2014年10月21日 読売新聞 『別れてもわが子…父母に養育手帳』
別れてもわが子…父母に養育手帳
全国の自治体に先駆けて、離婚後の親子の面会方法や養育費の支払額を記入する合意書を配布している明石市は今月から、離婚後の両親が子どもに関する情報を共有するための「養育手帳」の配布を始めた。今後、親子の面会交流の場所として市立天文科学館を提供する計画で、離婚家庭の継続的な支援を目指す。(中谷圭佑)
市は離婚後の子どもの権利を守る取り組みとして、2月に県弁護士会など6機関と「市こども養育支援ネットワーク連絡会議」を発足させ、4月からは離婚届の交付時などに合意書を配布。専門の相談員が月1回無料相談を実施している。
しかし、民間支援団体や弁護士らからは「離婚後は父母間の連絡が途絶え、子どもについての情報を共有できないケースが多い」「合意書で面会交流の頻度などを定めても、場所や日時を決めるのが難しい」などの声が寄せられていた。
このため、離婚時だけでなく、継続的な情報共有が必要と判断し、希望者に子どもの生活や、面会時の状況を記録する養育手帳「こどもと親の交流ノート」(A6判、30ページ)を無料配布することにした。
日記帳形式で、子どもと暮らす親が、毎日の生活や気になっていることなどを記入。別居している親は、面会交流時の出来事などを書き込む。今後、市のホームページからもダウンロードできるようにする。
また、面会交流の場所として市立天文科学館を無償で提供する準備を進めている。対象は市内在住の中学生以下の子どもと、その両親。イベントやプラネタリウムを優先予約でき、申し出れば親子とも入館料は無料になる。
市市民相談室は「子どもの立場から、行政として支援できることを今後も模索していきたい」とする。
離婚家庭の支援などに取り組む公益社団法人「家庭問題情報センター」の山口恵美子・常務理事は「父母が離婚後も共同で子育てしているという意識を持ち、安心して面会交流できる環境を行政がサポートすることには大変意味がある」と評価している。
面会交流 離婚後や別居中に、離れて暮らす親子が定期的に会うなどして交流を続けること。2012年の民法改正で、離婚時に養育費とともに面会交流についても取り決めることが定められた。義務ではないため、実際には取り決めをしないケースも多い。