【2015.08.22】 親子ネット講演会レポート「 みんなで支える離婚後の子ども養育」
平成27年8月22日、泉房穂 明石市長、および、馳浩 衆議院議員(現文部科学大臣)をお招きし、「みんなで支える離婚後の子ども養育」と題して、親子断絶防止法の立法化と自治体による面会交流・養育費支援の取り組みについてご講演をいただきました。
1.馳浩衆議院議員の講演
最初に、馳先生より親子断然防止議員連盟(議連)での体制と、親子断然防止法案の検討状況についてお話いただきました。
離婚後における親子の継続的な関係を維持できるような様々な方策を規定した法律の素案をご紹介いただき、明石市の取り組みも参考にしながら、来年の通常国会での制定を視野に入れ、立法化していきたいとのお話でした。
馳先生は、平成25年に離婚の際に未成年の子があった件数が13万組あったことを例にあげ、「親子が離れていることが、子どもの成長を阻害したり、犯罪に巻き込まれる原因となったり、あるいは、貧困につながっているのではないか?その背景に、法律が社会の実態についていけていない事があるのではないか?」と危惧されています。
また、馳先生は、親子断絶の問題の他にも、児童虐待防止法、小中学校への不登校、家庭内不和、いじめ、性同一性障害の問題などについても取り組まれていますが、特に、全国に12万人存在する不登校児の問題は、親子断絶の問題と関連が深いとの見解を示されました。
これまで、この様な問題について深く理解している国会議員は多くはなく、「親の問題でしょ?」と言われる現状がありましたが、自治体で担う部分、人材の育成、ルール作り等を含め、立法府での議論が必要であり、これらの問題が貧困につながっている実態を見ると、公共財としての立法が必要だとお話されました。
現在、超党派の議連で親子断絶防止法の制定にむけて取り組んでいるが、関係省庁も含め多くの関係者の理解がなければ進まない。地方議会からの意見書を出して頂けると大変助かるとの事でした。さらに、今後の国会開催中に今回と同様の会合を開催していただき、全ての国会議員に対してこの問題を伝えてほしいとのコメントもいただきました。
2.泉房穂明石市長の講演
次に、泉房穂 明石市長のご講演の内容をご紹介いたします。
泉市長は冒頭で、「今、私たちは、歴史の一場面に関わっていると思う。近いうちに法律素案の通りに形にするべきだ」と述べられました。
また、「今日は皆様への敬意をお伝えしたい。皆様の取り組み、ご努力に敬意を表したい」と述べられ、我々も大いに勇気づけられました。
20年ほど前、ご自身が弁護士として離婚問題に関わり、父母の代理人として弁護活動されていたときに、母が監護しているお子様より、「弁護士さんはどうして離婚の事を手伝うのか?私にとってのお父さんは悪くなく、僕の大好きなお父さんだ。」と言われて愕然とし、子どもの立場を考えて社会的な手を差し伸べる必要があると感じたこと、また調査してみると、離婚の際に子どものことを決めなくて良いのは世界の中で日本ぐらいだった事が分かり、何とかしようと決意した事をお話しされました。
その後、明石市の市長となられ、離婚をする場合には子どもの養育について取り決めが絶対に必要であると考えていたという事でしたが、検討の結果、現在の運用の中でできるよう、あくまでも子どもの立場を考え、支出を抑えながら、義務・強制ではなく、問いかける形で対応をスタートされました。
取り組みの柱は、弁護士、臨床心理士、社会福祉士を市職員として採用し、相談できる体制を整えた事、子どもの養育に関する合意書等の参考書式を全ての離婚届に挟んで配布するようにした事、ネットワーク会議を立ち上げるなど関係機関との連携ができるようにした事の3つです。
他にも、親子の面会交流の際には、公共施設を優先予約したり、無料で利用できるようにし、今年度は、離婚を経験した子どもたちを対象に無料の子どもふれあいキャンプを実施したり、実効性のある支援をしています。
このような自治体の取り組みに対して、厚生労働省・法務省等のバックアップも必要ですが、厚生労働省に現在の取り組みをご報告されたところ、後押しして頂けると前向きなコメントを頂いたとのことで、国会での動き、省庁での取り組み、自治体の取り組み等が全てつながってきていると感じているとお話されました。
他の自治体からも、明石市への視察が相次いでおり、参考書式を採用・検討し始めている自治体もかなり出てきているとの事でした。
そのなかで、明石市での取り組みは、低予算(初年度年間39万円)で、書式等は他の自治体で使ってもらっても良く、どこの自治体でもできることなのでさらに実績を積み重ねたい、また、明石市の施策だけが突出するのではなく、作成した書式等は全てダウンロードできる様になっているので、各自治体でもぜひ活用して取り組んでいただきたいとのことでした。
泉市長は、まだ、本来すべきことの1割程度しかしておらず、これからは、面会交流のコーディネート機能を果たすべく行政が関わっていく必要もあり、計画中の面会交流センターをはじめ、今後の明石市の関連施策についての3つのポイントをお話されました。
面会交流の実効性の担保のため、交流センターを開設したい(委託も検討)。離婚届提出の際に子どもの養育計画の添付を努力義務とし、提出された方への特典も考えたい。法的手続きの費用援助等の支援を考えたい。
さらに、「子どもが泣いていると気付けば、泣いていると言うだけでは不十分。泣かないようにしないといけない。これまで私たちは、つらい気持ちを正直に言えず密かに泣いている子に無頓着だった。そこに気づいたのであれば、その状況を解消するよう責任を果たすべきです」と述べられました。
また、施策をすすめていくにあたりいくつかの壁はあるものの、子どもの立場で施策を考える事は、国・自治体にも責任があり、費用についても社会負担が求められると考え、「子どもが泣かなくても良くなる様、泣く機会が減るように、泣いたとしてもその後、笑顔になれるように取組んでいきたい。」と話されました。
3.講演のおわりに
お二人のご講演の後の質疑応答の時間には、ご出席頂いた議員の先生・有識者の皆様から、様々なご質問・ご意見につきご議論いただき、この中でも貴重なお話を聞く事ができました。
馳先生、泉市長とも、これからの施策について、豊富なアイデア・知見をもとに大きな声でとてもエネルギッシュに語っていただき、大変密度の濃い講演会になったのではないかと思います。
思えば明石市の取り組みを知り、これを是非全国に広げてもらいたいと考え明石市を訪ねてから1年が経ちました。
お忙しい中、ご来場下さった議員の先生、自治体関係者の皆様はもとより、様々な形でご協力頂いた会員の皆様のおかげで、良いタイミングでこの様に大きく盛り上がった講演会を開く事が出来たと思います。ご来場いただきました皆様をはじめ、関係者各位のご支援、ご協力に厚く御礼申し上げます。
4.関連情報
<明石市情報>
明石市こども養育支援に関する取り組み 平成26年5月8日版
<講演会に出席くださった議員/有識者の感想>
はせ浩 オフィシャルブログ「はせ日記」