【2017.12.17】 親子ネットレポート「共同養育実現のために必要なこと ~他国事例に学ぶ制度設計~」
親子ネットは2017年12月17日に、TKP神田駅前ビジネスセンターにて、「共同養育実現のために必要なこと 〜他国事例に学ぶ制度設計〜」と題した講演会を主催いたしましたので、ここにご報告いたします。
親子ネットが2008年に発足して以来、2012年の民法766条改正、2014年のハーグ条約批准など、我が国における法改正は一部実施されました。しかし、民法766条が改正施行後5年を経過しても、離婚した母子世帯のうち養育費の取り決めは42.7%、面会交流の取り決めは24.1%にとどまっており(平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果、厚生労働省)、改善の兆しは今なお見えていません。また、「片親による一方的な連れ去り」に関しても、国内ではいまだ横行しており、ハーグ条約とのダブルスタンダードの状況に変化はありません。
今国会での成立を目指している「親子断絶防止法案(講演会開催時点、現在は共同養育支援法)」では、「充実した面会交流を実現するための制度及び体制の在り方」が法律公布後施行までの2年間での検討事項として明言されています。そのため、法律のみにとどまらず、別居・離婚で苦しむ子どもたちやご両親に対して「社会が何を成すべきか」を考え、今後の制度設計に際し、「共同養育の在り方」についての気づきを得られる機会を提供したく、親子ネット講演会を企画いたしました。
本講演会での金先生からの韓国の事例、青木先生からのノルウェーの事例に関するご報告を踏まえ、日本・韓国・ノルウェーの離婚時における面会交流、養育費、法的義務、行政による支援について、以下の表に取りまとめました。まず、日本は単独親権であるのに対し、韓国とノルウェーは共同親権や共同養育が認められています。そして、韓国やノルウェーにおける面会交流の状況は長期間の宿泊面会が見られるなど充実しているのに対し、日本の面会交流の状況は月1回数時間と、不十分であると言わざるを得ません。
本講演会には、二名の講師の先生にお越しいただきました。山梨学院大学法科大学法務研究科教授の金亮完先生からは、「未成年の子を持つ離婚に関する法制度の紹介 〜隣国である韓国の事例から〜」というタイトルにて、韓国の共同養育の制度設計についてご紹介をいただきました。そして、大正大学心理社会学部教授の青木聡先生からは、「先進諸国での共同養育の取組み 〜北欧の事例から〜」というタイトルにて、ノルウェーの事例に関するご講演をいただきました。
山梨学院大学法科大学法務研究科
金亮完 教授
大正大学心理学社会学部
青木聡 教授
また、韓国・ノルウェー共に離婚時に親教育を受講しなければならないことが特徴として挙げられます。現在の日本では、そのような法的義務はありません。子の利益を確保するためには、双方の親の意識や行動が適切である必要があります。今後の制度の在り方として、行政による無料の親教育講座の提供のみならず、教育の受講義務を課すという法的な整備も合わせて行うことで、効果的な親教育が実施できるものと考えます。
国名 | 日本 | 韓国 | ノルウェー |
---|---|---|---|
結婚件数 | 620,531件 (2016年)* |
281,600件 (2016年) |
22,537件 (2016年) |
離婚件数 | 216,798件 (2016年)* |
107,300件 (2016年) |
離婚 9,345件、同棲(事実婚)解消 10,842件 (2016年) |
親権 ・監護 | 単独親権・単独監護 | 共同親権・共同養育の選択肢がある | 共同養育(30%監護分担)が浸透、同棲(事実婚)にも法的な共同親責任が認められている |
面会交流 | 月1回数時間 | <面会交流の例> ・子が夏休み期間中の10日間、別居親の家に泊まる ・子と電子メールや手紙のやりとりを自由にできる ・子が別居親の家族の行事(祖父母の誕生日等)に参加する ・子が別居親と海外旅行できる |
子育て時間の平均は月8.6日(2012年)、長期休暇は半分を過ごす = 年間100日以上 <通常面会交流権の定義> ・毎週平日1泊 ・隔週週末2泊3日(3泊4日) ・夏休み3週間 ・祝日は隔年交替 |
養育費 | 養育費算定表に基づく | 養育費算定基準表に基づく | 算定表に基づく |
法的義務 | 離婚届に面接交流・養育費の取決めの有無の記載欄が設けられているが、努力義務 | 未成年子がいる夫婦は、離婚後の子の養育などに関する父母教育を受けなければならない | <法的義務あり> ・離婚時の親教育受講(無料) ・養育計画の提出 ・1年間の別居期間 ・養育費の算定 |
行政による支援 | (今回の講演会を受け、在り方を検討) | ・ソウル家庭法院では、離婚熟慮期間の間に最大で10回の無料相談を受けることができる ・家庭法院の事務負担が増しているため、第三者機関との連携により負担を減らそうとしている |
・家族カウンセリングの提供 ・離婚時の親教育講座の提供 ・養育計画は調停7回まで無料 ・国による養育費の立て替えと強制徴収 |
講演会当日は、民進党 真山勇一参議院議員、立憲民主党 松原仁衆議院議員、円よりこ元参議院議員、自民党 三谷英弘衆議院議員より、来賓のご挨拶をいただきました。
年末のご多忙の中、ご登壇くださいました金先生、青木先生、ご出席くださいました議員、自治体関係者、マスコミ、会員の皆さま方に、心より御礼申し上げます。