2012年1月21日 The Economist 『Child-snatchers – A dark side to family life in Japan』
以下、日本語訳。
日本における親による連れ去り事件
子どもの連れ去りをする者たち~日本の家族制度の暗闇
(東京)
このクリスマスに、アメリカ在住のニカラグア人であるモイセス・ガルシアさんは、ほぼ4年間を費やし、そして、35万ドルを費やして戦った結果、プレゼントを手にすることができた。
それは、9歳になる娘が戻ってきたことである。
2008年、カリーナちゃんは、母親により日本に連れ去られた。
そして、その時から、彼は娘と会う権利を勝ち取るために日本の裁判所で戦い続けた。
その間、彼は3回しか娘と会えず、そして、一番長い時ですら2時間だけであった。
その後、彼は幸運に恵まれた。
4月に、カリーナちゃんの母親は、グリーンカードの更新のためにハワイへ旅行し、子どもの誘拐の罪で空港で逮捕されたのである。
司法取引の一環で、その母親は、カリーナちゃんを放棄した。
その結果、カリーナちゃんは、日本人の親により奪われた子どものうち、裁判所を通じてアメリカに戻ることのできた最初の子どもとなった。(親権争いに巻き込まれたカリーナちゃんには、本当に気の毒である)
このような連れ去りにより、アメリカは、日本に対し、ハーグ条約に加盟するよう圧力をかける諸外国の一つとなった。
日本は、今年に加盟するとしている。ハーグ条約とは、一方の親により16歳まで子どもが連れ去られた際に、住んでいた国に迅速に返還させることを定めた条約である。
外務省によると、アメリカから日本に連れ去られた事例は約100件ほどあり、その他の国からの連れ去り事例も非常に多いとのことである。
しかし、別のカテゴリーに含まれる親たち、すなわち、日本に住み子どもに会えない親にとって、ハーグ条約に加盟したところで、その状況は全く変わらない。
日本の法制度は、他国とは異なり、離婚後の共同親権を認めていない。
それに代わり、離婚後は親権者を一人とすることを子どもに強いるのである。
家庭裁判所は、通常、裁判をしている時点で子どもを確保している親(多くの場合は母親である)に親権を与える。
それがたとえ、子どもを連れ去った親であってもである。家裁は、「置き去り」にされた親に対し、わずかな面会交流(=子どもと一定時間、共に過ごすこと)すら強制することはできない。
そして、多くの父親が、子どもの人生から完全に消えてしまうのである。
公的な統計を利用し推定すると、毎年、約15万人以上の親が子どもと会うことができなくなっている。
何人かの親は、自らの判断で面会交流を実施しているが、ほとんどの親は実施を拒絶しているのが現状である。
そのような父親の一人であり、ある市の元副市長でもあった者は、このような仕組みを「囚人のジレンマ」の婚姻版だと述べる。
彼が言うには、結婚生活が破綻し始めた際、言葉に出さなくとも重要となってくるのは、「父親と母親、どっちが先に子どもを奪い去るか」だという。
そして、彼のケースでは、元妻が先に奪い去った。
そして、彼は、この2年間、今や4歳になった娘と一度も会えていない。
彼が娘に贈ったプレゼントは開封もせずに送り返されてくる。
そして、このような行為を家庭裁判所は支持するのである。
彼が家庭裁判所の裁判官に対し面会交流を推進する民法改正がなされたことに言及した際、その裁判官は彼を黙らせたのである。
この民法改正を推し進めた江田五月元法務大臣は、この改正がより寛容な面会交流を促進することに繋がることを期待すると言う。
彼は、この改正が将来的には離婚後の共同親権についての真摯な議論に繋がることについても期待を表明した。
しかし、彼は、「日本の裁判官は非常に頑迷であり、『彼らの意識を変えることは困難だ』」と警告した。
過去、北朝鮮に連れ去られた何十人かの国民の迅速な返還を長年求めてきた国が、毎年、自国で行われている莫大な数の連れ去りを黙々と支援している、というのは非常に残酷なねじれである。
この置き去りにされた父親は、「私と同じ状況に置かれた者が数多く自殺している」と言う。
そして、彼は言葉をこう続けた、
「私もその気持ちが良く理解できる」