【2014.08.27】 親子ネット講演会 レポート 親にとっての「子連れ離婚」と子どもにとっての親の離婚
子どもにとっての親の離婚~
2014年5月24日、中田和夫氏および堀尾英範氏両名をお招きし、「親にとっての『子連れ離婚』と、子どもにとっての親の離婚」というテーマで講演会を開催しました。
親の離婚を経験した方からの声を集め一冊の本にまとめ出版した中田氏からは、子どもの声を、自身も離婚を経験し離婚した親として子どもに対して何ができるのか多くの前例から学び実践を積んでいる堀尾氏からは、親が子にできることを講演いただき、離婚による子どもの心のダメージを最小化するにはどうすべきなのか、改めて考えるのが本講演会の目的でした。
前半は、中田氏から「子どもにとっての親子の離婚」と題して、二つの印象的なケースを取上げててお話をいただきました。一例目は、「離婚後、実父と離れて暮らしていたが、住所を調べて手紙を書き、実父からメールの返信をきっかけに、23年ぶりに再会し、実父との愛情を確認したケース」。二例目は、「継父を本当の父と認識しており、実父との面談を望んでいなかったケース」でした。子どもは離婚後の監護環境によって、親の離婚の受け止め方が変わってしまうということを強く感じました。子どもは小さいながらも、必死に新しい環境に慣れようと生活していくなかで、自ずとその監護環境に影響を受けるのは必然だと思いますので、大人になった今の気持ちとして、それぞれの言葉は重くつきささりました。
一方でこの二つの事例を聞いていて、実の親からの愛情を強く感じながら幼少期から成人まで過ごしていたら、また違った感覚を持ったに違いないとも思いました。離婚が避けらない事情であることも理解できますし、離婚後の家族のスタイルは様々で構わないと思います。しかし離婚で受けた子どもの傷を緩和するのは親の作業であり、親の思い込みにより、子ども任せにしてはならないと思いました。
まだ精神的に成熟していない子どもが、自身の責任でその後の自分の人生まで考えて物事を判断するのは到底無理です。離婚する親が、離婚で受けた子どもの傷を最小化しその後の人生に責任を持つ、そしてその責任が全うできる社会制度を担保することが欠かせないと改めて感じました。たとえ両親が離婚したとしても、両親との交流を続けることが、子どもの「最善の利益」であるとの考え世界の常識となっています。大人と社会が「最善の利益」を保障し、その上で新たな家庭を築いていくことがセカンドベストである、その思いをより一層強くしました。
後半は堀尾氏から、「親にとっての『子連れ離婚』」と題してお話をいただきました。妻と4歳の子ども(息子)が突然、目の前からいなくなったことがきっかけで、別居後の最善の親子関係に強く興味をもったそうです。予防医学をヒントに、様々な文献を読み漁り学んでいくうちに、その答えはすでに存在しているけれども、ほとんどが英語が答えであり、日本には科学に裏打ちされた情報が伝わってないことに気づき、その普及活動に努めてきたそうです。
ご自身も海外の文献から学んだことを実践したそうです。時間は短くともとにかく、子どもとの頻繁な接触を続けるために、子どもに計600通の手紙を出し、 1日5分の面会を週5回、何年にもわたり続けてきたそうです。
頻繁に子どもと会い続けるというのは、子どもの自己肯定感を下げないようにするために、効果的で欠かすことのできない行動だと科学でも示されておりますし、これを長年実践してきた堀尾氏の実践は非常に参考になるものだと思いました。さらに堀尾氏がすごいのは、交流の内容を充実させるために、国語・算数などの教科書の内容から自然現象の説明まで、ありとあらゆる方法で親の愛情を伝えるために繰り返してきていることです。
そうした長年の経験を踏まえ、「連れ去りは犯罪であり、引き離しは虐待であることを認識してください」、「昔も今も将来も親子であり、子どもに愛情を表現し続けてください」と力強く語ってくださいました。そして最後に、「子どもは親の言う通りにはしないが、親のするようにはなる」との言葉は真実です。親は、どんな困難な状況でも粘り強く努力すること、そして学んで実践することが大切であることを伝えたいと思いますと、締めくくりました。
<中田和夫氏の略歴>
ソーシャル・ネットワーキングサービス「mixi」で4,000人が参加する「親の離婚を経験した子ども」のコミュニティを2006年に設立。以降、管理人として、「離婚の子どもプロジェクト」の立ち上げを行うと共に、両親の離婚を経験した子どもが大人になってから自身の体験を振り返った体験談である「『離婚の子ども』の物語」を出版。
<堀尾英範氏の略歴>
小児科医師の傍ら、ライフワークとして、面会交流、片親疎外のみならず、結婚・離婚・親子・家庭・心身の健康等について、グローバルな視点から様々なアドバイスや提言をしており、当事者の間でも人気の保健学ブログも発信中。