【2011.04.13】 「片親疎外」に関する最新情報 -AFCC(Association of Family and Conciliation Courts)第47回大会(2010/6/2-5)参加報告 大正大学研究紀要 96、169-176.
本論文で、片親疎外に対する世界の「常識」を知ることができる。論文を読めば、「片親疎外症状に陥ってしまっている子どもを精神疾患とするかどうかということに関して、その是非については意見が割れていること。しかし、片親疎外を精神疾患として捉えることに反対の立場であっても、片親疎外の問題を否定する専門家は一人もいないこと」これが、片親疎外に関する世界の潮流であることがわかるだろう。
そして、PAS(Parental Alienation Syndrome)概念の有用性有無はひとまず脇においておくとしても、①実証的研究の蓄積、②診断基準の精緻化、③査定方法の確立、④親子再統合の方法が、片親疎外に対する課題であることでは、専門家の意見は一致している。つまり、片親疎外は、子どもに深刻な悪影響を与えることが認められており、離婚後の片親疎外から子どもたちをいかに守るか、それが非常に大切だと捉えられている。
翻って日本の家庭裁判所の対応はどうか。片親疎外の存在を認めないばかりか、片親疎外に加担しているような有り様である。「専門家」とされている調査官の中には、「過去のことには関与しない。今の子どもの様子でしか判断しない」と言い切るような人さえ存在するのである。官僚組織のなかで、効率的な事件の処理しか考えないことが半ば当たり前になってしまっている家庭裁判所の実情は、悲しい限りである。
査定方法が確立したとまではいえなくとも、片親疎外を見分ける方法は実はそれほど難しくないことや、深刻な片親疎外症状に陥ってしまっている状況からの親子再統合の成功事例も紹介されている。片親疎外問題は、事後処置は負担も大きく限界もある一方で、実は未然に防ぐことが簡単なことを示唆している。親子が引き離されてしまったら、「まず、すぐに親子を会わせる。そして間隔をあけずに会い続ける」。たったこれだけで、片親疎外問題は軽減するのである。
本論文に登場する専門家は、離婚後の共同養育が当たり前になっている国の方々である。それでも片親疎外をし続ける監護者によって、深刻な状況に陥ってしまっている子ども達をどう救うか、非常に高度な議論を展開している。片親引き離しを容認していている日本のような状況は論外であること、つまり、法整備と裁判所の運用で救える部分は救うということは最低条件と考えられていることを、最後に付け加えておきたい。
(編集部コメント)












