【2011.05.29】 「面会交流の有無と自己肯定感/親和不全の関連について」 大正大学カウンセリング研究所紀要 第34号 5-17
欧米では既に30年以上前から、離婚後の子どもにとって、両親双方との「日常的な情緒交流」が健全な人格形成に欠かせないという研究がされており、こうした実証的研究に基づき、定期的かつ頻繁な面会交流を保障する法整備がされてきている。
日本では、面会交流や監護者指定に関し、裁判所の調停に持ち込まれたとしても、実証的な根拠(エビデンス)が少ない故に、「子どもに会わせるべきだ、会わせられない」といった当事者双方の水掛け論が果てしなく続くのみで、建設的な取り決めに向かわないことが多い。欧米では、数々の実証的研究により、別居後でも双方の両親と頻繁に会うことが当然とされており、争いはあるものの、その内容はその具体的プランに関してである。
一方で、日本では離婚後の単独親権制度に加えて、面会交流が明文化されていないことにより、一旦親子が離れてしまえば生き別れになってしまう恐れがあり、欧米よりも離婚紛争が熾烈になりやすい。そうした背景をもとに、本研究は取り組まれている。本研究は、欧米での研究が、日本でも通用するものかどうか、それを検証したものになっている。結論は以下である。
別居親と面会交流をしていない子どもは、「自己肯定感」が低くなり、「親和不全」が高くなることが明らかになった。一方、たとえ親子の離婚を経験した子どもであっても、別居親と面会交流を続けている場合、両親のそろっている家族と比較して「自己肯定感」および「親和不全」の得点に差が出ないことも明らかになった。この結果は、離婚後ないし別居後の子育てにおける面会交流の重要性を明白に示している。
補足をしておくと、上記結論の「明らかになった」は、統計上、間違いが起こりえないレベルの有意差である。本論文の著者が、「家族観や結婚観、子育てに関する文化の違いを超えて、欧米諸国の先行結果と全く同じ結果になったことは非常に重要な意味を持っている」と述べている。子どもの利益は何か、日本でも他国と同様な結果がでた以上、「日常的な情緒交流」を実現する制度化を急がなければならないという点で、私も全く同感である。
(編集部コメント)












