「再婚相手または同棲相手による連れ子への虐待」 平凡太(仮名)
また、同棲相手による連れ子への虐待が明るみに出た(参考1)。男は内縁の妻の長男(当時2歳)に、夕食のときに『いただきます』と言わなかったので回しげりし、両足骨折などの重傷を負わせている。先月26日にも、この時もわずか2歳の女の子が母親と同居する男に踏みつけられ殺されるというあまりにもおぞましい事件が報じられたばかりである。女の子の背中や足には複数のあざがあったことから、日常的な虐待があったことが疑われているという(本サイトの「関連記事(2010.12.26京都新聞)」参照)。
【参考1】同棲相手による連れ子への虐待(クリックすると拡大表示されます)
児童虐待について、産経新聞の「主張」では、「親権停止」「児童虐待防止の切り札に」と題して、法務省の法制審議会の部会が子どもを親の虐待から守るため、親権を最長2年間停止することなどを柱とした要綱案を全面的に支持している(参考2)。しかしながら、この要綱案では、親権の停止は、たまたま虐待が見つかった後で取られる処置であり、たとえば、泣き声も出せない程、恐ろしい虐待が行われている場合など、外部から見つからなければ何の効力もない。現実に、最近の事件では大抵、子どもが殺害されたり、重篤な身体的傷害を負う段階になって初めて警察や病院で虐待の事実が明らかになっている。
【参考2】子どもを親の虐待から守るための要綱案を支持する新聞記事
(クリックすると拡大表示されます)
特に最近報じられる中で深刻なケースは、離婚した母親の連れ子が再婚相手、又は、同棲相手に虐待される場合である。ある日本の研究者はこのような事件について、外国の研究者から、父親はどうしているのか、という質問を受けた、という。外国人ならずとも、誰しもが抱く疑問であろう。共同親権、共同養育が行われている多くの欧米諸国ならば、当然、父親によって虐待の兆候が発見されるであろうし、また、仮に母親の単独親権であった場合には、父親への親権の移動が検討されていたであろう。いずれにしろ、子どもへの虐待が深刻になることは避けられる可能性が高い。
しかし、単独親権制の日本では、大抵の場合、離婚後、親権を持たない親(多くは父親、もちろん、母親の場合もある)は子どもと生き別れとなり、子どもの居所さえ分からない場合も少なくない。そして法制審議会の案が成立すると、虐待が起こっても親権の移動が検討されることもなく、単に親権の停止が行われる。産経新聞の「主張」では、不思議なことに、共同親権や共同養育のことには全く触れていない。法制審議会の案を全面的に支持する姿勢を示すことで、それらのことから(世間の)関心を逸らさせようとする意図さえ感じる。誠に奇妙奇天烈と言わざるを得ない。
日本が1994年に批准した「児童の権利条約」の第9条3には、「締約国は、児童の最善の利益に反する場合を除くほか、父母の一方又は双方から分離されている児童が定期的に父母のいずれとも人的な関係及び直接の接触を維持する権利を尊重する。」(外務省サイト:トップページ > 外交政策 > 人権・人道)と明記されている。批准しているにもかかわらず、日本の現状は明らかにこれに反している。
親の連れ子を、親の再婚相手、又は、同棲相手の虐待から未然に防止するためにも、今や世界的に一般的となっている離婚後の共同親権、共同養育へと、日本も早急に法律を変えるべきである。