2015年02月05日 中日新聞 『離婚後の子育て 両親ともに、の視点で』
離婚後の子育て 両親ともに、の視点で
離婚時に夫婦で子どもの養育計画を作っておきたい。子どもと一緒に暮らせない親が子どもと定期的に過ごす頻度や養育費など。離婚後も両親ともに子育てにかかわるという視点を持ち続けたい。
兵庫県明石市は昨春から、離婚届を取りに来た人に「養育合意書」の書式を配っている。夫婦が今後、子どもをどう育てていくのか。養育費の金額や支払期間、親子が定期的に会う「面会交流」の方法や頻度などを記入する。
作成は強制ではないが、夫婦とも今後の生活を考えるのに精いっぱいとなり、子どものことに十分思いが及ばないこともある。合意書づくりを通して「具体的に何を決めるべきか」が見えてくる人は少なくない。
夫婦だけで話し合いがつかない場合もある。市は調停員経験を持つ専門員らによる無料相談や、離婚を考えている夫婦を対象にしたガイダンス講座も試行中だ。
二〇一二年四月に施行された改正民法で、「子どもの利益」を考慮し、離婚届に養育費と面会交流に関する確認欄が設けられた。離婚という家族の問題に明石市が踏み込んだのも法改正が背景にある。あくまで養育支援の一環だ。親の離婚で親と生き別れる子どもを生まないというのが目的である。
厚生労働省の調べでは、親の離婚により、一緒に暮らしていない親と会っていないという子は十五万人とも推計される。
日本では婚姻中は両親ともに親権を持つが、離婚後は一方しか持てない単独親権となる。親権を持たない親は戸籍上は他人となるため、子どもとのかかわりから遠ざけられてしまうこともある。
親権を持たない親が運動会を見に行くことも許されない。二カ月に一回程度、外出先で数時間しか子どもと過ごせないという親は少なくない。子どもに会えない親が面会を求め、家裁に申し立てるケースは年間一万件を超える。
夫婦が子育てに協力するのは当然になった今日、離婚が一方の親との関係を断ち切ることになっては子どものためにならない。離婚後も共同親権の欧米では離れて暮らす親も子育てにかかわる。百日程度はその親の家で一緒に過ごすのは通例だ。離れて暮らす親と定期的に会えることが、子どもの健やかな成長につながるという研究も進んでいる。
夫婦が葛藤を乗り越え子どもが双方の親とつながりを保てるよう、民間団体やNPOなどの力も借り、さらに支援を増やしたい。