【2019.12.07】 親子ネットレポート「離婚後親権制度について改めて考える」
2019年12月7日、親子ネットは、弁護士の作花知志先生、CRC日本代表の福田雅章先生、SAJ代表でステップファミリー支援の第一人者である緒倉珠巳さんを講師にお招きし、講演会を開催しました。
「離婚後親権制度について改めて考える
〜憲法の視点から〜」 作花 知志 弁護士
離婚した女性は6カ月間再婚できないと定めた民法の規定が憲法違反かどうかを争った訴訟で、最高裁大法廷は平成27年12月16日、再婚禁止期間の規定のうち、100日を超える部分については「違憲」とする初の判断を示しました。もともと再婚禁止期間が定められていたのは、父性推定の重複を回避し父子関係の紛争の発生を未然に防ぐためでしたが、DNA鑑定技術や医療技術が飛躍的発達を遂げている現代において、その必要はない
と判断された結果です。
いま東京地裁へ提訴している「離婚後単独親権制違憲訴訟」も「女性の再婚禁止期間違憲訴訟」同様、国民に憲法上保証されている権利を違法に侵害する立法不作為を問い「離婚後共同親権制度」を求めています。
「親の子に対する親権は基本的人権である」、従って「離婚後単独親権制度は憲法違反である」というのが原告側の主張です。諸外国の憲法では親の子に対する権利が基本的人権とされていること、先の「女性の再婚禁止期間違憲訴訟」における判決が「親子法の目的が子の福祉の保護にあり、親の迷惑を人権制約理由として考慮してはならない」と判示したことなどを根拠としています。
また、離婚後単独親権制度は、児童の権利条約において保障されている子の「両親から引き離されない権利」や「成人するまで、両親のいずれとも同様に触れあいながら成長する権利」に侵害す
ることも指摘しています。そもそも「親権」という言葉が誤解を生みやすいのだと思います。親権は親の権利ではなく、子どもの権利です。オーストラリアでは子どもの視点に立ち、親権ではなく「親責任」という言葉を使っています。
いずれにしても、親と子どもが触れ合って貴重な思い出をつくりながら、親は親として子どもは子どもとして成長していく大事な時間を奪うことは許されません。離婚後単独親権は、子の福祉の保護の視点から欠陥があります。
離婚後単独親権制度を採択した民法819条2項が制定された当時は、離婚後に離れた場所に住んでいる元夫婦が子の親権行使のために互いに連絡を取ろうとしても、手紙やせいぜい固定電話しかなく、連絡を取ること自体に困難な面がありました。しかし、現代においてはインターネット、パソコン、スマートフォンなどの情報伝達機器と国際電話、メール、LINEなどの手段が飛躍的に発達したことで、離婚後に離れた場所に住んでいる元夫婦であっても、子の親権行使について互いに連絡を取ることが容易になっています。つまり、情報伝達の困難さを理由として離婚後単独親権にする必要性は失われているのです。このたび法務省は、離婚後共同親権導入の是非を議論する研究会を立ち上げました。離婚後単独親権から共同親権への道筋は整いつつあります。
続きは、会報を参照ください。