2013年01月25日 朝日新聞 『(いま子どもたちは)親が離婚した…:2 父に会えば、きっと幸せに』
(いま子どもたちは)親が離婚した…:2 父に会えば、きっと幸せに
No.451
「お父さんに会いたい」
神奈川県に住む中学2年の女子(14)はそう願う。
1歳のときに母と別れ、どこで何をしているのかわからない。会っても何を話せばいいのかわからない。でも――。「父を知らないから、自分のこともわからない気がする。いつまでも自分に自信が持てず、大人になれないようで怖い」
一人っ子。祖父母の家に同居し、母はパート勤務で深夜まで帰宅しない。その母は時々、自分に八つ当たりをしたり、一人で遊びにでかけたりする。「私はきっと望まれて生まれたわけじゃないんだ」
母は未婚のまま自分を生んだのだと勝手に思い込んでいた。離婚の事実を知ったのは小学2年のとき。学校の授業で、赤ちゃんのころの写真が必要になった。母が出してきた写真には、生まれたばかりの自分に添い寝する母と、笑顔でピースサインをしている「知らない男の人」が写っていた。なんだか幸せそうに見えた。
「あなたにはお父さんがいる。今は事情があって別れて暮らしている」。それだけ言うと、母は泣き出してしまった。驚くとともに、「これ以上は母に聞いてはいけないんだ」と感じたという。
母の外出時をねらい、自宅の棚やタンスなどをあさった。ようやく見つけた母子手帳で、父の名前を知った。東京の住所が記されていた。
「お父さんは東京にいる!」
小学4年の授業で「学校から見えるもの」を写生するよう言われた。見えるはずのない東京タワーを描いた。一人で電車を乗り継ぎ、母子手帳の住所を訪ねたこともあるが、見つけられなかった。インターネットで氏名を検索してもみたが、今も所在はわからない。
寂しさ、悲しさ、悔しさ。感情にフタをして「サイボーグのように」日々をやり過ごしてきた。「お父さんに会えば、幸せになれる。自分でそう期待しているんです」。昨年末、母に内緒で父へのクリスマスプレゼントの紺色のマフラーを買った。いつか会う日のために、机の奥に大事にしまってある。
(古田真梨子)