【2012.10.15】 親子ネット勉強会 レポート 『こんなときどうしたらいいの?』
平成24年9月11日、目黒さつき会館において、当事者の事例報告を基にした勉強会を開催しました。子どもに会えない悩みに向き合い、事態を打開してきた当事者に当時を振り返り語っていただきましたので、その様子を報告します。
本勉強会に対し、衆議院議員の下村博文先生と、馳浩先生にメッセージを頂きましたので、ご紹介いたします。
(クリックするとpdfファイルでご覧いただけます)
下村博文衆議院議員からのメッセージ
馳浩衆議院議員からのメッセージ
1.開会挨拶(印旛 一帆 親子ネット運営委員)
子どもと十分に面会ができない状況下で、我々には明るい話題はあまり有りません。
しかし、100%でなくとも少しでも「こうやれば、うまくいったよ」と勇気が湧くような体験談を当事者の方々に語って頂き、そこから学んでいきたいと、今回の勉強会を開催しました。
それぞれの方に「今まで、何を考え、どう行動してきたのか?」を具体的に話して頂きたいと思います。選択肢は一つではありません、色々な意見を聞いて、皆様ご自身の参考にして頂ければ幸いです。
また、この問題に詳しい弁護士、臨床心理士等、有識者の方々にアンケートをお願いしました。「このように主張・行動すればいいのではないか」「これはダメだよ」ということを具体的にアドバイスして頂きました。
資料にまとめましたので、併せて参考にして頂きたいと思います。
2.開催趣旨説明(飯田 彰 親子ネット運営委員)
私は、親子ネットに来る「メール問い合わせ」を担当しています。
問い合わせをして来られる当事者の方々は「自分の陥った状況がわからない」「どうしたらいいのでしょう?」と非常に困っておられます。
私からは「まず、落ち着いて出来ることからやっていきましょう」とお答えしていますが、本当は「こうやれば、うまくいきます」というような勝利の方程式をお教えできれば良いと思っています。しかしながら、現状はうまくいかないことの方が多いのです。
私たちは、月1回の定例会や懇親会の場で情報交換・意見交換をしていますが、今回、断片的な情報ではなく、親子の絆を取り戻したケースをまとめました。
これらの情報を皆様がそれぞれの行動に活かして頂き、その結果を親子ネットにお知らせ頂きたいと思います。
それを今後、当事者の方からの問い合わせに活かしていきたいと思います。
3.当事者の事例報告
私には2歳11ヶ月の子どもがいました。 子どもを連れ去られた後、子どもに会えたのは1回目の調停があって5ヶ月経過してからです。5ヶ月の間、何をやっていたのかと言えば、弁護士や離婚カウンセラーを探したりしていました。
最初の1ヶ月から3ヶ月間は散々な生活をしていましたが、「こんな生活をしていると子どもに恥ずかしい」と考えを変えました。私は、「やりたいことをやってみよう」と心を入れ変え、ボランティアをしたり、資格検定を受けたり、色々な人に会うことにより、自分の気持ちを整理し、徐々に自分を取り戻せたことが良かったと思います。
「子は鎹(かすがい)」という言葉がありますが、「鎹」とは柱と柱を繋ぎとめる部分(大釘)を言います。 「だから、夫婦は子がいればそう簡単には別れるようなことはしない」と知人から教わりとても感動しました。
ある本の著者である弁護士のところへあまり期待せず相談に行ったら、弁護士に「奥さんのやっていることは犯罪だ。 相手方から申立てされているままだと、相手のペースで進められてしまうから、直ちに円満調停と面会交流調停を申し立ててきなさい」と言われ、申立てをしました。
この弁護士は信頼できると思い、その日の夜からメールでの相談が始まりました。
弁護士はメールを送ればすぐに返信をくれ、夜遅くても電話で相談に乗り対応してくれました。
私は、別れてしまえば単独親権だから会えなくなるかもしれないと思い、「子どもに会いたい、また一緒に住みたい」と調停で主張してきました。
弁護士のアドバイスもあり、妻と子どもの誕生日プレゼントを調停の場に持っていきました。 妻は妻へのプレゼントは受け取りませんでしたが、それでいいと思いました。 なぜなら、私がもう一度、3人でやり直したいと思っていることを調停委員にわかってもらえればいいと思ったからです。
調停委員から「奥さんは会わせないとは言っていない。 月1、2回会えるのだから、まぁ、離婚で話を進めていったらどうか?」と言われ、私も「引き離しから5ヶ月も経っているし、いいか」と思い「はい」と言いそうになりました。
その時です、弁護士が「あなた方、調停委員のやっていることは誘導尋問ではないか。 子どもに会わせる代わりに婚姻費用を寄こせ、離婚に応じろ、などという人質交渉には応じられない」と言ってくれたのです。
一時、調停委員と弁護士が言い合いになりましたが、私が子どもの写真をテーブルに並べ、子どもとの交流に問題が無いことを訴えかけた結果、その後、私のペースで調停は進みました。
私の目的は子どもに会うことなので、調停で私は相手方の悪口を言うことなく、子どもの育成だけを考えたいと調停委員に言い、弁護士が法的に納得のいかないこと助言してくれました。
5回目の調停で相手方は離婚調停を取り下げ、面会交流は第三者機関を利用し月1、2回実施したいと提案がありました。
今は月2回、子どもとしっかり会えています。子どもは待ち合わせ場所で私を見ると笑顔で飛び込んで来ます。
離婚に応じなかったことで共同親権が維持できています。
これからも「お母さんはもちろん、お父さんもあなたを見守っているんだよ」ということを、面会交流を通じて安心して子どもに伝えていきたいです。離れて生活していても深まる絆というものもあると感じています。
妻は依存症をかかえており、経済的なことなど色々な問題が家庭内にありました。当初、私は妻の病気を理解し、受け入れることが出来なかったために妻を責めてしまいました。ある日、妻は3歳の長女を連れ去り、離婚調停を申し立ててきました。
私は調停で妻の悪口を言わず、自分を変える努力をしてきたことを伝えました。
調停は「別居をしばらく続ける」ということで1回で終了しました。別居から1年後には妻と話し合い「元の家で生活しよう」と決め同居を開始しました。今は1年が経過しています。
私は、自分に焦点を当てて、自分自身を変えられるところは変えたい、妻の依存症を受け入れるために行動したいと考え、夫婦関係を修復、家族再生を願い、自分の考え方を直しました。
弁護士・行政書士にも相談しましたが、引き離しが起きている現状のみに焦点を当てて見ることは争いを激化させてしまうし、引き離しが続いてしまうと感じました。心の病をかかえている妻に円満調停とはいえ裁判所から通知が届けば、余計な刺激を与えてしまうとも考えました。
今は、妻との「信頼残高」の構築をしており、妻との日常を感謝し信頼の貯金をすることで、信頼関係を築けば、引き離しの心配も無くなるのではないかと思っています。
私たち夫婦は離婚し、当時8歳の長男、6歳の長女、3歳の二男の親権者は夫になりました。離婚直後は、月1回の面会交流を行っていましたが、元夫は再婚すると色々な事情を付け、面会交流を中止させました。子どもと会えなくなりました。
子どもたちから「もうママに会いたくない」「ママと会うことは、パパが決めることだから」とも言われました。今で言うPASです。
私は、親権者変更調停を申し立てましたが、裁判所は「継続性の原則」を理由に私の主張を認めてくれませんでした。
私は、子どもに会えない辛さはありましたが、習い事をしたり、仕事に打ち込んでみたりと、自分を立て直す時間を2年間使いました。
きっかけがあり、当事者団体の集まりに参加し「子どもには自分が愛しているということを伝えなければならない、伝えることによって子どもの良い成長が得られる」と言うことを知りました。
そうして私は「自分の気持ちを伝えよう」と思えるようになり、子どもの通っている小学校に行き、2年半ぶりに長男と再会したのです。
その後、長女とも再会することができました。
1回、1回は5分程度の短い時間ですが、何回か会っているうちに1年後には長女が私の所に家出して来ました。
その時は、元夫が警察に通報したので、長女を親権者である元夫の家に帰宅させましたが、その後、元夫と義母から何度も電話があり「娘を迎えに来い」と言われ迎えに行きました。更に元夫から親権者変更手続きがされました。その2年後には長男から「迎えに来てほしい」と連絡が入り、現在は長男、長女と3人で暮らしています。
子どもと会えない期間はありましたが、まずは自分を立て直すことが大切だし、自分が元気でなければ行動も起こせません。小学校に会いに行った頃の感想を子どもに聞いたら「嬉しかったよ、嬉しくない子どもなんていないよ」と言ってくれました。「今、自分に何が出来るか?」を考え、諦めずに行動して良かったと思っています。
最後に、他の当事者団体や親子ネットの運営委員の方々、当事者の方々へのお願いがあります。
皆さん色々な意見が有り過ぎて「一致団結していないんじゃないかな?」と感じる時があります。
徹底的に議論して、決まったことには一致団結して取り組む、意見を言わないで、後から「自分はこう思っていた」などとは絶対に言わないで下さい。一致団結しなければ、私たちが求めている法律も通すことは出来ないのではないかと思うからです。
会社に行っている間に子どもを連れ去られました。引っ越し業者を準備していたらしく家財道具も持ち去られ、家に帰ってきたら部屋に何も無い状態で、「目が点」になりました。
直ちに私は離婚調停と監護者指定を申し立てましたが、妻側は婚姻費用分担調停を申し立てていました。当初はよくわからないまま弁護士に言われたとおり婚姻費用支払いに応じました。
その後、弁護士・行政書士・離婚カウンセラー・行政など、いろいろな場所に相談に行きました。その中で連れ去り・持ち去り側の特徴は、社会的未熟や自己中心的な人が多いと痛感しましたが、皆さんも思い当るところがあると思います。
子どもには4ヶ月間会えませんでしたが、弁護士が「子どもに会わせないのは犯罪だ。」と強い態度で訴えてくださり、面会交流が実現しました。面会交流の際、交流の様子を録音していましたが3歳の娘は「パパと離れるのが嫌だ。」と泣きました。
しかし、その後相手方弁護士から「子どもを泣かせたから会わせない。」と言ってきました。録音を証 拠に出して嘘を暴き、その月の第4週に宿泊付き面会交流を行いました。すると、今度は相手方から「面会交流をし過ぎだ。」と逆に調停を申し立てられました。
私は「このまま調停が別個に進むと、子どもに会えなくなる。」と思い、子どもを返さない判断をしました。警察に逮捕されるかもしれないという不安はありました。しかし過去の判例を調べたら親権のある親が連れ去っても、暴力行為などが無ければ逮捕されたり、負けたりするケースはほとんど無かったのです。
予想どおり、相手方は子の引き渡し審判・調停を起こしてきましたが、私は事を荒げないように相手にしませんでした。
困った当事者の方が、相談やアドバイスを受けられる場所があったらいいなと思っていたので、平成22年9月に「NPO法人 保育支援センター」を立ち上げ、当事者の支援を開始しました。
私は現在53歳、子どもは中学3年生です。妻の母親と叔母に連れ去られました。妻の家出は2回目で、前回は7カ月でした。「また、帰ってくるだろう」と思っていましたが、なんと今回は子どもの学校を勝手に転校させてしまったのです。
その後、なかなか子どもに会わせてくれないので、調停を申し立てて妻に理由を聞くと「あなた、DVじゃない」と言われました。「どれが、DVなの?」と聞くと、「細かなことの積み重ねだからわからない」と言われましたが、妻が主張する「DV」は「ドライブに行った時に、運転中口を聞いてくれない」「毎日、朝早く起こされる」「洗濯物を畳んだ物を、1週間出しておくと怒られる」「車で送り迎えしてくれないのが気に入らない」などであることを知りました。
なかなか会えないまま、妻側から離婚裁判を起こされました。
警察へ確認に行くと、妻はすでに相談に行っていましたが、警察は「あんなの、DVじゃないですよ」と言っていました。
しかし、住民票を取得した際に本人分しか取得出来ないため聞いてみると「あなたDVですから」と言われたのです。私の知らないところで行政支援措置を取られていたのです。
子どもに気持ちを伝えたいと思い、子どもに月2回手紙を送りました。また、行政支援措置を取られていたことを知り、警察・役所・県教育委員会・病院など様々な場所に行き事情を繰り返し説明しきました。
すると、妻側から離婚訴訟を「請求放棄」してきたのです。理由は「訴訟を起こす理由が無かった。離婚を求める理由が無かった」と自ら認めたのです。それを根拠に役所に行き説明し、行政支援措置は解除されました。
そして役所・教育委員会・学校長などに、学校へ近付くことの禁止措置解除を求め話し合いを申し入れたところ、学校長から学校へ呼ばれ学校行事(授業参観・体育祭・クラブ活動発表会)への立ち入りが許可されました。
今年7月7日、七夕に授業公開日があり4年3ヶ月ぶりに子どもの顔を見ることができました。
7月28日にはクラブ活動大会の応援に行き、8月10日には学校長から声を掛けてもらって一緒に会場の最前列で子どもの姿を見ることができました。子どもに「父親が見に来ている」ということをわかってもらえたし、とても嬉しかったです。やっと第一歩を踏み出せました。
DV虚偽で訴えられている方は、やっていないことは「やっていない」と警察・裁判所・役所を信じ期待し、冷静に何度も何度も説明に行って欲しいです。
私はまだ離婚していないので親権者です。子どもとの面会交流は、離婚後の面会交流を定めている民法766条ではなく、民法820条「親権者の監護・教育の義務・権利」という条文を基に交渉していきたいと考えています。
【資料1】講演会配布資料(クリックするとpdfファイルでご覧いただけます)
4.有識者へのQ&A集について (江川 剛弁護士)
皆さんのこの問題はとても難しいです。しかし、難しいながらも解決に向けて考えていかなくてはなりません。
「こうやればうまくいった」と事例報告がありましたが、皆さんに当てはまるかどうかは、環境・人間・周囲の方によっても変わってきます。
今日、明日で解決できる問題ではないので、長く時間は掛かるかもしれませんが、それとどううまく付き合って少しでも前に進んでいくかを考え、環境を築いていくのが一番大事だと思います。
【資料2】有識者へのQ&A(クリックするとpdfファイルでご覧いただけます)
5.閉会挨拶(神部 進一 親子ネット代表)
頭をからっぽにして考えれば、親と子というのは会ったほうがいいに決まっているとつくづく思います。
私たちは、いろいろな場面で妨害されているが、先進国ではしっかりとした考えの法整備がなされているが、日本はとても遅れています。
この場に集まった方は勇気ある人ばかりであり、今日この場に参加していない、他にももっと苦しんでいる当事者がいるので、力を合わせて自然なかたちで親子の交流ができるよう変えていきましょう。
皆さん、これからもご協力お願いします。