2012年01月22日 毎日新聞 『ハーグ条約:子の所在、DV施設紹介 指針で外相に権限』
ハーグ条約:子の所在、DV施設紹介 指針で外相に権限
国際結婚が破綻した場合の子の扱いを定めたハーグ条約の加盟に向け、日本国内で子の所在特定などの実務を担う「中央当局」となる予定の外務省が、その任務や権限についての指針をまとめた。日本人の親が子を日本に連れ帰り、外国人の親が子の返還を請求した場合、子の所在特定のため、外相が自治体などのほか、ドメスティックバイオレンス(DV)の民間保護施設(シェルター)などにも個人情報の提供を求められるとした。
条約は子を連れ出された親からの返還申請を受け、子がいる国の政府は原則として子を元の国に戻すと定める。実際に子を返還するかどうかは、国内の裁判で決めるとしており、法制審議会(法相の諮問機関)が2月上旬に答申を出す見通し。
指針では、子がいるとみられる自治体や私立を含む学校、民間の保育施設のほか、通信会社などに対しても情報提供を求める権限を外相に与えた。照会を受けた団体は「遅滞なく情報提供する」と規定。見つからない場合は、外務省が警察に捜索願を出すことができるとした。一方、情報提供の範囲は政省令で厳格に定め、個人情報は、子を連れ出された親を含む第三者に渡すことを関連法で禁じる。
政府は指針と法制審の答申を基に条約加盟に伴う関連法案を作り、3月上旬にも国会に提出する。【横田愛】
【ことば】ハーグ条約
83年に発効した「国際的な子の奪取の民事面に関する条約」の通称で、国際結婚が破綻した夫婦間の子(16歳未満)の扱いに関する国際的なルールを定めたもの。元々住んでいた国から子を連れ出された親が返還を求めた場合、相手方の国の政府は原則、元の国に戻すよう規定する。欧米を中心に87カ国が加盟しており、日本政府も昨年5月に加盟方針を閣議了解した。