サンデー毎日 『調査官クビを求められた 最高裁長官 官僚の責任』
サンデー毎日 2011.12.25 (p.22)
調査官クビを求められた最高裁長官『官僚の責任』
国際結婚の破綻などで影響を受ける子どもの利益を保護する「ハーグ条約」の加盟に向けて日本政府が閣議了解したのは菅直人政権当時の5月。国内法整備の一環として民法が改正され、最高裁も全国通達を出した。両親が離婚した子どもが自由に両親と交流できるのかと思ったら、「現場」はそうでもなさそうだ。政治ジャーナリストが言う。
「当時の江田五月法相も衆院法務委員会で『可能な限り家庭裁判所は親子の面会交流ができるよう努めることが法律の意図。家裁の調停・審判で、より一層努力がなされることを期待する』と答弁しています。両親が離婚した子どもが片方の親だけでなく、もう一人の親にも面会できる権利を保障するのが世界の流れ」
ところが調停・審判の現場では、依然として従来の解釈を変えようとしないという。連れ去られた娘の引き渡しを認めるよう千葉家裁松戸支部に求めた埼玉県在住の父親が明かす。
「裁判所は『相手方(母親)が合意なく当時の環境を変えたことだけをもって申立人(父親)に (娘を)引き渡す根拠とするには足りない』『面会交流の制限だけで(母親の)監護能力が不十分とまでは言い切れない』という理由で私の申し立てを退けました。通達や法相答弁に反するだけでなく、公務員が法の趣旨に従わない違法行為ですよ」
これを受けて、「親子の面会交流を実現する全国ネットワーク」(藤田尚寿代表)が12月9日、この父親ら2人の事件を担当したS、Uの両調査官らの懲戒免職処分を求める意見書を、竹崎博允最高裁長官あてに提出。ついに〝反動調査官″のクビを要求する事態に発展したというわけだ。
前出・父親が言う。
「民法改正後の数カ月で子どもに会えない親が2人自殺しています。虐待で親に殺された子どもも、もう一方の親が会えていれば救えたケースもあります。彼らは裁判所に殺されたようなもの。われわれは難しいことをお願いしているわけではありません。ただ法律に従ってほしいだけです」
最高裁長官といえば、国家公務員宿舎問題を機に東京都新宿区にある〝豪邸″がヤリ玉に挙がった。その司法官僚の責任やいかに。