2012年06月20日 毎日新聞 『離婚後も共同で養育を』
だいあろ〜ぐ:東京彩人記 親子面会交流全国ネット副代表・鈴木裕子さん /東京
◇離婚後も共同で養育を−−鈴木裕子さん(43)
離婚した夫婦間の子供の面会を巡る紛争が増えている。離婚や別居後に、わが子との面会を阻害されている親たちでつくる市民団体「親子の面会交流を実現する全国ネットワーク」(渋谷区)は、離婚後も両親が協力して子育てするための法整備などを求めて活動している。副代表の鈴木裕子さん(43)に現状と課題などを聞いた。
−−親子ネットについて教えてください。
4年前に設立し、会員は全国で約300人います。離婚後は母親と暮らす子供がほとんどのため、会員の約9割は男性です。最近、離婚して親権を失った父親が娘を誘拐した容疑で逮捕されたり、離婚した母親が幼い子を餓死させる痛ましい事件が起きています。このような事態の多発は「離婚後の子供の親は1人」とする単独親権制の存在と、非親権者と子供が交流するための法制度の未整備が原因と考え「共同親権・共同養育社会」の実現を目指し活動しています。
−−女性の鈴木さんが活動を始めた理由は。
インターネット交流サイト「ミクシィ」で親子ネットを知ったのがきっかけです。私は在日韓国人だった夫と娘2人、夫の母と5人で米国で暮らしていましたが、8年前に離婚し帰国しました。彼が日本で自分を親権者とする離婚届を勝手に出してしまい、娘と離ればなれになりました。米国で裁判を起こし、私が希望した時に子供と面会できるようになりましたが、日本では米国などに比べて遅れているのが現実です。
−−どういう面が遅れているのですか。
欧米では離婚後も両親に親権がある「共同親権制」の国がほとんどで、離婚や別居後も親子が定期的に会える環境が整っています。親子の面会は年間100日が一般的で、夏休みなどには長期宿泊もあります。一方、単独親権制の日本では、面会はせいぜい月1回程度。離婚はあくまでも親同士の別れであり、子供との別れではありません。離婚後も子供が両親から愛情を受け続けられる環境づくりが重要です。
−−具体的にどんな取り組みを?
民法が共同親権制に改正されるよう、国会議員への働き掛けなどを行っています。昨年8月には約9000人分の署名を国会に提出しました。一気に民法改正まで行かなくても、離婚する夫婦に養育計画書の作成を義務付け、面会日数や養育費などを具体的に決めるなど、共同養育の実現に向けた議員立法にも期待しています。
−−親と会えない子供への影響は?
「両親がそろっている」「離婚したが定期的に面会している」「離婚後、別居した親に会っていない」という三つのグループの子供の心理状態を調べたところ、離婚後、片方の親に会えなくなった子の自己肯定感が弱いという専門家の研究結果もあるそうです。児童福祉や精神医学の立場からも、離婚後も両親で子育てすることが大切です。<聞き手/社会部・佐々木洋記者>
◇記者の一言
離婚後の親子面会を難しくしている要因の一つに、子供の祖父母の存在があるという。離婚後、母親が子を引き取り実家に戻ると、母親の両親が父親を敵視し面会を拒むケースが多いらしい。09年に全国の家裁に持ち込まれた面会を求める調停は6924件で過去最高を記録した。離婚による子供への影響を少なくするためにも、国は早急に対策を講じてほしい。
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■人物略歴
◇すずき・ひろこ
1968年、愛媛県生まれ。会社員。10年3月に親子ネットに入会し、同年8月から副代表を務める。男性がほとんどを占める会員の中で、母親の視点から共同養育の大切さを訴えている。