「子どもを連れ去られ8カ月後に取り返した父親の話」 ぽんた(仮名)
私は、1人息子を元妻に連れ去られました。皆様の参考になればと思い、その体験談を簡単に記したいと思います。
息子が3歳のときです。あるとき、妻(当時)は子を置いて勝手に実家に帰ってしまいました(のちに妻は「夫に追い出されたのだ」と審判の陳述書で主張しましたが)。妻に今後の意向を聞くと、私の家には戻るつもりはないが、週末は妻の実家で息子の面倒をみたいとのこと。私は妻の身勝手さに大変困りましたが、母子の交流も大切だと思い、毎週末2-3日間、妻の実家に息子を泊らせました。こうして息子は、平日は私の家で過ごして保育園へ通い、週末は妻の実家で過ごすという生活となりました。
そのような生活が始まってから約3ケ月後のある週末。いつものように息子は妻の実家に泊っていましたが、妻は突如として代理人弁護士を立て、息子を返さないという手段にでました。妻の代理人弁護士は「今後子どもとの一切の接触を禁ずる」と私に通告し、以後私は息子と会えなくなりました。つまり妻は、一時的な面会交流に見せかけて私を騙し、事実上の連れ去りを実行したのです。
連れ去りから10日後、当方も代理人弁護士を立て、家裁に監護者指定・子の引き渡し審判および審判前の保全処分の申し立てを行いました。審判中、私は何度も妻側に面会交流の要請をおこないましたが、拒否されました。
連れ去りから2カ月後、審問や調査官調査を経た上で、裁判官は、「子どもを平日は父親の家で過ごし、週末は母親の実家で過ごすという生活に戻した上で、付調停へ移行したい」旨の要請を両者に行いました。妻側は子どもの環境を戻すことについては拒否し、結局審判のみが付調停へ移行しました。
連れ去りから3カ月後、付調停が始まりました。しかし、調停の場に妻は来ませんでした。持病が悪化し、入院したとのことでした。そのため息子の世話は妻の母がしているとのこと。追加の調査官調査が決定し、また調査官の要請により私と息子との1泊面会交流が実現する運びとなりました。
連れ去りから4カ月後、調査官要請のおかげで私は4カ月ぶりに息子に会うことができました。しばらくぶりに接する息子は語彙が増え、体格も一回り大きくなり、わずか数カ月の間にも立派に成長したことが伺えました。
連れ去りから6カ月後、妻の入院は長引き、付調停は審判に移行しました。連れ去りから8カ月後、審判および保全処分の結論が出ました。裁判官は、私を息子の監護者に指定し、保全処分についても認められました。
審判結審から10日後、ようやく息子は私の元に戻ってきました。息子は連れ去り前と変わらず私に懐き「パパ、剣ごっこやろう!」などと言いながら、元気にはしゃいでいました。私は息子がPA(片親疎外)の心理状態に陥っていないことに大変安堵しました。
私が息子の監護者となった後、私と妻は離婚・面会交流調停を行いました。結果、私達は調停離婚し、息子の親権者は私となりました。そして、母子の面会交流は、月2回2泊3日ずつで実施するという方向に決まりました。一応の決着がついたその時点で、連れ去りから1年3カ月の月日が経過していました。
現在、4歳になった息子は母親との面会を毎回楽しみにしています。泊りの面会から帰ってくると、「ママと○○へ出かけたよ!」などとニコニコしながら話してくれます。妻とは離婚となりましたが、結果的にはこれでよかったかな・・・とも思います。今後の課題としては、共同養育を実施するために、養育プラン作成の検討を考えています。
今でも息子を連れ去られたときの気持ちを振り返ると、足元が震えます。最愛の息子に会うことが叶わず、しかもその先の面会の見通しも見えないことが、これほどに苦しいとは・・・。当時、私は身心ともに疲労し、生きながら半分死んでいました。同時に、「法治国家の日本でこんな理不尽がまかり通るのか」という怒りも湧きあがり、その墳怒の感情が戦いの原動力になったように思います。
一般論として、父親側が子を連れ去られた場合、圧倒的不利となり審判に勝つ見込みはほとんどありません。しかし結果として当方は審判で勝ちました。これは色々な面で状況的に私が有利に立てたからだと考えます。その主な要因を挙げると、
・母親自身に病気があったこと
・母親が父子の面会を拒否したこと(面会交流の寛容性がなかったこと)
・息子の養育には当初から児童相談所が相談・介入しており、私が児相と連携を取っていたこと
・連れ去り後、早期に優秀な弁護士にめぐりあえたこと
・裁判所側(裁判官、調査官、調停委員)も比較的公平な視点で動いていただけたこと
…という点が挙げられます。私は、ある意味においてとても運がよかったといえるでしょう。
一方、この日本では今も連れ去り被害に苦しむお父さん、お母さん方が多数存在しており、そのことに対して私は心を痛めています。実子誘拐が合法扱いになるなどという馬鹿げた日本の現状は、あまりに理不尽であり、早急にこれを変えなければなりません。子の連れ去りは、子どもにとっても父母双方にとっても利益を生みません。
真の意味で男女平等となり、そして子の福祉が最も優先される世の中が一刻も早く訪れるよう願っております。
皆さま方のご健闘をお祈りします。
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