【2011.09.30】 親子ネット講演会「取り戻そう!離婚後の親子の絆」レポート
平成23年8月20日、午後2時から、親子ネット講演会『取り戻そう!離婚後の親子の絆~離婚で引き離された親子の再統合に向けて~』が開催されました。講演会場となった東京・水道橋の貸会議室は70名の聴講者でほぼ満席となる盛況ぶりでした。
代表の藤田さんによる、第一部「面会交流及び子どもの変化に関する」実態調査報告、並びに大正大学青木聡教授による第二部「引き離された親子の面会交流の始め方」についてレポートします。
第1部 「面会交流及び子どもの変化に関する実態調査」
一人に一部ずつ印刷された報告書が配られ、まず初めに藤田さんからこの調査の趣旨説明がありました。別居・離婚後にわが子との交流が途絶えてしまう別居親がいるという、深刻な社会問題が今の日本にはあるにも関わらず、日本にはこうした実態を示すデータがほとんどありませんでした。そこで、現在日本で暮らす日本人が、別居や離婚をすると、親子交流がどうなってしまっているのか、大正大学人間学部臨床心理学科 青木聡教授と共同調査を実施したとのことでした。
調査結果は主に「アンケートに答えた当事者の基本情報」「現況に関する質問」「面会交流調停・審判・調査官調査に関する質問」「子どもの変化に関する質問」の4項目について報告されました。
藤田さんの報告では、この後まとめとして「考察」があり、「提言」として次に挙げる非常に重要な「別居・離婚後の親子の絆を守るための鍵」が発表されました。
①監護親による会わせないという選択肢をなくすこと。
②別居から親子交流再開までのスピードを重要視すること。
①と②を実現するためには、離婚条件や親同士の感情とは切り離して、別居直後から面会が開始」されるような仕組みを最優先で構築しなければなりません。そのためには、現行の裁判所の制度や運用を変えなければならず、次の4項目を盛り込んだ特別法を制定することが必要だと、藤田さんは報告を結びました。
(1)たとえ親同士が不仲になっても、双方の合意なく一方的に子どもを連れ出す「連れ去り別居」を禁止すること。
(2)別居や離婚の際に、養育費や面会交流を含めた「養育プラン」作成を義務化すること。
(3)隔週2泊3日、長期休暇には長期宿泊など、「欧米諸国並みの面会交流を実現」すること。
(4)監護者決定には、もう一方の親と子どもをより頻繁に会わせる「友好親」を優先すること。養育プランを守れない場合は、柔軟に監護者を変更できるようにすること。
報告を聴講した私の感想を最後に書きます。今までこのような実態調査もなく、ただ裁判所の「感覚」だけで子どもとの面会交流が断絶させられたり制限されてきたりした事実に、背筋が凍る思いです。この調査の中で報告されていることは、別居親たちが苦しんでいるという事実であり、ここで提言されていることはどれも至極真っ当なものばかりです。今後この報告が起点となって、実態報告が多くなされ世論を活発化し、別居・離婚後に親子の絆が断たれるという悲劇が日本社会から無くなることを願ってやみません。
実態調査報告書はこちら
第2部 「引き離された親子の面会交流の始め方」
第2部の大正大学・青木教授による講演内容について、以下のように報告いたします。なお、この講演は、青木先生がアメリカに出向かれ、体験され、学ばれたことに基づくものであることを付言いたします。
1.「片親疎外」の定義については、子どもが、片方の親の影響を強く受けて、正当な理由なく、もう片方の親との交流を拒絶する事態であり、同居親による面会交流の拒絶ではない。
2.アメリカ合衆国司法省「女性に対する暴力への対策局」では「子どもとの関係を妨害することは“情緒的虐待”である」とされている。
3.「児童の権利条約第12条第1項(子どもの意見表明権)」があるがため、時として、片親疎外への対応が難しい理由となる場合がある。
4.片親疎外の中核的要素として、以下の3点が挙げられる。
①別居親に対する一連の誹謗中傷や拒絶(エピソ-ドが単発的ではなく持続的)
②不合理な理由による拒絶(別居親の言動に対する正当な反応とはいえない疎外)
③同居親の言動に影響された結果としての拒絶
5.片親疎外の予防として、離婚手続き時の義務(親教育プログラム受講、養育プラン提出)が定められ、面会交流の重要性、子どもを第一に考える視点、親子(父母)コミュニケーションを学ばせる。
6.別居、離婚する親は、「親教育プログラム」を受けなければならない。その後「調停者(ミディエイタ-)」による父親、母親双方の面接を経て、DVの危険性がなければ「養育プラン」の作成を行う。
7.アリゾナ州における子どもの年齢に応じた基本プランを、日本の月1回数時間の標準プランとは全く異質のものであると比較して提示。
8.「共同養育」と「並行養育」では、情報交換の程度に違いがあり、「並行養育」では、父母は情報交換を最小限に控え、互いの養育に関知しない。いずれの場合も、面会交流に関する取り決めが必要で、一般的に取り決めは3年毎に見直しが行われる。
9.2ケ月間子どもに会わせない場合は、会わせない親にペナルティが課される。
10.上記6の調停で合意ができない場合は裁判へ移行し、父親、母親の「養育プラン」提案合戦となる。また、「監護権」を争うと、子どもの監護に関する鑑定が行われる。
11.「高葛藤離婚の場合の面会交流」については、当事者だけでは円滑な面会交流ができないため、面会交流の支援が必要であり、そのための専門機関なども存在する。
12.「引き離された親子の関係修復」について、以下の4点が挙げられた。
①片親疎外の初期段階であれば、子どもの悪口雑言や拒絶行動が強くても、短時間の面会交流を繰り返して関係修復を試みることが効果的。
②できるだけ迅速に面会交流を開始すること。
③同居親を同席させないこと。
④兄弟別々の面会交流もあり。
13、「交流断絶期間にできること」として、以下の4点が挙げられる。交流断絶期間に子どもへの愛情を持ち続けていた証拠を残すと関係修復が進みやすい。
①誕生日などに手紙やプレゼント(要記録)
②日記(ブログ、自分撮りビデオなど)
③定期的な貯金(定期的な入金日付)
④裁判書類を子どもへの手紙として書く(裁判中は決して子どもに見せてはいけない)
当日の資料「引き離された親子の面会交流の始め方」はこちら
以上が、主な講演内容ですが、最後に、私が青木先生のお話を拝聴して思ったこと、感じたことを書かせていただきたいと思います。まず、青木先生のお話終了後、青木先生と受講者の質疑応答がありましたが、青木先生が、実に誠実に、ひとつひとつ丁寧にお答えになったことに感激いたしました。そして、お話して下さるアメリカの実態(アメリカゆえ、州により差異あり)は、我国の現状とは大きな乖離があり、私は大きなショックを受けました。
同様の感想を持たれた受講者の方は少なからずいらっしゃったと思います。また、上記13の「交流断絶期間にできること」は、受講者に大きな示唆となったと思います。しかし、これを行うことに躊躇したり、複雑な思いを持たれたりした方も多いと思います。
でも、私は、愛する子どものため、努力したいと思います。そして、近い将来、不幸にして離婚した夫婦ではあるけれども、子どもにとっては、父親、母親として、養育、監護について、共同して責任を果たす我国に変化するよう、決して容易な道ではないですが、今後共、志を同じくして活動していくことにいたしましょう。