【2020.10.14】 母親当事者アンケート ~子供に会えない母親は5割超~
2020年9月16日 厚労省母親当事者記者会見資料
わが子と離れて暮らす母親アンケート調査結果(pdfファイル約2.27MB)
1.「母親アンケート」の実施にあたって
「養育費」と聞くと、子どもと離れて暮らしている父親をイメージするかもしれません。
しかし、最近は別居や離婚に際して、夫に子どもを連れ去られ、親権を喪失し、子どもと会えなくなる母親が増えています。昨今、「養育費の不払い」が社会問題になっており、養育費は2019年の民事執行法改正など対応が進められていますが、「面会交流」に関しては、厚労省の所管でありながら、改善の検討さえなされていません。
弊会では、別居や離婚によって子どもと離れて暮らす母親を対象にアンケート調査を行いました。その結果、連れ去りや追い出しなどにより、94%の母親が親権・監護権を失い、55%の母親が子どもとまったく会えなくなっている実態がわかりました。
なぜ、会えないのでしょう? 子どもと会えなくなった母親は「特別な母親」だったのでしょうか?子どもから母親を奪うことが「子どもの最善の利益」に資するとは思えません。
会見ではアンケート結果をもとに、「母子の断絶」の深刻な状況について説明し、女性当事者から、生々しい実情をお伝えいたします。
両親の別居・離婚に伴い、わが国で何が起きているのか、その背景なども含め、ご理解いただく一助になればと存じます。
代表 武田 典久
2.アンケート調査結果サマリ ①
9割以上の母親が、連れ去り・追い出しなどの同意なき別居で子どもと引き裂かれ、親権・監護権を失った。
アンケート結果
・子どもの主たる監護者であった母親は9割
・父母間の合意がない別居は約8割
・別居後、子の引き渡しを求め、引き渡された母親は1割に満たない
・離婚時、親権・監護権を得た母親は1割に満たない
※詳細は添付PDFファイルを参照下さい
別居の態様
・話し合いによる合意した上での別居は2割に満たない
・連れ去り・追い出しが8割を超え、2割が無理やり離婚届に押印させられている
子の引き渡し
・家裁手続きも含め、子どもを取り戻せた母親はわずか1割未満
親権・監護権
・9割超の母親が親権・監護権を喪失した
・判断理由は、現状維持を始めとする「連れ去り・追い出し後の監護の継続性」
「別居時の状況」に関する自由記入欄
・深夜にたたき起こされ、「離婚届けにサインしろ」と強要された。連日、夜中に起こされては責められ続けていたため、サインすれば寝かせてもらえると思い、離婚届と離婚協議書にサインした。
・夫・義母から恫喝・罵倒・脅しにより、家に帰れなくされた。
・夫と義両親から一方的に追い出された。
監護者・親権者指定に関しての裁判所見解・判断理由 -自由記入欄-
・子ども達は相手方の家で問題なく育っている。
・不貞相手が夫の家に入りびたり、義母に任せきりの監護状況は「問題なし」とされた。
・子どもと会うことを優先するために取り下げた。
・裁判所に監護者指定を申し立てた後、期日前に裁判所に呼び出され、「あなた、これ親権者・監護者は父親になりますよ」と調査官から言われ、取り下げた。
・これまでの監護状況からすると母親に戻すのが相当だが、現在監護状況に問題なく、監護者変更をするまでの状態ではない。
・私に非はなく監護能力もあるが、現在、子ども達は父親の家族と暮らしており、学校にも通っている。母親に親権・監護権を与えれば、この学校も変わり、環境が変わるのは子の福祉に良くない、と判断された。私は近所に住んでいるので学校を変える必要はない、と言ったが、裁判官は相手にしてくれなかった。
・連れ去り直後は「ママといたい」と号泣していた子どもが、会えない間洗脳され、「パパといる」と言うようになった。片親疎外に陥っている子どもの意思が重視されている。
・早急に監護環境を変更しなければならない急迫性や緊急性は認められない。
・監護者に指定されたが、子どもは帰ってこない。日本の法律・裁判所は何のためにあるのか
3.アンケート調査結果サマリ ②
合意なき別居以降、家裁での手続きを経ても55%の母親は子どもと会えず断絶状態。
⇒約3割の母親は裁判所からも面会が認められない
⇒合意したお子さんとの面会も反故にされている
アンケート結果
・別居後、子どもと会うことを要望しても、合意できたのは約5割
・直接、子どもと会えること(直接交流)で合意したのは約5割
・家裁手続きを経て、かつ5年を経過しても子どもと会えない母親が5割超
※詳細は添付PDFファイルを参照下さい
面会交流の決定事項
・面会交流が決定しても直接子どもに会える(直接交流)母親は半数に過ぎない
・面会なし・間接交流合計が33%
・監視付面会交流を命じられるケースも16%存在する。
面会交流の決定事項
・家裁手続きを経て、かつ別居後約6年を経過しても「面会できていない」が55.3%。
・民法766条改正施行(2014年)後、家庭裁判所が「原則面会交流」にシフトしたとの意見があるが、当該調査結果からはそのような事実は確認できない。
面会交流に関しての裁判所見解・判断理由 -自由記入欄-
・2カ月に1回の写真の送付で決定した。理由は子供が母親に会うことに対し葛藤があるため、時期尚早と判断された。その後、3年が経過してもまったく会うことができない。
・間接交流(写真送付のみ)の和解案を弁護士から同意させられた。
・離婚成立直後から会えなくなった。裁判所に申し立てても「子どもの意思」と言われ、どうしようもできない。
・「子どもの意思」として提出された手紙により、面会は認められなかった。
・子どもが「母に会うのが怖い」と言い、面会は認められず、不調となった。
・元夫が「再婚するから会ってほしくない」と言われ、面会は認められなかった。
・「離婚しないと会わせない」と脅された。月1回の決定が出たが、全く会えない。
・「月1回子どもさんに会えるならいいんじゃない?」と調停委員に説得された。
・両親が高葛藤なため、最初は頻度を少なくし、信頼関係ができてきたら徐々に回数を増やせば良いと言われ、2カ月に1回、3時間、監視付で決定した。
・「子どもが連れ去られる」と主張され、月1回の監視付面会となった。
・学校行事や発表会など、一切の参加が認められなかった。
・夫の立ち合いでの月1回の面会交流が決まった。夫の意に従うしかない。
母親の声 – アンケート自由記入欄
・夫は子どもを実家に預け不貞相手と同棲しているにも関わらず、監護者と指定され、私は面会交流も認められない。
・幼いい兄弟が連れ去られた後、「母親には重度の精神疾患がある」や「ママに殺される」など、裁判の期間中、嘘の理由で面会を拒否され続けた。
・ママっ子だった一人息子と引き離されて8年が過ぎてしまいました。親権者だけどずっと会えないままです。裁判所は見て見ぬふり、相手を咎めることさえもしてくれません。こんな理不尽で恐ろしい現実があることをたくさんの人に知ってもらいたい。
・海外在住中に3歳半の娘を、「数週間ビーチに連れて行く」と言われ預けたら連絡がつかなくなり、帰国していた。その後急いで帰国するも1年3か月もの間娘に会えず、親権を奪われた。娘に会えるまでの時間はまさに生き地獄で、殺してもらったほうが楽だと何度も思った。
・家裁で取り決めをした面会交流のをさせていたら、戻してくれなくなった。すぐに家裁に戻すように申し立てしたが、親権・監護を相手に変えた。それを機に全く会えなくなった。
・「子どもが怯えている、子どもの身体にあざがある」などの作り話しを父親、義母が警察、児相に定期的に持ちかけ母親を虐待母にでっち上げた。
・同意なく連れ去られる。どこに相談しても裁判しか取り戻すしかない言われる。高裁まで一年7ヶ月かかり、監護状況に問題がないからと監護者は夫になる。
・昨日まで手をつないでいた息子と引き離され、その後の監護実績のみで、親権を奪われました。息子と会えないだけでなく、養育費さえ受け取らず、息子との縁が断ち切られています。行政、警察、DV支援弁護士、裁判所、あらゆる所に相談しましたが、誰も助けてくれず、絶望しました。
・うちは自営業のため、跡継ぎ欲しさのため子供を連れ去り、会わせない。共同親権であれば親権獲得のための連れ去りはしなかったはず。
・同意なき別居後の両親任せの監護実績のみで夫側が監護者適任と判断される。この事態を防ぐには自分が連れ去るしかない世の中であることを思い知り、将来子どもたちをこんな目にあわせられない思いだけが生きる動機。
・寄ってたかって子どもに母親の悪口を吹き込み、裁判所は調査という名の踏み絵を踏ませ、その結果の「会いたくない」を子どもの意思だと言って親子の引き離しを正当化します。母親でも主な監護者でも悪意ある相手に子どもを抱えられてしまえば会えなくなってしまいます。
・7歳と5歳の子どもに「パパとママとどっちと暮らしたい」と聞く調査官。
・同居親の夫とは歩いて10分の距離、でも、月1回2時間の面会しかさせない。
・脅され、騙されて突然、家から追い出され、幼いわが子と引き離された。和解離婚後、元夫はすぐに再婚、養子縁組、実母である私はわが子と全く会えなくなってしまった。
・面会交流調停で成立した月2回の面会交流を去年の8月から行われなくなった。再三の履行勧告しても面会を行おうとしません。面会交流に強制力を持たせるべき。
・高校生なのに、夢に出てくる息子は今も幼いまま。離婚当時から時が止まっている。
・元夫に子供と断絶させられ、母親が悪いと吹聴。子供も会いたがらなくなる。理解してくれる時に希望をつなげ、何とか生きている。
・母親としてこどもにしてあげたいことがたくさんある。黙ってそばにいてあげたい。そんな当たり前のことを奪わないで下さい。
4.調査の方法
■目的
本調査(アンケート)は、別居・離婚を経験した母親を対象として配偶者(夫)と子どもとの別居から離婚に至るまでの経緯を定量的に示すことにより、現行家族法、裁判所運用の課題を抽出することを目的とする。
■実施期間
2019年10月 〜 2020年2月
■対象者
・別居・離婚により子どもと引き離された経験を持つ母親
・主に親子ネット会員及び会員から紹介のあった方
■調査方法
・アンケートに協力いただけると回答いただいた母親当事者にメール・郵送で送付、回収
・原則記名式
■回収状況
回収数 :50名 *死亡した1名に関しては母親(祖母)が回答
有効回答数 :50名 *無記名2名含む
5.離婚後の養育の在り方に関する提言
①子どもの連れ去りの禁止
・高葛藤を生む大きな要因のひとつ。原則禁止、緊急を要する避難など例外を整理することが必要②離婚関連司法手続きの在り方検討
・一定の熟慮期間、別居期間を経た夫婦には離婚を認める(有責主義から破綻主義へ)
・慰謝料などは別訴訟にて対応
・養育計画の作成義務化
・養育費算定表に加え、面会交流ガイドラインの策定
・面会交流頻度に留まらない「子ども視点」の提案型での調停運用
(広義のフレンドリーペアレントルール、29頁記載のオーストラリアでのLATも参考にしてください)
・面会交流の権利性の確立③子のいる両親の離婚への司法関与
・協議離婚制度の是非含めた検討④離婚後共同親権制度の導入
・上記①~③を実現するためには、離婚後の親子関係に関して、根本的な発想の転換が必要。⑤共同親権・面会交流の制限事由となるDVの定義が必要