口での啓発が行政課題になりつつある。
「わが子」に会いたい~離婚と面会交流(4)心の整理できずに困惑
厚生労働省の調査によると、1950年代、親権者は父親が過半数を占めたが70年代に逆転し、90年代以降は「母親8割」の状態が続いている。面会交流を求めても会えないのは、父親が多い。親権を得た母親たちはなぜ、子どもを会わせたがらないのか。
静岡市でシングルマザーを支援する「シングルペアレント101」は昨年、離婚数年の段階で、悩みながら面会交流を続けている母親たちの座談会を設けて実態を探った。「結婚中のつらかった出来事を思い出す」。多くがそう語り、離婚の遺恨を抱えたまま、面会交流に臨むことに困惑していることが分かった。
県中部の30代女性は「離婚調停で絶対に顔を合わせないよう配慮してもらったのに、離婚後の面会になると『あとは2人で』と放り出される」と不満を語る。40代女性は「元夫に会うと、相手が絶対優位のパワーバランスに引き戻されて苦しい。日程調整を求める普通の文面のメールさえ『会えなければこちらから行く』と脅迫のように感じる」という。
母親は面会交流に同伴しなくても良い。父親の中にも「同伴されると、子どもが顔色をうかがう」と反対する声が根強い。しかし母親たちは「自分が見ていないと不安」と口をそろえる。
子どもが、面会で父親への思慕を募らせていくことに戸惑う母親も少なくない。県中部の30代女性は娘に「パパと一緒に暮らしたい」と懇願された。子どもの心情をくめば、元夫ばかりを悪者にできない。「とっさに『ママがけんかしちゃった』と自分のせいにした。気持ちのやり場がない」と話す。
面会の翌日、息子が保育園で「パパに会えてうれしかった」と打ち明けたのを、保育士に聞いた40代女性は「心苦しかった半面、『子どもにとって良かった』と、初めて思えた」と複雑な心境を吐露した。離婚調停に際し、調停委員から面会交流が「子どもの利益」と促されても理解できなかった。「でも信頼できる保育士に聞いたらすんなり受け入れられた」。息子は最近、元夫に自分の携帯電話を介してメールを送り始めた。「まあ、いいか」と黙認できるようになった。
「101」の田中志保代表は「日程調整や同伴を一人で行うことは、心理的な負荷が大きい。離婚から数年と間もないうちは特に、前向きにはなれない」と指摘し、第三者による継続支援の必要性を強調する。
県内には少ないものの、面会交流の付き添いや日程調整などを、両親の同意の下で行う支援団体は各地で増えつつある。「びじっと」(横浜市)の古市理奈代表理事も「支援を受けて初めて、冷静になる親は多い」と語る。
半年ぶりに再会したゼロ歳児が離別親に抱かれると急に泣きやんだり、会えなかった寂しさを子どもがぶつけ、絆をつくったりする場面を見てきた。古市さんは「子は親を忘れない。両親がどんな人かを知ることが子どもの自己肯定につながり、将来的な自立に結び付く」と言い切る。悩んでいる両親には、支援を新しい福祉として意義を見いだしてほしいと願っている。
<メモ> 県内にスタッフがいる面会交流支援団体は、「びじっと」(横浜市)と「ウインク」(千葉県船橋市)の2団体がある。県内に本部を置く団体はまだないとみられる。県は本年度、(1)県内在住(2)児童扶養手当の受給と同様の所得水準である―などの条件を満たす両親を対象に、交流支援事業を実施した。
「わが子」に会いたい~離婚と面会交流(3)同居の祖父母 かやの外
「孫の誕生日プレゼントに買ったけれど、あげられなかった」とおもちゃを持つ康子さん=2015年12月
親の共働きなどで「孫育て」に関わる祖父母は増えているが、面会交流の当事者は父母であるため、祖父母は家族として暮らしていても「非当事者」にされてしまう。静岡県西部の康子さん=60代、仮名=は一緒に暮らしていた初孫の男児(7)と1年半、会えずにいる。息子と離婚訴訟中の妻が、孫を連れていったためだ。
病院で初めて抱いた瞬間からとりこになった。豪快な笑い方が愛らしく「笑い袋!」とからかった。しかし、息子夫婦の仲が険悪になるにつれ、孫は妻の前で康子さんを無視するようになった。孫は「ばばあ」とののしった夜、妻が出掛けると突然、部屋に遊びに来た。何げない会話に無邪気に笑う孫を見て、「大人に振り回されてかわいそう」と感じた。
ある日、妻は荷物をまとめて実家に帰った。「ママ、なんで」。残されて泣く孫をなだめながら、いつかこの子もいなくなるのでは―と不安にかられ、「離れたら、二度と会えなくなる」と言い聞かせた。孫が時折寂しげな表情を見せるのが気になったが、康子さんには、妻の存在をうかがわずに、孫といつでも笑い合える夢のような日々だった。
1カ月後、離別の時は突然やって来た。2人が散歩していた時、路上にふいに車が止まり、中から妻が出てきた。連れ出す機会をうかがっていたと感じた。康子さんは孫を抱きしめて抵抗したが、妻は引き離し、「走れ!」と叫んだ。久々に母の顔を見てうれしかったのだろう、孫は車の方へ走って行ってしまった。数日後、妻は離婚調停を申し立てた。
孫との面会交流が法的に認められた調停は1977年にさかのぼる。この時は祖父母が不在の親にかわって一定期間、孫を育てていたという特別な事情があった。民法は面会交流を「父母間」の協議事項とするため、康子さんのような一般的な祖父母には、夫婦の争いが決着して初めて、「子どもと孫の面会に同伴する」という形でチャンスがくる。しかし、それも親権者の意向が影響するため、会えるかどうかは分からない。
息子夫婦の調停は長期化した末に決裂し、訴訟に移行した。部屋には孫が書いた「パパの似顔絵」が張られ、食卓に子ども用の椅子、玄関には小さな自転車が置かれたまま。家は時が止まったかのようだ。「息子のつらさ、孫への思いと二重の苦しみを味わっている」と康子さんは語る。
弁護士の尽力で面会が実現し、息子は1年ぶりに孫と会えることになった。「これでお手紙を書いてね」と息子に託そうと、前日、康子さんは文具店でプレゼント用のレターセットを探した。孫が好みそうな新幹線のイラストを見つけたが、「妻の気分を害したら、息子の次の面会がなくなるかも」と思い、数時間迷った末に諦めた。
息子は、少し成長した孫の写真を撮ってきた。携帯電話の待ち受け画面にして、毎朝「おはよう」と声を掛ける。「近所の友達は皆、そんなこともせず、孫の話題に花を咲かせている」。毎晩、康子さんは風呂の中でだけ涙を流す。
<メモ>離婚などで別居する離別親が2008年に発足させた全国組織「親子ネット」に加盟している祖父母らが09年12月、祖父母の会を結成した。「孫を愛するのは自然な感情だ」「愛してくれる人が多いほど、子どもの利益になるはず」などとして、国会議員への要望を続けている。海外ではフランスなどで、祖父母の面会交流を法的に認めている。
「わが子」に会いたい~離婚と面会交流(2)親権争い さらなる遺恨く
最初に実家に帰った時、娘たちに着せていた服を見るさゆりさん。「会えないのが苦しくて、ずっとしまい込んだままだった」と涙ながらに語った=昨年12月
日本が先進諸国で唯一、採用している「単独親権制」は離婚後、片方の親しか親権者になれない。面会交流の保障がない現状は、「親権を失えばわが子に会えなくなるかもしれない」という懸念を生み、両親の親権争いは激化する。対立は離婚後も遺恨となり、面会交流の実現をさらに難しくしている。
県中部のさゆりさん=40代、仮名=は、4年近く、娘たちに忘れられた母だった。2010年春、同居していた義父との関係が悪化し、5歳と2歳の娘を連れ実家に戻った。春休みが明け、「幼稚園に行きたい」と言う長女がかわいそうで、迎えに来た夫に2人を渡した。しばらくして「親子4人だけで暮らしたい」と訴えようと自宅に戻ったが、夫に追い返された。別の日、娘の顔が見たくて習い事の会場に行くと、そこにいた義父に叱られた。
円満解決を目指し静岡家裁に調停を起こしたが決裂し、離婚は避けられなくなった。親権争いは、その時に育てている親が有利になる。さゆりさんが「あのまま娘と一緒に暮らしていれば、自分が親権者になれた」と気付いた時には遅かった。身を切られる思いだった。事態を打開するには、元夫について「親の適性がない」と批判を繰り返すしかなかった。
「気分を害したのだと思う。それが、元夫が娘を私に会わせたくなかった最大の理由かも」。離婚成立時に決まった「1カ月に1回」の面会交流は、約束に反して「半年に1回、2時間、公園で」とされ、娘のリュックに録音機が入っていたこともあった。ある日、次女は面会交流に同伴した元夫の妹を「ママ」と呼び、さゆりさんには「おばちゃん」と言った。隣にいた長女は申し訳なさそうに沈黙した。
さゆりさんが面会交流を求めた審判は14年、「月1回6時間、母子のみで」と決定し、1年半ぶりに交流が再開した。すると、長女は覚えていると言わんばかりに冗舌に思い出を語り、「ママの気持ち、分かるよ」と言った。寂しさの中でも母を肯定しようとする、いちずな思慕を感じた。
1990年の「子どもの権利条約」は、子が離別親(別居する親)に会う権利をうたう。各国とも批准を機に、離婚後も両親が子の成長に責任を持つ「共同監護」の制度を整え、離別親と子の絆も重視してきた。同条約を批准していないものの、いち早く共同親権を採り入れた米国は「隔週、2泊3日」の面会が主流といわれる。日本は94年に批准したが、現在も単独親権のままで、面会は「月1回、2時間」が多く、格段の差がある。「単独親権が、離別親を切り捨てている」と批判する声もある。
最近、次女もさゆりさんを「ママ」と呼ぶようになり、母子の絆をようやく取り戻せたと実感している。毎回、時間を惜しむように話す娘たちを見て「自宅に泊めて、手料理を振る舞いながら思い付くままに話したい」という夢も膨らみ始めた。しかし、親権者でないさゆりさんは、親であっても、親ではない。実現するには、元夫の“許可”を得るか、再び会えなくなるリスクを覚悟して調停を申し立てるしか方法がない。
<メモ>親権 未成年の子の親権は夫婦が離婚協議をする際、自分たちでどちらかに決める。双方が親権を主張し、争いが生じた場合などは、裁判所の指定を受けることもできる。親権者の判断では「子の意思」「監護の継続性(子の環境を変えないこと)」が重視される。特に幼児の場合、後者が重んじられる傾向が強い。
「わが子」に会いたい~離婚と面会交流(1)裁判勝っても保障なく
「息子との思い出の品もなくなってしまった」と語る幸二さん=2015年12月
親が離婚した未成年の子は全国で22万人を超える(2014年、厚生労働省調べ)。別居する親子が定期的に会う「面会交流」は11年に改正した民法で初めて明文化され、子の利益を最優先に協議するように促しているが、14年の日本弁護士連合会(日弁連)調査では、子と別居している親の4割が面会できていないことが明らかになった。親子がなぜ会えないのか。課題を追った。
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静岡県内に住む幸二さん=40代、仮名=は、街で家族連れを見るのがつらい。元妻が離婚前に実家に連れ帰ったまま、2年間会えずにいる小学生の息子を思い出すからだ。「なぜ自分だけこうなってしまったんだろう」
息子と会話したのは、離婚調停中の「面会交流」が最後だった。肌寒い日、待ち合わせ場所の公園の入り口に15分前に着き、「会わない間に嫌われていないかな」とどきどきしながら待った。心配をよそに、息子は「パパ!」と全力で駆け寄ってきた。鬼ごっこやボール投げといったいつもの遊びに、息子は歓声を上げた。幸二さんは同居中に風呂で遊んだことや、送迎をした車内でのたわいない会話を思い出し、胸が熱くなった。
「次も会おうね」という父子の約束は、かなわなかった。離婚成立から少したち、次回の日程調整を求めるメールを元妻に送ったが、連絡が途絶えた。親権を譲った直後の「強行」だった。
静岡家裁に面会交流を求める調停を起こしたが、不成立になった。審判に移行して「月に1回、市内で2時間程度面会をする」と念願の決定を受けたが、元妻は不服として東京高裁に抗告。高裁が棄却すると、さらに特別抗告をした。高裁は退け、幸二さんの勝訴が確定した。それでも元妻は、息子を会わせようとしない。
決定確定後、同居の親が面会に応じない場合は金銭を求める間接強制という手段がある。しかし幸二さんには、元妻に送った養育費の一部が“罰金”名目で返ってくるだけに思える。「裁判に勝ち続けても、願いはかなわない。仕事を休んで法廷闘争に時間を費やす間、息子は成長していってしまう」
養育者を自分に変更するよう請求することもできるが、幸二さんは転校など息子の負担を考えるとためらってしまう。「面会交流」が離婚時の協議事項として改正民法に明文化され、夫婦の感情的な対立とは別に、子の視点から検討するよう求めた意義は大きい。しかし、別居する親子が会える保障はない。幸二さんのように裁判を通じて取り決めても、守らない親への強制力はなく、課題は残ったままだ。面会交流問題に詳しい馬場陽弁護士=名古屋大法科大学院非常勤講師=は「現状では子どもの利益を守れない」と警鐘を鳴らす。
忘れられるのが怖くて、幸二さんは昨秋、息子の運動会に行った。一瞬目が合った息子に顔を背けられ、「嫌われている」と感じた。愛情を直接伝えるチャンスがないまま、年があけた。「打つ手なし」の絶望的な状況は疲弊を招き、最近は「面会を諦めれば、自分が前に進むことができる」とさえ思い始めた。
<メモ>面会交流 面会交流は過去に面接交渉と呼ばれ、50年以上の歴史がある。基本的には両親間の協議に任されているが、協議離婚ではなく、裁判所での調停や審判、訴訟では、面会交流について具体的な頻度や場所を決めることが多い。厚労省によると、現在、親権は8割が母親であり、離別親は圧倒的に父親が多い。2014年、県内の離婚件数は6400件。離婚件数は減少傾向にある一方、静岡家裁によると、面会交流を求める調停の申立件数は県内で340件で、10年前の倍以上だった。増加の背景には、男性の育児に対する意識の高まりがあるとみられる。
面会交流:離婚、親子の別れにしない 子どもとの面会支援、中区のNPOが機会作り 14日に講座 /岡山
離婚などが原因で別居を余儀なくされている親と子が会う「面会交流」を、中区のNPO法人「岡山家族支援センターみらい」が支援している。「子どもにとっての幸せは父親と母親の両方と会えること」との考えに基づき、両親の間に入って面会の機会を作っている。14日には面会交流について広く知ってもらおうと公開講座を開く。【五十嵐朋子】
両親が離婚などで別居した場合、その子どもが一緒に住んでいない方の親と会う機会は限られる。親同士の関係が悪く、話し合いが成立しないようなケースでは、きっかけさえ作ることができない。
同NPOは2013年、離婚調停などに関わる弁護士や調停委員らが中心となって設立した。双方の親と連絡を取り、面会交流の日程や場所などを調整し、定期的に会えるよう支援する。事前に面談を行い、希望があれば支援員が親子の面会の場に同席することもあるという。
元家事調停委員で、NPOの理事長を務める近藤みち子さんは「夫婦の別れが親子の別れになってはいけない」と話す。月1回程度の面会でも子どもは楽しそうに時間を過ごすといい、ボウリングや買い物を楽しむ親子もいる。近藤さんは「調停の場では子どもに何の決定権もない。『両方の親に大事に思われている』と確信しながら育つことがとても大事」と強調する。
面会交流については、法律で権利や義務に関する明確な規定がなく、重要性が認識され始めたのはここ数年という。近藤さんは「まだ『当たり前』になっていない。多くの人に関心を持ってほしい」と訴えている。
14日の公開講座は午後6時から北区南方1の岡山弁護士会館で。元家裁調査官で、家庭問題情報センター主任専門員の山口恵美子さんが「面会交流と子どもの心」と題して講演する。入場無料、申し込み不要。問い合わせは岡山家族支援センターみらい(070・5678・0226)。
離婚訴訟で増えつつある「冤罪DV」 証拠なく認定されるケースも 夫には「おっさん、ざま~みろ」とメール
「冤罪(えんざい)DV」という言葉がある。子供を連れて別居した妻が、離婚の理由として裁判で「夫からDV(ドメスティック・バイオレンス)を受けた」と虚偽の主張をすることを指すが、最近の家事法廷でDVを認めないケースもみられる。“冤罪”を晴らした夫は「かつての痴漢冤罪と同じで、女性の言い分がそのまま認められがちだ」と指摘。専門家からは「裁判や行政手続きを有利に運ぶための虚偽の主張もある」と慎重な判断を求める声もあがっている。
DVの証拠写真を捏造?
関東地方の40代男性は「暴力をふるわれた」として40代の妻から離婚や慰謝料などを請求されたが、家庭裁判所は平成23年10月、妻の訴えを棄却した。妻は男性が「夕食を準備した食卓をひっくり返した」「馬乗りになって髪の毛を引っ張った」「就寝中に起こし頭を殴った」と主張していたという。
男性は否認し、家裁も判決で「DVを裏付ける証拠はない」と判断。妻が提出したあざの写真について、妻が撮影日や撮影場所を後になって訂正したり、「(夫の)暴行によるものではない」とあいまいな発言をしたことなどを重視したとみられる。
「ローリスク、ハイリターン」のDV主張
一方、妻と同居する長女の監護権をめぐる審判では、家裁は今年5月、妻が男性の暴言や暴力を恐れながら生活をしていると保健師に相談していた経緯を認めた上で、妻を長女の監護者として認めている。
男性は控訴し、「私はDVはしていない。妻はあざの写真を自宅で撮影したといっているが、背景が自宅ではない。女性が『DVにあっている』というと、行政は調査もせずに認めてしまいがち。緊急保護の必要性は分かるが、かつての痴漢冤罪のようだ」と話す。
「裁判で離婚するには理由が必要なので、DVを主張することがある。子供の親権や慰謝料の獲得にもつながる。特に、精神的なDVは主観的な部分もあり認められやすい。嘘がばれても罰せられることはほとんどなく、まさにローリスク、ハイリターンだ」と話すのは、離婚裁判で代理人を務めたことがある東京都内の弁護士。「中には夫に暴言を吐いたり暴力をふるったり挑発して夫の抵抗を誘発し、録音したり診断書を取る“計画的犯行”としか思えないケースもある」と内情を明かす。
客観的な証拠なく認定
客観的な証拠がないにもかかわらず、夫による妻へのDVが認められた判決もある。関東地方の40代男性は40代の妻が当時2歳の娘を実家に連れ去ったとして、身柄の引渡しなどを求めて家裁に提訴したが、24年2月に男性の請求を退ける判決が下された。
判決では、妻が物証なしに主張した(1)男性が妻にはさみを突きつけた(2)妻に性行為を強要した(3)荷物をまとめて出て行けなどと怒鳴った-などを認定。逆に、男性が物証を示して主張した(1)妻が親しく付き合っていた男性の写真を部屋に置いて家出した(2)娘の利益を最大限尊重した養育計画を策定していた-などの事実認定をしなかったという。
DVは家庭という“密室”の中で行われるため証言に頼らざるを得ない部分もあるが、男性はこの判決をめぐり、「子供の利益を最優先する」と定める改正民法766条について「裁判官は立法者の意思を無視し、民法改正の趣旨を曲解して判決を下した」として名誉毀損(きそん)による国賠訴訟を起こしている。
妻と娘へ「二重DV」の疑惑も
さらに、妻へのDVと娘へのDV(性的虐待)の“二重の疑惑”をかけられたケースもある。
東海地方の男性によると、妻が長女を連れて家出。男性が長女の引渡しなどを家裁に申し立てたところ、妻は当初、「突き飛ばされた」「足蹴りされ青あざができた」と男性による身体的DVを主張。しかし、主張を裏付ける証拠は一切提出されず家裁は身体的DVを認めなかった。妻は離婚裁判で「新婚旅行の場所を決めるときからすでに罵られていた」などと言って、「言葉による精神的なDV、モラルハラスメントを受けた」との主張もしている。
「妻は計画的に怒らせようとしていたのでは…」
男性は「DVのときに通常求める慰謝料の請求もない。計画的にでっちあげたからだ」と指摘。また、「今にして思えば、妻は計画的に自分を怒らせようとしていたのではないか」と疑念を募らせる。
妻は家出の半年ほど前から、朝食は前日に炊いた米だけ出して二度寝するようになった。風呂から出ると、きれいなバスタオルがあるのにぼろ雑巾のようなタオルが出されていたことも…。自宅のパソコンで「今日は日曜日だけど、おっさん(男性のこと)は仕事だ。ざまあみろ」と書かれた妻のメールを見つけ、愕然としたという。
家裁は男性と長女の面会交流を認めたが、その直後、妻は「(妻への)DVを長女が目撃して恐怖を感じている」と医師に告げて長女を精神科に通院させ、「長女の通院・精神的不安定」を理由に面会をさせないようになった。さらに、「長女が性的虐待を受けた疑いがある」との通報があったとして、長女は児童相談所に一時保護された。しかし、児相は「性的虐待の有無は分からなかった」として長女を妻のもとに返還。その後、高裁では男性と長女の面会交流の必要性を認める決定が出されている。
男性からの相談も増加中
問題を抱える夫婦をサポートするNPO法人「結婚生活カウンセリング協会」(横浜市)のコンサルタント、大塚ガクさんは「DVは男性がするものというイメージが強く、女性が離婚したいと思ったときに“でっちあげDV”を使いやすい状況にある。外傷が残らなくても首の筋を違えたとか、けんか以外でできたあざを撮影して『夫からやられた』といってみたり、裁判の証拠となる材料が集めやすい。訴えられた男性からの相談も増えている」と話す。
厚生労働省によると、昨年の離婚者数は約22万人。司法統計では昨年の妻側の離婚の理由として「精神的に虐待する」が3番目、「暴力を振るう」が4番目に多かった。警察庁によると、配偶者からのDVの認知件数は昨年中に5万9072件で、11年連続で増加した。DV被害は拡大しており、被害者の救済は急務だ。
早稲田大法学学術院の棚村政行教授(家族法)は「最近はDV被害を訴える女性の支援機関が積極的な保護を打ち出していることもあり、当事者同士での話し合いが難しく、他方で自らが『冤罪DV』の被害者だと訴える男性も少なくない。DVの被害や内容に応じた対応が大切ではないか」と話し、夫婦双方が安心して相談できる相談機関の設置を提案している。
ハーグ条約:ネットで親子面会システム 政府構築は世界初
外務省は1日、国際結婚の破綻などで国境を越えて連れ去られた子どもの扱いを定めたハーグ条約に基づき、外国で離れて暮らす親子がインターネット上で面会できるシステムの運用を始めた。同省によると、政府がネット上の面会システムを構築したのは世界で初。
新システムは、親子がパソコンやスマートフォンに専用のアプリをダウンロードして利用する。テレビ電話のように、顔を見ながら全員が会話することができる。
面会には第三者として、外務省が委託する専門の支援者がネット上で立ち会う。不適切な発言があれば、強制的に会話を遮断できる権限がある。
ハーグ条約は日本で昨年4月に発効。政府は同条約に基づき面会支援を行っているが、子どもと暮らす親が別の親との対面に抵抗感を持つケースもあり、新システムを開発した。同省は「支援者が立ち会うことで、両親が安心して交流できる」と説明。豪州などが関心を示しており、情報提供を行う意向だ。【小田中大】
子どもの貧困率 過去最高に
厚生労働省によりますと、貧困状態にある17歳以下の子どもの割合を示した「子どもの貧困率」は、平成24年の時点の推計で16.3%と子どもの6人に1人に上り、調査を始めた昭和60年以降最も高くなっています。その背景には離婚などによってひとり親世帯が増えていることが指摘されています。
ひとり親世帯のおよそ9割は母子世帯で、大半が非正規で働き、年収の平均は180万円ほどと一般世帯の3割程度にとどまっています。母子世帯などのひとり親世帯の貧困率は54.6%でそのほかのすべての世帯の平均の4倍以上に上っているほか、子どもの大学などへの進学率も41.6%と全世帯の平均よりも30ポイント近く低くなっています。
このため、厚生労働省は来年度、ひとり親の就労を支援する専門の相談員を全国に配置したり、塾に通えない子どもたちへの学習支援などの対策を強化する方針です。このほか、専門家や支援団体から現金を給付するなどの直接的な支援を強化すべきだという指摘が出ていることから、厚生労働省は児童扶養手当の拡充を検討しています。
「子ども手続代理人」 最高裁が利用促す
家庭内のトラブルを巡る裁判所の審判や調停で、子どもが弁護士を通じて意見を述べる制度の利用件数が開始から2年余りで20件に満たないため、最高裁判所は制度の利用を促すための文書を全国の家庭裁判所に送りました。
虐待や離婚に伴う親権の争いなど家庭内のトラブルについて、裁判所の審判や調停の際に弁護士を通じて子どもの意見を聞く「子ども手続代理人」制度は2年前に始まりました。
こうした審判や調停の件数は去年は4万件余りでしたが、最高裁判所によりますと、制度の利用件数は開始後、確認できた範囲で16件にとどまっているということです。
これについて日弁連=日本弁護士連合会は実際には家庭裁判所の調査官が子どもの意見を聞くケースが多いため、制度が活用されていないとして弁護士が意見を聞くほうが有効な例を文書にまとめました。
それによりますと、裁判所による調査を親や子どもが拒否した場合のほか、子どもの言動が話を聞く人や場面によって変わる場合は継続的に関われる弁護士が対応するのが有効だとしています。
最高裁は日弁連と協議した結果、今月下旬、この文書を全国の家庭裁判所に送りました。最高裁は「文書にはどのような場合に制度が必要とされるか明確に示されているので、周知して適切な運用を促したい」としています。
離婚親権争いの「母親優先」は歪んでいる?父子面会交流妨害横行の実態
夫婦の別居や離婚後に、一緒に暮らしていない父と子どもが会う機会である「面会交流」を、親権または監護権を持つ妻が妨害する事例が多発している。離婚してしまえば夫婦は他人だが、子どもと父の親子としての関係が変わることはない。しかし、実の子どもなのに何年も会えないまま苦しんでいる男性が多くいるのだ。このような事態が起きている原因は、どのようなものなのだろうか。
まず、父母のどちらが親権者になるかを裁判所が決める場合、どちらが子の利益になるかを考えることとされている。しかし、離婚前に夫婦が別居し、その場合に母が子どもの面倒を見ている場合には、父が親権を取得することは事実上不可能である。なぜなら、子どもを混乱させない、また特に子どもが乳幼児の場合は母親といることが適切であるという観点から、「現状維持の原則」と「母親優先の原則」が司法の基本的な考え方となっているからだ。
たとえ妻が一方的に子どもを連れて出て行って別居したとしても、その事情はほとんど考慮されない。「子どもを連れて行った者勝ち」ということになってしまい、明らかに不公平だが、これが日本の司法運用の実情だ。実際、女性に子どもの連れ去りを勧めるかのような弁護士もいるという。
そして、面会交流を妨害するやり方としては、「子どもが精神的に不安定である」「会うことを嫌がっている」と、子どもの意思を強調して拒絶するパターンが多い。しかし、父としては子どもと一緒に住んでいないため、子どもの実情を自分の目で確認することも難しい。こうした母側の一方的な言い分に納得ができないのは当然だ。「子どもが精神的に不安定になっているのは、元妻が自宅から連れ去って環境を変えたからだ」「会いたくない、と母親に言わされているだけではないか」などと主張しても、裁判所や調停委員は、そんな男性の意見には冷たいことが多い。
●妻の言い分を鵜呑みにする日本の司法
離婚問題を多く扱う柳下明生弁護士は、面会交流の実態について次のように語る。
「残念ながら、妻の言い分を鵜呑みにしたかたちで調停を進められることが、まだまだ多い印象です。例えば、妻への配慮を強調して、『妻がもう少し落ち着くまではしばらく面会も我慢したほうがよい』『子どもが精神的に不安定になるので、写真や手紙などの間接的な交流から始めたほうがよい』と言われることもありました。具体的な面会の話になっても、『月に1回、ファミリーレストランで数時間』などと厳しい制限をつけられることも珍しくありません」(同)
従来、面会交流について法律上の根拠はなかったが、2011年の民法改正により明文で規定された(民法766条1項)。また14年に、「夫婦が同居した状態で子を連れ去って別居することを違法」とするハーグ条約に日本が加入したことで、親権・監護権に対する注目が高まってきた。
このような背景もあり、最近になって面会交流の妨害について裁判所の対応にも変化が表れている。例えば、面会交流の拒否を理由として親権者を妻から夫に変更した審判や、面会交流を意図的に妨害した場合に母親のみならず代理人の弁護士にも損害賠償請求の成立を認めた事例が出てきた。
こうした状況を反映して、調停でも面会回数が従来月1回だったものを月2回程度と夫側に有利に変更するものも増え、また、宿泊を伴う面会交流が認められるようになることも珍しくなくなってきているという。それでも、柳下弁護士は「月1〜2回の面会だけで十分な父子関係が築きあげられるかは疑問」と指摘する。
「日本以外の先進国では離婚後も共同親権を認めていることからすると、まだまだ不十分といわざるを得ません。すぐに共同親権を実現することが難しいとしても、父子で一緒に過ごす時間や機会をできるだけ増やす必要があるのは当然です。今後は、面会交流が認められることを前提として、具体的にどのような交流が子どもにとって利益となるのか、一定回数を確保することはもちろんのこと、交流の質を高めることを中心に話し合えるようになることを期待したいです」(同)
子どもに会うことよりも母親である元妻に会う口実として、あるいは嫌がらせとして面会交流を要求する男性も少なくないという。そうした場合は、安易に子どもに面会させることは不適切だといえる。ただ、夫婦が離婚に至った理由はさまざまで、男性側だけに非があるというわけではない事例も多くある。それにもかかわらず、別居している場合、子どもは母親といればいいという固定観念があるとしたら大きな問題だろう。司法には、「離れてしまった親子の接点」という重要な意味を持つ面会交流を、具体的事情に即して、さらに充実させていく姿勢が必要ではないだろうか。
(文=関田真也/フリーライター・エディター)
離婚後の「養育支援」に取り組む明石市長「養育費と面会交流の決定を義務化すべき」
離婚後の親子の「面会交流」や「養育費」の支払いといった問題に、全国の自治体に先駆けて取り組んでいる兵庫県明石市の泉房穂市長が8月22日、東京都内で講演した。面会交流の促進を求める団体「親子の面会交流を実現する全国ネットワーク」が主催した。
泉市長は、かつて弁護士として離婚案件を取り扱っていた際に、「子どもの面会交流や養育費を取り決めないまま離婚できる日本は遅れている。子どもの権利が守られていない」と疑問を感じるようになった。そうした約20年前からの思いが、市長に就任してからの取り組みの原点となっているという。
現在の日本の法律では、未成年の子どもをもつ夫婦が離婚するとき、親権者がどちらになるのかを決める必要があるが、面会交流の方法や養育費の金額について決めることは義務づけられていない。だが、泉市長は、子どもの権利を守るためには、「離婚の際に、面会交流や養育費について取り決めることを、原則必須にすべきだ」と主張する。
その段階に至るには、法律が改正されなければいけない。そのため、明石市としては「現行法の枠内でできる限りのこと」をしていく方針だという。
●天文科学館を親子の「面会交流」の場に
明石市が2014年に開始した取り組みの柱は、次の3つだ。
(1)弁護士資格や社会福祉士、臨床心理士の資格を持っている常勤職員らが、相談に応じる体制をつくった。
(2)離婚時に交わす養育費や面会交流の合意書について、参考となる「ひな形」をつくり、配布した。
(3)明石市と法テラス、関連団体による連絡会議「明石市こども養育支援ネットワーク」をつくった。
このとき明石市がつくった「こどもの養育に関する合意書」や「こどもと親の交流ノート(養育手帳)」などのひな形文書は、明石市のサイトからダウンロードできるという。泉市長は「どこでも通用するように、市内外の専門家に協力を仰ぎ、知恵を出しあってつくった。他の自治体の方にもどんどん利用・配布してもらいたい」と話す。
明石市は、その後も次々と施策を追加している。その一つは、明石市立・天文科学館を、親子の面会交流の場として無料で使えるようにしたことだ。同館にはプラネタリウムがあり、イベントの優先予約にも対応する。また、今年8月には、親が離婚・再婚・別居している小4~中3の児童生徒を対象とした、交流キャンプを実施したという。
泉市長は「自治体として本来すべきことの1割もできていない」として、取り組みはまだ始まったばかりだと強調。次のように今後の展望を語っていた。
「今後は、面会交流の実効性を担保するために、面会交流センターを立ち上げたい。また、離婚時に取り決めをした人へのインセンティブや、公正証書の費用負担など法的手続にかんする支援も考えていきたい」
弁護士ドットコムニュース編集部
明石の両親離婚の子ども養育支援事業、法制化目指す方針
超党派の国会議員でつくる「親子断絶防止議連」の事務局長、馳浩(はせひろし)衆院議員(自民)は22日、両親が離婚した未成年者の権利を守る明石市の事業を参考に新法制定を目指す方針を示した。離婚後の親子の面会交流や養育費の分担について夫婦間で取り決め、離婚届に添付するよう促す規定を盛り込む。遅くとも来年の通常国会で成立させたい考え。
馳氏は「親子の面会交流を実現する全国ネットワーク」(東京)が開いたシンポジウムで「明石の取り組みをナショナルスタンダードにしたい」と述べた。
明石市は2014年度から、親の離婚や別居に伴う子どもの養育支援事業を始めた。面会交流や養育費の取り決めを記す書類を離婚届と一緒に配るなど夫婦で考えてもらうようにしている。
馳氏は骨子案として離婚届提出時の規定に加え、夫婦の取り決めが円滑にまとまるよう国や自治体が支援する-ことなどを挙げた。
シンポに参加した泉房穂・明石市長は「明石の取り組みを導入する自治体が増え始めており、法制化で一気に広がる」と期待を寄せた。(段 貴則)
『ウォール・ストリート・ジャーナル』2015年6月16日の記事より
和訳
時事解説
米国から連れ去られた子らの返還に日本は非協力的
米国務省は新しい法律により子らの返還に弾みがつくものと期待していたが、日本側は言葉巧みに協力を回避している。
文:クリス・スミス
先月、米国国務省は、いずれか一方の親によって外国に連れ去られた米国の子供の返還を拒んでいる国々に関する第1回年次報告書を公表した。この報告書に掲載された違反者のワーストリストから漏れているのが明らかなのは、国際的に見て最も非協力的な国、すなわち日本である。日本政府は、もう一方の親の希望を踏みにじって子を国外に連れ出した親により日本国内に留め置かれている、現時点で50名以上にのぼる米国の子供たちに関する返還命令を全く出していない。それに加え、かつて米国から連れ去られ、米国にいる親の愛情と文化と保護を知ることなくすでに成人している数百人もの子供たちがいる。
昨年、「国境を越えた子の連れ去りの防止および返還に関するショーンおよびデイヴィッド・ゴールドマン法」が米議会を通過した。この法律は、米国務省が子の返還の支援を要請してから1年が経過しても連れ去り事案が未解決の場合には、当該の国々の責任を問うことを米国務省に対して義務づけている。「ゴールドマン法」の主たる提唱者として、筆者は、法の下におけるこの義務を米国務省に自覚させることが重要だと考えている。第一に、国務省は未解決事案の件数を年次報告書に正確に記載すべきである。第二に、国務長官は未解決事案が30%以上のすべての国、あるいは連れ去り事案の解決を支援する義務を果たしていないすべての国に対し、行動を起こす必要がある。日本に関して言えば、国務省はこの二点を実行しているとは到底思えない。
当初、本法は、この問題に対する日本の注意を喚起するために有効であると見られていた。日本政府は報告書で非協力的であると見なされ、違反者のワーストリストに載ることを非常に心配し、報告書の提出期日の直前になって政府高官からなる代表団をわが国に派遣し、スーザン・ジェイコブス大使と面会し、コンプライアンスの欠如について説明を試みた。
この面会により、国務省はこれ以上日本の責任を追及するまでもないとの感触を得た。国務省はその後、本法の要求に忠実な形で報告書を作成せず、各国の「未解決」項目にゼロがずらりと並ぶリストを連邦議会に出し、さらに悪いことには、日本の連れ去り事案の解決率を43%と記載した。
何年もかけて自分たちの子供をわが家に取り戻そうとしてきた50名以上の米国人の親は、ショックをうけ、悲しみに打ちひしがれた。自分たちの国が、子供を取り戻そうとする彼らの努力を、新法の制定によってようやく後押ししてくれたと考えていたからである。だが国務省は、実質的な影響力行使の機会を無駄にして、ゴールドマン法の回避を図った。
日本に責任を負わせることに失敗した国務省は、報告書そのものの権威を失墜させ、その意義を損なっている。他の国々はこれを政治的な取引と見なしている可能性がある。本来非常に有効な外交手段となり得たはずの機会を、まさに無駄にしたことになる。
さらに、法が要求しているにもかかわらず、国務省が依然として各国の未解決事案の実際の件数の明示を拒んでいることは、米政府は米国から連れ去られた子供たちの返還の成否に関して嘘をつかないはず、と信じているすべての米国人を苦しめるだろう。たとえば筆者は国務省に対し、インドにおける未解決事案の件数を繰り返し質問してきたが、当局は一貫して非協力的であった。
連邦議会は透明性と行動を推し進めるためにゴールドマン法を通過させた。だが国務省は、連れ去られた米国の子供たちのうち、家族と再会できたのは半数をはるかに下回る数にすぎないという現状を、永久に固定化しようとしている。
親による国境を越えた子の奪取は、その子供たちを愛し、子供たちが知る権利を持つもう片方の取り残された親から彼らを引き離すことにより、彼らをわが家から引き裂き、その生活の根を抜くことになってしまう。連れ去られた子供たちは、しばしば親との関係性、自らのアイデンティティの半分、自らの文化の半分を失うことになる。子の連れ去りは、子の虐待である。
連邦議会はゴールドマン法を満場一致で通過させることにより、こうした家族の再会のためにあらゆる労を惜しまない姿勢を示していた。だが、法というものは実施されてこそ意味がある。6月11日の連邦議会の聴聞会は、子供を連れ去られて苦悩する親たちにスポットライトを当てたものであった。今回は日本、インドなどでも聴聞会が行われた。国務省が聴き取った意見を銘記し、将来的な施行に向け最後までやり通してくれることを望んでいる。
* スミス氏はニュージャージー州4区選出下院議員
(赤坂桃子訳)
国際結婚破綻後もTV電話で親子面会 外務省新システム
結婚が破綻(はたん)したため子どもが日本、親が外国に別れて暮らす場合、インターネットを使ったテレビ電話で面会交流できるシステムを今月、外務省が導入した。子連れで日本に帰国した母親が、夫婦間暴力(DV)の被害者だったような場合に対応したもの。第三者がやりとりを監視することで、子どもにとっても安心感がある仕組みだ。
国際離婚のトラブル増加を背景に、日本政府は2014年1月に「ハーグ条約」に署名し、同年4月に発効した。片方の親が子を国外に連れ出した場合、もう片方の親は、元の居住国に子を返すための援助のほか、子と面会交流をするための援助を加盟国に求めることができる。
日本政府への面会交流の援助申請は14年度、返還の援助申請44件を上回る69件あった。だが、子と住んでいる親が元配偶者と会わせるのを嫌がり、実現していないケースも多い。DV被害者からの相談も数件あったという。
システムは、両親が合意すれば自宅のパソコンやスマートフォンで利用可能。第三者が通信をモニタリングし、面会する親が子に不適切な発言をした場合は回線を切ることができるため、同居する親に対する悪口を子が聞く心配も少なくなる。モニタリングは家庭問題情報センター(FPIC)、日本国際社会事業団(ISSJ)、NPO法人「岡山家族支援センターみらい」の3カ所に委託した。
外務省の担当者は「こうした仕組みは他国にも例がないのではないか。今までより抵抗感なく、面会交流につなげられる」と期待する。(杉原里美)。
米下院人権小委 子供の連れ去り問題で「日本を制裁対象国にすべき」
米下院外交委員会の人権小委員会は11日、子供の連れ去り問題に関する公聴会を開いた。スミス小委員長は、日本は子供の返還などを規定したハーグ条約に加盟後、「1年以上経過したにもかかわらず、日本に連れ去られた子供を米国へ返しておらず、条約を履行していない」と非難。日本を米国による制裁対象国に加えるべきだと強調した。
また、子供を連れ去られた米国人の親を支援する非営利団体の関係者も証言し、日本に強い圧力をかけるよう国務省に求めた。(ワシントン 青木伸行)
「日本を制裁対象国に」=子の返還問題で米下院小委員長
【ワシントン時事】米下院外交委員会人権小委員会は11日、米国人との結婚が破綻した外国人が子供を母国に連れ帰ってしまう問題で公聴会を開いた。スミス小委員長(共和党)は「(子の返還を定めた)ハーグ条約加盟から1年以上たったのに日本は子を返していない」と述べ、制裁対象国のリストに日本を加えるべきだと訴えた。
米国務省は最近、子の連れ去り問題に関する報告書を議会に提出。制裁対象となり得る国として、インド、コロンビアなど22カ国を挙げている。スミス小委員長は「日本を23番目の国として加えるべきだ。日本は(条約を履行していないのが)最も明白な国だ」と強調した。 (2015/06/12-10:05)
離婚後の父「子供に会いたい」 「面会」申し立て、10年で2.5倍
離婚後に親権を持たない親などが子供との面会を求める家庭裁判所への調停申し立てが、最近10年で2・5倍に増加している。このうちの7割は父親からの申し立てとみられ、子育てをする父親、“イクメン”が増え、離婚後も子供との交流を求めていることが背景にあるようだ。(村島有紀)
◇
埼玉県に住む公務員、岡田健治さん(42)=仮名=には、中学1年の長男(12)と小学5年の次男(10)がいる。しかし、5年前に妻が2人を連れて突然、家出。子供と会えなくなったため約1カ月後に、面会交流などを求めて家庭裁判所に調停を申し立てた。妻もほぼ同時に離婚調停を申し立て。調停では話し合いがつかず訴訟の結果、2人の子供の親権は福岡県で暮らす妻が取得。岡田さんは子供1人に月5万円(計10万円)の養育費を払い、月に1回、面会するという取り決めで2年前に離婚が成立した。
しかし、だんだんと面会は拒否されがちになり、今は長男の進学先も分からない状態だ。岡田さんは「もともと自分は育児に積極的で子供は母親より私になついていた。子供が親と会うのは当然のことなのに」と唇をかむ。
かけがえのない
平成15年に約28万件だった離婚件数は25年には約23万件に減少している。一方、面会交流調停の新規受理件数は、15年に4203件だったが25年は1万762件と、10年で2・5倍に増加した。
両親が離婚する子供は年間23万人に上るが、日本では両親のどちらかが親権を独占する単独親権制。離婚時の末子の平均年齢が4・5歳(母子世帯)と幼く、養育の必要性などから母親が親権を持つ割合は約8割に上る。離婚訴訟でも母親に親権を認める傾向が強い。
早稲田大法学学術院の棚村政行教授(家族法)によると、面会交流を求める調停申し立ての約7割が父親からとみられ、「育児に関わる父親が増えたことが大きい。離婚後も子供と交流したいという気持ちが強いのだろう」とする。また、「少子化により、子供はかけがえのない存在になった。孫に会いたい祖父母が、息子を後押ししていることも一因」とみる。
親権奪い合い
面会交流の要求だけでなく、父母間で子供を奪い合うケースもあり、養育をめぐる対立は一部で激化している。親権を持つ親が親権を持たない親に子供を奪われたなどとして、子供の引き渡しを求める調停申し立ての件数は、25年までの10年で540件から1197件と2・2倍に増加した。また、親権とは別に、子供の同居者(養育者)として父母のどちらが適任かを話し合う監護者指定調停の申し立ても、3・4倍に増加した。
子供と離れて暮らす親らで作る団体「親子の面会交流を実現する全国ネットワーク」(東京都渋谷区、会員数331人)の佐々木昇代表(51)は「最近は、父親が子供を連れて家を出ることも増えている」と指摘する。
棚村教授は「夫婦の対立に子供が巻き込まれると、子供に大きな影響が出る。離婚後も双方の親から愛情と援助を受けられるよう、子供の視点での支援が必要だ」と話している。
◇
■「子供の視点で」自治体支援
子供の視点に立った支援をしようと、円満な離婚と、離婚後の共同養育を促す試みが一部の自治体で始まっている。兵庫県明石市は昨年4月から、別居中や離婚後の子供の養育費の支払いや面会交流の取り決めを促すプロジェクトを開始。元家庭裁判所調査官らによる相談体制の充実のほか、離婚後も父母の間で子供の情報を共有するため、日常生活や面会交流の内容を記録する冊子(養育手帳)などを配布している。鹿児島市は明石市の取り組みを参考にした文書を市役所などで配布している。
米国人男性「愛する娘と親子関係を築きたい」
国際結婚の破綻に関するハーグ条約で、最高裁は、子供の返還について判断する家裁の裁判官が返還先の国の情報を得やすくなるよう、65か国が参加する「ハーグ裁判官ネットワーク」に日本の裁判官2人を近く登録することを決めた。
電子メールなどを活用し、各国の裁判官から情報を常時収集できるようにする。
条約に加盟する93か国では、自国に連れ去られた子供について裁判所が返還の可否を判断する。最高裁によると、同ネットワークは今年3月現在で65か国97人の裁判官が登録。返還先で家族を巡る法律がどうなっているかが判断のポイントになるため、裁判官同士が法制度について情報交換しているほか、個々の裁判の判断に関しても意見を交わしているという。けるつもりはない。
「連れ去られた娘、引き渡して」 米国人男性、異例の申し立て 日本人母は死去、祖母が後見人
当時婚姻関係にあった日本人女性に娘を連れ去られたとする米国人男性(47)が1日、娘の養育権と身柄引き渡しを求める申立書を東京家裁に送付したことが分かった。女性は離婚後に死去、娘は女性方の祖母が後見人として日本で養育している。専門家によると、国際結婚した親が養育権を求める申し立てで、子供の親権者が不存在のケースは異例。子供の連れ去りに厳しい米国との国際問題に発展する可能性もある。
男性の日本側弁護士によると、男性が日本人女性と結婚後、数年で娘が誕生。日本国内で暮らしていた時期に女性が男性に無断で娘を連れて国内の実家に戻った。平成18年に離婚が成立し、女性が娘の親権者になったが、翌年に自殺。娘は親権者を失い、女性方の祖母が娘の後見人となって日本で育てている。
男性は「隣人が電話で『引っ越すのか』と聞いてきた。すぐに帰宅したが、妻が娘を連れていなくなっていた」と連れ去りの状況を話す。男性は米国でも娘の養育権などを求めて提訴したが、「米国に司法権がない」として認められなかった。連れ去り後、21年までに2回しか娘と会っていないという。
男性は「唯一の親が知らない間に、祖母が娘の後見人となった決定は無効」として、娘の養育権と身柄の引き渡しを求める審判を求めた。男性の日本側弁護士は「民法は監護者を決めるときは子供の利益を最優先すると定め、『子の不当な連れ去りが不利に働く』とする法相の国会答弁もある。父親との交流を妨害する祖母の行為は未成年である娘の養育に重大な害悪を及ぼす」と主張している。
家族法に詳しい早稲田大学法学学術院の棚村政行教授は「国際結婚で子を連れ去った片親が死亡し、親権を失った方の親が養育権を求める審判は非常に珍しい。離婚しても子供に会うのは親の当然の権利とする米国と日本の文化の違いが際立つことになるだろう」と話す。
日本では昨年4月、国境を越える子の連れ去りの扱いを決めたハーグ条約が発効されたが、今回のケースは国境を越えておらず、発効前の連れ去りで対象にならない。ただ、関係者は「米国政府は日本人が思っている以上に子供の連れ去り問題を重要視している。申し立てを受け、日本への風当たりが強くなるかもしれない」と国際問題に発展する可能性を指摘する。
祖母は産経新聞の取材に対し「コメントはない」とした。
米国人男性の娘養育権申し立て 法相「子の利益、最優先」
米国人男性が日本人の元妻に娘を連れ去られたなどとして養育権と身柄の引き渡しを東京家裁に求めている問題で、上川陽子法相は2日の閣議後会見で、養育権者の決定について「子供の利益を最優先に考えるべきだ」と述べた。
上川法相は「両親が別居や離婚をしても、子供にとって親は唯一無二の存在。子供が犠牲になってはならない」との認識を示した。その上で「それまで子を監護してきたのは誰かという点のみが重視されるわけではない」と話し、子供への愛情や面会交流の取り組み姿勢、子供の年齢や意向などを総合的に勘案して決める必要性を指摘した。
米国人男性「愛する娘と親子関係を築きたい」
東京家裁に娘の養育権などを申し立てた米国人男性は産経新聞の取材に応じた。内容は次の通り。(ワシントン 青木伸行)
◇
前妻に連れ去られた娘とは2004年と09年、(日本の)裁判所などで20~30分会った。11年には前妻の母親宅を訪れ、インターホン越しに話したが、娘に会わせてくれなかった。
申し立てでは、生きている唯一の親として養育権を求める。米国では生きている親に絶対的な権利がある。日本では離婚した場合、親権や養育権は片方の親に与えられるが、そうしたことは米国ではない。
私は子供を誘拐された親を支援する非営利団体を設立した。日米間の誘拐事案は少なくとも400件。私の団体は200~300人の親と連絡を取っている。国務省や議員とも連携しているが、国務省は「甚だしい誘拐事案」とみている。
日本の家裁が私の養育権を認めない場合、「基本的な人権が侵害された」と米国で訴える。私たちは子供に会えるまで、子供が戻るまで日本に圧力をかける。
娘には手紙や誕生日とクリスマスのプレゼントなどを送り続ける。娘をとても愛しており、親子関係を築きたい。前妻の母親は、娘が私の元へ戻れば彼女にもう会えないだろうと恐れているが、娘は祖母らとの関係を保つことが必要で、遠ざけるつもりはない。
親による子供の連れ去り、米では法的に「誘拐罪」 国際問題発展も
米国人男性が元妻の死後に娘の養育権と身柄の引き渡しを求めた異例の申し立て。米国では子供が親に会う権利が尊重され、親による子供の連れ去りは“誘拐”とみなされることもある。子供の連れ去り問題に非協力的な国に制裁措置を取る法律も成立。日本への適用も議論されている。
米ABC放送は2011(平成23)年、日本人の妻による子供の連れ去りを特集。日本を「親による子供の連れ去り天国」と評し、反響を呼んだ。番組では男性らが日本人の妻に子供を連れ去られ、会うことすらできないと訴えた。日本人の妻が「子供を誘拐するか自殺するしかなかった」と答える様子も放映された。一方、参院外交防衛委員会調査室の資料によると、子供の連れ去りは米国で誘拐罪とみなされ、米連邦捜査局(FBI)に指名手配された日本人女性もいる。
08年には、ブラジル人女性が米国人男性との間にできた息子を母国に連れ去った後に死亡。男性は親族に引き取られた子供の返還を求め、ブラジルの裁判所に提訴した。世論の高まりを受け、クリントン元米国務長官がブラジル政府に返還を要求。米下院ではブラジルに経済制裁する法案まで提出された。結局、ブラジル最高裁は子供の返還を命じる決定を下したという。
米国ではハーグ条約の対象になるような事案について適切な措置を取らない国に対し、経済・軍事支援などを停止する制裁を加える法律が昨年成立。米下院小委員長は、日本への制裁発動を提唱している。米国務省の特別顧問(児童問題担当)が近く来日し、日本政府と話し合う予定。
年間23万人の子供の親が離婚…子供の幸せを第一に考える本出版
日本では毎年23万人以上の子供が両親の離婚を経験する。精神的に傷ついたり、経済状況が悪化したりするケースも少なくない。こうした中、家事調停委員の丸井妙子さん(63)が「離婚後の子育て」をテーマにした米国の臨床心理士、ジョアン・ペドロ-キャロルさんの著書を翻訳出版した。丸井さんは「離婚後も、子供の幸せを第一に考え、憎しみを捨てて子育てに協力を」と訴えている。(村島有紀)
親の争いで
丸井さんは塾や高校の英語教師として25年以上、子供と関わる中で不登校などの問題に関心を持ち、平成16年、千葉大大学院に入学。修了後、千葉県の家庭裁判所で離婚などの家事調停委員を務めながら子供の育成に関する海外の文献や書籍を翻訳してきた。
離婚によって子供が悩む姿を見てきた経験から、離婚後の子育てをテーマにしたキャロルさんの著書に感銘を受け、約1年かけて翻訳。「別れてもふたりで育てる~子どもを犠牲にしない離婚と養育の方法」(明石書店)という邦題で出版した。
キャロルさんは、離婚が子供に与える影響と対処法に関する研究分野の第一人者。傷ついた子供の立ち直りを支えるプログラムなどを開発している。「離婚を扱う弁護士や相談センターでは依頼者(親)の心に寄り添うが、子供の立場からの支援は少ない。親にも明かさない子供の心を多くの人に知ってほしい」と丸井さんは話す。
悪口を言わない
同書によると、離婚家庭の子供の98%が片方の親に去られる悲しみを感じ、もう一人の親からも見捨てられる不安を感じる一方、いつか両親が和解するという期待を持つ場合もある。8割近くは両親の不仲を自分のせいではないかと思い、親から見放されたと感じているという。
離婚が子供の心理に与える影響は深刻だ。両親の争いに巻き込まれた7歳の男児は、両親がそれぞれ築いた2つの砦(とりで)から集中砲火を受ける自分の様子を絵に描いたという。
離婚のショックから子供が早期に立ち直るためには、(1)元配偶者の「悪口」を言わずに子供に離婚の事実を伝え、今後の生活への希望を伝える(2)子供が離婚の原因ではないと理解させた上で、両親の関係が元に戻ることはないと納得させる(3)子供を育てるためのパートナーとして、元配偶者との関係を再構築する(4)親子の絆を一層強める-などのステップがあるとする。
また、元配偶者との関係の再構築については、互いの私生活には介入しない▽敬意と礼儀を保ち、相手の話をよく聞く▽自分の話は要点のみを伝え、子供には両親が会うことを知らせない-などがポイントで、ビジネスパートナーのような関わり方に変える必要性を説く。
愛情が必要
厚生労働省の統計によると両親の離婚を経験した未成年者は、25年の1年間で約23万人。母親が親権を持つ割合が8割以上を占める。親子の面会交流がなく、親権を持たない親との関係を断絶させられる子供も多いとみられる。
丸井さんは「離婚の際、両親は自分のことしか考えられないほど追い詰められていることが多い。しかし、子供には離婚後も両親の愛情が必要です」と話している。
◇
■母子世帯の平均年収291万円
厚生労働省の平成23年度の調査では、母子世帯の平均年収は児童扶養手当や元夫からの養育費を合計しても291万円。離婚していない子供のいる世帯の平均658万円と比較すると約4割にとどまる。一方、父子世帯の平均年収も455万円で非離婚世帯の約7割だった。
別れて暮らす親と子供との面会交流については、「取り決めをしている」と回答したのは、母子世帯の母では23.4%、父子世帯の父では16.3%だった。
「娘連れ去り」邦人女性に判決、起訴取り消し 刑事処分せず
自分の子どもを日本に連れ帰ったことで、2011年、アメリカで逮捕された日本人女性に対し、ウィスコンシン州の裁判所は、起訴を取り消し、刑事処分しないことを決めました。子どもに与える影響を考慮したとみられます。
この事件は、アメリカで生活していた日本人女性が、元夫とのトラブルをきっかけに当時5歳だった娘をアメリカから日本に連れ帰ったことから、2011年、アメリカに再入国した際、逮捕されたものです。
現在12歳となる長女は、女性の逮捕のあと、元夫のもとに返され、今は同じウィスコンシン州に住んでいます。しかし、女性が保釈されたあとも許されているのは手紙のやりとりだけで、面会はできていません。
「自転車や歩いて行ける距離なのに会わせてくれないというので、本当に精神的にかなりつらかったです」(日本人女性)
「ママに会いたい」と手紙に書き続ける長女。最後に会ってから、すでに4年が過ぎています。
9日、女性に言い渡されたのは、元夫が親権を持つことなどを定めた合意を履行する代わりに、起訴を取り消すというものでした。女性に対する刑事処分が長女に与える影響を考慮したとみられます。
今回の裁判を通じて、女性は、子どものためにも離婚後も両方の親が子育てに関わる重要性に気づいたといいます。
「(以前は)母親か父親のもと、どちらかというドラスチックな形だったんですが、子どもも母親と父親の両方のもとで生活できるようになればいいと思います」(日本人女性)
女性は今後、家庭裁判所を通じて長女との面会を求めていくことになります。
「離婚を考える会」:子どもへの影響など議論 千葉を
離婚調停などにかかわる千葉家庭裁判所の調停委員らでつくる千葉家事調停協会の有志13人が「子どもと離婚を考える会」(丸井妙子代表)を発足させ、活動を始めた。きっかけは、離婚後の親子のかかわり方について米国の学者が執筆した著書を、調停委員の丸井さん(63)が翻訳したこと。会は家裁や協会とは一線を画す非公式の集まりだが、随時会合を開き、翻訳本を基に離婚が子どもに与える影響や課題について議論していく。
丸井さんは千葉県内の中学、高校で英語の非常勤講師を務めたり塾を経営したりするなど、30年間近く、子どもたちとかかわる仕事をしてきた。20年ほど前から、不登校や引きこもりの生徒が増えてきたと感じるようになり、背景を知りたいと千葉大大学院に入り、教育学を学んだ。
2006年に修士号を取得後、恩師に翻訳作業を勧められた。12年の暮れ、米の臨床心理学者、ジョアン・ペドロ・キャロル博士の著書をインターネットで見つけ、1年かけて翻訳した。「別れてもふたりで育てる−−子どもを犠牲にしない離婚と養育の方法」(明石書店)と日本語タイトルを付けて、先月下旬に出版された。
キャロル博士は夫婦が離婚後、どういう人間関係を築き、子どもをどう支えていくべきか、就学前や思春期のケースなど年齢ごとの実例に基づいて考察。特に、親同士がいがみ合ったり、子どもの親権や養育費を巡って対立したりすることなどを戒め、子どもの学校生活や勉強、適切なしつけなど、子の成長に軸足を置いて関係を築くことが大切と説いている。
丸井さんは、翻訳を通じて同書が提示する子育てのあり方に共感する。「子どもを自分の側だけにおいて相手に会わせなかったり、相手の悪口を一方的に子に聞かせる行為をしてはいけない」。親が争う姿は子どもの心を傷つけ、子が「親の離婚は自分のせいではないか」と自己嫌悪に陥り、非行につながりかねないという。「親は子の立ち直りを第一に考えることが重要」と考えている。
日本は単独親権制度をとっており、子どもが幼い場合、母親が親権を継ぐケースが多い。だが、丸井さんは「子には母も父も必要な存在。親同士が過去へのこだわりを捨て、子どもの身になって二人で愛情を注いであげることが子の幸せにつながる」と話す。
ハーグ条約発効から1年 子供返還申し立ては計16件 最高裁が発表
最高裁は10日、国際結婚の破綻などで国境を越えて連れ去られた子供の取り扱いを定めたハーグ条約に基づき、家裁へ申し立てられた子の返還申請が、昨年4月の条約発効から1年間で16件あったと発表した。
ハーグ条約は、16歳未満の子供が国外に連れ去られた際のルールを規定。海外から日本に連れ出された場合、外務省が親同士の話し合いの仲介をするが、協議がまとまらなければ親は東京家裁か大阪家裁へ申し立てができ、返還の可否が判断される。
最高裁によると、日本が条約に加盟した昨年4月1日から今年3月31日までの間、東京家裁に12件、大阪家裁に4件の申し立てがあった。うち11件は既に審理が終結し、9件が返還を命令、1件が申し立てを却下、もう1件が調停成立で取り下げ扱いとなった。
審理は非公開のため最高裁は各申し立ての内容を公表していない。
ハーグ条約1年 「子のため」を最優先
両親のどちらかが国外に連れ去った子どもの扱いを定めたハーグ条約に日本が加盟して一年。国際結婚だけでなく日本人夫婦にも適用されている。連れ去りは子どものためにならないと徹底したい。
外務省によると、日本が条約加盟した昨年四月から一年間で、裁判や話し合いなどで日本に連れ帰った子どもを外国へ戻したケースは三件、外国に連れ出した子どもを日本に帰したのは四件あった。
条約では子どもが育つ環境を変えないために、ドメスティックバイオレンスなどの返還拒否事由がない限り、原則として速やかに子どもを元の居住国に帰すのがルールだ。国際ルールの枠外にいた加盟前なら、子の返還を求めて申し立て、結論が出るまでに一年、二年かかったケースでも、この一年は一カ月でも返還命令が出るようになった。これは条約に加盟したメリットだろう。裁判で時間がかかっている間に子どもが新しい土地に定着するという問題も避けられる。子どもを連れ去られた親が養育から疎外される問題も少なくなるのではないか。
外務省には、返還や面会交流を求めた援助申請が百十三件あったが、約一割が日本人夫婦のケースだったのは目を引く。海外で勤務したり生活することが珍しくなくなった今、条約の対象になるのは国際結婚した夫婦に限らない。
昨年七月には日本人の子どもに初めて条約が適用された。日本人の父親が日本人の母親とともに英国に出国した子ども(当時七歳)の返還を求め、英国政府が支援を決定。ロンドンの裁判所は「ハーグ条約上、違法な状態」と判断し、子どもを日本に戻すよう命じた。子どもは日本に帰国後、家裁での調停で母親のいる英国に戻った。
国際ルールの下で、連れ去りはいけないと広く知らせた意義は大きい。離婚後も両親ともに親権を持つのが主流の欧米では、両親が子どもと関係を維持しようとする。それに対し、離婚後は一方の親しか親権を持てない日本では、両親で子育てに関わる視点が弱い。連れ去りが後を絶たない。
ハーグ条約は一方の親による子の連れ去りを、他方の親の権利を奪うだけではなく、子が親と関係を維持しながら育つ権利を阻む行為とみなす。
子どもは親に従属する存在ではない。日本も親権の共同化や、親子の面会交流権の保障など国内法を整えていくべきではないか。「子のために」という視点を守っていきたい。
ハーグ条約1年 子供を守る慎重な運用を
国際結婚の破綻などで、一方の親に国境を越えて無断で連れ去られた子供の扱いを定めたハーグ条約が日本で発効して1年が経過した。
この間、外務省が受け付けた子供の返還や面会を求める申請は100件を超えた。いまのところ大きな混乱もなく対処されている。
ただ、日本では親権制度の違いなどから加盟に慎重論を唱えた経緯があった。家庭の問題がからみ返還の可否を決める裁判なども原則非公開で行われるため、課題がみえにくい。引き続き子供を保護する条約の目的にかなうよう、注意深い運用を求めたい。
条約加盟国は、16歳未満の子供を一方の親が無断で国外に連れ去った場合、子供を捜し、元の居住国に戻す義務を負う。親の国籍を問わず、どちらが養育するかなどは、元の居住国で決められる。
この1年間の申請のうち、子供の返還を求めたものは44件で、親同士の合意に基づいた外国への返還が3件、日本への返還は裁判所の命令などで4件実現した。その他、裁判所での審理に入ったものもあり、そのすべてが子供の利益に結びつくのか、必ずしも楽観はできまい。
過去、日本人の場合は外国人の夫の家庭内暴力(DV)から逃れて子供とともに帰国したケースも少なくなかった。別の加盟国では、条約に沿って子供を戻した後、先方に養育能力がないことが発覚し問題化したこともある。
条約では、子供に危害などが及ぶ恐れがある場合、返還拒否が認められている。将来に禍根を残さないよう、話し合いや裁判の調停では十分な情報と証拠に基づいて慎重に吟味してほしい。
外務省は条約加盟に伴い、主要在外公館での邦人のDV被害者支援を強化した。子供を連れて帰国したものの、証拠の不備などで裁判で不利になることがないようにとの配慮だ。多くの相談が寄せられているという。
外務省が受け付けた返還と面会の申請113件の約1割は日本人同士のケースだった。海外での勤務や居住が珍しくなくなった現在、条約の対象となるのは国際結婚の夫婦とは限らない。
国際化が進む中、条約が適用されるケースは今後も増えよう。予想されるトラブルに備え、国は必要かつ適切な支援の手も差し伸べてもらいたい。
別居中、子どもとの面会妨げ 弁護士に賠償命令
別居中の妻(30代)と暮らす子どもと定期的に会う「面会交流」をすることで合意したのに、妻側から不当に拒否されたなどとして、熊本県の男性(30代)が、大分県に住む妻と代理人弁護士に慰謝料500万円の支払いを求めた訴訟の判決で、熊本地裁(中村心裁判官)が男性の訴えを一部認め、妻と弁護士に計20万円の支払いを命じたことが30日、分かった。27日付。
面会交流をめぐるトラブルで、法律の専門家である弁護士の賠償責任を認めた判決は全国的にも極めて珍しいという。
弁護士は大分県弁護士会に所属。地裁は弁護士の対応について「原告からの協議の申し入れに速やかに回答せず、殊更に協議を遅延させ面会交流を妨げた。誠実に協議する義務に違反している」と判断した。
判決によると、夫婦には長男(4)と次男(2)がいる。男性の言動に不満を募らせた妻は2012年10月、次男を連れて実家へ。以降、男性が長男、妻が次男と暮らす形で別居が続いている。
13年4月の調停では、妻が長男と、男性が次男と、それぞれ月2回程度の面会交流をすることで合意。具体的な日時や場所などは事前に協議することとした。妻側は7月以降、体調不良を理由に断るなどした。
妻は8月、弁護士に依頼し、4月の合意内容を変更する旨の調停を申し立てた。男性と弁護士は当初、メールで面会交流の交渉をしていたが、10月以降、弁護士は書面郵送で男性に連絡するようになった。途中からは書面の郵送はなくなり、新たな調停があった後の14年2月まで面会交流は実施されなかった。
地裁は「あえて時間のかかる書面郵送を用いることに合理的な理由は見当たらない。あらためて面会交流のルール作成を求めていたことなどを考慮すると、弁護士の行為は調停期日が指定されるまで面会交流をしない目的の意図的な遅延行為と推認される」と指摘、妻と共に責任を認定した。
妻らの弁護団は「当事者が調停での合意内容に沿った面会交流を実施していた際、条件変更について紛争が生じ、弁護士介入後も協議が困難だった事案。判決はこのような実情に対する理解を欠いたもので不服」とし控訴を検討している。
ハーグ条約、子供返還など海外調停機関と連携へ
国際結婚の破綻に関するハーグ条約を巡り、外務省は、外国の親から申し立てがあった子供の返還や面会について、日本と外国の調停機関が連携して協議する仕組みの導入を決めた。
両親それぞれの国の弁護士や専門家が協力して調停案を取りまとめることで、円満な解決を促す狙いがある。連携先はドイツや英国、米国、オーストラリアなどを想定しており、来年4月からの本格実施を目指す。
昨年4月に国内で発効したハーグ条約では、子を日本に連れ去られた外国の親は、〈1〉東京か大阪の家裁に対する返還命令の申し立て〈2〉日本の調停機関が話し合いを仲介する「裁判外紛争解決手続き(ADR)」の利用――などを選択できる。ADRは東京、大阪、沖縄の弁護士会など5機関が実施しており、弁護士や学者ら2人の「あっせん人」が双方から事情を聞き取って解決案を提示する。利用は4回まで無料だ。
ただ、外国の親から外務省に申請があった「返還」と「面会交流の援助」計80件のうち、ADRの選択はわずか12件。日本の調停機関に対し、外国人の側に「言葉の壁があって主張が通らないのでは」「文化や制度の違いを理解できるのか」といった不安があるためとみられる。
このため、外務省は外国の調停機関との連携を計画。外国の親から申請を受けた同省が、その国の調停機関を紹介した上で、インターネットを通じたテレビ電話「スカイプ」を使い、外国側と日本側それぞれの親とあっせん人が参加して協議することを想定している。ドイツや英国も他国との間で同様の仕組みを導入し、成果を上げているという。
米特別顧問、6月に訪日=ハーグ条約加盟も「依然不満」
【ワシントン時事】米国務省のジェイコブス特別顧問(児童問題担当)は25日、国際結婚が破綻した夫婦の子供の扱いを定めたハーグ条約の履行状況について下院人権小委員会で証言した。昨年4月に条約に加盟した日本に対しては「依然不満が募る」と指摘し、6月に日本を訪問して一層の取り組みを促す意向を明らかにした。
ハーグ条約は片方の親が子供を無断で自国に連れ帰るなどした場合、元の居住国に戻し親権争いを決着させると定めている。ジェイコブス氏は、昨年、日本から戻った子供は皆無だったと説明。「ケネディ駐日大使も動きだす準備ができている」と述べ、在日大使館と一体となって日本に一層の努力を求めていく考えを強調した。
共和党のスミス小委員長は、日本の対応を「言語道断だ」と批判。「今こそ制裁を科すべきだ」と日本に対する制裁発動を訴えたが、ジェイコブス氏は「できることを全てやると約束する」と述べるにとどめた。(2015/03/26-10:24)
離婚後の子育て 両親ともに、の視点で
離婚時に夫婦で子どもの養育計画を作っておきたい。子どもと一緒に暮らせない親が子どもと定期的に過ごす頻度や養育費など。離婚後も両親ともに子育てにかかわるという視点を持ち続けたい。
兵庫県明石市は昨春から、離婚届を取りに来た人に「養育合意書」の書式を配っている。夫婦が今後、子どもをどう育てていくのか。養育費の金額や支払期間、親子が定期的に会う「面会交流」の方法や頻度などを記入する。
作成は強制ではないが、夫婦とも今後の生活を考えるのに精いっぱいとなり、子どものことに十分思いが及ばないこともある。合意書づくりを通して「具体的に何を決めるべきか」が見えてくる人は少なくない。
夫婦だけで話し合いがつかない場合もある。市は調停員経験を持つ専門員らによる無料相談や、離婚を考えている夫婦を対象にしたガイダンス講座も試行中だ。
二〇一二年四月に施行された改正民法で、「子どもの利益」を考慮し、離婚届に養育費と面会交流に関する確認欄が設けられた。離婚という家族の問題に明石市が踏み込んだのも法改正が背景にある。あくまで養育支援の一環だ。親の離婚で親と生き別れる子どもを生まないというのが目的である。
厚生労働省の調べでは、親の離婚により、一緒に暮らしていない親と会っていないという子は十五万人とも推計される。
日本では婚姻中は両親ともに親権を持つが、離婚後は一方しか持てない単独親権となる。親権を持たない親は戸籍上は他人となるため、子どもとのかかわりから遠ざけられてしまうこともある。
親権を持たない親が運動会を見に行くことも許されない。二カ月に一回程度、外出先で数時間しか子どもと過ごせないという親は少なくない。子どもに会えない親が面会を求め、家裁に申し立てるケースは年間一万件を超える。
夫婦が子育てに協力するのは当然になった今日、離婚が一方の親との関係を断ち切ることになっては子どものためにならない。離婚後も共同親権の欧米では離れて暮らす親も子育てにかかわる。百日程度はその親の家で一緒に過ごすのは通例だ。離れて暮らす親と定期的に会えることが、子どもの健やかな成長につながるという研究も進んでいる。
夫婦が葛藤を乗り越え子どもが双方の親とつながりを保てるよう、民間団体やNPOなどの力も借り、さらに支援を増やしたい。
離婚後の共同親権 ジルマ大統領が承認
単独親権より優先扱いに
ジルマ大統領(労働者党=PT)は22日、子供の両親が離婚した場合に子供の監督権、また経済面を含む養育や教育に関する責任と決定権を両親に等しく与える「共同親権(Guarda Compartilhada)」を原則と定めた法案を承認した。23日付の連邦官報(DOU)に掲載され、同日から同法は施行となった。2008年8月にルーラ前大統領(PT)は、それまでブラジルで認められていた唯一の親権制度だった「単独親権(Guarda Unilateral)」以外の選択肢として共同親権制度を認める民法11698号を施行していたが、新たな法案では共同親権が優先的に扱われることになるという。23日付の伯メディア(ウェブ版)が報じた。
現在既に単独親権を採用している両親でも、いずれかが共同親権への変更を望めば裁判を起こした上で判事の判断によって共同親権が認められることになる。さらに、両者が共同親権への変更を望んだ場合も調停が必要となるが、移行は原則としてスムーズに行われることが見込まれている。
一方で、離婚係争中の夫婦のどちらかが離婚後の親権の破棄を望む場合には、相手側に親権が与えられることになる。この場合、親権の破棄を望む親は子供を適切に育てない可能生があるためだという。
共同親権制度の優先性を定める新法に対する国民の関心の高さは、国会で先月に同法が可決された際に大統領官邸(プラナルト宮)のメール受信箱が賛成の意を述べたEメールで溢れかえったというエピソードからもうかがえる。さらに法務省の専門家や全国弁護士会、人権局も支持を表明していたが、判事らの一部は同法を「極度の介入だ」として反意を示していたという。
同法の発足により、23日以降の離婚係争では親権について両親間で合意に達しない場合、例外を除いて共同親権が付与されることになる。これについてサンパウロ州第6家庭裁判所のオメロ・マイオン判事は「良いことだ。養育費の問題になると子供たちの人格は無視されて道具のように扱われており、ひどい時には復讐の手段にもされている」とコメントした。
さらに離婚後、両親の間の連絡が途絶えている場合でも、子供と生活を共にしていない親には共同親権の責任を果たすことが求められるという。これにより片親の負担が軽減されると共に育児委棄を行うことが困難になることが望まれる。
また、共同親権下とはいえ子供たちの生活の拠点は固定することが強く推奨されている。ただし法律では子供たちが両方の親と同等に接触することを前提としており、養育費の捻出も共同作業になるとみられる。このため、子供と生活を共にしている親の収入からも判事によって養育費が算出され、定められた金額を月々捻出することが義務付けられる。
2014年12月24日付
「ハーグ条約」で子ども返還6件
両親が日本と外国に別れて暮らしている子どもが「ハーグ条約」に基づいて、もともと住んでいた国に戻されたケースが条約がことし4月に日本で発効してから、これまでに6件あったことが外務省のまとめで分かりました。
ハーグ条約は国際結婚の破綻などで、一方の親がもう一方の親の同意がないまま、子どもを自分の母国に連れ出した場合などに子どもを原則として、もともと住んでいた国に戻す手続きを定めたものです。
外務省によりますと日本で、ことし4月に条約が発効してからこれまでにイギリスやスイスの裁判所が命令を出すなどして、外国にいる子どもが日本に戻されたケースが4件、逆に外務省が仲介した話し合いなどで日本にいる子どもが外国に戻されたケースが2件ありました。
また、子どもの返還を求める親から外務省に支援の要請が30件あり、この中にはDV=ドメスティックバイオレンスが関係するものも複数あるということです。
ハーグ条約に詳しい大谷美紀子弁護士は「子どもの返還が6件実現したことは、条約の特徴である迅速さが示されたといえる。
ただ今後、DVや虐待などが関係する難しいケースが増えることが予想され、子どもの利益をどう守っていくのかを関係者が配慮することが重要になる」と話しています。
ハーグ条約加盟8カ月、子供返還の審理迅速に
両親のどちらかに国境を越えて連れ去られた子供の扱いを定めたハーグ条約に日本が加盟した4月以降、裁判や話し合いで子供が外国から日本に戻ったり、日本からもとの居住国に返還されたりした例は5件に上る。支援者や弁護士からは「審理が早くなった」と評価の声があがる。外国当局と交渉できる専門性の高い弁護士を養成するため、日本弁護士連合会と外務省は来年から全国で研修を始める。
<以降は紙面をご覧ください>
高知)離婚後の親子面会交流、大切です 高知市で講演会
離婚した親子の面会交流を考える講演会が20日、高知市であった。来年度の設立を目指す面会交流支援センター「あえる」の設立準備会が主催した。講師は元家裁調査官で家庭問題情報センター(東京)理事の山口美智子さん(70)。
約15人の参加者を前に、山口さんは「夫婦間には否定的な感情が残っていても子どもにとって父親や母親である事実はずっと変わらない」と語った。
別居や離婚で別れて暮らす両親の気持ちについて「子どもと同居している親は連れ去りを心配し、別居している親はなんで会えないんだと腹をたてていることが多い」と説明。面会交流を支援をしてきた経験から「まずは月に1度、1時間の約束で一緒に遊ぶところから始め、緊張や警戒心を解きほぐすことが大切」と話した。
2012年4月に施行された改正民法では面会交流と養育費の分担について「父母は子の利益を最も優先して考慮しなければならない」と明文化したものの、実際には広がっていないのが現状だ。
子どもが楽しむ様子を見るうちに、面会交流に消極的だった親が考えを変えるケースも少なくないといい、「支援団体は親子の縁をつなぐことが大切です」と述べた。(西村奈緒美)
父親に親権変更 「面会交流」合意守られず 福岡家裁
離婚によって別々に暮らす父親と子どもが定期的に会う「面会交流」を認めるのを前提に母親が親権者となったのに、母親の言動が原因で子どもが面会に応じていないとして、福岡家裁が家事審判で親権者変更を求めた父親側の申し立てを認めたことが17日、分かった。「母親を親権者とした前提が崩れている。母親の態度の変化を促し、円滑な面会交流の再開にこぎつけることが子の福祉にかなう」と判断した。4日付。
父親側の代理人を務めた清源(きよもと)万里子弁護士(中津市)は「面会交流の意義を重視した画期的な判断」と評価。虐待が判明するなどしなければ、母親が持つ親権が父親に移ることはほぼなく、面会交流を理由に親権者変更を認めたのは全国の家裁でも極めて珍しいという。
発端は関東に住んでいた30代夫婦の離婚調停。双方が長男(現在は小学生)の親権を望んだ。母親は協議中に長男を連れて福岡県へ転居。最終的には、離れて暮らす父親と長男の面会交流を月1回実施するのを前提に、母親を親権者とすることで2011年7月に合意した。
もともと父親と長男の関係は良好だったが、面会交流は長男が拒否する態度をみせうまくいかなかった。父親側は「母親が拒絶するよう仕向けている」と12年9月に親権者変更などを福岡家裁に申し立てていた。
家裁は家裁内のプレイルームで「試行的面会交流」を2回実施。長男は1回目は父親と2人で遊べたが、2回目は拒否。家裁は、長男が「(マジックミラーで)ママ見てたよ」といった母親の言動を受け、1回目の交流に強い罪悪感を抱き、母親に対する忠誠心を示すために父親に対する拒否感を強めたと推認するのが合理的と指摘。面会を実施できない主な原因は母親にあるとした。
その上で、家裁は親権を父親、監護権を母親へ分けるべきだと判断。「双方が長男の養育のために協力すべき枠組みを設定することが有益。子を葛藤状態から解放する必要がある」とも指摘した。
※この記事は、12月18日大分合同新聞朝刊21ページに掲載されています。
子どもの手続代理人:子の意見を代弁…制度2年で実績9件
離婚する夫婦のどちらが子を養うかなどを決める家庭裁判所での手続きで、子どもの意見を代弁する「子どもの手続代理人」制度が始まって2年近くになるが、選任実績が9件にとどまっている。選任経験のある弁護士は「子どもだけでなく、両親にもメリットがある」と意義を強調するが、認知度不足や報酬の仕組みがネックとなっている。
日本弁護士連合会子どもの代理人制度に関する検討チーム座長の影山秀人弁護士によると、選任を把握しているケースは親権や子の引き渡しが争われた6事件と、子が児童虐待などを理由として親権の停止や喪失を求めた3事件。前者は家裁が、後者は子どもが代理人を選任した。子の年齢は9〜18歳だった。
選任された経験がある池田清貴弁護士(東京弁護士会)は「一般的に子どもと数回面会するだけの家裁の調査官と違い、代理人は常に連絡を取り合えるので子の気持ちの変遷を継続的に把握できる」と指摘する。子どもの相談相手となることで同居している親の負担を軽減し、別居している親が子の気持ちを理解できるよう橋渡しできるメリットがあるという。
選任が増えない理由について、影山弁護士は「認知度不足と報酬の仕組みに原因がある」と分析する。実際には父母が報酬を負担するため、資力がなかったり、支払いを拒むことが想定されたりして選任されていない可能性があるという。影山弁護士は「父母の争いが激しい中で、ないがしろにされがちな子どもの意見を尊重できる制度は重要。報酬を公費で負担できる仕組みを整えるべきだ」と指摘している。【伊藤一郎】
◇子どもの手続代理人制度
2013年1月に施行された家事事件手続法で導入された。離婚調停や、近年増加している面会交流調停などで、両親とは別に子どもに弁護士が就き、代理人として家裁の手続きで子の意見や立場を主張する。
ハーグ条約:娘の返還命令受けた母 大阪高裁に即時抗告
両親の離婚などで国境を越えて連れ去られた子どもの取り扱いを定めたハーグ条約に基づき、スリランカに住む父親が、日本で母親と暮らす娘(5)の返還を求めた審判で、スリランカへの返還を命じた大阪家裁の決定を不服とし、母親が3日、大阪高裁に即時抗告した。返還命令は国内初だった。
父親の代理人弁護士によると、父母はともに日本人で娘は日本生まれ。家族3人は昨年2月にスリランカに渡航し、今年6月に一時帰国した後、再びスリランカに戻る予定だった。しかし母親が7月、父親に娘を戻す意思がないと伝え、現在も西日本で暮らしている。(共同)
講座:「離婚後の子育て」支援 「子の気持ち」ワークショップも 来年1月25日、明石市が開催 /兵庫
離婚時や別居時における子どもの養育支援策を実施している明石市は、子どもの気持ちを考えるワークショップを中心とした離婚後の子育て講座を2015年1月25日、同市東仲ノ町の市生涯学習センター(アスピア明石北館8階)で開く。自治体によるこうした取り組みは全国的にも珍しいという。
同市は今年4月から「市こども養育支援ネットワーク」の運用を始め、離婚後の相談体制の充実、養育費や面会交流を取り決める参考書式配布などを進めており、講座は支援策充実のため開催する。
今回の講座「離婚後の子育てとこどもの気持ち」は、未成年の子どもがいて離婚を考えているか離婚した父・母が対象。第1部の子育て説明会(午後1時)では、養育費と面会交流のほか、子どもを支える手当や給付金、相談窓口などの行政サービスを市職員が説明する。第2部(同2時)では、「こどもの気持ちを考えるワークショップ」として、大学関係者や臨床心理士らでつくる「FAIT(ファイト)−Japan研究会」がつくったプログラムを使って、離婚時に子どもが心配しやすい問題や対処方法を専門家の指導を受けながらグループ形式で考える。また、希望者には第3部(同5時)として、臨床心理士や弁護士による個別相談会も設ける。
参加無料。定員20人程度。応募者多数の場合は選考となる。申し込みは1月9日までに、市民相談室(078・918・5002)へ。【駒崎秀樹】
〔神戸版〕
ハーグ条約:国内初判断 母親に返還命令−−大阪家裁
国境を越えて連れ去られた子の扱いを定めたハーグ条約に基づき、スリランカに住む父親が、母親と日本に帰国したまま戻らなかった娘の返還を求めた審判で、大阪家裁は19日、父親の主張を認めて娘を返すよう母親に命じる決定を出した。4月に日本で条約が発効して以降、子の返還を求めた国内の審判で決定が出されたのは初めてで、日本の裁判所が海外に住む親の元に子を返すよう命じた最初の事例となった。
代理人弁護士らによると、40代の父親、30代の母親、女児(4)の3人家族で、ともに日本国籍。家族はスリランカで暮らしていたが、6月に一家で一時帰国。父親は一旦スリランカに戻り、7月に日本に帰国。その際に父親に娘を引き渡す約束だったが、母親は引き渡しを拒んだ。双方の主張が食い違い、父親が審判を申し立てた。
大阪家裁(大島真一裁判長)は、娘が学校に通っていたことなどからスリランカに生活拠点があったと認定。スリランカで暮らしても娘の成育に重大な悪影響はないと判断した。【古屋敷尚子】
スリランカへ子の返還命じる=ハーグ条約で国内初-大阪家裁
スリランカに住む日本人の40代の男性がハーグ条約に基づき、妻が無断で日本に連れ帰った4歳の子の返還を求めた審判で、大阪家裁(大島真一裁判長)は19日、申し立て通りスリランカに戻すよう命じた。
ハーグ条約は両親の一方が16歳未満の子を国外に連れ去った場合、原則として元の居住国に戻すと規定。国内での申し立てが明らかになった初めてのケースだった。
家裁は、両親と子が昨年2月からスリランカで生活し、子が現地で通学していたことを理由に、子の居住国はスリランカと判断した。妻は今年6月、一時帰国した際にそのまま子を留め置いていた。(2014/11/19-12:34)
ハーグ条約:初の国外返還…日本人母の5歳児、ドイツへ
国境を越えて連れ去られた子の扱いを取り決めたハーグ条約に基づき、日本人の母親と日本で暮らしていた5歳児が先月、外国に戻されていたことが、外務省への取材で分かった。日本で4月に条約が発効して以降、子が外国から日本に返還されたケースは3件あったが、日本にいる子どもが海外へ返還されたのは初めて。
同省ハーグ条約室によると、この5歳児は父親がドイツ人で、日本とドイツの両方の国籍を持つ。親子はドイツで生活していたが、母親が今年6月、父親に無断で子を日本に連れ帰った。取り残された父親は8月下旬、ドイツ政府にハーグ条約に基づいて子の返還を求めた。
ドイツ政府から日本の外務省に援助要請があったため、外務省が国内の母親に接触して交渉。話し合いを経て母親が子の返還に同意し、10月中旬、子は母親に連れられドイツへ戻されたという。
ハーグ条約は、子を元いた国に返還するかどうかは連れ去られた側の申し立てによる裁判で決めるとするが、両国の政府の仲介で話し合いにより解決することも認めている。今回は、裁判によらないで返還された。
条約に基づく子の返還を巡っては、日本人夫婦の父親が5月、母親と共に英国に渡った7歳児の返還を求めて英国政府に直接援助を申請。英国の裁判所の命令で子が7月に日本に戻されたケースが初適用だった。
その後、やはり日本人夫婦の母親が3歳児を無断で米国に連れ出し、日本に残された父親が日本の外務省を通じて返還の援助を申請。話し合いを経て母親が9月下旬、日本に連れ帰った。
また、米国人の父親が日本人の母親に無断で8歳児をスイスに連れ出し、母親が日本の外務省を通じて子の返還を要請したケースでは、スイスの裁判所が返還命令を出し、9月下旬に子が日本に戻された。
同省によると4月以降、日本の外務省に「子の返還」を求める援助申請は23件あり、日本にいる子の返還申請は14件、海外にいる子の返還申請は9件。【伊藤一郎】
◇ハーグ条約◇
正式名称は「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」。一方の親が了解なしに子供を国外に連れ出した場合、もう一方の親の返還要求に基づき子供を元の国に戻す義務を規定している。国際結婚で破綻したケースが想定されているが、同じ国籍の夫婦にも適用される。日本では今年4月に発効し、7月には日本人の子の返還命令が初めて出された。加盟国は93カ国。
ハーグ条約で“子を日本から外国へ”初事例
国際結婚の破綻などで子どもが一方の親に国境を越えて連れ出された際、原則として子どもをもともと住んでいた国に戻すルールを定めた「ハーグ条約」に基づいて、日本にいる子どもが外国に初めて戻されたことが分かりました。
ハーグ条約に基づいて日本から外国に戻されたのは、日本人の母親とドイツ人の父親の間に生まれた5歳の男の子です。
外務省によりますと、男の子はもともとドイツで生活していましたが、ことし6月、父親の同意のないまま母親が日本に連れ帰っていたということです。これに対し、父親がハーグ条約に基づいて日本の外務省に支援を要請し、外務省の担当者を介して両親の話し合いが続けられてきたということです。その結果、母親が男の子をいったんドイツに戻すことに同意し、先月中旬、男の子は母親とともにドイツに戻ったということです。
ことし4月に日本で発効したハーグ条約に基づいて、これまで海外に連れ出された子どもが日本に戻されたケースはありましたが、日本に住む子どもが外国に返還されたのは初めてです。今回は両親の話し合いで解決しましたが、ハーグ条約では海外にいる親が日本の裁判所に対して子どもの返還を求めることも可能で、東京と大阪の家庭裁判所で少なくとも2件の申し立てが行われています。
日本への子ども返還はすでに複数実現
ハーグ条約は、世界的な人の移動や国際結婚の増加に伴って問題となってきた、一方の親による国境を越えた子どもの連れ出しを国際的に解決するためのルールを定めたもので、日本ではことし4月に発効しました。ハーグ条約の加盟国の間で一方の親が子どもを自分の母国など別の国に連れ出した場合、もう一方の親が連れ戻したいと希望すれば、現在子どもがいる国の政府機関が子どもの居場所を探したり、連れ出した親と交渉したりするなどの援助をします。また、その国の裁判所に返還を求める申し立てを行えば、裁判所は原則として子どもをもともと住んでいた国に戻すよう連れ出した親に命令を出します。原則として元の国に戻すのは、一方の親に国境を越えて連れ出された子どもは異なる言語や文化など生活環境が急変するうえ、もう一方の親との交流が断絶されるなど悪影響が大きく、いったんは元の状態に戻したうえで、その国の司法手続きに沿って子どもの養育環境を判断するのが望ましいと考えられているからです。
外務省によりますと、これまでに海外にいる親が日本にいる子どもを戻すよう援助を申請したケースは14件あるということです。また、東京と大阪の家庭裁判所に少なくとも2件の返還命令を求める申し立てが行われています。逆に日本にいる親が外国に連れ出された子どもを戻すよう求めたケースではすでに日本への子どもの返還が複数実現しています。
離婚・別居:親子面会4割実現せず 調停成立でも
離婚や別居が原因で子どもと離れて暮らす親が、同居している親を相手に子との面会を家裁に申し立てる「面会交流」の調停で合意が成立したにもかかわらず、全く面会ができていないケースが4割超に上ることが、日本弁護士連合会のアンケートで分かった。合意後も面会実現は容易ではないと指摘されていたが、今回の調査で初めて裏付けられた。
調査は全国の弁護士を通じ、家裁の調停を利用した当事者に今年2〜4月に実施。調停の内容に対する満足度や、合意した面会交流や養育費の支払いの実現状況などについて尋ね、296人から回答を得た。
調査結果によると、調停で合意できた人の44%が「全く面会ができていない」と回答。「合意通りの面会ができている」は24%、「合意通りではないが、ほぼ面会できている」が32%だった。
面会ができない理由は「子どもが拒否する。または子どもと同居している親から本人が拒否していると聞いている」が37%と最多。「同居する親が子どもと会わせてくれない」が31%を占めた。
面会交流できている人の実施方法は「当事者(夫婦や元夫婦)のみで実施」が51%、「親族の協力を得ている」が24%。「第三者機関に関与してもらっている」は10%にとどまり、関係機関の支援が進んでいない実態も分かった。
子どもと別居し、面会交流が進まない親からは「(同居親に)メールしても、返事は1週間後でさらにはぐらかされる」などの声が寄せられた。同居する親からは、「別居親が親としての責任を果たしていない」との指摘もあった。一方で面会交流が進んでいる人からは「弁護士に支援してもらっている」「子どもが小学校高学年になり、本人が別居する親とやり取りしている」という例が報告された。
アンケートに携わった藤原道子弁護士(第二東京弁護士会)は「調停が終われば家裁は見守ることができない。当事者間で面会実現が困難な場合は、自治体や専門家のいる団体が支援・調整できる仕組みが必要だ」と話した。【伊藤一郎】
別れてもわが子…父母に養育手帳
全国の自治体に先駆けて、離婚後の親子の面会方法や養育費の支払額を記入する合意書を配布している明石市は今月から、離婚後の両親が子どもに関する情報を共有するための「養育手帳」の配布を始めた。今後、親子の面会交流の場所として市立天文科学館を提供する計画で、離婚家庭の継続的な支援を目指す。(中谷圭佑)
市は離婚後の子どもの権利を守る取り組みとして、2月に県弁護士会など6機関と「市こども養育支援ネットワーク連絡会議」を発足させ、4月からは離婚届の交付時などに合意書を配布。専門の相談員が月1回無料相談を実施している。
しかし、民間支援団体や弁護士らからは「離婚後は父母間の連絡が途絶え、子どもについての情報を共有できないケースが多い」「合意書で面会交流の頻度などを定めても、場所や日時を決めるのが難しい」などの声が寄せられていた。
このため、離婚時だけでなく、継続的な情報共有が必要と判断し、希望者に子どもの生活や、面会時の状況を記録する養育手帳「こどもと親の交流ノート」(A6判、30ページ)を無料配布することにした。
日記帳形式で、子どもと暮らす親が、毎日の生活や気になっていることなどを記入。別居している親は、面会交流時の出来事などを書き込む。今後、市のホームページからもダウンロードできるようにする。
また、面会交流の場所として市立天文科学館を無償で提供する準備を進めている。対象は市内在住の中学生以下の子どもと、その両親。イベントやプラネタリウムを優先予約でき、申し出れば親子とも入館料は無料になる。
市市民相談室は「子どもの立場から、行政として支援できることを今後も模索していきたい」とする。
離婚家庭の支援などに取り組む公益社団法人「家庭問題情報センター」の山口恵美子・常務理事は「父母が離婚後も共同で子育てしているという意識を持ち、安心して面会交流できる環境を行政がサポートすることには大変意味がある」と評価している。
面会交流 離婚後や別居中に、離れて暮らす親子が定期的に会うなどして交流を続けること。2012年の民法改正で、離婚時に養育費とともに面会交流についても取り決めることが定められた。義務ではないため、実際には取り決めをしないケースも多い。
ハーグ条約:日本在住の子、返還求め審判申し立て
国境を越えて連れ去られた子の扱いを取り決めたハーグ条約に基づき、海外に住む父親が、母親が日本に連れ帰った子の返還を求めて16日にも大阪家裁に審判を申し立てることが分かった。関係者によると、東京家裁でも海外に住む親が日本で暮らす子の返還を求める審判の申し立てが14日にあった。4月に条約が日本で発効して以降、子の返還を求める審判申し立ては国内ではこの2件が最初で、今後は増加が予想される。
大阪家裁のケースは、代理人弁護士によると、父母が共に日本国籍。アジアの国で暮らしていたが、母親は4月以降に子を連れて日本に帰国し、西日本で暮らしている。当初は話し合いによる解決を図ったが、双方の主張が食い違い、父親は返還を求めて審判を申し立てることを決めた。家裁は、審判で父母の主張を聞き、帰国について父親が事前に了解していたかや、返還によって子に悪影響が及ぶ恐れがないかなどを見極め、返還を命じるかどうかを判断する。
日本では今年4月にハーグ条約が発効。7月に日本人に初適用され、母親と一緒に英国に渡った子を父親のいる日本に戻す返還命令を英国の裁判所が出した。【古屋敷尚子】
ハーグ条約発効から半年、援助申請77件
外務省は国境を越えて連れ去られた子供の取り扱いを定めたハーグ条約に関して、4月1日に日本で発効してから10月3日までの約半年間で、同省への子どもの返還や面会の援助申請件数が77件あったと明らかにした。子どもの返還の援助申請では日本から外国へ連れ去りが8件で、2件では日本への返還が実現した。外国から日本への連れ去りは12件あった。
面会交流の実現を求めた援助申請は外国から日本への連れ去りで44件、日本から外国への連れ去りで13件だった。
父母とも日本人という申請例も少なくなかったという。
ハーグ条約発効から半年、20件の援助申請
夫婦のどちらかが子供を国外に連れ去った場合の取り扱いを定めたハーグ条約が日本で発効されて半年、これまでに20件の援助申請があり、うち2組の夫婦の子供が海外から日本に戻されたことが外務省のまとめでわかりました。
外務省によりますと、今年4月に日本でハーグ条約が発効してからの半年間に、外国から日本に連れ去られた子供の返還のための援助を受け付けたケースは12件、一方で、外国に連れ去られた子供の返還援助を受け付けたケースは8件でした。
このうち、外国に連れ去られたケースでは、アメリカとスイスの2つのケースで子供の返還が実現しました。また、返還までは求めない「面会交流」に関する援助申請は57件にのぼり、半年間に受け付けた申請件数はあわせて77件となりました。このうち、10件は、夫婦ともに日本人だということです。
外務省は条約の発効により、子供の連れ去りは誘拐罪になりうるといった認識が広まり一定の抑止効果が生まれていると分析しています。
紙面を参照ください。
海外連れ去りの子2人帰国 ハーグ条約に基づく援助申請受け
国境を越えて連れ去られた子供の取り扱いを定めたハーグ条約に基づき、スイスと米国に渡っていた2人の子供が、それぞれ9月に帰国していたことが3日、外務省への取材で分かった。
7月、母親と共に渡英していた子の返還命令が出たのが日本人への条約初適用だった。このケースでは日本の父親が外務省を通さず、直接英国当局に返還を求めていた。今回の2件は外務省に援助を申請し、帰国につながった。
外務省によると、スイスにいた子(8)は米国人の父親と共に渡航していた。日本人の母親が8月、外務省に援助を申請。スイスの当局を通じて居場所を特定し、スイスの裁判所が9月に返還命令を出した。
米国のケースでは日本人夫婦の子(3)が母親に連れられて渡米。父親が6月に外務省に援助を求めたが、話し合いを進め母子が任意で帰国したという。
4月に日本が条約に加盟した後、外務省には3日までに計77件の援助申請が寄せられた。日本から海外に連れ去られた子の返還の申請は8件、海外から日本に来た子の返還申請は12件。このほか面会の実現を求めた申請は計57件となっている。〔共同〕
ハーグ条約加盟半年:新たに2組の夫婦の子が日本に戻る
◇外務省予想外の日本人夫婦のケースも
国境を越えて連れ去られた子の扱いを取り決めたハーグ条約に基づき、7月の初めての返還命令に続いて、新たに2組の夫婦の子が海外から日本に戻されたことが、外務省への取材で分かった。初適用は日本人夫婦だったが、今回の2組のうちの1組も日本人夫婦だった。日本人夫婦が援助を求めるケースは全体の1割を超えており、当初想定されていた国際結婚が破綻した夫婦のケース以外にも利用が広がっている。
今年4月に条約が日本で発効してから先月末までの半年で、子の扱いを巡る外務省への援助申請は73件。日本在住の親から海外の親への申請は、返還8件、面会13件。海外在住の親から日本の親への申請のほうが多く、返還9件、面会43件だった。国際結婚が破綻した例が大半だが、9件は日本人夫婦だった。
条約は7月に日本人に初適用され、英国にいた子が日本に戻された。その後新たに、日本人夫婦の子が米国から、米国人父と日本人母の子がスイスから、それぞれ日本に戻された。海外の親と子が、テレビ電話で面会できたケースも1件あった。
また、海外の親が日本にいる子との面会を求めて先月、日本の家裁に初めて審判を申し立てた。当初は裁判によらない友好的な解決が図られたが、不調に終わったという。
外務省の担当者は「条約発効後、不法に海外から日本へ子が連れ出されるケースが減っており、抑止効果も認められる」と話している。【伊藤一郎】
子の返還、外務省通じ初命令 ハーグ条約、米国人父に
夫婦のどちらかが子どもを国外に連れ去った場合の扱いを定める「ハーグ条約」に基づき、日本人の母親が外務省を通じて男児(8)の返還を求めたところ、スイスの裁判所が日本に返還するよう命じたことが同省への取材でわかった。
外務省による子の返還支援は、日本が4月に条約に加盟したことで可能になった手続き。外務省の支援で返還命令が出たのは、今回のケースが初めてとなる。
同省によると、命令を受けたのはスイスに滞在する米国人の父親。母親が8月、外務省に支援を求めた。
同省から依頼を受けたスイス当局が父親と男児の居場所を調べ、裁判手続きに入った。9月下旬に裁判所が返還命令を出し、男児は日本に帰国したという。
ハーグ条約で米人父に子の返還命令…外務省通じ
米国人の夫に子供をスイスに連れ去られたとして、日本人の母親が外務省を通じてスイス側に男児(8)の返還を求め、9月下旬にスイスの裁判所が返還命令を出していたことが分かった。
4月に国内で発効したハーグ条約に基づき、同省を通じて子供の返還の支援を申請したケースは17件に上っているが、返還命令は初めて。男児はすでに帰国している。
国際結婚の破綻などによる子供の奪い合いを解決するための同条約は、親のどちらかが16歳未満の子を無断で国外に連れ去った場合、原則として元の居住国に戻すよう定めている。今回問題となったのは、米国人の父親と日本人の母親のケースで、一家は日本で生活していたが、条約が発効した4月以降、父親が男児を連れてスイスへ渡った。
8月、母親は条約に基づいて外務省に男児の返還の援助を申請し、同省はスイスの中央当局に支援を依頼。スイス側が男児の居場所を特定し、母親による裁判手続きを支援した結果、同国の裁判所は男児を日本に帰国させるよう命じた。
離婚したら父親はいなくなる?
友人が子どもの保育園で、母の日は記念制作が行われたのに、父の日はなかったということを言っていた。先生に事情を聞くと、園の半数が母子家庭で、「父親のいない」園児に配慮したとのこと。同様に、父の日も母の日もやらない保育園、幼稚園はかなり増えているようだ。私の子どもたちが通う園では、似顔絵を描いて持って帰ってくれたので、私も妻も涙ぐんでしまうくらい嬉しかったが、そういう節目のイベントがなくなっていくのは、なんともさびしい限りだ。
日本でも、今や3組に1組は離婚するという時代に入っている。母子家庭、父子家庭が増えるのは当然で、母子のみの世帯数は約76万世帯、父子のみの世帯数は約9万世帯 (平成22年国勢調査)、同居者がいる世帯を含めた場合、母子世帯数は約124万世帯、父子世帯数は約22万世帯という。その理由の約8割が離婚だ。
ひとり親世帯の場合、子どもにとって「片親がいなくなる」という心理的なダメージが大きいのに加えて、経済的な困窮も深刻な問題だ。母子世帯の平均年間収入は223万円(就労収入181万円)で、児童のいる世帯の平均651万円と比べるとその差はかなり大きい。あまり問題視されない父子世帯も平均380万円とやはり経済的にも厳しい現実にある。母子家庭の14%は生活保護を受け、父子家庭でも8%にのぼるという。
こういった状況をつくってしまっている一つの要因として、大半の離婚家庭が養育費の取り決めをしていないことが挙げられる。離婚母子家庭で別れた元夫から養育費を受給しているのは20%にしかならないという。諸外国では協議離婚でも、養育費の取り決めや、面会交流の頻度や形式など、きっちりとした養育計画を作成して裁判所に届け出なければ成立しない。日本では親権者を決めて、二人の証人の署名があれば簡単に成立してしまうので、養育費が支払われない状況に陥りやすく、経済的困難を助長してしまっている。
養育費の問題だけではない。別居親との面会交流も課題を抱えている。アメリカのある調査では約80%が少なくとも隔週ごとに行われており、月一回あるいは休暇や特別の日なども含めると97%が面会交流を行っている。日本ではこれが28%にしかならない。「離婚先進国」であるアメリカでは、離婚家庭の様々な追跡調査が行われており、離婚後の子どもと別居親との頻繁かつ継続的な接触が子どもの精神的な健康にとって決定的に重要であると指摘されている。これが、「単独養育から共同養育へ」という考え方につながり、「共同監護法」が1979年にカリフォルニア州で成立したのを皮切りに全米に拡がった。この法律は「両親が別居あるいは結婚を解消した後に未成年の子どもに、両親との頻繁かつ継続的な接触を保証するのが州の公共政策である」とされ、子どもの養育の権利ばかりではなく、責任も共同していかなければならないと明記されている。(参考:『離婚で壊れる子どもたち 心理臨床家からの警告』 棚瀬一代)
夫婦は自分たちで決めたのだから、離婚すれば夫婦ではなくなるが、子どもはたとえ父親と母親が離婚しても親は親である。離婚したら「父親がいなくなる」なんていうのは子どもにとって理不尽きわまりない。冒頭に「園で父の日を行わない」という例を挙げたが、母子家庭でも父親と定期的な面会交流が行われていれば問題はないのではないか。離婚は個人や家庭の問題であると同時に、今や社会の公共政策に関わる課題だ。本人同士が同意すればよいという、子どもを無視した安易な思想は捨て、しっかりとした養育計画の提出を義務化し、共同養育の体制を後押しすべきであると思うが、いかがだろうか。
学びのエバンジェリスト
本山勝寛
http://d.hatena.ne.jp/theternal/
「学びの革命」をテーマに著作多数。国内外で社会変革を手掛けるアジア最大級のNGO日本財団で国際協力に従事、世界中を駆け回っている。ハーバード大学院国際教育政策専攻修士過程修了、東京大学工学部システム創成学科卒。1男2女のイクメン父として、独自の子育て論も展開。アゴラ/BLOGOSブロガー(月間20万PV)。著書『16倍速勉強法』『16倍速仕事術』(光文社)、『マンガ勉強法』(ソフトバンク)、『YouTube英語勉強法』(サンマーク出版)、『お金がなくても東大合格、英語がダメでもハーバード留学、僕の独学戦記』(ダイヤモンド社)など。
両親離婚の子ども支える 明石市が養育支援事業拡充
兵庫県明石市は10月から、両親が離婚する前後の子どもを支える養育支援事業を拡充し、親の間で子どもの情報を共有する「養育手帳」の配布や、面会場所の提供などを始める。
同市は今年4月以降、離婚時の子どもの養育をめぐる専門相談や、養育費や面会交流についての取り決めを記入する用紙の配布などを行っている。養育費の支払いや面会交流の継続には子どもの情報の共有が欠かせないと判断し、施策の拡充を決めた。
養育手帳はA6判、30ページで希望する市民に配る。一緒に暮らす親と定期的に会う親がそれぞれ、日常生活の様子や相談したいこと、面会交流の内容などを書き込み、子どもを通じてやり取りする。
また離れて暮らす親子の交流を支援するため、面会に同市立天文科学館を利用してもらう事業を開始。定期開催イベントの優先予約や親の入館料の無料化を予定している。
このほか、離婚時に起こりやすい子どもの心境の変化などを解説し、配慮を促す冊子も作成。母子・父子家庭への支援策も合わせて紹介しており、養育費などの取り決め用紙とともに配る。(新開真理)
別れても男親も子育てしたい 民法改正しても変わらぬ裁判所
危機を迎えながらも、子はかすがいと何とか続いていた結婚生活がある日、突然、終わりを告げる。妻が予告もなく子どもを連れて家からいなくなり、茫然自失の状態で取り残される夫が最近、増えている。面会交流調停(別居する親が子どもとの面会を求めて裁判所立ち会いの下、話し合い合意を目ざすこと)を起こし、わが子と会おうとしても、さらに法の壁が立ちはだかるという。
悲劇の一因は日本の法制度にある。日本では離婚後、親権は片方の親だけが持つ単独親権制という旧態依然とした制度が今も採用されている。そのため、「離婚=親子の別れ」という処理がなされがちだ。
一方、世界に視野を広げると、離婚後も共同親権制を採用している国が圧倒的に多い。南米や北米・ヨーロッパ・オセアニアのほぼすべて、中国と韓国がその制度を採用している。これらの国では、「別れても2人で育てていこう」というコンセンサスや、面会交流は「年間100日以上」という国際基準がたいてい確立されている。離婚後の処理については子どもの不利益にならないよう迅速に行われる一方、養育については細かく取り決めることになっている。なおここでいう年間100日以上という基準は、離婚家族を対象とした実証研究(米・80年)により「離婚後も別居親が定期的に子どもと会うことが精神的健康に決定的に大事」という科学的に立証された根拠に基づいた数字なのだという。
「別れたら元伴侶に頼れず一人親で育てなくてはならない」傾向にある日本と比べると、育てる側の親にとってどちらが楽かは一目瞭然ではないか。
世界基準から外れている基準を是正するべく、政府は重い腰をようやくあげ、子どもと離婚に関して記した民法の第766条が改正され、12年4月に施行した。それに伴い、離婚届には「面会交流」と「養育費の分担」についての項目が新設され、今年に入ると国境を越えての連れ去りを禁止するハーグ条約に日本が加盟したり、親子断絶防止議員連盟が結成されたりもした。
この問題について取り組んでいる泉健太衆議院議員(民主党)はこう言う。
「94年に批准した子どもの権利条約にも両親との交流規定が明記されていましたが実態が伴っていませんでした。一昨年の民法改正でようやく面会交流と養育費の分担が明記されたことは大きな前進です」
では民法改正後、面会はできるようになったのだろうか。改正後の変化について離婚問題に詳しい能登豊和弁護士は次のように批判する。
「DVやつきまといの恐れがあっても面会交流は可能です。公的施設で第三者立ち会いの下、行えばいいわけですから。それなのに国は改正後も、長期的・継続的な面会交流の実施に全く関与しようとしません」
支援団体の評価はさらに厳しい。子どもに会えない親たちのサポートを行ったり、親子交流を促進する法律制定実現に力を入れている親子ネット(会員数約500人)の鈴木裕子前代表は、法律を運用する側の変わらなさを指摘する。
「改正後、最高裁から各家庭裁判所に通達が3回出されたんですが、家裁はそれに沿った運用を始めませんでした。どんなに近隣に住み、同居時の親子関係が良好で、両方の親が家事育児を分担できていたとしても、月1回数時間というそれまでどおりの相場に落とし込もうとするんです」
親子ネットが民法改正前後(11年秋~14年春)に実施したアンケートの結果(回答を寄せたのは同会会員の108人)はこの指摘を裏付ける。
「民法改正後も裁判所の運用は変わっていない」「面会交流の実現に努めていない」と感じる人は80%以上。改正後も月1回以下の面会しかできない人は84%、まったく面会できない人が35%となっている。また裁判官・調査官・調停委員・弁護士の評価は低く、「適切でない」とする評価がそれぞれ85%以上と散々な結果が出た。
(ライター・西牟田靖)
※週刊朝日 2014年9月26日号より抜粋
捨てられる夫たち 面会交流調停は3.5倍にも
2002年の28万9836組をピークに12年には23万5406組と、ここ十数年で減少している離婚件数。その一方で同時期に行われた面会交流調停(別居する親が子どもとの面会を求めて裁判所立ち会いの下、話し合い合意を目ざすこと)の申請数は3. 5倍に増加している。とくに比率、数とも男性が急増しているという。
30代技術者・Bさんは子どもと同居している妻の実家を訪ね、直談判を試みた。彼は転職を機に収入が半減。妻の親が介入し別離。以来子どもと会えなくなった。
「乳児だった子どもを連れ去られたのは約7年前です。しばらくして妻の実家に行って義父母に自分が悪かったことを謝り続けましたが、妻子には会わせてもらえませんでした。『せめて子どもだけでも会わせて欲しい』と毎月手紙を送ったりもしたんですが、一切返事はありませんでした」
その後、Bさんは子どもの通う小学校へ出向き再会を果たす。いないはずの父親に会えたことで、子どもはとても喜んでいたという。
しかし交流はそこで絶たれた。妻側が学校に陳情し、Bさんが子どもに接近できないようにしたのだ。
「子どもがあんなに再会を喜んでくれたのに周りが親子の絆を必死に断ち切ろうとする。もう何が正しいのかわからなくなり鬱になってしまいました」
こうして追い詰められ、面会交流調停に踏み切る男性が多いという。
3年前に面会交流調停を経験した30代自営業者・Cさんは次のように話す。収入の不安定さを理由に妻子が家を出ていったという。
「調停では『暴力があった』とか『生活費を渡さない』とか元妻が嘘の主張をするんです。すると調査官、調停委員が反応して私を女性の敵として扱って『あなたは奥さんにDVを働いた』って言い切るんです。私が論破したら今度は『子どもが会いたがってない』と別の理由を出してきました。揚げ句の果てには『奥さんが体調を崩したから写真だけの交流にしましょう』と調停官に促されました。ずっとこんな調子なので調停を取り下げました。子どものことを考えると死ぬほど苦しくて何もできません。この世の中から消えてしまいたいと思うことがよくあります。でも子どものことを考えると死ねない。毎日その葛藤の繰り返しです」
Cさんとは逆に、調停がうまくいき、会える取り決めができたとしてもハードルはさらにある。同居する親に面会交流を強制する法的な手段が存在しないため、同居親が「会わせない」と開き直ればそれが通ってしまうのだ。
こうなると、裁判所に頼ってみても面会実現はなかなか難しくなるという。
事態が長期化することで、会えない親はさらに傷つき、中には破滅的な行動を取ってしまうケースもある。
「子どもに会えなくてにっちもさっちもいかず相手に手出しするか、それとも自分が死ぬか。子どもに会えない親が自殺したという知らせが毎年少なくとも1件は来ます」(共同親権運動ネットワーク・運営委員の宗像充さん)
(ライター・西牟田靖)
※週刊朝日 2014年9月26日号より抜粋
面会交流:離婚など、子と別居「面会交流に理解を」 親たちが啓発活動−−熊本 /熊本
離婚などにより親子が定期的に会う「面会交流」について理解を深めてもらおうと、夫婦別居中の人らでつくる「kネット九州」(宮原朋瑚代表)のメンバー15人が6日、熊本市中央区の下通りアーケードの近くで啓発チラシを配った。面会の日数を増やすよう求めたり、一方的な子供の引き離しの反対を訴えた。
15人は、熊本をはじめ福岡、大分、宮崎、鹿児島から集まった会社員や教諭らで「わが子に会いたい」と書かれたのぼりを掲げて街宣活動を行った。
チラシには「守ろう!親子の絆 子どもの権利」などとあり、参加した熊本市内のNPO団体の男性職員(38)は「調停が成立しても相手親の意向で全く会えないケースが多い」と話した。この男性によると、妻が2年前に当時0歳の次男を連れて実家に戻ったまま3カ月間、面会に応じなかったという。昨春「面会は月2回できる」という内容の調停が成立したが、男性は「法的な罰則は何もない」と訴えた。【柿崎誠】
紙面を参照ください。
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ハーグ条約加盟から5カ月/変わるか「連れ去り天国」
離婚などにより国境を越えて連れ去られた子どもの扱いを定めたハーグ条約に日本が正式加盟して約5カ月となり、国外への「返還命令」が言い渡される最初のケースが確認されるのは時間の問題とみられている。かつて「連れ去り天国」とやゆされていた日本に厳格な国際ルールはなじむのか。実務を担当する弁護士からは、混乱を心配する声が出始めている。
▽返還が原則
7月、英国の裁判所が、母親と渡英していた日本人の子(7)を、父親の申請に基づき、日本に帰国させる返還命令を出した。両親が別居し、母親が仕事で渡英する際に子を連れて行き、離婚調停を申し立てた-。海外での長期勤務や国際結婚が珍しくなくなった現代では特殊とはいえないケースだ。
母親側は「帰国させる予定だった」と返還命令に戸惑う。だがハーグ条約では、16歳未満の子は元の居住国に戻すのが原則。この家族も例外扱いにはされなかった。
同じ原則は、海外から日本に連れてこられた子にも当然適用される。当事者同士の話し合いが不調に終わり、返還が申し立てられれば家庭裁判所が速やかに判断し、返還命令に従わなければ強制執行もあり得る。
日本が正式に加盟したのは4月。法的手続きに時間を要することを考えても、7月の英国のケースとは逆に「日本から国外」の返還命令が出てももはや不自然ではない。
▽「拉致」と非難
人口動態統計によると、日本国内で国際結婚した夫婦(いずれかが日本人)は、1960年代後半に年間5千組以下だったのが80年代に急増し、90年以降は年2万~4万組以上で推移している。
国境を越えた「連れ去り」が増えるのは必然ともいえるが、実際にわが子を連れ去られた当事者の思いは悲痛だ。
「自分が腹を痛めて産んだ子に会えないなんて。死んだ方がましと思ったこともある」。千葉県柏市に住む女性(44)は4年前、別居中だった英国人の夫に2人の男児を連れ去られた。加盟前のケースなので、返還手続きに政府の援助は得られない。誰もいない子ども部屋には2台の勉強机が並んだままだ。
条約加盟が遅く、こうした事態に有効な対応手段を持たなかった日本は、海外から批判を浴びていた。特に米国の圧力は強く、2010年には米下院本会議が、日本への連れ去りを「拉致」と非難する決議を採択。11年には高官が公聴会で「(連れ去りは)日米関係で最も重要な問題の一つ」と発言するなど、揺さぶりは強まる一方だった。
▽文化
家族法に詳しい早稲田大の棚村政行(たなむら・まさゆき)教授は「加盟が遅れた日本には、条約を適切に運用できるか、海外から厳しい目が注がれる」と指摘する。
司法関係者らによると、東京、大阪の家裁には年間数十件の返還申し立てがあると想定され、既に裁判官と調査官の専門チームが仮想の事件で審理のシミュレーションを実施しているという。
だが家族の問題を扱う弁護士の間では不安の声が消えない。日弁連事務次長の菅沼友子(すがぬま・ともこ)弁護士は「日本では夫婦仲が険悪になると、片方が実家に子を連れ帰ることが社会的に許容されてきた。『条約の理念が日本の文化になじむのか』との意見は少なくない」と話す。
裁判所の執行官が親から子を引き離す強制執行はこれまで日本になかった法手続きだ。親が説得に応じなかったり、子が拒否したりしてトラブルになる事態もあり得る。
菅沼弁護士は「やってみなければ分からない部分も多い。手続きの王道のような流れができるまでには、時間がかかるだろう」と話している。
(共同通信社)
離婚前講座:子どもを守るために…明石市が日本初導入へ
離婚する父母の対立が子どもに心理的・経済的な悪影響を与えないよう、兵庫県明石市は年度内にも、子どもとの面会交流や養育費分担を促すための離婚前講座を試行的に導入する。米国では多くの州がこうした講座の受講を義務付けているが、日本の自治体が導入するのは初めて。離婚を決めた家庭に対する公的支援が日本で定着するか注目される。
米国では裁判をしないと離婚できないが、日本では裁判を経ない「協議離婚」が約9割を占め、手続きの過程に公的機関が関与する機会も乏しい。
2012年4月に施行された改正民法は、離婚前に親同士が面会交流と養育費の分担を取り決めるよう規定したが、強制力はない。親権を持たない別居親と子どもが会えなかったり、同居親が養育費を受け取れなかったりするなど、子どもの福祉が置き去りにされているケースも少なくない。
講座のモデルは、1990年代に米国ケンタッキー州の大学教授が開発したプログラム「FAIT(ファイト)」(Family In Transitionの略。米国名はFIT)。他の米国の州のプログラムより内容が充実しているとされ、欧州やアフリカの一部にも広まっている。
FAITでは、離婚を決めた複数の家庭が親同士と子同士のグループに分かれ、数日間の講習を受ける。親はディスカッションや教材用DVDの鑑賞を通じて離婚によって子どもが受ける心の痛みや反応を学び、子どもには絵本やゲームなどを通じて「離婚は両親の問題で、自分のせいではない」と理解してもらう。
明石市は、講座が1日で終わるよう、国内の大学教授らがFAITを数時間に短縮した独自のプログラムを採用する。現行法では受講を強制できないため、離婚直後の家庭も含め市が参加希望者を募集して、教授らを支援する形で試行を始める。
明石市の泉房穂市長は「離婚は自由だが、子どもに不利益が及ぶことはあってはならない。試行結果を踏まえ、来年度以降、行政サービスの一環として講座を提供することを検討したい」と話している。【山本将克】
◇親権
未成年の子を養育する親の権利義務。日本は「単独親権制」を採用しており、民法は父母が離婚した場合はどちらか一方に親権が帰属すると定めている。協議離婚の場合は話し合いで、裁判で離婚する場合は裁判所が決めるが、母が親権者となるケースが全体の約8割を占める。欧米では、離婚後も父母の双方が子を養育する「共同親権制」を採用する国が多く、一方の親が面会交流や養育費の支払いを拒むと、犯罪とみなされることもある。
面会交流:離婚・別居の親、子と面会申請10年で倍 昨年1万件、調停4割不成立
離婚したり長期間別居したりしている親が子どもとの面会を求めて家庭裁判所に調停を求める「面会交流」の申し立てが昨年初めて1万件を超え、10年間で倍増したことが最高裁のまとめで分かった。離婚後も両親が養育に関わることが、子の健全な成長に役立つという社会的な意識の高まりが背景にあるとみられる。ただ、調停が成立しない例が約4割あり、裁判所が関与しても、親同士の折り合いを付けることが難しいケースも多い現状が浮き彫りになった。
当事者同士で面会交流のルールを決められず、家裁に調停を求めるケースは以前からあった。2012年4月に施行された改正民法は、夫婦が裁判を経ずに「協議離婚」をした場合は、面会交流と養育費の分担を取り決めると規定した。法律で明文化されたことも申し立て増加に拍車をかけているとみられる。
厚生労働省の統計では、離婚件数は04年の27万804件が、13年は23万1384件まで減少している。一方で、面会交流事件の申立件数は04年の4556件が、13年は1万762件にまで膨らんだ。
また、13年中の申し立てで、調停が成立したのは5632件で、不成立は1309件。申し立ての取り下げなども含めた全終結事件(1万37件)に対する成立率は56%にとどまった。親同士の感情対立から、合意に至らないケースが相当数あることがうかがえる。
調停が成立しない場合、裁判官が独自に面会交流の可否や頻度を判断する「審判」と呼ばれる裁判に移行する。昨年の調停と審判を合わせた終結件数を夫婦別で見ると、父親側の申し立てが全体の69%を占めている。10年間の増加率は母親の1・6倍に対し父親が2・6倍になっており、育児に対する男性の意識の変化の表れとの指摘もある。
昨年、調停や審判で裁判官の命令に基づき家裁調査官が子どもの意向や養育状況を聞き取ったケースは全体の77%で、10年前の64%から増加した。家裁が子どもの状況を十分に把握して、問題解決に努めている姿勢がうかがえる。
家族の問題に詳しい榊原富士子弁護士は「離婚や別居の原因が配偶者のドメスティックバイオレンス(DV)にあるなど、面会交流には親同士の間の難しい問題が含まれているケースもある。家裁はそうした背景も含めて問題解決に向けた丁寧な調停や審判をしていく必要がある」と話す。【川名壮志】
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■ことば
◇面会交流
離婚などで子どもと別居することになった親が、同居する親との間でルールを設け、定期的に子どもと会うこと。裁判所による調停後に民間の支援団体の仲介で面会が実現することも多く、公園や遊園地、別居する親の自宅などが面会場所になる。月1回が多かったが、最近は月に複数回という例もあり、宿泊が伴う場合もある。同居する親が調停や審判の結果に従わない場合、家裁が面会交流に応じるよう勧告したり、金銭の支払いを命じたりする仕組みもある。
クローズアップ2014:面会、実現にハードル 調停申し立て増加 民間団体、仲介多く 公的支援の拡充必要
離婚などで別居する親が子どもとの定期的な面会を求めて家庭裁判所に調停や審判を申し立てる事例が増えている。だが、家裁でルールが決まっても、その後の調整がうまくいかなければ面会は実現しない。こうした場合は民間支援団体が仲介役を果たすことが多いが、全国一律のサービスが保障されているとは言えないのが現状だ。国や自治体による公的支援の拡充が必要との指摘も出ている。
<続きは、元記事を参照ください>
子の返還問題で制裁法成立=「ハーグ以前」で対日圧力-米
【ワシントン時事】オバマ米大統領は8日、米国人との結婚生活が破綻した外国人が子供を母国に無断で連れ帰った事例に関し、適切な措置を取らない国に制裁を科せるようにする法案に署名し、同法は成立した。日米間でこうした事案が外交問題化した経緯があり、法律には日本に一段の努力を促す狙いもある。
法律は、子供の米国送還に向けた措置を取ることを怠った国への制裁として、軍事支援の打ち切りや首脳らの訪問の延期・取りやめなどを規定。米政府に対し、連れ去り事案の解決手続きをめぐる2国間の覚書を各国と締結するよう要求した。議員の間からは、日本とも覚書を結ぶ必要があると指摘する声が上がっている。
日本政府は4月、連れ去られた子供を元の居住国に戻して親権を協議することを定めたハーグ条約に加盟した。ただ、米側は、条約の適用外である加盟以前の事案にも対応するよう日本に求めている。(2014/08/09-08:30)
ハーグ条約に基づき日本への子供返還命令 英裁判所
国外に連れ出された子供の扱いを定めたハーグ条約に基づき、英国の裁判所が、母親と渡英した日本人の子供(7)について、日本へ帰国させるよう命令を出したことが29日、関係者への取材で分かった。外務省によると、今年4月に日本で同条約が発効して以降、海外から日本人の子供を戻すよう命じた事例が明らかになるのは初めて。
関係者によると、父親と母親はいずれも日本人で離婚調停中の夫婦。母親は今年3月、仕事を理由に子供を連れて渡英。父親とは一定期間後に子供を日本に戻すことで合意していたものの、結果的にそれに反する形で母子の英国滞在が長引いていたという。父親側が5月、英国の裁判所に対し、ハーグ条約に基づいて子供の返還などについての援助を申請した。
現地の裁判所は今月になって、母親が英国に子供を滞在させ続けていることがハーグ条約に反する状態と判断。同条約は子供が暴力を受ける恐れなどがない限り、国外に連れ出された子供を元いた国にいったん戻すことを原則としており、裁判所はこれに従って、子供を日本に戻すよう母親側に命じたという。
子供が日本に戻れば、日本の裁判所で、どちらの親のもとで暮らすのが望ましいかなどが改めて審理されることになるとみられる。
父親の代理人の本多広高弁護士は「ハーグ条約がなければ母親の意向だけで子供の育て方が決まっていたと思われる。子供を日本に戻して話し合いや裁判が進むことになり、適切な判断だ」と話している。
一方、母親は関係者を通じ「子供を不法に奪うつもりはなく、返還命令がなくても7月末に一度帰国させる予定だった。子供は英国で通う学校も気に入っていた」と説明している。
「国境越えた子供の連れ去りは違法」ハーグ条約、日本人の子供に初適用
英国の裁判所、子供を日本に戻すよう命じる
国境を越えて不法に連れ去られた子供の扱いを定めたハーグ条約が、英国で母親と暮らす日本人の子供に初めて適用された。
日本人夫婦間の争いで、母親が子供を連れて渡英。日本で暮らす父親の申請に対して、英国の裁判所が子供を日本に戻すよう命じた。
日本では今年4月にハーグ条約が発効したばかりで、「同条約に基づき日本の子供に返還命令が出されたのは把握する限り初めて。条約の趣旨に基づいた判断だ」(外務省ハーグ条約室)という。
「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」は1980年にオランダ・ハーグで採択されたことから「ハーグ条約」と呼ばれる。加盟国は現在、92カ国。
日本は昨年、国会で承認
片方の親が16歳未満の子供を無断で国外に連れ去った場合、子供をいったん元の居住国に戻して、その国の裁判で養育者(監護者)を決めるという国際的な取り決めだ。
国際結婚の破綻に限らず、今回のように同じ国籍の夫婦にも適用される。
主要8カ国(G8)では日本だけが未加盟だったため、欧米から強く加盟を迫られ、昨年の通常国会でようやく承認された。
外務省などによると、今回のケースは、別居中の日本人母が今年3月末、7歳の子供を連れて英国に渡り、帰国しなかったため、父親がハーグ条約に基づき、子供の返還を求めていた。
英国政府は5月末、父親への支援を決定。英国の裁判所は7月下旬、「約束した期間を超えて英国に滞在させるのは違法な状態」と判断、子供を日本に戻すよう命じた。日本では母親側からの離婚調停が申し立てられている。
英団体「日本の家族法は『人さらい憲章』」
英国の市民団体チルドレン・アンド・ファミリーズ・アクロス・ボーダーズ(CFAB)は、英国人男性と離婚した日本人女性が無断で子供を日本に連れ去った事案を取り扱ってきた。
最高経営責任者(CEO)のアンディ・エルビン氏は2010年、日本の政府と政治家にハーグ条約への加盟を説得するため日本を訪れたこともある。
以前、エルビン氏に話をうかがうと、かなり厳しい言葉が返ってきた。
「これまでは連れ去られた子供を英国に連れ戻す手段がなかった。英国人の親は日本の裁判所に提訴することもできなかった」
「英国人の多くは日本の家族法を、夫婦間に葛藤が生じたとき連れ去りや面会拒否を促す悪名高き『人さらい憲章』とみなしてきた」
エルビン氏は日本のハーグ条約加盟について、「とてもうれしい。両親が離婚したとしても、子供には両方の親と建設的な関係を保ちながら育つ権利がある。連れ去りや面会拒否は子供を含めた当事者全員を苦しめる」と語っていた。
国際離婚が激増
今回は日本人夫婦間の争いだったが、ハーグ条約は主に国際結婚が破綻したケースを想定している。
日本人と外国人の国際結婚は1970年には年間5千件程度だったが、80年代後半から急増、05年には年間4万件を超えた。
一方、日本国内での日本人と外国人夫婦の離婚は1992年に7716件(離婚全体の4.3%)だったのが、2010年には1万8968件(同7.5%)にまで膨らんだ。
それに伴って、日本人が外国から無断で子供を日本に連れ帰ったり、逆に外国人の親が日本から子供を国外に連れ去ったりする事例が増えている。
外国政府から日本政府に対して提起されている子供の連れ去り事案は米国81件、英国39件、カナダ39件、フランス33件となっている(昨年6月時点、日本外務省調べ)。
米国では6億円超の支払い命令、テロリスト扱いも
11年、米国のテネシー州では、離婚後に子供を無断で日本に連れ帰った日本人の元妻を相手に米国人男性が損害賠償を求めた裁判で、元妻は610万ドル(約6億2千万円)という巨額の支払いを命じられた。
米連邦捜査局(FBI)の最重要指名手配犯リストでは、米国人の元夫に無断で子供を連れて日本に帰国した日本人女性の名前がテロリストと同様に扱われていた。
英国では、若い男性が「別れた妻が日本にいるが、子供に会わせてくれない。子供に会いたくて、会いくてたまらない。英政府もどうすることもできない」と訴える悲痛な例もあった。
日本はハーグ条約に加盟していなことから、海外で離婚して生活している母親が子供と一緒に帰国しようとした場合、連れ去りを恐れて、出国を許可されない事態も発生していた。
英国でも立場が弱いのは男
国際結婚が破綻する理由は、性格の不一致、言葉や生活、文化、習慣の違い、家庭内暴力(DV)などさまざまだ。
単独親権制度の日本では、犯罪や禁治産宣告などの問題でもない限り、親権は母親に認められている。英国では離婚後も親権は両方の親にあり、裁判で監護者や面会の条件などを決める仕組みになっている。
男女平等が徹底しているように見える英国でも、家庭裁判所の判断で父親の面会が制限されたり、母親が無断で子供を連れ去ったりする事例が少なくない。
離婚した父親の親権強化を訴える市民団体「ファーザーズ・フォー・ジャスティス」のメンバーはバットマンに扮装してバッキンガム宮殿によじ登ったり、下院でブレア首相(当時)に小麦粉を投げつけたり、過激な活動を続けている。
滑稽で嘲笑を誘う哀れな父親の姿に、自分に対する思いを改めて知る子供も多いという。
DVがあれば返還の必要なし
日本では「外国でのDV(家庭内暴力)被害や生活苦から避難するため、日本への連れ去りは最後の手段として必要」という反対論がある。
しかし、ハーグ条約加盟後も、DVが明らかであれば裁判所は子供を元の居住国に戻す必要はない。
ハーグ条約で返還が拒否できる事例
(1)連れ去りから1年以上経過した後に裁判所に申し立てられ、子供が新しい環境に適応している場合
(2)申請者が連れ去り時に現実に監護の権利を行使していない場合
(3)申請者が事前の同意または事後の黙認をしていた場合
(4)返還により子供が心身に害悪を受け、または他の耐え難い状態に置かれることとなる重大な危険がある場合
(5)子供が返還を拒み、かつ該当する子供が、その意見を考慮するに足る十分な年齢・成熟度に達している場合
(6)返還の要請を受けた国における人権および基本的自由の保護に関する基本原則により返還が認められない場合
今後、日本からの連れ去りが増える事態も予想される。子供には母親だけではなく父親の愛情も欠かせない。母親にとっても父親にとっても子供はかけがえのない存在だ。
何かの事情で離婚に至っても、2人で子供を育てていく姿勢を示すことが大切だと思う。
(おわり)
ハーグ条約:7歳児 日本に戻すよう初の返還命令
国境を越えて連れ去られた子の扱いを取り決めたハーグ条約に基づき、母親とともに英国に滞在していた日本人の子を日本に戻すよう、英国の裁判所が命じていたことが関係者への取材で分かった。日本では、今年4月に同条約が発効。外務省によると、日本の子の返還命令が出されたのは初めて。
関係者によると、日本へ戻すよう命じられたのは別居中だった日本人夫婦の7歳の子。母親が今年3月末、子を連れて英国に渡り、5月になっても戻ってこなかったため、父親が同条約に基づいて子の返還を求めていた。父親からの返還の援助申請に対し、英国政府が5月末に援助を決定。ロンドンの裁判所が今月22日、「出国後に母親が父親と約束した期間を超え、5月以降も子を英国に滞在させていることは、ハーグ条約上は違法な状態に当たる」と判断。今月30日に子を日本へ戻すよう命じた。日本の家裁では現在、母親側から離婚調停と、どちらが子を養う「監護親」となるかを決める審判が申し立てられている。
父親側の代理人の本多広高弁護士は「日本でハーグ条約が発効していなければ、母親の意向で今後の子の扱いが決まっていたと思われる。子を速やかに元の国に戻した上で、話し合いや裁判が進められることになり、適切な判断が出されたと評価している」と話す。
一方、母親は関係者を通じ「子を英国に連れて行ったのは仕事上の都合であり、違法に連れ去る意図は全くなく、今回の司法判断にかかわらず、7月末に子をいったん帰国させることを決めていた。子は4月以降、通っていたイギリスの学校を気にいっていた」と語った。【伊藤一郎】
◇ハーグ条約
「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」の通称。国境を越えて一方の親に連れ出された16歳未満の子の扱いを規定する。主に国際結婚の破綻ケースが想定されているが、同じ国籍の夫婦にも適用される。残された方の親が子の返還10を求めた場合、相手国の裁判所が元の国に戻すかどうか判断する。また、海外に連れ出された子との面会を求めた場合、相手国の支援を受けられる。今年5月時点の加盟国は92カ国。
ハーグ条約適用 英で子どもの日本帰国命じる
世界的な人の移動や国際結婚の破たんの増加などで、子どもが一方の親によって国境を越えて連れ出されることが国際的に問題となっています。
これを解決するルールを定めた「ハーグ条約」を適用して、日本人の子どもを、イギリスの裁判所が日本に帰国させるよう命じたことが分かりました。
ことし4月にハーグ条約が日本で発効したあと、日本人の子どもの返還命令が明らかになったのは初めてです。
「ハーグ条約」は国際結婚が破たんするなどして、一方の親がもう一方の親の同意がないまま子どもを自分の母国など別の国に連れ出した場合、子どもを原則としてもともと住んでいた国に戻す手続きを国際的に定めたもので、日本はことし条約に加盟し4月に発効しました。
これまで日本人の子どもへのハーグ条約の適用が明らかになったケースはありませんでしたが、今月、母親と共にイギリスで暮らしている7歳の子どもについて、現地の裁判所が、日本に居る父親の申し立てを受け、日本に帰国させるよう母親に命じたことが分かりました。
父親の代理人の本多広高弁護士などによりますと、子どもの両親はともに日本人で離婚調停中ですが、ことしになって母親が仕事の都合でイギリスに移り住んだ際に子どもを連れて行き、父親の意向に反したまま現地で一緒に暮らしているということです。
これに対し父親はことし5月、イギリスの政府機関にハーグ条約に基づく援助を申請したうえで、現地の裁判所に子どもの返還を求める申し立てを行いました。
これについてイギリスの裁判所は、母親からも聞き取りをするなどして審理してきましたが、今月22日、母親が子どもをイギリスに滞在させ続けていることがハーグ条約に違反すると判断して、子どもを今月30日までに日本に帰国させるよう命じました。
母親は子どもを帰国させる意向だということで、今後、日本の司法の場で、どちらの親と暮らすのかなど改めて子どもの養育環境が決められるとみられます。
裁判所の判断と命令
イギリスの裁判所は、母親が子どもをイギリスに連れて行ってからおよそ1か月が経ったことし5月以降も現地に滞在させ続けていることが、ハーグ条約が禁止している元の国に戻ることを妨げる行為に当たると判断しました。
命令では、帰国するまでの間、母親と子どもがイギリス国外に出ることを禁止しているほか、帰国の際に子どもの付き添いは母親ではなく親族とすることなども決めています。
父親「とても喜んでいる」
ハーグ条約に基づく返還命令について、父親の代理人の本多広高弁護士は「子どもをもともと居た場所に速やかに戻した状態で、どう生活させるべきか判断する道筋がはっきりしてきたという点で条約の意義は大きい」と評価しています。
そして父親の受け止めについて「ハーグ条約がなければ片方の親の考えだけで子どもの育て方が決められてしまっていたので、とても喜んでいる」と話しています。
母親「外国生活は子どもも喜んでいた」
一方、母親は関係者を通じて「イギリスに行ったのはあくまで一時的なもので、裁判所の決定がなくても7月末には子どもを帰国させることが確定していた。外国の生活は教育のためにも望ましいと考えていて、子どもも喜んでいた」と説明しています。
そのうえで「父親にはこれまでも話し合いを求めたが実質的な内容にはならなかった。父親がハーグ条約を利用したのは今後、子どもの親権を得るのに有利だと思ったのではないか」と話しています。
ことし加盟したばかりの日本
「ハーグ条約」は、世界的な人の移動や国際結婚の増加に伴って、一方の親による国境を越えた子どもの連れ出しが問題となってきたため、国際的に解決するルールとして1980年に作成されました。
90余りの国が締結していますが、日本は長年、加盟していませんでした。
しかし日本人の国際結婚が、2005年には年間4万件を超え、外国で離婚し生活している日本人が日本がハーグ条約に加盟していないことを理由に、子どもと一緒に一時帰国できなかったり、もう一方の親に、無断で日本に子どもを連れ帰った日本人が、相手の国から誘拐などの容疑で国際手配されるような問題が、目立つようになってきました。
こうした事態を受け日本は、ことしハーグ条約に加盟し、4月1日に発効しました。
政府機関が支援 条約の仕組み
ハーグ条約の加盟国の間で、一方の親が、子どもをもともと住んでいた国から自分の母国など別の国に連れ出した場合、もう一方の親が連れ戻したいと希望すれば、現在、子どもがいる国は、「中央当局」と呼ばれる政府機関が、子どもの居場所を探したり、連れ出した親と交渉したりするなどの援助をします。
日本では、外務省が「中央当局」に指定されています。
こうした援助の下でも解決しない場合には、その国の裁判所が原則として子どもを、もともと住んでいた国に戻すよう連れ出した親に命令を出します。
原則として元の国に戻すのは、一方の親に国境を越えて連れ出された子どもは、異なる言語や文化など生活環境が急変するうえ、もう一方の親との交流が断絶されるなど悪影響が大きく、いったんは元の状態に戻したうえで、その国の司法手続きに沿って、子どもの養育環境を判断するのが望ましいと考えられているからです。
しかし元の国に戻すと、かえって子どもに悪影響を及ぼすケースがあるとの指摘も出ています。
子ども守れるか 期待と懸念
条約の効果には期待する声がある一方で、懸念する意見も出ています。
条約への加盟により、日本から外国に子どもを連れ出された親は、相手国の政府機関から、子どもの居場所を探してもらうことや現地の裁判所に子どもを帰国させるよう命令を出してもらうことが出来るようになりました。
言葉や法律など不慣れな国に連れ出され子どもと二度と会えないと思っていた親からは、自分の元に連れ戻せるようになると期待する声が出ています。
その一方で、外国で生活していた日本人の親が相手からのDV=ドメスティックバイオレンスや子どもへの虐待などを理由にやむをえず日本に子どもを連れて戻ったようなケースでは、懸念する意見も出ています。
ハーグ条約には「子どもの心や身体に悪影響を与える重大な危険がある場合は帰国させないことができる」という例外規程が設けられています。
しかし、専門家などからは、どの程度の危険で帰国を拒めるのかがあいまいなうえ、DVや虐待の証明は難しい場合もあり、結果的にハーグ条約が子どもを守ることにつながらないのではないかとの指摘が出ています。
専門家「子どもの心のサポートを」
実際に日本人の子どもが適用されるケースが出たことについて、子どもの心理に詳しい東京国際大学の小田切紀子教授は「子どもは、きょうの生活が明日も同じように続くと思って生きている。今までの生活環境から離れたあとに返還命令によって、また元の場所に戻されるというのは幾重にも親しんだものを失なう心理状況になり、ダメージが大きい。子どもの多くはその気持ちをことばにしていくことが難しいので、気持ちを多面的に理解してサポートすることが求められる」と指摘しています。
子ども連れ去りに強い措置 米下院が新法案可決
米下院は25日、外国人の親が子供を連れ去ることに対処する新法案を可決した。日本などに一層の取り組みを求めるため政府の権限を強化するのが法案の狙い。上院も可決しており、近くオバマ大統領が署名して成立する見通しだ。
法案は、子供が連れ去られた国の政府に対して、米政府が解決のためより強い措置を取れるようにする。
相手国が問題解決に十分取り組んでいないと判断すれば、米政府が相手国に対し、公式な非難声明や国賓訪問の中止、開発援助や軍事援助の停止など様々な措置を取ることができる。また、この問題への各国の取り組み状況をまとめた年次報告書を議会に提出することも、国務省に義務づけている。
法案は特定の国を名指しはしていないが、法案審議の過程では、日本の取り組みが不十分との指摘が議員や米国人の親、NGO関係者から相次いだ。日本は今年4月から子供の連れ去りに関するハーグ条約の加盟国となったが、米政府は加盟前に起きた事案についても、解決に向けた取り組みを日本政府に求めている。(ワシントン=大島隆)
子の返還問題、制裁法成立へ=日本とは覚書締結も-米
【ワシントン時事】米国人との結婚生活が破綻した日本人らが子供を母国に無断で連れ帰る事例が相次いでいる問題で、米下院は25日、子供を米国に戻すため適切な措置を取らない国に対し、政府が軍事支援打ち切りなど制裁措置を科せるようにする法案を全会一致で可決した。既に上院を通過しており、オバマ大統領の署名を経て、近く成立する見通し。
日本政府は4月、こうした事案への対処を求める米国の要求に応じ、連れ去られた子供を元の居住国に戻して親権争いを決着させることを定めたハーグ条約に加盟した。しかし、加盟以前に発生した事案には適用されないため、法案には日本などに一層の努力を促す狙いがある。
法案は対応を怠った国への制裁として、軍事支援打ち切りのほか(1)公の場での非難(2)首脳らの訪問の延期・取りやめ(3)政府開発援助の打ち切り-などを明記。また、連れ去り事案の解決手続きを定めた2国間の覚書を各国と締結するよう政府に求めている。
法案を提出したクリス・スミス下院議員(共和党)は声明を出し、ハーグ条約の適用を受けない事案を解決するため「日本のような国とも覚書を結ぶ必要がある」と強調した。(2014/07/26-09:56)
子ども連れ去りに強い措置 米下院が新法案可決
米下院は25日、外国人の親が子供を連れ去ることに対処する新法案を可決した。日本などに一層の取り組みを求めるため政府の権限を強化するのが法案の狙い。上院も可決しており、近くオバマ大統領が署名して成立する見通しだ。
法案は、子供が連れ去られた国の政府に対して、米政府が解決のためより強い措置を取れるようにする。
相手国が問題解決に十分取り組んでいないと判断すれば、米政府が相手国に対し、公式な非難声明や国賓訪問の中止、開発援助や軍事援助の停止など様々な措置を取ることができる。また、この問題への各国の取り組み状況をまとめた年次報告書を議会に提出することも、国務省に義務づけている。
法案は特定の国を名指しはしていないが、法案審議の過程では、日本の取り組みが不十分との指摘が議員や米国人の親、NGO関係者から相次いだ。日本は今年4月から子供の連れ去りに関するハーグ条約の加盟国となったが、米政府は加盟前に起きた事案についても、解決に向けた取り組みを日本政府に求めている。(ワシントン=大島隆)
米 ハーグ条約に非協力の国に制裁も
国際結婚が破綻した際の子どもの扱いを定めた「ハーグ条約」を巡り、アメリカ議会下院は25日、子どもの返還に向けて適切な措置を取らない国に対し、制裁を科すことを盛り込んだ法案を可決しました。
法案はすでに議会上院で可決されており、オバマ大統領が署名し成立する見通しです。
「ハーグ条約」は、国際結婚が破綻した際、相手の承認を得ずに子どもを国外に連れ去った親が、もう一方の親から子どもを返すよう求められた場合、原則として子どもをそれまでいた国に戻すことを定めたもので、日本ではことし4月に発効しました。
アメリカ議会下院は25日、本会議で子どもの返還に向けて適切な措置を取っていないと判断した国に対し、制裁を科すことを盛り込んだ法案を可決しました。
具体的には、開発援助や軍事支援を停止することや、文化交流事業や国賓としての公式訪問を行わないなどの制裁を科すことができるとしています。
法案はすでに議会上院で可決されており、オバマ大統領が署名し成立する見通しです。
アメリカから日本に子どもが連れ去られたと指摘されているケースは400件以上に上りますが、条約が発効される前の事案は返還の対象にはならないため、法案は、こうしたケースの解決に向けても対応を促すねらいがあるものとみられます。
ハーグ条約発効3か月、子ども返還申請は4件
国際結婚が破綻した際の子どもの扱いを定めたハーグ条約が日本で4月に発効してから3か月間に、子どもを連れ去られた親が、日本の外務省に子どもの返還を求めたケースが4件あることがわかった。
当初は年間数十件に上るとみられていたが、これを下回るペースで、専門家らは「条約加盟が連れ去りの歯止めになっている」とみている。
外務省によると、子どもの返還を求める「返還援助申請」4件のうち1件は、海外から日本に子どもを連れ帰ったケースで、相手国の親が返還を求めている。日本にいる親が拒めば、相手側の申し立てで日本の裁判所が返還するかどうかを初めて判断することになる。
子の返還拒否制裁、上院委も可決=成立可能性強まる―米
【ワシントン時事】米国人と国際結婚した日本人などが夫婦生活の破綻に伴って子どもを母国に連れ去る事例が報告されている問題で、米上院外交委員会は24日、子どもの米国返還に向けて適切な措置を取らない国に対し、連邦政府が軍事支援停止などの制裁措置を科せるようにする法案を可決した。
下院はほぼ同様の内容の法案を昨年12月に可決しており、上院案が本会議を通過すれば、両案の一本化を経て、法案は成立する公算が大きい。
別居・離婚 引き離された親子(下) 会える仕組み 子育て意識共有必要
<支援機関を検討>
別居や離婚により、わが子と引き離され、会いたくても会えない現状を変えるにはどうしたらいいのか。スムーズに面会交流を実現させるには、何が必要なのか。関係者らが模索している。
仙台弁護士会の土井浩之弁護士は、東北で弁護士や臨床心理士ら専門スタッフで構成する面会交流支援機関の設立を考えている。これまで関わってきたケースの中で、頭では交流が必要と理解していても、不安感や不信感から父親に子どもを委ねられない母親が多かったからだ。
東京には、元家庭裁判所調査官や調停委員経験者らで組織する公益社団法人家庭問題情報センター(FPIC)がある。首都圏や関西地方など計10カ所に相談所を設け、中立、公平な立場で年400件ほど面会交流の仲介事業を行う。
土井弁護士はFPICを例に挙げ「身近にこういう機関があれば、面会交流に積極的になれる母親も増えるのではないか。父と母が互いに自尊感情を持ちながら交流をうまく進めるためには、専門スタッフが欠かせない」と強調した。
「父母の片方が親権者になるという現在の単独親権制度から、父母両方が親権を持つ共同親権制度へ民法改正を」。親子の交流が絶たれている当事者でつくる団体「親子ネット東北」(笹裕子代表)は、こう訴える。笹代表は「離婚して一人で育児を抱え込み、悲惨な事件につながることもある。子どもはみんなで育てるという意識を持てば、そういった事件も防げるのはないか」と話す。
<理念の先行危惧>
一方でドメスティックバイオレンス(DV)被害者の女性を支援する仙台弁護士会の小島妙子弁護士は共同親権について「法律を変えるだけでは、混乱する」と話す。「当事者が合意できない場合の手だて、ハラスメントを受けやすい子どもや女性が守られる体制が確立する前に、理念だけが先行すると困ったことになる」と危惧した。
離婚が子どもに与える影響を研究している小田切紀子東京国際大教授(臨床心理学)は「双方の親が離婚後も子どもと交流し、ともに子育てをしようという意識を持つ必要がある」と指摘する。兵庫県明石市の取り組みのように、(1)離婚が子どもに与える影響(2)親同士のコミュニケーションの取り方-などを学ぶ講座を、行政主導で設けることを提案する。「離婚届を出すのは行政の窓口。そこから講座を受ける流れをつくることが望ましい」と話した。
<メモ/養育費不払い貧困も>
別居や離婚後に子どもを養育する親にとって、別居する親が支払う養育費は経済的な基盤となる。だが、養育費がきちんと支払われないケースも多く、一人親家庭の貧困が深刻化している。
仙台市母子家庭相談支援センターには「元夫が養育費を払わない」という相談が多く寄せられる。夫のDVが原因で離婚する人も多く、相手と協議できないケースが目立つ。
相談員によると、DVで傷ついた母親は立ち直るのに時間がかかり、その間仕事もできず、母子の貧困がさらに進む場合もあるという。
別居・離婚 引き離された親子(中) 動きだす自治体 養育支援きめ細かく
親の離婚や別居によって傷つく子どもをなくし、健全な成長を促そうと、独自の養育支援に乗り出す自治体が出てきた。
<両親に働き掛け>
兵庫県明石市。市民課窓口で離婚届用紙をもらうと、A4判のシート「養育に関する合意書」が一緒に付いてくる。養育費の額や支払い方法のほか、別居する親との面会頻度や場所、連絡方法など、養育費と面会交流について両親が話し合って合意した内容を細かく書き込む。
作成した市民相談室の能登啓元・課長は「当事者は離婚届にサインするだけで精いっぱいで、後になって子どものことに気付くことが多い。離婚前に養育について考えるきっかけを提供する狙いがあった」と話す。
シート配布をはじめ、子ども重視の施策を展開する泉房穂市長は、弁護士の資格を持つ。離婚裁判で子どもが大変な思いをするケースをよく見てきたといい、「子どもが泣いているのを放っておけない。子どもに最も近い自治体として、両親に働き掛けたかった」と強調する。
市は、月1回養育専門相談を開いたり、市民相談室の一角に法テラス窓口を開設したりして、今春から相談態勢の充実を図った。神戸家庭裁判所をオブザーバーに、県臨床心理士会や県弁護士会など関係機関で構成する「養育支援ネットワーク会議」も設置し、情報を共有している。
今秋には離婚後も継続して子どもの成長過程を共有できる養育手帳を配るとともに、子どもの心理や養育について両親に情報提供する「養育ガイダンス」を始める予定だ。
泉市長は言う。「泣いている子どもは明石だけでなく、全国にいる。取り組みが全国に広がらないと子どもを救うことはできない」。養育合意書は、市ホームページで公開し、自由にダウンロードできるようにした。
<権利条例を施行>
栃木県那須塩原市は4月、子どもの権利条例を施行した。条文の一つに「父母が離婚する際には面会その他の交流、子どもの監護に要する費用の分担について協議しなければならない」と明記したのが特徴だ。
担当者によると、同市は2012年度の栃木県人口動態統計で人口1000人当たりの離婚率が2.32と県内一高く、離婚によって子どもが不利益にならないような取り組みが必要と条例化した。本年度中に行動計画を作り、施策を具体化する。
<メモ/自尊心傷つく子ども>
両親の別居や離婚は、子どもの心理面に大きな影響を及ぼす。専門家によると、別居親との交流が絶たれると「自分は見捨てられた」「いてもいなくてもいい存在なんだ」と思い、自尊心が傷付き自己肯定感が揺らぐ子どもが多いという。
同居する親が別居親を非難したりすると、別居親に対してゆがんだイメージを持ち拒絶してしまう「片親疎外症候群」という症状が起きる場合もある。
子どもの情緒不安定を防ぐために、会いたいときにいつでも会える環境を双方の親がつくり、子どもと気持ちをつないでおくことが重要とされる。
別居・離婚 引き離された親子(上)/失われた日々/写真の子、どこで何を
夫婦の別居、離婚によって、ないがしろにされがちなのが子どもの立場だ。このため、民法766条が2年前に改正され、離婚した場合の面会交流や養育費などについて、子の利益を最優先にして決めなければならない、と明記された。ただ、現実には感情的な問題などから双方できちんとした話し合いができず、夫婦の別れが親子の別れにつながるケースも少なくない。子どもと引き離された親たちの苦悩や支援の動きを通じて、今後の課題を探った。(生活文化部・越中谷郁子)
<妻がDV被害届>
机に並べた数枚の写真には、仲良さそうに遊ぶ幼いきょうだいが写っている。宮城県内に住む30代男性は毎朝、「今日も元気に過ごすんだよ」と写真に話し掛け、2人の一日の無事を祈ってから出社するのが、日課になった。
昨年の初夏のことだった。男性が残業を終えて帰宅すると、寝ているはずの妻と子ども2人の姿はなかった。何かあったのか。不安にかられて最寄りの警察署に行くと、「奥さんからドメスティックバイオレンス(DV)の被害届が出ている」と言われた。
夫婦げんかはあったが、DVは身に覚えがなかった。何日たっても何の連絡もない。食事も喉を通らず、眠れない状態の日々が続いた。約1カ月後、地方裁判所からDV保護命令が出された。「結婚当初からDVを受けていた。とにかく恐ろしい」という妻の主張が認められた。
結婚して約15年。なかなか子どもに恵まれず、上の子はやっと授かった子だった。かわいくて仕方なくて、育児もできる限りのことはやったと思っている。下の子も生まれて、待ち望んでいた4人家族になった。
ことしに入り、妻が離婚調停を申し立てた。男性は子どもとの面会交流を求める調停を申し立て、話し合いは継続中だ。
<伝えられぬ思い>
突然いなくなった日から、子どもがどこで、どう暮らしているのか分からないまま。手元にある写真は、調停の場で妻の代理人に求めてようやく手に入れた。子どもは会えない間に随分大きくなっていた。
自宅の中はそのままにしてある。「大好きだよ、パパといつでも会えるよと、抱きしめて伝えたい」。男性は涙を拭きながら訴えた。
同じような悩みを持つ当事者は多い。4月下旬、当事者同士苦しい胸の内を語り合おうと、親子ネット東北支部が発足した。代表の笹裕子さん(57)は、祖母の立場で孫に会えない悲しみを背負う。長男が離婚し、ことし4歳になる孫がどうしているのか知るすべがないのがつらい。
「おばあちゃんとして、孫に愛情をかけてやれないことが悲しい。苦しむ長男を見ているのもつらい。息子と同じ立場の人が笑顔で暮らせるようにしたい」。笹さんの願いだ。
◎増える面会交流調停
<メモ>子どもに会いたいと家庭裁判所に面会交流調停を申し立てる人が、全国的に増えている。
司法統計によると、家裁の新規受理件数は、2000年度の2406件から、12年度は9945件と約4倍になった。東北6県では2000年度178件だったのが、12年度は568件に増えた=グラフ=。
離婚問題に詳しい仙台弁護士会の土井浩之弁護士は背景の一つとして「共働きが増え、夫が積極的に子育てに関わるようになったこと」を挙げる。「母親が親権を持つケースが多い中で、子どもと会いたいと願う父親が増えたのではないか」とみている。
世界の雑記帳:離婚前の夫婦に「講習」義務化、米オクラホマ州が再考促す狙いで
[オクラホマシティー 5日 ロイター] – 米オクラホマ州で今週、18歳未満の子どもを持つ夫婦が性格の不一致を理由に離婚を希望する場合に、「離婚前講習」を義務付ける法案が議会を通過した。
州議会のジェイソン・ネルソン議員とロブ・スタンリッジ議員(ともに共和党)によると、離婚が子どもに及ぼす影響を教えることで再考を促すのが狙い。11月1日から施行される。
スタンリッジ議員は「オクラホマ州の離婚率は非常に高い。夫婦が離婚せずに済むためにできることがわれわれにあるなら、するべきだろう」と述べた。
対象者は、裁判所の指示を受けてから45日以内に研修を終える必要がある。受講料は15―60ドル。やむを得ない事情がある場合のみ免除される。
2014年06月06日 15時20分
「ハーグ条約」日本でも発効 希望と不安、親心揺れる
国際結婚後に離婚した夫婦間の子の扱いを定めた「ハーグ条約」が今年4月、日本でも発効した。海外に連れ去られた子供を取り戻せると期待する親がいる半面、外国から元配偶者が取り返しに来るかもしれないと不安を募らせる人も。窓口となる裁判所は引き渡し現場などで子供を傷つけることがないよう、具体的運用について検討を続けている。
娘が描いた絵や手紙、写真を前に語る渡辺美穂さん
「ようやく一歩、娘に近づいた気がする」。東京都台東区の渡辺美穂さん(54)はうっすらと涙を浮かべた。9年前、米国人の元夫に長女を連れ去られて以来、娘に会いたい一心で条約への早期加盟を訴えてきた。
■娘は今どこに
1989年に結婚し、長女を授かった後に米国に移住したが、やがて夫が配偶者間暴力(DV)をふるうように。長女を連れ、逃げるように帰国した。離婚後、繰り返し面会を求めてきた元夫をふびんに思い、中学生だった長女を独りで遊びに行かせたところ、帰ってこなくなった。
元夫は米国で単独親権を得たとみられ、米国まで長女を迎えに行った渡辺さんを「日本に連れ帰れば誘拐犯になる」と脅したという。
長女は現在22歳だが、居場所は分からないままだ。一緒に暮らすことはおろか、電話で話すことさえできずにいる。
ハーグ条約で返還対象となるのは、加盟後に発生した連れ去りに限られる。加盟ですぐに返還が実現するわけではないが、渡辺さんは「国際ルールの下で夫婦間の紛争を解決する流れが強まれば、娘の件も解決の糸口が見つかるかもしれない」と前向きだ。海外では過去への遡及適用を求める動きもあるという。
外務省によると、日本人の親が国外にいる子供の返還を求める申請は4月末までに2件あった。返還まで至らなくても、子供と定期的に会えるようにする「面会交流援助」の申請も14件あり、手続きが進んでいる。
一方、子供を日本に連れ帰った親たちは不安を募らせる。条約加盟をきっかけに、海外の元配偶者が現れる可能性を懸念するためだ。十数年前に元夫に無断で子供と帰国した関東地方の女性は「元夫が連れ戻す権利を主張してくるのではないか」とおびえる。
■DVの危険も
国内の民間シェルターの関係者の多くはDV被害者らを保護する立場から条約発効の影響を懸念する。NPO法人全国女性シェルターネットの近藤恵子共同代表は「子供を日本に連れ帰ったケースでは、母親がDVを受けているケースが多い。加盟で被害者を再び危険にさらしかねない」と批判する。
日本弁護士連合会は加盟に合わせ、子供の返還や面会を求める親たちに弁護士を紹介する制度を始めたが、151人の担当弁護士のうち約6割が関東に集中。弁護士がいない県もあるという。
国際結婚の問題に詳しい金澄道子弁護士は「子供のケアに当たる福祉の専門家など、法律家以外も加わった幅広い支援の仕組みをつくる必要がある」と指摘。「子供の利益を第一に考え、個別の事情に対応できる体制づくりを急ぐべきだ」と話している。
▼ハーグ条約 正式名称は「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」。一方の親が子供を無断で国外に連れ去った場合、原則として元の居住国に戻すと定めている。日本人の親が離婚後に子供を連れて帰国するケースが海外で問題化し、日本が欧米諸国から加盟を求められていた。1983年に発効、現在91カ国が加盟している。
ハーグ条約:「発効前の連れ去りも解決を」米国務省大使
日本で4月に発効したハーグ条約の協議のため来日した米国務省のスーザン・ジェイコブス大使(児童問題担当特別顧問)が19日、毎日新聞のインタビューに応じ、「(発効前に子を連れ去られた)米国の親は子供と会うことを望んでおり、それらの解決も重要だ」と述べ、条約発効前に発生した子の連れ去り事案の解決にも期待感を示した。
条約は国際結婚が破綻した夫婦間の子(16歳未満)の扱いなどを定め、無断で日本に連れ去られた子を原則として元の居住国に返還することを義務づけている。だが、発効前の事案は適用されない。
一方、配偶者の暴力などがあれば返還を拒否できる規定があるが、証明が難しいという指摘もある。ジェイコブス大使は「警察に行けば記録が残る。まずは病院やシェルターなどに支援を求めてほしい」と語った。
米国務省によると、日本に連れ去られた事案は58件80人(2月現在)でメキシコとインドに次いで3番目に多いという。【長野宏美】
条約加盟前事案を協議へ=子の連れ去り問題-米特別顧問
【ワシントン時事】米国務省は12日、ジェイコブス特別顧問(児童問題担当)が同日から20日までの日程で中国と日本を訪問すると発表した。日本で政府関係者らと会談し、日本のハーグ条約加盟前に発生した子の連れ去り事案の解決に向けて協議する。
日本が4月に加盟したハーグ条約は、海外での結婚生活が破綻し、日本に無断で連れ去られた子どもを元の居住国に返還することを原則義務付けている。しかし加盟前の事案には条約が適用されないため、米側は米国人の親が返還を求めている全ての事案の解決を日本側に求めている。
ジェイコブス氏は中国でも政府関係者らと会談し、ハーグ条約をめぐり意見交換する。(2014/05/13-11:46)
親子ネット東北:離婚や別居で会えない親子の悲劇NO 仙台で支援団体、実情や法の不備訴え /宮城
離婚や別居で子どもと会えなくなった親たちを支援する全国組織の東北支部「親子ネット東北」は5日、仙台市青葉区の勾当台公園いこいの広場で「バルーンイベントin仙台 守ろう親子の絆!」を開き、片親の一方的な連れ去りで親子が会えなくなる実情や、法制度の不備を訴えた。
親子ネットによると、一方の親が離婚後の親権を得るため、他方の親に無断で子供を連れ去り、引き離してしまうことが少なくない。米国など他の先進国では、そうした行為を禁止する法律があるが、国内は未整備で、調停で面会や交流の実施を求める審判が出ても、罰則がないため従わないケースがあるという。
ハート型風船を配りながら理解を呼びかけた世話人の笹裕子さん(57)は「こどもの日に、こうした現実を訴えかけようと思った。日本では家族の形が変わっているのに法律が昔のままで、離婚後の子供や親の権利が守られていない。子や孫に会えない悩みを持つ人は連絡してほしい」と話している。【三浦研吾】
(私の視点)ハーグ条約発効 子の利益かなう制度運用を コリン・ジョーンズ
国際的な子の奪取に関するハーグ条約が発効した。歓迎すべき展開だが、今後の運用にはなお不安が残る。
第一に、条約の趣旨が十分理解されていないように見えることだ。国際結婚が破綻(はたん)した時のケースがよく報じられるが、親が日本人同士でも、片方の親が子を海外に連れ去れば適用される。内縁関係の夫婦の子…
以降の文章は元記事から参照ください。
子どものことを忘れないで 養育費や面会交流 離婚届交付時に参考書式を配布 兵庫県明石市がサポートに乗り出す
■新訳男女 語り合おう■
両親が別れた後の子どもを支援しようと、兵庫県明石市が4月から「こども養育支援ネットワーク」の取り組みを始めた。養育費や面会交流の取り決めを記入する書類を離婚届と一緒に配布し、相談会も開催。親権や養育をめぐる争いが増える中、行政ができるサポートとして注目されている。
明石市が配布しているのは「こども養育プラン」と「こどもの養育に関する合意書」の2種類。まず「プラン」に、子どもの生活拠点▽養育費の額や支払い時期▽面会交流の方法や頻度-などを書き込み、その要約を「合意書」に記入して父母が署名する。
このほか、家庭裁判所の元調査官らによる無料相談を月1回、市役所で開催。弁護士への相談を希望すれば県弁護士会につなぐなど関係機関とも連携する。
法務省によると、こうしたサポートを自治体が取り組むのは「聞いたことがない」という。
「これまでは『法は家庭に入らず』との考えが根強かったが、児童虐待などが増え、家庭だけに任せてはいられなくなった」。明石市の泉房穂市長は、導入の理由をそう説明する。
2012年の司法統計によると、面会交流を求めた調停や審判の申し立ては1万1459件で、10年前の約3倍に増加した。こうした状況を受け、12年4月施行の改正民法に離婚後の子の監護に関して協議で定めるべき事項として「面会交流」と「養育費の分担」を明記。離婚届に両事項を取り決めたかどうかの確認欄が新たに設けられた。
ただ、未記入でも受理されるため「実効性に乏しい」との声も。明石市独自の書類も提出義務はなく、法的拘束力もないが「最大の被害者は子どもなのに、親の関心が向かないことが問題。離婚届と同時に書類を渡せば、子どものことを考えてもらえるはず。そこに一番の意味がある」(泉市長)。公正証書を作る際の資料としては有効という。
離婚後の子どもの支援については、これまで民間主導だった。そこでは申し出のあった一部の子どもにサポート対象が限られ、課題となっていた。
その点、離婚の際に必ず利用する行政窓口から支援がスタートすれば、対象は広がる。面会交流の橋渡しなどに取り組むNPO法人「北九州おやこふれあい支援センター」の理事長で、福岡県立大名誉教授の宮崎昭夫さん(71)は「子どもの権利を守るのに一定の社会的コントロールが働き、意義がある」と評価する。
欧米では、離婚後の養育を詳細に記入する計画書「ペアレンティングプラン」を提出しないと原則、離婚できない国もある。宮崎さんは「明石市の試みが九州の自治体にも広がってほしい」と話している。
明石市は「他の自治体にも活用してもらえれば」と2種類の書式を市のホームページで公開している。
=2014/05/03付 西日本新聞朝刊=
ハーグ条約:「子の連れ去り」詳しい弁護士が関東圏に偏り
◇徳島や秋田など登録ゼロの県も
国際結婚などが破綻し、一方の親が外国に子を連れ去った場合の扱いを定めた「ハーグ条約」で、返還手続きなどに携わる全国の弁護士の登録数は関東圏が6割を占める一方、登録ゼロの県もあり、地域的な偏りがあることが分かった。専門家は「紛争解決まで数カ月かかる場合もあり、きめ細かな対応が必要。地方の弁護士充実が課題だ」と指摘している。
ハーグ条約は、親が無断で子を国外に連れ出した場合、もう一方の親の返還請求に基づき、子を元の国に原則戻すことを規定する。国際結婚の増加によるトラブルの多発などを受け、主要8カ国(G8)で唯一未加盟だった日本も加盟を決め、今年4月に発効した。
発効に伴い、日本弁護士連合会(日弁連)は子の返還や面会を求める親、子を連れ帰った親への弁護士紹介制度を始めた。全国の弁護士会を通じて全国で151人を登録したが、ブロック別の内訳は関東が93人と突出する一方、近畿と九州各16人▽北海道11人▽中国・四国6人▽中部5人▽東北4人−−にとどまっている。徳島や秋田など登録ゼロの県もある。
日弁連は登録の際、家族法などの知識に加え、当事者や当局と交渉する英語力も求め、登録が伸び悩んだ。徳島弁護士会で人選を担当した滝誠司弁護士は「法実務レベルの英語を日常的に使う弁護士が少なく、登録には慎重になる」という。
同条約は強制的な返還手続きの一方、調停など話し合いによる解決を求めており、弁護士の役割は大きい。ただ、スキルアップは各弁護士任せが実情。山梨県弁護士会で登録された反田(そった)一富弁護士は「国際ビジネスに関わる弁護士は増えたが、海外の家族法に詳しい弁護士は少ない。個人的に20年以上英語を学んでおり、役に立てばと引き受けた」と話す。
国の人口動態統計によると、2012年の国際結婚は2万3657件で、離婚は1万6288件に上る。樋爪誠・立命館大教授(国際私法)は「連れ去りの背景には相手の暴力なども考えられ、当事者もぎりぎりの精神状態。子の返還後も親権を巡る交渉が必要で長期的支援が欠かせない。研修の充実など弁護士の養成を進め、事例を共有して的確な支援につなげることが大切だ」としている。【藤河匠】
ハーグ条約:面会交流援助申請が14件 発効1カ月
国際結婚が破綻した夫婦間の子(16歳未満)の扱いなどを定めた「ハーグ条約」は1日、発効から1カ月を迎えた。外務省ハーグ条約室によると4月末現在、国境を越えて子を連れ去られた親が面会を求める「面会交流援助申請」が14件。うち8件で援助が決まり、残る6件は審査中。
14件のうち、海外の親が日本にいる子との面会を求めたのは9件。逆に日本の親が海外の子との面会を要求しているのが5件。一方、父か母が子を国外に連れ去った場合、子を元の国に戻すよう求める「返還援助申請」も2件あった。いずれも日本にいる親からで、同室が審査を続ける。【伊藤一郎】
ハーグ条約加盟 国内の連れ去りにも目を
国際結婚が破綻した後の子どもの扱いを定めたハーグ条約は正式名称を「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」という。
一方の親が子どもを国外に連れ去ることを違法とするのが最大の特徴で、いったん元の国に戻すことなどを定める。国境を越えることで生活が急変し、子どもに悪影響を与える恐れがあるからだ。
日本は今月から、そのハーグ条約に正式加盟した。一方の親が国外に子どもを連れ去った場合、今後は条約に基づく国際ルールの下で解決を図ることになる。
子どもを奪われた親が返還を申し入れると、相手国は子を捜して両国が面会や返還をあっせんし、当事者間で解決を促す。対立が続けば裁判所の返還命令を経て子どもを元の国へ返さなければならない。虐待など危害が及ぶ恐れがあるときは、返還を拒否できる。
ただ、日本人女性の場合は家庭内暴力(DV)が原因で子どもと一緒に帰国することも多く、関係者には「逃げ場がなくなる」と危ぶむ声もある。家族間の問題を一律のルールで解決するのが難しい例も想定される。政府は国内外の支援態勢を充実させるべきだ。
同時にまた、国内の問題にも目を向ける必要がある。日本では一方の親が子どもを連れて家を出ても原則的に罪には問われず、養育をめぐる深刻なトラブルに発展する事例も少なくないからだ。
家庭裁判所の調停や審判でも、連れ去って一緒に暮らしている方の親が親権を得る場合が多いという。こうした現状は、やはり何らかの改善を図るべきだろう。
背景にあるのは親権の問題だ。欧米諸国の多くが離婚後も子どもの成長に両親が責任を持つ「共同親権」の考え方を採用しているが、日本は一方の親だけに認める「単独親権」になっている。
欧米との親権制度や家族観などの違いが国際結婚の破綻をめぐるトラブルの要因とも指摘される。ハーグ条約加盟を契機に、DVや虐待から守る態勢を整えた上で、子どもの健全な成長を第一に考える方策を検討していきたい。
=2014/04/23付 西日本新聞朝刊=
宮城)離婚などで子らと会えぬ人を支援 女性ら支部設立
離婚や別居で子や孫に会えなくなった人をサポートする全国組織の東北支部が20日、立ち上がった。中心になって動いた一人は、孫に会えなくなった仙台市の女性だ。同じ立場の人に、「一人で苦しまないで」と呼びかける。
仙台市泉区の笹裕子(ひろこ)さん(57)は、もうすぐ4歳になる孫と3年ほど会えていない。長男が離婚し、孫は母親に引き取られた。思い浮かぶ姿は、赤ちゃんのまま。同じ年頃の子どもを見ると胸が締め付けられる。
海外の映画で描かれるように、別れた後も親子が定期的に交流する生活を想像していた。
現実は違った。孫の好きなスイカを送ると、そのまま送り返された。電話もやめてほしいと断られた。誕生日やクリスマスにはカードを送るが、読まれているかは分からない。
苦しむ息子にかける言葉は見つからず、自分の親にも相談できない。孤立感を抱えていたとき、離婚した親子が交流できる仕組みを作ろうと活動している「親子の面会交流を実現する全国ネットワーク」(親子ネット)の存在を知った。
2008年、東京にできた。互いの悩みを相談しあったり、親子の交流を保障する法律の制定を議員に呼びかけたり、自治体に支援を求めたりしている。
その後、福島や岩手の同じ境遇の人たちとつながり、悩んでいるのは一人ではないと少し楽になった。全国14番目の東北支部を一緒に立ち上げることにした。匿名で活動する人が多い中、あえて名前を出すことにした。誰もが当事者になりえる現実の話として、イメージしてほしいからだ。
20日に仙台市で開いた設立集会で、笹さんは「親側の会いたいという気持ちを押しつけたいのではなく、子が幸せになってほしいというのが一番の願い」と強調した。孫に送るカードに込める思いは、「いつも忘れないでいるよ」。両親が離婚しても、多くの人に愛されて育ったと感じてほしい。そのためにどういう関わり方ができるかを、みんなで考えたいと思う。
東日本大震災の後、経済的に苦しくなって離婚したり、原発事故の影響で別居したりする家族の話を耳にする。「東北の人は離婚について話したがらないが、潜在的な当事者は多いと思う。そんな人の孤立を防ぎたい」
■面会求める申し立て 仙台家裁、10年で3・7倍
県内の12年の離婚件数は3957件。婚姻件数1万2315件の3分の1近い。民法で、離婚後の親権は一方の親にしか認められていないため、離婚で子どもと会えなくなることは珍しくない。親子ネットによると、全国で毎年15万~16万人の子どもが片方の親との交流を絶たれているとの推計があるという。
子どもと定期的に会う面会交流を求める家庭裁判所への調停・審判の申し立ても増えている。12年に仙台家裁が新たに受け付けたのは169件。02年の46件の3・7倍に増えた。
離別の子と交流確保を 東北3県の親たち、全国ネット支部設立
離婚や別居によって子どもと離れて暮らす岩手、宮城、福島3県の親などが20日、「親子の面会交流を実現する全国ネットワーク」(親子ネット 東京)の東北支部を設立した。親子の交流が絶たれているようなケースの解消に向け、当事者同士で情報を共有するとともに、法整備や公的支援を行政などに働き掛けていくことも検討する。
仙台市青葉区の東京エレクトロンホール宮城で設立集会があり、離婚訴訟で係争中の当事者やその家族、支援者ら約15人が今後の活動方針などを確認した。
宮城県の発起人を務めた笹裕子さん(57)=仙台市泉区=は息子夫婦の離婚を受けて参加した。「親と離れた子どもの幸せのため、同じ悩みを抱える人たちと共に問題解決に向け勉強していきたい」と話した。
親子ネットによると、子どもや孫と会えない親や祖父母が面会の機会を求め申し立てる調停や裁判は、年々増えているという。鈴木裕子代表(45)は「子どもの幸せを考えない連れ去りが起きている実情を、当事者が社会に向け発信することが大切だ」と指摘する。
東北支部は定期的に会合を開くほか、街頭での啓発活動を予定している。
ハーグ条約発効 在外公館も積極関与を
国際結婚が破綻し、子どもの奪い合いが起きたらどうするのか。その解決ルールを定めたハーグ条約が今月、国内で発効した。
片方の親が16歳未満の子どもを国外に連れ去り、もう一方の親から返還の申し立てがあれば元の国に戻すことを原則としている。
既に90カ国が加盟している。海外に連れ去られた子どもの返還も円滑になるかもしれない。
ただ、条約が採択されたのは34年も前で、子どもの権利保護など不十分な点は少なくない。
とりわけ返還時に子どもの意思が反映され、戻った後の安全も確保されるかどうかが心配だ。
国内で加盟に慎重な意見があったのも、日本人の妻が連れ帰った子どもの多くが外国人の夫から虐待を受けていたためだ。
政府や司法当局はこうした事情を十分に考慮し、子どもの利益を最優先に対応すべきだ。
日本に子どもが連れ去られた場合、外国からの申立窓口は外務省になる。子どもの居場所を捜し、東京、大阪の両家庭裁判所のいずれかが返還の是非を決める。
逆に、国内から連れ去られた時は外務省が相手国と交渉し、相手国の機関で判断する。
元の国に戻ると暴力を受ける恐れがあるときは、返還を拒否できるとしている。
問題はそのハードルが高過ぎることだ。連れ去った側が裁判所で将来にわたって被害を受ける可能性も立証しなければならない。
外国で証言を集めるのは困難を伴う。在外公館は相談に積極的に応じ、被害記録を証拠として文書で残すなどの支援を求めたい。
返還命令が出ても親が拒否した場合、執行官が親子を引き離す。その際は細心の注意が必要だ。
力ずくで取り上げれば、子どもに精神的なダメージを与えかねない。最高裁は粘り強く説得に努めるよう執行官に徹底してほしい。
離婚後の子どもの扱いをめぐる紛争は、国外に限った問題ではない。片方の親が無断で子どもを連れ去ったり、逆に面会を拒否されたりするケースが増えている。
日本は欧米と違い、離婚後は父母いずれかの単独親権しか認められていない。政府や国会はこうした制度が紛争の背景にあることを認識する必要がある。
子どもが、離別した親との面会を望んでも大人の都合で実現できないとしたら、あまりに理不尽だ。条約発効を機に、離婚後の親権や親子交流のあり方についても見直したい。
ハーグ条約、国際結婚の邦人らに米で説明会
【ロサンゼルス=共同】国際結婚が破綻した後の子供の扱いを定めたハーグ条約に日本が正式加盟したことを受け、米ロサンゼルス市内で11日、現地の日本総領事館などが主催し、国際結婚した米国在住の邦人らを対象にした説明会が開かれた。
国際家族法が専門の大谷美紀子弁護士が講演し、親権に対する日本と欧米の考え方の違いから生まれる問題や、子供を夫婦の一方の母国に連れ帰ることによって生じ得る影響などを説明。約30人が耳を傾けた。
出席者からは「自分が子供を(日本に)連れ帰った場合、具体的に何が起こるのか」などの質問が相次いだ。
米国人の夫と離婚調停中だという邦人女性(35)は「今まさに関心のある話なので参考になった」。米国人の夫との間に生後4カ月の息子がいる別の30代の会社員女性は「子供が生まれると国際結婚ということを強く意識する。ハーグ条約はネット上では否定的な情報が多いが、子供にとって母子関係、父子関係を守るために必要な条約だと分かった」と話した。
子の利益最優先で条約運用を
国際結婚が破綻した際、子どもをめぐる国境を越えた争いをどう解決するか。その基本的なルールを定めたハーグ条約が1日、日本で発効した。日本人の母親が子どもを連れて帰国するケースが相次ぎ、米国などが「連れ去りだ」として加盟を強く求めていた。
国際ルールで紛争を解決するのは、当然だろう。ただ個別の事情は様々だ。子の利益を最優先に、丁寧に運用していく必要がある。
親の片方が16歳未満の子を、居住していた国から一方的に国外に連れて行った場合は、もとの国に子どもを戻したうえで紛争を解決する。これが条約の原則だ。住み慣れた居住国にいることが子の利益になるという考え方がある。
たとえば、母親が子どもを連れて日本に帰国した場合、外国人の父親の申請を受けて、外務省が子どもの居場所を捜す。母親が子どもを居住国に戻すことに応じなければ、最終的に家庭裁判所が判断する。
日本では、加盟に慎重な意見も強かった。配偶者による暴力(DV)から逃げるように帰国した母親が少なくないとされるためだ。
こうした個別の事情への配慮はもちろん必要だ。条約は、子に重大な危険がある場合は例外としている。条約の具体的な手続きを定めた国内法では、家庭裁判所が判断する際には、子どもに悪影響を与えるようなDVのおそれの有無も考慮するとされた。
ただし証拠がなければ裁判所も判断できない。海外でDVに悩む親に対し、在外公館が相談に乗るなどの支援が必要になる。
子の利益を考えるうえでは、親同士の対立が先鋭化しがちな裁判所に行く前に解決できる仕組みを充実させることが大切だ。今回、裁判外の紛争解決手続き(ADR)機関として、弁護士会などの5カ所が外務省の委託を受けた。しっかり機能すれば、早期かつ柔軟な解決が期待できる。
紛争の未然防止には、ハーグ条約について、広く一般に周知することも必要だろう。
もっと十分な手だてを ハーグ条約
国際結婚破綻後の子どもの扱いを定めたハーグ条約に日本が正式加盟した。これに伴い、話し合いなど裁判以外の方法で解決する手続き(ADR)の業務も沖縄弁護士会で始まった。
前進だが、沖縄の女性や子どもの利益を確保する上ではさまざまな仕組みや制度改善が必要で、これは第一歩にすぎない。政府はもっと十分な手だてを講じるべきだ。
条約は、16歳未満の子を一方の親が国外へ連れ去った場合、残された親が求めれば原則として元の国に返さないといけない、と規定する。米国人男性との結婚が破綻した日本人女性が子を連れて帰国した例で言うと、ADRを介した話し合いが不調に終われば、東京か大阪の家庭裁判所が返還命令を出すことになる。
条約の規定は、慣れ親しんだ元の居住国にいることが子どもにとって利益だという考えに基づく。子を連れて母国に帰ることを、米国などは「誘拐」のように見ている、という事情もある。
加盟を拒む理由として日本は夫の家庭内暴力(DV)を挙げていたが、米国は「ごく限られた事例だ」と主張していた。
だが国際離婚を手掛けた弁護士の大貫憲介氏は、「子を連れ帰るのは夫のDVや虐待に苦しんだ女性が大半だ」と言う。妻が夫の虐待やDVを立証し、家裁が子どもに「重大な危険」が及ぶと判断すれば、返還を拒否できるとの規定が条約にはある。だが厳密な立証を求められたら敗訴しかねない。
元妻が米国在住中に日本の在外公館に相談していれば、面談記録が証拠になるというが、そんな仕組みなど知らない人が大半だろう。外務省を通じ米国の病院や警察から診断書や相談記録を取り寄せるのも可能とするが、どの程度機能するか。傷の写真なども撮っておかない人が多いはずだ。政府は制度の周知を徹底してもらいたい。
裁判を東京と大阪の家裁に限定しているのも問題だ。政府は裁判官を公費で沖縄など当事者の所在地に派遣して尋問することは可能というが、あくまで可能性にすぎない。派遣を確実に行うことを明文化すべきだ。
沖縄にはかつて国際福祉相談所があり、国際結婚が破綻した場合の相談を受けていたが、予算削減で1998年に廃止された。復活してもらいたい。そもそも、米国の元配偶者から養育費を確実に徴収する制度を確立すべきだ。
子の奪い合い、歯止めかかるか ハーグ条約に日本加盟
結婚が破綻(はたん)した夫婦のどちらかが国外に子どもを連れ出し、相手から返還を求められた場合、原則、子を元の居住国に戻さなければならなくなった。日本が1日、ハーグ条約に加盟したためだ。国際結婚した日本人の離婚は年約2万件。国境を越えた子の奪い合いに、歯止めはかかるのか。
「日本は、ハーグ条約に加盟します。私には、娘に会う権利があります」。先月、千葉県の女性(34)は、娘(14)と暮らす米国人の元夫の両親に手紙を送った。「彼女は米国市民。二度と連絡しないで」。メールで返事が届いた。
元夫とは九州の米軍基地で出会い、妊娠して結婚したが、生活費を渡してくれなかった。紙おむつも買えず、基地内にある病院の乳児健診で「虐待している」と疑われた。元夫は2001年、女性に無断で当時8カ月の娘を米国に連れて行き、両親に託した。
2年後、女性は元夫の両親の家をつきとめ、娘に会いに渡米。その後、娘に会えたのは3回だけで、5年前、完全に拒まれた。
条約は、子どもの返還については今月1日以降の事例から適用されるが、それ以前の事例でも、子との面会について、国が居場所の特定などで支援できる。
「日本もハーグ条約加盟で、やっと米国と同じ土俵に立てる。対等な立場で交渉してほしい」。外務省を通じて、面会交流を求める書類を米国に送る予定だ。
一方、日本人の元妻に、娘3人を連れ去られたカナダ人男性(43)。11年に日本へ移住し、昨年は3回、娘たちに会えた。だが、事前に連絡すると拒まれる。面会はいつも「突撃」だ。「条約加盟で面会しやすくなると思う。法的に守られた状態で、子に会いたい」
日本に条約加盟を強く働きかけてきた米国。国務省が「子どもが日本に連れ去られた未解決事案」と認定しているのは58件、80人で、国別ではメキシコ、インドに次ぐ。米議会では、取り組みが不十分な加盟国に制裁などを科せるようにする法案が審議中だ。
■「国内」は対象外、法整備求める声
日本人の場合、海外で夫からの家庭内暴力を受けるなどし、逃げるように帰国した女性が多いとされる。この場合、外国の親からの申し立てで、外務省が子の居場所の捜索や、仲裁機関の紹介などの支援を担う。
連れ去った親が引き渡しに応じなければ、東京、大阪両家裁のいずれかが引き渡しの是非を判断。虐待などで「子の心身に重大な危険」があると認められれば、例外的に引き渡しを拒める。一方で、家裁が強制的に子の引き離しを命じることもできる。逆に、日本から子を連れ去られたケースでは、日本の親が外国の政府機関に支援を申請。その国の裁判で判断される。
日本人夫婦間でも、どちらかが子を海外に連れ去れば条約の対象だが、国籍にかかわらず、国内で起きた「連れ去り」は対象外だ。先月末、東京・渋谷では離婚して子と会えなくなった親たちが、「日本でも連れ去りを禁じる早期の法整備を」とデモ行進で訴えた。
日本の民法では離婚後、親権は片方の親のみに移る。面会交流は、離婚時に取り決めるが、強制力はない。子を連れ出し、養育の実績をつくった親が親権争いで有利になるため、子の奪い合いも起きている。
自民、民主、公明など超党派の国会議員約50人は3月、親子断絶防止議員連盟(会長=保岡興治元法相)を設立した。月1回、当事者や有識者から意見を聴き、法整備を模索する。(杉原里美、田村剛、ワシントン=大島隆)
◇
〈ハーグ条約〉正式な名称は「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」。16歳未満の子が無断で国外に連れ出された場合、子を元々住んでいた国に戻し、誰が面倒をみるかを裁判で決めるよう定めている。加盟国は、日本を含めて91カ国。子を連れて帰国した日本人の母親が、外国人の父親に子を会わせない事例が多いとして、欧米諸国が日本に早く加盟するよう強く求めていた。アジアは韓国、タイ、シンガポール、スリランカが加盟する。中国は香港、マカオのみで、本土には適用されない。
ハーグ条約に日本が加盟 子供の奪い合いは元の居住国に戻すルールに
子の奪い合い、歯止めかかるか ハーグ条約に日本加盟
結婚が破綻(はたん)した夫婦のどちらかが国外に子どもを連れ出し、相手から返還を求められた場合、原則、子を元の居住国に戻さなければならなくなった。日本が1日、ハーグ条約に加盟したためだ。国際結婚した日本人の離婚は年約2万件。国境を越えた子の奪い合いに、歯止めはかかるのか。
「日本は、ハーグ条約に加盟します。私には、娘に会う権利があります」。先月、千葉県の女性(34)は、娘(14)と暮らす米国人の元夫の両親に手紙を送った。「彼女は米国市民。二度と連絡しないで」。メールで返事が届いた。
元夫とは九州の米軍基地で出会い、妊娠して結婚したが、生活費を渡してくれなかった。紙おむつも買えず、基地内にある病院の乳児健診で「虐待している」と疑われた。元夫は2001年、女性に無断で当時8カ月の娘を米国に連れて行き、両親に託した。
2年後、女性は元夫の両親の家をつきとめ、娘に会いに渡米。その後、娘に会えたのは3回だけで、5年前、完全に拒まれた。
条約は、子どもの返還については今月1日以降の事例から適用されるが、それ以前の事例でも、子との面会について、国が居場所の特定などで支援できる。
ハーグ条約:発効初日から我が子と面会求める動き
国際結婚が破綻して子を外国に連れ去られた場合、残された親が子の返還や面会を求める手続きを定めた「ハーグ条約」が1日、日本で発効した。「息子たちが元気かどうかだけでも知りたい」。2009年6月に8歳と6歳の息子をロシア人の元妻に連れ去られた東京都内の自営業の男性(48)は、初日に書類が届くよう3月31日に弁護士を通じて外務省に面会交流援助を申請、海外でも面会を求める動きが出始めた。
男性は39歳の時に日本で結婚、2児をもうけたが徐々に子供の教育方針を巡って衝突が絶えなくなった。離婚調停を申し立てると、元妻は子供を連れてロシアに帰国。一時はインターネット電話で会話していたが、再び離婚の話し合いを始めると交流は途絶えた。
離婚裁判を申し立てた結果、今年2月に自身に親権が認められる形で離婚が成立した。条約発効前の連れ去りのため返還申請はできないが、男性は「面会交流の手続きがあると知り希望が見えた。会えるか不安だが、安否が分かれば」と話す。
外国在住の親が日本に住む子供への面会交流援助を申請した場合、外務省は援助の可否を審査した後、連絡を仲介したり、仲裁機関を紹介したりする。援助が決定すれば、外国の親は子供の居場所が分からなくても家裁に面会交流を求める審判や調停を起こせる。
米国では日本に子供を連れ去られたと主張する親ら約30人が3月31日、米国務省と在米日本大使館を訪れ、子供との面会などを求めた。03年から娘と会えずにいるポール・トランドさん(46)は「日本の裁判所はこれまで、我々と子供との接触を保証しないという結論を出してきた。同様の結果になることを恐れている」と語り、日本政府のさらなる取り組みを要求した。
日本に子供を連れ帰ってきた親を支援するため、東京の3弁護士会は弁護士を紹介する共通ダイヤル(0570・783・563)を設置した。磯谷(いそがえ)文明弁護士(東京弁護士会)は「返還申し立てや面会交流の請求を受けた親が駆け込むのは最寄りの弁護士会。親たちの不安に応えたい」と話す。【反橋希美、ワシントン西田進一郎】
2014年04月02日 00時00分
米男性、日本にいる子との面会申請 1日にハーグ条約加盟
【ワシントン=共同】離婚した日本人の元配偶者らが日本に連れ帰った子供との再会や交流を求め、米国人男性ら約20人が31日午前、米国務省を訪れ、ハーグ条約に基づく日本政府への面会申請書を提出した。
日本が4月1日に国際結婚破綻後の子供の扱いを定めたハーグ条約加盟国となるのに合わせた申請。条約は加盟国に面会支援を義務付けており、申請書は国務省から日本外務省に送付される。
条約は一方の親が16歳未満の子供を国外に連れ去った場合、住んでいた元の国に戻すことを原則としている。適用対象は加盟後に起きたケースに限られる。
生後9カ月の娘と引き離されて以来11年間、一度も会えずにいるという米海軍のポール・トランドさん(46)=メリーランド州=は「面会は通過点だ。われわれは子供を取り戻すことを諦めたわけではない」と述べ、適用対象外の既存事案についても日本政府の取り組みを求めた。
2010年の米下院決議は1994年以降、米国籍の子供300人が不当に日本に「拉致」されたと指摘。米政府は日米首脳会談などでもこの問題を取り上げ、ハーグ条約加盟を強く要求した経緯がある。
ハーグ条約 日本大使館前で子ども返還訴え
国際結婚が破綻した際の子どもの扱いを定めたハーグ条約が1日から、日本で発効するのに合わせて、アメリカで子どもを日本に連れ去られたと主張する親などが日本大使館前に集まり、子どもを戻すよう訴えました。
ハーグ条約は国際結婚が破綻して、相手の承認を得ずに子どもを国外に連れ去った親が、もう一方の親から子どもを返すよう求められた場合、子どもをそれまでいた国に戻す手続きなどを定めたもので、日本でも1日から発効します。
これに合わせて31日、アメリカの首都ワシントンの日本大使館前で、子どもを日本に連れ去られたと主張する親など20人余りが集まり、子どもを戻すよう訴えました。
そして、大使館の担当者に対し、まず、子どもとの面会を実現させるよう申し入れました。
これに対し、大使館側は「子どもに会えないつらい心情は、よく理解している。最大限、努力したい」と伝えたということです。
参加した男性は、「子どもとは11年間会えていない。早く再会したい」と話していました。
集会を主催した団体によりますと、アメリカでは子どもを日本に連れ去られたというケースが400件以上に上るということで、議会下院では返還に応じない国に対し、制裁を科す法案が可決されるなど対応を促す動きが強まっています。
菅義偉官房長官は1日の閣議後の記者会見で、日本が国際結婚破綻後の子供の扱いを定めたハーグ条約に加盟したことについて、「運用が適切に行われることを見守っていきたい」と述べた。
条約は一方の親が子どもを国外に連れ去った場合、元の国に戻すことを原則としている。
ハーグ条約:発効 「連れ去られた子供」返還制度整う
◇過去の事案にも適用「面会交流援助申請」に国内外で動き
国際結婚が破綻した夫婦間の子供の扱いを定めた「ハーグ条約」が1日、日本でも発効した。条約に加盟する他国に子供を連れ去られた親が、子供との面会や返還の実現に向け国に援助を申請できる。一方で加盟各国の親からは日本にいる子供との面会や返還を求められるようになる。外務省は家庭紛争の専門家ら9人を採用し、当事者からの援助申請や相談に対応していく。
条約には1月末現在で91カ国が加盟。片方の親が16歳未満の子供を加盟国から別の加盟国に連れ去った場合、残された親が自国や相手国の援助を受けて子供と面会したり、連れ戻したりできる手続きを定めている。
各国の担当当局は残された親の申請に基づき援助をするか決定する。援助を決めた場合、自国内に連れ去られた子供がいる国の担当当局は、自治体などに情報提供を求めるなどして子の居場所を特定し、友好的解決を図ることが求められる。
日本で援助申請に対応する外務省は、専門スタッフとして現役の家庭裁判所裁判官や調査官、家庭内暴力(DV)や児童心理の専門家、家庭紛争事件に詳しい弁護士などを採用。裁判によらない解決を促す五つの仲裁機関や、面会が実現した場合に立ち会う二つの面会交流機関と業務委託契約を結んだ。
残された親が子供を元の国に戻すための「返還援助申請」は1日以降の連れ去りが対象だが、面会を求める「面会交流援助申請」は過去の事案にも適用されるため、条約発効直後から国内外で申請を出す動きがある。
日本弁護士連合会は面会や返還を求めてきた外国の親や、子供を連れ帰ってきた国内の親に弁護士を紹介する制度を開始。全国で約150人の弁護士が対応可能という。条約に詳しい大谷美紀子弁護士は「24時間相談を受け付ける民間ホットラインの開設や、弁護士のスキルアップが課題となる」と話している。【伊藤一郎】
2014年04月01日 10時48分
国際結婚破綻後の子供の扱いを定めたハーグ条約 日本で発効
1日から日本は、国際結婚破綻後の夫婦間の子供の扱いを定めたハーグ条約に加盟した。この決定は、今年1月24日、日本政府が下したもの。
また1日から、条約の条項実現に責任を持つ特別行政機関の作業が始まる。さらに日本外務省は、家庭内暴力から子供達を守る専門家や、国際結婚の夫婦の離婚訴訟を専門にした弁護士などを追加採用する計画だ。
条約は、1980年10月25日にハーグで締結されたもので、条約締結国であればどこであっても、そこに不法に連れ去られた子供達の即時帰還を目的としている。現在までに、世界80カ国以上が、この条約に加盟した。
ロシアは、2011年6月1日に、弁護あるいは相談サービスの費用、そして法律的な援助及びコンサルタント・システムによって補償されるものを除く訴訟費用に対する支払い義務はないとの条件付きで、この条約に加盟した。
リア ノーヴォスチ
ハーグ条約発効、ワシントンで子どもとの面会求めデモ
国際結婚が破綻した後の子どもの扱いを定めたハーグ条約が日本時間の1日に発効しましたが、アメリカ・ワシントンでは日本にいる子どもとの面会を求めるデモがありました。
ワシントンの日本大使館の前に、日本に子どもを連れ去られたという親たちがずらりと並んでいます。子どもとの面会を望んでいます。
ワシントンの日本大使館前に集まったのは、別れた日本人女性が日本に連れ帰った子どもとの再会を望むアメリカ人男性たちです。こちらの男性は、今、子どもとは一切、連絡が取れていないと話します。
「ある朝、妻に『これから会議に行く』と言ってキスされてそれっきり会っていません」
ハーグ条約は、国際結婚が破たんした一方の親が16歳未満の子どもを国外に連れ去った場合、原則、子どもを元の居住国に戻すことを定めています。
父親の暴力から身を守るため母親が子どもを連れて帰国するといったケースもあったことから、日本は条約に加盟していませんでしたが、アメリカ政府の強い働きかけを受け、去年2月、加盟を表明。今日1日、条約が発効しました。
「息子はいつも考えています。いつか私たちは一緒にいます」
今回、条約の発効前に妻が連れ帰った子どもたちはアメリカに戻す対象にはなりません。しかし、ハーグ条約では、子どもとの面会を実現させるために政府が協力しなければならないことも定めていて、父親たちは日本政府に対し面会実現を求めています。(01日16:49)
ハーグ条約1日発効=国際離婚で新ルール
国際結婚が破綻した夫婦間の子どもの扱いを定めるハーグ条約が4月1日に発効する。今後は、夫婦のどちらか一方が無断で16歳未満の子どもを連れて国外に出た場合、元の居住国に子どもを戻し、子どもの親権を協議することになる。
外国人の夫による子どもの虐待や家庭内暴力(DV)が原因で、子どもを連れて帰国した日本人女性に対し、夫側が「子どもを連れ去った」と訴えるケースが欧米で相次いだのが条約加盟のきっかけ。条約は加盟国間でしか適用されないため、米国などから早期加盟を要求されていた。
ただ、虐待やDVを理由に日本に帰国した母子を元の居住国に戻すことには反対意見も根強い。このため、ハーグ条約を運用する国内法で、虐待やDVを受ける恐れがあれば返還を拒否できることを定めた。(2014/03/30-14:02)
外務省、ハーグ条約備え体制を強化
外務省は4月1日付で、総合外交政策局の「ハーグ条約室」を領事局に移管し、体制を強化する。国際結婚が破綻した夫婦間の子供の扱いを定めた「ハーグ条約」に日本が4月から正式加盟するのに伴う措置。配偶者・パートナーによる暴力(DV)や児童心理の専門家、家庭裁判所の出向者らも加え、裁判所との調整を担う陣容を整える。
ハーグ条約では、16歳未満の子供を一方の親が同意なしに国外に連れ去った場合、もう一方の親が返還を求めれば原則として元の居住国に戻すとしている。
ハーグ条約、4月1日に発行で何が変わる?
今や国内の婚姻件数のうち、約5%が国際結婚。外国人と結婚し、海外で暮らす人も珍しくない。一方で、国際離婚や親権争いなどの問題も多発。4月1日には、国際結婚が破綻した際の子供の扱いを定めた「ハーグ条約」が日本でも発行される。条約の発行で、何が変わるのか。
ハーグ条約は80年、オランダの「ハーグ国際私法会議」によって作成された。国際結婚・離婚の増加を背景に、欧米を中心に加盟国が拡大。外務省によれば、14年1月現在、世界91カ国が条約を締結している。
条約では、どちらかの親が強制的に子供を国外に連れ出した場合、子供を元の居住国へ速やかに返還するよう定めている。子が親の都合によって、慣れ親しんだ交流関係から引き離されないよう、その利益を守るのが目的だ。条約は子供が16歳になるまで適用される。
ハーグ条約は加盟国同士でしか有効にならないため、加盟国である米国人男性と結婚した日本人女性が離婚して子連れで帰国し、父親が子供と面会できなくなるなどの例が多発。こうした問題を重く見た欧米諸国は、長年にわたり日本の条約加入を求めてきた。日本人にとっても、外国人の元配偶者が子供を相手の母国へ連れ帰ってしまった場合、返還を求めることができないという問題があった。政府は11年から、条約締結の検討を開始。来月1日以降の国際離婚には、ハーグ条約が適用されることになる。
今後は海外で離婚した日本人が、元配偶者に黙って子連れで帰国した場合、条約にもとづき元の居住国に子供を連れ戻される可能性がある。もちろん、子供が新しい環境に馴染んでいる場合や、背景に家庭内暴力があるような場合には、裁判所が子を返還しなくてもよいと判断することもある。
ハーグ条約によって、保護者が逮捕されたりすることもない。条約の目的は「子供を元の居住国に返還すること」であり、連れ去った親への刑事罰を規定するものではないからだ。ただし滞在国によっては別の法律で処罰される可能性もあるので、もしもの際は入籍した国の法律を確認しておくことが必要だ。(編集担当:北条かや)
破綻夫婦の子の扱い検討=超党派議連が法整備へ
自民、民主両党など超党派の「親子断絶防止議員連盟」(会長・保岡興治元法相)は、婚姻関係が破綻した日本人夫婦の子どもの扱いをめぐり、対応策の検討に乗り出した。離別した親と子どもが絶縁状態になるのを防ぐのが目的で、親子の「面会交流」の実効性を上げるための法整備を視野に入れる。
厚生労働省の2011年度の調査によると、あらかじめ面会交流の約束をしないまま協議離婚した世帯の割合は母子家庭78.1%、父子家庭82.8%に上る。このため、12年施行の民法改正で、離婚する夫婦の取り決め事項に、「子どもとの面会交流」を加えた。
ただ、議連関係者は「実態が伴っていない。同意なしで子を連れ去り、絶縁状態となる親が多く、対策が必要だ」と指摘。今後の検討作業では、子の連れ去りを禁じることや、子どもとの年間の面会日数を含む養育計画の策定などが課題になる。(2014/03/24-20:28)
「いい子」声掛けは×、説得は○ ハーグ条約運用マニュアル作成 最高裁
結婚が破綻した夫婦の一方によって、国境を越えて不法に連れ去られた子供を保護するため、もともと生活していた国への子供の返還などの手続きを定めた「ハーグ条約」の運用が4月1日から日本で始まるのを前に、最高裁は、連れ去った親から子供を引き離す強制執行を行う際のマニュアルを作成、全国の地裁に送付した。実力を行使して引き離す手続きを担当する執行官を対象に、執行のポイントを徹底させる。
児童心理学者など専門家らのアドバイスを十分取り入れ、子供の心に傷がつくことを最小限にとどめるよう強調するなど、慎重な姿勢を重視した内容だ。
国内の条約実施法では、主導的役割を果たす政府機関である外務省が、子供の居場所確認や当事者解決を促すとされる。不調の場合、東京、大阪両家裁が子供を元の居住国に戻すかを判断。家裁の決定にもかかわらず親が子供を離さない場合、強制的に引き離す手続きが、地裁の執行官により行われる。
「解放実施に当たって執行官が留意すべき事項」と題されたマニュアルでは、親が子供を抱きかかえたり、子供が親の足にしがみついたりするなどの場面を想定。「子の心身に与える影響を最小限に食い止めるためにはできる限り、連れ去った親の協力を得て任意の引き渡しを実現することが望ましい」として、執行官が親に実力行使するのは親の抵抗がかたくなな場合に限定すべきだとした。
子供に手続きを説明することもあるが、元の国に帰ることを承諾した場合でも、罪悪感を抱かせない配慮として「いい子だね」などと声を掛けると、自分のせいで両親が争うことになったと感じるなど「かえって深く傷つけるおそれがある」と注意を促した。
最高裁では2月に各地の執行官を集めて研修会を実施。親が大声でわめく場面を職員が演じるなど模擬演習で準備を整えている。最高裁民事局では、引き離しがスムーズにいかなければ執行官は日を改めて再度執行に赴くなど「粘り強く説得することを基本姿勢にする」と話している。
■ハーグ条約 一方の親が16歳未満の子供を国外に連れ去り、もう一方の親が返還を求めた場合に、原則として子供を元の国に戻すことを義務付けた条約。一方の親から国外に連れ出された場合、元の居住国で親権・養育などの問題を協議することが「子供にとって最善の利益」という考え方に立って定められた。1983年発効。現在、米国や欧州連合(EU)加盟の各国など90カ国が加盟。
子ども全員の返還を=ハーグ条約加盟前の事案解決要求-米国務省
【ワシントン時事】米国務省のジェイコブス特別顧問(児童問題担当)は27日、上院外交委員会の公聴会で証言し、米国人との結婚生活が破綻した日本人が子どもを日本に無断で連れ帰る例が相次いでいる問題について「すべての子どもが米国に戻ってくるまで、われわれは満足しない」と述べ、日本政府に改めて返還を要求した。
日本は4月、米国などの求めに応じ、連れ去られた子どもを元の居住国に返還することを原則として義務付けるハーグ条約に加盟する。ただ、加盟前に発生した事案には条約が適用されないため、米国では日本にさらなる対応を促す声が強い。
ジェイコブス氏は、米国人親が日本に返還を求めている子どもが80人に上ることを明らかにした上で、「われわれがこれらの事案を忘れたことはない」と強調。委員会に提出した書面には「日本政府が条約の精神に従って加盟前の事案の解決に向けて前進することを期待している」と記した。(2014/02/28-06:13)
那須塩原市が子どもの権利条例制定へ
【那須塩原】市は、子どもの権利を尊重し健やかな成長を支援するため、「市子どもの権利条例」案を3月定例市議会に提出する。第5章の「権利侵害からの救済」の中では、子どもの権利侵害に関わる相談や救済申し立てができることのほか、救済委員会の設置、市長による権利侵害行為の中止要求などを規定する。市議会の議決を経て4月1日からの施行を予定している。
条例は前文と全7章、28条からなる。子どもの最善の利益を考慮することなどを定めた基本理念(第3条)や「安心して生きる権利」(第5条)など理念をうたう条文は一般的だが、侵害行為の中止などを要求できるとする救済を規定する第5章に特色がある。
「相談および救済」(第22条)で子どもや保護者、親族、施設関係者が市に子どもの権利侵害について相談し救済の申し立てをすることができるとし、「救済委員会」(23条)は、相談を受けて助言、支援、調査・調整を行う。弁護士や教育委員など市長が委嘱する3人で構成する市の付属機関となる。
「市長の措置」(第24条)では、救済委員会からの求めに従い、市長が侵害行為の中止や子どもとの関係改善の要求、是正措置の報告要求、是正要求や報告の内容公表などを規定している。
第6章では子どもの権利に関する施策を計画的に推進するための行動計画の策定を規定。親にネグレクト(育児放棄)されている要支援児童に放課後に食事を与え風呂に入れるといった事業なども想定されている。
離婚後も親子 子どもを第一に考えて 二つの講演会から
■新訳男女 語り合おう■
離婚をめぐり、子どもが一方の親に会えなくなる「片親疎外」の問題が後を絶たない。両親に会えないことが子どもにもたらす影響と、制度上の課題について1月、二つの講演会があった。
●別居親拒絶 「子どもの心理は複雑」
「片親疎外が子どもに与える影響は深刻。子どもを第一に考える長期的視点が必要です」。19日、福岡市。講師を務めた大正大教授の青木聡さん(45)=臨床心理学=はそう強調した。
講演会は家庭裁判所の元調査官らでつくる福岡ファミリー相談室が主催した。青木さんはひとり親家庭を調査した経験を踏まえ「片親疎外にある子には自己肯定感や信頼感の低下、抑うつ傾向、依存症など悪影響が出やすい」と分析。同居親から別居親に対する中傷などマイナスのイメージを吹き込まれると、子ども自身が正当な理由なく別居親へ強い拒絶反応を示すこともあるという。
乳幼児と9~12歳が最も影響を受けやすく、別居親を拒絶するときは「表面的な言動だけでなく、心の中で何が起こっているのかを慎重に判断しないといけない」と強調した。
2011年に民法改正で協議離婚時に養育費や面会交流の明文化が義務づけられた。ただ、課題も残る。青木さんは「日本は単独親権のままで、離婚時に子どもの奪い合いになり、夫婦の別れが親子の別れになりがち」と指摘。調停や裁判中に一方の親が無断で連れ去り、裁判所が別居期間を「養育環境の継続性を重視する」として追認し、連れ去り親に親権を認めるケースも常態化している。
「元配偶者を排除せず、ビジネスライクに新しい関係を構築すること。当事者任せだけでなく、円滑な面会交流のための制度づくりも肝要です」。米国では、離婚後も夫婦が子育ての時間と情報を共有するよう、行政がコーチングする仕組みもある。青木さんは「親同士の感情より、子どもを最優先にしてほしい」と呼び掛けた。
●ハーグ条約「連れ去りの抑止力に」
国際離婚についても議論が活発化している。政府は4月1日、国境を越えた子どもの連れ去りに関する「ハーグ条約」に正式加盟する。1月31日には福岡県筑紫野市男女共同参画推進課主催の講演会があり、九州大大学院法学研究院客員教授のレビン小林久子さん(65)=紛争管理=が条約の有効性と課題について語った。
ハーグ条約は、一方の親が国境を越えて16歳以下の子を連れ去った際、原則、元の居住国に戻した上で監護権を決めるよう定める。現在90カ国が加盟。日本では外務省内に新設される「中央当局」が窓口となる。
レビン小林さんはまず「国外に連れ去った親による『連れ去り勝ち』の状況を回避できる。連れ去りは子どもの生活環境を変えることになり、影響が大きい」と条約の有為性を評価した。
一方で、子どもが元の居住国に返還された場合、連れ去った親と連れ去られた親の対立が激しくなりかねない。レビン小林さんも「(一方が子どもに会えれば、もう一方が会えないという)ゼロサム状態になりやすい。監護親は連れ去った親の面会交流を拒否できる」と課題を指摘する。
そこで日本は「国際家事調停制度」の整備を検討。専門調停員を交え、離婚後の監護権や面会交流について「子の最善の利益」を最優先に考え、合意が他国でも効力を持つことを目指している。
「どちらが良い・悪いではなく、両者が納得できる離婚後の親子関係を共有すべきだ。グローバル化とは、国際的に共有できる制度の枠組みと行動基準を持つこと」とレビン小林さん。こうした国際的な枠組みづくりは、国内の面会交流のあり方にも影響を及ぼすだろう。
=2014/02/15付 西日本新聞朝刊=
子どもの権利擁護で「合意書」 兵庫・明石、離婚の両親に
離婚時に子どもの養育費の支払いや面会の頻度などを記入できる合意書を、兵庫県明石市が4月から配布することが14日、分かった。市によると、子どもの権利を守る全国でも珍しい取り組みという。
合意書にはどちらの親が親権を持つかや、養育費の金額や支払期間、面会交流の期間や頻度が書き込める。提出は任意となるが、署名と押印があれば調停や裁判などで参考にできる。
県弁護士会などの関連機関と連携して支援する「明石市こども養育支援ネットワーク連絡会議」も発足。今後は臨床心理士や社会福祉士による相談などについて意見交換し、子どもの養育支援を進める。
子との面会や費用記入 全国初の取り組み
夫婦が離婚する際に子どもの養育に関する取り決めをするよう促すため、兵庫県明石市は4月から、養育費の支払いや親子の面会方法などを記入できる合意書の配布を始める。離婚後の子どもの権利を守る全国初の取り組みという。13日には、県弁護士会など6機関と連携する連絡会議を発足。今後、子どもの養育支援を本格化させる。
合意書には、養育費の金額や支払期間、親子が定期的に会う面会交流の方法、頻度などが書き込める。離婚届の交付時などに配布するが、強制ではなく、離婚の協議に役立ててもらう。ただ、署名と押印があれば、裁判や公正証書作成の参考資料にできる。
2012年4月施行の改正民法では、夫婦が離婚する場合に子どもの養育について取り決めるよう定められた。法務省は、離婚届に養育費と面会交流に関する取り決めをしたかどうかのチェック欄を新設。施行から1年間を調査したところ、「取り決めた」としたのは、いずれも半数程度だった。
この日、明石市役所であった市こども養育支援ネットワーク連絡会議の初会合では、公益社団法人・家庭問題情報センターの相談員が4月から面会交流の支援として月1回無料相談を受けることなどを確認した。
泉房穂市長は弁護士出身で離婚問題を扱った経験もあり、「こどもを核としたまちづくり」を市政の柱の一つに掲げる。市市民相談課は「子どもの利益を最大限に優先し、支援していきたい」としている。
(2014年2月14日 読売新聞)
■新訳男女 語り合おう■
離婚や別居をしてからも親と子が触れ合う「面会交流」。子どもを精神的に安定させ、自尊心を高めるとして、海外では公的機関が親の間に入って調整するなど援助に乗り出す国もある。一方で日本では、離婚件数が減少傾向にもかかわらず、親が「子どもに会わせてもらえない」として家庭裁判所に持ち込むケースが増えている。実情と課題を探った。
「お母さんに会いたくないわけではないけど、会うとお父さんが困るので、自分も困る」-。九州北部の40代女性は3年前、家裁の資料の中で、離れて暮らす小学生のわが子の気持ちを知り、ショックを受けた。
夫婦間の問題で別れ、親権は夫へ。当初は毎週末に会える約束だった。次第に会わせてもらえなくなり、家裁に調停を申し立てたが不調に終わった。「審判」へ移行し、2カ月に1回8時間の交流を認める決定が下される。それも守られず「間接強制命令」に至った。
久しぶりに「お母さん」と呼ばれ、うれしかった。ところが今度は、子ども自身が「会いたくない」と言い始めた。成長するにつれて、今の家族や自分にも気を使うようになってきたのかもしれない。「親に会いたい時に会いたいと言える状況をつくってあげられたら…。親の都合でつらい思いをさせて申し訳ない」
司法統計年報によると、2011年度に家裁が面会交流で新規に受理した調停の数は8714件で、10年前の3倍に上った。
背景について、早稲田大学法学学術院教授の棚村政行さん(民法)は「子どものいる夫婦の離婚が増え、今は6割ほど。少子化も進み、夫婦だけでなく、祖父母にとってもかけがえのない存在になっている」と説明する。申し立ての大半を男性が占めており「子どもに関わりたい父親が増えている」という側面もある。
親の感情や「家」の事情が優先され、子どもの心が置き去りにされていないか-。そこで面会交流をめぐっては、11年の民法改正(昨年4月施行)により、離婚後の子どもの監護に関して協議で定めるべき事項として「面会交流」と「養育費の分担」が明記。離婚届にも、両事項を取り決めたかどうかの確認欄が新たに設けられた。ただ、未記入でも受理されるため「実効性に乏しい」との声があり、実際に歯止めにはなっていないようだ。
今月2日、福岡市で「親の離婚・切れない親子の絆」と題したセミナーが開かれた。家裁の元調査官らでつくる社団法人「家庭問題情報センター 福岡ファミリー相談室」の主催。「夫婦の別れを親子の別れにしてはいけない」として、そのための方策や心構えを考える内容だった。
同相談室は1992年に設立。2008年からは、面会交流で当事者間の調整をする援助事業にも取り組んできた。やはり年々、相談件数は増えているという。相談員で福岡県立大学名誉教授の宮崎昭夫さんは「別れた夫婦が連絡を取り合うことは難しく、面会交流を当事者に任せきりにしてもうまくいかないケースが少なくない」と指摘する。
しかし、公的機関による援助は東京都など一部でしか実践されておらず、民間機関も援助の手が足りないのが実情という。宮崎さんは「自分は親から愛されているのだ、と子どもが実感できる社会の仕組みを、早急に整える必要がある」と提言していた。
× ×
●面会交流
面会交流とは、離婚後や別居中に、子どもと一緒に暮らしていない方の親が子どもと会ったり、電話や手紙などで定期的、継続的に交流すること。回数や頻度など具体的内容は、親同士で協議して決められない場合、家庭裁判所に調停を申し立てることができる。調停委員が間に入って話し合い、子どもの気持ちを尊重しながら取り決める。
調停が成立しなければ、裁判官による審判手続きが開始される。調停や審判で決定した内容が守られない場合は、家裁に履行勧告を申し立てることができる。それでも会わせない場合は、金銭の支払いや差し押さえを伴う間接強制命令が出されることもある。子どもを連れ出して会わせる直接強制命令はできない。
=2013/02/09付 西日本新聞朝刊=
「離婚」 その前に養育計画
書式作成、取り決め促す
離婚時に、夫婦の間で養育費や子どもとの面会交流の取り決めがしっかり行われるよう、自治体などが促進策に乗り出す。
兵庫県明石市は4月から、離婚後の子どもの養育に関する専門相談を設ける。また、弁護士らの研究会は養育計画を書き込める書式を作成し広く利用できるようインターネットで公開する。
「離婚するにしても、子どもの養育をどうするか決めてからにしてほしい」。弁護士として離婚問題に接してきた明石市の泉房穂市長はそう話す。
同市は離婚に関する相談を拡充し、4月から、市役所内で月1回、無料の専門相談を開始する。担当するのは、面会交流支援などを行っている公益社団法人家庭問題情報センターだ。
2012年4月に施行された改正民法で、子どものいる夫婦が離婚する場合、養育費や面会交流など離婚後の子どもの養育について取り決めることが定められた。
ただ、強制力はなく、取り決めたかどうかのチェック欄が離婚届に設けられているだけで、取り決めがなくても離婚届は受理される。法務省が12年4月から13年9月の離婚届を調べたところ、「取り決めをしている」とチェックがあったものは57%にとどまっていた。
明石市では取り決めを促すため、離婚の相談に訪れたり、離婚届を取りに来たりした当事者に対し、養育費の支払い日や期間、支払い方法、面会交流の頻度や方法、連絡の取り方などを書き込める合意書の用紙を配布する。
合意書を作成した後は、速やかに公正証書にできるよう公証役場も紹介。当事者同士で話し合えない場合には、法テラスなども紹介する。2月には関係機関が参加する「明石市こども養育支援ネットワーク連絡会議」を設け、連携強化を図る方針だ。
自治体でのこうした取り組みは珍しく、泉市長は「養育費や面会交流は子どもの権利で、夫婦の一方を支援するのではない。関係機関につなぐなど自治体にできるサポートをしていきたい」と話す。
一方、家族法に詳しい弁護士や大学教授らでつくる「養育支援制度研究会」は、面会交流の頻度や、養育費の金額、支払い方法などを協議して文書にするための参考書式を作成した。今月25日に早稲田大学(東京)で開くシンポジウムで書式を公表する。同会のホームページから個人や行政が入手できるようにする。
東京都文京区は、この参考書式を窓口に置くことを検討している。来年度予算では区独自に、離婚に際しての相談先の案内書を作成する予定だ。
同研究会のメンバーで早大教授の棚村政行さん(家族法)は、「養育計画の取り決めが行われるよう、市民に近い自治体による支援が期待される。書式のほか様々な資料を無料で提供するので、広く活用してほしい」と話す。(小坂佳子)
(2014年1月29日 読売新聞)
米国政府、日本政府の国際離婚をめぐるハーグ条約加盟を歓迎
条約の包括的実施を期待
*下記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。
2014年1月27日
米国政府は、日本政府が2014年1月24日ハーグ条約に署名し、オランダの外務省に受託書を寄託したことを歓迎する。同条約は2014年4月1日に日米間で発効する。
私たちは、日本での条約の実施を可能にした日本国内のすべての関係者の努力を称賛する。ケネディ大使は次のように述べた。「日本政府がハーグ条約の国内での完全実施を可能にする最終段階に入ったことを称えたい。同条約は国際的な親による子の奪取の問題を解決するための非常に重要な仕組みである。米国はまた、双方の親の許可を得ずに子どもたちが日本に連れて来られた既存の案件の解決に向けて、ハーグ条約の精神に基づき日本側担当者との間で引き続き進展が見られることを引き続き期待している」
米国国務省は、外国に滞在する米国民の福祉を守ることを最大の優先事項としている。その中で最も弱い立場にいるのは子どもたちである。国際的な親による子の奪取は、片方の親の許可を得ずに、もう一方の親が不当に子どもの常居所の国から外国に子を連れ去った、あるいは、子どもの常居所ではない外国に子どもを不当に留め置いた場合に起こる。「1980年国際的な子の奪取の民事上の側面に関するハーグ条約」は、不当に連れ去られ、あるいは留め置かれた子どもたちを速やかに元の居住国(常居所)へ返還することを確保する法的枠組みを提供する国際的協定であり、その常居所での管轄裁判所が、子どもの親権と「最善の利益」という問題に関して決定を下すことができる。同条約は、子どもへの接触の権利を確保するものである。米国は、日本が2014年4月1日、同条約の73番目の加盟国となることを歓迎する。
ハーグ条約、4月発効決定
政府は24日の閣議で、国際結婚が破綻した夫婦間の子どもの扱いを定めたハーグ条約について、4月1日に発効させることを決めた。菅義偉官房長官は閣議後の記者会見で、「不法な子の連れ去り等の問題に対処する国際ルールであるハーグ条約を締結することは極めて重要だ」と強調した。
[時事通信社]
ハーグ条約4月加盟 正式決定
政府は、24日の閣議で、国際結婚が破綻した際の子どもの扱いを定めた「ハーグ条約」に加盟することを正式に決め、条約は、ことし4月1日から発効することになりました。
「ハーグ条約」は、国際結婚が破綻して、相手の承認を得ずに、子どもを国外に連れ去った親が、もう一方の親から子どもを返すよう求められた場合、子どもをそれまでいた国に戻す手続きなどを定めたものです。
ただし、子どもが暴力を受けるおそれがある場合などは、子どもの引き渡しを拒否できるとしています。
条約は、去年の通常国会で衆参両院で承認され、政府は、24日の閣議で条約に加盟することを正式に決めました。
これにより、条約は、ことし4月1日から発効することになります。
条約の発効後は、子どもの返還を巡る国内での裁判は、東京と大阪の家庭裁判所で行われ、裁判所の命令に従わず、親が子どもを引き渡さない場合は、裁判所が、引き離すことができるようになります。
また、外務省は、相手国や裁判所との連絡・調整に当たる「中央当局」を設ける準備を進めています。
岸田外務大臣は、閣議のあと記者団に対し、「国際ルールであるハーグ条約の締結は、わが国にとって重要だ。条約の適切な実施に努めていきたい」と述べました。
離婚:子の権利守って 養育費や面会…明石市が資料配布へ
兵庫県明石市は今年4月から、未成年の子どもを持つ夫婦が離婚や別居を検討する際、養育費と面会交流の取り決めや心のケアなど、子どもの視点に立った離婚の支援を関係機関と連携して行う「こども養育支援ネットワーク」を始める方針を固めた。離婚後の子どもの養育方針を記入する用紙の配布や、民間団体からの相談員派遣を予定しており、全国初の取り組みだ。専門家は「離婚後の子どもの権利を守る画期的なシステム」と注目している。
市が配布するのは、「こどもの養育に関する合意書(仮称)」。養育費の額だけでなく支払いの期間や振込口座、面会交流の方法や頻度、場所を具体的に記入できる用紙で、離婚届の交付時に一緒に渡す。市への提出義務はなく、「話し合いの参考資料」との位置づけだが、署名と押印があればその後の調停や裁判に活用できたり、より法的効力の強い公正証書を作成したりする際の資料にもなる。
厚生労働省の2011年の調査によると、母子家庭のうち養育費の支払いを受けているのは20%、面会交流をしているのは28%にとどまる。12年4月には養育費と面会交流の取り決めを規定した改正民法が施行され、離婚届に取り決めのチェック欄が新設されたが、「実効性に乏しい」との批判がある。多くの自治体では、制度を説明するリーフレットを配る程度にとどまっていた。
支援ネットでは相談体制も充実させる。これまでも実施していた弁護士や臨床心理士ら専門職員による法律相談や心理相談に加えて、面会交流を仲介している「家庭問題情報センター大阪ファミリー相談室」(大阪市中央区)の相談員による月1回の無料相談を始める。協議がまとまらない夫婦には、調停の申し立て方法を助言したり、市役所内に今春設置予定の日本司法支援センター(法テラス)分室や県弁護士会につないだりする。
離婚後の子を巡る争いは近年増加している。司法統計によると、面会交流を申し立てる調停と審判は12年度は1万1459件で、02年度の約3倍に上った。昨年12月には東京都文京区で、離婚調停中の男が子どもと無理心中を図り、2人とも死亡する事件が起きた。
明石市の泉房穂(ふさほ)市長は弁護士出身で、福祉行政に関心が深く、「離婚でもっとも弱い立場に置かれるのは、子どもだ。既存の制度内でできる取り組みから始めたい」と話している。【反橋希美】
離婚後の養育支援に連携 明石市、家裁などと
兵庫県明石市は、離婚や別居を考えている夫婦が子どもの生活に配慮して行動するように、民間団体や家庭裁判所などと連携して働き掛ける「明石市こども養育支援ネットワーク」を、4月に創設することを決めた。養育費の額や離れて暮らす親との面会交流の方法などを記入する用紙を作成して保護者に配り、事前に取り決めておくよう促す。また専門家が無料で相談に応じる窓口も開設する。
養育費と面会交流に関する取り決めを定めた改正民法が2012年4月に施行。しかし、養育費が支払われなかったり、交流が途絶えたりするなど、子どもが不利益を被る事例が後を絶たないことから、同市は支援ネットの立ち上げを決めた。
同市は、離婚の相談や届け出書類を取りに来た市民に、「こどもの養育に関する合意書(仮称)」を手渡し、用紙に示された養育費の額や支払期間、面会交流の方法などについて書き込むよう働き掛ける。同市によると、こうした取り組みは全国初で、「法的拘束力はないが、話し合う際の参考にしてほしい」という。
また、面会交流の仲介などを行う公益社団法人「家庭問題情報センター(FPIC)大阪ファミリー相談室」(大阪市)などと連携。月に1回、元家庭裁判所調査官らが、明石市役所で相談に応じる。弁護士や社会福祉士、臨床心理士の資格を持つ同市職員らによる相談も引き続き行う。
支援ネットの創設に合わせ、法的なトラブルの相談を受け付ける法テラスの分室が今春、同市役所内に新設される。(新開真理)
離婚を巡る夫婦間の争いに、未成年の子が巻き込まれるケースが急増している。
厚生労働省によると、未成年の子を持つ夫婦の離婚は昨年、約13万7000件だった。件数は減少傾向にあるが、別居する親が子どもとの面会を求める調停はこの10年で3倍に増えた。しかも、調停が成立しても面会が実現するとは限らない。離婚後、子の親権をとるのは8割が母親で、これに納得しない父親が子どもを奪い返そうとした刑事事件が度々発生。今月14日には、栃木県内の元妻宅から子ども5人を誘拐したとして千葉県浦安市の男(33)が逮捕されている。
争いから子どもを守ろうと、昨年4月に改正民法が施行され、未成年の子を持つ夫婦が離婚する際、親子の面会や養育費の分担を事前に取り決めるよう定められた。ただ、関係がこじれた夫婦間の合意は難しく、自治体などによる支援態勢の充実が急務となっている。
(2013年12月24日08時14分 読売新聞)
離婚調停:トラブル増加 父親の意識変化も
何らかの事情で自由に子供に会うことができない親が、面会などを求める裁判所での調停や審判の件数はここ10年で増加の一途だ。最高裁判所の統計によると、調停と審判を合わせて2003年は4841件だったが、12年は1万1459件になった。家族法に詳しい榊原富士子弁護士(東京弁護士会)は、背景に少子化や離婚しても子育てに関わりたいなど父親の意識の変化があるとみている。
子供がトラブルに巻き込まれるケースも少なくない。静岡市では03年7月、夫(21)が離婚調停中で別居する妻(21)の実家に押しかけてペットボトルに入れたガソリンのようなものを頭からかぶり、「火をつけるぞ」と脅迫。11カ月の長男を車で連れ去った。車は国道沿いの駐車場から70メートル下の林に転落。2人とも死亡した。
今年5月には離婚調停中の妻の実家から長男(1)を連れ去ったとして、東京都杉並区に住む会社役員の夫(33)が未成年者略取容疑で逮捕された。11年1月には別居中の夫と暮らす長女(4)を連れ去ろうとしたとして、福岡県太宰府市の妻(36)=年齢はいずれも当時=が同容疑で逮捕される事件もあった。
榊原弁護士は「紛争の最中は当事者は孤立して思い詰めてしまいがちで極端な行動に走ることがある。カウンセリングなど適切なサポートを受けられる態勢を整備することが必要だろう」と話す。【牧野宏美、高島博之、水戸健一】
ハーグ条約4月1日に発効=政府方針
政府は19日、国際結婚が破綻した夫婦間の子どもの扱いを定めたハーグ条約について、発効期日を来年4月1日とする方針を固めた。1月中に条約を締結することを閣議決定した上で、必要な政省令や対外窓口として外務省内に設ける「中央当局」を整備し、発効に備える。
ハーグ条約は、国際結婚した夫婦のどちらか一方が16歳未満の子どもを無断で国外に連れ去った場合、原則としていったん子を元の国に返すと規定。親権は元の国で争う。条約と国内手続きを定めた実施法は今年の通常国会で成立した。(2013/12/19-18:43)
子の連れ去り制裁法案を可決=米下院、日本に対応促す
【ワシントン時事】米下院は11日、米国人と国際結婚した日本人などが、結婚生活の破綻に伴って子どもを母国に連れ去るケースが相次いでいることを受け、連れ去られた子どもの返還に応じない国に軍事支援停止などの制裁を科す法案を全会一致で可決した。
日本は米国などの要求に応じ、国が連れ去り問題の解決に積極的にかかわることを定めたハーグ条約への加盟を決めている。ただ、加盟前に発生した事案には同条約が適用されないため、法案には日本にさらなる対応を促す狙いもありそうだ。
今後は上院の対応が焦点となるが、下院外交委員会人権小委員会のスミス委員長(共和党)は記者会見で「成立には自信を持っている」と強調。約10年前に日本人に娘を連れ去られたという米海軍大佐も会見に同席し、「私は日本人に子どもを連れ去られた400人以上の親の一人だ。400人の中に日本政府の努力を通じて子どもを返してもらった親は一人もいない」と日本政府の対応を批判した。(2013/12/12-09:37)
ハーグ条約加盟を歓迎=米大使
谷垣禎一法相は2日、法務省でケネディ駐日米大使と会談し、国際結婚が破綻した夫婦間の子どもの扱いを定めたハーグ条約への加盟が先の通常国会で承認されたことを受け、「なるべく早い段階での実施に向けた作業を進めていきたい」と述べ、政省令の整備を進める考えを示した。これに対し、大使は「非常に歓迎している」と述べた。
法相はまた、大使が東日本大震災の被災地を訪問したことに感謝の意を伝えた。大使は「逆境の中でくじけない(被災者の)姿を見ることができて非常に良かった。支援を継続していきたい」と応じた。(2013/12/02-20:32)
離婚後も、我が子に会いたい 交流求めキミドリ・リボン
【杉原里美】離婚しても親子で交流できる仕組みがほしい――。離婚で別居した子に会えなくなった親たちが、問題を広く知ってもらおうと、黄緑をシンボルカラーに活動を続けている。「キミとの絆を守りたい」という願いを込めて。
東京、岩手、名古屋、宮崎など全国16カ所の駅前や広場で、この秋、黄緑色のTシャツを着た親たちがパンフレットを配り、子連れ離婚の現状を訴えた。
実施したのは、「親子の面会交流を実現する全国ネットワーク」(親子ネット)やNGO「日本リザルツ」など。離婚で別居した親と子の交流を保障する法律の制定を求めている。
民法は、離婚後は一方の親だけに親権を認め、離婚が子どもとの離別につながるケースは珍しくない。子どもとの面会交流を求める調停・審判の申し立ては2012年度に1万1459件で、10年前の約3倍。厚生労働省の調査(11年度)によると、離婚した母子家庭の母親約1300人のうち、51%が「(父子は)面会交流をしたことがない」と答えた。
一方、米国やフランスなどでは、両親との交流が子の成長に必要だと考えられている。日本では十数年前から、子どもに会えない親らの団体が相次ぎ結成された。昨年、改正民法が施行され、離婚の際に親子の面会交流について取り決めるよう明記されたが、実行させる仕組みはない。
昨年6月、子どもと離別した親たちが団体の垣根を越えてまとまり、親子の交流を訴える「キミドリ・リボン・プロジェクト」を発足。「キミとの絆を守りたい」と黄緑色をシンボルカラーにする。
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ハーグ条約、来年4月に加盟 子連れ去りに国際ルール
政府は22日、国際結婚破綻後の子どもの扱いを定めたハーグ条約に来年4月に正式加盟する方針を固めた。政府筋が明らかにした。一方の親が国境を越え子どもを連れ去った際のトラブルを解決する国際ルールが日本で適用される。今年5月に条約が国会で承認されたのを受け年内加盟を目指してきたが、国内体制の整備に時間がかかり、ずれ込んだ。
政府は、外務省の一部局として条約を所管する15人規模の「中央当局」を新設する。子どもを連れ去られたと主張する海外在住の親が、子どもを自分の元に戻すよう求める申請の受付窓口となる。
共同親権、面会 社会的支援を
愛知県内を中心に活動する市民団体「チルドレン・ファースト」が、離婚後の子どもの共同養育や親子の面会交流に関する請願を、県内の自治体の議会に提出する準備を進めている。昨年12月に同県碧南市議会に提出、可決されたことを追い風に、街頭での啓発運動にも力を入れており、片方の親が子どもの「連れ去り」や「引き離し」行為をし、悲劇が起きている現状を訴えていく。 (早川昌幸)
碧南市議会で全会一致で可決され、国に送付された意見書は、養育プランの作成とその履行の義務化、親に対する教育プログラムの提供、面会交流のガイドライン整備などを求めている。
面会交流の環境整備などを求める意見書は名古屋市を含め全国で数多く採決されてきたが、社会的支援にまで踏み込んだ例はなく、問題の渦中にある当事者にとっては画期的な提言という。
チルドレン・ファーストによると、子どもと会えない親が面会交流を求めて家庭裁判所に調停や審判を申し立てる件数は、増加の一途をたどっている。そのうち、面会を取り決められたのは約半数で、月1回以上はさらに半分。残りは2カ月に1度か年数回。罰則もない。
日本では離婚後、両親のどちらかが子どもの親権者となる「単独親権」制度を採用していることを問題視し、メンバーは「別居時に一方の親が無断で子どもを連れ去るなど、子どもの奪い合いが離婚後の親子の交流を阻み、非親権者となった片方の親と面会できない子どもが増えている」と説明。共同親権や面会交流の原則化は世界の潮流になっているとも指摘する。
メンバーの一人で、幼い3人の子を連れ去られて面会交流を制限されている西三河地方の40代の男性会社員は「離婚の最大の被害者は子ども」と訴え、「会えないことで親の愛情を受けられないと、情緒が安定しないなど、子どもに負の連鎖を引き起こしかねない」と話している。
共同養育と面会交流 共同養育は離婚後も双方の親が子育てを分担すること、面会交流は離婚や別居後に子どもが離れて暮らす親と定期的に過ごすこと。2012年4月施行の改正民法で、離婚時に面会交流と養育費について取り決めることが明文化された。
国際結婚が破綻した夫婦の一方が子どもを連れ去る問題をめぐり、米下院外交委員会は10日、問題解決に積極的に取り組まない国に対し、政府が交流や貿易、経済援助の制限など幅広い制裁措置を取ることを可能にする法案を全会一致で可決した。
日本人の親が米国籍の子どもを連れ帰るケースも多数に上り、日米間の外交懸案に浮上。日本政府は今年6月に夫婦間で子どもの奪い合いが起きた際の国際的取り決めである「ハーグ条約」関連法を成立させ、条約加盟に向けた準備を急いでいる。
下院法案は本会議で可決後、上院で審議される。議会関係者は上院でも可決されるとの見通しを示している。(共同)
【ワシントン時事】米下院外交委員会は10日、国際結婚の破綻に伴う子どもの連れ去り問題が未解決の国に対して制裁措置を発動する法案を全会一致で可決した。日本人の母親が米国籍を持つ子どもを米国人の夫に無断で日本に連れ帰る事案が相次いでおり、事実上、日本を主な標的にしたものだ。
法案は、連れ去り事案の存在が相手国の関係当局に通知されてから180日たっても解決されない場合、大統領は公的訪問、文化交流、軍事支援の停止や輸出制限などの措置を取らなければならないと規定。「米国の重大な国益」が懸かる場合は輸出制限などを撤回できるとしている。
離婚時に養育費合意56%・「親子面会」55%
未成年の子がいる離婚した夫婦のうち、別居した親子の面会方法や、養育費の分担について離婚時に決めていたのは全体の半数強にとどまったことが分かった。
法務省が、改正民法が施行された2012年4月から1年間の結果をまとめた。改正民法766条は、面会方法や養育費の分担を離婚時に決めるよう求めているが、浸透していない現状が浮き彫りになった。専門家からは国や自治体の支援態勢が不十分だとの指摘が出ている。
日本では夫婦の合意があれば離婚できる「協議離婚」が全体の9割を占めるとされている。調停などによる離婚と異なり、協議離婚では細かな条件を定めないことが多く、別居した親が子どもに会えなかったり、養育費の負担を巡ってトラブルになったりしている。民法改正は子どもの権利を守る観点から行われたが、取り決めがなくても離婚届は受理される。
法務省は改正法の施行にあわせて、離婚届の書式を一部変更し、未成年の子どもがいる場合は面会や交流と養育費の分担について、「取り決めをしている」「まだ決めていない」のいずれかをチェックしてもらうようにした。
法務省の調査によると、昨年4月からの1年間で、未成年の子がいる夫婦の離婚届の提出は13万1254件あったが、面会や交流の方法を決めたのは7万2770件(55%)、養育費の分担を取り決め済みだったのは7万3002件(56%)だった。
離婚後の子の引き渡し「保育園や公道ダメ」 最高裁
国際結婚が破綻した夫婦間の子供の取り扱いを定めた「ハーグ条約」加盟に向け、最高裁は6日までに、子供の引き渡しの際の注意点を全国の裁判官や執行官らに通知した。子供の心身への影響に配慮し、原則として公道や保育園での引き渡しはせず、自宅で行うなどとしている。国内結婚の場合も同様の対応を求めた。
ハーグ条約への加盟は国会で5月に承認され、2013年度中に加盟する見通し。同条約は16歳未満の子供を一方の親が無断で国外に連れ去った場合、原則として元の居住国に戻さなければならないと規定している。
親が日本に子供を連れ帰り、元の居住国へ戻すことに応じない場合、日本国内の手続きを定めた関連法では、最終的には裁判所の執行官が強制的に子供を引き離し、元の居住国に戻す。
最高裁の通知は、執行官による強制的な引き渡しによって子供の心が傷ついたり、プライバシーが侵害されたりすることがないよう配慮すべきだと強調。引き渡しは連れ去った親と子供が一緒にいる場合に限り、原則自宅で行うとした。
親が子供を抱きかかえて抵抗したり、子供が拒否したりする場合は、無理やり引き離さず、説得を繰り返すよう求めた。
国内で夫婦が離婚したケースで、裁判所の返還命令に親が従わず、もう一方の親が強制的な引き渡しを求めた件数は10年が120件、11年が133件、12年が131件に上っている。
日本では、子供の引き渡しの際の法的ルールはなく、かつては公道などで強制的な引き渡しが行われ、子供や他人のいる前で双方の親が言い争いになることもあったという。
今回通知された注意事項は、全国の裁判官や執行官ら約150人が今年1~2月、協議した結果をもとに最高裁がまとめた。ハーグ条約が想定する国際結婚だけでなく、国内結婚の場合も同様に扱うべきだとの意見が多く、通知に盛り込んだ。
最高裁民事局の担当者は「引き渡しの過程で子供の心を傷つけてしまう恐れがある。現場の執行官は常に難しい判断を迫られており、通知を今後の指針としてほしい」としている。
『【ハーグ条約加盟へ】 「あまりに遅すぎた」 子どもと離れ10年の女性
国際結婚の破綻などで片方の親が子どもを国外に連れ去った場合、原則として元の国に戻すことを定めたハーグ条約。日本がこれまで未加盟だったため、連れ去りを懸念した米国の裁判所から子どもとの面会を制限されてきた女性がいる。離れ離れになって約10年。日本は年内にも加盟する見通しだが「あまりにも遅すぎた」と悔しさをにじませる。
「個人的には遅すぎました。でも私だけの問題ではないので、やっとここまできたという気持ちもあります」。離婚などをきっかけに面会を絶たれた親子の交流を支援するグループで活動する 鈴木裕子 (すずき・ひろこ) さん(44)=東京都在住=は言葉を選びながら話した。自身も米国在住の男性と離婚。現地に住む娘2人と思うように会えない親の1人だ。
航空会社の客室乗務員だった鈴木さんは1996年に韓国人男性と結婚。2人の娘に恵まれた。米国の中南部で暮らしていたが、夫との関係がぎくしゃくするようになり、2003年夏に家を追い出された。当時、長女は5歳、次女は3歳。
娘たちとの面会を求めたが夫は拒否し、2人を連れて米国の別の都市に引っ越した。知らない間に日本で離婚届を出され、鈴木さんは離婚無効訴訟を起こすため帰国を余儀なくされる。「必死で子どもを取り戻そうとしたが、何の知識も助けもなかった」
米国で離婚裁判が始まったのは07年。家を追われて以降、一度も娘たちに会わせてもらえていなかった。最終的に離婚は成立し「養育実績」に基づいて元夫が単独で親権を得た。
米国は父母の共同親権が主流。鈴木さんによると、日本がハーグ条約に加盟していなかったため、裁判所が鈴木さんによる子どもの連れ去りを懸念したという。
その後は米国で会ったり、インターネット電話で話したりはできたが、泊まりがけや日本での面会は許されなかった。
幼いころは「マム(お母さん)」と甘えていた娘たちだったが、思春期を迎えるとよそよそしい態度を取り始めるように。最近は送った贈り物が返送されてくることもある。「条約加盟で娘は日本に来ることができるようになる。でも(元夫の)一方的な話を聞いて育った娘たちにそんな気持ちはないでしょうね」と鈴木さん。
「いつの日か私の名前をネットで検索し、私の思いや愛情に気付いてくれるはず」。名前を明かし、取材に応じる理由だ。
【ハーグ条約】 正式名称は「国際的な子の奪取の民事面に関する条約」。国際結婚の破綻による離婚が増え、一方の親が無断で子どもを国外に連れ去るケースも増加。子どもがもう一方の親と会えなくなったりする不利益を受けないよう国際ルールが定められた。1983年に発効。 ことし6月現在、米国や欧州連合(EU)加盟の各国、韓国、タイなど90カ国が加盟している。 家庭内暴力や虐待から避難したケースへの対策が不十分として、加盟に批判的な意見もある。
(共同通信)
離婚親子の面会 絵本で理解
離婚のため別れて暮らす親子が定期的に会う「面会交流」について理解を深めてもらおうと、絵本「ぼく、健太」が製作された。
自治体の窓口などに置かれ、当事者らに読んでもらう。
昨年4月の民法改正で、子どものいる夫婦が離婚する際には、親子の定期的な面会交流について取り決めることになったが、まだ面会に積極的ではないケースも多い。
絵本は、離婚に伴う養育費や面会交流について相談を受けている「養育費相談支援センター」(東京)が製作。ストーリーは面会交流の支援に携わってきた笠松奈津子さん、絵はイラストレーターの小林真合子まりこさんが担当した。
主人公の健太くんは、両親が離婚して、母と弟と3人で暮らす。小学1年生の時、父親と面会できて喜んだのもつかの間、母親が面会はやめると言い出す。母も父もそれぞれ、面会に関して相手への不満を周囲に打ち明ける。友人やひとり親の知人の助言を受けて、再び父子の面会が実現し、回を重ねていく。面会交流に対する母、父それぞれの複雑な思いや、両親のはざまで揺れ動く子どもの気持ちが描かれている。いかにして面会交流に臨むべきか、考えさせられる内容だ。
厚生労働省の事業費で、2000部を作成。自治体のひとり親支援の相談窓口などに配布する。
同センターの鶴岡健一さんは、「子どもは幼くても親の離婚について自分なりに考えたり、我慢したりしている。離婚しても両親は子どもに愛情を持って接し、健やかな成長のために面会交流を考えてほしい」と話す。
変わる?母子密着の家族観 ハーグ条約、運用に課題
国際結婚が破綻した夫婦間で子供の奪い合いが起きた際のルールを定めた「ハーグ条約」に加盟するための関連法案が12日、成立した。年度内にも加盟の見通しだが、今後は実際の運用の行方に注目が集まる。母子密着傾向が強いとされる日本の家族観の下で、加盟各国と協力して運用ができるかが大きな課題。また、離婚においてはドメスティックバイオレンス(DV)が原因と主張するケースも多く、「子供の利益」の観点でそれをどう判断していくかも難しい問題だ。
ハーグ条約には5月現在、米国や欧州連合(EU)加盟各国、韓国など89カ国が加盟しているが、それぞれ家族観は違う。日本では他の国に比べて母子の密着度が高いとされるほか、離婚後の共同親権が認められていない。ハーグ条約加盟で家族のあり方も変化していくのだろうか。
国際結婚破綻による子供引き渡し請求事件を手掛ける池田崇志弁護士は「日本社会の家族への考え方は確実に変わっていく。日本の家族法制度は改革が必要。まず、離婚後の共同親権を認めるべきだ」と話す。
国際的な子供の連れ去り問題に詳しい大谷美紀子弁護士は「ハーグ条約加盟で、日本と諸外国との離婚、親権などの考え方の違いが浮き彫りになる。国内法改正議論が高まってくるだろう」と予測する。
池田弁護士は「『日本は形式的に条約を締結しただけでは』とみる加盟国もある。諸外国との協力による運用がないと国際的信用を失う」と、条約趣旨に沿った厳格な運用を求める。
また、離婚原因として多いDVをどう取り扱うかも大きな問題だ。
池田弁護士は「欧米では、連れ去った親が女性の場合、ほぼ100%でDVが主張され、連れ去り正当化のためにDVをでっち上げるケースも相当数含まれるといわれる。日本でも同様の状況が予測されるため、認定は慎重に行う必要がある」と話す。
カナダ・トロントで暮らす日系コミュニティの生活相談の受け皿となっているジャパニーズ・ソーシャル・サービス(JSS)の公家孝典カウンセラーは、日本に連れて来られた子供の返還についての家庭裁判所の判断に注目している。
ハーグ条約では、当事者間の協議が不調の場合、東京、大阪家庭裁判所が子供を元の国に戻すかどうかを決める。日本の条約実施法では、子供を元の国に戻すと身に危険が及ぶ場合などに、返還を拒否できる規定もある。
公家氏は「DVの対象がが配偶者だけで子供へはない場合もある。カナダではその場合でも加害者に子供への面会権が与えられる場合も多い。こうしたケースで日本の家裁が返還を拒否していくようだと、各国から反発も予想される」と話す。「子供の利益」を最優先に、個々のケースでの冷静な判断が求められる。
◇
【用語解説】ハーグ条約
正式名称は「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」で、1983年発効。国際結婚の破綻で一方の親が16歳未満の子供を国外に連れ去り、もう一方の親が返還を求めた場合に、原則として子供を元の国に戻すことを義務づけている。
ハーグ条約:「両親の愛、日常的に」米で破綻の日本人夫婦
ハーグ条約の国内手続き法が12日、参院本会議で成立し、条約加盟に向けた環境が整った。日本が条約に入ると、外国(加盟国)に住んでいた日本人同士の結婚が破綻し、一方の親が子を日本に連れ帰ったケースも適用の対象となる。
東京都内在住の男性会社員(42)は2001年に同い年の日本人女性と結婚した。
転勤に伴い、07年に妻と当時4歳の長男を連れて渡米したが、妻は09年3月、「子供の春休みを利用して1カ月ほど日本に帰る」と言って長男と帰国したまま、米国に戻らなかった。
渡米前から精神的に不安定だったという妻は同年8月、弁護士を立てて東京家裁に離婚調停を申し立て、「養育のための費用を払わなければ、子供と会わせない」と主張してきた。日本がハーグ条約に加盟していないため、男性は米国に滞在したまま、子の返還を求めることができなかった。
長男との面会や裁判のため、月1回は米国から日本に戻っていたが、交通費や宿泊費はいや応なしにかさんだ。男性は結局、会社に頼み込み、10年7月、勤務地を日本に戻してもらい、帰国した。
離婚調停は不成立となったが、家裁は長男を養う権利を決める審判で、これまで同居してきていることを理由に妻を「監護者」と決定。今も家裁で面会回数を巡る争いが続き、長男とは月1回しか会えない状態だ。
男性は「もし日本がハーグ条約に加盟していたら、子供をいったん米国に戻し、米国の裁判所で年間100日間は子供と過ごせる判断が出されていたと思う。今回、日本が条約に加盟する以上、日本の裁判所は、片方の親から子を引き離すのではなく、両方の親からの愛情を子供が日常的に受けられることが子の利益になるという考えに転換すべきだ」と話している。【伊藤一郎】
(越境する家族:下)「離婚後も父親は必要」 DV被害の日本人女性、帰国せず
=米・カリフォルニアからの報告=
夫婦が破綻(はたん)した後の子どもの扱いを定めた「ハーグ条約」。加盟によって、欧米に住む親たちからは、日本で暮らす子どもとの面会を求める声が高まりそうだ。親権を一方の親しか持たない日本と、親権にあたる監護権を父母が共有することが多い米国では、離婚後の親のかかわり方に大きな違いがある。米国・カリフォルニア州で、離婚後の面会交流の現場を見た。
「私にとってどんなにひどい夫でも、子どもたちにとっては父親なんだ」。サンディエゴで働く日本人女性(52)は、離婚から9年を経て、こう思うようになった。……
(越境する家族:上)子の養育「主張しやすく」 ハーグ条約加盟後の日本人妻
=米・カリフォルニアからの報告=
夫婦関係が破綻(はたん)して、一方の親が子どもを国外に連れ去った場合に、子どもは原則、元の居住国に戻す――。そう定めたハーグ条約に、年内にも加盟する見通しになった。条約はどんな影響をもたらすのか。米国・カリフォルニア州から報告する。
「フライトリスク」
日本人の女性と結婚した米国人の男性が、子どもの養育をめぐる裁判で口にする言葉だ。母親が子連れで日本に帰国し、居場所がわからなくなってしまうリスクを指す。
ロサンゼルスで、日本人妻の代理人を務めることが多いロバート・コーエン弁護士は、長い間、この言葉に悩まされてきた。……
ハーグ条約批准で問われる「加盟後」
日本はG8諸国で最後の条約締結国。国内法に反映せずにほったらかしでは済まない。
2013年6月号 GLOBAL [特別寄稿]
by 棚村 政行(早稲田大学法学学術院教授)
「国際的な子の奪取の民事面に関する条約」は、1980年10月のハーグ国際私法会議第14会期において採択され、83年に発効した。ハーグ条約の名で知られる。国境を越えた児童の不当な連れ去りを防止し、連れ去られた子どもを迅速に元の居住国に返すために、国際的司法協力を促進する条約で、現在欧米を中心に世界の89カ国で批准承認されている。
日本はG8諸国の中で唯一のハーグ条約未締結国である。ハーグ条約締結国は国際結婚が破綻して一方の親が子どもを連れ去ることを「誘拐」とみなし問題視しており、最近では子どもを連れて米国から日本に帰国した母親が米国に再渡航した際、逮捕される事例もあった。米国などが日本政府に対し早期の対応を求めていたが、今年になって急速に事態が動き出した。首脳会談を控えた1月、安倍内閣は日米同盟再強化の一環としてハーグ条約批准の方針を打ち出した。3月に承認案と関連法案を閣議決定、承認案は今国会で承認される運びだ。
今回の条約批准は、米国などの外圧も影響して実現した。ハーグ条約ができた80年代にはまだ日本では国際結婚が今ほど多くはなく、国内の実情が追いつかなかった上に、法曹関係者もこうした問題にあまり関心がなかった。今回は中央当局を外務省が引き受けることになった。実現は確かに遅かったが、条約批准の意義は大きいと思われる。
批准に直接影響を受けるのは国際結婚の当事者だけ、と捉える向きもあるかもしれない。だが日本のハーグ条約加盟は、子どもの実力的奪い去りの防止だけでなく、国際司法協力の促進や国際問題の早期解決などの大きなメリットがある。また国際的なルールに対応し、野放しだったところに一定の手続きを導入することは、国際社会の一員として当然の責務といえる。
民法の親権概念にも影響?
しかし、日本と加盟各国の法制度は大きく異なっている。
たとえば国際結婚でなくても、日本では単独親権の原則を採り、母親による無断での子どもの連れ去りは「子連れ別居」として違法とされない。これに対し、欧米など海外では共同親権・共同子育てが一般的で、子の連れ去りは犯罪とされる。DVやストーカーの対策も整備されていることが多い。将来の法的紛争の予防や安心して子を返還し暮らせるような条件整備への対応も比較的手厚くなされるのに対して、日本人女性(母親)は司法へのアクセスや社会的支援も受けられず、孤立しやすい。
したがって条約批准は、直接的にではなくても、離婚後の共同親権・共同監護の可否、単独親権・単独監護の基準、子の引き渡しの判断基準など国内の親権・監護法制の整備と改革を促進することになるだろう。ちなみに日本弁護士連合会は11年2月、ハーグ条約に関する意見書を公表。条約締結にあたり、子どもの意見を適切に聴く法制度の整備、個人通報制度の導入、関係者に対する国際人権法の研修の措置が十分にとられることなどの条件整備を求めている。
連れ去り事件の迅速かつ適正な解決のため、外国法令や外国裁判所での運用・判決の紹介、加盟国相互の情報連携・行動連携、国際司法共助なども必要になる。国際結婚に伴う当事者支援の制度の整備をしなければ、締結が一方的に不利益となるケースが出ないとも限らない。
またこれまでの例では、調停委員、調査官、裁判官等の司法関係者が欧米諸国の共同親権・共同監護の制度目的や理念を必ずしも理解していない面もあった。外国人親の感じ方、ニーズ、日本人親のこだわり、不安などを十分に踏まえたうえで、法的争点を析出し、合意形成を支援する専門家の養成と確保も強く求められる。
海外で一般的な共同親権・共同監護の考え方を日本でも認めるとすれば、国際結婚の範疇にとどまらず、民法の親権概念の見直しにもつながる可能性がある。事実、一部民法改正を促す声も出ている。ただ、条約加盟がただちに法改正に直結するかといえば、それは早計だろう。そもそも日本では協議離婚が多いこともあって、離婚の際に頼れる行政のガイダンスやカウンセリング、裁判所のチェックの仕組みなどが圧倒的に不足している。面会交流のための支援の仕組みを作るなど、地道な取り組みがあって初めて法改正につながるのではないか。
国際家事調停支援が課題
ハーグ条約は、何よりも子どもの権利や福祉への配慮から生まれたものだ。国際人権法としては、ハーグ条約のほかに児童の権利に関する条約がある。
これまで、国際的な子どもの監護紛争では、子どもの奪い合いが繰り返されることが少なくなかった。しかし、親の共同養育責任が明記され、面会交流や親子の絆を維持する方向できめ細やかな調整が実施され、また、親教育やガイダンスなどの教育的な働きかけがあれば、紛争予防にもつながる。実力行使や子どもの奪取自体もかなり少なくなるのではなかろうか。
DVやストーカー対策ももちろんであるが、面会交流など子どもの視点に立った紛争解決のルールや手続き(子の代理人制度、子の意向聴取など)が整備されれば、紛争は円満かつ実効的な解決をみることが多くなるだろう。その意味で、国際的な家事調停・合意形成支援の専門機関の設置、専門家の養成が、今後の喫緊の課題となる。
日本は外圧に弱いせいか、これまでも政治の取引材料として、児童の権利条約や女性差別撤廃条約を批准してきた。だが批准後は国内法に反映させずほったらかしにし、勧告を受けても是正せず、結果「日本は何をやっているのだ」と批判を受けることにもなってきた。
今回こそ条約の精神を積極的に生かせるか。批准後の政府の取り組みを見守りたい。
ハーグ条約、参院も承認 年度内にも加盟の見通し
結婚が破綻した夫婦の一方によって、国境を越えて不法に連れ去られた子供を保護するため、もともと家族で生活していた国への子供の返還などの手続きを定めた「ハーグ条約」への加盟案が22日、参院本会議で全会一致で承認された。衆院では可決済み。
条約加盟に合わせた国内手続きを定めた条約実施法案も今国会で成立見込み。所管する政府機関の整備を進め、年度内にも加盟する見通し。政府が対米公約としていた早期加盟が、昨年3月の国会提出後、衆院解散による廃案、再提出を経て実現する。
ハーグ条約は、一方の親が16歳未満の子供を国外に連れ去り、もう一方の親が返還を求めた場合に、原則として子供を元の国に戻すことを義務付けた条約。一方の親から国外に連れ出された場合、元の居住国で親権・養育などの問題を協議することが、「子供にとって最善の利益」という考え方に立って定められた。
関連の条約実施法案では、主導的役割を果たす政府機関である外務省が、子供の居場所確認や当事者解決を促すとされる。不調の場合、東京、大阪両家庭裁判所が子供を元の居住国に戻すかを判断する。戻すのが原則だが、「子に重大な危険がある」といった返還拒否のケースも例外として、実施法案内に盛り込まれている。
近年、国際結婚の破綻が増え、一方の親が他方に無断で子供を国外に連れ出すケースが目立っており、ハーグ条約はこの問題に対処するため機能してきた。
■子供の利益どう判断、求められる国際水準
日本は主要8カ国(G8)の中で、唯一の非加盟国だったこともあり、特に欧米人との国際結婚で破綻した日本人による子供の連れ去りを批判されるケースが目立ち、欧米諸国から加盟を強く求められてきた。
日本人による連れ去りでクローズアップされがちなのが、夫か元夫の家庭内暴力(DV)が原因で、子供を日本に連れ帰る母親のケース。国際結婚の破綻による子供の引き渡し請求事件をいくつも扱う池田崇志弁護士は「実際には、日本の女性が実家に連れ帰るのと同じ感覚で子供を連れ去るケースが数多い。DVがないのに、自らを正当化するためにDVを主張するケースも少なくない」と話す。
ハーグ条約は、(1)他国に連れ去られ、片方の親としか暮らせないのは子供に有害(2)元の居住国へ子供を返すことで、元の国の裁判所で親権を協議するのが子供には最善の利益-という考え方に立っている。
池田弁護士は「離婚事案を扱う日本の調停委員は『母親の元にいる方が子の幸せ』との意識がいまだに強い。だが、欧米人の父親の子に注ぐ愛情は強い。日本でも国際水準に合わせていく必要がある」と指摘している。
ハーグ条約を承認 子供連れ去り批判 「国際水準」と開き
日本は主要8カ国(G8)の中で、唯一の非加盟国だったこともあり、特に欧米人との国際結婚で破綻した日本人による子供の連れ去りを批判されるケースが目立ち、欧米諸国から加盟を強く求められてきた。
日本人による連れ去りでクローズアップされがちなのが、夫か元夫の家庭内暴力(DV)が原因で、子供を日本に連れ帰る母親のケース。国際結婚の破綻による子供の引き渡し請求事件をいくつも扱う池田崇志弁護士は「実際には、日本の女性が実家に連れ帰るのと同じ感覚で子供を連れ去るケースが数多い。DVがないのに、自らを正当化するためにDVを主張するケースも少なくない」と話す。
ハーグ条約は、(1)他国に連れ去られ、片方の親としか暮らせないのは子供に有害(2)元の居住国へ子供を返すことで、元の国の裁判所で親権を協議するのが子供には最善の利益-という考え方に立っている。
池田弁護士は「離婚事案を扱う日本の調停委員は『母親の元にいる方が子の幸せ』との意識がいまだに強い。だが、欧米人の父親の子に注ぐ愛情は強い。日本でも国際水準に合わせていく必要がある」と指摘している。
ハーグ条約 参院本会議で承認
国際結婚が破綻した際の子どもの扱いを定めた「ハーグ条約」が、22日の参議院本会議で全会一致で承認されました。
ハーグ条約は、国際結婚が破綻して相手の承認を得ずに子どもを国外に連れ去った親が、もう一方の親から子どもを返すよう求められた場合、子どもをそれまでいた国に戻すとしています。
ただし、子どもがもう一方の親から暴力を受けるおそれがある場合などは、子どもの引き渡しを拒否できるとしています。
さらに外務省に「中央当局」を置き、子どもの居場所の特定や相手国との連絡・調整に当たるなどとしています。
22日の参議院本会議で、ハーグ条約の承認案の採決が行われた結果、全会一致で可決され、条約は承認されました。
また、子どもの返還を巡る裁判は東京と大阪の家庭裁判所で行うなどとする、条約への加盟に伴って国内の制度を整備するための関連法案について、政府は、今の国会での成立を目指すことにしています。
ハーグ条約を巡っては、アメリカなどが日本の早期加盟を求めていて、安倍総理大臣は、ことし2月の日米首脳会談でオバマ大統領に対し、今の国会で条約の承認と関連法案の成立を目指す考えを伝えていました。
ハーグ条約 日本が加盟しても米は実効性を疑問視
国際結婚が破綻した場合の子どもの扱いを定めた「ハーグ条約」について、日本が加盟した後も条約の実効性を疑問視する声がアメリカ議会で上がっています。
スミス下院議員:「日本はハーグ条約加盟に向け、一歩進んできたが、加盟しても現在、問題となっているケースには(さかのぼって)対応できないだろう」
ハーグ条約では、国際結婚が破綻し、一方の親が子どもを連れて帰国した場合、原則として子どもをもともと住んでいた国に戻すことなどが定められています。日本では今国会中に加盟が承認される見通しです。9日、アメリカ議会の公聴会で、議員からは「日本の単独親権制度などが大きな障害になるのでは」などと、日本が加盟しても実効性を疑う声が上がりました。これに対して、国務省は、「日本は親権の在り方などについて、より国際的な解釈に変えつつある」とし、懸案事項の解決に向けて、あらゆる方策を立てていくと説明しました。
ハーグ条約実施法案、衆院を通過
国際結婚が破綻した夫婦間の子供の扱いを規定した「ハーグ条約」で、加盟する際の国内手続きを定めた実施法案が9日午後の衆院本会議で全会一致で可決された。すでに衆院を通過した条約の承認案とともに、今国会で成立する見通し。
ハーグ条約は国際結婚が破綻した夫婦の一方が無断で子供を国外に連れ去り、もう一方が返還を求めた場合、原則として子供を元の国に返したうえでどちらが育てるかを決めるとしている。主要8カ国(G8)の中で日本だけが未加盟で、米国をはじめとする主要国から早期加盟を求める声が出ていた。
条約に加盟した際の手続きを定めた実施法案は日本国内の子供の返還に関するルールを規定。外務省が子供の居場所を探し、当事者を援助する。調停が不調に終わった場合、東京と大阪の家庭裁判所が判断するとしている。
アジアで進むかハーグ条約加盟
国際結婚したカップルの破局で子どもを奪い合う問題が生じた場合のルールを定める「ハーグ条約」への加盟に向け、日本は1歩踏み出した。同条約加盟に承認する案件が23日午後、衆院本会議で全会一致で可決された。
ハーグ条約の加盟国は、欧米が多くアジアやアフリカは少ないといった特徴がある。アジアでは韓国と香港特別区にとどまっている。日本人男性の国際結婚の相手はアジア系が多いことから、今後アジア諸国の加盟も待たれる。離婚相手の国が非加盟国の場合、適用が制限されるためだ。
ハーグ条約は、16歳未満の子どもが国外に連れ去られた場合、元の居住国にいる親が返還を求めれば原則として応じることとしている。加盟後は、一方の親が他方の親の同意を得ずに子どもを連れ去る行為は実の親であっても誘拐罪に問われる可能性がある。
厚生労働省によると、夫婦の一方が外国人の国際結婚の件数は減少傾向で、2011年は前年比14%減の2万5934組。日本人の結婚件数全体の4%に低下している。日本国籍やビザの取得を巡る「偽装結婚」の取り締まり強化などが背景にある。
一方、国際結婚したカップルの離婚は、11年度に1万7832組にのぼった。国際結婚の減少に伴い離婚件数も減少傾向だが、国際結婚の破局は日本人の総離婚件数の7%台に上昇している。国際結婚のうち、夫が日本人・妻が外国人は1万9022件。このうち87%が中国、韓国・朝鮮、フィリピン、タイなどアジア系だ。妻が日本人・夫が外国人のカップルは6912件で、アジア系は41%と逆のケースに比べ少ない。
日本の民法では、離婚した場合、子どもの親権は父親か母親かどちらか一方を親権者と認めることが定められ、母親が親権者となり、養育するケースが多い。
ハーグ条約加盟の法案は今後参院で審議され、5月下旬にも条約が承認される見通しだ。
記者: 吉池 威
子どもとの面会で初判断、最高裁 拒否なら金銭支払い命令も
別居した子どもとの面会交流を裁判で認められたのに引き取った方の親が応じない場合、履行を促すために裁判所が金銭支払いを命じる間接強制の決定ができるかが争われた3件の裁判で、最高裁第1小法廷は1日までに、面会の条件が具体的で引き取った側のすべき義務の内容が明確であればできるとの初判断を示した。
その上で、3件の面会交流の取り決めについて検討。1度の不履行につき5万円の支払いを命じた札幌高裁、間接強制を認めなかった仙台、高松両高裁の判断は正当だとし、いずれの抗告も棄却する決定をした。3月28日付。桜井龍子裁判長ら5裁判官一致の結論。
国際結婚巡るハーグ条約関連法案 審議入り
国際結婚が破綻した際の子どもの扱いを定めた「ハーグ条約」の承認案と関連法案が衆議院で審議入りし、岸田外務大臣は、「条約を締結しない状態が続くと、国際社会での日本の姿勢も問われかねない」と述べ、条約の早期承認などに理解を求めました。
ハーグ条約は、国際結婚が破綻して、相手の承認を得ずに子どもを日本に連れ帰ってきた親が、もう一方の親から子どもを返すよう求められた場合、子どもをそれまでいた国に戻す手続きなどを定めたものです。
条約の承認案と関連法案は、4日の衆議院本会議で審議入りし、岸田外務大臣は、「国境を越えて不法に子どもを連れ去ることは、子どもに悪影響を及ぼす可能性がある。条約を締結しない状態が続くと、国際社会での日本の姿勢も問われかねない」と述べ、条約の早期承認などに理解を求めました。
また、谷垣法務大臣は、関連法案が、ハーグ条約に関する裁判などは東京家庭裁判所と大阪家庭裁判所だけで行われるとしていることについて、「裁判所が専門的知見やノウハウを蓄積する必要があり、管轄する裁判所を集中させた。電話会議システムの利用を可能にすることで、遠隔地に住む人の裁判への出頭の負担を軽減できるよう配慮している」と述べました。
「子の利益」保護で論戦=ハーグ条約、審議入り
国際結婚が破綻した夫婦間の子どもの扱いを定めたハーグ条約の加盟承認案と国内手続きに関する条約実施法案は4日の衆院本会議で審議入りし、外国人配偶者から虐待や家庭内暴力(DV)を受けた子どもや日本人女性をどう守るかが最大の論点となった。
ハーグ条約は原則、一方の親が子(16歳未満)を連れ帰った場合、元の居住国に戻して親権を決めるとしている。ただ、DVなどの恐れがあれば例外的に子の返還を拒否できると規定。審理は東京か大阪の家庭裁判所で行われる。
質疑で公明党の大口善徳氏は、子の返還手続きに関し「子どもの福祉に精通した専門家の配置が必要だ」と指摘。民主党の菊田真紀子氏は「(DVで)身の危険を感じ日本に逃げ帰ってくる女性は少なくない」として例外規定が機能するかをただした。
谷垣禎一法相は、家裁が「子の心身に害悪を及ぼす」などと判断した場合、「裁判所は返還を拒否することになる」と説明。岸田文雄外相は「条約は子の利益を最重要に考え、問題解決を図るものだ。(承認が遅れれば)国際社会でわが国の姿勢が問われかねない」と早期処理を求めた。 。
面会拒否に「間接強制」認める=具体的取り決め条件に-離婚などの父母の子・最高裁
離婚などで子を引き取った親が、もう一方の親との間で取り決めた子との面会を拒否し続けた場合、裁判所が一定額を支払わせる強制的措置(間接強制)が許されるかが争われた3件の抗告審で、最高裁第1小法廷(桜井龍子裁判長)は3月28日付の決定で、「取り決めで面会日時や子の引き渡し方法などが具体的に定められている場合には強制できる」との初判断を示した。
間接強制は、家裁の調停や審判などでの取り決めが守られない場合に、一定の期間内に履行しなければ強制金を支払わせる決定をし、心理的圧迫を加えて自発的な履行を促す制度。決定に従わない場合、改めて強制執行の手続きをすれば資産を差し押さえることもできる。
決定で第1小法廷は、間接強制ができる条件として、審判や調停調書で面会の日時や頻度、時間の長さ、子の引き渡し方法などが具体的に定められていることを挙げた。(2013/04/01-20:50)
金銭支払い命じる「間接強制」は可能 子供の面会拒否で最高裁初判断
別居した子供との面会交流を調停や審判で認められたのに、子供を引き取った親が応じない場合、履行を促すために裁判所が金銭の支払いを命じる「間接強制」の決定はできるのか。この点が争われた3件の裁判の抗告審で、最高裁第1小法廷(桜井龍子裁判長)は「取り決めで面会交流の日時や頻度などが具体的に定められ、引き取った親がすべき義務が特定されている場合は、間接強制決定ができる」との初判断を示した。
決定は3月28日付。同小法廷は、面会交流について決める際は「子供の利益が最も優先して考慮されるべきであり、柔軟に対応できる条項に基づいて両親の協力の下で実施されることが望ましい」との基本的な考え方を示した上で、3件の取り決めについて検討を加えた。
3件のうち、父が別居する長女との面会を求めたケースは、面会は月1回で第2土曜日の午前10時から午後4時まで▽子供の受け渡し場所は母の自宅以外でその都度協議して定める▽母は子供を引き渡す際を除き面会交流には立ち会わない-などと取り決めていた。
同小法廷は「母がすべき義務が特定されている」として、間接強制を認めた札幌高裁の判断は正当として、母の抗告を棄却した。
一方、残る2件については「頻度や時間は決められているが、子供の引き渡し方法について定められていない」などとして、いずれも間接強制を認めなかった高松、仙台両高裁の判断は正当と結論づけた。
子どもとの面会で最高裁が初の判断
離婚などで離れて暮らす子どもとの面会について、最高裁判所は「面会の日時や頻度などを具体的に取り決めても守られない場合は、制裁金の対象となる」という初めての判断を示しました。
子どもとの面会に関するトラブルが増えるなか、最高裁の判断は、今後の審判などに影響を与えそうです。
離婚や別居で子どもを引き取った親が、審判や調停の取り決めに反して、離れて暮らすもう一方の親に子どもを面会させなかったことについて、札幌と福島、それに高知の家庭裁判所で争われました。裁判では、こうしたケースで制裁金の支払いを命じることができるかどうかが争点になり、最高裁判所第1小法廷の櫻井龍子裁判長は「面会の日時や頻度などを具体的に取り決めても約束が守られない場合は、制裁金の対象になる」という初めての判断を示しました。そのうえで、面会の方法などを具体的に特定していた札幌のケースでは、1回取り決めを守らないたびに5万円の支払いを命じる決定が確定した一方、ほかの2件は訴えを認めませんでした。
一方で、決定は「子どものことを優先して考えるべきで、互いに協力し、柔軟に対応してほしい」とも指摘しました。
子どもとの面会に関する家庭裁判所への申し立ては、おととしでおよそ1万件と15年前の5倍以上に上り、今回の判断は今後の審判や調停にも影響を与えそうです。
ハーグ条約加盟へ 親権制度も視野に議論尽くせ
国際結婚が破綻した夫婦間の子どもの扱いを定めたハーグ条約の加盟承認案と関連法案がきのう、閣議決定された。5月中にも国会承認、成立する見通し。
1983年発効の条約には米国や欧州連合(EU)の全加盟国、韓国、タイなど89カ国が加盟。主要国(G8)では日本だけ未加盟で、欧米から早期加盟を迫られていた。
日本人の国際結婚は80年代後半から急増し、2011年には年間約2万6千組を数えた。それに伴い、結婚生活の破綻や離婚も増加。一方の親による子どもの国外連れ去りが問題化するなか、国際社会の一員として共通ルールの受け入れは避けられまい。
ただ言うまでもなく子どもの利益を最優先に加盟環境を整えねばならない。同時に連れ帰りが「誘拐」ともなりかねない外国との間で、親権も絡む争い事に対応するには政府の支援も不可欠だ。
ハーグ条約は国際結婚が破綻し、片方の親が16歳未満の子どもを無断で国外に連れ出した際、元居た国に戻して解決するのを原則とする。
日本人の親が外国から連れ帰った場合、片方の外国人の親は日本の外務省に置く「中央当局」に子どもの返還を申請できる。中央当局は子どもの居所を調べ、最終的に裁判所が返還の適否を判断する。
まずは司法手続きに入る前に、中央当局の仲介者としての役割を注視したい。親や子どもの経済的、精神的負担を考慮すると、政府には当事者間の話し合い解決に向けた支援が求められる。
日本では外国人の夫の家庭内暴力(DV)から逃れ、母親が連れ帰るケースが多いとされる。DVや虐待など「子どもが心身に害悪を受ける重大な危険」があれば、裁判所が返還しなくてよいと判断する場合もある。個人では容易に対応できない暴力の立証にも、政府の支援が必要だ。
だが「重大な危険」とは何か一律には判断し難い。外国の裁判所で判断をあおぐケースなら、なおさら「日本の常識」は通用するまい。
制度が動きだすに従い、想定外の事態も出てこよう。実態調査や一定期間後の関連法見直しの検討も求めたい。
何より日本と外国との親権制度の違いに目をつむったままでは、条約の趣旨を十分に生かせるとは考えにくい。
欧米では離婚後も両親が親権を持つ共同親権が一般的で、条約の趣旨もこれに基づく。日本が片方だけの単独親権を取り続けるなら、加盟の意義さえ問われかねない。
離婚後共同親権制度を認めるよう民法改正を求める声もあるが、政府はそこまで踏み込む覚悟があるのか。民主党政権でたなざらし状態のまま廃案となった懸案だけに、国会での議論を尽くすべきだ。
ハーグ条約、加盟容認86%に クイックVote第121回解説 編集委員 大石格
国際結婚の夫婦が離婚する場合のルールを定めたハーグ条約への加盟をどう思うか。電子版読者の86.1%が「賛成」もしくは加盟は「やむを得ない」との意見でした。安倍政権は夏の参院選前に関連国内法の改正作業などを終えたいとしていますが、これだけの追い風があれば国会審議は大きな波乱なく進むのではないでしょうか。
最も多かった「先進国として」加盟に賛成という読者のコメントから見てみましょう。大まかに以下の2通りの意見が目立ちました。
類型1=ハーグ条約の趣旨に賛成
○国際ルールに従うのは当然
○決めごとがないとトラブルを生む
類型2=日本は時代遅れ
○情で動く日本は国際社会からは異常にみえる
○女性の立場が弱いことが加盟を阻む要因だとすれば、それは日本社会の問題である
次に「日米関係安定のため」を選んだ読者のコメントです。
○外交戦略として(加盟は)必要と思う
○仕方ない
など想定通りの答えでした。
賛成の選択肢を上記の2つにわけたことを批判する意見もいただきました。「米国に言われたからやるという態度はよくない」「質問の設定がそもそも間違い」などです。
この問題は(1)誰も手を付けたがらず、米国からの圧力があって初めて政治日程に上った(2)民主党政権も必要性は意識しつつ、党内をまとめきれなかった(3)安倍晋三首相は初訪米に際して米国が喜ぶお土産を必要としていた――などの経緯を経て加盟決断に至ったのは事実です。
賛成が多くても強硬な反対派がいると二の足を踏む。外圧があると慌てて動く。今回の加盟決断の経緯は日本政治のこうした無責任体質の典型例といえます。
加盟反対の方のコメントもみましょう。
○国籍の決め方などの議論がない
○男性に有利な改正はすんなり通ることに違和感を感じる
などでした。
米国がこの問題に熱心なのは国籍出生地主義を取り、米国人(=米国で生まれた子ども)が他国人(=日本人の母親)のもとにいるのはおかしいという思い込みがあることは否めません。
日本の国籍の血族主義(親が日本人ならばどこで生まれても日本人。日本で生まれても両親が他国人ならば日本国籍は与えない)を改めよ、という意見は少数でしょう。だとしてもグローバル時代における国籍という概念をどう考えるのか。単なる符丁なのか、それとも民族のあかしなのか、などをもっと幅広く議論する機会があってもよいと思います。
次に日本人女性の人権が損なわれる事態への対応です。一番多かったのは当人の自己責任という意見でした。
○自分で解決するしかない
○女性に人権があるのと同時に、子どもにも人権がある
○女性=弱者という考え方に支配されすぎだ
などでした。
それでも「法制度で歯止め」「人権団体を支援」のいずれかを選んだ読者が合わせて過半数を占めました。国際標準に従うのは当然として経過措置ぐらいはあってもよいと思います。
「法制度」の方からは「ドメスティックバイオレンス(DV)対策が必要」、「人権団体」の方からは「相談できる窓口が必要」という意見がありました。
さて日本経済新聞のフェイスブックにもたくさんの意見をいただきました。
○ハーグ条約批准と並行して日本の単独親権制度も見直すべきだ
○国内でも拉致が頻繁に行われている
などでした。
日本は単独親権主義なので離婚時にどちらかの親(ほとんどの場合は母親)を親権者と定めるともう一方の親はほぼ他人状態になります。面会権などは、国際標準である共同親権制度があるとより担保されます。質問では、あえて「ハーグ条約は親族法の黒船」と指摘しましたが、これを機会に離婚法制を見直すのはよいかもしれません。読者の声にもあるように、国内でも「拉致」が頻発しているのならば、なおさらです。
電子版読者からもフェイスブックからも「悪徳弁護士にDVをでっち上げられた」などのコメントがいくつかありました。離婚裁判は泥沼化する例が多いようですが、その際には少しでも有利に戦おうとありとあらゆる法廷戦術が展開されるのでしょう。共同親権制度に移れば状況は変わるのかなどは検討されてしかるべきだと思います。
離婚法制に問題があると思っている読者は多いようです。もっとも、それを欧米を参考に見直すのかどうかを聞くと「日本は日本」という答えが多数でした。こうなることは予想はしていましたが、であるならば、なおさらのこと、外圧がないと何もしない日本的な体質をまず改めた方がよいのではないでしょうか。
安倍内閣の支持率は79.5%でした。先週の78.6%とほぼ同水準です。ハーグ条約のお土産も効いてか、オバマ米大統領との初顔合わせは無難に終わりました。政権は高位安定状態が続いています。
国際結婚めぐるハーグ条約加盟、賛成ですか クイックVote第121回
日本経済新聞社は「電子版(Web刊)」の有料・無料読者の皆さんを対象とした週1回の意識調査を実施しています。第121回は、安倍晋三首相がオバマ米大統領との初の首脳会談で表明した日本のハーグ条約加盟について、皆さんのご意見をうかがいます。日本経済新聞のフェイスブックでもコメントを受け付けています。
「日本との最初の会談ではアブダクション(abduction=拉致・誘拐)の問題を取り上げたい」
2009年6月、オバマ大統領が国務次官補に指名したカート・キャンベル氏が議会での承認に先立つ公聴会の冒頭でこう発言すると、傍聴席に詰めかけていた日本の外交官や記者からどよめきが起きました。新政権のアジア外交の司令塔が北朝鮮問題を最重要課題に据えた――。直ちに速報を東京に打電してしまった記者もいました。
それはとんだ勘違いでした。その先もじっくり聞いていると「離婚」「親権」「連れ去り」そして「ハーグ条約」という単語が耳に飛び込んできました。
「ハーグ条約?」 不勉強にもその名前を知らなかったので、かなり慌てました。日米関係において米国が最重要と位置付ける課題を知らなくてワシントン特派員が務まるのか?
当然のことですが、その日は原稿を書くのに大いに苦労しました。
ハーグ条約は国際結婚が破綻した場合の子どもの取り扱いを定めたルールです。1980年にオランダのハーグで開かれた国際私法会議で調印され、83年に発効しました。昨年末時点で89カ国が加盟しています。
基本になるのは離婚裁判の管轄権に関する決まりです。日本の刑事訴訟法や民事訴訟法を読むと、北海道の人が沖縄の人を東京で車ではねた場合、業務上過失傷害罪や損害賠償の裁判はどこですればよいのかが書いてあるのと似ています。
問題は国境を越えると親族法の条文がかなり違うことです。どこの国の法律で裁くのかが子どもの親権争いを左右する場合が多々あります。親権を1人が持つ国と両親いずれもが持つ国があったりします。だからハーグ条約で生活を営んでいた国に父母と子どもをいったん戻し、そこで裁判をすると定めたわけです。
パリで働いていた米国人とロシア人が結婚したとします。離婚後、2人はニューヨークとモスクワに別れました。子どもの親権を巡る裁判はどちらかの町でやれば通うのに便利なのにと思っても、もはやどちらも住んでいないフランスで争わなくてはいけません。といった風に不合理な点もありますが、どこかで線引きしなければ自分に有利な国でやりたいとたくらむ人が出てきて収拾がつかなくなります。
米国人の夫とニューヨークに住んでいた日本人の妻が子どもを連れて日本に帰国。夫との離婚を決意し、電話でそう告げて後はいくら電話がかかってもきても知らん顔。夫が親権を持つかもしれない子どもを一方的に連れ去ったのですから、ハーグ条約に照らせば、これは立派な「アブダクション」、つまり拉致・誘拐です。
日本はこの条約にずっと加盟せずにきました。1つは公判のある日にちょっと隣の国の裁判所に行ってくると簡単にいえる欧州諸国などと異なり、極東の離れ小島の日本からだと移動が大変だからです。米国での結婚生活が破綻した人が日本に戻ってきたら米国の裁判所から公判に出ろと通知が来た。決まりだから毎週、米国に通え、と押し付けることに日本政府はためらいがありました。
もう1つは言葉の壁です。条約の基本的な考え方が生まれた欧州では英語とフランス語とドイツ語とスペイン語が全部ぺらぺらという人は珍しくありません。そもそも国際結婚なのですから、配偶者の国の言葉もしゃべれるのは当たり前だ。ハーグ条約の精神にはそんな暗黙の前提があります。日本人で外国での裁判に苦もなく対応できる語学力の持ち主はそれほど多くないでしょう。
オバマ大統領はハワイで出会った米国人の女子大生とケニア人留学生の結婚で生まれました。オバマ氏に「米国で何年も生活した日本人妻には英語がひと言もわからない人がいる。もちろん米国人夫は日本語はひと言もわからない」と言ったら、「いったい、どうやって一緒に生活していたのか」と納得しないかもしれません。
企業のオフィスにさまざまな国籍の従業員が働いていて恋に落ちる。ニューヨークやロンドンならばそれがよくある国際結婚ではないでしょうか。
日本の国際結婚事情は欧米と比べてかなり特殊です。日本人が絡む国際結婚の4分の3は日本人男性が中国やフィリピンなどアジアの女性と結婚する事例です。農村花嫁などが含まれます。日本人男性が欧米の女性と結婚する例は年200件程度しかありません。
残る4分の1は日本人女性が外国人男性と結婚する事例ですが、相手のトップは韓国人。次が米国人です。
つまり、日米間でみると国際結婚のほとんどは日本人の女性が米国に嫁ぐという形で行われています。このパターンでは米国人の男性の多くが軍人とされています。一方、日本人女性には沖縄県や神奈川県などの米軍基地の付近に住む人が多く含まれます。
このような背景もあり、嘉手納や横須賀など基地の町以外ではハーグ条約への加盟問題はあまり注目されてこなかったのです。日本政府も条約加盟問題を放置してきたのです。
そうこうしているうちに、G8首脳会議のメンバーで非加盟は日本だけになりました。日本とやや事情が似ている韓国も、今年3月に正式に加盟します。オバマ大統領の重要な支持勢力である人権団体は「日本は子どもの人権を無視している世界でもまれな国だ」と激しく非難しています。米国でのこの問題への反響は普通の日本人には想像もできないほど大きいのです。
そこで鳩山政権時代にこじらせた日米関係の立て直しに全力を挙げる安倍政権が、ハーグ条約加盟をついに決断したわけです。
国内関連法の整備はこれからですが、日米首脳会談に先立ち自民党と公明党が合意した基本指針によると、米国人夫の家庭内暴力から命からがら逃げてきた、などの場合は米国に戻らなくてよいなどの留保条件を設けたうえで条約を批准する方針です。自公両党に加え、野党の民主党も賛成の方針。衆参両院とも賛成多数で可決されるのは確実です。
日本の女性人権団体は、日本人女性が子どもを奪われる例が増えることを懸念しています。男女平等にうるさい米国でも子どもは母親が育てた方が好ましいという雰囲気はあります。ただ、米国は世界で一番素晴らしい国と信じ切っている愛国者の多い国ですから、日本で育つよりも米国で育つ方が子どもには幸せだなどと決めつける裁判官が出てこないとも限りません。
「国際結婚? そんなのひとごとだよ」という読者も少なくないと思いますが、果たしてそうでしょうか。ハーグ条約に加盟し、離婚に関する国際標準が日本に入ってくると、日本人同士の離婚も徐々にその波に洗われるようになるでしょう。
日本では離婚後は母子が一緒に住み、父親とは没交渉という方がまだまだ多数でしょう。欧米では子どもを父母のどちらかの家に固定して住まわせるのではなく、週3日ずつに分け、残る日曜日はそろって過ごすなどという例もあります。最低限のルールとして、子どもと一緒に住まないことになった親が面会を求めたら、もう一方が拒否することは刑務所で服役中などよほどの事情がない限りできないというのが国際標準です。
ハーグ条約加盟は、ある意味で親族法の世界に「黒船」がやってきたようなものです。攘夷(じょうい)か開国か。国家の存立基盤である法制度も、もはやその国だけで考えていればよい時代ではなくなりつつあります。
今回は2月26日(火)までを調査期間とし27日(水)に結果と解説を掲載します。アンケートには日経電子版のパソコン画面からログインして回答してください。ログインすると回答画面が現れます。電子版の携帯向けサービスからは回答いただけません。
【ワシントン=阿比留瑠比】安倍晋三首相は22日夕(日本時間23日朝)、ワシントン市内で記者会見し、国際結婚が破綻した夫婦の子供の扱いを定めたハーグ条約について、今国会での条約承認を目指す考えを明らかにした。
首相は「子供の立場に立っても考えないといけない。国際的なルールがあることが大切だ。今国会で、承認が得られるよう努力をしていく。そのことはオバマ大統領にも申し上げた」と述べた。
(いま子どもたちは)親が離婚した…:反響編 子ども、みんなが不幸じゃない
子ども、みんなが不幸じゃない紙面で読む 2月3日付朝刊まで8回連載した「いま子どもたちは/親が離婚した…」に、様々な反響が寄せられた。今や離婚も珍しくないけれど、別れた夫婦や、その子どもたちが受ける影響はけっして小さくないようだ。
福岡県の中学3年の女子生徒(15)は「親が離婚したと言って同情されたり、かわいそうな子という視線を向けられたりするのがとても嫌です」と書いたファクスを送ってくれた。
東京都で暮らしていた3歳のときに両親が離婚。一人っ子で、今は母と祖父母と4人暮らしという。
東京に住む父とは「友だちみたいな関係」。今でも数カ月に1度、2人でご飯を食べる。「親が離婚したら、子どもがみんな不幸になるわけじゃないことをわかってほしい。母はやさしくて尊敬できる人だし、福岡に来なければ、今の友だちとも出会えなかった」
1月25日付の記事では、1歳のときに別れたきりの父への思いを募らせる中2女子(14)を紹介した。
「自分と重なる」というのは東京都調布市の自営業の女性(41)。幼いころに両親が離婚した。「自我が芽生える中学生のころから、父を知らないことでの喪失感があった」。母が父を嫌い、「ひどい人だった」と言うことにショックを受け、父への思いを封印してきたと振り返る。
30代半ばになったころ、「会わずに父が死んでしまうと後悔するのでは」と、思い切って手紙を出した。返事は驚くほど早く届いた。女性と兄の成長を祈っていたといい、「こんな日が来るとは夢のよう。連絡ありがとう」と書かれていた。その1年後に再会。「父を確認し、私の人生はこれでいいのだと思えた」
離婚した親たちからの反響もあった。
名古屋市の公務員の女性(55)は「34歳のとき、当時12歳と8歳だった娘2人を残して家を出ました」。
週末だけ、娘と過ごした。娘の父である夫の悪口を言い続けたが、長女が高校時代に反抗期を迎え、夫との関係性を見つめ直した。家庭内の問題を何でも夫のせいにしていたことに気づき、「離婚しても、子どもにすれば大切な親。それを理解するまで、とても時間がかかりました」。
離婚はしていないものの、不仲な親について悩み続けてきた人もいた。
島根県の会社員の男性(49)から届いたメールには「毎日が不安でいっぱいだった。子どもにはどうしようもない無力感、絶望感、でも離婚はしてほしくないという思いが交錯していた」と書かれていた。
男性は「子どもにとっては何よりも安心できる夫婦関係、家族関係こそが重要だと思う」と話した。
(古田真梨子)
(訳)
誘拐された子どもたちへの日本の見方の変化
安倍晋三総理には、今週オバマ大統領と会う際に、国際離婚時に日本人親による子どもの誘拐を防止する条約について進展を約束するよう圧力がかけられている。この条約は長らく放置されてきた。
安倍総理は、10年間も批准を唱え続けてきた子どもの奪取に関するハーグ条約について日本が履行することを約束すると見られている。これにより、日本人とのハーフの子どもたちから引き離されているアメリカ人、フランス人、カナダ人を含む何百もの外国人は法的にある程度の力を得ることができる。
フランスの上院議員であるリチャード・ユング氏は、この問題について日本政府の関係者に圧力をかけるために来日した際、AFP通信に対し「これらは単に報告されている事件のみだ」と語った。
32年もの歴史をもつこの条約に加盟してない国は、G8(アメリカ、フランス、イギリス、ドイツ、イタリア、ロシア、カナダ)の中で唯一日本だけである。
アメリカ、フランスそしてイギリスを含む国家は連携して、長い間、日本に従うよう求めてきた。
外交官らはこの夏までを会期とする日本の通常国会中にハーグ条約に批准すると言っている。
そうなると日本は条約の90番目の加盟国となる。それにより、他の加盟国に対し「子どもの不法な連れ去り及び留置に対し迅速な返還」を求めることができる。
「子どもの連れ去り、引き離し事件は非常に残酷である。誕生日やクリスマスにはプレゼントが送り返されてくるのである」とユング議員は言う。彼は、日本の外務政務官には会えたが、法務大臣の谷垣大臣と会うことは拒否されたとも語った。
この変化は、日本国内の家事法の下で同様の引き離しに遭っている何十万もの日本人の父親たちにも希望を与えるものである。
日本は、親から引き離されている子どもたちの問題に関しては、主要先進国の中では異質である。
裁判所は、外国人に対しても日本人に対しても共同監護は認めない。そして、裁判所は、ほぼ必ず、子どもの監護権を母親とする審判を下す。その結果、子どもたちと会う手段を失って絶望する父親を生み出すのである。
元配偶者が子どもとの接触を妨害することにより、多くの父親が子どもたちと触れ合う機会を奪われる。このような状況が当たり前となっているのは、多くの人々が子育ては女がやるものであり、男は金を稼ぐものと考えているからである。
ある日本の小都市の副市長である渡邉泰之氏は、娘に何年も会えないでいる。2011年に起きた大震災の際、彼は今や5歳になる娘と接触しようとしたと言う。
「そうしたら、私の妻は私を警察に通報したのです」と彼は言った。
日本に住んで30年になるマイケル(匿名)は、離婚争いにより、3人の子どものうち2人が日本の裁判所に二度と父親に会う意思はないと告げる、という光景を最終的に見る羽目になった。
これは元妻による「洗脳」の産物だ、と彼は言う。彼は一度も2人の孫に会ったことはない。
裁判官は、時々、監護親に対し、子どもの写真を元配偶者に送るよう命令したり、月ごとにわずかな時間の面会を認める命令を出したりする。
通常、これらの命令は守られないが、それに対し警察が介入することはほとんど全くない。
ハーグ条約への批准は自動的に日本の法律を変えることにはならない。しかし、渡邉氏を含め子どもから引き離されている何十万もの日本人の父親に希望を与えるだろう。
最近法務大臣に会った渡邉氏は、
「私は、いかに日本の裁判所が機能不全になっているか、そして、いかに日本の裁判官らが日本国内及び国際間の子どもの連れ去りを助長しているのかについて、法務大臣に伝えました」と言った。
しかし、ハーグ条約批准だけでは万能薬とはならず、国内法に何ら変化をもたらさないおそれがある、とユング議員は警告する。そして、ユング議員は、世論こそが、この親子の交流についての闘いに勝つ最も強力な武器であるという。
当事者団体であるSOSパパ日本支部の代表であるリチャード・デルリュー氏も、日本人とハーフの息子に何年も会えていない。彼は、ハーグ条約批准だけでは、状況を一新することにはならないだろうと言う。
「日本という偉大な国にこの状況はふさわしくない」と彼は述べた。
(原文)
TOKYO —
Prime Minister Shinzo Abe will be under pressure when he meets U.S. President Barack Obama on Thursday to pledge progress on a long-stalled treaty to prevent the snatching of children by a Japanese parent in international divorce cases.
Abe is expected to promise that Japan will follow through on a decades-old pledge to ratify The Hague Convention on child abduction, giving some legal muscle to hundreds of foreign fathers—including Americans, French and Canadians—kept apart from their children.
Japan is the lone member of the G8 industrialised nations—the others being the United States, France, Britain, Germany, Italy, Russia and Canada—not to have adopted the 32-year-old international treaty.
Key allies including the U.S., France and Britain have long demanded Tokyo step into line.
Diplomats say ratification of The Hague Convention could come during Japan’s current Diet session, which ends in the summer.
That would make it the 90th state to adopt the treaty, which is aimed at securing “the prompt return of children wrongfully removed or held” in another treaty state.
“These cases are particularly cruel—birthday or Christmas presents are returned,” said French Senator Richard Yung during a recent trip to Tokyo to press officials on the issue. He added that he met a vice foreign affairs minister but was refused a meeting with Justice Minister Sadakazu Tanigaki.
The changes would also offer hope to hundreds of thousands of Japanese fathers who face similar estrangement under domestic custody laws.
Japan is unique among major industrialised nations when it comes to the children of estranged parents.
Courts do not recognize joint custody—for foreigners or Japanese nationals—and almost always order that children live with their mothers, leaving desperate fathers with almost no recourse to see their children.
Many lose touch with their offspring if the ex-spouse blocks access, a common occurrence due to the widely held opinion that child rearing is a task for women, while men earn the money.
Yasuyuki Watanabe, the deputy mayor of a small town, has not seen his daughter in years. After the country’s devastating 2011 quake-tsunami disaster, he says he tried to make contact with the now five-year-old girl. “My wife called the police on me,” he said.
Michael, a foreigner who has lived in Japan for three decades, had a messy divorce that ultimately saw two of his three kids tell a Japanese court they had no wish to ever see their father again.
That, he says, was the product of “brainwashing” by his ex-spouse. Michael, which is not his real name, has never met his two grandchildren.
Sometimes, judges do order the custodial parent to send photos of a child to their former spouse, or to allow a short monthly visit.
But police almost never intervene when those orders are commonly ignored.
Ratification of the convention would not automatically change Japanese laws, but it offers hope for hundreds of thousands of Japanese men cut off from their kids, including Watanabe who said he recently met with the justice minister.
“I told him how the judicial system is malfunctioning and that judges encourage these abductions, whether it is international or in Japan,” he added.
But ratifying the treaty alone is no silver bullet and there are fears that future changes to domestic laws could lack both scope and substance, warned Yung, who cited public opinion as the biggest weapon in winning the fight for access.
Richard Delrieu, president of advocacy group SOS Parents Japan, has not seen his own half-Japanese son in years and also said that ratifying the treaty alone won’t change things overnight.
“This situation is not worthy of a great country like Japan,” he said.
© 2013 AFP
国際結婚が破綻した夫婦の子どもの扱いを定めた「ハーグ条約」への加盟に向け、承認案が今国会で成立する見通しとなった。条約加盟が日本の離婚後の親子法をも変える契機であるべきだ。
「ハーグ条約」は、国際結婚した夫婦が離婚し、片方の親の同意なしに子ども(十六歳未満)を国外に連れ帰った場合、原則として子どもを元の居住国に戻し、親権問題はその後に解決するよう定めている。加盟国には政府機関の「中央当局」が設けられ、子どもの居所の発見や、元の居住国への返還、子どもと暮らせない親と子の面会交流の支援などが義務づけられる。日本では外務省が担う。家庭内暴力(DV)など子どもに危害が及ぶとされる場合は、子どもが暮らす国の司法判断で返還を拒むこともできる。
締結国は米国や中南米を中心に八十九カ国。主要八カ国で未加盟は日本だけだ。加盟にはDVケースへの対応などで慎重論も強かったが、国際結婚が年間四万件まで増えた今は避けられないだろう。
論議の背景には、子どもを連れて帰国した日本人の親と、返還を求める外国人の親との間で頻発している問題がある。米国や英国、カナダ、フランス四カ国から指摘された連れ帰りは約二百件。米国から連れ帰ったケースでは日本人の母親が誘拐罪で指名手配され、米国に再入国した際に逮捕されたケースもある。日本が条約に入っていないため、日本から外国に連れ出された子どもに会えなくなった日本人の親もいる。条約加盟によって日本から連れ去られた子どもの返還にも政府の協力が得られるようになるのは大きい。
国境を越えた連れ去りで、一番苦しんでいるのは子どもたちだ。無力な子どもは連れていかれた親に従うしかないが、片方の親から引き離されることで心に傷を負い、成長の中で困難を抱えがちになる。だからこそ条約は、子どもの最善の利益を最優先する。一方の親との関係を断ち切られた状態が続くこと自体が有害だと考える。
子どもの幸せを最優先する理念は国内にも生かされていい。日本は離婚後に父母どちらかが親権者となってしまうため、離婚前から子どもを連れて別居し、そのまま親権を取ろうとするケースが絶えない。一方の親には親権の侵害で、つらい立場に陥らせるが、日本の家庭裁判所は「生き別れ」を黙認してきた。条約加盟を機に、日本の親子法を論議し、変えていってほしい。
この欄で何度かお話している「ハーグ条約批准」とその関連法について、今週訪米する安倍首相は「オバマ大統領への手土産」として持って行く、そんなニュアンスの報道がされています。これを機会に、改めてこの問題に対して「今回の安易な解決法」が、どうして「不平等条約」なのかを議論したいと思います。
改めて問題の構造を確認しておきましょう。この問題に関しては、アメリカだけでなく、カナダやフランスを相手国としたトラブルも多数報告されていますが、以降は便宜的に対象国をアメリカに絞って記述することをお許し下さい。
例えば日本人の女性と米国人の男性が結婚してアメリカで生活し、子供をもうけていたとします。その後に、残念ながら夫婦関係が破綻した場合に、アメリカでは離婚裁判の結果として「共同親権」という制度があり、父母のどちらかが子供に危害を加える危険がない限り、そして双方が親権を望む限りは「共同親権」になる可能性が高いのです。つまり、子供は離婚した父母の間を行き来するのです。
問題になるのは、まず「ケース1」として、きちんとアメリカで離婚裁判をやって「共同親権」になった場合に、多くの場合は「子供が18歳になるまで母子は日本への移住ができない」か、「一時的に日本に帰国する場合も、父親の方の承諾が必要」になるという問題です。どうしてお母さんが日本へ子供を連れて帰るのが難しいのかというと、日本人の母親は「日本へ子供を連れ去るとそのままアメリカには戻らない危険がある」ということが、アメリカの離婚弁護士並びに裁判官の間で「常識になっている」からです。
ではそのような「悪しき常識」がどうしてできたのかというと、「ケース2」として「共同親権の判決が下りているにも関わらず、子供を日本へ連れ去ってアメリカに戻らない母親」のケースがあること、それ以前の段階として「ケース3」として、「アメリカでの離婚裁判を省略したまま日本に子供を連れ去ってアメリカに戻らない母親」のケースがあるからです。
アメリカの国務省と連邦議会、並びにアメリカ人の父親たちは、この問題を執念深く追い続け、日本の外交当局に物凄い圧力を加え続けてきました。私は亡くなった西宮伸一前中国大使から、この問題で米議会に喚問された際の経験を直接伺っていますが、それは大変な圧力であったそうです。
今回の「手土産」はそうした欧米サイドの圧力の結果と言えます。つまり、民法を改正して日本の離婚法制とハーグ条約の整合性を取ることを「しない」で、ハーグ条約だけ批准して加盟するというのです。具体的には「離婚に伴う子供の連れ去りに関してクレームが入った場合に、日本政府が日本国内にいる子供を探し出して、実情を検討した上で元の居住地、つまり外国に送る」という関連法の整備だけで済ますのです。
何が問題なのでしょうか?
(1)日本の民法には「共同親権」という考え方がありません。ですから、アメリカに居住していた場合は勿論、日本で生活していた場合でもアメリカ人の男性(とその弁護士)が日本の国内法による離婚裁判に応じる可能性はほぼ100%ありません。従って、今後も夫婦が日本に居住していた場合であっても、離婚裁判はアメリカで行われ、アメリカの裁判所は「共同親権を認め」ると共に、「日本人の母と子には米国居住を事実上強制する」判決を下し続けると思われます。
(2)今回の「批准」は「過去に遡って適用はしない」ということです。ですが、現在上記の「ケース2」や「ケース3」の「日本に子供を連れ帰っている母親」にはアメリカの各州から誘拐罪や逃亡罪などの逮捕状が出ており、いまだに逮捕状は有効なままです。また、アメリカの父親に一般に見られる「子供への激しい愛情」は断ち切れるはずもないわけで、今回の措置によって過去の問題は「現状のまま不問に付す」という事にはならない危険があります。
(3)具体的な運用に関して「DV(家庭内暴力)」がある場合は、引渡しを拒否できると言われています。ですが、日本では「父親の母親への暴力は、子供への心的外傷ともなりうるので父親には親権を与えない」という理由になりますが、アメリカには「将来にわたって子供が暴力の対象にならないのであれば、DVは夫婦間の問題であってDVがあったから親権を自動的に剥奪されるわけではない」という考え方があります。この「価値観の相違」に関して、今後の運用で十分な調整が可能とは思えません。第一、米国で発生したDVの実態に関して、日本の裁判所などが正確に把握するような「捜査協力」がアメリカから得られるとも思えないのです。
(4)条約加盟により「100%日本人の親が親権を持っている」場合でも、外国人の親が「面会権の保障」を要求してきた場合には、日本政府は協力することになっています。ところが、日本の民法には「親権(監護権)のない親の面会権の強制力を伴う保障」という規定はないばかりか、「特に父親の方は再婚したら子供への面会権を事実上放棄させられる」という慣習も強く残っています。父親の観点からすれば「父親が外国人であれば」離婚後の子供への面会権を日本政府が保証するが、「日本人同士の離婚」であれば当事者間の問題として強制力は発動されないということになります。こうした運用になるのであれば、私は違憲性が強いと思います。
この問題の解決策はただ1つ、民法の離婚法制を改正することです。そして日米間の離婚訴訟の場として日本の法廷が機能するようにし、また外国人の親と日本人の親に同様の権利を付加するのです。そのためには(ア)共同親権制度、(イ)親権のない側の面会権の保障、(ウ)慰謝料および養育費支払いの強制、を具体化することです。そうすれば、アメリカ側は日本で発生した国際間の離婚訴訟も「アメリカ国内でしか応じない」という強弁ができなくなりますし、その後の面会権の扱いなども含めて日米間の「不平等」はなくすことができます。
アメリカに限りませんが、日本での結婚生活が破綻して外国人の親が子供を連れ去った場合にも、日本の離婚法制に関してこの(ア)から(ウ)の改正がされていれば、日本に引っ張ってきて日本で離婚裁判をすることが可能になります。そうでなければ、特に欧米系の父親は絶対に引渡しには応じないでしょう。とにかく「民法改正を伴わない条約批准」というのは、どうしても不平等性を残してしまうのです。
この問題に関しては、日本の民主党の「バカ正直、外交下手」のために、ヒラリー・クリントン前国務長官などに、ここまで押し込まれてきたわけです。では、自民党政権になってストップがかかったのかというと、「夫婦別姓もダメ」という自民党の保守カルチャーでは「正々堂々と民法を改正して」の対応など発想すらなかったのでしょう。ほぼノーチェックで関連法を通すことになったようです。
実態は「不平等条約」であるにも関わらず、この「小手先の措置」が安倍首相訪米の「手土産」であり、それによって「日米関係が改善されれば結構」というニュアンスの報道も多いようですが、それは違うのではないかと思うのです。
面会交流の調停、10年で3倍 夫婦の別れ 親子の別れに させないで サポートの仕組み整備を
■新訳男女 語り合おう■
離婚や別居をしてからも親と子が触れ合う「面会交流」。子どもを精神的に安定させ、自尊心を高めるとして、海外では公的機関が親の間に入って調整するなど援助に乗り出す国もある。一方で日本では、離婚件数が減少傾向にもかかわらず、親が「子どもに会わせてもらえない」として家庭裁判所に持ち込むケースが増えている。実情と課題を探った。
「お母さんに会いたくないわけではないけど、会うとお父さんが困るので、自分も困る」-。九州北部の40代女性は3年前、家裁の資料の中で、離れて暮らす小学生のわが子の気持ちを知り、ショックを受けた。
夫婦間の問題で別れ、親権は夫へ。当初は毎週末に会える約束だった。次第に会わせてもらえなくなり、家裁に調停を申し立てたが不調に終わった。「審判」へ移行し、2カ月に1回8時間の交流を認める決定が下される。それも守られず「間接強制命令」に至った。
久しぶりに「お母さん」と呼ばれ、うれしかった。ところが今度は、子ども自身が「会いたくない」と言い始めた。成長するにつれて、今の家族や自分にも気を使うようになってきたのかもしれない。「親に会いたい時に会いたいと言える状況をつくってあげられたら…。親の都合でつらい思いをさせて申し訳ない」
司法統計年報によると、2011年度に家裁が面会交流で新規に受理した調停の数は8714件で、10年前の3倍に上った。
背景について、早稲田大学法学学術院教授の棚村政行さん(民法)は「子どものいる夫婦の離婚が増え、今は6割ほど。少子化も進み、夫婦だけでなく、祖父母にとってもかけがえのない存在になっている」と説明する。申し立ての大半を男性が占めており「子どもに関わりたい父親が増えている」という側面もある。
親の感情や「家」の事情が優先され、子どもの心が置き去りにされていないか-。そこで面会交流をめぐっては、11年の民法改正(昨年4月施行)により、離婚後の子どもの監護に関して協議で定めるべき事項として「面会交流」と「養育費の分担」が明記。離婚届にも、両事項を取り決めたかどうかの確認欄が新たに設けられた。ただ、未記入でも受理されるため「実効性に乏しい」との声があり、実際に歯止めにはなっていないようだ。
今月2日、福岡市で「親の離婚・切れない親子の絆」と題したセミナーが開かれた。家裁の元調査官らでつくる社団法人「家庭問題情報センター 福岡ファミリー相談室」の主催。「夫婦の別れを親子の別れにしてはいけない」として、そのための方策や心構えを考える内容だった。
同相談室は1992年に設立。2008年からは、面会交流で当事者間の調整をする援助事業にも取り組んできた。やはり年々、相談件数は増えているという。相談員で福岡県立大学名誉教授の宮崎昭夫さんは「別れた夫婦が連絡を取り合うことは難しく、面会交流を当事者に任せきりにしてもうまくいかないケースが少なくない」と指摘する。
しかし、公的機関による援助は東京都など一部でしか実践されておらず、民間機関も援助の手が足りないのが実情という。宮崎さんは「自分は親から愛されているのだ、と子どもが実感できる社会の仕組みを、早急に整える必要がある」と提言していた。
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●面会交流
面会交流とは、離婚後や別居中に、子どもと一緒に暮らしていない方の親が子どもと会ったり、電話や手紙などで定期的、継続的に交流すること。回数や頻度など具体的内容は、親同士で協議して決められない場合、家庭裁判所に調停を申し立てることができる。調停委員が間に入って話し合い、子どもの気持ちを尊重しながら取り決める。
調停が成立しなければ、裁判官による審判手続きが開始される。調停や審判で決定した内容が守られない場合は、家裁に履行勧告を申し立てることができる。それでも会わせない場合は、金銭の支払いや差し押さえを伴う間接強制命令が出されることもある。子どもを連れ出して会わせる直接強制命令はできない。
今国会は少なく65法案、最優先はハーグ条約
政府が今国会に新規に提出する法案は計65本となった。
夏の参院選を控えて会期延長がない可能性が高く、十分な審議日程が確保できないため。過去10年の通常国会では、同様に参院選があった2010年の64本に次いで少ない。
8日の衆参両院の議院運営委員会理事会で政府が説明した。2013年度予算案の執行に必要な予算関連法案はうち26本で、条約の承認案18本も提出する。
政府が最優先で処理を求めているのが、米国が強く批准を求めている国際結婚が破綻した際の子どもの扱いを定めるハーグ条約の承認案と関連法案で、3月中旬に提出する予定だ。
昨年の衆院解散で廃案となった、国民に番号を割り振って社会保障や徴税に活用する共通番号制度関連法案(マイナンバー法案)も再提出する。
ハーグ条約、早期加盟の方針=安倍首相、日米首脳会談で伝達へ
安倍晋三首相は1日、国際結婚が破綻した夫婦間の子どもの扱いを定めたハーグ条約について、今月後半の訪米の際に、早期加盟を目指す方針をオバマ大統領に伝える意向を固めた。米国はかねて日本に条約加盟を要求。環太平洋連携協定(TPP)交渉や米軍普天間飛行場移設の問題で具体的な進展が見通せないため、加盟への決意を示して日米関係立て直しの足掛かりにしたい考えだ。
ハーグ条約加盟は民主党政権時代の2011年5月に閣議了解された。条約承認案と関連法案が国会に提出されたが、昨年11月の衆院解散で共に廃案になった。
自民党は当時、賛否を曖昧にしていたが、首相は1月31日の衆院本会議で「早期加盟を目指す」と、両案を速やかに再提出する方針を表明。政府高官は同日、再提出に必要な与党内手続きを、首相訪米前に決着させるよう与党側に要請した。首相は1日、平松賢司外務省総合外交政策局長と深山卓也法務省民事局長を首相官邸に呼び、今後の対応を協議した。
ハーグ条約は1983年発効の多国間条約。片方の親が子を国外に連れ出し、もう一方の親から申し立てがあった場合、加盟国政府は原則として元の国に子を返した上で親権争いを決着させる義務を負う。現在89カ国が加盟し、主要8カ国(G8)で未加盟は日本だけ。日本人に子を連れ去られたと主張する親が増えていることを受け、オバマ大統領らが再三、日本に加盟を求めてきた。
ただ、日本人の親の場合、妻が家庭内暴力から逃れるため子連れで帰国するケースが多いとされ、与党内には「訪米の手土産に使うなどとんでもない」(自民党政調幹部)と条約加盟に根強い異論がある。自民、公明両党は近く党内論議を始める見通しだが、難航する可能性もある。
首相「ハーグ条約」加盟表明へ 日米同盟の再強化印象づける狙い 首脳会談
安倍晋三首相は15日、2月以降に予定されるオバマ大統領との日米首脳会談で、国際結婚が破綻した夫婦間の子供の扱いを定めた「ハーグ条約」加盟を表明する方針を固めた。米側が求めている環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉への参加表明は見送るため、懸案だったハーグ条約加盟を確約。集団的自衛権の行使容認に関する検討と並ぶ対米公約の2本柱と位置づける。
オバマ大統領は野田佳彦前政権時代にもハーグ条約加盟を要求してきた。野田内閣も同条約加盟を対米公約に掲げ、平成24年3月に条約加盟に向けた関連法案と条約承認案を閣議決定し国会に提出したが、審議未了で廃案となっている。
政府筋は「ハーグ条約加盟を期待する大統領の姿勢は変わっていない」と指摘する。このため、政府は今月28日に召集される次期通常国会で関連法案などを再提出する。
安倍首相は首脳会談で条約加盟の実現に向けた決意を伝え、早期に関連法案を成立させたい考え。それにより対米公約をほごにした野田前首相との違いを際立たせ、日米同盟の再強化を印象づける狙いがある。
首相は集団的自衛権行使を容認する憲法解釈の見直しについてもオバマ大統領に取り組みを伝達する。月内にも第1次安倍内閣で設けた有識者懇談会の報告をもとにした検討作業に入るが、訪米前に行使容認に向けた具体的な結論は得られない。
しかも米側は集団的自衛権の行使容認を既定路線ととらえている。中国の海洋進出を警戒するアジア・太平洋地域に安心感を与える政治的メッセージとしても重視しているが、安倍首相就任後初の日米首脳会談では、米側の期待が大きいハーグ条約加盟を表明することも不可欠と判断した。
(いま子どもたちは)親が離婚した…:7 会う度「ごめんね」しんどいよ
No.456
2004年12月、新潟県。雪の降る日、母(44)が突然、家出した。高校2年のリョウガ君(17)は9歳、妹で小学6年のミウさん(12)は4歳だった。
「仕事に追われ、家を大事にしていなかった」。父の片山知行さん(41)が必死で行方を捜した。だが、再会したときには…
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(いま子どもたちは)親が離婚した…:6 いくらクズでも父は父
No.455
父(47)がおかしくなったのは小学5年のころだった、と大阪府の高校1年生タツヒロ君(15)は振り返る。「それまでは仲が良くて、裕福な家庭だった」
酒を飲んでは怒鳴り、暴れるようになった父。靴をそろえていない、野球が下手だ、食事の仕方が悪い――。常にイライラして…
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(いま子どもたちは)親が離婚した…:5 父じゃない男に怒鳴られて
No.454
警察庁によると、2011年に検挙された児童虐待の加害者は養父や継父、母親と内縁関係にある男性が計142人(35%)。実父134人(33%)、実母119人(29%)を上回った。
千葉県の中学3年のヨシト君(15)にとって、それはひとごとではない。昨夏、母(43)…
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(いま子どもたちは)親が離婚した…:4 母と2人で生きていく
No.453
福島県が震度6強の揺れと、大きな津波に襲われた2011年3月11日。海から約1・8キロの自宅にいた高校3年のユウキ君(18)は、同居する祖父母の手をひき、母のミサさん(46)とともに親類の家へ避難した。自宅は半壊。親類や同じ学校の生徒が亡くなった。
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(いま子どもたちは)親が離婚した…:3 「お父さん、一緒に帰ろう」
No.452
1月20日、東京都内の児童施設は親子連れでにぎわっていた。「待て待てー」。会社員のケンジさん(44)は、遊具の間をうれしそうに走り回る娘のカヤノちゃん(4)を汗だくになって追いかけた。親子のありふれた触れ合いに見えるが、2人が会ったのは4年ぶりだった。
カヤノちゃんが生まれてすぐ、ケンジさんと妻のミユキさん(26)は別居した。ミユキさんがカヤノちゃんを育てながら協議を続け、昨年7月、離婚が成立した。離婚の条件として、養育費の支払いとともに、カヤノちゃんとの定期的な面会交流が約束された。
もともと面会交流を希望していたのは、自身も離婚家庭で育ったミユキさんだった。生まれる前に別れた父のことを何も聞けないまま、小学3年のときに母が病気で亡くなった。「私には何かあったときに帰る場所がない。自分の親の情報を知っておくのはとても大切なこと」
カヤノちゃんには時々、父がいることを聞かせてきた。娘は「背が高くて、かっこいい人がいいな」と無邪気に話していた。でも、別れた夫に会うのは気が進まない。娘をケンジさんと2人きりで会わせることにも抵抗があった。「連れて行かれたらどうしよう。私の悪口を吹き込まれたらどうしよう」
弁護士に紹介されたNPOびじっと(横浜市)に面会交流の支援を依頼。理事長の古市理奈さん(41)に同席してもらうことにした。古市さんは「子どもを一方だけの所有物にしてはいけない。両親から愛されている実感は、子どもの成長に欠かせない」と話し、ケンジさんとミユキさんにエールを送る。
この日の面会は、古市さんの提案で3時間。遊具で遊び、絵を描いて、父と娘の時間はあっという間に終わった。
ミユキさんが迎えに来た。抱っこしていたケンジさんがカヤノちゃんを下ろす。カヤノちゃんはミユキさんに手を引かれながら、もう片方の手でケンジさんの手を握った。「楽しかった。お父さんが作ったおにぎりおいしかった。一緒に帰ろう。今度はもっといっぱい長ーく遊ぼう」
(古田真梨子)
(いま子どもたちは)親が離婚した…:2 父に会えば、きっと幸せに
No.451
「お父さんに会いたい」
神奈川県に住む中学2年の女子(14)はそう願う。
1歳のときに母と別れ、どこで何をしているのかわからない。会っても何を話せばいいのかわからない。でも――。「父を知らないから、自分のこともわからない気がする。いつまでも自分に自信が持てず、大人になれないようで怖い」
一人っ子。祖父母の家に同居し、母はパート勤務で深夜まで帰宅しない。その母は時々、自分に八つ当たりをしたり、一人で遊びにでかけたりする。「私はきっと望まれて生まれたわけじゃないんだ」
母は未婚のまま自分を生んだのだと勝手に思い込んでいた。離婚の事実を知ったのは小学2年のとき。学校の授業で、赤ちゃんのころの写真が必要になった。母が出してきた写真には、生まれたばかりの自分に添い寝する母と、笑顔でピースサインをしている「知らない男の人」が写っていた。なんだか幸せそうに見えた。
「あなたにはお父さんがいる。今は事情があって別れて暮らしている」。それだけ言うと、母は泣き出してしまった。驚くとともに、「これ以上は母に聞いてはいけないんだ」と感じたという。
母の外出時をねらい、自宅の棚やタンスなどをあさった。ようやく見つけた母子手帳で、父の名前を知った。東京の住所が記されていた。
「お父さんは東京にいる!」
小学4年の授業で「学校から見えるもの」を写生するよう言われた。見えるはずのない東京タワーを描いた。一人で電車を乗り継ぎ、母子手帳の住所を訪ねたこともあるが、見つけられなかった。インターネットで氏名を検索してもみたが、今も所在はわからない。
寂しさ、悲しさ、悔しさ。感情にフタをして「サイボーグのように」日々をやり過ごしてきた。「お父さんに会えば、幸せになれる。自分でそう期待しているんです」。昨年末、母に内緒で父へのクリスマスプレゼントの紺色のマフラーを買った。いつか会う日のために、机の奥に大事にしまってある。
(古田真梨子)
(いま子どもたちは)親が離婚した…:1 親への恋しさ、我慢した
No.450
「お父さんが出ていく日、泣かないようにして下を向いて見送りました。その後、玄関に座り込んでずっと泣いていました。不仲なのはわかっていたけれど、子どもとの関係まで壊さなくていいと思いました」(小学6年女子)
「母が毎日のように離婚した父の悪口を言うのがつらい」(中学1年女子)
「母の新しい彼氏を受け入れられない。誰にも相談できず、一人で考え込んでしまう」(高校2年女子)
親の離婚や再婚を経験した子どもたちを支援するNPO法人Wink(東京都新宿区)のウェブサイトにある掲示板には、子どもらの悲痛な思いが、途切れることなくつづられていく。
「がんばりすぎちゃダメ。悩みを話せる友だちはいますか」
「本音を言えない気持ち、わかります。言ったら家族関係が壊れちゃうしね」
Winkの新川明日菜理事長(24)は、一つひとつ丁寧に返信する。「親の離婚を経験した子どもの大半は、親友にはもちろん、同居する家族にも本当の気持ちを隠している」と話す。
東京都出身の新川さんも、離婚家庭で育った。最初の離婚は0歳の時。その後、母が再婚、離婚、事実婚を繰り返し、成人するまでの間に3人の「父」と暮らした。「母は子どもより恋愛が大切な人。父だった人も、みんな去っていった。自分の家庭はふつうじゃないと思い、自己肯定感が低かった」
*
13歳のとき、実父が唐突に養育費を支払うようになった。記憶にない実父に興味はなかったが、誕生日の月に支払いを上乗せしてくれたとき、「会ってみたい」と心が動いた。
東京都台東区のJR上野駅で待ち合わせ、2人で食事をした。再婚していた実父は、新川さんが赤ちゃんだったころの写真をボロボロの状態で持っていた。離婚を謝り、「こんなにいい子に育ててくれて感謝している」と母への思いを口にした。
「自分を愛してくれる人がいる」。新鮮で温かい発見だった。大嫌いだった母との関係も、少しずつ改善した。
自分と同じように悩む子どもたちの声を聞いてあげたい――。2010年、Winkの活動の一環として、子どもたちに同じ境遇で育った大学生らを家庭教師として派遣する事業を始めた。離婚や1人親家庭の親への支援はあっても、子どもの支援は少ない。そんな現状を変えたかった。
現在、家庭教師は35人。その一人、都内の大学1年加藤涼也さん(19)は、訪問先の小学4年の男の子にかつての自分を重ねている。昨年のクリスマスイブ。「ケーキを買ってやる」と言うと、「そんなのいらない!」と断られた。やさしさに慣れないため、わがままを言えず、甘え方がわからない男の子。そんな姿を見るのがつらかった。
*
かつて加藤さんも、遠慮しがちで、冷めた目で周囲を見る子どもだった。ともに20歳で加藤さんを授かった両親は、3年後に離婚し、母方の祖父母に育てられた。母は仕事に忙しく、2週間に1回帰ってくる程度。父とは小学1年のときに1度だけ会ったきりで、どこで何をしているのかわからない。
泣いた記憶は1回だけだ。小2のとき、家で偶然、両親の結婚記念につくられたオルゴールを見つけた。両親の名前が刻まれた箱をパカッと開けると、流れてきた曲は、中山美穂とWANDSの「世界中の誰よりきっと」。互いを思いやる気持ちを歌い上げた愛の歌に、涙が出て止まらなくなった。
「我慢してるつもりはなかったんですけど……。やっぱりしんどかったのかな」。祖父母には、たくさんの愛情を注いでもらった。それでも、「両親が恋しい。友だちと自分の間に距離を感じることが多かった」。
今夏、20歳になる。母に父のことをきちんと聞いて、会いに行くつもりだ。20歳で父親になった父に「同じ年になったぞって言いたい」。好きだったと聞かされているたばこを一緒に吸って、「どこか似ているところを見つけられれば最高です」。
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置き去りにされがちな離婚家庭の子どもたちを取材した。(古田真梨子)
◆離婚する家庭の子ども、年に20万人 強い偏見、心に負担も
厚生労働省の人口動態調査では、2011年に親が離婚した未成年の子どもは23万5200人。90年代半ばから20万人台が続き、最多だった02年は29万9525人。その後は減少傾向だが、早稲田大学の棚村政行教授(家族法)は「婚姻数も減っている。離婚が減っているという実感はない」と話す。
日本では、子どもがいても、夫婦間の合意だけで離婚することができる。離婚後の親子関係について十分な話し合いがなされず、子どもが片方の親と断絶するケースも多い。棚村教授は「親同士のいさかいと、子どもの利益を分けて考えなければいけない」と指摘する。
昨年4月1日、離婚届に「面会交流」と「養育費」について取り決めをしたか否かを尋ねる欄が新設された。記入しなくても離婚はできるが、法務省は「夫婦に協議する機会を与えられれば」と親たちの意識改革に期待を寄せる。
東京国際大学の小田切紀子教授(臨床心理学)は「日本では離婚家庭への偏見が強く、『うちは普通じゃない』と心を閉ざす子も多い。親は子の気持ちに最大限の配慮を」と訴える。
小田切教授は、米オレゴン州で離婚家庭の支援を研究している。同州では、離婚する親は、子どもに与える影響を学ぶプログラムを受講しなくてはならないという。「子どもの健全な成長が共通の願いであることを確認することで、子どもの心の負担が減る」と話している。
小田切教授は、米オレゴン州で離婚家庭の支援を研究している。同州では、離婚する親は、子どもに与える影響を学ぶプログラムを受講しなくてはならないという。「子どもの健全な成長が共通の願いであることを確認することで、子どもの心の負担が減る」と話している。
家裁の裁判官を増員へ…最高裁、後見や離婚増で
判断力の衰えた高齢者の後見や離婚など家庭に関する審判や調停(家事事件)の急増を受け、最高裁は4月から、家庭裁判所の裁判官を20~30人規模で増やす方針を固めた。
1日には家事事件の手続きを利用しやすくした新たな法律が施行され、家裁への申し立てがさらに増えることも予想される。少子高齢化社会の到来を踏まえ、態勢の強化を図る。
司法制度改革で法曹人口は拡大し、裁判官も2002年から10年で約600人増えたが、多くは裁判員裁判が始まった刑事、知財など専門分野が細分化された民事に回り、家裁への重点配置はなかった。
背景にあるのは、家事事件の増加だ。判断力の衰えた高齢者らの財産管理などを行う後見人の選任や、離婚後の親子の面会交流や子どもの養育費を巡る争いなど、11年に家裁に申し立てられた審判や調停は77万4147件に上り、10年前の1・3倍に増えた。
特に成年後見制度では、後見人の選任や監督処分などの件数が、11年は11万4436件と、制度が導入された00年の9・1倍に膨らんだ。
しかも、後見人が高齢者らの資産を着服する事件も多発。最高裁によると、昨年3月までの1年10か月間で被害は550件、被害総額は54億円を超えた。昨年2月には、広島で起きた後見人による横領事件に絡み、家裁支部の監督が不十分だったとして国に約200万円の賠償命令が出ており、「家裁がもっと積極的に後見人を監督すべきだ」との指摘もある。
1日には、家事事件の手続きの基本的な事項を整備し、制度を拡充して利用しやすくした「家事事件手続法」が施行された。審判や調停が民事訴訟に準じて厳格に進められるようになり、裁判官の関与が今まで以上に求められる。
(2013年1月6日17時23分 読売新聞)
(訳)
子どもの親権問題における不正義是正の困難
司法の硬直的な考え方が改まらなければ、ハーグ条約批准によっても親による子どもの拉致(parental abduction)を止められない
伊藤聖美記者
2010年5月6日、総務省の官僚である渡邉泰之氏が家に帰ったところ、妻と2歳の娘が服などとともに消え去っていた。
彼の妻はゴールデンウィーク直後に娘を連れ去った。彼がゴールデンウィーク中に娘をハイキングに連れて行ったり、地元のお祭りに連れていったりして楽しんだ数日後のことだった。
現在、栃木県那須塩原市の副市長である渡邉氏(40)は、その当時のことを思い出し、娘を背中にしょって娘が寝付いて寄り掛かるまで一緒に歌を歌っていた時のことなどを詳しく語った。
彼の人生は、その運命の日を境にして完全に変わってしまった。娘は先月で5歳になってしまった。
「子どもたちが両方の親の愛情を感じて育つことほど重要なことはありません。特に、子どもたちが成長していくときには。私の娘は私に捨てられたと感じていると思います。私が娘をもはや愛していないから姿を消したのだと。」と渡邉氏はJapan Timesに語った。
日本において、夫婦間の諍いののちに子どもとの関係を引き裂かれた親は数多くおり、渡邉氏はその一人に過ぎない。日本という国は単独親権制度を採用しており、親権は通常母親にわたすことにしている。そして、子どもと引き離された親に対して、子どもたちと、たとえ会えるにせよ、非常にわずかな頻度でしか会えなくする慣習を有している。
この日本の残酷な現実は、外国人にも広く知られている。その外国人の中には、日本人の配偶者により子どもを海外から日本に連れ去られ、引き離されている在外の者も含まれる。
これらのいわゆる親による子どもの拉致(abduction)の問題が、国境を跨いだ子どもの誘拐を防止するためのハーグ条約を日本が批准するよう求める要求が増大している背景にある。
「これらの二つの問題は、実際には非常に密接に関連しています。なぜならば国内の問題も国際の問題も状況は全く同じだからです。自分の子どもがある日突然誘拐され、会うことすら許されないという状況は全く変わりません。」と渡邉氏は言う。
娘の誘拐後に妻との長期間の裁判所で闘い続け、現在も離婚手続きを進める渡邉氏は、こう続ける。
連れ去られた当初妻は彼を娘に数回会わせたが、その後、妻が彼を虚偽の配偶者暴力(DV)で訴えるという仕打ちをし突然会えなくなったと言う。
渡邉氏の妻は、妊娠中に渡邉氏が大きなハサミを突きつけて脅したり、彼女が駅のホームの傍にいる際には喜んで突き落してくれるヤクザの知り合いがいると語ったと主張して裁判に訴えた。しかし、その配偶者暴力の訴えは後に取り下げられた。
「『DV』の訴えにより裁判所への出頭命令書を受けとること程、おそろしい経験はありません。私は(それを受け取った際)完全に取り乱しました。しかし、裁判官は、妻の主張の大半には疑問があることを認め、妻には虚偽の申立ての罪が科される恐れがあると警告しました。そこで、妻は、判決が出される直前になり訴えを取り下げたのです」と渡邉氏は言った。
にもかかわらず、彼の妻は子どもの監護権を求める裁判を訴え、そして、再度、暴力の訴えを出してきたのである。
昨年の2月、千葉家裁の裁判官である若林辰繁氏は、渡邉氏の娘の監護権を「継続性の原則」を利用して妻とし、更には渡邉氏が配偶者暴力を犯したと認定した上で、娘を引き渡すよう求めていた彼の訴えを退けた。最高裁は9月にそれを追認する決定をした。
渡邉氏は、法廷での闘争を続けつつ、国会議員にこの問題に取り組むよう要請し、彼の事件は国会でも取り上げられた。
渡邉氏は、自らの立場から、当初は匿名で訴え続けることを望んでいた。しかし、彼の状況について多くの人たちの支援を得るため、彼は自らに起こったことを報道機関に伝える道を進むことにした。
「私は『DV夫』という烙印を押されてしまった。その裁判官は、私の件について完全に事実と法を無視したのです。私は立ち上がり(裁判官と)闘う以外に残された選択肢はなかったのです。」と渡邉氏は語った。
渡邉氏は、裁判官である若林氏を罷免させるため、国会議員からなる裁判官訴追委員会に助けを求めた。
日本に居るいわゆる「置き去りにされた親たちの数多くがこの若林氏に対し激しい憤りを募らせているが、特に2011年に「『継続性の原則』よりも子どもの利益を優先すべき」と国会で答弁した江田五月法務大臣(当時)を非難したことは激怒させた。
「同様の状況におかれた人たちは非常に多くいます。私は、その人たちのためにも諦めることはできないのです。これは、私と娘だけの問題ではありません。全ての子どもたちとその親のための闘いなのです。」と渡邉氏は言う。
家裁による調査によると、子どもを連れ去った親から子どもを引き渡すよう求める親による裁判は2001年には409件であったが、2011年には、子どもを戻すよう求める親の数は1985件にまで跳ね上がった。しかし、その数は、家裁が公式に受けた「置き去りにされた親」により法的に訴えられた事件しか反映していない。専門家は、それは氷山の一角でしかないと推測する。
早稲田大学の家族法の教授である棚村氏は、日本における単独親権制度や通常母親に監護権を渡す現在の司法の仕組みなど、様々な要因が親による子どもの拉致が増加している背景にあるという。
「時代は変わっているのです。父親も子育てに一層関わるようになり、単独親権制度を含む法的な仕組みが子どもを巡る争いをより起きやすくさせています。日本の司法の仕組みのこの部分については時代遅れになっていると考えます。」と棚村教授は言う。
日本の司法体系を独特なものにする(他国との)もっとも大きな違いは、日本において最初に子どもを連れ去った親の行為は犯罪とみなされないという点である。そのため、離婚のおそれが生じると、片方の親(通常は母親)が子どもをその親の実家に連れ去ることが当たり前となってしまうのである。
しかし、もし置き去りにされた親が、その後、家から消え去ってしまった子どもを取り返そうとすると、その行為は誘拐とみなされるのである。
棚村氏は、子どもから引き離された親が子どもを取り返そうとして誘拐犯とされる事件では、取り返そうとした親が自分の行為が誘拐にあたると気づいていない場合が数多くあると主張する。彼らからすれば、単に離婚の争いの一環と考えていたか、または、子どもを虐待環境から助け出そうとしただけなのだと。
「親による誘拐をすべて違法とするのは困難ですが、同時に、ダブルスタンダードになっている事件も数多くあるのです。最初に母親が子どもを連れ去るのは問題なくて、父親が子どもを取り返そうとしたら違法とされます。これは、長い間、子どもは母親の所有物と考えられてきた考え方が根底にあります」と棚村氏は言う。
別居後に子どもが両方の親に会う機会を奪われることを防ぐため、民法の766条が2011年に改正され、裁判に持ち込まれていない離婚手続きの中で面会交流や養育費その他について決定するよう明記された。そして、その際には子どもの利益を最優先に考慮するようにも規定された。
しかし、このような改正は渡邉氏のような人たちを救うことができなかった。渡邉氏の事件は当該改正後に判決が出たのだ。「この改正は子どもの養育について離婚する際に合意することを目的とするものです。しかし、この合意は全く強制力をもつものではありません。」と棚村氏は言う。
棚村氏や他の専門家は、日本が「国際的な子の奪取の民事面に関するハーグ条約」に署名すれば、日本の司法の仕組みは根本的に変わることになり、そして、多くの人々の考え方も根本から改められるに違いない、さもなければ、この条約への加盟は失敗に終わる、との意見で一致する。
最近設立された日本人と外国人の置き去りにされた親やその支援者等から構成される団体である「絆・親子再統合」の代表であるジョン・ゴメス氏は、子どもは両方の親に会う権利があると主張する。また、日本国内の監護権についての今の一方的な仕組みを残したままハーグ条約に加盟しても何も解決しないのだから、置き去りにされた親たちは協力しあうことが必要だと強調する。
「国際的なケースも国内のケースも根っこは同じ原因を抱えています。それは日本の家族法であり、日本の裁判所です。」とゴメス氏は言う。
「この拉致問題は、日本にいる全ての人に影響を与えます。母親であろうと父親であろうと。そして、日本人であろうと外国人であろうと。」
ハーグ条約は、国際間の親による誘拐を防ぐため、片方の親が「常居住地」である国から違法に連れ去られた子どもを迅速に返還させることを目的としている。G8の中で、この条約に署名していないのは唯一日本だけである。
日本は、米国、英国、カナダなどを含む加盟国からこの条約に加盟するよう圧力を受け続けてきた。しかし、強い国内の反対勢力、特に、配偶者暴力から身を守るために子どもを連れて日本に戻ったと主張する日本人の母親たち(の圧力)により、日本政府は全くやる気を見せなかった。
しかし、国際社会からの激しい批判を受け、日本は、ついに条約への署名の宣言とハーグ条約関連法案を、野田総理の民主党が多数を占める前国会に提出した。しかし、政治家たちは、国内問題に関連する国内の権力闘争に明け暮れて多くの時間を費やし、ハーグ条約を再び隅に押しやったのである。
そして、この問題は自民党による新政府下において解決の方向に話が進むか不透明な状態にある。
政府の官僚は一度審議が始まればハーグ条約関連法は可決されるだろうと自信をのぞかせる。しかし、日本人の妻と別居し娘と会うこともままならないまま日本に長期間滞在するゴメス氏のような親たちは、ハーグ条約加盟は正しい方向に向かう単なる一里塚に過ぎず、問題解決の決定打にはならないと言う。
ゴメス氏は、法的に親による誘拐は止めさせなければならず、面会交流権は強制力を有するものとし、そして、共同親権制度が導入されるべきと説明する。しかし、新しいルールが遵守されることを確実にするためには、これらの変化による利益を多くの人々が理解しなければならず、多くの人々が制度改正と同時に気付くことも必須であるとも加えて主張した。
「ハーグ条約は単なる一つの道具です。我々の究極の目標は、日本の社会的・法的な変革です。人々の考え方や行動の完全な変革です。」とゴメス氏は言い、続けて「日本人も外国人も同様であり、社会的・法的な変化は日本社会と子どもたちにとって良いことであり、生活の質の向上につながるものと我々は固く信じています。」と語った。
(原文)
Joining Hague may curb parental abductions if legal mindset evolves
On May 6, 2010, Yasuyuki Watanabe, an internal affairs ministry bureaucrat, came home to find his wife and 2-year old daughter gone, along with their clothes.
His wife had spirited away their daughter near the end of Golden Week, just days after he was enjoying the holidays taking her on hikes and to local festivals, recalled Watanabe, 40, now deputy mayor of Nasushiobara, Tochigi Prefecture. He recounted how he carried his daughter on his back and how they sang songs together until she fell asleep, snuggling against him.
His world was turned upside down that fateful day. Last month she turned 5.
“It is so important for children to feel loved by both parents, especially when they are growing up, and I think that my daughter feels abandoned by me, that I left her because I didn’t love her anymore,” Watanabe told The Japan Times during a recent interview in Tokyo. “The most painful thing about my situation is when I think about how my daughter must be feeling.”
Watanabe is one of many parents in Japan who have been torn away from their children after a falling-out with their spouse in a nation that grants only sole custody, usually to the mother, and where it is customary for parents not living with their offspring, to have little, if any, contact with them.
This has also been a widely reported harsh reality for foreign parents, including those living overseas whose children have been taken to Japan by estranged Japanese spouses.
These so-called parental child abductions are behind growing calls for Japan to join the international Hague treaty to prevent such cross-border kidnappings.
“These two problems are actually closely related because the domestic and international situation is the same — your children are abducted one day out of the blue and you are forbidden from seeing them,” Watanabe said.
For Watanabe, what followed was a long legal battle with his wife, and divorce proceedings, which continue.
Initially his wife let him see their daughter a few times, but that stopped abruptly when he was slapped with domestic violence charges — which he branded a lie.
His wife alleged he had threatened her with a large pair of scissors while she was pregnant and told her he knew yakuza who would be willing to help him out with the situation by pushing her off a station platform in front of a train. The violence charges were later dropped.
“There is nothing more terrifying than receiving an order to appear before the court over ‘DV’ allegations. I was completely distraught. The judge, however, recognized that much of her claims were questionable and warned she could be charged with false accusations, so she dropped the charges the day before the ruling was to be made,” Watanabe said.
But his wife then filed a lawsuit, demanding custody of their child and, again, adding allegations of abuse.
Last February, presiding Judge Tatsushige Wakabayashi at the Chiba Family Court granted Watanabe’s ex-wife custody of their daughter from the viewpoint of “continuity,” ruled that Watanabe had committed domestic violence and rejected his demand that his daughter be returned. The Supreme Court finalized the ruling in September.
While his legal battles dragged on, Watanabe asked lawmakers to address the issue and his case was deliberated on in the Diet.
Given his public profile, Watanabe originally wished to remain anonymous. But to garner public support for his situation, he recently came forward to tell his story to the press.
“I’ve been labeled a DV husband, and the judge completely ignored the facts and the law in my case. I had no choice but to stand up and fight,” he said.
Watanabe has solicited the help of a special group of lawmakers who are trying to get Judge Wakabayashi fired from the bench. Among the so-called left-behind parents in Japan, Wakabayashi has spurred widespread ire, especially when in 2011, he criticized then-Justice Minister Satsuki Eda for telling the Diet that priority should be placed on the welfare of the child rather than the “principle of continuity.”
“There are many people in similar situations. I cannot give up for their sake. It is not just about me and my daughter. This is a battle for all children and their parents,” Watanabe said.
According to data compiled by family courts, there were 409 parents seeking the return of their offspring from an estranged spouse in 2001, whereas by 2011, there were 1,985 parents seeking to get their kids back. The numbers, however, reflect only the legal cases filed by left-behind parents that were officially accepted by the nation’s family courts. Experts speculate they constitute only the tip of the iceberg.
Masayuki Tanamura, a professor of family law at Waseda University, said various factors are behind the increase in parental child abductions, including Japan’s sole custody principle and the current legal framework that generally grants that right to mothers.
“Times have changed — fathers are more involved in child-rearing, and the legal system — including the principle of sole custody — makes battles over children more likely to happen. I think this part of Japan’s legal system is outdated,” Tanamura said.
One major difference that makes Japan’s legal system peculiar is that when an estranged spouse initially takes a child, it isn’t considered a crime. This is because it is common for an estranged parent, generally the mother, to take the children to her parents’ domicile if a divorce is being contemplated.
But if the left-behind parent then subsequently tries to retrieve the offspring spirited away from their home, the action is considered kidnapping. Tanamura claimed there are many cases in which parents who spirit offspring away are unaware such action could be construed as abduction. From their point of view, they are merely considering a divorce or fleeing an abusive environment.
“It is hard to label all parental kidnappings as illegal . . . but at the same time, there are many cases that could constitute a double standard. It’s OK for mothers to first take the children away, but when the fathers try to get them back, this is illegal,” Tanamura said. “This is based on the longtime concept that children belong with their mothers.”
To prevent children from losing access to both parents after a separation, Article 766 of the Civil Law was revised in 2011 to specify that visitation rights, child-support payments and other matters be determined during nonlitigated divorce proceedings, and that the welfare of the child be considered first.
But even this change can’t help people like Watanabe because his case was ruled on after the amendment. “The aim of the revision is to promote forming agreements (over child care) when getting a divorce. But there is nothing that guarantees compliance,” Tanamura said.
Tanamura and other experts thus agree that if and when Japan signs the 1980 Hague Convention on the Civil Aspects of International Child Abduction, it must at the same time institute fundamental changes in the legal system, and the public mindset must also be overhauled, or joining the convention will lead to naught.
John Gomez, chairman of the recently founded Kizuna Child-Parent Reunion, a group of Japanese and non-Japanese parents, friends and supporters advocating the right of children to have access to both parents, emphasized the need for left-behinds to cooperate because simply joining the Hague Convention will not solve anything in Japan if it continues to take a one-sided approach to domestic custodial rights.
“The problem of international cases and in-country cases has the same root cause — Japanese family law and the courts,” Gomez said.
“The abduction issue affects all people in Japan — mothers as well as fathers, Japanese as well as non-Japanese.”
The Hague treaty aims for the swift return of children wrongfully taken out of the country of their “habitual residence” by a parent to prevent cross-border parental kidnappings. Of the Group of Eight countries, Japan is the only nation yet to sign the convention.
Japan has been under pressure from member states, including the United States, the United Kingdom and Canada, to join the convention, but it has been reluctant, given strong domestic opposition, especially from Japanese mothers who claim they fled to Japan with their children to protect themselves from abusive ex-spouses.
Facing severe criticism from the international community, however, Japan finally reached the point of submitting a bid to sign the treaty and Hague-related legislation to the Diet during the last session presided over by Prime Minister Yoshihiko Noda’s Democratic Party of Japan. But the politicians instead spent most of their time bickering over internal power struggles related to other domestic issues, pushing the Hague Convention to the sidelines once again.
And it remains unclear whether the issue will move forward under the new government led by the Liberal Democratic Party.
Government officials have expressed confidence that once deliberations begin, the Hague bid will be approved by the Diet. But parents, including Gomez, a longtime Japan resident who himself is separated from his Japanese wife and is having difficulty seeing his daughter, say joining the Hague treaty is only a step in the right direction, not a silver bullet.
Gomez explained that on the legal front, parental kidnappings must be stopped, visitation rights made enforceable and the idea of joint custody introduced. But he added that public awareness must also be raised at the same time so the public understands the benefits of the changes to ensure the rules are followed.
“The Hague is only one tool. The ultimate goal for us is a social and legal transformation of Japan . . . a complete transformation in terms of mindset and practice,” Gomez said. “We firmly believe, Japanese and non-Japanese alike, that the social and legal transformation is for the betterment of Japanese society and children and improvement in the quality of life.”
2012年12月24日発売のPRESIDENTの171ページに、「離婚裁判で妻から子どもを取り戻せるか 親権争い」という記事が掲載されて います。本記事の中で、親子ネット代表神部と、同運営委員平田のコメントが紹介されました。
「連れ去り」容認する司法に現役副市長が実名で告発〈AERA〉
離婚や別居を機にわが子に会えなくなってしまう「連れ去り」問題。その蔓延を放置してきた司法のあり方に、現役の副市長が実名で問題提起する。
総務省官僚として公務員制度改革にかかわり、現在は栃木県那須塩原市副市長の渡辺泰之(やすゆき)氏(39)は、2年前から5歳になる一人娘と一度も会えていない。2010年春、妻が突然、実家に長女を「連れ去」ったためだ。教育方針などをめぐり、妻とは意見がすれ違っていたという。
一昨年10月には、妻側が千葉家裁松戸支部に子どもの身の回りの世話などをする「監護者」の資格を求めて審判の申し立てをしたため、渡辺氏側も申し立て。今年2月、同支部は監護者を妻と定め、渡辺氏への娘の引き渡しを認めない審判を下し、9月には最高裁で確定した。
現在、渡辺氏は、一審の審判を下した家事審判官の若林辰繁裁判官に対し、裁判官を罷免できる「裁判官弾劾裁判所」へ訴追するべく、国会議員で構成される「裁判官訴追委員会」に審議を求めている。
現役の副市長という立場も明かしたうえで、あえて実名での問題提起に踏み切った理由を、渡辺氏はこう語る。
「自分のような目にあう親子は、これで最後にしたいんです」
昨年、民法766条が改正され、離婚時は子どもとの面会交流や養育費などについて、「子の利益を最も優先して」取り決めることが明文化された。国会審議でも、当時の江田五月法相が「裁判所は親子の面会交流ができるように努めることがこの法律の意図するところ」と答弁している。
弁護士資格を持つ早稲田大学の棚村政行教授(家族法)は、民法766条改正の趣旨を徹底するためには、司法へのアプローチ以外にも、離婚時に面会交流の必要性をレクチャーする機会を行政が設けたり、面会交流のための場をこれまで以上に増やしたりするなどの制度づくりが不可欠と説く。
また、「離婚後も両方の親が共同養育責任をもつ」というように民法で規定する必要もあるという。
※AERA 2012年10月29日号
離婚や別居の際、小さな子どもがいると、どちらの親が育てるのか、決めることになる。争いが家庭裁判所に持ち込まれると、実際 に子どもと暮らしている「実績」が重視されることがある。この判断基準は「継続性の原則」と呼ばれるが、問題もある。協議前に子 どもを連れ去り「実績作り」をすれば良い、ということになるからだ。
ある公認会計士から、たまたまこの問題を聞いた。その後、5県で起きた紛争を取材すると、夫婦間の事情は様々でも、片方の親 が子を連れて突然、姿を消す点は共通していた。子どもとの望まぬ別居を強いられる親たちの連絡会があり、全国に広がる問題である ことも知った。
昨年5月、国会での民法改正の審議の中でも、この原則の問題が指摘され、当時の江田五月法相は「合意ができる前に無理して子 どもを移動させて自分の管理下に置けば、後は継続性の原則で守られる、ということがあってはならない」と答弁している。
法相発言は法廷にどう響いているのだろうか。
千葉家裁で争いの当事者となった男性は「趣旨が徹底していない」と知人を通じて最高裁判所に抗議した。男性が法廷で法相の答 弁記録を示して「子どもの利益を第一に審査してほしい」と訴えたところ、家裁の裁判官が「法務大臣が何を言おうと関係ない。国会 審議など参考にしたことはない」と返した、という。
最高裁事務総局は「個別事案における裁判官の発言にはコメントしない」としているが、昨年8月には全国の高裁、家裁の裁判官 らに、民法改正に関する国会の会議録を読むことを求めた。
「夫婦や親子の関係は千差万別。この原則に代わる法律的な規範を作るのは難しい」「現状で子どもの養育に問題がなければ、そ れを変える決断には勇気がいる」と関係者は異口同音に指摘する。この原則で救われる人もいるだろう。しかし、原則だけでは、裁判 の前に力ずくで決着することにつながり、裁判官による裁判の否定になる。一件一件異なる争いだからこそ、家裁が双方の言い分を しっかり聞いて個別に判断する以外に方策はない。
大岡裁きの中に、2人の女性に子どもの両手を引っ張らせ、どちらが本当の母親かを決める場面がある。痛がる子の手を離したほ うが本物、という話だ。原則頼みでは、強く引っ張った親に軍配を上げることにならないか。
G8で日本だけ…ハーグ条約未加盟、審議停滞で
次期臨時国会では、特例公債法案をはじめ、先の通常国会で頓挫した重要な法案や条約承認案の処理が山積している。
この中には、民主、自民、公明各党で既に成立の必要性に関し認識が一致しているものもあり、国会の早期召集に踏み切らない政府・民主党は、成立や承認を自ら停滞させている状況だ。こうした事態は、日本の国際的な立場や国民の生活にも影響を与えかねず、野田政権の対応は「責任放棄」との批判を免れそうにない。
国際社会が険しい視線を注ぐのは、国際結婚が破綻した際の子どもの扱いを定めるハーグ条約承認案だ。主要8か国(G8)では日本だけが承認が遅れ、同条約に加盟していない。
政府は通常国会開会中の今年3月に、同条約承認案と、子どもの返還手続きなどを定めた関連法案を国会に提出。与野党対立のあおりを受けて審議が進まず継続審議となったが、自公両党には目立った反対論は出ておらず、国会会期に余裕さえあれば承認となる可能性は高いとみられている。
欧米諸国は、海外で結婚生活を送っていた日本人が子どもを連れて日本に帰ったまま配偶者に会わせないケースを問題視し、日本に条約の早期加盟による改善措置の実施を厳しく注文している。
◇国立拠点の団体、5000人分を目標に
離婚や別居後、親権者に子供との面会を拒否されている親たちでつくる「共同親権運動ネットワーク」(国立市)が、子供が通う学校などが親権のない親を不当に排除しないよう求める署名活動を始めた。来年1月末までに5000人分を集める目標だ。
同ネットワークは署名活動を通し▽両親が学校からの配布物や連絡を受ける▽学校行事への参加が不当に制約されない−−などを、厚生労働相と文部科学相が学校などに周知させるよう訴えている。
日本の民法では、夫婦が離婚すると、親権は一方に認められ、子供と離れた親が面会を求めても親権者に拒絶されるケースが多いという。
同ネットワークの運営委員でライターの宗像充さん(37)=国立市=には離婚した元妻との間に小学生の娘2人(9歳と6歳)がいる。運動会の見学を学校側に要望した際、校長が「親権者でない」と嫌がり、元妻に連絡したという。最終的に運動会に行くことはできたが、「子供たちが『父親にも大事に思われている』と感じられる環境でなくなる」と危惧する。
離婚調停中の小金井市の藤岡洋さん(48)は親権が決定していないことから、別居中の8歳と6歳の息子が通う足立区立の小学校に行事予定表や学級通信などの配布物の郵送を依頼したが、なしのつぶてだという。「参観日には顔を出したい。なのにその日程すら確認できない」と嘆く。
国分寺市の中村淳一さん(48)は、離婚した元妻と暮らす15歳の息子と13歳の娘の学校名すら知らない。卒業式や入学式など節目の行事には立ち会いたいと希望してきたが、親権者の元妻側が拒否しているためだ。「ゆくゆくは海外では認められている共同親権制に法改正すべきだ。今回の署名活動は、その第一歩」と話す。問い合わせは同ネットワーク(03・6226・5419)まで。【平林由梨】
〔都内版〕
離婚後の子育て 民間の力も生かしたい
離婚による別居で、一方の親が子と会えなくなる例が後を絶たない。国際結婚が破綻した夫婦の子の扱いを定めた「ハーグ条約」への加盟準備も進んでいる。離婚後の子育てを考えたい。
三十代の男性は関東地方に暮らす娘の運動会に出掛けたが、母親に拒まれ娘に会えなかった。かつて裁判所に娘との面会を求める審判を申し立て、一~二カ月に一度、二時間の面会を認められたが、子の成長は早い。男性は「もっと一緒にいたい」と訴える。
子どもと会えない親が面会交流を求めて裁判所に調停や審判を申し立てるケースが増え、この十年間で三・五倍に。昨年度は全国で計一万六十八件に上った。そのうち、面会を取り決められたのは約半数で、月一回以上はさらに半分。残りは二カ月に一度か年数回だ。罰則はなく、決めた通りに実行されない場合もある。
一方の親が無視される背景には未成年の子の親権問題がある。日本では婚姻中は父母双方が親権を持つが、離婚によって一方だけの単独親権となる。「家」を守るためとされた制度が親権をめぐる夫婦の争いを引き起こしている。
裁判所は親権決定時に同居する親を有利にしてきた。そのため、配偶者から暴力を受け、子を連れて逃げる事情がなくても、「先に一緒にいた方が勝ち」とばかり、連れ去りが横行する。核家族時代の今は夫婦が協力して子育てするのが当然になった。違法でなくても、一方の親と引き離すのは子のためにならず、親もうつ状態に陥ったり、命を絶った例がある。
日本が一九九四年に批准した国連の「子どもの権利条約」は、子を両親から引き離すことを禁じ、面会交流を権利とする。別れて暮らす親とも会い続けることが情緒の安定につながるともいわれ、日本でもやっと、今春施行された改正民法で離婚時に面会交流について取り決めを促すようになった。
離婚後も共同親権の米国では、両親で子育てや面会交流の計画を決めないと離婚できない。毎年、推計十五万人以上の親に会えない子どもを生み出している日本も、生き別れをよしとせず、「共同養育」の視点にたった公的支援が重要になってくる。夫婦で協力できないなら、第三者が支える方法もある。面会交流を援助する民間団体やNPOをどう増やすか。別れて暮らす親がないがしろにされず、共に子育てできる態勢を充実させるべきだ。
〈私の視点〉離婚後の親子関係 子のために共同親権を
■コリン・ジョーンズ(Colin Jones)さん 同志社大教授(英米法・比較法)
今春、離婚や親子関係にかかわる民法の親族編が大きく変わった。たとえば親の権利・義務を定める820条には、親権は「子どもの利益のために」行使しなければいけない、と明記された。また766条では、子どものいる夫婦が協議離婚をする場合、面会交流や養育費に関する取り決めが義務付けられ、子どもの利益を最大限に考慮することも定められた。
全般に子どもの利益に関連する改正が目立つなか、離婚後の単独親権制度が改正の対象にならなかったのは、画竜点睛(がりょうてんせい)を欠くとしかいいようがない。離婚後も共同親権が「子の利益」の国際標準なのに、日本では、離婚すればどちらかの親は戸籍上の他人にならなければならない。これで「子の利益」を高唱できるだろうか。「子の利益」を巡り、民法は大きな矛盾を抱えたとすら、私は思う。
けんかの絶えない夫婦は、離婚した方が子のためと思い、協議離婚を選ぶケースも少なくないだろう。子どもの成長を考えれば、離婚後も共同親権で二人で養育したいと願うのは、自然な流れだ。しかし現在の単独親権制度の下では、「子の利益」のための離婚がそうはならず、離婚に踏み切れなくなってしまう。
離婚後の親子関係はイチかバチかの勝負。それが日本の実情なのだ。そこでは、すんなり協議離婚できるはずの夫婦が、子が争点になったために激しく対立し、離婚訴訟にまで発展しかねない。優位に立とうと、先に子どもを連れ去った方が、子に「パパ(ママ)に会いたくない」と言わせるにいたっては、単独親権制度の弊害以外のなにものでもない。
そんなゆがんだ勝負はもう、やめよう。今回の改正で「子の利益」に焦点があたったのを機に、共同親権つきの離婚を求める夫婦が、「子の利益」とは何なのかという根源的な課題について、あらためて司法の判断を求めたらどうだろうか。離婚後に共同親権の継続を望む夫婦には、双方が重んじる子の利益にくわえ、個人の尊重、両性の平等、幸福の追求権など主張できる憲法上の材料はたくさんある。単独親権制度を固持する側には、どういう理論があるのだろうか。
そもそも単独親権の制度は、離婚後の子の幸福を考えてのものではなく、戦前の家制度の遺産にほかならない。今回の民法改正で日本の親に子どもへの配慮義務が課された以上、司法も古い概念にとらわれることなく、いかに子の利益が実現されるかを考えるべきであろう。
名古屋の米国人
離婚後の子どもの真剣問題を考えてもらおうと、米国人の英会話講師ケビン・ブラウンさん(四五)=名古屋市西区=が九日、県庁で子育て支援課の担当者と面会した。
ブラウンさんは米イリノイ州出身。二〇〇一年に米国留学中の日本人女性と出会い、結婚。その後来日し、長男を授かったが昨年に離婚。親権は元妻にあるため、七歳の息子とは月一回、五時間しか面会が許されていないという。
ブランさんは昨年から全国各地を回って親権問題を訴えている。この日も、日本では片方の親が親権を持つため一方の親は子どもと十分に会えないなどの問題点を訴えた。
欧米では、両親に子どもの養育権を認めるのが一般的。ブラウンさんは「毎日会いたい。それができなくて本当につらい」と話した。
(宿谷紀子)
親子の面会に支援を
学生時代の友人が離婚した。妻が保育園児の長女を連れて実家に戻り、今春、調停離婚が成立した。子煩悩な友人は毎週末、車で片道2時間かけて長女に会いに行く。仕事の疲れで体力的にきつい日もあるが「公園でサッカーをするのが楽しみ」と話す。限られた時間の中で親子の絆を確かめ合っているのだと感じた。
友人の場合は幸い子供に会えるが、離婚した夫婦間で子供との面会を求める調停は一昨年7749件と、10年前の3倍以上に増えた。
日本は離婚した男女のどちらか一方が親権を持つ「単独親権」のため、親権を持たなかった側(大半が父親)は子供との面会が十分に認められないケースが多いという。
先進国では、離婚後も父と母が共に親権を持つ共同親権が一般的だ。米国では両親が共に子供との同居を希望した場合、別居親との面会交流に積極的な親を同居親とする州が多いと聞く。都は5月に面会支援を始めたばかり。当事者間の解決が難しいだけに、国や自治体は対策に知恵を絞ってほしい。【佐々木洋】
改正民法:離婚後の養育費、親子面会 取り決めなくても届け受理
◇「子を守る」法改正、実効性乏しく 知らない自治体職員も
未成年の子どものいる家庭で親が離婚する際、養育費と親子の面会交流について取り決めをするよう規定した改正民法が4月に施行された。離婚届には、この取り決めをしたかどうかチェックを入れる欄が新たに設けられた。しかし、印をつけるかは本人の自由で、取り決めがなくても届け出は受理されている。識者や当事者からは「子の権利を守るための法改正なのに、実効性が乏しい」との声が上がっている。【反橋希美】
「窓口で積極的にPRはしていません。離婚届を出される方から聞かれることもありませんし……」。大阪府内のある市の市民課職員は、離婚届の新しいチェック欄について、記入を促すよう声をかけるなどの対応は、特にしていないことを明らかにした。「戸籍の登録に必要な記入漏れがないかを確認することが重要な業務。新設された欄(の確認)は、そこまで注意を払うべきものとは思っていない」と職員は話す。
書式が変わった離婚届には、親子の面会交流と養育費の分担について「取り決めをしている」「まだ決めていない」のいずれかに印をつける項目ができた。だが、この変更について法務省は「法改正を周知するための措置」との説明。離婚届を受理するかには影響しないとの考えを示す。それが市区町村の窓口対応にも影響しているようだ。
家庭裁判所の調停や審判では、養育費と面会交流が子どもの権利として認められてきたが、これまでは法律上の規定がなかった。
日本では、当事者間で親権者さえ決めれば離婚できる「協議離婚」が9割を占める。家裁の審判や調停を経ない協議離婚の場合、養育費や面会交流が決められていないケースも少なくない。養育費を受け取っている一人親世帯はわずか2割弱。離婚後に子どもに会えなくなった親が面会交流を申し立てる調停は、10年前の3倍以上に達している。
法務省は民法改正に伴い、養育費や面会交流について説明したリーフレットを作り、各都道府県に送付した。自治体の窓口に置いてもらうことを想定していたが、自治体側の関心は高くなく、置いていない役所も目立つ。
関西の自治体で、戸籍を扱う部署に勤める40代の男性職員は「今回の法改正を知らない職員さえいる」と漏らす。
この職員は自身も離婚を経験し、離れて住む子どもに数カ月会えなかったことがある。「養育費と面会交流の取り決めがない父母の相談に、第三者の立場から役所が乗る仕組みが必要だ」と話す。
母子家庭の支援を行っているNPO法人「Wink」(東京都)の新川てるえ理事長は「離婚届が変わっても、今のままでは実効性はないに等しい。養育費や面会交流をどう決めたらいいのか、国がガイドラインを作り、行政が窓口で情報を提供すべきだ」と訴えている。
◇
民法改正でより注目を集めるのが、離婚後に連絡を取り合うことが難しくなった父母の間に立ち、面会交流を援助するサービスだ。厚生労働省は今年度から、面会交流の支援事業をする自治体に費用の一部を補助する制度を始めた。だが事業を始めたのは、今のところ東京都だけだ。
日本人による“米国人拉致”問題の行方
条約の批准だけで問題が解決するのか?
“Abduct”という動詞をご存じだろうか。北朝鮮による日本人拉致問題について報じるとき、英語メディアが使う言葉である。Oxford English Dictionary の定義には“To take (a person) away by force or deception, or without the consent of his or her legal guardian; to kidnap”(誰かを無理やりもしくは騙して、または法的保護者の合意なしに連れ去る。誘拐する)とある。
ただ、日本絡みでこの単語がよく使われるケースがもう1つある。国際結婚が破綻した夫婦間で、一方の親が子供を母国に連れ帰るトラブルだ。具体的には、米国人など外国人と離婚した日本人女性が、相手の合意なしに子供を連れて日本に帰国してしまうケースが多い。
この問題が特に注目されるきっかけになったのは、2009年9月にテネシー州の男性が来日し、元妻と一緒に日本で暮らしていた子供を強引に米国に連れ帰ろうとして、福岡県警に未成年者略取容疑で逮捕された事件だ。米国のCBSニュースのレポーターは事件発生直後、“Mr. X’s ex-wife Y abducted their children this summer and took them to Japan”(X氏の元妻であるYは今年の夏、夫妻の子供たちを拉致し、日本に連れ帰った。報道時はX,Yともに実名)と報じていた。テネシー州の裁判所による決定を無視し、子供たちを日本に連れ帰った妻の行動こそ“拉致”と表現したのだ。
「親による拉致は、国際社会では犯罪」
米議会下院は2010年9月に、この問題を巡る日本の対応を非難する決議を採択した。そのとき演説したバージニア州選出のジェームズ・モーラン議員は“They (Japanese officials) are directly complicit in these abductions.(日本の当局者はこれらの拉致事件に直接加担している)”と訴えた。英語ネイティブに聞くと、非常に強い批判の表現のようだ。「こうした行為を誘拐とみなす米国をはじめ、国際的には犯罪とされる親による拉致を、日本は犯罪と認識していない」とも語った。
批判の裏には、主要先進国で「ハーグ条約」を批准していないのは日本だけ、という事情がある。ハーグ条約は1980年につくられた国際条約で、正式名称は“Hague Convention on the Civil Aspects of International Child Abduction(国際的な子の奪取の民事面に関するハーグ条約)”。ここではabductionの訳語に「奪取」があてられているが、奪取は「敵塁を奪取」などスポーツでも使われることもあり、訳語は比較的穏当な印象を受ける。「拉致」「誘拐」「略取」などでは語感がきつすぎるという判断があったのだろうか。
ハーグ条約のもとでは、親による国外への不正な連れ去りがあった場合、もとの居住国に子供を返還することが基本ルールだ。世界80カ国以上がこの条約を批准しているのに、日本は批准していない。だから日本に連れ去られた子供が帰って来ない、というのが米議会や子を連れ去られた米国人の親の言い分だ。高まる批判を受け、日本政府は2012年3月9日、条約締結に必要な裁判手続きなどを盛り込んだ、ハーグ条約実施法案を決定した。
国際的な家族のトラブルを、国際的ルールに基づいて解決しましょう、というのは一見確かに合理的だ。だが離婚や親権をめぐる日米の考え方や制度の違いを知れば知るほど、日本がハーグ条約を批准しても問題は容易に解決しないのではないか、と思えてくる。
父親の子育てへの関与が大きい米国人
「米国の父親は日本と比べて、子育てへの関与の度合いがとにかく大きい」。米国で2人の子供を育てる知人は語る。確かに筆者のまわりをみても、平日でも学校に子供の送迎をする父親は珍しくないし、遠足など学校のイベントにも大勢の父親が顔を出す。子育ては両親でするもの、という意識が日本より浸透している。これは親権についての考え方にも反映されているようだ。
筆者の地元モントレーのベテラン離婚弁護士ゲイル・モートン氏は「離婚後も両親とclose continuous contact(親密かつ継続的な交流)を持つことが好ましい、という基本的考え方がある」と説明する。日本との根本的な違いとして、米国では共同親権(joint custody)が認められる。親権はlegal custody(法的監護)とphysical custody(身上監護)に分かれる。法的監護は子供の健康、教育、福祉に関して決定する権利義務、身上監護は子供と暮らす権利義務を指す。
米国では離婚の法制度は州ごとに定められており、国全体の状況を一般化することは難しい。以下は比較的リベラルなカリフォルニア州の状況になるが、モートン弁護士によると「法的監護については大半のケースで共同親権になる」と話す。これが単独親権になるのは、主に片方の親が子供に直接暴力をふるうケースなどだ。
つまり「母親に暴力をふるっていても、子供に暴力をふるっていなければ父親に親権が与えられる」(モートン氏)。また父親が子供に暴力をふるい、protection order(保護命令)が出されたケースでも、何年か経って保護命令が失効すれば、父親の申請によって共同法的監護が与えられる可能性がある。
身上監護についても状況は同じで「80%対20%、60%対40%など時間配分こそ違え、両方の親が子供と過ごす権利を得るケースが大半」(同)。
もう1つ、日本との違いは離婚における裁判所の関与だ。日本では2008年時点でも87.8%が協議離婚。つまり当事者同士が話し合い、役所に離婚届を出せば離婚成立だ。だが米国では裁判所に離婚を申請し、離婚判決を受ける必要がある。一部例外はあるが、その間に互いの資産、負債、収支を開示し、離婚合意書をまとめなければならない。
離婚協議は1度でおしまいにならない
子供がいる夫婦には養育計画の提出も義務付けられるが、モントレー郡の申請書を見るとその内容はとても細かい。学校の選択、宗教行事への参加、かかりつけ医師の選択、課外活動への参加、州外への旅行といった項目について、事前に他方の親の同意を必要とするかを選択する。しかもどちらかがその取り決めを破った場合、民事・刑事罰を課すか、それとも法的監護または身上監護を変更するかも記入する。
養育計画や財産分与は、弁護士を雇うなどして当事者同士の話し合いで決められるが、先述のモートン弁護士は「私の扱う案件で、当事者同士の話し合いがまとまるのは25%程度。残りは調停や裁判といった手続きまで進む。ほかの弁護士事務所でも割合は似たようなものだろう」と語る。内輪の話し合いではなく、“出るところに出て”離婚の条件を決める人が多いわけだ。
しかも離婚協議は1度やればおしまい、というものでもない。たとえば子供が幼いときに離婚し、身上監護において母親80%、父親20%と決まっても、子供が10歳くらいになり、父親が「これからは男親との交流が大切になる時期だ」として条件の見直しを申し立てれば、再び裁判所の決定をあおぐことになる。
筆者は6月初旬、モントレー郡家庭裁判所に足を運び、親権をめぐる審理を見学してきた。法廷内では20~30組の夫婦が順番を待っている。衆人環視のもと、1つの案件の審理にかけられる時間は10分程度。ある夫婦の場合、現在隔週で土曜日から日曜日夕方まで娘と過ごしている父親が「火曜日朝に子供を保育園に送るまで一緒にいたい」と申し立てをしていた。妻は「娘は今の状況に慣れている」と反論したが、あっという間に「月曜朝まで父親との滞在時間を延長する」という決定が出た。裁判官は事前に申請書を読み、互いの言い分を把握していたのだろうが、判決の理由などは一切説明されなかった。
もちろん家族のトラブルを、公的権力に頼ってきっちり解決するという手法にはメリットもある。日本では離婚すると、親権を持たない親が子供にまったく会えなくなるケースも多いが、米国では養育計画に反して他方の親に子供を会わせなかったりすると、親権が自分に不利に変えられてしまうリスクがある。冒頭紹介したテネシー州の男性のケースがその典型的な例で、子供を連れて日本に帰国した妻は米国では親権を失い、その後の裁判で多額の損害賠償を科された。
また厚生労働省の2006年全国母子世帯等調査結果報告によると、継続的に養育費を受け取っているケースはわずか19%にとどまる。一方、カリフォルニア州の場合、各郡の養育費サービス局に申し立てをすると、不払いの養育費回収に協力してもらえる。
容赦ない強制力により養育費の回収率高める
モートン弁護士によると、不払いの親には給与はもちろん失業手当まで差し押さえたり、運転免許証、弁護士免許、不動産業免許などの公的資格を停止してしまったりと容赦はない。例えばモントレー郡の養育費サービス局のウェブサイトを見ると、悪質な不払いと認められた父親に90日、6カ月の懲役刑を科すというプレスリリースが掲示されている。同郡の養育費回収率は2010年度には約60%だった。
離婚後、それぞれの親が子供に対して持つ権利と義務を裁判所命令という形ではっきりさせ、違反した親には罰則を科す米国。基本的に当事者同士の話し合いに委ねる日本。雇用における機会均等と同じ発想で、たとえ不倫の末に妻を捨てた夫でも子育てに関しては妻と平等。養育の権利もコスト負担も母親1人で抱え込む日本とは大違いだ。
その極端な制度的・心理的な落差が、米国人をしてabductionとまで言わしめるトラブルの根っこにあると言えそうだ。たとえ日本が共同親権を認めるなど国内法制度を整え、ハーグ条約を批准したとしても、この差は容易には埋まらないのではないか。
離婚後の“単独親権”を考える
日本では今や年間23万組を超える夫婦が離婚するという現実もあって、離婚した後の子どもの親権をめぐって争いになるケースが急増しています。
日本は離婚した男女のどちらか一方が親権を持つ「単独親権」制度のため、親権を持たなかった側は子どもとの面会が十分に認められない傾向が大きいというのです。
【寺前さん】
「こんばんは。昨日はサッカー見た?え?お前、日本代表見てないの?」
大阪府高槻市の寺前忠さん(44)には8歳の長男・健君(仮名)がいますが、姿はテレビ電話の向こうです。
一緒には暮らしていません。
会えるのは月に1回。
あとは週に1度、決められた時間にテレビ電話ができるだけです。
夫婦関係のこじれからおととし離婚し、健君が前の妻のもとに行ったためです。
【寺前さん】
「OK、OK、いいよ。ほんならなあ。バイバイ」
【寺前さん】
「本当は会えたら一番なんですけど顔がまず見えるということがいちばんですね。大好きな子どもですもん。大切ですもん、宝物ですもん。一緒にやっぱり住みたいなと思いますよ」
今や年間およそ23万5,000組が離婚する時代。
親が離婚した未成年の子どもはおととし25万人以上にのぼります。
日本はかつての家制度の名残で親権者を一人に絞る「単独親権」制度を現在もとっています。
そのため離婚した男女の間で時に子どもの奪い合いが生じ、親権を失った方の親が我が子と満足に会えないことがあるのです。
寺前さんの場合、家庭裁判所では健君を引き取ることを認められました。
しかし高等裁判所では一転して判断を覆され、「仕事の都合で十分に面倒を見ることができない」との理由で健君を前の妻に渡すことを命じられました。
【寺前さん】
「あなたは親じゃないんですよと突きつけられていることですから。子どもに会いたいんですよ。子どもの養育に携わっていきたいんです。それがさせてもらえないんです。それは逆に僕たちに育児放棄しろと言っていることと僕は同じことを言われているように突き刺さってくる、心に」
制度についての知識が乏しかった離婚前には今のような結果になるとは想像もしていませんでした。
【親子ネット関西】
「父、母で協力し合い、子育てが出来るよう共同親権、共同養育を…」
子どもとの面会を巡る家庭裁判所への調停申し立てはおととし7,749件と10年で3倍以上になりました。
離婚した男女に子どもがいる場合、親権はおよそ8割が女性側に渡るのが現状ですが、男性の育児参加が進み、子どもと関わり続けたいという声が男性側からもあがるようになっています。
【離婚した男性】
「今(子どもと)2年6ヵ月会えていない状態。人格形成とか成長とか教育とか、やっぱり父親という存在が絶対必要になってきますので、こうやって頑張っています」
日本も批准する国連の「子どもの権利条約」には「児童はできる限りその父母を知り、かつその父母によって養育される権利を有する」とあります。
アメリカ人弁護士のコリン・ジョーンズ教授は、先進国では離婚後も父と母が共に親権を持つ「共同親権」が一般的だといいます。
【同志社大学法科大学院 コリン・ジョーンズ教授】
「単独親権のどこが子どもに良いのかを考える必要があると思うんですよ。親の事情と親の事情のための手続きと、なるべくそれまでの親子関係を自然な状態で継続させることは別体系にすべきだと思う」
また、臨床心理士で家庭裁判所の調停委員も務めた専門家は子どもの発育上の問題を指摘します。
【神戸親和女子大学 棚瀬一代教授】
「父親が自分に会いに来ないっていうことは自分が愛するに値する存在じゃないから父親が自分を見捨てちゃったのではないだろうかとか色んな想像をする。やはり自分を肯定できないという自信のなさからそういうお子さんは抑鬱傾向に陥ってきますね」
【寺前さん】
「子どもと会えるのを楽しんだり喜びが出てきたり」
この日は月に1回、健君と面会できる日です。
車でおよそ3時間かけて愛知県岡崎市に向かいます。
【寺前さんと健君】
「プール行く、今日?」「何でプール行きたいの?」「プールで泳ぐ練習…プールのスライダーがやりたい」
子どもの健全な成長のためと位置づけられているのが「面会交流」です。
しかし日本では子どもへの精神的負担を理由に裁判所が限られた面会しか認めない傾向にあります。
さらに親権を持つ親の意向次第で子どもと会うことすらおぼつかないケースもあるのです。
寺前さんは約束された10時間で健君と一所懸命に遊ぶことを心がけています。
【寺前さん】
「成長を見る時ってこの日しかないんでね、僕にとっては。そりゃもう歯がゆいですよね。決められた月に1回の10時間ぐらいしかその時しか会えない。歯がゆいですよね」
許された時間はあっという間に過ぎていきました。
時間内に健君を母方の自宅に送り届けます。
【寺前さん】
「こっち、こっち」「参観日な、参観日な」
【寺前さん】
「お父さんがおってお母さんがおってどちらも好きというのが一番幸せな形なんでね。今はもう親権をとった者が10でそこから(片方の親が)『何とかお願いします。1カ月の中で1日下さい』というスタート。そういう風に決まっていますから、そうせざるを得ない形ですよね」
ことし4月から、離婚の際には親との面会などについて子どもの利益を最優先するようにと、ようやく民法に明文化されました。
しかし面会方法や回数などの具体的な基準は示されず強制力もありません。
今、改めて親子の絆のあり方が問われています。
だいあろ〜ぐ:東京彩人記 親子面会交流全国ネット副代表・鈴木裕子さん /東京
◇離婚後も共同で養育を−−鈴木裕子さん(43)
離婚した夫婦間の子供の面会を巡る紛争が増えている。離婚や別居後に、わが子との面会を阻害されている親たちでつくる市民団体「親子の面会交流を実現する全国ネットワーク」(渋谷区)は、離婚後も両親が協力して子育てするための法整備などを求めて活動している。副代表の鈴木裕子さん(43)に現状と課題などを聞いた。
−−親子ネットについて教えてください。
4年前に設立し、会員は全国で約300人います。離婚後は母親と暮らす子供がほとんどのため、会員の約9割は男性です。最近、離婚して親権を失った父親が娘を誘拐した容疑で逮捕されたり、離婚した母親が幼い子を餓死させる痛ましい事件が起きています。このような事態の多発は「離婚後の子供の親は1人」とする単独親権制の存在と、非親権者と子供が交流するための法制度の未整備が原因と考え「共同親権・共同養育社会」の実現を目指し活動しています。
−−女性の鈴木さんが活動を始めた理由は。
インターネット交流サイト「ミクシィ」で親子ネットを知ったのがきっかけです。私は在日韓国人だった夫と娘2人、夫の母と5人で米国で暮らしていましたが、8年前に離婚し帰国しました。彼が日本で自分を親権者とする離婚届を勝手に出してしまい、娘と離ればなれになりました。米国で裁判を起こし、私が希望した時に子供と面会できるようになりましたが、日本では米国などに比べて遅れているのが現実です。
−−どういう面が遅れているのですか。
欧米では離婚後も両親に親権がある「共同親権制」の国がほとんどで、離婚や別居後も親子が定期的に会える環境が整っています。親子の面会は年間100日が一般的で、夏休みなどには長期宿泊もあります。一方、単独親権制の日本では、面会はせいぜい月1回程度。離婚はあくまでも親同士の別れであり、子供との別れではありません。離婚後も子供が両親から愛情を受け続けられる環境づくりが重要です。
−−具体的にどんな取り組みを?
民法が共同親権制に改正されるよう、国会議員への働き掛けなどを行っています。昨年8月には約9000人分の署名を国会に提出しました。一気に民法改正まで行かなくても、離婚する夫婦に養育計画書の作成を義務付け、面会日数や養育費などを具体的に決めるなど、共同養育の実現に向けた議員立法にも期待しています。
−−親と会えない子供への影響は?
「両親がそろっている」「離婚したが定期的に面会している」「離婚後、別居した親に会っていない」という三つのグループの子供の心理状態を調べたところ、離婚後、片方の親に会えなくなった子の自己肯定感が弱いという専門家の研究結果もあるそうです。児童福祉や精神医学の立場からも、離婚後も両親で子育てすることが大切です。<聞き手/社会部・佐々木洋記者>
◇記者の一言
離婚後の親子面会を難しくしている要因の一つに、子供の祖父母の存在があるという。離婚後、母親が子を引き取り実家に戻ると、母親の両親が父親を敵視し面会を拒むケースが多いらしい。09年に全国の家裁に持ち込まれた面会を求める調停は6924件で過去最高を記録した。離婚による子供への影響を少なくするためにも、国は早急に対策を講じてほしい。
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■人物略歴
◇すずき・ひろこ
1968年、愛媛県生まれ。会社員。10年3月に親子ネットに入会し、同年8月から副代表を務める。男性がほとんどを占める会員の中で、母親の視点から共同養育の大切さを訴えている。
「子の利益」大人の責任
◆裁判官/早田久子さん◆
松江の地家裁で民事と家事の事件を担当するようになって、1年ちょっとが過ぎました。
離婚など家族にまつわる事件を担当していると、親権や離れて暮らす親と子どもの面会交流、養育費といった問題を巡る争いの中で、何ともやりきれない思いをすることが多々あります。それは大人の世界の争いに、本来無関係なはずの子どもたちが巻き込まれる場面を目にするときです。
離婚しようとする本人たちが、相手の非を責め、自分を正当化しようとするのは、ある意味仕方のないことです。しかし、いろいろと事情はあるにしても、「子どもには絶対に会わせない」とか、「勝手に出て行ったやつに養育費なんて払えるか」とか言うのは、子どもから見たら、迷惑な話ではないでしょうか。
ほかにも「跡取りだから長男だけは置いていけ」(仲良しきょうだいを引き離しちゃうの?)とか、「あの子はパパに会いたくないって言ってます」(ホントはパパ好きの子に、無理させちゃってない?)とか聞かされると、子どもたちの気持ちや将来の暮らしぶりを想像して、ため息が出てしまいます。
今年4月に施行された新しい民法の規定には、離婚後の子どもの監護について取り決めをする場合、「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」と書かれています。子どもの利益を守るのは、周囲の大人たちの責任です。「子ども最優先」という意識がすべての人に浸透していくことを、心から願っています。(松江地家裁判事)
国際離婚:日本人女性の親権認めず 大阪高裁、逆転判断
米国に住むニカラグア国籍の男性との国際結婚で生まれた9歳の女児の親権などを、日本人女性が求めていた審判で、大阪高裁が女性の申し立てを却下したことが分かった。女性側は決定を不服とし、現在は最高裁が審理を続けている。この問題を巡り、女性は女児を無断で日本に連れ帰ったとして米国で親権妨害罪に問われた。
女性は02年2月に結婚し、女児を産んで米国で暮らしたが、08年2月に女児と帰国。09年6月に米国で離婚が成立したが、元夫の単独親権が認められた。
女性から家事審判を申し立てられた神戸家裁伊丹支部は11年3月、女性への親権変更を認める一方、元夫と子どもの米国での面会を認めた。しかし翌月、女性は永住権更新のため米国に入国しようとして逮捕され、女児を元夫に引き渡す司法取引に応じて釈放された。
高裁は、父母両方と交流する機会を女児に確保すべきなのに、女性が女児と元夫との交流に非協力的な点を重視。既に女児が渡米したことも踏まえ、女性に親権を認めるべき理由がないとしている。
日本は、国際結婚破綻後の子どもの法的扱いを定めた「ハーグ条約」を締結する方針を示している。条約は、子どもを連れ出された親が返還を申し立てた場合、相手方の国の政府は原則として元の国に返すよう義務づけている。
女性側代理人の弁護士は「決定は不満だ。まだ希望はあると思っている」と話した。一方、元夫は「ハーグ条約に日本が加盟していれば、子どもはすぐに連れ戻され、女性も身柄を拘束されることはなかった」と話した。【渋江千春】
Moms here also face custody torment
By MAYA KANEKO
Kyodo
As Japan’s ratification of an international treaty that helps settle international child custody disputes awaits Diet approval, some mothers are dealing with the distress of their non-Japanese spouses taking their children abroad at the last minute.
These women face difficulties in enlisting wide support, as the issue of “parental abductions” to Japan tends to grab more attention. Japan is often portrayed as a safe haven for estranged Japanese parents bringing their children here, and as such has been under international pressure to sign the 1980 Hague Convention on the Civil Aspects of International Child Abduction.
The mothers’ plight can also be considered less serious than that of parents who are totally denied access to their children in Japan, because many of the countries where their children were taken could award joint custody — unlike Japan, which has a sole-custody system.
In addition to language barriers and expensive legal costs, the slow progress by Japan to join the international treaty weighs on the mothers’ shoulders, as Tokyo’s accession to the convention holds the key to their future parenting arrangements.
A woman in her 30s living in Saitama Prefecture has been separated from her two children since December 2010. Her American husband has refused to return to Japan and is now living in Florida with the kids and their grandmother.
The couple and their Japan-born kids had originally planned to move to Florida together, but the husband, who taught English in Japan, later refused to sponsor his wife for a visa. According to her, he said he no longer wanted to live with her because she was poor at child-rearing.
“I think my husband knew that in Japan it would be difficult for him to gain custody of the kids and that if we got divorced, he could not easily see them,” the woman said. In Japan, divorced mothers tend to get sole custody and it is not unusual for children to stop seeing their father after their parents break up.
She also said her husband had probably been aware of Japan’s imminent accession to the Hague Convention, which sets out the rules and procedures for promptly returning children under 16 to the country of their habitual residence in cases of international divorce among member countries. Japan decided last year to join the pact.
The treaty is not retroactive. For Japan, that means it will only affect cases occurring after it enters into force here. The pact takes effect on the first day of the third calendar month after it is ratified.
The Saitama woman, who communicates with her 4-year-old son and 2-year-old daughter every other day via the Skype Internet telephone service and saw them when she visited Florida in November, is worried that they can no longer understand Japanese and will forget about their life in Japan.
The couple are currently seeking a divorce settlement in a Florida court, in line with a U.S. law that designates a state where children stayed with a parent for six months in a row as the venue for litigation. For the woman, who has never lived abroad, U.S. court procedures mean a great deal of trouble and “unfair” situations, she said.
Left with no chance of getting a green card and little prospect of acquiring any other type of visa that would let her live in the United States, her husband is seeking sole custody of the children, she said.
“As long as Japan remains a nonparty to the Hague Convention, the U.S. court won’t allow my children to go to Japan during vacations out of fear that they would not be returned,” she said. “Japan’s accession is an important matter to me because it opens up various possibilities.”
A woman in Shizuoka Prefecture faces a similar dilemma. Her two sons, aged 5 and 7, have been with their father in the U.S. since March 2011. Her American husband refused to return with the kids due to safety concerns triggered by the Fukushima nuclear crisis after the March 2011 quake-tsunami disaster.
The woman said her husband, who moved with the children in May 2011 to Champaign, Illinois, where he had found a job, repeatedly assured her that the children would return to Japan once cold shutdown had been achieved at the troubled reactors at the Fukushima No. 1 plant.
But he filed for divorce at an Illinois court in last November and the children did not return, even after the government declared in December that the plant had been brought to a stable state of cold shutdown. She said she finally realized that her husband “had planned everything in advance and conveniently used the disaster that hit Japan as an excuse.”
“My husband waited until the kids spent six months with him in Illinois so that he could start a divorce suit there to alter the situation to his advantage,” the woman said.
“I was naive to believe his promise to eventually return the children to Japan but couldn’t force him to do so, as I was concerned about radiation contamination that could jeopardize the children’s lives,” she said.
The woman, who tries to maintain communications with the children via Skype, is also concerned that their memories of the Japanese language and culture are fading.
Because the children are still registered as citizens in Japan, she launched legal action here. However, the process, which involves notification via diplomatic channels, will take a long time.
She said it is frustrating to face difficulties caused by the nuclear crisis and Japan’s position on the Hague Convention that “an individual cannot change.”
The woman said, however, she won’t forcibly bring her children back to Japan because a unilateral abduction would only produce a “negative chain reaction” and limit the children’s access to one parent. She believes that kind of drastic action will “not solve the problem and never be in the interest of the children.”
According to a tally by the Japan Federation of Bar Associations, its member lawyers have accepted about 150 consultations on parental child abductions from Japan to other countries between 2000 and 2011.
Both the Foreign Ministry and the U.S. State Department recognize such abduction cases exist, but because Japan hasn’t joined the Hague Convention yet, they can only provide relevant information and introduce lawyers, according to the Foreign Ministry.
(日本語訳)
「駆け込み連れ去り」に苦しむ日本の母親達 5月31日共同通信
日本が批准することにより、国際的な親権争いを解決する糸口となる条約の承認を待つ一方で、条約是認の前に外国人配偶者によって子どもを外国へ連れ去られて悩んでいる日本の母親たちがいる。
親による日本への子の拉致問題は、多くの注目を集める傾向にあるが、連れ去られた母親たちは幅広いサポートを受けられずにいる。日本が未だ国際的な子の奪取の民事面に関する条約(ハーグ条約)に批准していないため、日本は拉致天国と象徴される。
彼女らのケースは、拉致されて日本にいる子ども達に全く会えない親たちのケースに比べて、重要度が低いと考えられている。彼女らの子ども達が連れ去られた国では日本のような単独親権ではなく、共同親権が普通とされていて、彼女らにも子どもへのアクセスが与えられるチャンスが大きいからである。
言語の壁や国境をこえる親権争いのための高額な訴訟費用に加え、国際的条約締結に向けてのプロセスが遅々として進まない事も、母親たちには重くのしかかる。日本が条約に加盟することが、今後の養育プランに大きく関わってくる。
2歳と4歳の子どもと離れて暮らす埼玉県の女性は、2010年12月にフロリダ州に里帰りした際、夫に日本へ帰ることを拒否された。夫は、子ども達と夫の母親と新しい生活を始めた。
彼女も遅れてフロリダ州へ移住する予定でいたが、夫はもう一緒に住む気はないと彼女に告げ、ビザのサポートをすることを拒否した。彼女の子育てに問題があるということを引き合いに出したという。
「彼は日本で離婚した場合、親権が取れず子どもにも会えなくなるかもしれないという事を知っていたと思います」と女性は言う。日本では離婚後、母親に単独親権が与えられる傾向にあり、子どもが父親に会えなくなるという事は、稀ではない。「日本がハーグ条約に批准する日が近いということを夫は知っていたでしょう」と彼女は言う。
批准すれば、16歳未満の子どもの奪取があった場合、すみやかに子どもを常居国へ返さなければならない。昨年5月、この条約に加盟することを日本は決定した。条約に加盟しても過去のケースについては遡及されず、加盟後に起こったケースにのみ適用される。協定は批准後、第三暦月の初日に発効される。
女性は4歳の息子と2歳の娘と一日おきにスカイプを通してコミュニケーションをはかっている。彼女が子ども達に会ったのは昨年11月が最後だ。彼女は子ども達が日本語も日本での生活も忘れてしまうことを懸念している。
子ども達が一方の親と6ヶ月以上滞在した場所が親権を決める際の管轄であると指定されるというアメリカの法律にもとづき、夫婦は今フロリダ州裁判所で離婚の手続きを進めている。アメリカに一度も住んだことのない女性にとって、アメリカでの裁判手続きは大変重荷で、フェアではないと女性は言う。彼女がグリーンカードを手にすることもできず、他のビザを得ることも難しい状況で、彼女の夫は単独親権を求めている。「日本が条約未加盟のままでは、アメリカの裁判所は子どもが戻されなくなることを恐れ、休暇中も日本へ行くことを許さないでしょう。日本の条約加盟は重要な問題で、加盟すれば様々な可能性が広がります」。
静岡県に住む女性は、7歳と5歳の息子を昨年3月にアメリカへ連れさられた。3月11日の地震と津波による福島原発問題への懸念から、アメリカ人の夫は子どもを日本に連れて戻る事を拒否した。彼女の夫は昨年5月にイリノイ州シャンペーンで仕事を見つけ、子どもを連れて引っ越したが、原発の冷却停止が確認されれば、日本に戻ると言い続けていた。(共同通信は以前プライバシーの懸念により彼女を特定することは控えていた。)
12月日本政府が冷却停止宣言したあとも夫と子どもは戻ってこなかった。昨年11月夫はイリノイ州で離婚裁判を起こした。女性は「夫は初めから計画していたんです。日本を襲った災害を言い訳にしていたにすぎませんでした」と話す。「夫は子どもが6ヶ月間イリノイ州に住んで、自分が有利に離婚を進められるのを待っていたんです。彼がいずれ子どもを日本に返してくれると信じていた私が甘かった。でも放射能汚染により子ども達の命を危険にさらすことが心配だったんです」。
女性もまたスカイプで子ども達と交流をしているが、子ども達が日本語も文化も忘れてしまっていると心配している。子ども達はまだ日本の市民だとして、彼女は日本で法的措置を開始したが、外交ルートを通じて訴状を送るというプロセスは長い年月を要する。
原子力事故とハーグ条約に起因する困難に直面し、「個人では何も変えることができない」と女性は憤りを感じている。
女性は子どもたちを無理矢理日本に連れてくる気はない、一方的な拉致は「負の連鎖」を産むだけで片親へのアクセスを制限してしまう、極端な行動は何の解決にもならず子どもにとっても利益にならない、と言う。
日本弁護士会の集計によると、日本から他国への連れ去りに関する相談は2000年〜2011年の間に150件に昇るという。外務省によると、日本の外務省も米国務省も拉致事件を認識しているが、条約に加盟していない日本では、弁護士を紹介するなど情報提供しかできないという。
(原文)
Child Custody (Feature)
FEATURE: Japanese mothers tormented by “last-minute” child abductions
By Maya Kaneko
TOKYO, May 31 Kyodo – As Japan’s ratification of an international treaty that helps settle international child custody disputes awaits Diet approval, some Japanese mothers are dealing with the distress of having had their children taken abroad by their non-Japanese spouses shortly before the nation’s endorsement of the treaty.
Those mothers face difficulties in enlisting wide support, as the issue of parental child abductions to Japan tends to grab more attention. Tokyo is not yet a party to the 1980 Hague Convention on the Civil Aspects of International Child Abduction, with Japan often portrayed as a safe haven for parents taking their children to the country.
Their cases can also be considered less serious than those of parents who are totally denied access to their children in Japan, because many of the countries where their children were taken could award joint custody to them — unlike their homeland, which has a sole-custody system — increasing chances of regular access to their kids.
In addition to language barriers and expensive legal costs that often pose a headache to parents involved in cross-border child custody disputes, slow progress in Japan’s process of joining the international treaty weighs on the mothers’ shoulders, as Tokyo’s accession to the convention holds the key to future parenting arrangements.
A Japanese woman in her 30s living in Saitama Prefecture, north of Tokyo, has been separated from her two children, in Florida since December 2010, as her American husband refused to return to Japan and started a new life there with the kids and their grandmother.
The couple and their Japan-born kids had originally been scheduled to move to Florida together, but the husband, a former English teacher in Japan, later refused to sponsor his wife for visa arrangement, saying he no longer wanted to live with her, citing her problems with child-rearing, the woman said.
“I think my husband knew that in Japan it would be difficult for him to gain custody of the kids and that if we got divorced, he could not easily see them,” the woman said. In Japan, mothers tend to be given sole custody after divorce and it is not unusual for children to stop seeing their fathers after their parents break up.
She also said her husband had probably been aware of Japan’s imminent accession to the Hague Convention, which sets out the rules and procedures for promptly returning children under 16 to the country of their habitual residence in cases of international divorce among member countries. Japan decided to join the pact in May last year.
The treaty is not retroactive and only deals with cases occurring after its entry into force in the country newly joining it. The pact will come into effect on the first day of the third calendar month after being ratified by the nation.
The woman, who communicates with her 4-year-old son and 2-year-old daughter every other day via Skype Internet telephone service and met them when she visited Florida last November, is worried that they can no longer understand Japanese and will forget about their life in Japan.
The couple is now seeking divorce settlements in a Florida court, in line with a U.S. law that designates a state where children stayed with a parent for six months in a row as a place for litigation. For the woman, who has never lived abroad, U.S. court procedures mean a great deal of trouble and “unfair” situations, she said.
With the woman left with no chance of getting a green card and difficulties in acquiring other types of visa to live in the United States, the husband seeks to gain sole custody of the kids, she said.
“As long as Japan remains nonparty to the Hague Convention, the U.S. court would not allow my children to go to Japan during vacations out of fear that they would not be returned,” she said. “Japan’s accession is an important matter to me because it opens up various possibilities.”
Another Japanese woman in central Japan’s Shizuoka Prefecture also has her two sons, aged 7 and 5, retained in the United States since March last year, as her American husband refused to go back with the kids due to safety concerns triggered by the Fukushima nuclear crisis following the March 11 earthquake and tsunami.
The woman said her husband, who moved with the children in May last year to Champaign in Illinois, where he had found a job, had repeatedly assured her that the children would return to Japan once cold shutdown had been achieved at the troubled reactors at the Fukushima Daiichi plant. Kyodo News refrained from identifying the woman due to privacy concerns.
But as he filed for divorce at an Illinois court in November last year and the children did not return, even after the Japanese government declared in December that the plant had been brought to a stable state of cold shutdown, she learned that her husband “had planned everything in advance and conveniently used the disaster that hit Japan as an excuse.”
“My husband waited until the kids spent six months with him in Illinois so that he could start a divorce suit there to alter the situation to his advantage,” the woman said.
“I was naive to believe his promise to eventually return the children to Japan but couldn’t force him to do so, as I was concerned about radiation contamination that could jeopardize the children’s lives,” said the mother.
The woman, who tries to maintain Skype communications with the children, is also concerned that their memories of Japanese language and culture are fading. As the children are still registered as citizens in Japan, she launched a legal action in her home country. However, the process, involving notification through diplomatic channels, would take a long time.
She said it was frustrating to face difficulties caused by the nuclear accident and Japan’s position on the Hague Convention that “an individual cannot change.”
The woman said, however, she would not forcibly take back her children to Japan because unilateral abduction would only produce a “negative chain reaction” and limit the children’s access to one parent. She believes that kind of drastic action will “not solve the problem and never be in the interest of the children.”
According to a tally by the Japan Federation of Bar Associations, its member lawyers have accepted about 150 consultations on parental child abductions from Japan to other countries between 2000 and 2011.
Both the Japanese Foreign Ministry and the U.S. State Department recognize such abduction cases to the United States, but they can only provide relevant information and introduce lawyers as Tokyo is yet to join the Hague Convention, according to the Foreign Ministry.
==Kyodo
ロシアは、国際結婚で生まれた子供達の利益を擁護するハーグ条約に加盟した。30日、ロシア議会上院・連邦会議は、この条約を批准した。
国際的な子の奪取の民事面に関するこの条約は、別の国籍を持つ両親の間で子供を養育する際生じる問題の解決を助けるもので、1996年にハーグで調印され、2002年に発効した。 条約の内容がロシアの国内法と一致するかどうか分析がなされた結果、深刻な矛盾がなく、調整対象へのアプローチが同じであることが分かった。
ハーグ条約へのロシアの加盟は、ここ最近、様々な国に居住する両親の間で子供の養育権をめぐる争いが多発していることから決められた。 なお批准に関する法は、大統領の署名に回された。
リア・ノーヴォスチ
ハーグ条約の批准と離婚後親子法
棚瀬 孝雄/中央大学法科大学院教授
専門分野 法社会学
1 はじめに
現在、ハーグ条約の批准が閣議決定され、その実施のための国内法整備が進められている。
条約の内容は、新聞等でも報道されており、ある程度の理解は共有されているが、しかし、政府から出されている条約施行のための国内法を見ると、日本の世論や家裁実務の現状を意識したと思われる変更が加えられており、これで、はたして、ハーグ条約の趣旨が活かされるのか、疑問もある。
ただ、条約の批准を梃子に、日本の離婚法を、国際的な水準にまで引き上げようという期待も強い。私個人も、学者として、ハーグ条約、及び離婚後親子法の比較法的な研究を進め、また、弁護士として、国際、国内双方の事件に関わってきた。その研究、及び実践から、日本の実務の現状を憂慮し、改革を主張している。
以下、まず、ハーグ条約の内容を、その理念と、基本的な仕組みが分かるような形で解説した後、国内法の改革にこの批准が持つ意味を検討したい。
2 ハーグ条約の枠組み
1)不法な連れ去り
この条約は、正式名称が「子の奪取に関する民事面の条約」とあり、国際的な子の連れ去りが起きた場合に、締約国が協力して、子を元の居住国に戻すための仕組みを合意したものである。また、それは、国際私法上の条約に分類され、とくに、連れ去りの圧倒的部分を占める、離婚前後の一方の親による、他方親の監護権を侵害する形の連れ去りに対し、背景となる監護権をめぐる争いの国際裁判管轄を定める国際条約でもある。
子を連れて帰国し、そのまま「事実上の監護親」として、別居を継続したまま、子を手元に置く場合もあるが、帰国した先の裁判所に、監護者指定、あるいは離婚を申し立てて、監護権を正式に認めてもらう場合もある。こうした子連れ帰国が、他方親の同意を得ずに、その監護権を侵害する形で行われる場合が、「不法な連れ去り」(「奪取」“abduction”)である。
2)返還原則
ハーグ条約では、前文に、「子の連れ去りから生ずる有害な結果」から国際的に児童を保護するために、締約国は本条約を結んだとある。連れ去りを防ぎ、連れ去りが生じた場合には、速やかに、その有害な結果を取り除くために、子を元の居所に返還しようとするのである。これが、この条約の骨格にある、英語の表現で、“summary return” と呼ばれる原則(「返還原則」)である。
この “summary” には、即座に、という迅速さと、そのために時間のかかる手続きは省いて即決の、という簡略さとの2つの意味が込められている。
前者の迅速さが必要なのは、一つには、もちろん、連れ去られて、他方親との関係が断たれた状態が続くことそれ自体が有害であり、速やかに他方親の監護権を回復する必要があることがあるが、もう一つ、監護に特有の問題として、子どもが大人に世話をされなければ生きられない、無力な存在であることから、連れ去りの状態を速やかに克服する必要があるからである。
実際、子どもは、無力なゆえに、連れ去られた環境に適応し、世話をしてくれる、連れ去った親に忠誠を示すようになる。そのため、子を連れ去って、他方親との関係を断ち切ることで、監護権を独占しようとする試みが後を絶たないのである。いわゆる、「連れ去り勝ち」である。それを許さないためにも、速やかに、また、子が示す忠誠(いわゆる「子の意思」)を考慮することなく子の返還を行うというのが、ハーグ条約の骨子である。
3)要件主義
この迅速な返還を実現するために、ハーグ条約では、外形的な事実として、監護権(婚姻中の共同親権を含む)をもつ他方親の同意を得ずに、一方の親が子を連れて国外に出ること、つまり、「不法な連れ去り」があったことだけ確認されれば、自動的に返還が命じられる、という形を取っている。
子の意思、つまり、子どもは元の居所には戻りたくない、私と一緒に住みたいと言っているといった抗弁が連れ去った親から出されても、それは、この返還の可否には一切考慮されない。同様に、婚姻中のあれやこれやの出来事が言われ、子どもにとって、私と住む方が幸せである、相手の親には子どもを適切に監護できない、といった抗弁も聞かれない。実質的な監護をめぐる議論に立ち入れば、必然的に審理が長引き、迅速な返還ができなくなるからである。
これが、“summary” のもう一つの、即決という意味である。法学的には、「要件主義」という。要件、すなわち、外形的な事実(連れ去り)に、直接、法的な効果(返還)が結びつけられ、審理も、この要件の確認のみを行うものとなるのである。
4)重大な危険
ただ、子どもへの虐待があって、返すことが明らかに危険である場合もなくはない。それは、条約でも返還を拒むことができる例外事由として規定されているが、しかし、この例外は、運用を誤れば、返還原則を危うくする危険もある。
実際、ハーグ条約制定の際に、その点が大論争になった。子への乱暴な扱い、心理的な虐待や、配偶者への暴力、暴言は、破綻する婚姻では、ほとんど常にと言ってよいぐらい、他方配偶者から非難として出され、離婚の有責性、さらに監護権や面会交流権の決定が争われている。
それゆえ、そこに足を掬われないようにしないと、審理は長引き、その間に、子どもも会えない親に頼らず、連れ去った監護親に依存するようになって、返還ばかりか、その後の親子の関わりすら断ち切られてしまう。その危険から、条約では、返還拒否の例外を、子に肉体的・心理的な危害をもたらす「重大な危険」がある場合と、言葉の上で明確に絞り込んでいる。
また、条約締約国の裁判例でも、例外を厳格に解釈することで、返還原則を守ることへの強いコンセンサスが見られる。
5)国際裁判管轄
このように、ハーグ条約の適用が争われる裁判では、不法な連れ去りがあれば、後は、重大な危険という狭い例外にあたらないことだけ確認して、即決で返還が命じられるのであるが、逆に、その審理から排除された、子の監護の実質的な判断は、子の、連れ去り前の本国(常居所)で行うというのが、条約の考え方である。これが、ハーグ条約の国際裁判管轄を定める、国際私法的側面である。
裁判権は、国家の主権作用であり、それぞれ主権国家が、自ら、どのように国籍を異にする者の間の紛争に裁判権を行使するか、あるいは拒否するか、その主権の行使として自由に定めうるというのが、国際裁判管轄の原則である。
しかし、そうであれば、子を連れ去って帰国した者が、その国の裁判所に監護権者の指定を求めて訴訟を起こしても、その国で、国際裁判管轄を認めて審理をすることもあり得ることになる。その場合、連れ去った者には、自分の国だから当然に地の利があり、連れ去られた者は、監護権を争うために、その国に行って裁判をする必要が出てくる。しかも、裁判は1回で終わらず、1ヶ月か2ヶ月おきに、半年から1年、時に2年もかかるとなると、経済的な負担だけでも大変である。最初から、争うのを諦めることもあるであろう。結果は、連れ去り勝ちである。
この困難があり、それが、結局、連れ去りを助長することになるとすれば、「連れ去りの有害な結果から国際的に児童を保護するために」は、国家間で条約を結んで、この連れ去った者が、自国の裁判所で監護権の申立を行うことを禁止する必要がある。それがハーグ条約であり、条約では、連れ去る前の子の原居住国が、排他的な国際裁判管轄を持つことに、各国が合意しているのである。
6)連れ去りの無効化
この排他的管轄を認めることで、条約の返還原則も生きてくる。連れ去りをしても、強制的に子どもを原居住国に戻し、そこで監護権を争わせることで、連れ去りの無効化、つまり、連れ去りをしても何の得もない仕組みが作り上げられるのである。ハーグ条約には、刑事罰はなく、連れ去り禁止を直接には規定していないが、実際に、この連れ去りの無効化を行うことで、連れ去りの禁止を実現しているのである。
連れ去るな、連れ去らず、まず、婚姻が行われているその国で、離婚後の子の監護の問題をしっかり取り決め、それから別れなさいというのが、ハーグ条約に結実した、世界の、離婚後の子の監護に関するコンセンサスなのである。
3 国内法への含意
1)連れ去り容認の国内法
ハーグ条約は、国際的な子の連れ去りを対象とするものであり、国内での連れ去りには直接関わらない。その意味で、今回、条約が批准されても、国内法が直ちに変わるわけではない。しかし、連れ去りの有害な結果は、国内での連れ去りであっても同じである。実際、日本の離婚の圧倒的多数が、今でも、一方の親が、無断で、子を連れて実家に身を寄せるなどして別居し、その後で離婚を求める、という形が取られている。
日本の裁判実務では、この離婚に至る過程での子連れ別居は、連れ去りとも呼ばず、黙認している。それは、判例の言葉でいえば、「監護を継続する意思で、子を連れて家を出る」ことであり、「子を置いて出られない」以上やむを得ない、というのである。また、そこには、監護を継続する、という表現にあるように、監護される子どもにとっても、親が別居しても継続して監護してくれることで、子の福祉が守られる、という判断もある。
しかし、この判例の考え方は、世界のコンセンサスから大きく隔たっている。
2)連れ去りの弊害
子どもは、自分を可愛がってくれていた親から、突如、理由もなく切り離されれば、大きなトラウマを経験する。それは、基本的信頼感の欠如として、終生残る傷にもなりかねない。
また、連れ去りは、連れ去られた親の怒りを当然に引き起こし、それがまた、怒りが怖い、連れ戻しを恐れるということで、いっそう、連絡を絶ち、居所を隠すことになる。もちろん、子との面会交流も拒否し、切り離しが行われていく。
その後、調停や審判が行われても、この連れ去りからくる切り離し、そして、怒り、恐れの負の連鎖が背景にある限り、親同士、対面して、離婚後の子の監護を冷静に話し合うことはできない。調停委員や、裁判官が間に入って、連れ去りの現状、つまり、「親権と離婚を認める」代わりに、面会交流を認める、という取引を成立させることが精一杯である。
しかし、連れ去って、子を手元に置いた者が、切り離した上、「会いたければ、離婚と親権を認めよ」として要求を押し通すことは、それ自体許せない、不法な行為であるが、それ以上に、そこにある非対称的な関係性が、結局、その後の親子の関係を歪める、という大きな問題を引き起こすことになる。
3)対等な共同養育
現在、世界があるべき離婚後の親子法と考えているのは、子が、両方の親と継続的、かつ直接の接触を維持することであり、また、両方の親が、それぞれ、離婚後も、子を家庭で育て、学校行事にも参加するなど、子との生活時間を可能なかぎりともに過ごすことである。
親は別れるけれども、子は、パパの家、ママの家と、2つの家を持ち、両方から愛情と養育を受けることで、強い親子の結び付きを維持するのである。もちろん、別れて暮らす以上、物理的な制約はあるけれども、可能なかぎり、この「共同養育」を実現することで、子どもは、離婚しても親を失うことはなくなるのである。
ハーグ条約が前提としているのも、両方の親が、親として子の養育を行うその監護権を、連れ去りの一方的な行為で破壊する、その問題性の認識である。国際裁判管轄を、締約国が、子の常居所地に定め、連れ去って自国の裁判管轄を求めても受け付けず、原居住国に返させて裁判を受けさせようとするのは、子どもと一緒に住んでいた国で、別れる前に、親が対等な立場で協議し、離婚後の取り決めをすることが、離婚後も対等な共同養育を実現する鍵である、という考えからである。
このハーグ条約の理念、そして枠組みは、日本の中の離婚でも当然に妥当すべきであり、ハーグ条約の批准が議論されている今、目を日本国内の問題にも向けて、あるべき離婚後の親子法を構築すべきである。
実際、連れ去りを容認しているのは、先進国の中では日本だけである。早くこの現状を克服し、離婚で子どもが親を失わないで済むような社会になることを願っている。
棚瀬 孝雄(たなせ・たかお)/中央大学法科大学院教授
専門分野 法社会学
昭和42年東京大学法学部卒。京都大学助教授・教授を経て、現在、中央大学法科大学院教授。
東京弁護士会所属・弁護士。学部時代に司法試験に合格し、卒業後は民法の助手、助教授を勤めたが、その後、法社会学を専攻し、訴訟手続きや司法制度、弁護士、裁判外紛争処理などの制度的な研究や、法意識や比較法文化、現代法論などの法理論的研究、さらに、憲法や不法行為法、契約や家族法などを対象とした、法解釈論の学際的分析などを行ってきた。
また、ハーバードなどアメリカのロースクールで何度か教えた経験があり、現在は、研究教育の傍ら、これまでの研究の蓄積を活かして弁護活動を行っている。
離婚などが理由で子どもと交流ができない親などでつくる市民グループが東京都内で集会を開き、子どもとの面会や交流を認めないのは、子どもの精神に悪影響を与える「児童虐待」にあたると訴えました。
「連れ去りと引き離しを児童虐待の定義に加え、法的な歯止めをかけることを求めます」(市民グループ「親子ネット」会合)
離婚の結果、子どもとは別に暮らす親らが作る市民グループ「親子ネット」は、親子の面会や交流の実現を求めて活動しています。
19日、都内で開かれた集会では、片方の親だけが子どもと暮らし、もう一方の親との面会を拒む実態があり、こうしたことは子どもの精神に悪影響があり、「児童虐待」に相当すると訴えました。
「(親子の)面会交流を実施している方が、情緒面、行動面、学業面、社会適応面、すべてにおいて評価点が高い。絶対的事実と言ってもかまわない。なので欧米諸国では面会交流を一生懸命頑張ってやる。苦労するけれど」(大正大学 青木聡教授)
離婚後に親子が離れて暮らす場合、離婚の際に面会方法を取り決めるよう明記した改正民法が先月から施行されています。これを受け東京都では、自治体としては全国で初めて、離婚後に親子の面会交流を仲介する事業を開始しています。(19日17:23)
<情報クリップ>
講演会「子どもの連れ去り」「親子引き離し」は児童虐待!
19日午後1時~4時半、東京都千代田区の科学技術館(地下鉄竹橋 駅)。離婚後の親子の面会交流を支援しているNPO法人からの報告後、大正大学の青木聡教授が「連れ去り・引き離しによる子どもの心理と成長への 影響」と題して講演。弁護士による法的な問題の検討も。参加費は1500円。問い合わせは、「親子の面会交流を実現する全国ネットワーク」
離婚後の親子交流支援 都が全国初 面会時の条件など調整
離婚後も親子の触れ合う機会を保とうと、都は七日から、親子の面会、交流を支援する事業を始める。行政の仲介で面会時の条件などを調整する全国でも初の試みという。
都の担当者は、子と同居している親と、同居していない親の両方と面談し、考え方や条件を調整。面会する日時や場所、形態も決める。希望すればその場に立ち会う。支援は中学生までの子を持つ親が対象で、条件は片方の親が都内で子と同居していること。双方の合意なしには調整しない。担当の都育成支援課は「子どもの福祉のためにも事業を活用して」と呼び掛けている。
二〇一〇年に都内で離婚したのは二万六千三百三十五組。全国の一割にあたる。ひとり親家庭が地域から孤立するケースも目立つ。離婚時に子の面会、交流と養育費を夫婦間で取り決めることが四月、民法に明記されたのを受けて事業化する。
ひとり親になる場合の手続きや助言をまとめた「ひとり親家庭サポートガイド」も併せて発行し、ひとり親家庭支援センターなどで無償配布する。
面会交流支援の相談は年末年始を除く毎日午前九時~午後四時半。無料。窓口は都ひとり親家庭支援センター「はあと」=電03(5261)1278。サポートガイドは都福祉保健局のホームページからダウンロードできる。
「子供の連れ去り」に強硬措置検討 米議会、制裁法案を可決 ハーグ条約未加盟の日本と亀裂も
【ワシントン=佐々木類】米下院外交委人権問題小委員会は27日、国際結婚の破綻に伴う「子の連れ去り」問題の解決に取り組まない国に対し、制裁を求める法案を可決した。
法案は、米国籍を持つ子供の連れ去りに関し、未解決事案が10件以上ある国について、公的訪問や文化交流などの停止、貿易制限などを検討するよう大統領に求める内容。法案成立には、上下両院の可決と大統領の署名が必要だ。
国家間の不法な子供の連れ去りを防止することを目的としたハーグ条約に未加盟の日本は、最多の156件が未解決状態。日本政府は、条約加盟に向けて善処を求める米国側の度重なる要求を受け、今月、ハーグ条約加盟承認案と国内手続きを定める条約実施法案を閣議決定した。
問題の背景には、子供の親権に関する日米両国の国内法の違いがある。離婚した場合、米国州法では合意があれば双方に親権が認められるケースが多いとされる一方、日本では民法の規定で離婚後は片方の親にのみ親権が与えられる。
また、日本人女性が子供を連れ帰るのは、米国人男性の家庭内暴力(DV)から逃れるケースもあるとされるが、実態は不明だ。
日本に対するハーグ条約加盟要求は、クリントン米国務長官が旗振り役。昨年12月下旬、玄葉光一郎外相との日米外相会談でも取り上げるなど、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設、米国産牛肉輸入問題と並ぶ対日要求の3大柱だ。
米政府や議会内には、北朝鮮による日本人拉致問題と絡め、「ハーグ条約に加盟しなければ拉致問題を支持しにくい」(議会筋)との声もある。
今後、日本政府の取り組み方次第では、法案成立による米政府による制裁検討という事態も想定され、日米関係に亀裂が生じる可能性がある。
ハーグ条約実施法案を閣議決定 子どもの返還手続き規定
政府は9日の閣議で、国際結婚が破綻した夫婦の親権問題解決のルールを定めた「ハーグ条約」の締結に必要な子どもの返還手続きに関する条約実施法案を決定した。
日本政府は外国に住む親の窓口となる「中央当局」を外務省に設置。東京か大阪の家庭裁判所で審理し元の国に戻すかどうかを決める。返還の決定に応じない場合は制裁金を科して引き渡しを促し、それでも従わないときは強制執行に踏み切る。
法案は「子の利益に資することを目的とする」と明記。外国に住む親が子どもに暴力を振るう恐れがある場合などは裁判所は返還を命じてはならないと規定した。付則には同法の施行前に子どもを日本に連れ帰った場合は適用外とすることも盛り込んだ。
同条約への加盟は米国が強く求めてきた。今通常国会での法案成立は微妙な情勢だ。
ハーグ条約加盟に向け閣議決定 裁判手続きなどの法案
国際結婚が破局した際などの子どもの扱いを定めた「ハーグ条約」の加盟に向け、政府は9日、必要な裁判手続きなどを盛り込んだ法案(ハーグ条約実施法案)を閣議決定した。近く国会に提出する。国内手続きの整備が条約承認の前提となるが、他の重要法案も多いことから成立の見通しは不透明だ。
ハーグ条約は、一方の親が16歳未満の子を無断で国外に連れ去った場合に、子を元の居住国に戻し、その国の裁判で誰が面倒を見るか決めるとしている。現在の加盟国は87カ国で、主要8カ国(G8)のうち日本だけが未加盟。欧米諸国からは早期の加盟を求められている。
適用されるのは条約加盟後に起きたケースで、外国から日本に連れて来られた子が主な対象となる。外国にいる親からの求めを受け、子の所在を調査する「中央当局」を外務省に設置。子を元の居住国に戻すかは、東京、大阪の家裁が非公開で審理するとしている。
ハーグ条約:国内手続き法案を閣議決定
政府は9日、国際結婚が破綻した夫婦間の子の取り扱いをルール化した「ハーグ条約」への加盟に向け、国内手続き法案を閣議決定した。今国会での成立を目指す。
通称は「ハーグ条約実施法案」。法案では、同法の施行前の時点で、国境を越えた不法な連れ去りをされた子については、同法を適用しないと規定。実際の施行期日は、条約が国内で効力を発する日からとした。
また、法の目的に「子の利益」を明記。日本に連れ帰られた子を条約の原則通り、いったん元の国(外国)に返すかどうかを決める裁判手続きを東京・大阪の2家裁でするとしたうえで、裁判所が子の返還拒否を考慮できる事情として、児童虐待や配偶者暴力(DV)の恐れがあるケースを挙げた。
また、国内に連れ帰られた子の所在確認や裁判手続きを使わない任意解決の促進など、連れ去られた側の親を援助する「中央当局」は、外務省に置くと定めた。【伊藤一郎】
ハーグ条約締結でどうなる国際結婚の親権問題
2011年5月、日本政府は、ハーグ条約の締結に向けた準備を進めることを閣議了解し、条約を実施するために必要な国内法の整備に動いている。
ここでのハーグ条約とは、オランダのハーグで締結された国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の略称だ。一方の親が子どもを連れ去ることを防ぐのを目的に1980年に採択、83年に発効した。欧米諸国のほとんどが締結していて、これまでにも諸外国が日本の締結を求めてきた。
国際結婚増加の中でのハーグ条約
2007年の厚生労働省人口動態調査によれば、日本人女性と外国人男性の婚姻数は、外国での婚姻が約8700件、日本での婚姻が約8250件だ。
国際結婚が増えるにしたがい、結婚が破綻した際に、配偶者や離婚した元配偶者に了承を得ず、日本人が子どもを日本に連れ帰るケースが増加している。あるいは逆に日本に暮らす日本人の配偶者に無断で、外国籍のパートナーが日本国外に子どもを連れ出すケースもある。
日本の民法では離婚後は両親いずれかの単独親権、それも養育を主に行う母親が獲得することが多い。しかし、カナダでは夫婦ともに親権を持つ、共同親権が一般的だ。
無断での子どもの国外連れ出しは大問題
「カナダや米国の国内法では、父母のいずれもが親権または監護権を有する場合、または、離婚後も子どもの親権を共同で保有する場合、一方の親が他方の親の同意を得ずに子どもを連れ去る行為は、重大な犯罪(実子誘拐罪)とされています」(在カナダ日本国大使館ウェブサイト)とあるように、パートナーに無断で子どもを連れ帰ることは、カナダや米国では大問題だ。
たとえ実の親であってもカナダの刑法違反で、14歳未満の子どもの連れ去りでは10年以下の禁錮刑等が規定されている。
「カナダにおいては(中略)、父母の双方が親権を有する場合に、一方の親権者が、14歳未満の子を他方の親権者の同意を得ずに州外に連れ出すことは刑罰の対象となる可能性があります」(在バンクーバー日本国総領事館ウェブサイト)
「カナダに住んでいる日本人の親が、他方の親の同意を得ないで子どもを日本に一方的に連れて帰ると、たとえ実の親であってもカナダの刑法に違反することとなり、カナダに再渡航した際に犯罪被疑者として逮捕される可能性があります。また、実際、居住していた国に再渡航した際に逮捕されるケースが発生しています」
「また、一方の親が単独親権を持っているとしても、他方の親がAccess(子との面会交流権)を持っている場合、その親の同意なくして日本に連れて帰れば、同様に逮捕される可能性がありますし、日本へ連れて帰るのではなく、他の州へ引っ越す場合でも、適用される可能性があります」(在バンクーバー日本国総領事館ウェブサイト)という。
そして、実際に、逮捕されるケースが発生しているようだ。
隣の米国においてもFBIのウェブサイトで『parental kidnapping』について調べると、日本人と見られる女性が数人登場する。批准されていないことから、子どもをパートナーに無断で日本へ連れ帰る人もいるが、相手の国では犯罪行為であることも認識すべきだろう。
日本人母が実子に会えなくなるケースも
逆に、「原発事故を理由に、日本人と結婚した外国人が子どもを連れて母国に帰るケースが出始めている」(1月5日付け朝日新聞)という。
米国籍の配偶者が、子どもたちを連れて里帰り中に東日本大震災が起こり、日本に戻ってこないケースが紹介されていた。子どもを連れ戻すのに有効なハーグ条約を日本は締結していないことから、子を奪われた母親は八方塞がりの状態だ。
バンクーバー新報でもおなじみの Specht&Pryer のロバート・プライヤー弁護士も、日本で暮らしていた子どもを、配偶者に無断でカナダに連れ出された女性のお手伝いをしたそうだ。カナダでは配偶者の了承なく、子どもを連れ出すのは違法だが、日本がハーグ条約に加盟していないため、RCMPなども動くことはなかった。女性が子どもを取り戻すまで、長期化した。
「国際結婚が増える中で、日本人の配偶者が子どもを奪われるケースも増えてくる可能性は高いと思います」(ロバート・プライヤー弁護士)
進む締結に向けての準備
ハーグ条約については2011年10月時点でG8諸国では日本以外の全ての国が締結している。
これらの状況の下、2011年5月に、日本政府は閣議で、原則として元の居住国に子を迅速に返還するための国際協力の仕組みや国境を越えた親子の面会交流の実現のための協力を定めた「ハーグ条約」の締結に向けた準備を進めることを決定した。現在、条約を実施するために必要となる国内法案について検討を行っている。
子どもの返還手続などについては法務大臣の諮問機関である「法制審議会」において、子どもの返還申請の窓口となる中央当局の在り方については、外務省の「ハーグ条約の中央当局の在り方に関する懇談会」においておのおの議論中だ。
ただし、締結・施行の時期については、「条約及び国内担保法は本年の通常国会に提出することを目指し、現在作業を進めています。他方で、実際の締結時期や効力の発生の具体的な時期は未定です」(在バンクーバー日本国総領事館)。
現在、決まっているのは、外務省に設定される「中央当局」は、
1 外国などからの子どもの返還に関する援助の申請について
(1)子どもの所在の特定
(2)子どもに対する虐待その他の危害を防止するため、必要な措置を講ずる
(3)子の任意の返還又は当事者間の解決をもたらすための助言
(4)司法上の手続を含め日本の国内法制につき必要な情報を提供
2 子との面会交流に関する援助の申請に対する必要な事務を行うことなどだ。
また、9月30日、法務省がまとめた、ハーグ条約の締結に向けた、ハーグ条約を実施するための子の返還手続などの整備に関する中間案では、「子に重大な危険があること」があった場合には子の返還を拒否するとしている。
具体的には、(1)子が元の居住国に返還された場合、子が申立人(連れ去られた親)から身体に対する暴力またはこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれや、(2)子と共に帰国した相手方(連れ去った親)が子と同居する家庭において子に心理的外傷を与えることとなる暴力などを受けるおそれがある等の事情があった場合があげられている。
締結するとどう変わる?
条約は国際結婚が破綻して一方の親が無断で子供を国外へ連れ去った際、いったん子を元の居住国に戻して子供の親権問題を決着させることが原則だ。
締約国はハーグ条約を締結していれば原則として「子供を連れ去られた親から子の返還申請の申し出があれば、不法に連れ去られた子の所在を確認して元の居住国に返還する」義務を負うことになる。
例えば、先に紹介した大震災後日本への帰国を拒否されているケースでは、まずは子どもは日本に戻されることになる。他方、カナダで暮らしていたものの、日本人女性が国際結婚の破綻で子どもを日本に連れ帰ったとすると、カナダに戻される。
その後は一般的に元の居住国で、子どもの監護権をめぐって裁判が行われる。ただし、条約上子どもの利益を最重要として、子どもへの危害を防止するため、返還拒否も可能であり、日本の国内法でも規定がおかれる予定だ。
ハーグ条約の締結で、「国際結婚で離婚した場合、子供をつれて帰れなくなるのでは?」という懸念もあるようだが、現在でも、子どもを連れての里帰りでは空港で質問を受けることがある。
そこで、「子どもを連れて一時期里帰りすることは私も認めています」などという内容の署名入りの手紙を用意するのも一案だ。
締結にはまだ時間がかかりそうなハーグ条約だが、在バンクーバー日本国総領事館では、「ハーグ条約に限らず、何かお困りのことがありましたら総領事館の領事相談まで電話かメールでも結構ですのでご相談ください。当地には、家庭の問題、虐待に対する人権の面からの対応を行っている団体及び機関が多くあり、中には日本語で対応してくれる機関もあります。また、あなたのお子さんは、相手の方のお子さんでもあります。問題の兆候が見え始めたら、総領事館ホームページのリンクも参考にして速やかに各種団体・機関にご相談されることをお勧めいたします」とアドバイスしている。
(取材 西川桂子)
ハーグ条約加盟 国内の関連法整備も必要だ
国際結婚が破綻した夫婦間の子どもの扱いを定めた「ハーグ条約」加盟に向け、法相の諮問機関である法制審議会が関連法の整備要綱を決定、小川敏夫法相に答申した。政府は今国会に条約承認案と関連法案を提出。会期中の成立を目指す。早ければ年内にも条約が発効する。
国際結婚の増加に伴い、トラブルが続出していた問題に初めて国際的なルールを導入するもので、基本的には歓迎したい。一方、国内でも離婚後の子どもをめぐる紛争は増加しており、条約加盟を機に親権や面会交流権などについて、さらなる関連法整備も必要となろう。
ハーグ条約は、離婚した夫婦の一方が無断で子どもを自国に連れ帰った場合、原則として子どもを元の国に返し、その国の法の下で養育権などを確定する手続きを定めている。現在は87カ国が加盟。主要国(G8)で加盟していないのは日本だけとなり、近年は欧米各国から加盟を強く求められていた。
今回、答申された要綱では、子どもを日本に連れ帰った親に対し、外国にいるもう一方の親が家庭裁判所に返還を申し立てた場合、家裁は子どもの意見を配慮した上で元の国に戻すか審理。返還が決まって一定期日までに返さなかった場合は、金銭支払いを求めたり、強制的な引き渡し執行も行うとしている。また、逆に日本から国外に子どもが連れ去られる恐れがあるケースでは出国禁止命令なども規定している。
日本の加盟が遅れた背景には、欧米では離婚後も両方の親が親権を持つ共同親権が主流になっているのに対し、日本では一方の親に親権を与える単独親権を取っていることがある。また、日本に連れ帰った親の多くが、家庭内暴力(DV)被害を訴えていたことも理由となっていた。
DVを受ける恐れがある場合、要綱では返還を拒否できるとしている。しかし、そのためには過去のDV被害の証明などが必要になるとみられ、被害から逃れるため急きょ帰国したような人にはハードルが高い。運用面で、そのような人の負担を軽減する方策が必要だろう。
一方、親権問題について政府は当面、民法改正などは行わない方針。ただ、今年4月から施行される改正民法では、離婚時に親子の面会交流などを取り決めるよう規定。また、改正法案可決にあたって国会では、離婚後の親権の在り方について共同親権の可能性を含めて今後検討していくことが付帯決議されている。
もともと国内においても、一方の親による子の連れ去りや面会交流の一方的拒絶などの問題が頻発。子どもの引き渡しを求める家裁への審判申し立ても年々増加している。このため、当事者を中心に共同親権を求める声は強まっていた。
しかし、親権には財産管理権などさまざまな概念が含まれており、DV問題も絡んで共同親権導入に対しては慎重な意見もある。現在、特に問題となっているのは、ハーグ条約も求めている面会交流権の確保だ。差し当たっては、この権利の実効性を高める取り組みを進めたい。それとともに、何が子どもの利益向上に有効なのか、親権全般についての国民的議論が必要だろう。
主張-国境をこえた子の奪取-解決ルールが求められている
国際離婚にともなって、一方の親がもう一方の親にことわりなく住んでいた国から子を連れて出たことによる問題の解決にむけた議論がおこなわれています。
国際的なルールとして、「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」(ハーグ条約、1980年採択)があり、87カ国が批准しています。
日本政府は昨年、この条約の批准を閣議了解し、7日には、法務省法制審議会が国内法整備の内容について答申しました。3月には法案が提出される予定です。
DV、虐待の懸念解決を
離婚した両親が国をこえて子を奪いあうことは、子どもにあたえる影響が大きく、また親にとっても子どもに会えないなど深刻な問題です。
この条約を未批准である日本でも、さまざまな問題がうまれていました。子どもを日本に連れて帰ってきた親が「誘拐犯」として国際指名手配されたり、逆に日本から子どもを外国に連れ去られた親が相談する場もなく泣き寝入りしたりしているなどの事態がおきています。子が一方の親との面会ができない状況もうまれています。
こうしたなかで、関係者の間で、日本がハーグ条約に加わることを求める声がだされるとともに、すでに批准している米国、フランスなどからも、早期の批准が求められてきました。
日本共産党は、国際離婚にともなう、一方の親による子の国外への連れだしにかかわる問題の解決には、国際的な共通の枠組みでの対応が必要だと考えます。
ハーグ条約は、子どもの権利条約の採択(89年)や、配偶者間の暴力(DV)など人権にかかわる国際的なルールの確立(95年)以前につくられていることから、DVの概念やその被害への対応が明記されていません。
そのためDV被害者などからは、ハーグ条約が、原則として子どもを元いた国に戻し、そこでどちらが養育するかを判断するとしていることへの不安の声があります。この点では、子を元いた国に戻すことで、子の心や体に悪い影響を与える場合や、子が戻ることを拒否している場合などは返還を拒否できるというハーグ条約の規定をきちんと運用させることが重要です。
さらに、法制審答申が、“子を元いた国に戻すことを求めた親が子へ暴力等を振るうおそれがある場合”や“子に悪影響を与えるような暴力等を子の返還を求められた親に振るうおそれがあると判断した場合”は返還を拒否できるとしていることは、この規定にたって、DV被害者や関係者からの意見や懸念にも一定こたえるものといえるでしょう。
「子の利益」にたった措置
子どもの養育をめぐる親どうしの争いであっても、当事者の子どもの利益が優先されなければなりません。
その点で、答申が、子の返還にかんする裁判への子の参加を認め、また適切な方法で子の意思の把握に努め、決定は「子の年齢及び発達の程度に応じて、その意思を考慮しなければならない」としたことは重要です。
今後さらに、子の立場にたった解決とDV被害者の懸念にこたえる、実効ある整備にむけた十分な検討をすすめていくことがもとめられます。
孫に会わせて 子の離婚で祖父母ら訴え
息子や娘の離婚で孫と引き離された祖父母らが、孫との面会や交流を求めて動き始めた。離れて暮らす親子が面会する方法を離婚時に取り決めるよう明記した改正民法が2012年4月に施行されるのを機に、「孫と定期的に会える仕組みも議論してほしい」と訴えている。
「インフルエンザにかかっていないかな」「地震があったらさぞ怖がるだろうねえ」。静岡市の山本和子さん(65)=仮名=と夫の話題は、05年に突然会えなくなった2人の孫のことばかり。
長男の妻が幼い子どもたちを連れ、首都圏の家を黙って出たからだ。その後離婚した長男は子どもとの面会を求めているが、妻は拒み続けている。
「孫がどこに住んでいるかも分からない。会えないのは本当につらい」と訴える山本さんは「わが子と会えず落ち込む息子を見るのもつらい。祖父母は二重の苦しみを味わう」と声を震わせた。
国内の離婚は1990年の約16万件から2010年は約25万件と1・6倍に増加。子どもとの面会を求める親と、拒否する親の間でトラブルも続発している。
「親子の面会交流を実現する全国ネットワーク」(親子ネット、事務局千葉県松戸市)の藤田尚寿代表は「親の面会さえ困難な中で祖父母は『孫と会いたい』と表立って言えなかったが、民法改正など問題の認識が広まってきたことで、やっと声を上げられるようになった」と解説する。
親子ネットは離婚した当事者が集まり08年に設立されたが、最近は祖父母の会員も増加。祖母の一人は「改正された民法は強制力がない。次は親の面会を法的に保障するところまで持っていくべきだ。そうすれば祖父母にもチャンスが出てくる」と話し、全国の孫に会えない祖父母に、活動への参加をインターネットで呼びかけている。
一方、親の面会権が法的に実現しても、なお孫と会えないのが息子や娘を亡くした祖父母たち。
千葉県在住の男性(68)の場合、10年に娘が病死し、当時1歳10カ月だった孫の男児は娘の夫が引き取ったが、男性が「時々でいいから孫と会いたい」と伝えても、なしのつぶて。「孫の成長を見守りたいし、『ママはこんな人だったよ』と話してやりたいのに」と肩を落とす。
この男性は「祖父母との関係を断つのは孫の成長にも良くない。面会交流で祖父母は枠外に置かれてきたが、経験した者が動かないと誰にも分かってもらえない」と話し、家裁に調停を申し立てる準備を始めた。
少子化で孫の存在感は増しており、共働きの親の多くも子育てに祖父母の助けが欠かせない。離婚をめぐる子どもの心理を研究する青木聡・大正大教授は「祖父母と孫の関係は親密になっている。親だけでなく祖父母をも考慮した面会方法の標準プランを国が作り、離婚の際の指針にするのがいい」と話している。
2012/03/05 【共同通信】
子どもの権利条約:創設の「個人通報制度」とは?
国連総会は昨年12月、「子どもの権利条約」に「個人通報制度」を創設することを決めた。日本が批准すれば子どもが人権侵害の実態を訴えられるが、どう活用できるのか。子どもの権利に詳しいNGO「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」の森田明彦シニアアドバイザーと大谷美紀子弁護士に聞いた。【鈴木敦子】
Q どんな制度ですか。
◇「不当な扱い」巡り国連へ直接訴える
A 子どもの権利条約に違反する「不当な扱いを受けた」と思った子どもが、自ら国連人権高等弁務官事務所(ジュネーブ)の子どもの権利委員会に手紙やメールで直接訴えることができます。同委員会が審査し、当該国に勧告や提案をします。勧告自体に法的拘束力はありません。
Q だれでもいつでも通報できますか。
◇国内での救済がかなわない場合
A 国内で救済手段を求めても、人権侵害の事態が解消できなかったり補償を受けられなかったりした時にだけ、通報できます。場合によっては、国内で訴訟を起こし判決が確定していることが前提になります。通報の際は、国の制度が不十分という理由が必要で、個人を相手にした事態の訴えはできません。
Q どんな訴えが考えられますか。
◇婚外子差別など人権侵害を想定
A 子どもの権利条約に反するような人権侵害、例えば「婚外子差別」です。民法は、法律上の結婚をしていない男女に生まれた非嫡出子(婚外子)の遺産相続分を、嫡出子の半分と定めています。国連は3回にわたり、日本政府に撤廃を勧告しました。昨年10月には大阪高裁が法の下の平等を定めた憲法に違反するとして、婚外子にも嫡出子と同じ相続を認める判決を出しました。しかし民法の規定は残ったまま。国内の裁判所より国連に訴える方が、認められる可能性が高そうです。
Q ほかにどんな例があるのでしょう。
A 最近話題になった「ハーグ条約」。国際結婚した夫婦が別れた場合の子の取り扱いを定めた法律で、子どもを国外に無断で連れ去ることを原則禁止しています。欧米にならい日本も加盟を決めたので、今後は条約に基づき子どもの住む国や同居する親が決まります。裁判所の決定や手続きに不服であれば、申し立てられます。
Q 子どもの意思が反映されやすくなるのですよね。
◇国内法制度の不備訴えることも可能
A 自分の運命に意見を言えるので、より主体的に関わることができるのです。例えば、日本では夫婦が離婚した時の共同親権が認められていないため、子どもは親権を持たなかった親との面会を著しく制限されることがあります。しかし、子どもの権利条約は「親からの分離禁止」を定め、子どもが定期的に双方の親と接触する権利を尊重しています。個人通報制度は個人の主張を申し立てるものですが、結果的に国内の法制度の不備を指摘しているとも言えます。
Q 障害者の子どもが救われるケースもあるらしいですね。
◇障害への配慮必要
A 知的障害がある子の証言を、裁判の証拠として採用する道が開けるでしょう。国内では障害がある子が虐待を受けたと証言しても、「信用性に欠ける」と採用されず、被告が無罪になるケースが多くあります。英米では子どもの意見表明権を尊重し、専門の面接員を置いています。「配慮がないこと」が人権侵害と見なされる可能性もあります。
Q 通報は子ども本人だけですか。
◇代理も可
A 代理が立てられます。例えばいじめ自殺で子どもが亡くなってしまった場合は、親が訴えることができます。いじめ自殺を巡っては、親が学校や自治体を相手取り提訴する例がありますが、いじめと自殺との因果関係を証明しなければならないなど困難も多く、敗訴しやすいのが現状です。国連は日本でいじめが多いことを懸念し、対策を取るよう再三勧告しており、個人通報の結果、学校側が十分な対策を取ってきたのか検証することも考えられます。
Q 通報は日本語でもいいのですか。
A 本来は英語ですが、日本語で書いた場合は国際NGOや法律家の団体が英語への翻訳を支援してくれます。
Q 日本政府が批准しないと通報できないのですよね。
◇批准は「未定」
A 民主党は通報制度をマニフェストに掲げており、日本は国連総会に共同提案した約50カ国のうちの一つです。外務省は批准について検討を続けており、批准するかは「未定」としています。子どもを守る立場の弁護士は、教師や学者らが政府に批准を働きかけることが必要と見ています。
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◇子どもの権利条約
18歳未満の子どもの基本的人権を国際的に保障するための条約。生きる権利▽守られる権利▽育つ権利▽参加する権利--の四つの主な権利を実現・確保するために必要な具体的事項を規定している。89年に国連で採択され、日本は94年に批准した。
ハーグ条約加盟へ、法制審が要綱答申 3月中に法案提出
国際結婚が破局した際の子どもの扱いを定めた「ハーグ条約」の加盟に向けて、法制審議会は7日、国内で整備が必要な裁判手続きなどの要綱を小川敏夫法相に答申した。これを受け、政府は3月中に法案を提出し、今国会での条約承認を目指す予定。ただ、他の重要課題も多く、法案成立と承認の見通しは立っていない。
ハーグ条約は、国際結婚が破局するなどして一方の親が16歳未満の子を無断で国外に連れ出した場合に、子を元の居住国に戻し、その国の裁判で誰が子の面倒を見るかを決めるよう定めている。主要8カ国(G8)では日本だけが未加盟。欧米諸国から早期の加盟を求められ、日本政府は必要な国内法の整備を急いでいる。
要綱は、日本人の親が日本に連れ帰った子を外国にいる親が戻すよう求めた場合の手続きを規定。家裁が子を戻すかを決定し、従わなければ裁判所の執行官が強制的に子を引き離せる仕組みも盛り込んでいる。
ハーグ条約加盟へ答申、今国会成立は不透明 法制審
法制審議会(法相の諮問機関)は7日の総会で、国際結婚が破綻した夫婦間の子どもの扱いを定めた「ハーグ条約」加盟に向けた関連法の整備要綱を決定し、小川敏夫法相に答申した。
答申を受け、小川氏は記者団に「趣旨を踏まえて取り組む。今国会に関連法案を提出する」と強調、早期成立を目指す。条約加盟に関し現状では野党から目立った反対意見は出ていない。ただ、ねじれ国会で十分な審議時間を確保できるか見通せず、成立は不透明だ。
要綱では、子供を日本に連れ帰った親に対し、外国にいるもう一方の親が家庭裁判所に返還を申し立てた場合、家裁は子供の意見を配慮した上で元の国に戻すかどうかを検討する。返還決定後は、一定期日までに返さなければ金銭支払いを求めて返還を促す。それでも応じなければ、裁判所の執行官が強制的に一方の親に引き渡すとしている。
離婚届に面会方法や養育費のチェック欄
未成年の子がいる夫婦の離婚について、法務省は4月から離婚届の書式を一部改め、「親子の面会方法」や「養育費の分担」の取り決めができているかを記す欄を新たに設ける。離婚の際に親子の面会などを協議するよう定めた昨年5月の民法改正を受けたもので、届けを受理する各市町村に伝えるよう2日付で全国の法務局に通達を出した。
改正民法は、夫婦の合意があれば離婚できる「協議離婚」にあたっては、親子の面会や養育費の分担について子の利益を最大限に考慮するよう定めている。国会では改正法案可決の際、この規定の周知に努めるとの付帯決議がされていた。
これを受け、同省は離婚届の末尾に「離婚するときは面会交流や養育費の分担を協議で定める」といった説明を加え、取り決めができているかチェックする欄を設けることにした。ただし、取り決めの有無は離婚届受理の要件ではなく、未記入でも提出できる。
ハーグ条約 子の利益まず考えたい(1月31日)
政府は、国際結婚が破綻した夫婦間の子どもの扱いを定めた「ハーグ条約」加盟に向けた法整備を進めている。通常国会に提出する考えだ。
条約は、離婚した夫婦のいずれかが無断で16歳未満の子を海外に連れ出した際、子をいったん元の居住国に戻すことを原則としている。
国内には、加盟に反対論がある。しかし、主要8カ国(G8)で未加盟なのは日本だけだ。このままでは、子連れで日本に帰国した親が、元の居住国に戻った際に誘拐犯などで摘発される可能性が高くなる。
国際ルールに加わることは妥当な判断ではないか。
加盟すれば子を連れ去られた親は子を手元に戻しやすくなる。半面、同居している親子を引き離す場合もあり、子に心の傷が残るだろう。
何よりも子の利益を最優先に考えるべきだ。政府は当事者の状況にきめ細かく対応できるよう関連法を整備する必要がある。
法相の諮問機関である法制審議会がまとめた関連法の要綱案は、子の返還の具体的手続きを明記した。
外国にいる元配偶者が子の返還を日本の家庭裁判所に申し立てると、家裁は子の意見に配慮したうえで元の国に戻すかどうかを決める。
国内の親が返還決定後に子を戻さなければ、最終的に家裁が子を強制的に元配偶者に引き渡す。
問題は、どのような場合に返還を拒否できるかだ。
加盟国の関連法にあるように子自身が戻ることを拒否している場合のほかに、返還すると子や国内の親が暴力を振るわれる恐れがある状況も独自に加えた。
子を連れて帰国した日本人女性の多くが夫の暴力を訴えて、加盟に反対しているからだ。
親に対する暴力に配慮した例は加盟国にはほとんどなく、欧米各国は「拒否できるのは子に耐え難い重大な危険がある場合のみ」として厳格な適用を求める。
条約の運用は、子が現在いる国に委ねられている。政府は日本の事情を諸外国に説明し、理解を得る努力をすべきだ。
子を勝手に連れ帰ったとして、諸外国から日本政府に昨年末までに約200件の訴えが寄せられた。トラブルが多いのは、親権をめぐる考え方の違いにも原因がある。
欧米では離婚後も双方の親が子育てをする「共同親権」が主流なのに対し、日本では父母どちらかの「単独親権」しか認められていない。
離婚後、日本では単独親権を口実に片方の親との関係を絶たれる子が多い。条約加盟を、親権のあり方について再検討する機会としたい。
ハーグ条約 子どもの利益保護を最優先に
国際結婚が破綻した夫婦間の子ども(16歳未満)の扱いを定めた「ハーグ条約」加盟に向け、法制審議会が関連法の要綱案をまとめた。政府は今国会中に法案を提出し、成立を目指す。
夫婦の一方が子どもを国外に連れ出した場合、加盟国は返還申請を受けて所在を調べ、必要と判断すれば元の国に戻す義務を負う。加盟国は現在87。主要国(G8)では昨年7月にロシアが加わり、未加盟は日本だけとなった。
子どもをめぐる問題では、米国から元夫に無断で長女を連れ帰ったとして、兵庫県の女性が親権妨害罪などで訴追された事例が思い出される。逆に岐阜県の女性の長男をチェコ人の夫が連れ出し、日本が条約未加盟のため対処できないという事例もあった。
ハーグ条約はこうした事態を避けるため、子どもを一方的に国外へ連れ出して奪う行為を防ぐルールと言える。もちろん、子どもの利益の保護を最優先に運用すべきなのは言うまでもない。
政府は、日本人の母親が無断で子どもを連れ帰る事案が多いという欧米からの強い働き掛けを受け、昨年5月に加盟に向けた国内法の整備を閣議了解していた。
要綱案では、子どもを連れ帰った親が返還命令に応じなければ、家庭裁判所がもう一方の親に引き渡せる強制執行権を明記。返還を拒否できる条件や、子どもを捜す政府機関「中央当局」の設置を盛るなど条約の趣旨に準じた。
審理は東京、大阪の両家裁が行い、原則非公開。三審制で、高裁や最高裁に抗告できるとしたのも妥当だろう。
懸念されるのは、返還を拒否できる条件とした「子どもや配偶者が暴力を振るわれる恐れがある」事例の取り扱いだ。
裁判所には、子どもの意思を正確に把握し、虐待や暴力の恐れの有無の客観的な判断が求められよう。
日本では家庭内暴力(DV)を理由に子どもを連れ帰るケースが多いとされる。
DVの説明責任は返還を求められた側が負うことになるが、その具体的な方法も問われよう。拒否を認めてもらうための立証には、精神的にも経済的にも相当な負担を強いられることになる。
一方、欧米各国は、返還を拒否できるのは「子どもに重大な危険が及ぶ場合」で、配偶者からの暴力などを理由として認めていない。
DVについては、日本と欧米の間で定義や被害者保護に違いがある。日本人母親の連れ帰りが一方的とされがちなのは、互いの理解不足もありそうだ。
政府は、文化的な隔たりも見極めながら実効ある法整備を進め、必要な支援措置を講じなければならない。
「子との面会法、取り決めたか」離婚届に記入欄
子供を巡る離婚後のトラブルが相次ぐ中、法務省は2日、離婚届の書式を一部改めることを決め、各市区町村に周知するよう全国の法務局に通達を出した。
離婚後の親子の面会方法や養育費の分担について、夫婦間で取り決めをしたかどうか尋ねる欄を新設している。離婚後の子供の養育について、夫婦の意識が高まることによって、トラブルの未然防止や、別居した親子の交流の促進が期待される。
厚生労働省によると、夫婦の離婚は2010年、約25万件あったが、夫婦の合意があれば離婚できる「協議離婚」が9割近くを占める。協議離婚の場合、離婚届に必要事項を記入して市区町村に提出すればよいが、離婚した後に、別居した親が子供に会えなかったり、養育費を負担しなかったりというトラブルが生じるケースも少なくない。
そのため、昨年5月に民法が改正され、未成年の子供を持つ夫婦が離婚する際は、親子の面会や交流、養育費の分担について取り決めるよう定められた。4月から施行される。
共同親権制度 “日本でも導入を”
国際結婚が破綻した際の子どもの扱いを定めた「ハーグ条約」への加盟に向けて、日本政府が準備を進めるなか、条約の加盟だけでは子どもに会えなくなった親の権利が十分守られないとして、離婚後も両親が共同で親権を持つ「共同親権制度」の導入を求める署名活動が行われました。
これは、国際結婚などをして離婚したあとに子どもに会えなくなった親たちのグループが行ったもので、東京と神奈川の4か所で行われた署名活動には、男女20人余りが参加しました。「ハーグ条約」は、国際結婚が破綻した場合に、国外に連れ出された子どもを元いた国に戻す手続きを定めたもので、欧米からの要求を受けて、日本政府は加盟に向けた準備を進めています。グループは、条約だけでは子どもに確実に会えるかどうか不透明だとして、欧米では一般的な「共同親権制度」を日本でも導入するよう求めていて「親権を巡る問題も知ってもらいたい」と話しています。ハーグ条約への加盟に向けた法案は、今後、国会で審議され、共同親権制度との関連でも議論が行われる見通しです。
外務省、ハーグ条約で官民の対応チーム
外務省は国際結婚破綻後の子供の法的扱いを定めたハーグ条約の締結をにらみ、今春以降に官民の専門家による「ハーグ条約中央当局室(仮称)」を設置する方針を固めた。連れ去られた子供の返還や面会の手続きを円滑に進める狙い。外務・法務両省職員のほか、弁護士、心理カウンセラー、ソーシャルワーカーなど10人前後で構成するチームになる見通しだ。
ハーグ条約 子どもの利益守る運用を
「ハーグ条約」の加盟に向け、政府は通常国会に関連法案を提出する考えだ。法制審議会の部会が、要綱案をまとめた。
ハーグ条約は、国際結婚が破綻した夫婦間の子どもの法的扱いを定めたもの。一方が相手に無断で子どもを国外へ連れ出し、もう一方が子どもの返還を求めたとき、条約加盟国は子どもの居所を探し、元の居住国に戻す義務を負う。
部会の要綱案では、子どもの返還を求められた場合、家裁が子どもの意見を考慮したうえで可否を決める。親が返還命令に応じなければ、元の居住国へ子どもを強制的に返すこともできる仕組みだ。三審制を採っている。
日本は主要国(G8)のなかで唯一、条約に未加盟だった。日本人の母親が子どもを連れて帰国するケースが圧倒的に多いため、加盟には根強い反対意見がある。
ただ、現状のままではよくない。日本人の親が子どもを連れ帰る行為が、元の居住国で誘拐や拉致と取られ、裁判になる事例が相次いでいる。
逆のケースもある。外国人の元配偶者が子どもを母国に連れ帰った場合、日本がハーグ条約に加盟していないため、引き渡しを求める国際的な手続きが取れない。
昨年春、米在住ニカラグア人男性と離婚した日本人女性が、無断で長女を連れ帰ったとして親権妨害の疑いで米国で逮捕された。裁判で女性は司法取引に応じ、長女は元夫のもとへ戻された。
国際離婚は増える傾向にあり、2009年の厚生労働省の統計でおよそ1万9千件に上る。国境を越えて親権を争うケースが今後も増えると予想される。混乱を長引かせないためにも一定のルールが必要な時期にきている。
運用では、子どもの利益を最優先とすることを徹底したい。
夫婦が別れても、子どもにとって両親であることには変わりがない。離れて暮らす親ともふれあいつつ育つことは、子どもの権利でもある。
ただし、夫婦の破局の背景に、暴力や虐待が潜んでいる場合がある。要綱案では、子どもや配偶者に危害が及ぶおそれがあるときは返還を拒めるとしている。子ども自身が元の国へ戻るのを望まない場合も、返還を拒否できる。この見極めがカギになる。
子どもは親の感情に敏感だ。親をおもんばかり本心を隠すこともある。家裁が、子どもの本音を引き出し、最善の選択を探れるよう環境を整えてもらいたい。
男児に劇物を点眼した疑い 福島、母の交際相手逮捕
目薬に劇物を入れて交際女性の男児の目を傷つけたとして、福島県警棚倉署は25日、同県白河市旗宿大久保、トラック運転手伊藤保容疑者(48)を傷害容疑で逮捕した、と発表した。容疑を認めているという。
同署の調べによると、伊藤容疑者は昨年4月ごろから12月8日までの間、交際していた同県棚倉町の20代女性の長男(5)の目薬に劇物を入れ、角膜を傷つけるなど重傷を負わせた疑いがある。バッテリー用の硫酸が入れられていたとみられ、長男は右目が白く濁り、ものが見えにくい状態になっているという。
長男はもともと右目の病気で病院から目薬を処方され、ほぼ毎日、女性がさしていたが、伊藤容疑者は女性が見ていない間に劇物を入れたという。長男が痛がるため、女性は病院を少なくとも4、5カ所替えたが、伊藤容疑者は薬を替えるたびに入れていたという。
男児に劇物を点眼した疑い 福島、母の交際相手逮捕
劇薬を混入した点眼液を交際女性の長男(5)の目に差し、大けがを負わせたとして、福島県警棚倉署は25日、傷害容疑で同県白河市旗宿大久保、トラック運転手、伊藤保容疑者(48)を逮捕した。伊藤容疑者は「自分がやりました」と容疑を認めているといい、同署は児童虐待とみて調べを進める。
逮捕容疑は昨年4~12月、酸性の劇薬を混ぜたのに気付いていない交際女性に点眼液を差させて、長男の角膜の一部を損傷させるなどしたとしている。長男は視力が大きく低下しているという。
県警によると、交際相手の女性は20代。伊藤容疑者には妻子がいるため、同居はしていなかった。女性は「毎日のように点眼していたが、全く知らなかった」と話しているという。医師からの通報などで事件が発覚、昨年12月から同署などが捜査を進めていた。
【ハーグ条約】DV証明困難 運用不安
ハーグ条約に加盟すれば国際結婚をめぐるトラブルが減少するという見方がある一方、国内では反対論も根強い。要綱案ではドメスティックバイオレンス(DV)から逃れた帰国は子供の返還を拒否できるとしたが、DVの証明は難しく、被害者からは不安の声が聞かれる。
「元夫からのDVをちゃんと証明するのは難しい。海外で起きたことなので証言を取り、診断書を用意するのは大変」。オーストラリア人の元夫の暴力などが原因で数年前に子供と日本に帰国した40代の女性は、条約加盟前の帰国のため対象外となるが、加盟後の運用に不安を口にする。
元夫はほとんど働かなかったが「無職だから養育能力がないということにつながるのか。どういう判断をされるのか、実際に始まってみないと分からない点が多すぎる」とし、「DV被害者が守られる保証はない」と指摘する。
条約加盟に際し、最も望んでいるのはサポートだ。「海外でDVで苦しんでいる日本人女性の大半は情報がなくて、独りで苦しんでいる。加盟するなら、弁護士の紹介や相談窓口などの基盤作りをしっかりしてほしい」と注文を付けた。
一方、日本人同士の夫婦間の問題への影響を期待する声もある。約2年前に娘を妻に連れ去られ、面会を拒絶されているという埼玉県の男性(39)は「加盟を機に、国内の連れ去り禁止や共同親権制度の導入、離婚後も双方の親が子育てに関わる慣行が根付くことを期待したい」と話している。
子の返還、強制執行も=ハーグ条約加盟へ手続き規定―法制審が要綱案
国際結婚が破綻した夫婦の子(16歳未満)の親権に関するハーグ条約について、法制審議会(法相の諮問機関)の部会が23日、条約加盟に必要な国内法の要綱案をまとめた。日本人の親が連れ帰った子について、外国人の親が返還を求める場合の手続きなどを規定。返還の是非を審理するのは家庭裁判所で、家裁による返還命令を日本人の親が拒めば子の引き渡しを強制執行できるとした。
法制審は、要綱案を踏まえて2月に法相に答申する。法務省は、条約に関わる事務は外務省に設ける「中央当局」が統括するとした同省の「論点整理」も基に法案を策定、通常国会に提出する。
[時事通信社]
命令拒めば子ども強制返還 ハーグ条約の法案要綱
法制審議会(法相の諮問機関)は23日の部会で、国際結婚が破綻した夫婦間の子どもの扱いを定めた「ハーグ条約」加盟に向けた関連法案の要綱案をまとめた。日本に子どもを連れ帰った親が子どもの返還命令に応じなければ、家庭裁判所が外国にいるもう一方の親に子どもを引き渡せる強制執行権を明記。返還を拒否できる条件や、国内で子どもを捜す政府機関「中央当局」の設置も盛り込んだ。
法制審は2月にも小川敏夫法相に答申。政府は24日召集の通常国会に法案を提出する方針で、会期内の成立を目指す。
ハーグ条約加盟へ要綱案 子の返還で強制執行も
法務省は23日、国際結婚した夫婦が離婚した場合など国際的な親権問題解決のルールを定めた「ハーグ条約」加盟に向け、子供の返還手続きに関する要綱案をまとめた。日本に住む親が外国に住む親への返還に応じない場合、裁判所の職員が子供を親から強制的に離す権限を持つと規定した。政府は関連法案を24日召集の通常国会に提出する方針だ。
要綱案によると、外国にいる親が返還を日本の家庭裁判所に申し立てた場合、東京か大阪の家裁で審理し元の国に戻すかどうかを決める。三審制で、決定に不服があれば抗告できる。
裁判所が返還を決定しても日本に住む親が応じない場合は、まず制裁金を命じて引き渡しを促す。それでも子供を返さないときには強制執行に踏み切る。
強制執行では裁判所の職員が就く執行官が住居に立ち入り、子供を捜索する権限を持つ。抵抗した際は、警察の援助で強制措置をとることもでき、子供を解放して外国に住む親と面会できるようにする。
要綱案では日本に子供を連れ去った親が返還拒否を主張できる条件も示した。連れ去りから1年以上経過して子供が新しい環境に慣れていたり子供が返還を拒む場合や、外国に住む親が子供に暴力を振るう恐れがある場合を挙げた。
現在は日本がハーグ条約に加盟していないため、日本に住む親が加盟国に住む親に子供の引き渡しを望んでも、正式な国家間のルートで返還を請求できず、自分で相手と交渉しなければならない場合が多い。加盟後は、相手が住む国で担当する役所に請求し、裁判所が引き渡すように判断すれば日本側に子供が返還されるようになる。
ハーグ条約:子の所在、DV施設紹介 指針で外相に権限
国際結婚が破綻した場合の子の扱いを定めたハーグ条約の加盟に向け、日本国内で子の所在特定などの実務を担う「中央当局」となる予定の外務省が、その任務や権限についての指針をまとめた。日本人の親が子を日本に連れ帰り、外国人の親が子の返還を請求した場合、子の所在特定のため、外相が自治体などのほか、ドメスティックバイオレンス(DV)の民間保護施設(シェルター)などにも個人情報の提供を求められるとした。
条約は子を連れ出された親からの返還申請を受け、子がいる国の政府は原則として子を元の国に戻すと定める。実際に子を返還するかどうかは、国内の裁判で決めるとしており、法制審議会(法相の諮問機関)が2月上旬に答申を出す見通し。
指針では、子がいるとみられる自治体や私立を含む学校、民間の保育施設のほか、通信会社などに対しても情報提供を求める権限を外相に与えた。照会を受けた団体は「遅滞なく情報提供する」と規定。見つからない場合は、外務省が警察に捜索願を出すことができるとした。一方、情報提供の範囲は政省令で厳格に定め、個人情報は、子を連れ出された親を含む第三者に渡すことを関連法で禁じる。
政府は指針と法制審の答申を基に条約加盟に伴う関連法案を作り、3月上旬にも国会に提出する。【横田愛】
【ことば】ハーグ条約
83年に発効した「国際的な子の奪取の民事面に関する条約」の通称で、国際結婚が破綻した夫婦間の子(16歳未満)の扱いに関する国際的なルールを定めたもの。元々住んでいた国から子を連れ出された親が返還を求めた場合、相手方の国の政府は原則、元の国に戻すよう規定する。欧米を中心に87カ国が加盟しており、日本政府も昨年5月に加盟方針を閣議了解した。
以下、日本語訳。
日本における親による連れ去り事件
子どもの連れ去りをする者たち~日本の家族制度の暗闇
(東京)
このクリスマスに、アメリカ在住のニカラグア人であるモイセス・ガルシアさんは、ほぼ4年間を費やし、そして、35万ドルを費やして戦った結果、プレゼントを手にすることができた。
それは、9歳になる娘が戻ってきたことである。
2008年、カリーナちゃんは、母親により日本に連れ去られた。
そして、その時から、彼は娘と会う権利を勝ち取るために日本の裁判所で戦い続けた。
その間、彼は3回しか娘と会えず、そして、一番長い時ですら2時間だけであった。
その後、彼は幸運に恵まれた。
4月に、カリーナちゃんの母親は、グリーンカードの更新のためにハワイへ旅行し、子どもの誘拐の罪で空港で逮捕されたのである。
司法取引の一環で、その母親は、カリーナちゃんを放棄した。
その結果、カリーナちゃんは、日本人の親により奪われた子どものうち、裁判所を通じてアメリカに戻ることのできた最初の子どもとなった。(親権争いに巻き込まれたカリーナちゃんには、本当に気の毒である)
このような連れ去りにより、アメリカは、日本に対し、ハーグ条約に加盟するよう圧力をかける諸外国の一つとなった。
日本は、今年に加盟するとしている。ハーグ条約とは、一方の親により16歳まで子どもが連れ去られた際に、住んでいた国に迅速に返還させることを定めた条約である。
外務省によると、アメリカから日本に連れ去られた事例は約100件ほどあり、その他の国からの連れ去り事例も非常に多いとのことである。
しかし、別のカテゴリーに含まれる親たち、すなわち、日本に住み子どもに会えない親にとって、ハーグ条約に加盟したところで、その状況は全く変わらない。
日本の法制度は、他国とは異なり、離婚後の共同親権を認めていない。
それに代わり、離婚後は親権者を一人とすることを子どもに強いるのである。
家庭裁判所は、通常、裁判をしている時点で子どもを確保している親(多くの場合は母親である)に親権を与える。
それがたとえ、子どもを連れ去った親であってもである。家裁は、「置き去り」にされた親に対し、わずかな面会交流(=子どもと一定時間、共に過ごすこと)すら強制することはできない。
そして、多くの父親が、子どもの人生から完全に消えてしまうのである。
公的な統計を利用し推定すると、毎年、約15万人以上の親が子どもと会うことができなくなっている。
何人かの親は、自らの判断で面会交流を実施しているが、ほとんどの親は実施を拒絶しているのが現状である。
そのような父親の一人であり、ある市の元副市長でもあった者は、このような仕組みを「囚人のジレンマ」の婚姻版だと述べる。
彼が言うには、結婚生活が破綻し始めた際、言葉に出さなくとも重要となってくるのは、「父親と母親、どっちが先に子どもを奪い去るか」だという。
そして、彼のケースでは、元妻が先に奪い去った。
そして、彼は、この2年間、今や4歳になった娘と一度も会えていない。
彼が娘に贈ったプレゼントは開封もせずに送り返されてくる。
そして、このような行為を家庭裁判所は支持するのである。
彼が家庭裁判所の裁判官に対し面会交流を推進する民法改正がなされたことに言及した際、その裁判官は彼を黙らせたのである。
この民法改正を推し進めた江田五月元法務大臣は、この改正がより寛容な面会交流を促進することに繋がることを期待すると言う。
彼は、この改正が将来的には離婚後の共同親権についての真摯な議論に繋がることについても期待を表明した。
しかし、彼は、「日本の裁判官は非常に頑迷であり、『彼らの意識を変えることは困難だ』」と警告した。
過去、北朝鮮に連れ去られた何十人かの国民の迅速な返還を長年求めてきた国が、毎年、自国で行われている莫大な数の連れ去りを黙々と支援している、というのは非常に残酷なねじれである。
この置き去りにされた父親は、「私と同じ状況に置かれた者が数多く自殺している」と言う。
そして、彼は言葉をこう続けた、
「私もその気持ちが良く理解できる」
親子の所在把握、外相に権限=ハーグ条約加盟へ論点整理―外務省
外務省は19日、国際結婚の破綻に伴う子の親権争いの解決ルールを定めたハーグ条約の加盟に向け、条約に関する行政事務を統括する「中央当局」として、同省の役割や外相の権限に関する論点整理をまとめた。それによると、日本人の親が子を日本に連れ帰り、外国人の親が子の返還を請求した場合、日本人の親と子の所在を把握できる権限を外相に与えることにした。
政府は外務省の論点整理と、法相の諮問機関の法制審議会が2月に行う答申を基に、条約加盟に関する国内法案を作成し、通常国会に提出する。
[時事通信社]
以下、日本語訳。
子どもの連れ去り問題が、日米関係の重要懸案事項に
(東京発)国際的な子どもの連れ去り問題が、日米の二国間関係の重要懸案事項になっている。
何年にも亘り、国際社会は、国境をまたいだ誘拐を防ぎ、国際的な人権基準に日本が従うよう日本に強い働きかけをしてきた。
日本は、「国際的な子の奪取の民事上の側面に関するハーグ条約(1980年)」に加盟しないことで激しく非難を受けてきた。この条約により、それまで住んでいた場所から子どもが不法に連れ去られ、又は拘束されることを防ぐことができる。
菅直人前首相は、昨年の5月20日に、日本はこのハーグ条約に加盟する意思があると表明した。日本は、G8諸国の中で、唯一ハーグ条約に加盟していない国である。置き去りにされた親(Left Behind Parent)は、加盟については諸手を挙げて歓迎していない。日本の家庭裁判所が親子の再統合を図る組織に変わることが併せて必要であることからである。そして、依然として、日本の家庭裁判所は、国内と国際的な子どもの連れ去り行為を容認し続けたままである。
日本の裁判所は、通常、子どもがその時点で一緒に住む親に親権を付与するという判断をする。もし、もう一方の親が子どもに会おうとすれば、親権を獲得した親による許可が必要とされる。
これは、子どもを一方の親から先に奪った親が、交渉において優越的地位に置かれることを意味する。なぜなら、家庭裁判所は、圧倒的確率で、子どもの現在置かれている環境を追認する(Status quo)からである。
子どもを先にさらった親に単独親権を与え、連れ去りを容認する日本の司法制度を、多くの置き去りにされた親は批判している。国境をまたいだ子どもの連れ去りが生じた際、外国にいる親は無力である。なぜなら、日本の家庭裁判所は、子どもとその時点で一緒に居る親に有利な判決しか出さないからである。そのため、子どもを奪い去られた外国人の親の中には、日本を”子ども拉致のブラックホール”と呼ぶ者もいる。
日本政府がハーグ条約に加盟することとしたことは、国際的な人権基準に従う方向に日本政府が態度を改めたことを示している。
この動きは、国際的な結婚と離婚が日本で増加していることを受けてのものである。厚生労働省の統計によれば、昨年では、約1万9千組もが国際離婚に至っている。日本の離婚の総数の7.5%を占めていることになる。2010年の日本における離婚率は約36%である。そして、現在の家族法制度の下では、離婚した子どもは、一方の親に会えなくなるリスクが非常に高い状況にある。
このような状況を受けて、国際面、国内面ともに、やっと変化がおき始めている。二つのモデル・ケースがある。一つがウィスコンシンであり、もう一つが千葉の松戸である。
明治時代より、日本は、離婚後は親権を親のどちらか一方に付与する制度に固執してきた。この単独親権制度は日本文化であると称するものもいるが、実際のところ、この制度こそが、子どもの連れ去りを容認する法制度を生み出している。
2011年12月23日、4年前に日本人の母親により連れ去られた子どもが、ウィスコンシンに住む父親のもとに戻された。裁判所を通じて、連れ去られた子どもが日本から戻される最初のケースとなった。
子どもを連れ去った罪により、2011年4月にハワイで逮捕された母親が、自らの釈放の交換条件として、娘をアメリカに戻すことを認める司法取引に応じたことから、その子どもは父親と再び一緒に暮らせることになった。
このケースは、国際的なメディアと日本のメディアの双方で広く取り上げられた。そして、NHKや朝日新聞などの日本の報道機関は、初めて”連れ帰り(子連れ別居=bring home)”という言葉に代わり、”連れ去り(誘拐=abduction)”という言葉を使った。
もちろん、この司法取引をもって、日本の家庭裁判所の態度が変化したということにはならない。しかし、変化は徐々に国内の問題においても進みつつある。
子どもの連れ去り問題を追っている者は、千葉県の松戸で起きている国内の連れ去りのケースの進展を注視している。このケースは、子どもの連れ去りが不法行為であることを示す先例となるかどうかという点で、非常に注目されている。
2011年4月26日、江田五月法務大臣(当時)は、法務委員会において民法第766条について言及し、離婚後の監護権を決定する際に考慮しなければならない3つの基準を示した。
この三つの基準とは、1)子どもの連れ去りは、児童虐待として考えられるべきであること、2)監護権付与にあたっては、子どもを一方の親と面会させることを進んで認める親に有利に働くこと(これは、「友好親の原則(Friendly Parent Rule)」として知られている)、3)子どもを不法に連れ去った親は、監護権付与にあたって不利に働くこと、である。
離婚後の子どもの監護についての法的指針を規定している日本の民法第766条は、2011年6月3日に改正された。この条文には、離婚届を提出する前に両方の親が面会交流(=子どもと同居していない親と子どもとが定期的に一緒に過ごすこと)と養育費について協議しなければならないことなどが規定されている。
江田元法務大臣が明示した三つの基準のうちの一つである上述の「友好親の原則」が示すように、面会交流を認めないということは、監護権を獲得する上で不利に働くべきである。これにより、子どもが既に連れ去られているケースにおいて、置き去りにされた親が子どもの監護権を獲得しようとする場合、裁判所において、子どもを連れ去った親に対する面会交流を提案するようになるだろう。
この民法第766条の改正は非常に重要である。なぜなら、一方の親による子どもの連れ去りは、この新規定に反する行為となるからである。この規定が、日本の家庭裁判所において適切に執行されるのであれば、一方の親による子どもの連れ去りを防ぐことになる。
しかし、千葉県松戸で取り上げられているケースを担当する若林辰繁裁判官は、(子どもを連れ去られた親から)江田法務大臣の答弁を踏まえるように求められた際、「法務大臣が国会で何を言おうが関係ない。」と言い放ったとのことである。
この発言に対し当事者団体が若林裁判官の辞職を求める事態にまでなった。若林氏は、本ケースに対しまだ最終的な審判は下していない。国内の当事者団体と国際社会は、彼の下す審判結果を緊迫した心持ちで待っている。
放射能理由、外国籍夫が子と帰国 条約未加盟で妻窮地
原発事故を理由に、日本人と結婚した外国人が子どもを連れて母国に帰るケースが出始めている。子を連れ戻すのに有効なハーグ条約に日本は加入しておらず、子を奪われた母親は途方に暮れる。
東海地方で暮らす公務員の女性は米国人と結婚し、7歳と5歳の息子がいる。夫は昨年3月、2人の子を連れ、1カ月の予定で「里帰り」を兼ねて米国へ旅行に出かけた。その直後、東日本大震災が起きた。夫は原発事故の影響を恐れ、米国を離れようとしない。女性が帰国を促すと「子どもを放射能の危険にさらすのか」と拒んだ。
米国では震災後、津波や放射能の被害が連日報じられた。女性はインターネットのテレビ電話で米国の夫や子に連絡し、東海地方は安全と訴えた。でも、夫に教えられたのか、子どもたちは「日本は水がバシャーン、バシャーンであぶない。エア(大気)に毒も入っている」と不安がった。
夫は当初、「原発が安定したら戻る」と約束していたが、夏までに女性の口座から計約1万7千ドルの預金を全て引き出し、米国で新たにアパートを借り、生活の基礎を固め始めた。11月に入ると、一方的に米国で離婚を求める訴訟を起こした。日本政府が「収束宣言」を出しても、当初の約束は守られなかった。
「いったいどうして……。まるで誘拐じゃない」。夫とは2001年、留学先の米ニューヨーク(NY)で知り合い、翌年に結婚した。学生だった夫とNYで暮らすのは経済的に困難なため日本に移り、女性が国内での職業資格をいかして生計を支えてきた。米国では安定した職の保証はなく、その状態で離婚となれば親権が認められる可能性も低い。
女性は米政府の「子ども連れさり窓口」に相談した。日本がハーグ条約に加入していれば、加盟国の米国は子どもを元の居住地に戻す義務を負う。だが、未加盟なので「保護の対象にならない」と言われた。自力で訴訟などで取り戻すしかないが、現地の弁護士には「米国ではここ半年の子育ての実態を重視する。震災時から子どもと離れていたあなたは不利」と指摘された。事故直後、原発の収束が不透明だったため、子らの米国滞在を黙認していたことが裏目に出た。
女性のアパートには、長男が入学式で着るはずだったブレザーや青いランドセルが、真新しいまま置かれている。夕方、仕事から帰るたびに、「おかえりー」と駆け寄ってくる2人の姿を無人の部屋に捜してしまう。
米国での訴訟に長い年月がかかり、費用は数百万とも言われる。勝てる保証もなく、焦りと不安に暮れる。「“逃げ得”を許さないために、早期に条約に加盟を」と訴える。
女性は手紙や電話で、繰り返し子どもたちに語りかけている。「2人はママのかけがえのない宝物よ」(佐々木学)
日本に連れ去られた娘戻る、「クリスマスの奇跡」と米国の父親
【12月26日 AFP】米ウィスコンシン(Wisconsin)州の医師、モイセス・ガルシア(Moises Garcia)さんは今年のクリスマス、離婚した妻が日本に連れ去ってしまった娘を約4年ぶりに自宅のベッドに寝かしつけることができた。苦い法廷闘争の末だった。
「カリナは自宅にいる。奇跡だ」と、ガルシアさんは24日、記者団に語った。
ガルシアさんは、日本人の元妻が2008年2月に当時5歳だったカリナちゃんを連れて日本に帰国してから、彼女を取り戻すために35万ドル(約2700万円)を費やし、情熱的に闘ってきた。
英語を忘れてしまうだろう娘と会話できるようにと、日本語を学んだ。日本で弁護士を雇い、太平洋を9回往復して問題解決を訴え、娘との面会を求め続けた。米国務省と祖国ニカラグア政府の協力も取り付けた。日本に子どもを連れ去られた親たちで作る運動団体「グローバル・フューチャー(Global Future)」でも活発に活動した。
09年、ガルシアさんは大きな勝利を収めた。日本の裁判所は、米裁判所がガルシアさんに認めた全面的な親権を認めていなかったが、ガルシアさんに娘と会う権利を与えたのだ。元妻が上訴したために訴訟は長期化したが、それでもガルシアさんは闘い続けた。
この間、ガルシアさんは娘にわずか3回しか会えなかった。会えた最長時間は、ホテルのレストランで過ごした2時間だった。学校の一般公開日には、わずか10分しか会えなかった。
■元妻のハワイ逮捕がきっかけに
日本人の親に日本に連れ去られた後に、司法の助けを得て子どもが米国に引き渡された事例は、カリナちゃんが初めてだ。しかも、例外でしかない。元妻が今年4月に米ハワイ(Hawaii)島を訪れ、現地で児童誘拐容疑で逮捕されていなかったら、カリナちゃんが米国に戻ることはなかったからだ。
元妻は、ウィスコンシン州の刑務所で数か月身柄を拘束された後、カリナちゃんをガルシアさんに引き渡す代わりに長期の禁錮刑を執行猶予に減刑するという司法取引に応じた。
「文明社会でこんなことは起きてはならない」とガルシアさんは語る。
■ハーグ条約加盟しても残る問題
日本は先進8か国(G8)で唯一、国際結婚が破綻した際に子どもが無断で国外に連れ出された場合は元の在住国に戻すことを定めた「ハーグ条約」に加盟していないが、国際的な批判の高まりを受け、加盟方針を決めている。
しかし、日本がハーグ条約に加盟したとしても、加盟後の連れ去り事例にしか適用されない。米国の親が日本に連れ去られた子どもの引き渡しを求めている120件を超える未決事例は、適用外だ。
ヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)米国務長官は19日、玄葉光一郎(Koichiro Gemba)外相との会談でこの問題を再度取り上げ、日本に対し条約加盟に向けた「断固とした行動」と「未決事案への対策」を求めた。
子ども連れ去り問題に長年取り組んでいる米共和党のクリストファー・スミス(Christopher Smith)下院議員は、ガルシアさんの事例について「問題解決へ向け迅速に行動する必要があると、改めて日本政府に警鐘を鳴らした」事例だと指摘する。「わが子が連れ去られ、不法に拘束されたままの他の親たちは、今年のクリスマスも苦しみを抱いて過ごしている」
スミス議員は来年にも、連れ去り事件解決にあたって米政府の権限を拡大する法案を議会に提出する予定だ。この法案は米政府に対し、子ども連れ去りに対する各国の取り組みの評価を義務付ける内容で、ハーグ条約未加盟国も評価対象とし、相手国に制裁を課すこともできる。
「この法案は(子ども連れ去りの)問題を、ダビデとゴリアテの戦いではなく、国と国との闘いにするものだ」と、10年前に制定された人身売買に関する法律の提案者でもあるスミス議員は語った。
■ガルシアさん、日本の法制度不備を批判
ガルシアさんは、日本の法律が改正され、家庭裁判所に親権を執行する権限が与えられない限り、他の親が子どもたちと再会することはほとんど不可能だと言う。「元妻が逮捕されて、やっと日本の裁判所に欠けている法執行力を獲得できた。もし彼女が逮捕されていなかったら、カリナは二度と帰ってこなかっただろう」
この数か月のストレスで、カリナちゃんは体重が減り、米国への移住に不安を感じているとガルシアさんは話した。それでも、父と娘は少しずつ、互いを理解し始めているという。4年間の別離でも変わらなかった部分もあった。カリナちゃんは今でも人形を全部ベッドの上に並べて眠る。それに就寝時の習慣も覚えていた。
「彼女は、毛布をかけずに待っていた。私にかけてもらうために。娘が帰ってきたと実感したのは、その瞬間だった」と、ガルシアさんは語った。(c)AFP/Mira Oberman
元夫、長女と再会にも心境複雑 離婚後「連れ去り」事件
【ミルウォーキー共同】米国在住の元夫に無断で長女(9)を日本に連れ去ったとして、日本人女性(43)が米国で親権妨害罪などに問われた事件で、元夫の医師モイセス・ガルシアさん(39)は24日、ウィスコンシン州ミルウォーキーで記者会見し、約4年ぶりに長女が戻り一緒に生活できるようになった感想を語った。
ガルシアさんは「娘と一緒にいられるようになってうれしいが、(米国で親権を持つ自分が娘と一緒になれない)日本の法制度への怒りもある。理由も分からず慣れ親しんだ日本から米国に連れてこられた長女の気持ちを思うと悲しい」と複雑な心情を述べた。
国際離婚トラブル:親権妨害事件 女児連れ出しの日本人女性釈放
米国に住むニカラグア国籍の元夫(39)との国際結婚で生まれた女児(9)を、無断で米国から日本に連れ出したとして、日本人女性(43)が親権妨害などの罪に問われた事件で、女児が米国の元夫に引き渡され、女性が釈放されたことが元夫側の代理人弁護士への取材で分かった。
弁護士によると、女児は23日(日本時間)に渡米し、元夫に引き渡された。それを受け、女性は24日(同)、米国ウィスコンシン州の拘置施設から釈放されたという。女性は元夫に無断で米国から女児を連れ去ったとして、4月に米国に再入国した際に親権妨害容疑で逮捕された。【岡奈津希】
23日に長女が渡米へ 「連れ去り」で司法取引
米国在住のニカラグア国籍の元夫(39)に無断で米国から長女(9)を日本へ連れ去ったとして、兵庫県宝塚市の日本人女性(43)が親権妨害罪などの罪に問われ、司法取引が成立した事件で、長女が23日に渡米する予定であることが22日、訴訟関係者への取材で分かった。
司法取引は、長女を元夫の元に戻すことを条件に、重い刑を科さないなどとする内容。11月、米ウィスコンシン州の裁判で成立した。
女性は4月、米国に再入国した際に逮捕された。拘束中だが、長女が元夫に引き渡されれば、釈放される見通しという。
長女「連れ去り」認める 離婚の邦人女性
米国在住の元夫(39)に無断で米国から長女(9)を日本へ連れ帰ったとして親権妨害罪などで訴追された兵庫県宝塚市の日本人女性(43)の公判が21日、米ウィスコンシン州の裁判所で開かれ、女性は長女を連れ去って元夫の面会を不法に妨げたことを認め、長女を米国に戻すことを認める司法取引に応じた。
女性の弁護士と元夫が閉廷後に明らかにした。訴追手続きは22日に正式に終結する見通し。
日本は国際結婚の破綻後の子どもの法的扱いを定めた「ハーグ条約」に未加盟。法律が未整備のため、混乱が長引いているケースと言えそうだ。
弁護士によると、司法取引に応じなければ10年以上の禁錮刑となる可能性もあったため、女性は司法取引に応じた。女性は、米国の永住権を持っており、今後は長女と面会しながら米国で暮らす意向だという。
元夫は「娘にとって一番いいのは両親と接触しながら育つこと。日本の人々も、法律に違反すれば訴追されることを知ってほしい。娘に早く会いたい」と語った。
関係者によると、ニカラグア国籍の元夫が2008年に米国で離婚訴訟を起こし、女性は長女と帰国。09年に離婚と元夫の親権を認める判決が確定した。女性は日本の裁判所に親権の変更を申し立てて認められたが、同州当局に指名手配され、今年4月に米国に入国した際に逮捕された。
ハーグ条約は、子どもを国外へ連れ出された側が求めれば、相手国が子どもを元の在住国に戻すよう義務付けている。野田佳彦首相は、条約加盟に必要な関連法案を来年の通常国会に提出する考えを表明している。(共同)
「親に会えない」悪影響 離婚後も子供の福祉が第一、分離の現状 早急に是正
【東北公益文科大 講師 益子行弘】
菅内閣が今年5月、国際結婚が破綻した夫婦の子どもの処遇を定めたハーグ条約に加盟する基本方針などを閣議了解して以降、政府内に、親子に関する法律、特に離婚後の親子関係に関する法律を整備する動きがある。背景には、日本の国内法において離婚後、片方の親にのみ親権を定め、親権を持たない親(別居親)と子どもが会う権利が保障されていないことが挙げられる。
家庭裁判所も別居親には子どもとの面会をなかなか認めない傾向にあり、そのやりようから、家庭裁判所は「親子分離機関」とやゆされることもある。父親、母親を問わず、離婚時に子どもを連れ去られてしまうと、以降は会うことすら許されず、一生生き別れになってしまうことも日本では珍しいことではない。
別居親が子どもに会いたい場合、まずは監護親に面会を求めるが、監護親が拒んだ場合は、家庭裁判所に調停(面会交流調停)を申し立てることができる。面会交流調停では、客観、中立の立場から、調停委員や調査官が両者の言い分を聞きながら解決を図ることになっている。
しかし、実情は違い、たとえ別居親にDV(家庭内暴力行為)や虐待がなく、監護親側に離婚の原因があったとしても、監護親が「会わせない」とすれ ば、それが尊重される傾向にある。別居親が子どもに会う権利、子どもが別居親に会う権利を明記した法律がないためではあるが、子どもの福祉よりも、監護親 をいかに説得するか、いかに許可してもらえるようにするかといった視点で調停は進められるのである。
調停でまとまらず、審判(裁判所が終局判断を行う)に移行したとしても、月に1、2度、1~2時間程度の面会が認められる程度であり、写真数枚を 別居親に送りさえすればいいと判断されるケースもある。すなわち、家庭裁判所においては、別居親の役割はその程度で十分であるとの認識なのである。
一方、監護親が子どもに対し、別居親と引き離す態度を取ることで、子どもの精神的不安定を引き起こす事例が多々報告されている。これはPAS(片親引き離し症候群)と呼ばれ、監護親が子どもに対して別居親の誹謗中傷を吹き込み、別居親の悪いイメージを持たせ、別居親から引き離すよう仕向けている状況を指す。PASは子どもに、さまざまな情緒的問題や対人関係上の問題を長期にわたり引き起こすことが明らかにされており、心理専門家からは虐待行為であるとの指摘もある。
われわれが山形県内で行った調査でも、別居親と引き離されている子どもは、別居親との関係が良好な子どもに比べて、自己評価や自己肯定感が低く、対人不安感が高いことが示され、欧米や日本の他地域での調査と同様の結果が得られている。
理由はどうであれ、離婚によって一番被害を受けるのは子どもである。根本的な解決には親権制度の改正が必要かもしれないが、子どもの福祉を第一に考えるのであれば、親権以前に、まずは子どもへの悪影響を最小限にとどめるにはどうすれば良いかという視点で議論し、実の親との分離を行っている現状を早急に是正する必要があるのではないだろうか。
国際離婚の外国人「法改正を」 「子に会いたい」切実
国際離婚でわが子と会えなくなった日本在住の外国人と支援者らが二十二日、子との面会交流の保障などを求め、法務省前でアピール活動を行う。政府が離婚後の子の扱いを定めたハーグ条約への加盟準備を進める中、外国人親の権利に配慮するよう国内法の改正も促すのが狙い。クリスマスを前に、親たちが「子どもに会わせて」と切実な声を上げる。
活動を計画しているのは欧米人などが参加する当事者グループ「LBPJ」と、アジア・アフリカの外国人を支援するNPO法人「APFS」。国際離婚の問題が近年深刻化していることを受け、初めて連携した。
外国人の場合、離婚でビザが下りなくなったり、日本独特の「保護者」という立場を理解できなかったりと、日本人同士の離婚よりもトラブルが起きやすい。法的な知識も乏しく、裁判で不利になることがあるという。
当日は外国人親らが法務省前でキャンドルをともしてアピールする予定。離婚後の共同親権や外国人親の在留資格、子どもとの面会交流の保障などの法整備を求める。
APFSの加藤丈太郎代表理事(29)は「ハーグ条約に加盟しても、有効な国内法が整備されなければ骨抜きだ」と主張。自身も子どもに会えなかった経験があるというLBPJのカルロス・スミス共同代表(43)は「このような問題が起きていることを、広く知ってもらいたい」と話す。
厚生労働省の人口動態調査によると、結婚全体に占める国際結婚の割合は二〇〇六年の6・1%をピークに減少に転じたが、離婚全体に占める国際離婚の割合は一〇年に7・5%で、十年前より六割近く増えた。
週刊朝日 2011.12.23 (p.143)
「子ども連れ去り」で飛び出した裁判官の〝トンデモ″発言
元記事はこちら
冤罪の例は言うに及ばず、日本の司法が抱える矛盾は数多い。今度は離婚トラブルに端を発した、子どもの連れ去り問題を協議する場での裁判官の発言が、波紋を広げている。
「トンデモ発言」が飛び出したのは今年5月27日、千葉家庭裁判所松戸支部でのこと。くしくもこの日、改正民法が国会で成立していた。その内容は後述するが、自身の離婚審判に臨んでいた30代の父親は、改正案が審議された国会の会議録などを示し、「子どもの利益を第一に考えた審査をしてほしい」と、担当の若林辰繁裁判官に訴えた。
ところが若林裁判官は、こう言い放ったという。
「法務大臣が国会で何を言おうと関係ない。国会審議など、これまで参考にしたことは一度もない」
父親は驚いた。司法は立法府から独立した存在であるとはいえ、裁判官は立法者、すなわち国会が定めた法律に拘束される。憲法にもそうあるではないか。
「立法者の意思をまったく無視して法解釈していいと判断する根拠はなんですか。司法は立法府より上の立場ということですか」
こう食い下がると、若林裁判官は、
「あなたと法律の議論をするつもりはない」
と、その場を立ち去ってしまったという。
この父親は昨春、3歳の娘を妻に突然、連れ去られて以来、妻側から身に覚えのないDVで訴えられ、疑いは晴れたものの、その後もわずか数時間の面会を何度か許されただけだ。もう1年以上、会っていない。
妻とは別れても、自分が娘の父親であることに変わりはない。何より子どものために、離婚後も両親が子育てにかかわるのが望ましい。子どもを自分が育てる代わり、妻側には年間100日、娘と会わせるとの譲歩案を示している。
実は、こうした子どもの連れ去り・引き離しは国際結婚のみならず、日本人夫婦の間でも相次いでいる。わが子との交流を一方的に断たれた親が悲観して自殺するケースも複数、報告されている。そうした現状も踏まえ、離婚時に子どもとの面会交流の取り決めを定めることをうたった改正民法が、ようやく成立した。江田五月法相(当時)は、
「たとえ別れた元夫、元妻との交流であっても子の健全な育成のためには重要」
「例外はどんな場合でもありうるが、(面会交流の実現に)努力をしようというのが家庭裁判所の調停または審判における努力の方向だ」と国会で明言。
さらに最高裁の豊澤佳弘家庭局長も、「子どもの健やかな成長、発達のために双方の親との継続的な交流を保つのが望ましい」と答弁していた。
この「トンデモ発言」はいまや多くの関係者の知るところに。最高裁広報課は、
「個別案件における裁判官の発言についてコメントすることは差し控えたい」
しかし、最高裁自身がこの発言を問題視したことは、その後、改正案が審議された国会の会議録を職員に回覧するよう求める文書が、最高裁から全国の高裁、家裁あてに出たことからもうかがえる。
だがある裁判官OBは、その効果を疑問視する。
「裁判官は自分が担当する事案では何がなんでも自分の意見を通しますから、最高裁が何を言ったところで、態度は変わりませんよ」
誰のための司法なのか。
本誌・佐藤秀男
サンデー毎日 2011.12.25 (p.22)
調査官クビを求められた最高裁長官『官僚の責任』
国際結婚の破綻などで影響を受ける子どもの利益を保護する「ハーグ条約」の加盟に向けて日本政府が閣議了解したのは菅直人政権当時の5月。国内法整備の一環として民法が改正され、最高裁も全国通達を出した。両親が離婚した子どもが自由に両親と交流できるのかと思ったら、「現場」はそうでもなさそうだ。政治ジャーナリストが言う。
「当時の江田五月法相も衆院法務委員会で『可能な限り家庭裁判所は親子の面会交流ができるよう努めることが法律の意図。家裁の調停・審判で、より一層努力がなされることを期待する』と答弁しています。両親が離婚した子どもが片方の親だけでなく、もう一人の親にも面会できる権利を保障するのが世界の流れ」
ところが調停・審判の現場では、依然として従来の解釈を変えようとしないという。連れ去られた娘の引き渡しを認めるよう千葉家裁松戸支部に求めた埼玉県在住の父親が明かす。
「裁判所は『相手方(母親)が合意なく当時の環境を変えたことだけをもって申立人(父親)に (娘を)引き渡す根拠とするには足りない』『面会交流の制限だけで(母親の)監護能力が不十分とまでは言い切れない』という理由で私の申し立てを退けました。通達や法相答弁に反するだけでなく、公務員が法の趣旨に従わない違法行為ですよ」
これを受けて、「親子の面会交流を実現する全国ネットワーク」(藤田尚寿代表)が12月9日、この父親ら2人の事件を担当したS、Uの両調査官らの懲戒免職処分を求める意見書を、竹崎博允最高裁長官あてに提出。ついに〝反動調査官″のクビを要求する事態に発展したというわけだ。
前出・父親が言う。
「民法改正後の数カ月で子どもに会えない親が2人自殺しています。虐待で親に殺された子どもも、もう一方の親が会えていれば救えたケースもあります。彼らは裁判所に殺されたようなもの。われわれは難しいことをお願いしているわけではありません。ただ法律に従ってほしいだけです」
最高裁長官といえば、国家公務員宿舎問題を機に東京都新宿区にある〝豪邸″がヤリ玉に挙がった。その司法官僚の責任やいかに。
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離踏後の別居親と子ども 面会交流のルール作りを
両親の離婚後に、離れて暮らす別居親と子どもが会い、親子の絆を育む面会交流。5月の民法改正で初めて明文化され、今後は離婚時に、その方法について協議しておくことになった。しかし現実には、同居親が子どもと別居親との交流を拒んだり、片方の親が一方的に子どもを連れ去る「引き離し」や「片親疎外」が後を絶たず、子どもの情緒面への悪影響も指摘されている面会交流の在り方について考える。
日本では離婚後、父母のいずれかだけで子どもを育てることが多いが、欧米や中国、台湾などでは、DVなどの極端な場合を除き、夫婦の離婚後も双方が子どもに関わって養育するのが一般的となっている。
福岡市で11月にあった離婚後の親と子の引き離しについて考えるシンポジウム(主催“Kネット福岡)。離婚後の親子交流を研究する大正大学人間学部臨床心理学科の青木聡教授が講演し、「欧米は、別居親と子どもの定期的な面会交流を重視し、仲介システムも整っている。子どもが片方の親の影響を受け、正当な理由なくもう一方の親との交流を拒む『片親疎外』を防ぐ取り組みも進んでいる」と解説した。
青木教授によると、米国では子どもを持つ夫婦が離婚する際、面会交流を含む子どもの養育の重要性や適切な対応、法的手続きなどについて学ぶ教育プログラムを受講し、養育プランを提出することが義務付けられているという。 ・
例えばアリゾナ州では、別居親と子どもが毎週1回夕方数時間に加え、隔週で3泊4日を一緒に過ごすのが標準的なプラン。プランの定期的な見直しや、関係が悪化した親子のフォロー体制、子どもの代理人制度まで整う。面会交流をつなぐシステムが始まったばかりの日本では、裁判で提示される面会交流時間は月1回数時間程度で、欧米とは大きな差がある。
引き離してはダメ 「片親疎外」心に悪影響
米国が面会交流を手厚くバックァツプする背景には、片親疎外が子どもに自己肯定感や基本的信頼感の低下、抑うつ傾向などの悪影響を及ぼすという研究報告がある。2010年に青木教授が国内で大学生に実施した調査でも同様の結果が出ており、「片親疎外は、子どもへの情緒的虐待。子どもの福祉を考えた離婚後のシステム作りが必要」と青木教授は訴える。
シンポジウムには、幼少時に親が離婚し、母親と長く連絡が途絶えていた男性(18)もパネリストとして出席。「母に会いたかったけれど、父が怖くて言えなかった。親に裏切られたと思ったら人を信用できなくなり、荒れた時期もあった。もっと子どものことを考えてほしい」と話した。(吉田美佳)
離婚の苦渋を和らげる共同親権法案
離婚した夫婦が子どもたちに対して共同で保護者の責任を果たしていけるよう、政府は親権についての改正案を提出した。この共同親権の導入を求める改正案は幅広い支持を得ている。
しかし、この改正案には子どもの養育費の支払いについての項目が含まれておらず、これについての審議は来年になる予定だ。民法の整備の一環としてこの問題の法改正を行うかどうかは連邦議会次第となった。
重要な第一歩
「重要な第一歩が踏み出された」と財団法人「子供の保護(Protection of Children)」のカティ・ヴィーダーケーア氏は語る。大半の政党と圧力団体が長年の問題に終止符を打ちたいと望んでいることが伺えるため、同氏はほかのヨーロッパ諸国の法律に沿ったこの法案は承認されるだろうと楽観視している。
またヴィーダーケーア氏は、養育費の支払いへの取り組みは、まず共同親権の問題を解決してから行うことが正しいと言う。
しかし法律の改正に加えて、(共同親権についての)講座の受講義務などの補助的な方策が必要だ。ヴィーダーケーア氏は「子どものために、両方の親が親権を持ち、共同親権に対してどのように対応すべきか学ばなくてはならない」と語った。
貧困
「1人親の会(Association of Single Parents)」のアンナ・ハウスヘーア氏は改正案を歓迎しているが、貧困を防ぐために養育費の最低限度額を法律で定めるよう呼び掛けている。
「最低限度額は、1人親世帯の子どもに対する基礎年金と同額であるべき」とハウスヘーア氏は主張する。
また、そのような最低限度額の養育費の支払いは最も効果的な上、複雑な手続きを経ずに実施できると同氏は言い添えた。
さらに、スイスの1人親世帯4世帯につき1世帯が相対的な貧困生活にあり、子どもとその将来に明らかな影響を及ぼしているとハウスヘーア氏は指摘する。
大転換
男性と父親から成るグループを統括する組織は、政府案を実際的と評価している。「まさに一歩先を行く法案だ。共同親権が通例になる一方、片方の親による独占的な親権が例外となり、その正当性の十分な証明が義務付けられることになるかもしれない」と組織の代表マルクス・トイネルト氏は予想する。
トイネルト氏は、現在の制度が数多くの悲劇を生みだしたと語る。「離婚した夫婦の間の何千人もの子どもたちが父親と疎遠になっている」
またトイネルト氏は、改正案は社会の変化を反映し、(離婚した夫婦の間の)友好的な対話と協力への下地を作ったと説明した。「この法案が国会で承認されたらうれしいが、キャンペーンは続けなくてはならない」
しかし共同親権の法制化は特効薬ではない。「別居や離婚のプロセスは精神的にストレスが多く、親も専門家の助けが必要だ」とトイネルト氏は付け加えた。
裁判所は、もはや父親が一家で唯一の稼ぎ手だったころの昔の家族を基準としていない。これは非常に重要なポイントだ。
子どもの幸せ
11月中旬、司法警察省大臣シモネッタ・ソマルガ氏は改正案を発表し、最も重要なのは子どもの幸せだと語った。
現行の法律では、原則として母親が単独で子どもの監護権を得られるようになっているため、改正案の目的は法律上の不平等を廃止することにある。
「しかし、改正案は、どちらの親が親権を得るのか答えを出すことはできない」とソマルガ司法警察相は述べた。
またソマルガ司法警察相は、未婚の母親の経済的問題に取り組むために、来年上半期は養育費に関する法律の改正に取り組むことを約束した。
離婚後の扶養手当の支払いに関する問題は、解決がより困難だと識者は見なしている。「困難になるのはこれからだ。この問題に関する討論には柔軟な態度がさらに必要となるだろう。しかしソマルガ司法警察相はそれができるはず」とドイツ語圏の日刊紙「NZZアム・ゾンターク(NZZ am Sonnntag)」紙は論じている。
「(共同親権についての改正案の)承認は、感情に流されにくい討論への道を開く。(親権問題の解決は)至難の業だ。離婚手続きは全く情け容赦ない」とチューリヒの日刊紙「ターゲス・アンツァイガー(Tages-Anzeiger)」とベルンの日刊紙「デア・ブント(Der Bund)」の共同社説は述べている。
ウルス・ガイザー, swissinfo.ch
(英語からの翻訳、笠原浩美)
長女「連れ去り」邦人女性、米で司法取引が成立
【ミルウォーキー(米ウィスコンシン州)=共同】米国在住のニカラグア国籍の元夫(39)に無断で米国から長女(9)を日本へ連れ去ったとして、親権妨害罪などに問われた兵庫県宝塚市の日本人女性(43)の公判が22日、米ウィスコンシン州の裁判所で開かれ、女性が長女を米国の元夫の元に戻すことを条件に、重い刑を科さない司法取引が正式に成立した。
法廷で裁判官から「全て理解しましたか」と問われた女性は、英語で「はい」と答えた。
女性や元夫の弁護士によると、親権妨害罪は有罪になれば禁錮10年以上の重罪。司法取引は、長女を30日以内に米国に戻すなどすれば、女性の有罪、無罪を当面は決めずに、3年後に軽罪扱いとする内容。長女が米国に戻った後、女性の拘束が解かれる可能性が高いという。女性は米国永住権を持っており、今後は長女と面会しながら米国で暮らす考え。
国際結婚が破綻した後の子どもの法的扱いを定めた「ハーグ条約」は、無断で子どもを国外へ連れ出された側が求めれば、相手国が子どもを元の在住国に戻すよう義務付けているが、日本は未加盟。日本政府は加盟に向け、必要な関連法整備を進める方針を決めている。
元夫の支援団体は、同様のケースで母親らが日本に連れて帰った子どもは300人以上としている。
元夫は閉廷後「元妻を刑事裁判にかけるのは胸が痛む。子どもも心の傷を負い、誰にとってもマイナスだ」と述べ、日本政府にハーグ条約加盟を急ぐよう求めた。
国際離婚の闇…子供“連れ去り”兵庫の女性が米国で身柄拘束されたワケ
米国で離婚訴訟中に子供を連れ去ったとして、兵庫県の女性が米司法当局に身柄を拘束され、親権妨害などの罪で刑事裁判を受けている。国際結婚が破綻した夫婦の親権トラブルは解決が難しく、数年前からは国際問題にも発展していたが、刑事訴追されるのは異例。事態が深刻化する背景には、日本と欧米の親権制度の違いがある。(加納裕子)
親権はどちらに?日米で割れた判断
当事者は、日本人女性(43)とニカラグア出身の男性(39)。長女(9)の親権をめぐる訴訟は、日米両国で約4年前から続いていた。
双方の代理人弁護士などによると、2人は2002年、米ウィスコンシン州で結婚し、同年長女が誕生。長女は日本、ニカラグア、米国の国籍を持つ。しかし2人は不和になり、2008年2月、男性は同州裁判所に離婚訴訟を起こした。
女性は直後に長女を連れて日本に帰国。2009年6月、判決は男性に単独親権を与え、女性が直ちに長女を男性に引き渡すことを命じるとともに女性に法廷侮辱罪が成立すると宣告し、同年9月に確定した。
一方、女性は同年3月、神戸家裁伊丹支部に離婚訴訟を提起。米国の判決を受けて6月、親権の変更を申し立てた。
今年3月、家裁支部は「子供が日本になじんでいる」として女性の単独親権を認める一方、男性と子供を日本で約2週間、米国で約30日間面会させるよう命じ、ウェブカメラで週1時間、電話で週30分間の交流も義務づけた。双方が大阪高裁に抗告している。
女性が米国で身柄を拘束されたのは、その直後の4月。代理人弁護士によると、女性は永住権(グリーンカード)更新のため、ハワイに渡航したという。
長女は現在、兵庫県内で親族に育てられている。関係者によると、米司法当局は親権妨害の事実を認めて長女を男性に引き渡せば刑期を短くできると提案したが、女性は拒否。「帰国した時点では男性に離婚訴訟を起こされていたことを知らなかった。親権妨害にはあたらない」として無罪を主張するとともに、「子供を引き渡すつもりはない」と訴えている。
「子供連れて実家に」が犯罪に…
厚生労働省の人口動態調査によると、昨年の国際結婚は約3万件。一方、国際離婚も約1万9千件にのぼり、国際結婚が破綻、子供を連れて帰国という選択は特異とはいえない。
しかし、もう片方の親の同意がなかった場合、日本と欧米の家族観の違いが、その後、重大な結果を引き起こすことになる。
日本の法制度は離婚後、どちらか一方が親権を持つ「単独親権」で、子供が幼ければ母親が親権者になることが多い。母親が子供を連れて無断で実家に帰ったとしても、刑事罰に問われることは珍しい。
一方、欧米では離婚しても双方が親権を持ち、子供にかかわり続ける「共同親権」が一般的。勝手に子供を海外に連れ去れば重大な親権妨害とみなされ、容疑者として指名手配されてしまうのだ。
外務省によると、各国政府から、日本人による子供の“連れ去り”が指摘されたケースは約200件。このうち約半数の100件は米国政府からだという。
ハーグ条約加盟は是か非か
こうした事態に歯止めをかけようと、米国などは日本に対し、親権トラブル解決の国際ルールを定めたハーグ条約(正式名称「国際的な子の奪取の民事面に関する条約」)への早期加盟を強く求め続けてきた。
ハーグ条約では、国際結婚が破綻し、一方の親が無断で国外へ連れ去った子供(16歳未満)に関し、連れ去り先の国の裁判所が返還するか否かを判断。その上で、元の居住国で親権争いを決着させる手続きを定めている。1983年に発効、これまでに欧米を中心に約85カ国が加わり、日本も今年5月に加盟の方針を表明した。
外国籍の元配偶者に子供を連れ帰られてしまった日本人の親には国際ルールに沿った解決の道が開けたといえるが、反対意見も根強い。ドメスティックバイオレンス(DV)や虐待から子供とともに逃れてきたケースでも連れ戻される危険があるというのが主な理由だ。
今回、米国で身柄を拘束された女性も、DVの被害を主張していた。女性が日本に帰国する約2週間前、男性が女性に暴力をふるって約2週間のけがを負わせたとして、傷害罪で逮捕されるトラブルがあったという。
男性は不起訴となっており、一連の訴訟でもDVはなかったと訴えている。今年3月の神戸家裁伊丹支部の決定では、DVは認定されていない。
ハーグ条約では、DVや虐待など子供に重大な危険が及ぶ場合は子供の返還を拒否できることになっているが、双方の言い分が食い違う場合、特に海外での事実関係を判断するのは難しいのが実情だ。
返還、面会交流…正念場迎える国内法整備
日本がハーグ条約に加盟した場合、相手国に子供の返還請求を受けてから原則として6週間以内に返還手続きを行わなければならない。また、返還だけでなく面会交流の請求についても、適切な対応が求められる。
こうした手続きには国内法の整備が不可欠で、現在、外務省と法務省が検討している。DVなどを理由にした返還拒否規定をどこまで盛り込めるかに加え、日本でこれまで強制力が弱かった面会交流権をどのように確保するかが焦点となっている。
拒否の理由を広く認めて返還拒否が相次いだり、共同親権の国では当然の権利とされる面会交流が有名無実化すれば、どうなるのか。大阪女学院大学の西井正弘教授(国際法)は、「米国は、ハーグ条約に加盟しながら条約を守らない国を非難している。日本が加盟後、条約を守っていないと判断されれば、政治・経済的な圧力を受ける可能性がある」といい、「国内法の整備や運用に誤りが生じれば、さらなる軋轢(あつれき)を生みかねない」と指摘する。
早稲田大法学学術院の棚村政行教授(家族法)は「国際協力の促進と日本国内の事情を調和させながら、子供の幸せのために必要な社会的支援や法制度の整備を行うことが必要だ。日本と欧米では犯罪の成否や親権制度、法文化に大きな違いがあるため、今回のケースのように日米で極端な結果の相違がでてくる。離婚後の親子関係がどうあるべきなのかという本質的な議論を国内でもっとすべきではないか」と話す。
今回のように激しい親権争いの末に親が海外で拘束され、子供が取り残されるような事態は決して望ましくはない。子供の幸せをどうすれば守れるのか、今回の事件が突きつけた課題は重い。
野田首相:TPP交渉参加、米大統領に表明…国際舞台で初
【ホノルル坂口裕彦】野田佳彦首相は、13日午前(日本時間14日早朝)、米ハワイ・ホノルル市内で開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)について「交渉参加に向けて関係国との協議に入る」と表明した。首相はこれに先立ち、12日昼(日本時間13日朝)、市内のホテルでオバマ米大統領と約55分間会談し、TPP交渉参加方針を国際舞台で初めて表明。大統領は「首相の決断を歓迎する。これからの協議を通じて日米の協力を進めたい」と述べた。
日米首脳会談で、首相はTPP交渉参加方針を決断したことについて「(国内には)慎重論も強かったが、日本を再生し、豊かで安定したアジア太平洋の未来を切り開くため、私自身が判断した」と説明。関係国との協議に際し「大統領の協力を得たい」と要請した。大統領は歓迎の意向を示したうえで、「すべての交渉参加国は、協定の高い水準達成に向け準備する必要がある」と述べ、市場開放に向けた日本の取り組みを促した。
大統領はカーク米通商代表部(USTR)代表に対し、日本の参加について米議会や関連業界との調整など国内手続きを始めるよう指示すると明らかにした。
両首脳の会談は9月の国連総会の際にニューヨークで行われたのに続き2回目。冒頭の約10分間、通訳を介して2人だけで会談した。
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題について、首相は、同県名護市辺野古に代替施設を造るための環境影響評価(アセスメント)の評価書を年内に提出する方針を表明した。大統領は「取り組みを評価する」と述べたが、同時にさらなる移設手続きの進展に期待感を示した。
また首相は、牛海綿状脳症(BSE)を受け、生後20カ月以下としている米国産牛肉の輸入制限緩和に向け、内閣府食品安全委員会に近く諮問する方針を説明。大統領は歓迎の意向を示し、「科学に基づいて解決することが重要だ」と述べた。日本政府は30カ月以下に広げる案を軸に調整している。
国際結婚が破綻した16歳未満の子どもの扱いを定めたハーグ条約について、首相は、来年の通常国会に加盟に向けた条約承認案を提出する準備を進めていると説明し、大統領は評価した。
首相は、12日午後(日本時間13日午前)、TPP交渉参加国であるペルーのウマラ大統領とも25分間会談した。首相がTPP交渉参加に向けて同国を含む関係国と協議入りする方針を伝えたのに対し、大統領は「日本との協議に協力したい」と応じた。
毎日新聞 2011年11月13日 23時45分(最終更新 11月14日 12時48分)
国策・国益と国民
■「常識」を問い直す鏡
「山梨の中の世界」に向き合うと、「常識」を疑うことに行き当たります。
あまり知られていないことですが、「子どもに会えないので何とかして欲しい」とアメリカから日本政府に申し入れがあった日本人女性は120人を超えます。元夫から逃げるために母親が子どもを連れて日本に帰ると、「拉致した」として刑事事件になることもあります。
これが国際的な常識です。日本政府が今年5月に加盟方針を明らかにしたハーグ条約は、国際離婚の親権争奪に関して、一方の親が不法に16歳未満の子を他国に連れ出した場合、子を元の居住国に戻すことができると定めています。
常識が見つけられない場合もあります。甲府市で、中南米から来た日系人の母と中東諸国の父の間に生まれた中学生の在留資格を求める署名活動が進められています。父母はいずれもオーバーステイ。この子どものためには、どんな処遇が適切でしょうか。父母のどちらかの国に送還する? それとも、甲府でずっと不法滞在を続けなければならないのでしょうか。
私のコラムを読んだ多くの人から直接あるいは間接に賛同や反論が寄せられました。反論で一番多かったのが「警察や消防の職員になりたいのなら日本国籍を取ればよい」と「参政権や政治献金は絶対に認められない」というものでした。
日本ではなぜ、外国籍であると職業や政治への参加が制限されなければならないのでしょうか。現在、戦争をしている国の中には、軍隊に入るのに国籍を問わない国があります。参政権についても同様です。
「人はその国籍のある国家の利益を第一に考え、他国に対して干渉しようとする」と「常識」で考えているからです。私自身、時としてそのような考えを持ってしまうことがあります。しかし、立ち止まって考えると、そうではないことが見えてきます。
原発推進はフランスの国策です。だとするとフランス人は皆、原発推進で、反対者はいないのでしょうか。翻ってドイツは反原発です。ドイツ人は全員が反原発なのでしょうか。日本の国策はずっと原発推進でした。とすると日本人である私も原発推進でなければならなかったのでしょうか。
いやいや、そんなことはありません。国策や国益と信じられているものを国民が支持しなければならないというのは、幻想に過ぎません。徴兵制の国であっても良心的兵役忌避者は常に存在し、外国人が志願兵となることもありうるのです。
「山梨の中の世界」を知る。それは世界を鏡として自分を見つめなおし、「常識」とは何かと自らに問い、深く思索することにつながります。
(やまざき・しゅんじ 山梨外国人人権ネットワーク・オアシス事務局長)
ハーグ条約加盟で意見書 米など6カ国が日本に
国際結婚が破綻した夫婦間の子どもの扱いを定めた「ハーグ条約」加盟をめぐる日本政府のパブリックコメント(意見公募)に、米国やカナダなど6カ国の政府が共同で子どもを連れ出した側に有利にならないよう国内法整備を求める意見書を出していたことが8日、分かった。政府関係者が明らかにした。
意見公募で外国政府が見解表明するのは極めて異例で、日本の加盟に対する関心の高さをうかがわせる。
他は英国、フランス、オーストラリア、ニュージーランドの4カ国。法務、外務両省が関連法案の中間案をまとめたのを受け、両省が9月末から1カ月間実施した意見公募に、在京のカナダ大使館が代表して提出した。(共同)
離婚動機ランキング「夫の暴力、浪費」「妻の異性関係、性的不調和」
毎年25万組、2分06秒に1組のペースの離婚。「(離婚を)推奨するわけでも否定するわけでもなく、きちんと向き合います」(有働由美子キャスター)で始まった離婚問題特集は、ある夫婦の実例からのドラマ仕立てだった。
1位は「性格の不一致」―餃子嫌いって言ってるのに
離婚の動機の第1位は男女共に「性格の不一致」だという。この性格の不一致、街行く人に聞けば「20年前から餃子は嫌いと言っているのに、いまだに出してくる」(中年男性)と本人は真剣だろうが、端から見れば他愛もないものだ。
夫側からの妻への離婚動機は「異性関係」「異常性格」「性的不調和」「浪費」(多い順)となる。妻側の動機は「暴力」「異性関係」「浪費」「異常性格」と夫と妻の立場の違いが見てとれる。
今回のドラマのケースは、家事や育児より仕事優先の妻に怒った夫が、息子を連れて家を出てしまったことから始まる。弁護士で離婚問題に詳しい萩谷麻衣子氏は、「こういうケースは増えています。夫が離婚を口にした時は前から実行に移す事を考えている場合が多い。積り積もった不満が一気に爆発するようです」という。
離婚歴2回の麻木久仁子「親権は夫、私は看護権」
離婚調停で揉めるのが「親権」「慰謝料」「財産分与」だ。2回の離婚経験を持つ麻木久仁子(タレント)は、「ウチの場合、親権は(前)夫が取って、私は子供と一緒に居たいので看護権を取りました」と言う。4歳で両親の離婚を体験した金子貴俊(タレント)は「(離婚は)子供に一生残る心の傷。親は冷静になって欲しい」と呼びかけた。
養育費は裁判所が出している算定表がある。それによれば夫が会社員で年収500万円、妻が200万円、子供が満15歳以下の1人なら月々4~6万円、2人なら6~8万円位だという。
「離婚経験者」ということで麻木が妙に張り切ってコメントしていたが、ちょっと気負いすぎで…、まあ…、いいですけどね…。
(磯G)
「ハーグ条約」 大谷美紀子氏、大貫憲介氏
国際結婚が破綻した夫婦の子供について、一方の親の承認がない出国を認めず、子供を元の居住国に戻すことを定めたハーグ条約。日本政府は今年5月に加盟方針を決め、国内法整備に向けた作業を進めているが、日本と欧米の親権制度が違うことなどから慎重論も強い。「国際的ルールの中で解決するしかない」として加盟に賛成する大谷美紀子弁護士と、「子の福祉という観点が抜け落ちている」と反対する大貫憲介弁護士に意見を聞いた。(磨井慎吾)
◇
≪大谷美紀子氏≫
■国際的ルールの中で解決を
--なぜ加盟が必要なのか
「もともと米国やフランスなどでは、片方の親が子供を一方的に連れて帰ることは国内法で禁じられた犯罪にあたる。しかし日本はこれまで、日本国内では犯罪でないのだから返す必要はないという対応を続けてきて、数年前から国際問題化していた。このまま非加盟を続けるのは、子供を連れて帰ってこいと言っているようなもので、何の解決にもならない。今と比べて厳しい形にはなるかもしれないが、早く一定のルールに参加して、その中でどう邦人を守っていくかを考えないといけない」
○非加盟でも守れない
--自国民保護の観点から批判もある
「ハーグ条約に加盟しなければ国際離婚した邦人が守られるというわけではなく、中途半端な状況に置かれ続けるだけだ。今後もこの問題は発生し続ける。国際離婚問題で弁護士が相談を受けたとき、日本はハーグ条約に入っていないから子供を連れて帰ってきなさい、と言うのが果たしてよい解決なのか。国際結婚は相手があるわけで、日本のルールだけでは決まらない。国際結婚が当然持つリスクについて、今まであまりにも軽く見られすぎていた」
--家庭内暴力(DV)など、やむを得ない理由もあるのでは
「たしかに当事者にはDVなど、帰ってくる事情があったのだろう。連れ帰ったことで国際指名手配されて、もう日本国外には出ないという選択も、決めたのが本人ならそれでいい。しかし、連れて来られた子供はどうなのか。たとえば日本人と米国人の間に生まれた子供で、日米二重国籍となっている場合は、米国で教育を受ける道もある。日本に連れ帰ってしまうと、そうした可能性を親の都合で摘み取ることになる」
○日本側の認識甘い
--日本と欧米とで、親権に関して考え方の違いがあるのでは
「日本の法文化は、親権に関する考え方がかなり緩い。日本では片方の親が子供を連れて家から出ていっても、あまり問題視されない場合が多いが、米国のようにその行為をはっきり犯罪とみなす国もあり、内外の認識差が大きい。中には米国の裁判所の命令を無視して逃げ帰った例もあるわけで、米国からすると、日本が犯罪者をかくまっているようにも映る」
--未加盟で解決は無理なのか
「加盟しなくてもいいという人は、対案を出してほしい。この問題で最強硬派の米国はエスカレートする一方で、北朝鮮による拉致問題での非協力や、犯罪者引き渡し手続き適用などの手段に訴える可能性もある。外圧に屈しろと言っているわけではないが、交渉としてみた場合、非加盟のままで妥結点を設定できるのか疑問だ」
◇
≪大貫憲介氏≫
■「子の福祉」の観点置き去り
--条約加盟の何が問題か
「ハーグ条約の根本的な問題は、“子の福祉”を考えていない点だ。一方の親による子供の連れ去りというが、弁護士としての実務的な経験からみると、配偶者による児童虐待や家庭内暴力(DV)を理由に、やむなく国境を越えて逃げてくる事例が多い。返すべき事案とそうでない事案があるのに、ハーグ条約は原則的に子供を元の居住国に返すことを定めているため、そうしたケース・バイ・ケースの審議がなされない」
●「返還ありき」不適切
--具体的にはどんな事例が?
「これは外国の事例だが、虐待を受けた子供をハーグ条約に従って元の国に返還したところ、虐待者である父の家に返すわけにはいかないので、結局、児童保護施設に収容されたケースがあった。子の福祉という観点で、これが望ましい結果だと言えるだろうか。離婚後の親権問題の本質は、どちらが子供を育てることがより子供の幸福に合致しているか、ということのはずなのに、まず返還ありきというのは適切ではない」
--加盟を前にした法律案では、返還拒否を可能にする条文の盛り込みも検討されているが
「返還拒否事由について、今、法律案として出てきているものを見ると、あまりにも厳しすぎる。9月に出た法務省中間案を読むと、過去に暴力を受けたことがあるだけでは不十分で、“返還した場合、子がさらなる暴力等を受ける明らかなおそれがあること”を本人が立証しなければならない。実際には機能しない可能性が高い」
--非加盟なら、“連れ去り”の被害はどうするのか
「ハーグ条約に加盟しなければ日本から連れ去られた子供が返してもらえない、という話は実はウソで、私自身が弁護士として子供を返還してもらった案件が今年だけでも2件ある。また日本にも子供の返還を求める審判申し立てなどの法制度はあるのに、外国人から活用されていないのが問題だ」
●外圧で曲げるな
--条約に加盟しない日本は、国際的に批判を浴びている
「国際的といっても、“連れ去りは正義に反する”という考えが特に強いのは米国で、今回突出して日本に圧力をかけているのも米国だ。だが、日本には日本の社会に沿って形成された法文化というものがある。ハーグ条約加盟で、必然的に面会交流も欧米流になっていくだろう。日本では離婚時に父母のどちらが親権を持つかを決めるが、欧米では離婚後も共同親権だ。つまり、新しい家庭を持った後でも、別れた夫もしくは妻が子供と頻繁に会って、子育てに干渉してくるわけだが、それに日本人が耐えられるのか。慎重に考えなくてはならない問題だ」
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【プロフィル】大谷美紀子
おおたに・みきこ 昭和39年、大阪府生まれ。46歳。東大大学院法学政治学研究科修士課程専修コース(国際法)修了。専門は国際人権法で、法務省の法制審議会ハーグ条約(子の返還手続関係)部会委員も務める。共著に「国際人権法実践ハンドブック」など。虎ノ門法律経済事務所所属。
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【プロフィル】大貫憲介
おおぬき・けんすけ 昭和34年、東京都生まれ。52歳。上智大法学部卒業。第二東京弁護士会所属。平成4年、東京で「さつき法律事務所」を開業。主に外国人を当事者とする法律問題を扱う。著書に「国際結婚マニュアルQ&A」「アフガニスタンから来たモハメッド君のおはなし」など。
米国人と離婚訴訟中の日本人女性、「子供連れ去り」で逮捕 懲役20年の可能性も
ニカラグア出身の男性と米国で離婚訴訟中に子供(9)を連れて帰国した兵庫県在住の日本人女性が再渡米し、子供を連れ去ったとして米司法当局に親権妨害容疑などで逮捕、起訴されていたことが27日、代理人弁護士の話で分かった。女性は「親権妨害にはあたらない」として無罪を主張し、来月に判決が言い渡される予定。有罪が確定すれば最高で懲役20年が科される可能性があるという。
外務省によると、子供を連れて帰国した日本人女性が指名手配された国に再入国するのは異例で、身柄拘束は過去に例がないという。
代理人弁護士らによると、女性は2008(平成20)年、米ウィスコンシン州で男性と離婚訴訟中に子供を連れて帰国。親権妨害や、訴訟中に国外に出たことに対する法廷侮辱などの容疑で指名手配されていた。今年4月、ハワイを訪れ、身柄を拘束された。ウィスコンシン州郡裁判所に起訴され、来月初めにも判決が出るという。
男性は、米国で単独親権を取得。一方、女性は子供の親権の確認を求める家事審判を神戸家裁伊丹支部に提起。今年3月、同支部は母親の親権を認定する一方、「父親の生活や文化にも触れた方が子供の可能性を広げる」として、子供が米国で男性と面会するよう義務づけた。双方が不服として大阪高裁に抗告している。
国際離婚:日本人女性が娘連れ出し 親権妨害容疑、米で逮捕
◇国際離婚トラブル、「ハーグ」加盟急務
米国に住むニカラグア国籍の元夫(39)との国際結婚で生まれた女児(9)を無断で米国から日本に連れ出したとして、日本人女性(43)が親権妨害容疑で米国ハワイ州保安局に逮捕されていたことが分かった。女性と元夫は親権を巡って日本で係争中で、外務省によると、国際結婚した日本人が親権の問題で係争中に海外で逮捕されるのは異例。専門家は、日本がハーグ条約に加盟すれば民事的な子供の返還手続きが優先されるため、逮捕まで発展する事案は少なくなるとみている。【岡奈津希】
法曹関係者と外務省によると、女性は02年2月に結婚して女児を出産。米国ウィスコンシン州で暮らしていたが、08年2月に子供を連れて日本に帰国した。09年6月に米国で離婚が成立し、元夫に親権が認められた。一方、関西に住んでいた女性は、親権の変更を求めて神戸家裁伊丹支部に家事審判を申し立てた。同支部は今年3月、女性の親権を認め、元夫と子供に米国で年間約30日間面会することを認める審判を下した。双方が即時抗告したため現在、大阪高裁で審理が続いている。
女性は今年4月7日(現地時間)、自分の永住権を更新しようと、米国ハワイ州ホノルル市に日本から空路で入国。しかし、父親に無断で子供を日本に連れ出し親権を妨害したとして、ウィスコンシン州から親権妨害容疑で逮捕状が出ており、ハワイ州保安局に逮捕された。
女性は現在も身柄を拘束されたままで、ウィスコンシン州で裁判が続いている。検察側は、執行猶予判決を条件に、日本で女性の両親と暮らす子供を米国に返すよう司法取引を提示したが、女性は拒絶。無罪を主張しているという。
子供は日本に住む母方の祖父母の下で暮らしており、両親ともに会えない日々が半年以上も続いている。
元夫は「子供を米国に返してくれれば、拘束は望まない。子供が両親と会える環境にしたい」と訴えているという。一方、女性の代理人弁護士は「(女性は)子供を一旦、米国に返せば帰ってこられないのではないかと心配している」と話している。
厚生労働省によると92年以降、国際結婚は06年の約4万4700件をピークに減少に転じ、10年は約3万200件。一方、国際離婚は増加傾向にあり、09年は最多の約1万9400件に上った。国際離婚には法律の違い、子供の国籍や親権、出国などで日本とは違った問題が伴う。
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■ことば
◇ハーグ条約
国際結婚が破綻した夫婦間の子供(16歳未満)の扱いについて、国際協力のルールを定めた「国際的な子の奪取の民事面に関する条約」の通称。子供を連れ出された親が返還を申し立てた場合、相手方の国の政府は原則として元の国に返す協力をするよう規定している。日本政府は今年5月、加盟する方針を閣議了解した。返還手続きなどの整備を検討している法相の諮問機関「法制審議会」は、手続きは家庭裁判所が担当し、非公開の審理で3審制とする中間まとめを9月30日に発表。来年2月に最終答申する見通し。
長女連れ帰り、国際離婚の日本女性が米で拘束
米国でニカラグア出身の男性(39)と離婚した兵庫県の女性(43)が、離婚訴訟中に長女(9)を日本に連れ帰ったとして渡米時に身柄を拘束され、男性の親権を妨害した罪に問われて刑事裁判を受ける異例の事態となっていることがわかった。
米国の裁判所は離婚訴訟で男性に長女の親権があるとしたが、日本の裁判所は条件付きで女性を親権者と認定。日米の裁判所で判断が相反する中、日本がハーグ条約に加わる前に起きた国際間の親権争いがどう展開するか注目される。
日本の裁判での双方の代理人弁護士らによると、男性と女性は2002年に結婚したが、08年2月、男性が米国の裁判所に離婚を申し立て、女性は直後に長女を連れて日本に帰国した。米国の裁判所は09年6月、離婚を認め、長女の親権者を男性とした。
一方、女性は同月、親権者を自分とするよう神戸家裁伊丹支部に申し立て。同支部は今年3月、「長女を男性と米国で1年に30日間面会させる」などの条件を付け、女性を親権者と認めた。双方が抗告し、大阪高裁で審理が続いている。
こうした中、女性は翌4月、永住権の更新手続きのため渡米した際、空港で身柄を拘束された。米国州法の親権妨害罪で起訴されて9月から刑事裁判が始まり、女性は「帰国時点では離婚訴訟を起こされていることを知らなかった」と無罪を主張している。有罪の場合、最長で12年6か月間、刑務所に収容される可能性があるという。
5つの対米公約表明へ TPP、武器輸出三原則… 来月の日米首脳会談
野田佳彦首相は、11月のオバマ米大統領との首脳会談で、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉参加や武器輸出三原則緩和など5つを「対米公約」として早急に実現に移す考えを表明する方針を固めた。複数の政府高官が明らかにした。日米最大の懸案となっている米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題に進展の兆しがない中、米側がかねて要求してきた案件をすべてのまざるを得ない状況に追い込まれた。
首相が表明する「対米公約」は、(1)TPP交渉への参加(2)武器輸出三原則の緩和(3)南スーダンの国連平和維持活動(PKO)への陸上自衛隊派遣(4)牛海綿状脳症(BSE)問題を機に実施された米国産牛肉輸入規制の緩和(5)国際結婚の子の親権に関するハーグ条約加盟-の5つ。
首相は、11月12、13両日にハワイで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)に際し行われるオバマ大統領との会談で、5つの案件を早急に実現する考えを表明した上で、安全保障・経済の両面で米国との関係強化を打ち出す。
オバマ大統領は9月21日に米ニューヨークでの初の首脳会談で、普天間移設について「結果を求める時期が近づいている」と不快感を表明した上で、TPP、牛肉輸入規制、ハーグ条約加盟の3案件を挙げ「進展を期待する」と迫った。
普天間問題では、名護市辺野古に関する環境影響評価(アセスメント)の評価書提出以上の進展が望めないだけに、首相は、TPPなど3案件に、かねて米側が求めてきた武器輸出三原則緩和と南スーダンPKOを「おまけ」に加えることで、オバマ大統領に理解を求める考えだという。
加えて、オバマ大統領は来年11月の大統領選を控え、高失業率や反格差社会デモにあえいでおり、協調姿勢を打ち出す好機だと判断した。米側が韓国を「太平洋安保の礎」と位置づけ、自由貿易協定(FTA)を推進するなど対韓関係強化に傾斜する動きに歯止めをかける狙いもある。
対米公約に武器輸出三原則緩和を加えた意義は大きい。戦闘機開発などで日本の技術への米側の期待は高く、北大西洋条約機構(NATO)加盟国などとの共同開発も可能となる。
一方、TPP交渉参加をめぐり民主党内は賛否が二分しており、首相が対米公約に掲げれば混乱に拍車をかける可能性がある。ハーグ条約加盟も、ドメスティック・バイオレンス(DV)からの母子保護などの観点から反対が根強い。
愛情、子どもが感じる時間 別居親子の「面会交流」促進
両親の離婚後などに、子どもが別居親と会って過ごす「面会交流」。実際に行われているのは二割程度とみられるが、今年五月に民法が改正され、今後は離婚の際に取り決めをすることが決まった。支援者らに交流の意味を聞いた。 (竹上順子)
一緒に積み木を重ねると、男の子(2つ)は父親(39)の顔を見てニッコリ笑った。一カ月ぶりの再会。父親は「甘えてくれるのがうれしい。お父さんだと認識しているんですね」と顔をほころばせた。
二〇〇九年に離婚し、長男は母親(33)と暮らす。面会交流の約束はあったが、会えなくなったため父親側から働きかけ、調停に。第三者機関がかかわることを条件に今年六月、四カ月ぶりに面会交流が再開された。
会うのは月一回、二時間ほどで、仲介支援をする「NPOびじっと」(横浜市)の男性スタッフが付き添う。日程などの連絡はびじっとが行い、当日はスタッフが母親から長男を預かり、遊び場で待つ父親に会わせる。
ほぼ毎回、同じスタッフが付き添い、父子が遊ぶ間は求めに応じて写真を撮ったり、離れて見守ったり。母親は「間に入ってもらえるのでやりとりがスムーズ。今後も利用したい」と信頼を寄せる。
びじっとは〇七年に事業を開始。付き添い(三時間一万五千七百五十円)や子どもの受け渡し(六千三百円)など、月に十二件ほどの仲介を行う。中には隔週一泊二日や、夏休みに一週間など長期の交流をする利用者も。スタッフは見守りのほか、子どもとの接し方が分からない別居親に助言したり、感情的になりがちな親をサポートしたりもする。
「面会交流は、子どもが『愛されている』と感じるために行うもの。元夫婦の間に葛藤があっても大人として対応してもらう」と古市理奈理事長は強調する。利用前には必ず父母それぞれと面談して、目的や意義、約束事などを話している。
「面会交流の継続は子どもの自己肯定感を育て、親を知る権利を保障する」と、家庭問題情報センター(FPIC)東京ファミリー相談室(東京・池袋)の山口恵美子常務理事は話す。虐待などがあれば面会交流は認められないが、中には同居親への配慮から別居親と会いたがらない子もおり、対応には注意が必要という。
「別居親がたとえ良い親でなくても、子ども自身に評価させないと思春期の自分探しが難しくなることも。将来まで考え、交流を続けるかどうかは、少し会わせてから子どもに判断させて」
年間離婚件数は約二十五万件で、約六割に未成年の子どもがいる。乳幼児を抱えての離婚も増えており「愛着形成のためにも面会交流の重要性は増しているが、家庭裁判所などの理解は遅れている」と、日米の面会交流や離婚後の子どもの心理に詳しい棚瀬一代・神戸親和女子大教授(臨床心理学)は指摘する。
家裁では「面会交流のしおり」やDVDを作り、離婚調停時などに紹介しているが、棚瀬教授は「もっと積極的な親の教育プログラムが必要」と話す。調停や審判で決まる面会交流の頻度は月一回、数時間程度が多いが、「親子の絆を維持するには不十分」という。
改正法は来年六月までに施行されるが、棚瀬教授は「取り決めをしやすくするため、各地の家裁にマニュアルや相談窓口を置いてほしい」。山口常務理事は「離婚の九割が裁判所が関わらない協議離婚。離婚届に取り決めの記入欄を設けるなど、法律の空文化を防ぐべきだ」と提案する。
「離婚後も息子に会いたい」米国人男性、日本縦断し訴え
離婚によってわが子と自由に会えなくなった名古屋在住の米国人男性が、自転車で日本縦断に挑戦している。離婚後も両親が子どもの親権を持つ「共同親権」を取り入れるよう、沿道の知事や最高裁、首相官邸などに訴える予定で、6日に愛知県庁と名古屋市役所を訪れた。
米イリノイ州出身のケビン・ブラウンさん(45)は、名古屋市内で英会話講師をしている。米国留学中の日本人女性と知り合い、2002年に日本で結婚。05年に長男が生まれた。しかし、子育ての方針の違いなどから、妻が息子を連れて実家のある熊本県に別居。熊本家裁は今年9月、息子の親権を元妻のものとする決定をした。
小学1年生になった息子にケビンさんが会えるのは6週間に1回、5時間だけ。「息子の学校で英語を教えるボランティアをして、一緒にサッカーやバスケットボールもしたい。でもどこに住み、どの学校に通っているかもわからない」という。
日本の民法では、離婚すると子どもの親権が一方の親に決められる。政府は、国際結婚が破局した時の子どもの扱いを定める「ハーグ条約」に加盟する準備を進めており、加盟国は離婚後も両親が親権を持つ「共同親権」が一般的だ。
ケビンさんは「『子どもの権利条約』では、子どもはどちらの親とも会う権利がある。でも日本の単独親権制度や家裁の運用で、深い悲しみにくれる親子がいることを知ってほしい」という。2カ月の休暇を取り、9月13日に熊本を出発。離婚後に子どもと会えなくなった仲間の家に泊めてもらいながら、ペダルをこぐ。今後岡崎市や豊橋市を通り、15日に東京へ到着する予定だ。(山吉健太郎)
ハーグ条約加盟、小手先の法案では対応不可能ではないのか?
国際結婚が破綻した際に、一方の親が子供を出身国に連れ去るケースに対して、子供を両親が同居していた以前の国に戻すことを原則とするハーグ条約に、日本は2011年の5月にようやく加盟する方針を打ち出しました。アメリカの国務省の主張によれば日本人母が離婚裁判を省略し、あるいは判決に反する形で子供を日本に連れ去っている問題については145件という事例があるそうで、主としてアメリカとカナダなどが外交上たいへんに強硬な抗議を続けているのです。
日本ではあまり報道されていませんが、米政界では「日本は子供の連れ去りの容認という拉致をしているのだから北朝鮮の拉致問題で協力する必要はない」という言い方が半ば当たり前のように言われているのです。今回の条約加盟方針はその点で外交上は不可避であったとも言えます。
いずれにしても、今回の加盟方針決定を受けて、その関連法を整備することになり作業が続けられています。その中で最も問題なのが、「どんなケースでは子供を戻すことを断れるのか?」という点です。先週発表された法制審議会の議事録によれば、現在この点に関しては、
(1)子の連れ去りなどから1年を経過しており、子が新しい環境になじんだ場合。
(2)子の連れ去りなどの時点で、外国側の親が実際には親権を行使していなかった場合。
(3)外国側の親の同意を得て子の連れ去りなどが行われた場合。
(4)子供に対するDVの危険がある場合。
(5)日本側の親に対する外国人親のDVや暴言の可能性があり、結果的に子供に良くない影響が予想される場合。
(6)日本側の親が、相手国から連れ去りの事実により逮捕状が出ているなどの理由で、親子を相手国に移した場合に親権や面会権が行使できない場合。
(7)子どもが明確に意思表明ができ、しかも外国に行きたくないと表明した場合。
といったケースに関して検討がされているようです。(法制審の原文は少し違いますが、整理するとこういうことです)
私はこうした小手先の法案では、実務的に回らないばかりか、重大な問題を引きずることになると思います。まずこの7点に関してですが、(2)(3)(4)(7)は筋が通る点ですし、国際的にも通用するでしょう。ですが、(1)に関しては例えばアメリカやカナダの「父親の子への激しい愛情」は1年で諦めるはずは絶対になく、こんな理由で拒絶していたら結局は更に激しい外交圧力が来るだけです。
(5)も同様です。親同士の暴言はあくまで大人の男女の愛憎劇であって、子供にそれを見せた事自体が親権喪失の理由になるなどという考えは通用しません。(6)に至っては、米国の法規に違反して逮捕状が出ている犯罪者を、犯罪者であるがゆえにその国が保護する、まして子供を奪ったままにするというのは許せないということになると思います。
重大な問題というのは、どちらにしても相手からの強い要求があって、ここで検討されているような条件に引っかからない場合は、日本の裁判所が「子供を外国へ送る」という点です。二重国籍かどうかはともかく、日本国籍という点では明確に日本人である子供を、日本以外の外国に日本の裁判所が送るということは重大な国家主権の放棄だと思います。国家の成立の要件として国土を有し、その国土を実効あるものとして支配することを通じてその国の国民の生命財産を保護する義務を負った国家が、他でもない自国民を外国の支配へと譲り渡すからです。
どうして子供を外国に送らないといけないのでしょうか? それは、両親が争っている場合に、離婚裁判を日本で行い、親権について日本で決定することができないからです。どうしてできないのかというと、日本の離婚法制では「共同親権制度がない」「親権のない方の親の子への面会権が強制的に保障されない」という法制上の問題があり、更に「子どもは母親が育てるという価値観が強い」「親権のない親が再婚した場合などは面会権を放棄するのが常識」といった社会慣習上の問題があるからです。
こうした法制上の問題があるために、アメリカ人の父親は絶対に日本で離婚裁判には応じません。と言いますか、アメリカの外交当局が堂々と「日本での離婚裁判は話にならない」と合衆国国民に対して宣言しているのです。
とにかく法制審の小手先の法案では無理です。実務的にも回らず、外交上の批判を和らげることもできず、しかも日本国民を売り渡すという国家主権の放棄になるのです。そもそも、ちょっと想像力を巡らせば、実際にこうした法律を整備して条約に加盟したとしても、泣き叫ぶ母親から日本国の裁判所が日本国民である子供を取り上げて外国に送致するなどということが「できるはずもない」ではありませんか。
日本の民法を改正し、離婚法制を変更して「共同親権」「面会権の強制」をしっかり整備する、ついでに養育費支払いに関する強制取り立てもするようにすべきです。その上で、「子供に会いたければ日本に来なさい」として、離婚裁判の席上で、DVや暴言をやらかした元夫を徹底的に日本の法律で懲らしめるしかないと思います。そうなれば、日本の裁判所が日本国民を母親から取り上げて外国に引き渡すなどというバカなことはしなくて済みます。
もしかしたら外務省も法務省も、ここまで述べたことについては「そんなことは百も承知」なのかもしれません。法律と条約を整備することで将来のトラブルを抑止するのが本意で、過去の異常な事例、特に逮捕状が出ているようなケースに関しては、子供の判断力がつく年令になるまで国が丸ごと「匿う」覚悟を決めているのかもしれません。法案の論点(6)にはそんな気配もあります。ですが、そんなことでごまかせる相手ではありません。父親の子供への愛情、その執念を甘く見てはいけないと思います。
子の返還「暴力あれば拒否」=ハーグ条約国内法で中間案
法務、外務両省は30日、国際結婚の破綻に伴う子の親権争いの解決ルールを定めたハーグ条約の加盟に向け、国内法整備に関する中間案をまとめた。日本人の親が子を連れ帰り、外国人の親が子の返還を請求するケースへの対応について、子や日本人親への暴力があった場合には返還を拒否できることを明記した。両省は10月末まで中間案に対する意見を公募した上、来年の通常国会に法案を提出する方針だ。
ハーグ条約は「子に身体的、精神的な害を及ぼし、耐え難い状況に置く重大な危険」がある場合に返還を拒否できると規定。中間案では、家庭内暴力を理由に帰国した親子を保護しやすくするため、具体的な表現で拒否できるケースを定めた。子に対する直接の暴力がなくても、配偶者間の暴力は「子に著しい心的外傷を与える」として、拒否理由に含めた。
「元居住国で子を監護をすることが不可能もしくは困難」な場合にも、返還を拒否できることとした。子を連れ帰った日本人親が外国で誘拐罪などで訴追される恐れがあることを念頭に置いた対応だ。
子の返還は家庭裁判所が判断し、不服のある場合には高裁や最高裁への上訴も認める。審理は原則非公開で、裁判所には調査権限を持たせる。審理に当たっては「子の意思を考慮しなければならない」とした。
[時事通信社]
ハーグ条約、法制化に注文=カナダが意見書提出要求―「子の返還」骨抜き懸念
国際結婚が破綻した場合の親権争いの解決ルールを定めたハーグ条約をめぐり、条約加盟国のカナダが、関連法案の策定作業を進めている法制審議会(法相の諮問機関)に意見書を提出したいと日本政府に要求していることが29日、分かった。「欧米各国には日本の法律次第では条約が骨抜きにされかねないとの懸念がある」(外務省関係者)と指摘される。ただ、日本の法案策定に当たって他国が異例の注文を付ける形となり、国内で反発を呼ぶ可能性もある。
同条約は結婚が破綻して一方の親が子を国外に連れ去った場合、子をいったん元の居住国に戻して親権争いを決着させる手続きを定めている。子を無断で連れ帰る日本人親の増加に伴い、欧米で日本への加盟要求が強まり、政府は5月に加盟の方針を閣議了解した。
ただ、国内では「加盟すれば家庭内暴力から逃れて帰国した親子を危険にさらす」との意見も強く、政府は(1)家庭内暴力があった(2)親が刑事訴追される恐れがある―など、子の返還を拒否できる事例も閣議了解に幅広く列挙した。これに対し、加盟国は「条約の原則を損なう」(キャンベル米国務次官補)と反発。カナダの意見書も、政府内では「欧米加盟国の声を代表したもの」と見る向きがある。
[時事通信社]
越米外相が会談、両国関係の強化策を協議
国連総会出席のため米ニューヨークに滞在中のファム・ビン・ミン外相は26日、ヒラリー・クリントン米国務長官と会談し、越米両国のパートナーシップの強化策について協議した。27日付ザンチー紙(電子版)が報じた。
両外相はアジア太平洋地域の構造変動について意見を交換したほか、科学と教育分野での協力強化策について話し合った。ミン外相はクリントン長官に対し、枯葉剤(エージェント・オレンジ)の浄化とHIV/AIDS問題について米国の継続的な人道的援助を要請した。
クリントン長官は、米ゼネラル・エレクトリック社(GE)がベトナムでのエネルギー供給案件の入札に参加できるよう配慮を求めた。同長官は、ベトナムの養子縁組手続きの改正とハーグ条約(国際的な子の奪取の民事面に関する条約)への参加に謝意を表した。また、米国が主導している大量破壊兵器拡散防止構想(PSI)へのベトナムの参加を促した。
日米首脳会談 同盟深化へ「結果」を出す時だ(9月23日付・読売社説)
国家の首脳間の信頼関係は、双方が努力を重ね、具体的成果を上げることで築かれる。野田首相はそれを実践すべきだ。
野田首相が訪米し、オバマ米大統領と会談した。
大統領は「日本は重要な同盟国で、幅広く協力していくパートナーだ」と語った。首相は、米軍の震災支援に触れ、「日米同盟は日本外交の基軸だという信念が揺るぎないものになった」と応じた。
両首脳が日米同盟を深化させることで一致したことは、まずは無難な初顔合わせと言えよう。
一方で、大統領が日本に多くの具体的要求をした事実を、首相は真剣に受け止める必要がある。
大統領は、米軍普天間飛行場の移設問題について「結果を見いだすべき時期に近づいている」と述べ、進展に強い期待を示した。首相は「沖縄の理解を得るべく全力を尽くしたい」と答えた。
米側には、鳩山元首相と菅前首相が日米同盟の重要性を唱えるばかりで、具体的な課題を先送りし、行動が伴わなかったことへの不信があるのだろう。
普天間飛行場の辺野古移設が実現しなければ、危険な現状が固定化するし、在沖縄海兵隊のグアム移転にも悪影響が出る。政府は、移設の前進へ沖縄県との協議を加速させなければならない。
大統領は、日本が米国産牛肉の輸入を制限している問題の進展を迫った。国際結婚破綻後の子どもの親権をめぐるハーグ条約に関しても、日本が条約加盟に向けて国内法整備を急ぐよう求めた。
野田首相は、牛肉問題で「双方が受け入れ可能な解決」を目指す考えを示すとともに、ハーグ条約の加盟準備状況を説明し、理解を求めた。同盟を深化させるには、こうした長年の懸案を前に動かす努力も欠かせない。
首相は、環太平洋経済連携協定(TPP)参加問題について「しっかり議論を積み重ね、できるだけ早い時期に結論を出したい」と述べるにとどまった。
米国など9か国は、11月中旬のアジア太平洋経済協力会議(APEC)でのTPP大枠合意を目指している。首相は、11月が日本参加決断の期限と考え、国内調整を主導しなければなるまい。
北朝鮮問題について、日米両首脳は日米韓の緊密な連携を維持することで合意した。日韓首脳会談でも同様の方針を確認した。
北朝鮮から非核化への具体的な行動を引き出すには、日米韓が中国とも協調し、北朝鮮への働きかけを強めることが大切だ。(2011年9月23日01時11分 読売新聞)
親権で悩む父と長男が寝室で死亡…無理心中か
22日午前7時10分頃、千葉県銚子市本城町の民家で、この家に住む会社員伊藤大悟さん(29)と長男の瑞起ちゃん(3)が、2階寝室でロープに首をかけて死んでいるのを、同居する伊藤さんの母親が見つけた。
銚子署は、無理心中を図った可能性があるとみて調べている。同署幹部によると、伊藤さんは妻と別居中だったといい、子どもの親権について悩んでいたという。(2011年9月22日11時47分 読売新聞)
議会から圧力、「結果」要求=日本の遅い対応にいら立ち-日米首脳会談・米大統領
【ニューヨーク時事】オバマ米大統領は21日の日米首脳会談で、懸案の米軍普天間飛行場移設や環太平洋連携協定(TPP)参加、米国産牛肉の輸入制限緩和、国際離婚に伴う子の親権に関するハーグ条約加盟を取り上げ、野田佳彦首相に「結果」を出すよう迫った。いずれも議会サイドから圧力を受けているテーマ。相次ぐ政権交代で歩みの遅い日本側にいら立ちを示した格好だ。
「結果が必要だ」。会談冒頭の写真撮影が終わると直ちに本題に入った大統領は普天間問題について明確にこう要求。牛肉問題でも「進展を求めたい」と言い切った。
東日本大震災に関し「いかなる支援もする」と語り掛け、和やかな雰囲気だった会談冒頭と打って変わった口調に、同席した米政府高官も「驚いた」と振り返った。
普天間移設をめぐり、米上院は「目に見える進展」がないことを理由の一つに、セットとなっている在沖縄海兵隊グアム移転費を全額却下。政権サイドには計画頓挫の危機感が広がる。
ハーグ条約に関しては、日本が加盟してもさかのぼって適用されない既存の子供連れ去り事案の解決を求める声が議会に強く、身柄引き渡し要求など強硬手段まで取り沙汰される。これまでは主にクリントン国務長官が日本側に善処を求めてきたが、今回、初めて大統領が提起した。
首脳会談は、大統領が先に議題全般にわたり自らの主張を展開、その後に首相の回答を聞く形を取った。この日、大統領はイスラエルのネタニヤフ首相、パレスチナのアッバス自治政府議長と個別に会談。中東問題に頭を悩ます中、これ以上の火種はごめんだと言わんばかりだった。(2011/09/22-08:01)
子連れ去り問題で関係悪化も=日本の「認識不足」に懸念-米国務次官補が単独会見
【ワシントン時事】キャンベル米国務次官補(東アジア・太平洋担当)は4日までに時事通信と単独会見し、国際結婚の破綻に絡む子の連れ去り問題について「日米関係の主要課題になっている」と表明、「日本で問題が広く認識されていない」と懸念を示すとともに、早期に進展がなければ、両国関係悪化につながる恐れがあると警告した。
米政府は、日本人の親が米国籍を持つ子を配偶者に無断で日本に連れ帰るケースが相次いでいることを重大視。事件解決の手続きを定めたハーグ条約への早期加盟を迫ってきた。日本政府は5月に条約加盟の方針を決めたが、これまでのケースへの対応では進展がない。
同次官補は、バイデン副大統領が8月の訪日時に菅直人首相(当時)との会談で、事態の緊急性を指摘したことを明らかにした上で、野田新政権とも「最も高いレベルで協議を行う」と述べ、首脳級で日本に対応を求めていく方針を示した。
また、米政府が北朝鮮拉致問題で日本を支持してきたことに触れ、「状況は非常に異なるが、最愛の人が家族から引き離された点は共通する」との見方を示し、「人間的視点」で責任ある検討を行うよう訴えた。
さらに「強固な日米同盟が両国にとって最善の利益」とした上で、米議会内で対日圧力強化の動きが出ていると警告。これまでのケースへの対応で進展がなければ「他の法的手段を検討する用意がある」と強硬措置も辞さない構えを示した。
日本国内ではハーグ条約に加盟した場合、配偶者暴力(DV)を逃れて帰国した女性が、子供を連れて元夫の国に戻らざるを得なくなることから、加盟には依然反対意見が根強い。このため条約批准に向けて整備中の国内法では、子の返還拒否事由にDVを明記することにしている。(2011/09/04-18:29)
米国務次官補の発言要旨
【ワシントン時事】キャンベル米国務次官補の会見での発言要旨は次の通り。
日本のハーグ条約批准の方針表明は喜ばしいが、条約の原則を損なうような国内法は望ましくない。条約加盟だけでなくこれまでの事例の解決に向けた日米協力が重要だ。中には何年も子供との連絡を絶たれている痛ましい例もあり、家族の苦悩は筆舌に尽くし難い。
米国はこの問題を良き同盟国として処理しようと努めてきた。クリントン国務長官は外相会談のたびに問題を提起し、バイデン副大統領も訪日時の菅直人首相(当時)との会談で、親たちの苦悩に対処することが急務だと指摘した。
日本では問題が広く認識されておらず、啓発努力が必要だ。これは日本国内の離別家族にも関係する。(離婚後の親権は通常母親が持つ慣習があり)重要な法律問題をあいまいにしがちな文化的規範が存在する。条約加盟に際して注意深い検討が求められる。
人間的視点で見てほしい。米国は北朝鮮拉致問題を理解してほしいとの訴えに応じた。状況は非常に異なるが、最愛の人が家族から引き離され、面会や連絡が不可能になる点では共通する。東日本大震災や拉致問題など日本の友人に深刻な問題が起きたとき、米国は格段の支援に努めた。
日本政府にこれまでの事例への責任ある検討を求める。問題が長期化すれば、日本が米国人の子の福祉に関わる重要課題に対処していないと認識される恐れは高まる。
日本の政府や国会には、条約加盟や事件対応に反対するグループがあるが、大半は誤解や知識不足に基づく。配偶者暴力(DV)の主張は大抵、根拠なく使われている。子を失った上に虐待者扱いされるのは非常に痛ましい。
強固な日米同盟が両国にとって最善の利益であり、両国を分断する問題は望まない。米議会で公聴会が開かれたり、日米関係を損ないかねない請願や法案が出されたりしているのは警告のサインだ。行動すべき時が来ている。
進展がなければ、米政府は他の法的手段を検討する用意がある。日本の新政権と近くハイレベルで協議を行うが、この問題も俎上(そじょう)に上る。国務長官と副大統領が問題提起したことが事の重大性を示しており、その重大性は高まる一方だ。この問題は日米関係の主要課題になっている。(2011/09/04-18:04)
日米、埋まらぬ溝=制度と価値観の違い背景に-子連れ去り問題
【ワシントン時事】米政府が国際結婚の破綻に伴う子の連れ去り問題で強硬姿勢を鮮明にしたのは、双方の問題意識の隔たりが極めて大きく、このままでは同盟関係の障害になりかねないとの危機感があるためだ。隔たりの背景には、日米の親子関係をめぐる制度や価値観の違いがある。
問題になっているのは主に、米国人の夫と別れ、無断で子を日本に連れ帰る日本人女性のケース。米国では、離婚時に子の養育をめぐる義務や権利を裁判で細かく取り決める。両親との交流を保つのが子の利益という意識が強く、別居する親にも面接交渉権が保障される。
女性側が子連れ帰国を望んでも語学の壁や経済力の問題がある場合、単独親権を得た上での帰国は極めて難しく、「実力行使」に出る女性が後を絶たない。米国務省が把握している日本への子の連れ去り事例は計123件173人に上る。
離婚後は母親に単独親権が与えられる例が圧倒的に多い日本では女性の行為を問題視する空気は薄いが、米国では実子誘拐に当たる。連邦捜査局(FBI)に指名手配された日本人女性もいる。
配偶者暴力(DV)を逃れて帰国したとされる女性の存在も、日本のハーグ条約加盟慎重論の根拠になってきた。加盟後は不法に連れ去られた子をいったん元の居住国に戻すことが義務付けられるため、子に付き添う被害者の女性を保護できないという懸念がある。
一方、米国人の親は、日本に子を連れ去られればなすすべがない。「民事不介入」の原則もあって既存事件への対応に及び腰な日本側の姿勢は、一部のDV事例を口実にした「拉致支援」と映る。
日本政府は批准に向けて整備中の国内法に子の返還拒否事由としてDVを明記する方針。米側は返還拒否が乱発されたり条約適用対象外の既存事件が置き去りにされたりすることを警戒する。条約加盟という形式が整っても、実態が変わらなければ、双方の摩擦は続くことになる。(2011/09/04-17:23)
【主張】日米首脳会談 首相は総力挙げ結果出せ
野田佳彦首相がオバマ米大統領と初めて対面した日米首脳会談は、米軍普天間飛行場移設を筆頭に、大統領が「早く宿題を片付けよ」と言わんばかりに日米の懸案解決を次々と突きつける異例の展開となった。
同盟の空洞化に加え、内政・外交でかつてない停滞にさまよう日本に対し、同盟国の米国が強い焦燥といらだちを覚えていることの証左といえる。とりわけ環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)や普天間問題は、米国に指摘される以前に日本の安全と繁栄に直結する課題なのに放置してきた。
首相は「日米が基軸」といった常套(じょうとう)句を繰り返すだけでなく、速やかに結果を出すべきだ。
オバマ氏は普天間問題に「結果を求める時期だ」と指摘したのに続き、米国産牛肉の輸入制限緩和や国際結婚に伴う子の親権に関するハーグ条約加盟問題でも「進展を求めたい」「結果が必要だ」などと目に見える成果を促した。
会談時間が35分間だったにせよ、冒頭で「東日本大震災の復興支援を惜しまない」と語りかけた雰囲気から一変した大統領の実務的な口ぶりに、同席の米高官らも驚いたという。
これに対し、野田首相は日米合意に基づく普天間移設を推進し、TPP問題でも「早期に結論を出す」と答えたが、いずれも時期を明示しなかった。説得力があるとはいえない。米国は11月にハワイで開くアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議でTPPの大枠を固めるとされ、2カ月を切っていることを自覚すべきだ。
オバマ氏は「日米関係は大切で同盟を21世紀にふさわしいものに近代化したい」とも述べた。背景には、中国海軍の海洋進出などがあり、普天間移設を軸とする在日米軍再編こそが同盟近代化のカギを握る。首相は本紙が提案した安保条約再改定案も含めて、日米がともに守る同盟近代化の道を真剣に検討してもらいたい。
首相は、李明博韓国大統領と初の日韓首脳会談にも臨んだ。北朝鮮の核・ミサイル問題などで日米韓の緊密な連携を維持することで一致したことは評価したい。
しかし、「従軍慰安婦」の碑建設や竹島問題などに両首脳ともに触れなかったのは残念だ。緊密な協調が必要な国だからこそ、首脳同士の場で言うべきことを率直に語る姿勢がほしかった。
Government to close child ‘abduction’ loophole
A LOOPHOLE that has allowed separated parents to in effect abduct children overseas is set to be closed and for the first time the Family Court will be given the power to stop child payments to parents who attempt such abductions.
The measures – stronger than anything flagged previously – will be put before Parliament in the first half of next year in response to what Attorney-General Robert McClelland says is an unimaginable horror happening at an unacceptable rate.
”On average, two to three children are wrongfully removed from Australia or retained in another country every week by one of their parents,” he says.
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”Being forced to go through the experience of having your child taken away to another country is unimaginable for any parent. Abduction can have severe emotional, psychological and financial impacts.”
Although it is illegal to take a child overseas without the consent of the other parent, it is not illegal to keep a child overseas when it is taken abroad with consent for a holiday.
The Family Law Council recommended last March the loophole be closed.
In considering the recommendation, Mr McClelland and Families Minister Jenny Macklin wrote to the council in August asking whether they should go further and legislate to allow the Family Court to suspend the need for the parent left behind to pay child support.
The council said they should and that child support payments should not accrue while children were detained illegally.
The changed approach marks a departure from the usual rule that child support should always be paid, regardless of access.
”Child support should usually be paid in the best interest of the child,” Ms Macklin said. ”But when children are wrongfully kept outside Australia, the left-behind parent is unable to effectively access the Australian legal system. The family law courts are best placed to make a decision about whether suspending support is in the child’s best interests.”
Recommending the change, the council stressed it would not apply if a child had been moved against a parent’s will in Australia ”as a parent in this situation would have the option of seeking assistance through the Australian family law system”.
The maximum penalty for the new offence of wrongfully retaining a child overseas will be three years’ jail.
About 125 children were wrongfully removed or retained overseas last year.
Webサイトへのリンクはこちら↓です。
http://mdn.mainichi.jp/mdnnews/news/20110824p2g00m0dm012000c.html
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2011年08月24日 The Mainichi Daily News 『Parents march in Tokyo to urge Biden to address child custody issue』
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the mainichi daily news2011 8 24
バイデン副大統領へ親権問題に 言及することを求める親たちのデモが東京で行われる
国際結婚の破綻により子どもに会うことが難しくなった20人以上の日本人と日本に住む外国人の親たちが、訪問中の米 国ジョー・バイデン副大統領に日本政府が子どもの親権問題に言及するように訴えるデモが火曜日に東京で行われた。
東京の六本木地区の公園に集まったあ と、「子どもの拉致をなくそう」「なぜ日本では自分の子どもに会えないのか?」と書かれたプラカードを掲げ、親たちはデモを開始し た。
日本の親による子どもの疎外と拉致の問 題では、日本の裁判所は離婚後に母親に単独親権を与える傾向があり、両親が別れたあと子どもが父親に会えないことが珍しくない。
日本は最近、国境を越えた親権争いに関 する手続きを行う国際的な子どもの拉致に関する1980年のハーグ条約に締結する準備をし始めた。
「レフト・ ビハインド・ペアレンツ日本」の共同代表であるヒラタアキヒサさんはバイデン副大統領にメッセージを主張した。「日本政府に子どもの 拉致問題に言及し、共同養育と共同親権を打ち立てるように言ってください。」
男性のデモ参加者は「日本の人たちは強 い外圧がなければ、行動を変えようとしません。私たちは世界で広く適用されている共同親権と共同養育を認める法律に変えることを求め ています。」と述べた。
日本人妻と別れたあと7年間自分の娘に会えていない米国市民のアンソニー・デル・ ビッキオさんはデモが始まる前にこう述べた。「基本的人権の保護や子どもの権利を尊重することにおいて、先進国の中で日本は最も遅れ ている。」
「離婚後の単独親権の制度は、心理学的 研究や国際的な意見による常識に反している。」と彼は主張する。
アメリカ国務省の記録によれば現在173人のアメリカ人と日本人間の子どもが日本へ連れ去られてい る、が「日本へ拉致された子どもがアメリカに返されたケースは一つもない」と彼は述べる。
バイデン副 大統領は水曜日まで3日間、日本にいる予定だ。子どもの親権問題が前半に行われた菅直人総理大臣との会談で話し合われたかは明らかに なっていない。
毎日デイリーニュース8月24日
原文
*Parents march in Tokyo to urge Biden to address child custody issue*
TOKYO (Kyodo) — Around 20 Japanese and Japan-based foreign parents who are facing difficulties in gaining access to their children following failed international marriages marched in Tokyo on Tuesday in seeking help from visiting U.S. Vice President Joe Biden to push the Japanese government to address the issue of child custody.
Holding banners reading “Stop child abduction” and “Why don’t we have rights to see our children in Japan?” the parents embarked on a march after holding a rally in a park in Tokyo’s Roppongi district.
At issue is child alienation and abduction by Japanese parents, as courts in Japan tend to award mothers sole custody after divorce and it is not unusual for children to stop seeing their fathers after their parents break up.
Japan recently launched preparations for joining the 1980 Hague Convention on the Civil Aspects of International Child Abduction, which sets procedures for settling cross-border child custody disputes.
Akihisa Hirata, co-organizer of a group called Left Behind Parents Japan, said in his message to Biden, “Please urge the Japanese government to address child abduction and also establish joint parenting and joint custody.”
A male participant at the rally said, “Japanese people cannot change their behavior without a strong foreign pressure. We call for changes in the laws to realize joint custody and joint parenting, which is widely adopted in other parts of the world.”
Anthony del Vecchio, a U.S. citizen who has not seen his daughter for seven years after divorcing his Japanese wife, said before the start of the protest march, “With respect to the protection of human rights in general and children’s rights in particular, Japan lags far behind the rest of the developed world.”
“Its system of sole custody upon divorce runs contrary to common sense, sound psychological research and international norms,” he said.
The U.S. State Department lists 123 active cases involving 173 children who have been abducted from the United States to Japan, but it is “not aware of a single case in which a child abducted to Japan has ever been returned to America,” he said.
Biden is on a three-day visit to Japan through Wednesday. The issue of child custody was not apparently discussed in his meeting with Japanese Prime Minister Naoto Kan earlier in the day.
(Mainichi Japan) August 24, 2011
pdfファイルはこちら↓です。
2011年08月26日 朝日新聞 『離婚で別居・会えない親子 半年超えると面会困難に』
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離婚などで子どもと会えなくなった親が家庭裁判所での調停を通じて面会を求めても、子どもと別れていた期間が半年を超えると再会が難 しくなる 傾向が、市民団体の調査で浮き彫りになった。子どもと同居する親が面会を拒否し、時間が経つほど態度を硬化させることが多いという。
子どもと会えない親らでつくる「親子の面会交流を実現する全国ネットワーク」(親子ネット、会員約260人)が会員を対象に昨年10 月から今年1月までアンケートし、72人から回答があった。
子どもと別れてから、「0~6ヵ月」で会えた人は17人にのぼった。ただ、「7~12ヵ月」では5人に急減。1年以上かかった人は8 人で、長引くほど会うのが難しくなる。2年を越えても会えない人は13人いた。
会えない理由は、「相手が会わせたくない」「子どもが嫌がっていると言われた」などが多い。法務省が今年2月に公表した面会交流の実 態調査(回答した別居親は98人)でも「相手方が拒否」が最多だった。
改正民法では、離婚時には子との面会を取り決めるように定めたが、強制力はない。面会の実現は子どもと同居する親の意向に左右されや すい。親 子ネットの藤田尚寿代表(43)は「調停が1ヵ月半~2ヵ月の間隔でしか開かれず、その間に子どもと別居親との距離が広がる悪循環がある」と 話す。
(杉原 里美)
The Russian Federation becomes the 86th Contracting State to the Hague Child Abduction Convention
On Thursday, 28 July 2011, the Russian Federation desposited its instrument of accession to the Hague Convention of 25 October 1980 on the Civil Aspects of International Child Abduction.
The Convention will enter into force for the Russian Federation on 1 October 2011.
国谷裕子キャスターの「クローズアップ現代」で、「親と子が会えない~増える離婚家庭のトラブル~」が放送されました。小田切紀子東京国際大学教授(臨床心理学、家族心理学)が出演し、親の離婚後、子が、片方の親に会えないことで生ずるさまざまな問題がとりあげられました。
たとえば、一緒に住む片方の親(母親)から悪くいわれ続け、それが原因でトラウマ(心の傷)を負ってしまった子ども(娘)が、ながく会えなかった父親と会って、語り明かすことができた後、自分の性格は、父親とそっくり同じだというだけで、自分が悪いわけではなかったことが分かり、安心した、と打ち明けていました。
また、親の離婚後、突然、父親から切り離された幼い娘が、わずかな時間の父親との面会後、離れたくない、と泣き叫ぶシーンは、番組後も頭を離れません。
親が離婚しても、子どもにとって母親、父親であることに変わりはなく、両方の親に会えることは、今や、国際社会の常識であるのに、日本では“子は家のものである”という考えで明治時代に作られた民法が生き続け、離婚が特別なものではなくなった現代に全くあわなくなっている、と締めくくられました。
日本にも無縁ではないブラジルとアメリカの親権争い
先週、私の住むニュージャージー州では、1人の男性がブラジルから戻ってきて怒りの記者会見に臨んでいました。男性の名前はデビット・ゴールドマン氏といって、ブラジルに住む一人息子を取り返そうとして果たせなかったというのです。ゴールドマン氏の妻はブラジル人でしたが、その妻は現在8歳になる息子のショーン君が4歳の時に、ゴールドマン氏をアメリカに残したまま、「実家に帰省してくる」と言ってブラジルに向かいました。
直後にゴールドマン氏にはブラジルから連絡があり、妻は「もう私たちの結婚は終わった。ショーン君は自分が育てる。親権を放棄する旨の書面に署名しない限り、ショーン君には会わせない」と一方的に通告したのだそうです。ショーン君の母親は、ブラジルの法律に従ってゴールドマン氏と離婚して、別の男性と結婚したのですが、その男性との子供を分娩中に不幸にも亡くなったのでした。ゴールドマン氏は、自分だけがショーン君と血のつながった親なのだから自分に親権があるべきで、ショーン君を返してもらいたいと法廷闘争に訴えたのですが、ブラジル最高裁はゴールドマン氏の訴えを認めなかったのです。ショーン君は、現在はブラジルで母親の再婚相手の男性に育てられています。
この問題はメディアで大きく取り上げられ「アブダクション(拉致)」事件として注目を浴びています。更にゴールドマン氏を支援している下院議員を通じて政治問題化しており、国務省も深刻な問題として取り上げています。この問題を解決するために「ブラジルとの貿易に関税を設定して経済制裁を」という動きすら出てきているのですが、それだけアメリカ社会としては真剣な扱いがされているということだと思います。
この問題は実は日本にも無縁ではありません。国際結婚が不幸にして離婚という形を取った場合に、アメリカの裁判所で親権がどちらに(あるいは双方に)あるかを確認する前に、子供を日本に連れ帰ってしまう例がかなりあるのだと言います。この問題については、アメリカの国務省はかなり神経を尖らせており、対応を間違えるとブラジルとのような国家間の問題になりかねないのです。問題を複雑にしているのは、国際法の枠組みです。国境を越えて親権の争いができた場合の処理に関しては、ハーグ条約という国際法で取り決めがあるのですが、ブラジルの場合はこの条約を批准しています。ハーグ条約に入っていながら、国内法を優先してショーン君を返さないということになっているのです。
ところが日本の場合はこの条約を批准していません。しかも、条約を批准していない国の中で、アメリカから見ると最も多くの事例を抱えているのです。カナダからも外交ルートで同様のクレームが来ているようです。ですから、仮にブラジルのショーン君の問題がアメリカで更に関心を呼ぶようになって、日本との間でも多くの問題を抱えていることが広く知られるようになり、その結果、アメリカの親が政治家などを使ってくるようだと、大変なトラブルに発展する可能性を秘めているのです。
では、どうして日本はハーグ条約を批准していないのか、日本とアメリカの間で(100件以上と言われています)親権の争いが起きるのかというと、それは日本とハーグ条約の締結国との間で社会慣習に大きな差があるからです。簡単に言うと、日本の場合は、(1)両親が離婚した場合に親権はどちらかに行ってしまい、共同親権というシステムはない。(2)子供は母親が育てるものという観念が強く、父親側が親権を獲得するのが難しい。(3)親権のない方の親には面会請求権があるが、親権を持つ親がない方の親に会わせない場合の罰則規定が弱い。(4)親権のない方の親が再婚した場合、その後は子供との面会をしない、させないという慣習が大なり小なりある、といった問題があります。これはハーグ条約の精神には反するのです。
私は、こうした人情の機微に関わる問題を「外圧」に翻弄されながら受け身的に決めるのには反対です。それでは人や社会の自尊心はどこにあるのかということになるからです。また、この問題は渡航移植の自粛を求めるWHOの指針案に押し出されるように改正をしなくてはならなくなった臓器移植法の問題に似ていますが、臓器移植法よりも更に複雑な問題を抱えています。共同親権の導入(ハッキリ言えば、子供が一定期間毎に父親の家と母親の家を行ったり来たりするシステムです)や、面会請求権違反への罰則規定(欧米では、会わせないということが、誘拐罪とされて親権を喪失する可能性があります)といった問題は、広い範囲で関連法の改正を要求するからです。
というわけで非常に大変な問題なのですが、受け身的ではなく積極的な人生観・家族観の変更をする中で、あるいは少子化対策の一環として離婚後の両親との関係という問題を世界標準に近づけてゆくことは必要だと思います。そしてハーグ条約を批准して、アメリカやカナダとの外交問題を回避することは、やはり日本にとって必要なことだと思うのです。この点から見ても、ショーン君の問題は日本にとって、全く他人事ではありません。
冷泉彰彦
(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修了(修士、日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。主な著書に『アメリカは本当に「貧困大国」なのか?』(阪急コミュニケーションズ)、『アメリカモデルの終焉』(東洋経済新報社)など。
メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」を毎週連載中。新刊電子書籍「FROM 911、USAレポート 10年の記録」(G2010刊)を、iPad/iPhoneアプリとしてAppleストアにて発売中。