2014年04月13日 北海道新聞 『ハーグ条約発効 在外公館も積極関与を』
ハーグ条約発効 在外公館も積極関与を
国際結婚が破綻し、子どもの奪い合いが起きたらどうするのか。その解決ルールを定めたハーグ条約が今月、国内で発効した。
片方の親が16歳未満の子どもを国外に連れ去り、もう一方の親から返還の申し立てがあれば元の国に戻すことを原則としている。
既に90カ国が加盟している。海外に連れ去られた子どもの返還も円滑になるかもしれない。
ただ、条約が採択されたのは34年も前で、子どもの権利保護など不十分な点は少なくない。
とりわけ返還時に子どもの意思が反映され、戻った後の安全も確保されるかどうかが心配だ。
国内で加盟に慎重な意見があったのも、日本人の妻が連れ帰った子どもの多くが外国人の夫から虐待を受けていたためだ。
政府や司法当局はこうした事情を十分に考慮し、子どもの利益を最優先に対応すべきだ。
日本に子どもが連れ去られた場合、外国からの申立窓口は外務省になる。子どもの居場所を捜し、東京、大阪の両家庭裁判所のいずれかが返還の是非を決める。
逆に、国内から連れ去られた時は外務省が相手国と交渉し、相手国の機関で判断する。
元の国に戻ると暴力を受ける恐れがあるときは、返還を拒否できるとしている。
問題はそのハードルが高過ぎることだ。連れ去った側が裁判所で将来にわたって被害を受ける可能性も立証しなければならない。
外国で証言を集めるのは困難を伴う。在外公館は相談に積極的に応じ、被害記録を証拠として文書で残すなどの支援を求めたい。
返還命令が出ても親が拒否した場合、執行官が親子を引き離す。その際は細心の注意が必要だ。
力ずくで取り上げれば、子どもに精神的なダメージを与えかねない。最高裁は粘り強く説得に努めるよう執行官に徹底してほしい。
離婚後の子どもの扱いをめぐる紛争は、国外に限った問題ではない。片方の親が無断で子どもを連れ去ったり、逆に面会を拒否されたりするケースが増えている。
日本は欧米と違い、離婚後は父母いずれかの単独親権しか認められていない。政府や国会はこうした制度が紛争の背景にあることを認識する必要がある。
子どもが、離別した親との面会を望んでも大人の都合で実現できないとしたら、あまりに理不尽だ。条約発効を機に、離婚後の親権や親子交流のあり方についても見直したい。