「親の離婚」に言いたいこと(M.O)
今日、日本では毎年約20万組前後が離婚しており、同じ年に入籍する夫婦の数に比して、3組に1組が離婚している計算になる。そして、離婚後離れて暮らす親と子どもの面会交流を巡っての争いは激化している。最高裁判所のまとめによると、子どもとの「面会交流」を求める親が家庭裁判所に調停を申し立てる件数は年々増加しており、平成25年には遂に1万件を越え、10,762件の申し立てがあったという。
親権・監護権を獲得するために、虚偽DVを訴えたり、子どもを一方的に連れ去って相手に会わせないケースが多発しているのだ。自分の子と離れたくない、という親の気持ちは理解出来るが、そこに子どもの気持ちや、もう一方の親が子どもを思う気持ちは考慮されていない。
家族とは何か。親子とは何か。再考する時期に来ているように思う。
一生を連れ添う覚悟で結婚した相手と別れることは、精神的に大きなダメージを受けるのみならず、時間の面でも費用の面でも大変な労力を要するが、親の離婚は子どもにとっても一大事だ。私の両親は、私が10歳の時に別れたが、冷静に受け留めていた姉達とは対照的に、私は最後まで泣きじゃくり駄々をこねていた。生まれ育ってきた家にもう住めなくなる、毎日会っていた近所の友達と遊べなくなる、大好きな父親と離ればなれになる。今まで当たり前だったものが全て失われる「りこん」がこの世の終わりに思えたのだ。
それでも成長するにつれて、大人の事情が理解できるようになると、両親が別れたのだから自分も父親とは会えなくても仕方ないのだと思うようになった。しかし留学先のフランスで目にしたのは、日本とは全く違う多様な家族の形だった。フランスでは日本よりも離婚率が高く、パリでは過半数に上る。そのため子連れ同士の再婚や同棲も珍しくなく、親の恋人や再婚相手と暮らす「ファミーユ・ルコンポゼ」(複合家族)が一般的に受け入れられており、約200万人の子ども達がこの環境で暮らしている。
また、両親が離婚すると一方に親権がなくなってしまう日本とは異なり、フランスでは離婚した後も双方が親権を持ち続けるため、子どもは平日だけ母親と暮らし、週末は父親の家へ行くというケースも決して珍しくない。事実婚も非常に多いフランスだが、事実婚が破綻した場合にも、その間に生まれた子どもと一方の親が会えなくなったという話は聞いたことがない。
日本でもこうした共同養育を実現するためには、まず何よりも法律で別居・離婚後の親子交流を担保する必要があるだろう。そして、ハーグ条約に批准した以上、一方の親が他方の親の同意なしに子どもを連れ去ることは日本においても禁止されるべきである。また、未成年の子どもがいる夫婦の別居・離婚に際しては、養育費と養育の分担についてしっかりと取り決めを行うべきであると考える。すでに葛藤の高くなった夫婦にとっては取り決めることも困難であると思われがちだが、「取り決め」のために考えを整理したり書面の作成に集中することで、葛藤を一時横に置いて向き合えるのではないだろうか。離婚の混乱と葛藤の渦の中にあっても、冷静になって、二人の間に生まれた子どもがどんな気持ちでいるかを思いやり、その人生が豊かになるように話し合うべきだ、夫婦だけでそれができないなら、第三者を挟んででもその機会を持つべきだ。
私の父は離婚してから数年後に亡くなってしまい、もう二度と会うことは出来ない。「夫婦の別れ」が「親子の今生の別れ」になってしまったのだ。
もうこれ以上、親の離婚により、一方の親とそちら側の親戚や郷里などとの縁をすべて失う子どもを一人たりとも増やしたくはない。
親子ネットの皆さんには、「親子が自然に会える社会」をぜひ実現して欲しい。私も、親の離婚を経験した立場として、できることをしていきたい。