親子の引き離しに利用されている「とんでもないDV」「ありえないDV」問題に関する アンケート調査報告書
「とんでもないDV」「ありえないDV」問題に関するアンケート調査報告書
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1. 調査の概要
私達、親子の面会交流を実現する全国ネットワーク(親子ネット)は、別居や離婚後に実子と面会できない非監護親とその親戚等関係者を中心とする団体です。夫婦の関係が悪化して、たとえ別居や離婚しても、親子は一生親子であるという当たり前の視点から、実子との面会、さらには共同での養育の権利を保証する法改正を求める活動をしています。
私達は、会員個々の置かれた状況に応じたサポート活動を行うために、新たな会員には現状調査を行っています。この新規会員への現状調査および定例会等での自己紹介では、多くの会員が「DV防止法の不適切な適用を受けており、それを理由に子どもとの面会を拒絶されている」と説明しています。しかし、この現状調査や自己紹介では、「子どもに会えない」会員の「誤解」や「うらみ」、さらに場合によっては「虚偽」も含まれる畏れがあります。そこで、これらの会員に対して、統一書式での記述式アンケートを行うことにしました。
DV防止法という法律が、家庭内での暴力被害を防ぐために必要不可欠であるということは大前提です。本調査を行うことが、真性DV被害者の救済の妨げになってはいけないのは当然です。その上で最も重要視したのは、DV防止法がその立法主旨を越えて親子引き離しの道具として運用されていることはないのかを検証し、社会に向かって問題提起できる信憑性を担保することです。
そのために、対象者に対して、「引き離し被害、DV加害の当事者としての個人的な心情や見解」ではなく、事実のみを記載して貰うことを事前に説明しました。そして、記載した内容の事実確認が行えるようにするために、調停や訴訟の際に相手方が裁判所に提出した訴状、陳述書、意見書等の公文書、または公正な第3者の下で行われた協議で作成された文書等に記載されている、「相手方が主張するDV」のみを収集することにしました。
2. 調査の結果
「相手方が訴訟または調停で提出した書面に記載されていた言動」を事実と仮定して解析した結果は以下の通りです。この解析結果は、今回のアンケート回答者にとっては、「最悪のシナリオ」を解析するものであり、実際に起こっていたことかどうかの判断は、この報告の目的ではないことを予め記しておきます。また、本調査は「とんでもない」「ありえない」と思われた当事者を対象にしたものですから、対象自体が偏っています。我が国の全てのDVの縮図ではありません。
我が国で施行されているDV防止法では、身体的暴力と精神的暴力の2つをDVであると指定しています。そして、重篤な身体的暴力に関しては、生命に危険を及ぼす可能性がある場合に緊急避難的に執行される「保護命令」が設定されています。これを考えると、我が国では法的には、重篤な身体的暴力、重篤ではない身体的暴力、精神的暴力の3種類があると考えられます。
今回の調査では、DV判定のクライテリア(判断基準)としては、「外傷の診断書または写真等の証拠」を「重篤な身体的暴力」の基準とし、それ以外は相手方の書面に記載された内容に従ってカテゴライズしました。それぞれのカテゴリーに属するDV行為の具体的な内容を精査することで、我が国で「離婚に利用されているDV」がどのようなものであるのか、そして問題点はどこにあるのかを明らかにすることが可能と考えます。
保護命令の申立または診断書等が提出された重篤な身体的暴力は2件ありました。重篤な身体的暴力以外の身体的暴力とされたものは6件ありましたが、殆どは夫婦喧嘩の際に暴れる相手方を止めようとした、あるいは叩かれてやり返したといったものでした。今回の調査では、精神的暴力とされたものが殆どという結果となりました。
アンケート結果から分かった、「とんでもないDV」「ありえないDV」の特徴は以下の通りです。
1) 身体的DVの事例は少なく、悪意的でないものが含まれていること
2) 精神的DVの範囲が広く、緩いこと
3) 性的DVおよび経済的DVは殆ど指摘されていないこと
4) 行政支援措置の請求と執行が高率なこと
5) DV防止法に関与する申請等がないにも関わらずDVと主張される例があること
調査結果から見る、我が国のDV防止法運用の問題点は以下の通りです。
1) 身体的DV判断時の警察の関与の必要性
2) 精神的DVの判断基準の明確化の必要性
3.虚偽DVを親子引き離しに利用されないための提言と自戒
内閣府男女共同参画局の報告によれば、平成21年に配偶者暴力相談支援センターへの相談件数は72,792件、そのうち、保護命令の申立ては3,087件、うち保護命令の発令は2,411件です。さらに、警察での暴力相談等の対応件数28,158件を追加すると、保護命令の発令件数は全相談件数の2.5%程度に過ぎません。それ以外の殆どは、重篤で危険と考えられる暴力とは異なる内容と考えられます。
しかし、一旦婦人相談所に相談すると、相談証明が発行されます。この相談証明は、具体的な内容が書かれていない白紙の場合もあります。それでも、相談証明は有効で、市町村役場などの行政機関へ提出すれば、住民票の開示拒否、国民健康保険への加入、子どもの特例転校、各種手当ての支給などの支援措置を受けることができます。このような支援措置は、生命の危険を生じるような暴力を受けていない被害者でも受けることができますから、その配偶者である約100,000人が、親子引き離しを受ける可能性があるのです。
DV防止法は、夫婦間という閉鎖環境での暴力行為に対応する法律として、実際に被害に遭われている方には有効と考えますし、存在意義を認めます。しかし、有責離婚による子どもの親権・監護権と慰謝料請求を目指す道具として、この法律の趣旨を逸脱して利用することは、夫婦の平等と子どもの幸福の観点から、絶対に許されるものではありません。
この、いわゆるDV冤罪の問題は、この法律が「暴力」を扱うにも関わらず民事法の規定であるため、自称被害者の申し立てた被害内容が警察による捜査対象になっていないことと、現行法ではウソの被害申立てに対する罰則の対象が、虚偽内容全体ではなく保護命令申請のみであり、罰則も過料10万円と安価であることという、2つの法的欠陥によって起こっていると考えられます。
このような法的な欠陥で家族が破壊されることは、「少子化対策」から見ても国益とは逆行することです。そこで、DV防止法の運用に関して、事実確認をアメリカと同様に警察マターとし、申立人および相手方への捜査を行い、申立て内容の有無を確認することに変更してはどうでしょうか。それぞれのDVカテゴリーを明確にするクライテリアを統一化し、警察がそのクライテリアに沿って捜査し判断する。そして、金品や子供の親権奪取を目的とした虚偽のDV申立てが明らかになった場合には、虚偽告訴罪や法廷侮辱罪等に相当する罰則を適用すると共に、子供の親権・監護権および財産分与に相当の制限をかければ良いのではないかと思います。
これらの内容を附則とした場合にも、実際にDV被害を受けている真性被害者には何一つ不利益がありません。申請時まではこれまでと同様の扱いとなりますから、何も変わりません。悪意を持って虚偽DVを申し立てることへの制限をかけると言うことです。
アメリカ合衆国での例のように、警察が即時に介入することは、夫婦間であっても1回でも手を挙げればDV容疑者として拘束されることになります。今回の調査対象者でも、かなりの方が容疑者として拘束される可能性があります。しかし、その後に公正な捜査を受けることができるという利点もあります。この警察の介入を行わないで、捜査権のない行政に支援措置の権限だけを与えていることに、大きな問題があると言わざるを得ないのです。
但し、法律が実情に合わせて進化したとしても、法律を利用する我々人間が法律の目指すものを汲み取って生活しなければいけないのは言うまでもありません。「とんでもないDV」「ありえないDV」を利用されて、子どもとの引き離しを受けているのは、殆どの場合が父親ですが、父親側も、単に「法律に問題がある」「相手方が嘘をついている」と言うだけでなく、DV防止法の目指すものを真摯に受け止める必要があります。たとえどのような理由があっても、愛する妻には絶対に手を挙げることはしないという強い自覚が求められるのは言うまでもないことなのです。
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