【2014.01.25】 棚瀬一代先生講演会 『離婚で壊れる子どもたち』
2014年1月25日午後2時より、親子ネット主催による棚瀬一代先生の講演会、「離婚で壊れる子どもたち」を開催しました。会場となった港区青山の会議室には当事者、祖父母の方等約70名の方が参加し、ほぼ満席という大変な盛況となりました。
講演会当日の様子
初めに鈴木代表より開会挨拶のあと、私達の問題に深い理解を頂いている衆議院議員馳浩先生の力強いメッセージが秘書の天野様より代読されました。
馳衆議院議員秘書の天野様がメッセージを代読
馳衆議院議員からのメッセージ(クリックするとpdfが表示されます)
代表鈴木裕子の挨拶
【講演会の概要】
今回の主題は「子どもの視点から考える面会交流」でした。実際の講演会は大きくは前半と後半に分かれ、前半は主にアメリカにおける面会交流、共同親権に関する変遷を日本と比較しつつ解説されました。
後半は親が離婚した子どもへの影響や日本の面会交流の問題点やあるべき姿等についてお話し頂きました。
講演会前半部分
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1.単独親権時代
1980年代まではアメリカも単独親権制度であったが、離婚した場合、別居親には「相当なる面会交流権」が付与されており、現状の日本の単独親権制度とはそもそも大きく相違していた。その意味で日本の現状は相当深刻である、と認識しておくべきである。
2.公共政策として
その後、国の公共政策として「友好的親条項」が全米で急速に広まった。その背景にあったのは、面会交流は子どもの権利+別居親の憲法上の権利、との考え方である。この点でも日本の司法の場においては、面会交流は別居親の権利でもある、とはなかなか主張しづらく違いがあると言える。
3.単独親権から共同親権に
なぜ、面会交流権が保障されていたにも拘らず、単独親権から共同親権へと変化していったのか。それは、男女の従来の役割の変質といった社会的な背景に加え、そもそも親権は非常に強い権利であり、面会交流権ではなかなか太刀打ち出来ない状態であるからである、即ち、親権者がその地位を利用して別居親から遠ざける危険性が内在しているとの声が高まった結果である。
4.面会交流から共同養育に
共同親権の背後には、離婚後でも両親と頻繁且つ継続的な接触を子どもに保証することが子どもの福祉に合致するとの考えがある。実際、アメリカでは面会交流時には別居親とひたすら楽しく「遊ぶ」だけではなく、日常の生活を共に過ごすことの意義が強調されている。
講演会後半部分
1.突然の連れ去り
離婚後の子どもの適応を阻害する要素としては、別居親の不在、急速に大人びてしまう疑似成熟と役割逆転、両親の高葛藤等が挙げられるが、いわゆる説明無しの突然の別居・離婚、連れ去り、も付け加えたい。日本ではこの10年、連れ去りが日常茶飯事になっていると言っても過言ではない。
2.多様な文脈での接触と宿泊面会
日本における現状は、面会交流=「顔見せ」「短時間」「楽しく外で遊ぶ」ことに留まっている。正しい目的は親子間の絆の形成・維持であり、そのためには多用な文脈での接触が必要で、その意味で宿泊付きの面会交流は必須である。
3.時間は敵
時間は敵である。子どもとの絆が消えてしまうのを防ぐため、面会交流は直ちにスタートすべきである。従って、面会交流の取決めは速やかに行うことが必要であり、調停など現状の家裁の対応は、時間がかかり過ぎである。また、連れ去りの違法化、友好的親条項の導入も課題である。
4.ビジネスライクな関係構築
両親の高葛藤は、相互不信を背景にスムーズな面会交流の妨げになるだけでなく、子どもの最大のストレス源になる。人間としては信用できないが、親としての最低限の信頼を持てるように、脱歴史=感情抜きのビジネスライクな関係構築が必要ではないか。面交のアポ取りメールのやり取りも感情を入れない等の工夫が必要である。
「講演を終えて」
講演後は質問も多数寄せられ、成功裏に終了しました。当日ご参加頂いた皆様には改めて御礼申し上げます。最後に講演会の感想を私なりに述べさせて頂きたいと思います。
日本の現状の遅れは、単独親権下でも面会交流権が保障されていたアメリカと比較すると100年位遅れている、先生はそう述べられました。私はこれを聞いた時、正直、暗然たる気持ちになりました。しかし、ここからスタートするしかありません。
また、両親が歴史を乗り越え、感情を乗り越え、ビジネスライクになるべき、との先生のご指摘は、言うは易し、されど…で私にとっても大変耳が痛い話ですが、国内外の数多くの離婚した親、子どもの心のケアに尽力されてきた棚瀬先生ならではの実感なのだろうと思います。
公演時間は当初90分程度予定していましたが、終了してみると120分間、休憩無しで、ずっとお話し頂きました。先生のこの問題にかける気迫を感じたのは私だけでは無いと思います。一日でも早く、先生が熱弁をふるわれたような別居・離婚後の親子関係を構築できる社会が実現することを願ってやみません。
講演する棚瀬一代先生
【棚瀬一代先生の略歴】
臨床心理士。京都女子大学現代社会学部助教授、帝京大学文学部助教授を経て現在、神戸親和女子大学発達教育学部客員教授としてご活躍中で、同時に棚瀬心理相談室室長として、離婚と子どもの問題に積極的に携わっておられます。 http://tanase-therapy.com/
【棚瀬一代先生の著書】
『「クレイマー、クレイマー」以後– 別れた後の共同子育て』
『虐待と離婚の心的外傷』、『離婚と子ども- 心理臨床家の視点から』
『離婚で壊れる子どもたち―心理臨床家からの警告』
『 離婚で壊れる子どもたち』 については、この問題に直面した際、真っ先に手に取られた方も多いのではないでしょうか。