【2011.05.06】 「八日目の蝉」
「八日目の蝉」オフィシャルサイト
【あらすじ】
1995年10月東京地裁。秋山丈博(田中哲司)、恵津子(森口瑤子)夫婦の間に生まれた生後4カ月の恵理菜を誘拐し、4年間逃亡した野々宮希和子(永作博美)への論告求刑が告げられた後、希和子は静かにこう述べた。「四年間、子育ての喜びを味わわせてもらったことを感謝します」と……。
希和子は妻帯者の丈博を愛し彼の子供を身ごもるが、産むことは叶えられなかった。そんな時、丈博と恵津子の間に恵理菜が生まれたことを知った希和子は、夫婦 の留守宅に忍び込み連れ去ってしまう。赤ちゃんを薫と名づけ各地を転々としながら、流れ着いた小豆島で母と子としてのひと時の安らぎを得る。美しいその島 で 、薫に様々なものを見せ体験させたいと願う希和子だったが、捜査の手は迫り、フェリー乗り場で4年間の逃避行は終わりを迎える。
恵理菜は4歳で初めて実の両親の元へ返されたが、家族の再統合は叶わず、自分を誘拐した希和子を憎むことで本当の気持ちを封印し心を閉ざしたまま、大学生(井上真央)となり家を出て一人暮らしを始める。そんな折、岸田(劇団ひとり)に出会い、妻子ある岸田の子を身ごもる。
ある日アルバイト先に、誘拐事件について書きたいというルポライターの千草(小池栄子)が 訪ねてくる。心を閉ざして生きる恵理菜の生活に立ち入ってくる千草に励まされ、恵理菜は希和子との逃亡生活を辿る旅に出る。小豆島に降り立った時、恵理菜 は記憶の底にあったある事実を思い出し、封印していた本当の気持ちを千草に打ち明け、お腹の子への母としての愛を確認する。
【当事者視点】
子どもと引き離された当事者であれば誰しも、ラストシーンで恵理菜が今まで一度も口にすることができなかった本当の気持ちを話すシーンに涙するでしょう。
大人たちの身勝手な行動に振り回され傷付くのは子どもなのだということ、こんなにも深く長く苦しめてしまうのだということを改めて感じ、胸が締め付けられます。それに対して今の自分の無力さが悔しくて、いろんな感情が入り混じった涙が止まらず、映画が終わった後もすぐには動けませんでした。
一旦離れてしまった家族が再統合することの難しさも描かれています。4歳 で戻ってきた我が子とうまくいかず、ヒステリックになってしまう実の母、恵津子…あの状況ではああなってしまうのも仕方がないと思う反面、私たちも親子再 統合において、恵津子と同じ苦しみを味わうかもしれないことを心構えし、ヒステリックにならず忍耐強く我が子との関係を再構築していかなければならないのだと感じました。
蝉は地上に出て7日間しか生きられません。もし8日生きた蝉がいたらしあわせでしょうか?と映画は幾度となく私たちに問いかけます。8日生きる蝉は孤独で、辛い思いをするために生きるようなものかもしれません…けれど、8日間の寿命を与えられたなら、孤独も苦労も受け留めて精一杯生きるべきと教えられます。
ぜひこの映画をご覧になり、家族再統合には、どれほどの忍耐と努力と子どもの心理への理解が必要かということをしっかり受け留め、覚悟して八日目を生きていこうではありませんか。













