2013年07月07日 47NEWS 『【ハーグ条約加盟へ】 「あまりに遅すぎた」 子どもと離れ10年の女性』
『【ハーグ条約加盟へ】 「あまりに遅すぎた」 子どもと離れ10年の女性
国際結婚の破綻などで片方の親が子どもを国外に連れ去った場合、原則として元の国に戻すことを定めたハーグ条約。日本がこれまで未加盟だったため、連れ去りを懸念した米国の裁判所から子どもとの面会を制限されてきた女性がいる。離れ離れになって約10年。日本は年内にも加盟する見通しだが「あまりにも遅すぎた」と悔しさをにじませる。
「個人的には遅すぎました。でも私だけの問題ではないので、やっとここまできたという気持ちもあります」。離婚などをきっかけに面会を絶たれた親子の交流を支援するグループで活動する 鈴木裕子 (すずき・ひろこ) さん(44)=東京都在住=は言葉を選びながら話した。自身も米国在住の男性と離婚。現地に住む娘2人と思うように会えない親の1人だ。
航空会社の客室乗務員だった鈴木さんは1996年に韓国人男性と結婚。2人の娘に恵まれた。米国の中南部で暮らしていたが、夫との関係がぎくしゃくするようになり、2003年夏に家を追い出された。当時、長女は5歳、次女は3歳。
娘たちとの面会を求めたが夫は拒否し、2人を連れて米国の別の都市に引っ越した。知らない間に日本で離婚届を出され、鈴木さんは離婚無効訴訟を起こすため帰国を余儀なくされる。「必死で子どもを取り戻そうとしたが、何の知識も助けもなかった」
米国で離婚裁判が始まったのは07年。家を追われて以降、一度も娘たちに会わせてもらえていなかった。最終的に離婚は成立し「養育実績」に基づいて元夫が単独で親権を得た。
米国は父母の共同親権が主流。鈴木さんによると、日本がハーグ条約に加盟していなかったため、裁判所が鈴木さんによる子どもの連れ去りを懸念したという。
その後は米国で会ったり、インターネット電話で話したりはできたが、泊まりがけや日本での面会は許されなかった。
幼いころは「マム(お母さん)」と甘えていた娘たちだったが、思春期を迎えるとよそよそしい態度を取り始めるように。最近は送った贈り物が返送されてくることもある。「条約加盟で娘は日本に来ることができるようになる。でも(元夫の)一方的な話を聞いて育った娘たちにそんな気持ちはないでしょうね」と鈴木さん。
「いつの日か私の名前をネットで検索し、私の思いや愛情に気付いてくれるはず」。名前を明かし、取材に応じる理由だ。
【ハーグ条約】 正式名称は「国際的な子の奪取の民事面に関する条約」。国際結婚の破綻による離婚が増え、一方の親が無断で子どもを国外に連れ去るケースも増加。子どもがもう一方の親と会えなくなったりする不利益を受けないよう国際ルールが定められた。1983年に発効。 ことし6月現在、米国や欧州連合(EU)加盟の各国、韓国、タイなど90カ国が加盟している。 家庭内暴力や虐待から避難したケースへの対策が不十分として、加盟に批判的な意見もある。
(共同通信)