2017年04月15日 産経新聞 『子供の国際返還、実現は3割 ハーグ条約発効3年、外務省が実績取りまとめ』
子供の国際返還、実現は3割 ハーグ条約発効3年、外務省が実績取りまとめ
国際結婚した夫婦間などで国境をまたいだ子供の連れ去りが起きた場合、原則的に子供を元の居住国に戻すことなどを定めた「ハーグ条約」をめぐり、日本に関連する子供の返還実現率は約3割であることが15日、分かった。日本での同条約発効から4月1日で3年を迎え、外務省が3月31日までの実績をまとめた。
同条約によると、子供を連れ去られた親は、自国や連れ去られ先の国の中央機関(日本は外務省)に子供の返還に向けた援助を申請できる。中央機関は夫婦間の交渉などを支援。交渉がまとまらなかった場合、裁判所が返還すべきかどうか判断する。返還が原則だが、(1)連れ去られ先の環境に子供が適応している(2)返還で子供の心身に悪影響や危険が生じうる(3)子供が返還を望まない-などの場合、返還しなくてよいとする例外規定がある。
まとめによると、「日本から外国への返還に向けた援助」の申請件数は68件、「外国から日本への返還に向けた援助」の申請件数は56件。このうち「日本から外国への返還」が実現されたのは20件、「外国から日本への返還」が実現されたのは19件で、実現率はともに3割前後となった。
一方、「日本から外国へ返還しない」と決まった事例は16件、「外国から日本へ返還しない」と決まった事例は8件だった。
同条約は1980年に制定。国際結婚の増加に伴う子供の連れ去り問題に対応するため日本も加盟し、2014年4月に発効した。
【用語解説】ハーグ条約
一方の親がもう一方の親の同意を得ることなく、子供を自分の母国へ連れ出す「子供の連れ去り」から子供を守るための国際ルール。連れ去られた子供は一方の親や親族、友人との交流が断絶されるほか、異なる言語や環境への適応も必要となる。生活の急変は子供に有害な影響が生じる可能性があり、原則として元の居住国へ返還することが義務付けられている