【2013.05.17】 フル・モンティ
【ストーリー】
かつては鉄鋼業で賑わったイギリス北部のシェフィールドは、今では失業者の溢れる寂れた姿をさらしていた。そんな失業者の一人ガズは、離婚したマンディとの間の幼い息子ネイサンの養育費700ポンドを払う事が出来ずいた。いつもネイサンに泥棒の方担ぎをさせたり、汚い言葉を吐き、大人になりきれないガズに業を煮やしたマンディは「養育費が払えないなら単独親権の裁判を起こす」と言ってきた。
そんな折、たまたま町に興業で来ていた男性ストリップショーに女性陣が熱狂するのを見たガズは、親友のデイヴと共に何の取り柄もない自分たちでもストリップをすれば金を稼げるのではないかと考えた。
排気ガスで自殺しかけていたロンパー、社交ダンスが得意な元上司ジェラルド、50歳オーバーだがリズム感に長けた黒人ホース、立派なイチモツの持ち主ガイをなんとか仲間に加え、さっそくストリップの練習が始まるのだが……。
【感想】
西欧諸国には親権や養育費など、子どもと父親に関する家族法の問題に関心を持つ社会運動を行う、伝統的で大きな父親の権利団体がいくつかある。中には相当過激なキャンペーンを行うグループもあるようだ。
彼らの主張の一つは養育費の問題があげられる。
高額な養育費は、「母親の離婚への経済的な動機づけになりかねない状況で、父親が子どもと過ごすための余裕を残さない」あるいは、「母親が再婚を繰り返したり、お互いの経済状況が変わった場合に養育費の見直し」などが問題とされている。
フル・モンティの主人公ガズは鉄工所の倒産で職にあぶれてしまい、700ポンドもの養育費を払えない状況にある。元妻は「私たちの工場で製品検査をすれば時給2ポンド50セント払う」と提案する。そうしなければ子どもとは会わせないと。
そこでガズは悪友たちと、自らがストリッパーになって大金を稼ごうとするのだが、当のガズはガリガリのやせっぽち、親友のデイブは肥満体。ダンスのレッスンに泣きついた元上司もおっさん…といった具合。どう見ても見栄えはしない(笑)。練習に付き合わされる息子のネイサンもバカバカしいやら、情けないやらで「もうお父さんには会わない」と飛び出してしまう。しかしガズは「父さんはバカか?お前を愛してるんだ。これからも大好きなお前に会うためにはコレしか方法はないんだ!」息子に訴えた。父親が自分のためにそこまでするのかと気付いたネイサンは以後、会場費の前払い金100ポンドを自分の貯金から切り崩すように父親を説得するなど、父親を応援するようになる。
ヘンテコな展開のコメディだし、父親のガズも体裁を取り繕うばかりで、仕事もロクに探さないダメ男だが、それでもなんとか息子との関係をキープしたいという熱意だけは涙ものだ。
最後にショーが始まるシーンで、土壇場でガズが「女性客だけって言ったのに、何で男がいるんだよ!」と出演を拒否する場面がある。グズグズする父親に向かって「男だろ、自分が言いだしっぺのくせに仲間を裏切るのかよ!つべこべ言わずに行けよ!」とネイサンは背中を押す。
面会が長く続く場面では、こんな風にいつも疑問がわく時がある。母親からは養育費の請求、逼迫する生活、それでも元妻から感謝の一つも聞こえてこない。周囲からも「もう諦めて次にスイッチしろよ」なんていう知人も出てくる。このままでいいのか?諦めそうになる時もあるけれど、このガズとネイサンのように、愛情さえ伝われば、いつか子どもの方から「ガンバって」と言われる時がくるんじゃないかな。
肉体的に子どもを宿す母親と違って、男は「子どもが生まれたから即父親」になれるわけではないと、なにかの本で読んだことがある。育っていく子どもと関わることで、少しづつ父親の強さや寛容さを身につけていくのだと。
いつか自分がちゃんと父親として子どもに向き合った時には、丸裸(フル・モンティ)でも堂々としていられるように、自分の中の父性を育てていきたい。












