【2013.05.17】 クレイマー・クレイマー
【ストーリー】
テッド・クレイマーとジョアンナ・クレイマー夫妻は結婚8年目を迎え、一人息子ビリーも7歳となっていた。家庭を顧みずに仕事優先の生活を送るテッドに不満を募らせていたジョアンナは自立を決断し、家を出て行ってしまう。
いままで、家事や育児は妻に任せっきりだったテッドは、ビリーの朝飯さえ作れない。しかし、やがて家事にも慣れ、希薄だった息子との絆も深まってきて一年半ほど経ったある日、突然ジョアンナが養育権を訴えてくる。家事と育児の両立で仕事に支障をきたして失業したことも重なって、ついには裁判で養育権はジョアンナ側に…。
【感想】
今回、ベタベタな親権テーマの金字塔である本作品を紹介するのは、テッド役のダスティン•ホフマンが初監督作品となる『カルテット!人生のオペラハウス』が日本上陸して話題になっているから…というのはこじつけで、我々の問題を語る上で欠かせないこの作品を、いつか書こうと思っていたものの、大作であるがゆえに、なかなか書けないでいたのを、ここぞチャンスとばかりに紹介します。
「紹介します」などといっても、もちろんご覧になっている方多いことでしょう。
7歳のビリーが慣れない父子生活で、母親の写真を抱えて「ママに会いたいよ!」と泣くシーンは、涙なしには見れません。また、裁判の結果、父親と離れて暮らすことになった息子に「愛してる。会えなくなるワケじゃないんだ」と説得するシーン、「パパもいなくなっちゃうの?」と怯えるビリーにキスするシーンなど、胸の痛さに息が苦しくなる想いです。
1980年代のアメリカでは、60年代から始まったウーマンリブ運動も定着し、その反動というのか、逆に男性の権利や、家庭における父親の役割が見直され始めてきた時代です。やっと女性差別撤廃条約が締結されたばかりの当時の日本で、「自分の自己実現の為に家族を放り出した妻」ジョアンナはどう映ったのでしょうか。
私自身、テッドと同性の親として、息子に「(愛しているけど)もう一緒には暮らせない」と手紙で書いてきて、息子を酷く傷つけておきながら、自分が都合よくなったら「やっぱり一緒に暮らしたい」と言いだしたり、大人の二人がお互いの意思で結婚して、お互いの了解で離婚したのに「失敗したのは全部、元夫のせいだ」と裁判で話す彼女の稚拙な無責任さなど、テッドに同情してしまいますが、この映画、よく考えると、引き離しを行っているのは旦那の方です。
かつては妻が精神的に追い詰められるほど、妻の意思や個性を無視して家事人形のように扱ったDV夫が、泣く泣く出ていかざるを得なかった妻に「勝手に出て行ったんだから、息子に会う権利はない!」というワケなんですから…、アレ? どっかで聞いたような話になってきましたね。
でも、そこは映画なので、お互いを傷つけ合う裁判を介して、それでもお互いがそれぞれに息子のことを愛していることを理解しあう様が美しく描かれています。
テッドは法定の証人席に息子を座らせて、両親の醜い罵り合いの真ん中に立たせることを拒否したし、ママの悪口もついぞ言葉にしていません。弁護士が、公園でビリーに怪我をさせたのは「父親としての能力の欠如だ!」と訴えた時、ジョアンナは「ごめんなさい。そんなことは思っていない」と謝ります。結局、「大岡裁き」じゃないですが、監護裁判に勝って息子と暮らすことを許されたはずの元妻ですが、父子を引き剥がすことで息子が受ける痛みを慮って諦めます。
裁判所の指示では、非監護親になるテッドには「隔週末の宿泊と、平日週一日の食事、長期休暇の半分」の時間しか(敢えてココでは“しか”という)与えられなかったけど、映画の最後でお互いの「ビリーに対する愛情」を理解し、尊重し、本当の意味で息子にとっていいことをしようと考えた両親なら、ビリーは好きな時に父親とも、母親とも会って、自分に向けられる愛情を感じられることでしょう。
さて、最後に、テッドがビリーとの別れを覚悟した朝のメニューにと、二人で作ったフレンチトーストのレシピをご紹介しましょう。これは個人的な持論ですが、料理を共同作業するということは結果のイメージを共有し、その過程をともに歩むことであり、二人の距離を縮める助けになると思います。
[材料]
•卵 2コ
•牛乳 120cc
•バター 適量
•食パン 3枚
[作り方]
① 卵2コをボールに割り入れ、フォークで息子にかき混ぜさせる
② ①に牛乳を入れて、今度はお父さんが手早くかき混ぜる
③ 息子に食パンを3枚出させている間に
④ フライパンをコンロで熱し、フォークでバターをしく
⑤ 食パンを2.の卵液に浸して、一枚ずつフライパンで焼く
⑥ここでフライパンを床に落とすと、最初のダメパパになるので注意しながら皿に盛る
※食べるシーンがないのですが、砂糖を卵液に入れていないので、皿に盛ったらハチミツかジャムをかけてもいいかもしれません。
「さぁ、こいつを平らげよう」と、子どもをハグしたら、もう気分はダスティン•ホフマンですね!












