【2013.05.21】 親子ネット勉強会レポート 『別居・離婚後の共同子育て』
親子ネットでは、平成25年3月9日に「別居・離婚後の共同子育て」勉強会を開催しました。
会場となった科学技術館の会議室は、当事者である会員及びその父母、マスコミ関係者等でほぼ満席となりました。
そして、なんと子どもたちの姿まで会場で見ることができました。
1.講演会概要
前半、基調講演として、後藤弁護士から多くの実例を踏まえ、子どもの連れ去り・引き離し、貧弱な面会交流など、現行制度の問題点を解説して頂きました。また、問題点を批判するだけでなく、現行制度下における当事者の対応方法について、実務家としての貴重なアドバイスを頂きました。
後藤弁護士のお話は調停、裁判でいたずらに、紛争性を高め、高葛藤状況にするのではなく、着地点を見つけて離婚後も共に、子どもの養育に関わる共同親権(共同養育)とは、どのような状況を意味するのかを考えてほしい、そして人生をもっと横臥してほしい、そのようなメッセージを含んでいたものと思います。
後半は、後藤弁護士を含めた5人の方々(面会支援、育児、当事者、2名)をパネリストとして、会場からの発言も交えながら共同子育てについて活発な意見交換を行いました。そして、最後に、アピール文を採択して終了しました。
2.後藤富士子弁護士 基調講演
1)日本の離婚紛争の変遷
私は1980年に弁護士になりました。
2007年に始めて父親から離婚を受任するまで、20数年間は、概ね母親からの相談を受けていました。
私が離婚事件を受任した当初は、先ずは調停で、当分の間別居することを取り決め、併せてその間の婚姻費用、子どもの面会交流を取り決めて、マイルドな着地を目指していました。民法第770条第1項の1から5号に離婚の要件が記載されていますが、その1号は不貞です。しかし、その当時は、不貞だけでは離婚となりませんでした。
しかし、1987年に最高裁の判決で積極的破綻主義が採用され、更に、1996年の民法改正要綱で、5年間別居したら破綻と看做すというようなことが記されて、運用されるようになりました。ここから大きく流れが変わりました。
女性は妻、母と役割が変遷していく中で、離婚の話が出てきても、直ぐに、離婚しなければならないわけではありません。夫婦、互いの人生、生き方が成り立つ解決、子どもは成長するので、その時代にそって対応するとの考えを、私は持っています。だからそ、どちらかが100でどちらかが0というものにならないような、解決方法を調停、協議離婚で探ってきました。
2007年に二人の子どもを連れ去られた父親の弁護に携わりました。このケースでは、本人自ら監護者指定の審判等を行っていましたが、審判で却下され、即時抗告の段階で私に依頼がありました。
当初子どもの身柄の争いばかりしていて、子どもたちに会うことができていない状況だったので、私が事件を受任してから、方針を変更し、監護者については相手方とすることを認める一方で実質機能してなかった離婚調停を行いながら面会交流を1年間で9回行い、子どもと会う実績をつくりました。その後、新たな証拠も出てくるなど、妻の監護者として不適格性が明らかとなり、再度、監護者指定を争いました。
二審の判事が棚瀬一代さんの本をよく読んでいたようで、子供たちのためには、どちらが監護者となるのが良いかを、よく見て頂いたと思います。裁判官から見てもやはりおかしいということで、当事者双方で和解協議を行い、親権者は父親とし、一緒に面会交流も決めました。
2人目の父親が依頼者の事件では、父親は上の子ども2人と暮らしていましたが、母親と暮らしている下の子どもに会うことができていませんでした。そういう状況で、母親側から監護者の指定、執行(失敗)、そして人身保護法による保全執行等がなされました。結局、父親は絶望し、人生を全うすることを諦めてしまいました。このような悲惨なことはみなさんには経験してほしくないのです。
2)連れ去り別居時の親権とは
離婚前の連れ去り別居は、民法818条第3項によると、当然、父母の共同親権の状態にあります。連れ去られた時の、当事者の対応方法は、監護者指定と面会交流の調停の申し立てがあります。
しかし、連れ去り親は、単独親権者になるために連れ去っているので、監護者指定の申し立ては、すぐに不成立になり、審判に移行しますが、全くシステムが機能していません。現状は、一旦子どもを連れ去られると、連れ去られた親は、ほとんど勝ち目がありません。結果、ますます紛争性が高まり、離婚紛争は熾烈なものになっていきます。
私は現在、連れ去られても、離婚前であれば、共同親権なのだから、いたずらに、子どもの身柄の争いはするなと助言しています。監護権を争うというのは単独親権であることが前提なわけで,単独親権は相手を排除するものです。親子ネットでは別居、離婚後の共同養育と謳っていますが、離婚前であれば、共同親権であることを忘れないでほしいのです。
監護権の権利闘争をして消耗するのではなくて、全く不届きで違法だと思うが、連れ去り親を排除しないで、とりあえず相手の状況を認めて、実質的な面をとり、一刻も早く子どもと会えるようになることを考える。そして、子どもの復元力を信じて、長い目で肝要に構え、自分が親として、長期的に子どもに関っていくことを追求することが一番大切なことだと思います。
3)日本の司法制度(法と運用)の問題点
現状、裁判で、親権を争うことになると、子どもの身柄がある方に親権が認められてしまうため、連れ去り別居が横行しています。また、連れ去り別居をする時点で離婚が前提になっているので、夫婦関係調整の調停は全く形骸化していています。
特に、DV防止法を悪用されると、話し合いも何もない状況となります。家事審判は訴訟ではなく非公開の職権主義なので、子育ての経験がない若手や定年間際の方が裁判官としてやっているので、この紛争の実体を理解できないでいます。さらには調査官が問題で、「離婚して親権を渡せば葛藤が納まるので会えるようになる」と平気で言ったりします。
1980年にカリフォルニア州で共同養育法が制定されたのですが、何も親の固有の権利を問題にしているのではないのです。共同養育法は、離婚すると経済的に困窮して子供が健全に育たないことが問題となって子ども達の養育の責任を果たすために、州の政策として成立したのです。
離婚後も父親、母親、両方が子ども達の健全な成長のために養育の責任を果たすことが必要なのです。そして、弁護士が問題です。弁護士の報酬は依頼人が獲得した利益で決まるものですから養育費、慰謝料、婚費の請求等を通じて次から次へと請求して、家族をズタズタにしてしまうのです。
4)最後に
前述しましたが、全く不届きで納得できないのですが、先ずは、子どもの身柄の争いはしないで、子どもの問題を含めて話し合いで解決していくことが一番良いと思います。
連れ去り後の状況は離婚前で共同親権なのですから、今の事態を全く解決できないということではありません。当事者の方々が現行法の法的な手続きの中で健全な姿を見せていくことが、裁判官や調査官が変えていくことに繋がっていくかと思います。
そして、弁護士の私が言うのも変ですが、短い人生の中で、長い時間と大きな労力を裁判に費やして、心身を消耗していくのではなく、目標を見失わないで、何よりも自分の人生を謳歌して、生活を充実させてほしいのです。弁護士の金稼ぎのタネにされないように、当事者として主体性を持って法律家と関っていくようにしてください。