2017年04月15日 産経新聞 『子供“連れ去り” 国内外から日本の姿勢批判「英語では『誘拐・拉致』だ」 ハーグ条約発効3年』
子供“連れ去り” 国内外から日本の姿勢批判「英語では『誘拐・拉致』だ」 ハーグ条約発効3年
一方の親による子供の連れ去りをめぐり、日本の予防・解決態勢の不備を指摘する声が国内外で強まっている。今国会では「現状のままでは連れ去りが続く」との危惧が提起されたほか、子供を連れ去られた親でつくる団体も国に対策を求めた。海外では対日制裁を求める声も上がる。ハーグ条約の日本での発効から3年を迎えた中、日本の対応に注目が集まっている。(小野田雄一)
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「日本はハーグ条約に加盟しながら、国内では連れ去りが実質的に容認され、むしろ“連れ去った者勝ち”の状態だ」「連れ去りというが、英語では『誘拐・拉致』だ。米国から子供を連れ去って国際手配された日本人女性もいる。子供の返還に応じない国への制裁を定めた『ゴールドマン法』に基づき、米国が日本を制裁する恐れもある」
日本維新の会の松浪健太議員(45)は今国会の衆院予算委員会委や法務委員会でこう指摘した。その上で子供の親権をめぐる夫婦間の訴訟などで、子供を連れ去った側が親権を取りやすい現状を改める考えがあるか政府に問いかけた。
安倍晋三首相(62)は「親権は個別事情を総合考慮して決定されている」と答弁。岸田文雄外相(59)も「ゴールドマン法による制裁は過去に例がない。対日制裁の可能性は低い」との認識を示した。
松浪氏は「親権紛争の際、日本が『継続性の原則』(連れ去りの結果であっても、子供の現在の成育環境に問題がない限りは現状維持を尊重する考え方)を過剰に重視してきた結果、連れ去りがなくならないということを政府は認識すべきだ」と注文した。
3月22日には、一方の親に子供を連れ去られた親らでつくる団体が、国に連れ去りをなくす政策の推進などを求める請願を行った。
団体メンバーの男性は「多くの先進国では子供を連れ去ると誘拐や児童虐待で刑事罰が科される。日本の刑法でも誘拐罪などで摘発できるが、家庭内の問題とされ、実際はほぼ適用されない。日本でも刑事罰を適用し、不当な連れ去りをなくすべきだ」と話した。
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海外では4月6日、米下院外交委員会の人権小委員会でゴールドマン法についての公聴会が開かれ、日本などに子供を連れ去られた米国人らが証言した。委員会の冒頭、議長が岸田外相の発言を『無礼だ』と述べ、「日本を制裁すべきだ」と話す場面もあった。
日本人女性に4人の子供を連れ去られた男性も「大阪高裁は子供を返さない決定をした。ハーグ条約違反だ。トランプ大統領は先進7カ国首脳会議(G7サミット)で日本に問題提起すべきだ。対日制裁を発動すべきだ」と訴えた。
男性の話などによると、大阪高裁は昨年1月、子供を米国へ返還することを決定。しかし妻が新たに訴訟を起こし、同高裁は今年2月、「男性には資力がなく、返還は不適切だ」との逆転判断を示した。男性は最高裁まで争うという。
イタリアでも今年、最大手紙「ラ・スタンパ」を含む複数の新聞が、日本人妻に子供を連れ去られたイタリア人男性の記事を掲載。大きな反響を呼び、政府に日本への働きかけを求める声が高まっているという。
こうした動きについて、外務省ハーグ条約室は「ハーグ条約は、返還で子供への不利益が生じる場合などに返還しないケースを認めている。米国人男性の条約違反という主張は遺憾だ」と指摘。また「全ての条約加盟国が実績を公表しているわけではないが、日本の姿勢や実績が加盟各国に比較して劣っているとは考えていない」としている。