【2012.03.26】 親子ネット講演会 レポート 親子引き離しの元凶 『DV悪用』『診断書悪用』を追及する!
【1】開会趣旨説明(藤田尚寿 親子ネット代表)
親子ネット発足当時、この問題をインターネットで検索してもなかなかヒットしませんでした。現在は多くの団体が設立され、様々な情報も入る状況になってきました。
民法改正(面会交流の明文化)、ハーグ条約の批准と少しずつ離婚後の親子のあり方が問われ始めました。しかし、残念なことに約2/3の親子が離婚後、生き別れになってしまっています。面会交流拒絶の3大理由は「監護親が会わせたくない」「子どもが会いたくないと言っている」「DVが有る」です。
真のDV被害者は法で保護されなければならないが、DVの判断基準が曖昧なことを悪用している事例、これがDVなのかと疑問に思われる事例があります。
DVの悪用を防ぎ、親子が引き離されないようにしていきたいと思います。
代表 藤田尚寿の挨拶 |
盛況となった会場の様子 |
【2】「おかしなDV」「おかしな診断書」の実例報告(印旛一帆 親子ネット運営委員)
調査にあたっては客観性を重視し、
①相手方の提出した書面に書かれている「行為」を調査する。
②事実かどうか判らないので「真偽の判断」はしない。
③客観的に見て「DVかどうか」のみを考察する。
④「事実確認」と「判断基準」の重要性を指摘する。
との観点から今回の調査報告が行われました。
以下事例紹介
<事例1>おかしな診断書(診断書とカルテの内容が異なる。)
診断書には「混合性不安うつ障害」と記載があったが、夫側がカルテを入手するとカルテの内容と診断書の内容が異なり、その診断名が疑われた事例。なお、この診断書は裁判所から認められなかった。
<事例2>おかしな診断書(医師の署名のない意見書)
医師による意見書が出されていたが、一方の当事者だけの意見が書かれており、内容も明らかにおかしい。更に、医師の署名も日付の記載もない事例。
<事例3>おかしな診断書(本人が受診していない?)
患者本人(夫)の受診しておらず、妻の供述のみで診断書が発行されたと推測される事例。受診者(夫)の保険証No不明となっていた。
<事例4>おかしなDV(どちらがDV?)
家庭生活で妻が決めているルール(夫が開けることが出来る引き出しは3つまで)を夫が破ったことをもって、妻側がDVだと主張した事例。
<事例5>おかしなDV(通常の家庭生活)
「夫が寝起きの悪い妻を毎朝起こしていた」「妻が部屋の中で洗濯物を畳まなかったので、夫が注意した」「首都高を運転中に夫が無言であった」ことなどをもって妻がDV、又は離婚事由であると主張した事例。
【3】解説「診断書の問題点とはどのようなものか」(青木聡 大正大学教授、臨床心理士)
診断書には「患者特性、診断名、初診日(発症日)、症状経過、治療方針、処方内容、医療機関情報(医師の自署捺印、診断日など)」の記載が必要であり、診断書はカルテと整合していなければならない。
「おかしな診断書」を出された場合、カルテの入手や、記載内容の不備を指摘することが有用である。DSM-Ⅳ(精神疾患の分類と診断の手引き)にはPTSD、適応障害、全般性不安障害、混合性不安拗うつ障害など離婚裁判で出てくる精神疾患の明確な診断基準が記載されている。
例えば、PTSDの診断基準の一つ「実際にまたは危うく死ぬまたは重傷を負うような出来事・・・・・を体験し、目撃し、または直面した」とあり診断基準は明確である。離婚紛争で使われるPTSD等の精神疾患についてはその判断基準が明示されていないことがある。これらの診断書を裁判官がどう扱うかが大切。
医療現場で使われる診断書は本来、権威の有るものであり、先ほどの事例紹介で提出された診断書はかなり特殊で信憑性が疑われるものである。しかし診断書というだけで、裁判官がこれに寄りかかってしまうことに問題がある。
アメリカでは裁判用の診断書の書式が定まっており、日本でも書式化が必要である。
診断書の問題点を解説する青木聡教授
当日使用した青木教授解説のレジュメはこちら(PDFファイル)
【4】DVの主張に対してどのように対応すべきか(江川剛弁護士)
DV防止法における「配偶者からの暴力」は
①配偶者からの身体に対する暴力
②配偶者からの身体に対する暴力に準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動
の二つが定義されている。
保護命令は①と「生命等に対する脅迫が認められる場合」のみに適用されることになっているが、直接的な身体的暴力がなくても、PTSDになったとして保護命令が発令された事例もある。
DV防止法は刑法でないため、要件が明確でないところに問題がある。
更に「保護命令は口頭弁論又は相手方が立ち合うことができる審尋の期日を経なければ、これを発することができない、但し、その期日を経ることにより保護命令の申立ての目的を達することができない事情がある時は、この限りでない」とされている。
通常の裁判では相手方に反論の証拠を提出させて判断するが、DV防止法はこれを省略できるのも問題である。
DVを主張された場合の対応の留意点としては、
①DVの具体的事実の特定(日時、場所、態様)させること
②保護命令申立の有無(されていた場合はその主張の内容、されていない場合は
なぜ、申立てされていないのか)を確認すること
③心身に生じたという「有害な影響」の特定させること
④診断書の作成経緯、記載内容の正確性を確認し、可能なかぎりカルテを入手すること
⑤意見書にはこちらからも反対の意見書を出すこと
⑥相手方の主張自体の不合理性、変遷を確認すること
⑦虚偽のDV主張に対しては慰謝料請求等で対抗すること
があげられる。
基調講演する江川弁護士
【5】全体討論
藤田代表;DVの判断基準はどうあるべきか、DVがある場合の面会交流はどうあるべきか、被害者の主観だけでDVが主張されていないか、について皆さんのご意見をお聞きかせ頂きたい。
江川氏;裁判官が判断することになるが、実際これがDVかと疑問に思うこともあり、誇張されていることもある。
津田氏(ジャーナリスト);取材した限りだが、夫が妻からDVを受けている例が多くなってきている。また精神的DV、経済的DVの乱用、悪用が問題である。一部の団体、弁護士が唆し、本人に自覚が無くても、相談する内に自分がDVを受けていると思い始めるケースがある。
鈴木副代表;アメリカの事例として夫婦げんかで妻が警察を呼んだが、警察はその時点で騒いだ妻の方を直ちに勾留した。アメリカでは男女の区別なく拘束される。
印旛運営委員;アメリカでのDVに対する対応状況はサンフランシスコ日本総領事館のHPでよくわかる。かなり厳しく、適切に対応されている。
スティーブ氏;アメリカでは証拠があれば逮捕される。DVには身体的、精神的DVも含まれる。脅し、物を壊す、行動を全てコントロールするなどもDVに含まれる。離婚にあたっては、どちらの親が適切かをアピールするのがアメリカ。本当のDVをきちんと取り締まることが大切。
山本弁護士;虚偽のDVには二つのパターンがある。ひとつは事実の嘘、もうひとつは事実は有ったが、大したことでないものをより集めて主張するパターンである。DVとモラハラの基準も曖昧で、DVとPTSDの因果関係の判断は裁判所の問題である。
藤田氏;モラハラとDVの基準が不明確でないか。また裁判ではDVを理由に面会交流が禁止されている。DVがあった場合、虚偽のDVがあった場合どうしていくのか。
印旛氏;一部のカウンセラーは「あなたが嫌と思ったことは全てDVなのよ」等とアドバイスしている。
青木氏;アメリカでは、全く会わせないとの判決はほとんどない。DVがあっても、専門家が監督しながら面会交流を実施している。証拠主義が重要 診断書の確定記載事項が明確化されているか、DSM-Ⅳでチェックしてみる。おかしな意見書、診断書には異議申し立てを行うことが重要。
江川氏;裁判で証拠がない中で認定されることはあってはならないこと。曖昧なまま無責任に結論を出している。労災については判例が積み重なって認定に関する通達が改正されてきた。DVも基準をはっきりさせることが必要。子供に会えない。親権を取られる。加害者とされた人の被害を第三者に伝えきれていない。
津田氏;民事でDVを取り扱うのは反対。DVをでっちあげる団体、弁護士もいる。女性が被害者、男性が被害者などとの主観による主張では事実が見えない。ジャーナリストとしては両方から聞くことが必要だが、女性からこの問題はなかなか聞けない。実態を表に出さないといけない。
山本氏(弁護士);この問題に対して裁判所は、ばくっとしている。子どもの福祉とはなんなのか、DVの夫にあわせないことがいいことなのか、子どもには良き父親であることもある。DV防止法の主張は夫と専業主婦の時代、20年前の状況を背景としている、今後、研究を重ねて行く必要がある。
講演会当日に紹介できなかった会場からの質問はこちら(PDFファイル)
【6】親子ネット声明(鈴木裕子 親子ネット副代表)
1.DVの客観的判断手順の作成
DVかどうかを正しく判断するために、客観的な基準を設定し、専門家による確認の手順を加えてください。特に精神的DVについては、「被害申立者」の主観的な意見でないかを見分ける手順を加えてください。
2.保護命令の運用改善
保護命令の申請があった場合には、警察の捜査を義務付けてください。そして、警察による捜査の結果、緊急性の高いものではないことが判明した場合には、発令後でも一時保護をはじめとする行政による支援措置を即時に打ち切り、申請前の状態に戻してください。
3.親子引き離しに繋がる行政支援措置の禁止
保護命令発令による「子への接近禁止」以外で、親子引き離しに繋がる行政の支援措置を禁止してください。
4.DV法悪用への罰則強化
親子の引き離しこそが、精神的DVです。離婚・別居に伴う親権・監護権の奪取のために、明らかに虚偽または我が儘と分かる申立てをした場合、悪意的な行為と認定し、その後の親権・監護権の決定に不利となるような、「友好親優先ルール」を確立してください。また、悪意による申請に協力した弁護士、医師、カウンセラー等関係者への罰則を導入してください。
声明を読みあげる副代表の鈴木裕子
【7】講演会を聞いて
「DVは悪いことだ、子どもの福祉は守られなければならない」に反対する人はいません。大切なことは「何がDVなのか?」「何が子どもの福祉なのか?」の判断基準を明確に定めることです。
日本の司法はそれを曖昧にしてきました。また親子の引き離しという重大な人権侵害が家裁の密室性で公にされてきませんでした。
今回の講演会は、法を整備し、基準を定めることにより、真のDV被害者が守られ、DV冤罪者が守られ、子どもが守られ、人権が守られる社会を実現しなければいけないとの重要性を強く気づかせてくれる講演会でした。
自分の娘のため、この運動を推進するメンバーとその子どもさんのため、将来、両親が離婚してしまい、片方の親と引き離されてしまう恐れがある子どものために、頑張るぞ!