2013年02月03日 朝日新聞 『(いま子どもたちは)親が離婚した…:8 欠陥だらけの家族だけど、幸せ』
(いま子どもたちは)親が離婚した…:8 欠陥だらけの家族だけど、幸せ
No.457
京都府の同志社大学2年の山田光瑠(ひかる)さん(20)はステップファミリー(子連れ再婚家庭)で育った。前夫と離婚した母(52)が、姉(28)を連れて父(53)と再婚。その後、山田さんと弟(17)が誕生した。
新たな夫婦間で生まれた子は、家族の絆を固める存在とされ、セメントベビーと呼ばれる。でも、山田さんの場合、家族がなかなかまとまらなかった。
小学3年のとき、父と母が別居。3人姉弟は父と母の間を行ったり来たりし、離ればなれに暮らすこともあった。姉との関係がぎくしゃくし、母が寝込み……。自宅の混乱ぶりを誰にも相談できず、「お父さんは単身赴任」とウソもついた。
そのまま、大学生になった。
1年生だった昨年2月、インターンシップ先で、大手前大学4年の李青(イチョン)さん(23)と出会った。韓国からの留学生で、母(51)と姉(26)の3人家族。「貧しくて服も買えなかった。自分の運命を恨んだこともある」。自然に打ち解け、時間を忘れて互いの家族の話をした。
似た境遇だからこそ、微妙な心理がわかり合えた。
「つらいときもあったけど、とっても幸せだったんです」と山田さん。体調の悪い母が無理をして作ってくれたお弁当。「すっごい下手なんです。卵がぐちゃって。でも、めったにないことだから最高においしかった」。両親は離婚はしていないが、今も別居中だ。「欠陥だらけの家族だけど、みんな互いのために一生懸命だった」。李さんも「お父さんもお金も、当たり前にあることじゃないことを知っていた。その分、小さな幸せをたくさん感じた」。
頑張って育ててくれた親に恩返しを――。2人は、大阪市のNPO法人が主催するビジネスプランのコンペに参加を決めた。提案しているのは、休日にひとり親家庭の子どもを預かる事業。山田さんは「子どもを預け、リフレッシュしてほしい。親の心のゆとりが、子どもの笑顔につながります」と話す。
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「親が離婚した…」は今回で終わり、次回は6日に始めます。
(古田真梨子)