2014年04月21日 朝日新聞 『宮城)離婚などで子らと会えぬ人を支援 女性ら支部設立』
宮城)離婚などで子らと会えぬ人を支援 女性ら支部設立
離婚や別居で子や孫に会えなくなった人をサポートする全国組織の東北支部が20日、立ち上がった。中心になって動いた一人は、孫に会えなくなった仙台市の女性だ。同じ立場の人に、「一人で苦しまないで」と呼びかける。
仙台市泉区の笹裕子(ひろこ)さん(57)は、もうすぐ4歳になる孫と3年ほど会えていない。長男が離婚し、孫は母親に引き取られた。思い浮かぶ姿は、赤ちゃんのまま。同じ年頃の子どもを見ると胸が締め付けられる。
海外の映画で描かれるように、別れた後も親子が定期的に交流する生活を想像していた。
現実は違った。孫の好きなスイカを送ると、そのまま送り返された。電話もやめてほしいと断られた。誕生日やクリスマスにはカードを送るが、読まれているかは分からない。
苦しむ息子にかける言葉は見つからず、自分の親にも相談できない。孤立感を抱えていたとき、離婚した親子が交流できる仕組みを作ろうと活動している「親子の面会交流を実現する全国ネットワーク」(親子ネット)の存在を知った。
2008年、東京にできた。互いの悩みを相談しあったり、親子の交流を保障する法律の制定を議員に呼びかけたり、自治体に支援を求めたりしている。
その後、福島や岩手の同じ境遇の人たちとつながり、悩んでいるのは一人ではないと少し楽になった。全国14番目の東北支部を一緒に立ち上げることにした。匿名で活動する人が多い中、あえて名前を出すことにした。誰もが当事者になりえる現実の話として、イメージしてほしいからだ。
20日に仙台市で開いた設立集会で、笹さんは「親側の会いたいという気持ちを押しつけたいのではなく、子が幸せになってほしいというのが一番の願い」と強調した。孫に送るカードに込める思いは、「いつも忘れないでいるよ」。両親が離婚しても、多くの人に愛されて育ったと感じてほしい。そのためにどういう関わり方ができるかを、みんなで考えたいと思う。
東日本大震災の後、経済的に苦しくなって離婚したり、原発事故の影響で別居したりする家族の話を耳にする。「東北の人は離婚について話したがらないが、潜在的な当事者は多いと思う。そんな人の孤立を防ぎたい」
■面会求める申し立て 仙台家裁、10年で3・7倍
県内の12年の離婚件数は3957件。婚姻件数1万2315件の3分の1近い。民法で、離婚後の親権は一方の親にしか認められていないため、離婚で子どもと会えなくなることは珍しくない。親子ネットによると、全国で毎年15万~16万人の子どもが片方の親との交流を絶たれているとの推計があるという。
子どもと定期的に会う面会交流を求める家庭裁判所への調停・審判の申し立ても増えている。12年に仙台家裁が新たに受け付けたのは169件。02年の46件の3・7倍に増えた。