2013年06月12日 毎日新聞 『ハーグ条約:「両親の愛、日常的に」米で破綻の日本人夫婦』
ハーグ条約:「両親の愛、日常的に」米で破綻の日本人夫婦
ハーグ条約の国内手続き法が12日、参院本会議で成立し、条約加盟に向けた環境が整った。日本が条約に入ると、外国(加盟国)に住んでいた日本人同士の結婚が破綻し、一方の親が子を日本に連れ帰ったケースも適用の対象となる。
東京都内在住の男性会社員(42)は2001年に同い年の日本人女性と結婚した。
転勤に伴い、07年に妻と当時4歳の長男を連れて渡米したが、妻は09年3月、「子供の春休みを利用して1カ月ほど日本に帰る」と言って長男と帰国したまま、米国に戻らなかった。
渡米前から精神的に不安定だったという妻は同年8月、弁護士を立てて東京家裁に離婚調停を申し立て、「養育のための費用を払わなければ、子供と会わせない」と主張してきた。日本がハーグ条約に加盟していないため、男性は米国に滞在したまま、子の返還を求めることができなかった。
長男との面会や裁判のため、月1回は米国から日本に戻っていたが、交通費や宿泊費はいや応なしにかさんだ。男性は結局、会社に頼み込み、10年7月、勤務地を日本に戻してもらい、帰国した。
離婚調停は不成立となったが、家裁は長男を養う権利を決める審判で、これまで同居してきていることを理由に妻を「監護者」と決定。今も家裁で面会回数を巡る争いが続き、長男とは月1回しか会えない状態だ。
男性は「もし日本がハーグ条約に加盟していたら、子供をいったん米国に戻し、米国の裁判所で年間100日間は子供と過ごせる判断が出されていたと思う。今回、日本が条約に加盟する以上、日本の裁判所は、片方の親から子を引き離すのではなく、両方の親からの愛情を子供が日常的に受けられることが子の利益になるという考えに転換すべきだ」と話している。【伊藤一郎】